(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】レンズ系、撮像装置及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
G02B 13/08 20060101AFI20240226BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20240226BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240226BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240226BHJP
G03B 37/00 20210101ALI20240226BHJP
【FI】
G02B13/08
G02B13/00
G02B13/18
G03B15/00 V
G03B15/00 W
G03B37/00 A
(21)【出願番号】P 2021551141
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2020023590
(87)【国際公開番号】W WO2021065091
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2019179904
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】庄林 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】松村 善夫
(72)【発明者】
【氏名】今岡 卓也
(72)【発明者】
【氏名】飯山 智子
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230033(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230034(WO,A1)
【文献】特開2010-085849(JP,A)
【文献】特開2007-163549(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0073577(US,A1)
【文献】特開2006-011093(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230035(WO,A1)
【文献】特開2016-148725(JP,A)
【文献】特開2010-276755(JP,A)
【文献】特開2007-004063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像面側に並んだ複数のレンズ素子と、
前記複数のレンズ素子の間に配置された絞りとを備え、
前記複数のレンズ素子は、互いに交差する第1方向と第2方向との間で非対称な自由曲面を有する複数の自由曲面レンズを含み、
前記絞りよりも像面側に、少なくとも1枚の自由曲面レンズが配置され、
前記絞りよりも物体側に、以下の条件式(1)を満たす少なくとも1枚の自由曲面レンズが配置され、
0.3<T1/T2<0.76 …(1)
ここで、
T1:軸上光線の最大高さにおける前記第1方向のレンズ厚み
T2:軸上光線の最大高さにおける前記第2方向のレンズ厚み
である、レンズ系。
【請求項2】
以下の条件式(2)を満たし、
2<AXRh/Y1<5 …(2)
ここで、
AXRh:軸上光線の最大高さ
Y1:前記第1方向の像高
である、請求項1に記載のレンズ系。
【請求項3】
前記複数の自由曲面レンズにおける最も物体側の自由曲面レンズが、物体側に、以下の条件式(3)を満たす自由曲面を有し、
0.005<(FSAG1-FSAG2)/AXRh<0.015 …(3)
ここで、
FSAG1:高さAXRhにおける前記第1方向のサグ量
FSAG2:高さAXRhにおける前記第2方向のサグ量
AXRh:軸上光線の最大高さ
である、請求項1又は2に記載のレンズ系。
【請求項4】
以下の条件式(4)を満たし、
1<(Y1/Y2)×|tanθ2/tanθ1|<4 …(4)
ここで、
Y1:前記第1方向の像高
Y2:前記第2方向の像高
θ1:前記第1方向の画角
θ2:前記第2方向の画角
である、請求項1~3のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項5】
以下の条件式(5)を満たし、
0.050<AXRh/OAL<0.350 …(5)
ここで、
AXRh:軸上光線の最大高さ
OAL:レンズ系の光学全長
である、請求項1~4のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項6】
以下の条件式(6)を満たし、
0.30<FFN/FBN<3.00 …(6)
ここで、
FFN:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの枚数
FBN:前記絞りよりも像面側の自由曲面レンズの枚数
である、請求項1~5のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項7】
前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(7)を満たし、
【数1】
ここで、
N:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
sag1
k:k番目の自由曲面の前記第1方向における高さがAXRhの40%の箇所のサグ量
sag2
k:k番目の自由曲面の前記第2方向における高さがAXRhの40%の箇所のサグ量
AXRh:軸上光線の最大高さ
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である、請求項1~6のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項8】
最も物体側の自由曲面レンズが、前記条件式(1)を満たす
請求項1~7のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項9】
前記絞りよりも像面側に配置された自由曲面レンズが、軸上光線の最大高さの50%の高さにおけるサグ量が、光軸の周りの位相方向において前記第1及び第2方向とは異なる位相方向に極値を持つ自由曲面を有する
