IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 烟台藍納成生物技術有限公司の特許一覧

特許7442020前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用
<>
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図1
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図2
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図3
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図4
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図5
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図6
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図7
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図8
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図9
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図10
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図11
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図12
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図13
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図14
  • 特許-前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-21
(45)【発行日】2024-03-01
(54)【発明の名称】前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 50/00 20060101AFI20240222BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20240222BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240222BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240222BHJP
   C07K 5/08 20060101ALI20240222BHJP
【FI】
A61K50/00
A61K51/02
A61K45/00
A61P35/00
A61K51/02 100
A61K50/00 100
C07K5/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023532107
(86)(22)【出願日】2022-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 CN2022078129
(87)【国際公開番号】W WO2022183993
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】202110225558.X
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523192875
【氏名又は名称】烟台藍納成生物技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】YANTAI LANNACHENG BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 101, Building 52, No. 500 Binhai East Road, Muping District Yantai, Shandong 264199, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 小元
(72)【発明者】
【氏名】徐 鵬飛
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/165200(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/192874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/08
A61K 50/00
A61K 51/02
A61K 45/00
A61P 35/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物又はその薬学的に許容される塩であって、その分子構造は、断型エバンスブルー、PSMAを標的とする化合物及び核種キレート基を共に連結することによって形成され、その構造は以下の化合物。

式(II-1)
【請求項2】
