(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】熱伝導シートおよびこれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240226BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020073747
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】白土 洋次
(72)【発明者】
【氏名】河村 典裕
(72)【発明者】
【氏名】飯室 善文
(72)【発明者】
【氏名】小西 彰仁
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283509(JP,A)
【文献】特開2013-197230(JP,A)
【文献】登録実用新案第3122382(JP,U)
【文献】国際公開第2017/159527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の主面を有するグラファイトシートと、このグラファイトシートの少なくとも一辺近傍に設けられた切り欠き部と、前記切り欠き部に設けられた取付シートを備えた熱伝導シートであって、前記取付シートは前記切り欠き部の一部および前記主面の一部を覆うものであり、前記グラファイトシートは初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えたときの厚みをT1とし、前記取付シートの厚みを(T0―T1)よりも薄くした熱伝導シート。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記グラファイトシートの一辺から内側に向かって設けられ、前記グラファイトシートの一辺から遠い領域の前記切り欠き部は、前記取付シートに覆われていない請求項1記載の熱伝導シート。
【請求項3】
前記取付シートは前記グラファイトシートの短辺に沿って設けられ、この短辺に交差する前記切り欠き部の2辺にまたがって設けられている請求項2記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記切り欠き部は、前記グラファイトシートの少なくとも一辺に複数個設けられている請求項1記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記切り欠き部は前記グラファイトシートの一辺近くに前記一辺から離れて設けられ、前記取付シートは前記切り欠き部の一部および前記切り欠き部周辺の一部を覆っている請求項1記載の熱伝導シート。
【請求項6】
前記切り欠き部および前記取付シートを、前記グラファイトシートの対向する2辺近傍に設けた請求項1記載の熱伝導シート。
【請求項7】
発熱部品と放熱部材とを備えた電子機器であって、前記発熱部品と前記放熱部材との間に請求項1記載の熱伝導シートを設け、前記グラファイトシートの前記切り欠き部で前記取付シートによって前記放熱部材または前記発熱部品に貼り付けられ、前記取付シートが設けられていない領域の前記グラファイトシートが圧縮された状態で前記発熱部品および前記放熱部材に当接されている電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品と放熱部品との間に設けられる熱伝導シートおよびこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器の高性能化に伴い、機器内部で発生する熱量が大きくなり、熱対策が重要となってきている。このため例えば発熱部品と放熱部品との間にシリコーングリスのようなサーマルインターフェイスマテリアル(以下TIMと記す)を設けて熱を速やかに伝導させることが行われている。しかしながらシリコーングリスを用いた場合、発熱部品および放熱部品が熱により膨張収縮を繰り返すと、いわゆるポンプアウトと呼ばれる次第にシリコーングリスが外部に排出される現象が生じ、熱伝導が劣化しやすくなっていた。そのためグラファイトシートのような熱伝導シートが用いられる場合がある。しかしながらグラファイトシートは滑りやすいため、正確な位置に配置することが難しいという課題がある。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して本発明は、位置決めが容易で、リペアしやすく、発熱部品および放熱部品の凹凸を吸収して熱抵抗を下げることができる熱伝導シートおよびこれを用いた電子機器を提供できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、矩形状の主面を有するグラファイトシートと、このグラファイトシートの少なくとも一辺近傍に設けられた切り欠き部と、切り欠き部に設けられた取付シートを備えた熱伝導シートであって、取付シートは切り欠き部の一部および前記主面の一部を覆うものであり、グラファイトシートは初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えたときの厚みをT1とし、取付シートの厚みを(T0―T1)よりも薄くしたものである。
【発明の効果】
【0007】
このようにすることにより、切り欠き部から露出した取付シートで固定することにより位置決めすることができ、熱伝導シートに圧力を加えた場合、取付シートよりもグラファイトシートの方が圧縮されやすいため、露出した部分のグラファイトシートを放熱部材および発熱部品に密着させることができ、安定した熱伝導性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態における熱伝導シートの上面図
【
図2】本発明の一実施の形態における別の熱伝導シートの上面図
【
