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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】階段を構成する構成部品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/17 20060101AFI20240222BHJP
【FI】
E04F11/17 100Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023137543
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-09-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1〔展示会の公開〕 公開日 :令和4年8月26日~令和4年8月27日 展示会名:第43回住宅建材総合展示即売会(ジャパン建材フェア) 開催場所:東京ビックサイト 東展示棟1・2・3ホール 2〔販売による公開〕 販売日 :2022年10月24日 販売場所:永大産業株式会社ショールームおよび同社販売店 3〔展示会の公開〕 公開日 :令和5年8月24日~令和5年8月25日 展示会名:第44回住宅建材総合展示即売会(ジャパン建材フェア) 開催場所:東京ビックサイト 東展示棟1・2・3ホール
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 亜紀彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎三郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 桃華
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-185300(JP,A)
【文献】特開2006-088502(JP,A)
【文献】特開2019-049106(JP,A)
【文献】特開平06-072011(JP,A)
【文献】特開2016-078338(JP,A)
【文献】特開平08-150603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/17
B27M 1/00-3/38
B27K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段を構成する構成部品の製造方法であって、
木材に由来した木質表面を有した木質系基材を準備する準備工程と、
水またはアルコールに白色の顔料または着色料が添加された水性塗料を木質表面に塗布し、前記木質表面に由来した凹部分および凸部分に倣った白色の薄膜を前記木質表面に形成することにより、前記木質表面を着色する着色工程と、
前記白色の薄膜が形成された前記木質表面に対して、前記部分および前記凸部分を、透明の樹脂に白色の顔料または着色料が添加された樹脂製の白色の塗料で埋めるように塗装することにより、塗装層を形成する塗装層形成工程と、
前記塗装層の表面に、インクジェット印刷することにより、単色の印刷層形成する印刷層形成工程と、
を含むことを特徴とする、階段の構成部品の製造方法。
【請求項2】
前記木質表面は、散孔材からなる表面であることを特徴とする、請求項1に記載の階段の構成部品の製造方法。
【請求項3】
階段を構成する構成部品であって、
前記構成部品は、
木材に由来の木質表面を有した木質系基材と、
水またはアルコールに白色の顔料または着色料が添加された水性塗料を木質表面に塗布することにより、前記木質表面に由来した凹部分および凸部分に倣って形成された白色の薄膜と、
前記白色の薄膜が形成された前記木質表面に対して、前記部分および前記凸部分を、透明の樹脂に白色の顔料または着色料が添加された樹脂製の白色の塗料で埋めるように塗装された塗装層と、
前記塗装層の表面に、インクジェット印刷された単色印刷層と、を備えることを特徴とする、階段の構成部品。
【請求項4】
前記木質表面は、散孔材からなる表面であることを特徴とする、請求項3に記載の階段の構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段を構成する構成部品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物内に設置される階段として、階段状に配置された複数の踏み板および蹴込み板と、これらを左右で固定する側板とを備えた階段が知られている。具体的には、このような階段では、踏み面となる所要段数の踏み板が、水平姿勢で左右の側板間に上下および前後に所定間隔をあけて段状に差し渡されて取り付けられ、各踏み板間には蹴込み板が、配在されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、このような階段を構成する構成部品の製造方法が開示されている。