前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物又はその薬学的に許容される塩であって、その分子構造は、断型エバンスブルー、PSMAを標的とする化合物及び核種キレート基を共に連結することによって形成され、その構造は以下の式(II-2)~式(II-6)の化合物。

式(II-2)

式(II-3)

式(II-4)

式(II-5)
又は

式(II-6)
【請求項3】
前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物の調製方法であって、
4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニルの一端にBoc保護を導入し、4,6-ジアミノ-5-ヒドロキシ-1,3-ナフタレンジスルホン酸と反応させて切断型エバンスブルー誘導体を得るステップと、Boc保護を除去し、Nα-Fmoc-Nε-Boc-L-リジンとアミド縮合反応させるステップと、TFAの作用下でBocを除去するステップと、COOH-PEG-COOHとアミド縮合反応させるステップと、EDCとNHSの存在下でPSMA-617と反応させるステップと、ピペラジンを使用してFmoc保護を除去するステップと、最後にDOTA-NHSと反応させて下記式(II-1)に示す構造を有する化合物を得るステップとを含む、ことを特徴とする調製方法。

式(II-1)
【請求項4】
前立腺特異的膜抗原を標的とする放射性標識化合物であって、請求項1に記載の式(II-1)の化合物又は請求項2に記載の式(II-2)~式(II-6)の化合物をリガンドとして放射性核種で標識することによって得られる複合体であり、前記放射性核種は、177 Lu90Y、18F、64Cu、68Ga、62Cu、67Cu、86Y、89Zr、99mTc、89Sr,153Sm、149Tb、161Tb、186Re、188Re、212Pb、213Bi、223Ra、225Ac、226Th、227Th、131I、211At又は111Inのいずれかであ、化合物。
【請求項5】
前立腺特異的膜抗原を標的とする放射性標識化合物であって、請求項1に記載の式(II-1)の化合物又は請求項2に記載の式(II-2)~式(II-6)の化合物をリガンドとして放射性核種で標識することによって得られる複合体であり、前記放射性核種は 68 Ga、 177 Lu又は 90 Yである、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の式(II-1)の化合物又は請求項2に記載の式(II-2)~式(II-6)の化合物を緩衝液又は脱イオン水に溶解するステップと、得られた溶液に放射性核種溶液を加え、密閉状態で5~40分間反応させて、放射性核種標識複合体を生成するステップとを含み、
又は、請求項1に記載の式(II-1)の化合物又は請求項2に記載の式(II-2)~式(II-6)の化合物を緩衝液又は脱イオン水に溶解するステップと、得られた溶液を無菌濾過した後、容器に分注し、凍結乾燥して密栓して凍結乾燥キットを得るステップと、前記凍結乾燥キットに適量の酢酸溶液又は緩衝液を加えて溶解し、対応する放射性核種溶液を加え、密閉状態で5~40分間反応させて、放射性核種標識複合体を生成するステップとを含む、前立腺特異的膜抗原を標的とする放射性標識化合物の調製方法。
【請求項7】
請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物又は請求項4または5に記載の前立腺特異的膜抗原を標的とする放射性標識化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容される担体は、結合剤、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香味剤、流動促進剤、潤滑剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤、打錠剤、湿潤剤、又はそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学及び分子イメージングの分野に関し、具体的には、前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物、その調製及び放射性標識、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、世界中の男性にとって2番目に多い癌であり、中国では男性に6番目に多い癌である。過去10年間、中国における前立腺癌の発生率は急速に上昇しており、年間平均増加率は12.07%である。前立腺癌は「サイレントキラー」と呼ばれ、早期発見が難しく、患者の約3分の2は、診断された時点で進行期に達している。前立腺癌細胞における前立腺特異的膜抗原(PSMA)の発現は、正常細胞の100倍~1000倍であり、また、その発現は、進行癌及び抗アンドロゲン治療を受けた癌細胞でより高く、これらの特性により、PSMAは前立腺癌の標的療法の理想的な標的となっている。
【0003】