図3】本発明の一実施の形態におけるさらに別の熱伝導シートの上面図
【
図4】本発明の一実施の形態におけるさらに別の熱伝導シートの上面図
【
図5】本発明の一実施の形態における熱伝導シートを用いた電子機器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態における熱伝導シートについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態における熱伝導シート11の上面図である。グラファイトシート12は、約120mm×60mmの長方形状の外形を有し、短辺側の一辺から内側に向かって幅(短辺側長さ)約15mm、長さ(内側に向かう長さ)約4mm矩形状の切り欠き部14が設けられている。またグラファイトシート12は厚さ約200μmの熱分解グラファイトシートを用いている。このグラファイトシート12は高い圧縮性を有するものを用いるのが望ましく、100kPaの圧力を加えた場合の圧縮率は約6%となっている。ここで圧縮率とは、初期厚みをT0、100kPaの圧力を加えた状態での厚さをT1として、(T0-T1)/T0の値をパーセント表示したものである。
【0011】
グラファイトシート12の主面には、切り欠き部14の一部およびグラファイトシート12の主面の一部を覆う取付シート13が設けられている。この取付シート13はグラファイトシート12の短辺に沿って設けられ、幅(内側に向かう長さ)を約3mmとし、この短辺に交差する切り欠き部14の2辺にまたがって設けられている。さらにこの短辺に対向する切り欠き部14の辺は覆わず、この辺と取付シート13との間には約1mmの空隙が設けられている。取付シート13の層厚は約10μmとなっている。
【0012】
取付シート13のグラファイトシート12と対向する面には粘着層(図示せず)が設けられ、グラファイトシート12の取付シート13を設けた面とは反対側の面から見たとき、切り欠き部14の部分で粘着層が露出している状態となっている。
【0013】
この熱伝導シート11を例えばヒートシンクのような放熱部材16に貼り合わせる。グラファイトシート12の切り欠き部14から粘着層が露出しているため、この粘着層により容易に正確な位置に配置することができる。次にグラファイトシート12に発熱部品15を所定の圧力を加えてグラファイトシート12を圧縮する。この時の圧力は、100~300kPa程度とすることが望ましい。取付シート13を含む領域を同時に圧縮しても、取付シート13の厚みを十分に薄くすることにより、取付シート13のない部分のグラファイトシート12にも十分に圧力が加わり、圧縮される。そのため放熱部材16および発熱部品15に凹凸があっても、露出した部分のグラファイトシート12を放熱部材16および発熱部品15に密着させることができ、熱抵抗を小さくすることができる。
【0014】
また取付シート13は、グラファイトシート12の短辺に沿って設けられ、この短辺に交差する切り欠き部14の2辺にまたがって設けられている。そのため取付シート13は両端がグラファイトシート12に固定されているため、薄くても安定した形状を保つことができ、容易に対象物に仮固定することができる。
【0015】
図1では、グラファイトシート12の一辺に切り欠き部14を1個設けているが、
図2のように距離を離して複数個設けても良い。このようにすることにより、回転方向へのずれを抑止することができ、より好ましい。
【0016】
さらに
図3のように、対向する2辺に設けても構わない。このようにすることにより回転方向へのずれを抑止することができ、より好ましい。
【0017】
また
図4のように、グラファイトシート12の対向する2辺から少し離れた位置に切り欠き部14を設け、この切り欠き部14の一部のみを覆うように、取付シート13を設け
ても構わない。この場合も、取付シート13は、この2辺から内側に設けるようにすることが望ましい。
【0018】
次に本発明の一実施の形態における熱伝導シートの製造方法について説明する。
【0019】
まず厚さ約75μmのポリイミドフィルムを熱分解して大判のグラファイトフィルムを得る。このグラファイトシートは厚さ約200μmで、100kPaの圧力を加えた場合の圧縮率は約6%となっている。このグラファイトシートの所定の位置を、大きさ約15mm×約8mmの矩形状に金型で打ち抜いて、切り欠き部となる部分を形成する。この切り欠き部の中心を通るように幅約6mm、厚さ約10μmの取付シートを貼り合わせる。切り欠き部の大きさを取付シートの幅よりも大きくすることにより、取付シートとグラファイトシートとの間に隙間を形成しることができる。この取付シートの中央を通るように金型でグラファイトシートと取付シートとを同時に打ち抜くことにより、複数枚の熱伝導シートを得ることができる。
【0020】
図5は、本実施の形態の熱伝導シート11を用いた電子機器の
図1の一点鎖線部分で切断した断面図である。放熱部材16にグラファイトシート12の切り欠き部14から露出している取付シート13により熱伝導シート11が貼り合わせられ、発熱部品15が約200kPaの圧力で熱伝導シート11に押し付けられて固定されている。この約200kPaの圧力によりグラファイトシート12は圧縮されながら、発熱部品15および放熱部材16の凹凸に併せて変形し、発熱部品15と放熱部材16との間の熱抵抗を小さくし、放熱効率を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る熱伝導シートは、精度よく位置決めをすることができ、熱抵抗の小さい熱伝導シートを得ることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0022】
11 熱伝導シート
12 グラファイトシート
13 取付シート
14 切り欠き部
15 発熱部品
16 放熱部材