この製造方法では、木材に由来の木質表面を有した木質系基材に対して、ロールコータ塗装により、水性塗料が塗布された塗布層を形成し、さらに、受理層、印刷層、および、クリア層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-049106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に係る階段の構成部品では、印刷層として印刷する模様は、木目模様などの柄模様であるため、下地である木質表面の状態が、構成部品の表面に映り込んだとしても、その映り込みは、ほとんど識別されることはない。しかしながら、単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層を形成した場合には、下地である木質表面の凹凸または濃淡の状態が映り込むことがあり、本来、期待する印刷層の色合いとは異なってしまう。
【0006】
本発明は、前記課題を鑑みてなされたものであり、単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層の本来の色合いを得ることができる階段を構成する構成部品とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を鑑みて、本発明に係る階段の構成部品の製造方法は、階段を構成する構成部品の製造方法であって、木材に由来した木質表面を有した木質系基材を準備する準備工程と、前記木質表面に対して、前記木材に由来した凹部分および凸部分を樹脂製の塗料で埋めるように塗装することにより、塗装層を形成する塗装層形成工程と、前記塗装層の表面に、インクジェット印刷することにより、単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層を形成する印刷層形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、塗装層形成工程において、木質表面に対して、木材に由来した凹部分および凸部分を樹脂製の塗料で埋めるように塗装することにより、塗装層を形成する。これにより、木質表面の凹部分および凸部分によるアンカー効果で、塗装層の剥離を抑えつつ、塗装層の下地である木質表面の木目模様が映り込み難くなる。
【0009】
このような塗装層の表面に、単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層を形成するので、印刷層が形成された表面を、木目模様の影響を受けない単色の色が付された面として、視認することができる。このような結果、木質表面の木目模様に拘わらず、均一な単色の表面、または、均一な単色の模様からなる表面の印刷層を形成することができる。
【0010】
より好ましい態様としては、前記木質表面は、散孔材からなる表面である。この態様によれば、散孔材は、環孔材に比べて、導管による木目模様がわかり難いため、塗装層を、散孔材の導管に由来した凹部分および凸部分を塗料で埋めるように形成すれば、木質表面の木目模様が映り込み難くなる。
【0011】
本明細書では、階段を構成する構成部品に係る発明も、開示する。本発明に係る階段を構成する構成部品は、階段を構成する構成部品であって、前記構成部品は、木材に由来の木質表面を有した木質系基材と、前記木質表面に対して、前記木材に由来した凹部分および凸部分を樹脂製の塗料で埋めるように塗装された塗装層と、前記塗装層の表面に、インクジェット印刷された単色または単色の模様からなる印刷層と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、塗装層は、木材に由来した凹部分および凸部分を樹脂製の塗料で埋めるように塗装された層であるので、木質表面の凹部分および凸部分によるアンカー効果で、塗装層の剥離を抑えつつ、塗装層の表面に、塗装層の下地である木質表面の木目模様が映り込み難くなる。このような塗装層の表面に、単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層を形成するので、印刷層が形成された表面を、木目模様の影響を受けない単色の色が付された面として、視認することができる。このような結果、木質表面の木目模様に拘わらず、均一な単色の表面、または、均一な単色の模様からなる表面の印刷層を形成することができる。
【0013】
さらに好ましい態様としては、前記木質表面は、散孔材からなる表面である。この態様によれば、散孔材は、環孔材に比べて、導管による木目模様がわかり難いため、散孔材の導管に由来した凹部分および凸部分を塗料で埋めるように形成された塗装層により、木質表面の木目模様が映り込み難くなる。