2020年12月、米国食品医薬品局は、前立腺癌患者のPSMA陽性病変に対する最初のPETメージング診断薬であるガリウム68標識PSMA-11(68Ga-PSMA-11)を承認した。その後、177-Lu標識PSMA617がPSMA陽性病変の治療及び研究に使用されるようになった。低分子薬物として、177Lu-PSMA617は血液からの溶出が速すぎ、この代謝特性により、腫瘍部位での取り込み量が少なくなり、保持時間が短くなり、患者の約30%は177Lu-PSMA617治療に反応しなかった。腫瘍に送達される用量を増やすために、ある研究では、マレイミド修飾された切断型エバンスブルーをスルフヒドリル基を含むPSMAに連結して(177Lu-EB-PSMA617)、血液中のアルブミンに結合することにより、PSMA標的プローブの循環半減期が有意に延長されることが示されている。この修飾方法は、腫瘍への取り込み量を増加させ、腫瘍保持時間を延長したが、後続の研究では新たな問題が発見された。177Lu-EB-PSMA617(3.52±0.58GBq)治療を受けた患者のうち、グレード3~4の貧血が37.5%の患者に、白血球減少症が12.5%の患者に、血小板減少症が37.5%の患者に発生した(Journal of Nuclear Medicine December 2020,61(12):1772-1778)。これは、177Lu-EB-PSMA617の長い血中半減期が血液毒性と骨髄抑制につながることを示しており、特に前立腺癌の骨転移の負担が重く、骨髄機能が危機的な状態にある患者の場合、副作用はより深刻である。このような深刻な副作用は、標的薬物の臨床応用価値を大きく低下させる。これらの研究を通じて、腫瘍治療用の標的プローブの血液循環半減期は長ければ長いほどよいというわけではなく、高い腫瘍への取り込みを確保しながら、血液循環時間を合理的な範囲内に制御する必要があることが認識されている。
【0004】
したがって、PSMA標的プローブを更に最適化し、高い腫瘍への取り込みを確保しながら血液循環時間を適切な範囲に調整し、放射性核種治療のニーズを満たし、最大の治療効果を達成する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
上記の背景に基づいて、本発明の主な目的は、前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物を開発することであり、これは、腫瘍への取り込みが高く、血液循環時間が適切であり、既存の低分子177Lu-PSMA617が代謝が速すぎ、標的臓器での保持時間が短すぎるという欠点を克服できるだけでなく、177Lu-EB-PSMA617のような過度に長い血中半減期による血液毒性と骨髄抑制を回避することもでき、それによって、PSMAを標的とする放射性核種診断及び治療の効果を向上させ、真の臨床応用価値と可能性を持つようにする。
【0006】
本発明の別の目的は、前立腺特異的膜抗原を標的とする放射性標識複合体を提供することであり、この複合体も同様に、腫瘍への取り込みが高く、血液循環時間が適切であり、高い腫瘍治療効果及び低い副作用の利点を有することができる。
【0007】
本発明の別の目的は、上記の前立腺特異的膜抗原を標的とする放射性標識複合体の調製方法を提供することである。
【0008】
本発明の更に別の目的は、前立腺癌を標的とする放射性核種イメージング及び治療における上記複合体の応用を提供することである。
【0009】
上述した本発明の主な目的を実現するための技術的解決策には、以下のリガンド合成と放射性標識の2つの態様がある。
【0010】
第1の態様では、本発明は、腫瘍への取り込みが高く、血液循環時間が適切である前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物を提供し、この化合物の構造は、以下の式(I)に示すとおりであり、
【化1】
式(I)
ここで、Lは-(X)-(CH-(Y)-であり、nは0~12の整数(好ましくは0~6の整数)であり、XとYは独立して、リジン、グルタミン酸、又はリジン及びグルタミン酸を含む誘導体構造から選択され、mは0~60の整数(好ましくは0~30の整数)であり、qは0~12の整数(好ましくは0~6の整数)であり、各CHは独立して-O-、-NH(CO)-又は-(CO)-NH-で置換されていてもよく、
は-(CH-であり、pは0~30の整数(好ましくは0~12の整数)であり、各CHは、隣接する2つのCH基が置換されていないという条件で、独立して-O-、-NH(CO)-又は-(CO)-NH-で置換されていてもよく、
は、前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物に由来し、その構造は、以下の構造のいずれかを含んでもよく、
【化2】
は以下の構造のいずれかから選択される核種キレート基である。
【化3】
【0011】
本発明の実施形態では、式(I)中のRは、好ましくは以下から選択される。
【化4】
又は
【0012】
【化5】
式(II)
ここで、Lは好ましくは、-Lys-(CO)-CHCH-(CO)-NH-CH-(CO)-、-Lys-(CO)-CHCH-(OCHCH)-(CO)-NH-CH-(CO)-、-Lys-(CO)-CHCH-(OCHCH-(CO)-NH-CH-(CO)-、-Lys-(CO)-CHCH-(OCHCH-(CO)-NH-CH-(CO)-、-(CO)-CHCH-(CO)-Lys-、-(CO)-CHCH-(OCHCH)-(CO)-Lys-、-(CO)-CHCH-(OCHCH-(CO)-Lys-、-(CO)-CHCH-(OCHCH-Lys-、-Lys-(CO)-CH-(CO)-NH-CH-(CO)-、-Lys-(CO)-CH-(OCHCH)-O-CH(CO)-NH-CH-(CO)-、-Lys-(CO)-CH-(OCHCH-O-CH(CO)-NH-CH-(CO)-、-(CO)-CH-(CO)-Lys-、又は-(CO)-(OCHCH)-O-CH(CO)-Lys-、-(CO)-CH-(OCHCH-O-CH(CO)-Lys-から選択される。
【0013】
本発明の更に好ましい実施形態では、上記化合物の構造は、以下の式(II-1)に示すとおりである。
【化6】
式(II-1)
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、上記化合物の構造は、以下の式(II-2)~式(II-8)のいずれかであってもよい。
【化7】
式(II-2)
式(II-3)
式(II-4)
式(II-5)
又は
式(II-6)
【0015】
上記に基づいて、本発明は式(II-1)で表される化合物の調製方法を更に提供し、この方法は、
【0016】
4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニルの一端にBoc保護を導入し、4,6-ジアミノ-5-ヒドロキシ-1,3-ナフタレンジスルホン酸と反応させて切断型エバンスブルー誘導体を得るステップと、Boc保護を除去し、Nα-Fmoc-Nε-Boc-L-リジンとアミド縮合反応させるステップと、TFAの作用下でBoc保護基を除去するステップと、COOH-PEG-COOHと反応させるステップと、EDCとNHSの存在下でPSMA-617と反応させるステップと、ピペラジンを使用してFmoc保護を除去するステップと、最後にDOTA-NHSと反応させて下記式(II-1)に示す構造を有する化合物を得るステップとを含む。
【0017】
本発明の式(II-1)で表される化合物の好ましい調製方法は、具体的には以下のステップを含む。
【0018】
4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル(化合物1)を二炭酸ジ-tert-ブチルと反応させて化合物2を得る。化合物2を4,6-ジアミノ-5-ヒドロキシ-1,3-ナフタレンジスルホン酸及び亜硝酸ナトリウムと反応させて、切断型エバンスブルー誘導体(化合物3)を得る。化合物3のBoc保護を除去して化合物4を得る。HATU及びDIPEAの存在下で化合物4をNα-Fmoc-Nε-Boc-L-リジンと縮合させて化合物5を得る。化合物5をトリフルオロ酢酸溶液に溶解して保護基を除去し、化合物6を得る。化合物6をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、HATUの存在下でCOOH-PEG-COOHと反応させて化合物7を得る。EDCとNHSの存在下でPSMA-617と反応させて化合物8を得る。ピペラジンを使用してFmoc保護を除去して化合物9を得る。最後にDOTA-NHSと反応させて下記式(II-1)に示す構造を有する化合物10を得る。
【0019】
上記の具体的なステップの合成ルートは以下のとおりである。
【化8】
【0020】
本発明の解決策における他の化合物の調製方法は、化合物10の調製方法と同様であり、基本的には既存の従来手段に基づいて化合物10の合成ルートを参照して調製することができる。
【0021】
別の態様では、本発明は放射性標識複合体を更に提供し、この複合体は、本発明に記載の式(I)の化合物をリガンドとして放射性核種で標識することによって得られる複合体である。放射性標識複合体は、新しいタイプの腫瘍放射性診断及び治療プローブとして使用することができ、即ち、放射性核種診断プローブ又は放射性核種治療プローブとして使用することができる。核種は、好ましくは、177Lu、90Y、18F、64Cu、68Ga、62Cu、67Cu、86Y、89Zr、99mTc、89Sr、153Sm、149Tb、161Tb、186Re、188Re、212Pb、213Bi、223Ra、225Ac、226Th、227Th、131I、211At又は111Inのいずれかから選択することができ、好ましくは、68Ga、177Lu又は90Yである。
【0022】
本発明の好ましい複合体の構造は以下の式(III)に示すとおりであり、
【化9】
式(III)
ここで、Lは-(X)-(CH-(Y)-であり、nは0~12の整数(好ましくは0~6の整数)であり、XとYは独立して、リジン、グルタミン酸、又はリジン及びグルタミン酸を含む誘導体構造から選択され、mは0~60の整数(好ましくは0~30の整数)であり、qは0~12の整数(好ましくは0~6の整数)であり、各CHは独立して-O-、-NH(CO)-又は-(CO)-NH-で置換されていてもよく、
は-(CH-であり、pは0~30の整数(好ましくは0~12の整数)であり、各CHは、隣接する2つのCH基が置換されていないという条件で、独立して-O-、-NH(CO)-又は-(CO)-NH-で置換されていてもよく、
【化10】
又は
Mは、68Ga、177Lu又は90Yのいずれか1つから選択される放射性核種である。
【0023】
本発明の放射性標識複合体は、既存の様々な標識方法に従って放射性核種を含む化合物及び本発明に記載の式(I)の化合物から調製することができるが、本発明の好ましい標識方法は、以下の湿式法又は凍結乾燥法である。
【0024】
湿式標識法は、本発明に記載の式(I)の化合物の適量を緩衝液又は脱イオン水に溶解するステップと、得られた溶液に放射性核種溶液を加え、密閉状態で5~40分間反応させて、放射性核種標識複合体を生成するステップとを含む。