【発明の効果】
【0014】
単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層の本来の色合いを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る階段の構成部品を備えた階段の模式的斜視図である。
図2図1に示す階段の構成部品の1つである踏み板の模式的斜視図である。
図3図2に示す踏み板のうち、段鼻を含む部分の拡大断面図である。
図4図3に示す踏み板の踏み面の拡大断面図である。
図5】本発明に係る階段の構成部品の1つである踏み板の製造方法のフロー図である。
図6A】(a)は、図5に示す着色工程を説明するための図であり、(b)は、着色した踏み板を説明するための拡大断面図である。
図6B】(a)は、図5に示す塗装層形成工程を説明するための図であり、(b)は、塗装層形成工程を行うためのロールコータの側面図であり、(c)は、塗装層の形成を説明するための拡大断面図である。
図6C】(a)は、図5に示す印刷層形成工程を説明するための図であり、(b)は、印刷層の形成を説明するための拡大断面図である。
図6D】(a)は、図5に示すクリア塗装層形成工程を説明するための図であり、(b)は、クリア塗装層の形成を説明するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
1.階段1について
図1は、本発明の実施形態に係る階段1の模式的斜視図である。図1に示すように、階段1は、住宅等の建物内に設置されるものであり、複数の踏み板3、3、…および蹴込み板4、4、…と、これらを固定する一対の側板5、5と、を備えている。踏み板3、蹴込み板4、および側板5は、階段1の構成部品7である。階段1の構成部品7としては、少なくとも、踏み板3を備えていればよく、たとえば、蹴込み板または側板等が無い階段であってもよい。
【0017】
本実施形態では、踏み面15となる所要段数の踏み板3が、水平姿勢で左右の側板5、5間に上下および前後に所定間隔をあけて段状に差し渡されて取り付けられ、各踏み板3、3間には蹴込み板4が配在されている。図2に示すように、踏み板3の踏み面(上面)15には、段鼻16の視認性向上と滑り止めを兼ねる3本の滑り止め溝18が形成されており、踏み板3の裏面には、蹴込み板4を差し込む差し込み溝17が形成されている。
【0018】
蹴込み板4の上部は、上段の踏み板3における裏面側の前端面(段鼻16側)から所定距離奥まった差し込み溝17に挿入されている。蹴込み板4の下部は、下段の踏み板3の後端面に当接している。本実施形態では、溝18を含む踏み板3の踏み面15に、後述する印刷が施されており、必要に応じて、後述する段鼻16の表面および踏み板3の裏面にも、印刷が施されている。
【0019】
2.構成部品7について
以下に、階段1の構成部品7の1つとして、木質系基材11の木質表面11fに塗装層20が形成された踏み板3を例示するが、蹴込み板4または側板5は、木質系基材に、踏み板3の塗装層と同様の塗装層が形成されたものであってもよい。構成部品7である踏み板3は、木材由来の木質表面11fを有した木質系基材11と、木質表面11fに形成された塗装層23と、塗装層23の表面23aに形成された印刷層24と、印刷層24の表面に被覆されたクリア塗装層25と、を備えている。
【0020】
図3に示すように、木質系基材11は、基材層11bの両面に下貼り層11a、11aが貼り合わせられたものであり、印刷される表面には、化粧材層11cが形成されている。本実施形態では、基材層11bは、複数のプライの合板からなり、下貼り層11a、11aは、中密度繊維板(MDF)からなる。化粧材層11cは、突板または挽き板からなり、段鼻16の表面にも、同様の化粧材層11gが形成されている。この化粧材層11c、11gの表面が、木質表面11fに相当する。
【0021】
しかしながら、木質系基材11の基材層11bおよび下貼り層11a、11aが、無垢材、パーティクルボード(PB)、木質繊維板(インシュレーションボード・ハードボードなど)、配向性ストランドボード(OSB)、LVL、集成材、または、これらを積層したものであってもよい。さらに、木質系基材11に、木材に由来の木質表面11fを有するのであれば、木質系基材11が、無垢材であってもよい。
【0022】
本実施形態では、木質表面11fは、たとえば、例えば、ビーチ、シナ、カツラ、チェリー、バーチ、オーク、メイプル、ケヤキ、ウォールナット、シナ、ナラ、ヤチダモ、キリ、ヒノキ、スギ、マホガニー、チーク、ローズウッド、トチ、クロガキ、シオジ、ニレ、カバ、シタン、またはコクタンからなる表面であってもよい。特に、木質表面11fは、散孔材からなる表面であることが好ましく、たとえば、化粧材層11c、11gの突板または挽き板が、散孔材からなる。散孔材は、環孔材に比べて、導管が細く、表面きめが細かく、木目模様がわかり難いため、散孔材の導管に由来した凹部分および凸部分を塗料で埋めるように形成された塗装層23により、木質表面11fの木目模様が映り込み難くなる。散孔材としては、たとえば、ビーチ、カツラ、マホガニー、ウォールナット、チェリー、バーチ、メイプル、またはローズウッドなどが好ましい。