【0025】
又は、凍結乾燥標識法は、本発明に記載の式(I)の化合物の適量を緩衝液又は脱イオン水に溶解するステップと、得られた溶液を無菌濾過した後、容器に分注し、凍結乾燥して密栓して凍結乾燥キットを得るステップと、凍結乾燥キットに適量の酢酸溶液又は緩衝液を加えて溶解し、対応する放射性核種溶液を加え、密閉状態で5~40分間反応させて、放射性核種標識複合体を生成するステップとを含む。ここで、上記の分注用容器は、好ましくは凍結保存用チューブ又は抗生物質用チューブバイアルである。また、キット中の凍結乾燥粉末成形状態に応じてキットにマンニトール、アスコルビン酸などの賦形剤を加え、本発明に記載の式(I)の化合物及び賦形剤の投与量を調整することによって、キットの成形状態を最適にすることができる。
【0026】
上記の湿式標識法及び凍結乾燥標識法によって得られた生成物は、従来の処理(例えば、クロマトグラフィーによる分離及び精製、溶媒を除去するための回転蒸発、PBS又は水又は生理食塩水による残留物の溶解、無菌濾過など)によって更に注射液に調製することができる。
【0027】
本発明の好ましい特定の実施形態では、式(II-1)で表される化合物10をリガンドとして使用する場合、放射性標識化合物10の好ましい調製方法は、湿式標識法であり、この方法は、化合物10を緩衝液又は脱イオン水に溶解するステップと、新鮮な放射性溶液を加え、密閉状態で37~90℃で5~40分間反応させ、冷却するステップと、水を加えて反応液を希釈し、Sep-Pak C18クロマトグラフィーカラムで分離精製し、クロマトグラフィーカラムを緩衝液又は水で洗浄して未反応の放射性イオンを除去し、塩酸エタノール溶液又はエタノール溶液ですすぎ、生理食塩水又はPBSで希釈して無菌濾過して、式(IV)に記載の構造を有する放射性標識複合体の注射液を得るステップとを含み、ここで放射性核種Mは68Ga、177Lu又は90Yなどである。
【0028】
本発明の放射性標識化合物10の別の好ましい調製方法は、凍結乾燥標識法であり、この方法は、化合物10及び他の必要な試薬を緩衝液に溶解し、得られた溶液を無菌濾過した後、凍結保存用チューブに分注し、凍結乾燥して密封して凍結乾燥キットを得るステップと、凍結乾燥キットに適切な量の緩衝液を加えて溶解し、次に新しく調製した放射性溶液を加え、密閉状態で37~120℃で5~40分間反応させ、冷却するステップと、水を加えて反応液を希釈し、Sep-Pak C18クロマトグラフィーカラムで分離精製し、クロマトグラフィーカラムを緩衝液又は水で洗浄して未反応の放射性イオンを除去し、塩酸エタノール溶液又はエタノール溶液ですすぎ、生理食塩水又はPBSで希釈して無菌濾過して、式(IV)に記載の構造を有する放射性標識複合体の注射液を得るステップとを含み、ここで放射性核種Mは68Ga、177Lu又は90Yなどである。
【化11】
式(IV)
【0029】
上記の合成工程で使用される他の化学物質は市販されているものである。
【0030】
緩衝液は、反応液のpH値を安定させるための物質であり、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、炭酸塩、リン酸塩、及びそれらの混合物などであってもよい。
【0031】
別の態様では、本発明はまた、哺乳動物のPSMA高発現腫瘍に対する放射性核種治療又は造影剤の調製における、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の応用を提供する。
【0032】
本発明はまた、哺乳動物のPSMA高発現腫瘍に対する放射性核種治療又はイメージングにおける、式(IV)で表される放射性標識複合体の応用を提供する。
【0033】
本発明の好ましい応用では、上記複合体は注射剤として調製され、PSMA高発現腫瘍を有するヒト患者又は哺乳動物に対して静脈内注射により投与される。
【0034】
本発明は、腫瘍への取り込みが高く、血液循環時間が適切である前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物及びその放射性核種標識複合体、並びにこの種類の化合物の調製方法及び標識方法を提供する。生物学的試験の結果、血液循環半減期が適切であり、腫瘍への取り込みが高く、保持時間が長いことが示されている。この優れた性能は、現時点では他のPSMA標的薬には見られず、PSMA高発現腫瘍の放射性核種治療及びイメージングに適している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】前立腺癌マウス皮下移植腫瘍モデルに異なる薬物を注射してから24時間後の腫瘍への取り込み結果を示す図である。
図2】正常マウスに実施例31の化合物、177Lu-PSMA及び177Lu-EB-PSMA617を注射した後の異なる時点での血液取り込みの比較を示す図である。
図3】前立腺癌マウス皮下移植腫瘍モデルに実施例31の化合物を注射してから24時間後の組織分布結果を示す図である。
図4】前立腺癌マウス皮下移植腫瘍モデルに177Lu-EB-PSMA617を注射してから24時間後の組織分布結果を示す図である。
図5】正常マウスに実施例31の化合物を注射した後の異なる時点でのSPECT-CT画像である。
図6】正常マウスに実施例の177Lu標識化合物II-2を注射した後の異なる時点でのSPECT-CT画像である。