【0023】
なお、実施形態では、図4に示すように、木質表面11fは、塗料で着色された着色面であり、顔料または着色料が含浸された含浸層11dが形成されていてもよい。この塗料は、たとえば、白色の水性塗料を挙げることができるが、着色面を有した含浸層11dを形成することができるのであれば、水性塗料に限定されるものではない。
【0024】
塗装層23は、たとえば白色などに着色された木質表面11fに対して、木材に由来した凹部分11rおよび凸部分11tを樹脂製の塗料で埋めるように塗装されている。塗料は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル、およびフッ素樹脂などの透明の樹脂に、顔料または着色料が添加された塗料であり、たとえば、有機溶媒に分散していてもよい。
【0025】
本実施形態では、塗装層23は、たとえばロールコータ塗装により、形成された層である。塗装層23の表面は、図4に示すクリア塗装層25の表面25aと同様の表面である。木材に由来した凹部分11rおよび凸部分11tを樹脂製の塗料で埋めることができるのであれば、ロールコータ塗装に限定されず、スプレイ塗装など、その塗装方法は特に限定されるものではない。
【0026】
印刷層24は、塗装層23の表面23aに、たとえば紫外線硬化型インク24Aでインクジェット印刷された単色または単色の模様からなる。インクジェット印刷に使用される紫外線硬化型インクは、反応性オリゴマーまたは反応性モノマーに光重合開始剤が添加された紫外線硬化型樹脂と、着色剤とを少なくとも含む。たとえば、イエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの4色の着色剤を、紫外線硬化型樹脂に個別に含有した4種のインクを準備し、これらのインクを用いて、塗装層23の表面23aの印刷に上述した色を配色する。なお、本実施形態では、紫外線硬化型のインクを例示したが、インクジェット印刷で単色または単色の模様からなる印刷層24が形成されるのであれば、油性インクおよび水性インクなど特に限定されるものではない。
【0027】
塗装層23の表面23aに印刷された印刷層24は、単色の模様からなる。この場合、たとえば、2色以上からなる単色の模様(たとえば市松模様)が、塗装層23の表面23aに繰り返し印刷された層であってもよい。この他にも、印刷層24は、塗装層23の表面23aを2以上の区画した領域に、異なる単色の色が塗り分けられた層であってもよい。
【0028】
クリア塗装層25は、印刷層24の表面に、樹脂製の透明な塗料で塗装された層である。透明な塗料は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル、またはフッ素樹脂などの樹脂塗料である。これらの塗料には、ホワイトアルミナ、グリーンカーボン、またはセラミック粉など、クリア塗装層25の耐摩耗性を抑える減摩材が添加されていてもよい。
【0029】
クリア塗装層25は、後述するロールコータ塗装により、表面25aに形成された層である。なお、クリア塗装層25を省略してもよく、クリア塗装層25の代わりに、印刷層24を保護するための保護層が形成されていてもよい。
【0030】
塗装層23は、木材に由来した凹部分11rおよび凸部分11tを樹脂製の塗料で埋めるように塗装された層である。したがって、木質表面11fの凹部分11rおよび凸部分11tによるアンカー効果で、塗装層23の剥離を抑えつつ、塗装層23の表面23aに、塗装層23の下地である木質表面11fの木目模様が映り込み難くなる。このような塗装層23の表面23aに、単色の印刷層24または単色の模様からなる印刷層24を形成するので、印刷層24が形成された表面を、木目模様の影響を受けない単色の色が付された面として、視認することができる。
【0031】
このような結果、木質表面11fの木目模様に拘わらず、均一な単色の表面、または、均一な単色の模様からなる表面の印刷層24を形成することができる。さらに、印刷層24の表面に、透明なクリア塗装層25が形成されるので、印刷層24の表面の美観をさらに高めることができる。
【0032】
さらに、塗装層23の下地となる木質表面11fをたとえば白色などの塗料で着色するので、踏み板3の踏み面15から、クリア塗装層25、印刷層24、および塗装層23を通過した光LAは、白色に着色された木質表面11fにおいて乱反射し易くなるため、木質表面11fの木目模様が、クリア塗装層25の表面25aに映り込み難い。
【0033】
3.構成部品7の製造方法について