図7】正常マウスに177Lu標識化合物II-2を注射した後の異なる時点での血液取り込みの結果を示す図である。
図8】実施例1で調製した化合物10のマススペクトルである。
図9】実施例3で調製した化合物II-3のマススペクトルである。
図10】実施例1で調製した化合物5のHPLCクロマトグラムである。
図11】実施例1で調製した化合物6のHPLCクロマトグラムである。
図12】実施例1で調製した化合物7のHPLCクロマトグラムである。
図13】実施例1で調製した化合物8のHPLCクロマトグラムである。
図14】実施例1で調製した化合物9のHPLCクロマトグラムである。
図15】実施例1で調製した化合物10のHPLCクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面と併せて具体的な実施形態を通じて本発明の技術的解決策を更に例示及び説明する。
実施例1:式(II-1)化合物10の調製
【0037】
化合物2の合成:
4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル(化合物11)(2.12g、10.0mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(2.2g、10.0mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.3g、10.0mmol)、及びジクロロメタン20mLをそれぞれ100mLフラスコに入れ、室温で一晩撹拌し、反応の終了をHPLCでモニタリングし(r.t.は10.13分)、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得て、シリカゲルカラム(石油エーテル/酢酸エチル=5:1)で精製して白色固体化合物2を59%の収率で得た。
【0038】
化合物3の合成:
化合物2(0.31g、1.0mmol)とアセトニトリル4mLをそれぞれ50mLフラスコに入れ、氷浴中で反応フラスコに2M塩酸1.5mLを滴下し、15分間反応させ、亜硝酸ナトリウム(0.068g、1.0mmol)を加えて水2mLに溶解し、再度反応フラスコに滴下し、30分間反応させ、A液とした。もう1つの50mL反応フラスコを用意し、4,6-ジアミノ-5-ヒドロキシ-1,3-ナフタレンジスルホン酸(0.33g、1.0mmol)、炭酸ナトリウム(0.105g、1.0mmol)及び水5mLを加え、氷浴中でA液をB液にゆっくりと滴下し、氷浴中で撹拌して2時間反応させた。逆相カラムで精製し、凍結乾燥して純粋な化合物3を47%の収率で得た。
【0039】
化合物4の合成:
氷浴条件下で化合物3(0.52g、1.0mmol)をトリフルオロ酢酸に溶解し、系の温度を室温に上げて2時間反応させ、反応終了後、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。粗生成物を逆相カラムで精製し、凍結乾燥して純粋な化合物4を73%の収率で得た。
【0040】
化合物5の合成:
化合物4(0.54g、1.0mmol)、Nα-Fmoc-Nε-Boc-L-リジン(0.46g、1.0mmol)、HATU(0.38g、1.0mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.26g、2.0mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド10mLをそれぞれ100mLフラスコに入れた。反応混合物を反応終了まで撹拌し、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。粗生成物を逆相カラムで精製し、凍結乾燥して純粋な化合物5を57%の収率で得た。
【0041】
化合物6の合成:
チオアニソール:1,2-エタンジチオール:アニソール:TFA(5:3:2:90)を使用して室温で化合物5のtert-ブチルエステル及びBoc保護を除去して、化合物6を得た。反応終了後、TFAをアルゴン流により除去し、次にN,N-ジメチルホルムアミド10mLに溶解して次の反応に備えた。
【0042】
化合物7の合成:
化合物6のN,N-ジメチルホルムアミドにCOOH-PEG-COOH(0.23g、1.10mmol)、HATU(0.38g、1.0mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.39g、3.0mmol)をそれぞれ加え、室温で一晩撹拌し、反応の終了をHPLCでモニタリングした(r.t.は10.84分)。溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。粗生成物を逆相カラムで精製し、凍結乾燥して純粋な化合物7を50%の2段階収率で得た。
【0043】
化合物8の合成:
化合物7(0.21g、0.2mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.04g、0.2mmol)、NHS(0.02g、0.2mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド10mLをそれぞれ50mLフラスコに入れた。4時間反応させた後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.06g、0.5mmol)及びPSMA-617(0.13g、0.2mmol)を加え、反応混合物を撹拌して反応させ、反応の終了をHPLCでモニタリングした(r.t.は12.16分)。溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。粗生成物を逆相カラムで精製し、凍結乾燥して純粋な化合物8を59%の収率で得た。