以下に、図5図6Dを参照しながら、階段1の構成部品7の1つである踏み板3の製造方法を説明する。なお、階段1の構成部品7である蹴込み板4または側板5であっても、同様の方法で製造することができるため、詳細な説明を省略する。
【0034】
3-1.準備工程S1について
まず、準備工程S1を行う。この工程では、踏み板3を構成する木質系基材11を準備する。木質系基材11の表面に、溝加工により滑り止め溝18を形成する。滑り止め溝18は、踏み板3の視認性向上と滑り止めを兼ねるものであり、断面形状はV字状であり、その深さは1.2~2.0mm程度である。ここで、クリア塗装層形成工程S5までの間に溝18が、樹脂等に埋もれてしまうと、滑り止めとして機能しなくなるので、ここでは、溝18は、木質系基材11の下貼り層11aまで削り込まれている。
【0035】
なお、本実施形態では、断面形状がV字状の溝18を形成したが、たとえば、U字状、台形状、または矩形状等の断面形状を有した溝であってもよい。さらに、準備工程S1において、踏み板3の裏面側に、差し込み溝17を形成してもよい。
【0036】
3-2.着色工程S2について
次に、着色工程S2を行う。この工程では、図6A(a)に示すように、搬送ロール81で搬送しながら、踏み面および段鼻面に対応する木質系基材11の木質表面11fに、塗装装置70Aのスプレヘッダ71A、71Bを用いて白色の塗料21Aを塗布し、木質表面11fを白色の塗料21Aで着色する。白色の塗料は、水またはアルコールなどに白色の顔料または着色料が添加された塗料である。スプレヘッダ71A、71Bにより、白色の塗料の塗布を行ったが、たとえば、刷毛またはローラなどで、白色の塗料の塗布を行ってもよい。
【0037】
図6A(b)に示すように、塗料は、木質系基材11の木質表面11fから、その表層に含浸されて、含浸層11dを形成する。その後、自然乾燥またはドライヤー等による乾燥により、水性塗料を乾燥させる。これにより、木質表面11fに、木質表面11fの凹部分11rおよび凸部分11tに倣った白色の薄膜21が形成される。薄膜21は、溝18の壁面を含む踏み面に均一に形成された膜である。
【0038】
着色工程S2を行うことにより、次工程で形成する塗装層23の下地となる木質表面11fが白色の塗料で着色されるので、踏み板3の踏み面15、段鼻16から、クリア塗装層25、印刷層24、および塗装層23を通過した光は、白色に着色された木質表面11fにおいて乱反射し易くなる。このため、木質表面11fの模様が、クリア塗装層25の表面25aに映り込み難い。
【0039】
3-3.塗装層形成工程S3について
次に、塗装層形成工程S3を行う。この工程では、図6B(a)に示すように、木質表面11fに対して、木材に由来した凹部分11rおよび凸部分11tを樹脂製の塗料23Aで埋めるように塗装することにより、塗装層23を形成する。樹脂製の塗料23Aは、水性の塗料よりも粘度が高く、透明の樹脂に、顔料または着色料が添加された塗料である。
【0040】
本実施形態では、図6B(b)に示すように、ロールコータ70Bを用いて、ロールコータ塗装により、塗装層形成工程S3を行う。図6B(b)に示すように、本実施形態では、ロールコータ塗装により、回転させたコーティングロール72A、72Bで木質表面11fを押圧しながら、塗料を塗布する。
【0041】
本実施形態では、コーティングロール72A(72B)とバックアップロール73A(73B)の間に溜められた塗料23Aを、両ロール間から排出しつつ、コーティングロール72A(72B)で、木質表面11f(具体的には薄膜21)を押圧しながら、排出された白色の塗料23Aを木質表面11f(薄膜21)に塗布する。
【0042】
3-4.印刷層形成工程S4について
次に、印刷層形成工程S4を行う。この工程では、図6C(a)、(b)に示すように、塗装層23の表面23aに、たとえば紫外線硬化型インク24Aでインクジェット印刷することにより、単色の印刷層24または単色の模様からなる印刷層24を形成する。具体的には、紫外線硬化型インク24Aを、未硬化の状態でインクジェット印刷により粒状に付着させて、単色の印刷層24または単色の模様からなる印刷層24を形成する。
【0043】
具体的には、インクジェット印刷に使用される紫外線硬化型インク24A(以下「インク24A」ともいう)は、反応性オリゴマーまたは反応性モノマーに光重合開始剤が添加された紫外線硬化型樹脂と、着色剤とを少なくとも含む。たとえばイエロー、マゼンダ、シアン、およびブラックの4色の着色剤を、紫外線硬化型樹脂に個別に含有した4種のインク24Aを準備し、これらの紫外線硬化型インク24Aを用いて、塗装層23の表面23aに印刷し、踏み面に単色を配色する。
【0044】