【0044】
化合物9の合成:
化合物8(0.16g、0.1mmol)とピペリジン(0.08g、10.0mmol)をそれぞれ25mLフラスコ中のDMF5mLに入れた。反応終了まで脱保護過程をHPLCでモニタリングし(r.t.は10.47分)、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。粗生成物を逆相カラムで精製し、凍結乾燥して純粋な化合物9を63%の収率で得た。
【0045】
化合物10の合成:
化合物9(0.13g、0.1mmol)、DOTA-NHS(0.05g、0.1mmol)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.04g、0.3mmol)をそれぞれ順に25mLフラスコ中のN,N-ジメチルホルムアミド5mLに入れた。反応系を室温で撹拌して反応させ、反応終了まで脱保護過程をHPLCでモニタリングし(r.t.は11.35分)、溶媒を減圧蒸留により除去して粗生成物を得た。粗生成物を逆相カラムで精製し、凍結乾燥して純粋な化合物10を61%の収率で得た。その構造の特徴を図8に示す。
【0046】
上記ステップの合成ルートは以下のとおりである。
【化12】
実施例2~6
【0047】
実施例2~6の化合物の構造は、式(II-2)~式(II-6)に示すとおりであり、それらの調製方法はすべて、実施例1を参照することができる。例えば、式(II-2)及び式(II-3)の調製において、実施例1における化合物6と反応するCOOH-PEG-COOHをCOOH-PEG-COOH、マロン酸又は他の適切な化合物に置き換えた。式(II-4)~式(II-6)の調製において、実施例1における化合物4と反応するNα-Fmoc-Nε-Boc-L-リジンをBocグリシンに置き換え、同時に、実施例1における化合物7と反応するPSMA-617をPSMA-617-(Fmoc)Lys-に置き換えることにより、対応する以下の構造を得た。
【化13】
式(II-2)
式(II-3)
式(II-4)
式(II-5)
又は
式(II-6)
【0048】
上記化合物II-3の構造の特徴を図9に示す。
実施例7~30:
【0049】
実施例1~6の調製方法を参照して、以下の式(I)で表される化合物を調製した。
【化14】
式(I)
【表1】
【0050】
実施例31:Lu-177標識複合体の調製
【0051】
湿式法:約18.5~1850MBqの177LuCl酢酸ナトリウム溶液をそれぞれ、実施例1の化合物10の酢酸-酢酸塩溶液(1.0g/L)0.5mLを含む遠心管に加え、90℃で20分間反応させた。C18分離カートリッジを取り、まず無水エタノール10mLでゆっくりとすすぎ、次に水10mLですすいだ。標識溶液を水10mLで希釈した後、分離カラムにロードし、まず水10mLで標識されていない177Luイオンを除去し、次に、10mM HClエタノール溶液0.3mLですすいで177Lu標識複合体を得た。溶出液を生理食塩水で希釈し、無菌濾過して177Lu標識複合体の注射液を得た。
【0052】
凍結乾燥法:約18.5~1850MBqの177LuCl酢酸ナトリウム溶液をそれぞれ、実施例1の化合物10を含む凍結乾燥キットに加え、均一に混合し、90℃で20分間反応させた。C18分離カートリッジを取り、まず無水エタノール10mLでゆっくりとすすぎ、次に水10mLですすいだ。標識溶液を水10mLで希釈した後、分離カラムにロードし、まず水10mLで標識されていない177Luイオンを除去し、次に、10mM HClエタノール溶液0.3mLですすいで177Lu標識複合体の溶出液を得た。溶出液を生理食塩水で希釈し、無菌濾過して177Lu標識複合体の注射液を得た。
【0053】
実施例:分析及び適用効果
【0054】
1、HPLC分析及び同定
【0055】
HPLCシステム:SHIMADZULC-20A、分析用のC18クロマトグラフィーカラム(YMC、3μm、4.6×150mm)。検出波長254nm、流速1mL/分、溶出勾配:0~3分:10%アセトニトリル0及び90%水(50mM酢酸アンモニウム)を維持した。3~16分:90%アセトニトリル及び10%水(50mM酢酸アンモニウム)に増加した。16~18分:90%アセトニトリル及び10%水(50mM酢酸アンモニウム)を維持した。18~20分:10%アセトニトリル及び90%水(50mM酢酸アンモニウム)に減らした。20~22分:10%アセトニトリル及び90%水(50mM酢酸アンモニウム)を維持した。
【0056】
実施例1の化合物5、化合物6、化合物7、化合物8、化合物9、及び化合物10を上記のシステムに従って同定及び分析した。同定分析結果をそれぞれ図10図11図12図13図14、及び図15に示す。
【0057】
以下、実施例31で調製した放射性標識プローブを実験用薬剤として使用し、それらの性能測定実験を以下のように説明する。
【0058】
2、前立腺癌マウス皮下移植腫瘍モデルにおける177Lu標識複合体の取り込み実験
【0059】
前立腺癌マウス皮下移植腫瘍モデルに実施例31の化合物又はPSMAを標的とする他の既存の放射性プローブを注射し、腫瘍への取り込み及び組織分布の結果を比較した。具体的な方法は以下のとおりである。