インクジェット印刷はインクジェットプリンタ70Cにより行われる。インクジェットプリンタは、一般的な印刷に用いられるインク24Aを収容し、単色の色に合わせて各インクを個別に噴射するヘッド75A、75Bを備える。踏み面を印刷するヘッド75A、75Bは、踏み板3の奥行方向に沿って、往復動する。
【0045】
インクジェットプリンタ70Cは、踏み板3の踏み面15(具体的には、塗装層23の表面23a)に対して略直交した方向からヘッドで噴射しながら、搬送ロール81で各踏み板3となる木質系基材11を所定方向に送り、踏み面15に上述した単色の色を付し、これにより、未硬化の印刷層(図示せず)を得る。未硬化の印刷層24に対して、紫外線を照射することにより(図示せず)、印刷層24を硬化させる。
【0046】
3-5.クリア塗装層形成工程S5について
次に、クリア塗装層形成工程S5を行う。この工程では、図6D(a)に示すように、印刷層24の表面に、樹脂製の透明な塗料25Aで塗装することにより、クリア塗装層25を形成する。なお、ロールコータ塗装は、ロールコータ70Dにより行われるが、塗装層形成工程で説明したロールコータ70Bと同様の装置構成であるため、同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態では、図6D(a)に示すように、ロールコータ塗装により、回転させたコーティングロール72A、72Bで、印刷層24の表面を押圧しながら、透明な塗料25Aを塗布することにより、クリア塗装層25を形成する。
【0048】
この際、コーティングロール72A(72B)の押圧力を、一般的な押圧力に比べて大きくすることにより、コーティングロール72A(72B)の外周部を大きく弾性変形させた状態で、コーティングロール72A(72B)と印刷層24の表面24aとの間に透明な塗料25Aを通過させる。
【0049】
本実施形態によれば、図6B(c)に示すように、塗装層形成工程S3において、木質表面11fに対して、木材に由来した凹部分11rおよび凸部分11tを樹脂製の白色の塗料23Aで埋めるように塗装することにより、塗装層23を形成する。これにより、木質表面11fの凹部分11rおよび凸部分11tによるアンカー効果で、塗装層23の剥離を抑えつつ、塗装層23の表面23aに、塗装層23の下地である木質表面11fの木目模様が映り込み難くなる。
【0050】
図6C(b)に示すように、このような塗装層23の表面23aに、後述する単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層24を形成するので、印刷層24が形成された表面を、木目模様の影響を受けない単色の色が付された面として、視認することができる。
【0051】
このような結果、図6C(b)に示すように、木質表面11fの木目模様に拘わらず、均一な単色の表面、または、均一な単色の模様からなる表面の印刷層24を形成することができる。さらに、図6D(b)に示すように、印刷層24の表面に、透明なクリア塗装層25が形成されるので、印刷層24の表面の美観をさらに高めることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【0053】
たとえば、本実施形態では、着色工程を行うことにより、木質系基材の木質表面を白色に、着色したが、木質表面の木目模様の映り込みが無いのであれば、この工程を省略してもよい。さらに、塗装層形成工程およびクリア塗装層形成工程において、塗装層およびクリア塗装層を形成する際に、これらの表面に、ロールコータを用いたが、クリア塗装層が無いのであれば、これらの層をスプレー等により形成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:階段、3:踏み板、4:蹴込み板、5:側板、7:構成部品、11:木質系基材、11t:凸部分、11r:凹部分、15:踏み面、23:塗装層、23A:塗料、24:印刷層、24A:紫外線硬化型インク、25:クリア塗装層、25A:透明な塗料、S1:準備工程、S3:塗装層形成工程、S4:印刷層形成工程、S5:クリア塗装層形成工程
【要約】
【課題】単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層の本来の色合いを得ることができる階段を構成する構成部品の製造方法を提供する。
【解決手段】階段1を構成する構成部品7の製造方法であって、木材に由来の木質表面11fを有した木質系基材11を準備する準備工程S1と、木質表面11fに対して、木材に由来した凹部分11rおよび凸部分11tを樹脂製の塗料23Aで埋めるように塗装することにより、塗装層23を形成する塗装層形成工程S3と、塗装層23の表面23aに、インクジェット印刷することにより、単色の印刷層または単色の模様からなる印刷層24を形成する印刷層形成工程S4と、を含む。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D