【0060】
前立腺癌マウス皮下移植腫瘍モデル(22RV1)を無作為に3つの群、即ち、実験群、対照群A、及び対照群Bに分け、各群に3匹のマウスを割り当てた。
【0061】
実施例31の方法に従って純度が95%を超える177Lu複合体を調製した。この複合体は、実施例1の化合物10を177Luで標識したものであり、本実験の実験群の薬物として使用し、薬物Bとした。
【0062】
従来の方法に従って純度が95%を超える177Lu-PSMA617を調製し、本実験の対照群Aの薬物として使用し、薬物Aとした。
【0063】
国際公開第2019/165200号における実施例8の方法に従って純度が95%を超える177Lu-EB-PSMA617を調製し、本実験の対照群Bの薬物として使用し、薬物Cとした。
【0064】
実験群、対照群A、及び対照群Bには、それぞれ5MBqの薬物B、薬物A、及び薬物Cを尾静脈から注射した。注射から24時間後、各群のマウスを屠殺し、解剖して腫瘍組織、血液又は他の組織を得て、重量を測定し、実験群、対照群A及び対照群Bのサンプルの放射能計数をγカウンタで測定した。測定データからバックグラウンドを差し引き、減衰時間を補正し、平均値を取った。データは、組織1グラムあたりの取り込み量が注射用量に占めるパーセント(%ID/g)として表し、結果を図1図3、及び図4に示す。
【0065】
図1から分かるように、本発明の実施例31の177Lu複合体(B)の腫瘍への取り込みは、注射後24時間で23.46±0.63%ID/gであり、対照群Aに注射された177Lu-PSMA617(A)の腫瘍への取り込み(7.60±1.22%ID/g)よりもはるかに高く、同時に、対照群Bに注射された177Lu-EB-PSMA617(C)の腫瘍への取り込み(48.97±7.77%ID/g)よりも低かった。
【0066】
図3及び図4はそれぞれ、実験群に本発明の実施例31の177Lu複合体(B)を注射し、対照群Bに177Lu-EB-PSMA617(C)を注射してから24時間後の主要組織の分布を示す。本発明の実施例31の177Lu複合体は、注射後24時間で腎取り込み(図3)が177Lu-EB-PSMA617群(図4)よりもはるかに低いことが観察された。
【0067】
3、正常マウスにおける177Lu標識複合体の実験
【0068】
正常マウスを無作為に実験群1、実験群2、対照群A、及び対照群Bに分け、各群に3匹のマウスを割り当てた。
【0069】
実施例31の方法に従って純度が95%を超える177Lu複合体を調製した。この複合体は、実施例1の化合物10を177Luで標識したものであり、本実験の実験群1の薬物として使用し、薬物Bとした。
【0070】
実施例31の方法を参照して、実施例2の化合物II-2を化合物10の代わりに使用して、177Lu標識化合物II-2を調製し、本実験の実験群2の薬物Dとした。
【0071】
従来の方法に従って純度が95%を超える177Lu-PSMA617を調製し、本実験の対照群Aの薬物として使用し、薬物Aとした。
【0072】
国際公開第2019/165200号における実施例8の方法に従って純度が95%を超える177Lu-EB-PSMA617を調製し、本実験の対照群Bの薬物として使用し、薬物Cとした。
【0073】
実験群1、実験群2、対照群A、及び対照群Bには、それぞれ5MBqの薬物B、薬物D、薬物A、及び薬物Cを尾静脈から注射した。注射から1時間、4時間、24時間後に血液取り込みをそれぞれ測定し、その結果を図2及び図7に示す。注射から1時間、4時間、24時間、48時間後にSPECT-CTイメージングをそれぞれ行い、その結果を図5及び図6に示す。
【0074】
図2からわかるように、すべての試験時点(1時間、4時間、及び24時間)において、本発明の実施例31の177Lu複合体(B)の血液取り込みは、177Lu-PSMA617(A)群よりも高かったが、177Lu-EB-PSMA617(C)群よりもはるかに低かった。図7図2の比較からわかるように、すべての試験時点(1時間、4時間、及び24時間)において、177Lu標識化合物II-2の血液取り込みは、177Lu-EB-PSMA617(C)群よりもはるかに低かった。
【0075】
図5及び図6はそれぞれ、実施例31の177Lu複合体及び177Lu標識化合物II-2を注射した正常マウスのSPECT-CT画像である。
【0076】
要約すると、既存のPSMAを標的とするプローブと比較して、本発明が提供する前立腺特異的膜抗原を標的とする化合物は、腫瘍への取り込みが高いだけでなく、より重要なことに、血液循環時間が適切であり、それにより、前立腺癌を治療する場合、本発明の前立腺特異的膜抗原を標的とする放射性核種標識化合物は、血液取り込み及び腫瘍への取り込みなどの点で治療ニーズを満たすことができるだけでなく、血液毒性及び骨髄抑制のリスクも大幅に低下し、臨床応用価値がより高く、前立腺癌の放射性核種治療及びイメージングへの応用が期待される。
【0077】
以上、本発明を一般的な説明、具体的な実施形態及び試験により詳細に説明したが、本発明に基づいていくつかの変更又は改善を行うことができることは当業者には明らかである。したがって、本発明の精神から逸脱しない範囲で行われたこれらの変更又は改善は、すべて本発明の保護範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15