請求項1~8のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項10】
前記複数のレンズ素子の枚数が、5枚以上である
請求項1~9のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項11】
前記絞りのF値が、2.8よりも小さい
請求項1~10のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項12】
前記複数の自由曲面レンズは、前記第1方向において正のパワーを有し、前記第2方向において負のパワーを有する自由曲面レンズを含む
請求項1~11のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項13】
前記第1方向と前記第2方向とは、互いに直交する
請求項1~12のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項14】
波長900nm以上の光を結像可能に構成された
請求項1~13のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項15】
前記複数の自由曲面レンズが有する自由曲面は、前記第1方向に対応する第1軸、及び、前記第2方向に対応する第2軸に関して線対称である、
請求項1~14のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項16】
前記複数のレンズ素子のうちの最も物体側にあるレンズ素子
又は物体側から2番目のレンズ素子が、前記条件式(1)を満たす自由曲面レンズである
請求項1~
15のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項17】
前記最も物体側にあるレンズ素子は、前記第1方向において正のパワーを有し、前記第2方向において負のパワーを有する
請求項
16に記載のレンズ系。
【請求項18】
前記複数のレンズ素子は、前記第1方向において前記第2方向よりも負のパワーが強いレンズ素子を含む
請求項1~
17のいずれか1項に記載のレンズ系。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれか1項に記載のレンズ系と、
前記レンズ系によって結像される像を撮像する撮像素子と
を備える撮像装置。
【請求項20】
前記撮像素子は、前記第1方向に対応する短辺と、前記第2方向に対応する長辺とを有する
請求項
19に記載の撮像装置。
【請求項21】
請求項
19又は
20に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の撮像素子によって撮像された画像に画像処理を実行する画像処理部と
を備える撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズ系、撮像装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、長方形の画像センサによりパノラマ画像を撮像する方法を開示している。特許文献1は、魚眼対物レンズに円環レンズを用いることにより、円形画像を矩形画像にしている。これにより、長方形の画像センサにおいて、矩形の撮像素子に矩形画像を結像させ、パノラマ画像を撮像することができる。
【0003】
特許文献2は、ズームレンズにアナモルフィック非球面を用いることにより、回転非対称に像を拡大する方法を開示している。
【0004】
特許文献3は、車載カメラ等に使用する場合に、不要な部分の写り込みが少ない超広角レンズを達成する手法を開示している。光軸に対して非対称なアナモルフィックレンズを用いることにより、不要な部分の写り込みがない超広角レンズを実現できる。
【0005】
特許文献4は、矩形の撮像素子の感光面の領域を有効に活用しながら、光軸付近の中央部の被写体を拡大して撮影する方法を開示している。特許文献4は、光軸に対して非対称の自由曲面を用いることにより、有効像円を円形から矩形にしている。これにより、矩形の撮像素子の感光面の領域を有効に活用しつつ、光軸付近の中央部の被写体を拡大して撮影することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2003/010599号
【文献】国際公開第2013/065391号
【文献】特開2010-276755号公報
【文献】国際公開第2018/230034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、像を一方向に拡大することができるレンズ系、撮像装置及び撮像システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るレンズ系は、物体側から像面側に並んだ複数のレンズ素子と、複数のレンズ素子の間に配置された絞りとを備える。複数のレンズ素子は、互いに交差する第1方向と第2方向との間で非対称な自由曲面を有する複数の自由曲面レンズを含む。絞りよりも像面側に、少なくとも1枚の自由曲面レンズが配置される。絞りよりも物体側に、以下の条件式(1)を満たす少なくとも1枚の自由曲面レンズが配置される。
T1/T2<0.8 …(1)
ここで、
T1:軸上光線の最大高さにおける第1方向のレンズ厚み
T2:軸上光線の最大高さにおける第2方向のレンズ厚み
である。
【0009】
本開示に係る撮像装置は、上記のレンズ系と、レンズ系によって結像される像を撮像する撮像素子とを備える。
【0010】
本開示に係る撮像システムは、上記の撮像装置と、画像処理部とを備える。画像処理部は、撮像装置の撮像素子によって撮像された画像に画像処理を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るレンズ系、撮像装置及び撮像システムによると、像を一方向に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態1に係る撮像システムの構成を示す図
【
図2】実施形態1における撮像システムのレンズ系の機能の一例を説明するための図
【
図3】実施例1に係るレンズ系の構成を示すレンズ配置図
【
図4】数値実施例1のレンズ系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図5】数値実施例1におけるレンズ系の面データを示す図
【
図6】数値実施例1におけるレンズ系の各種データを示す図
【
図7】数値実施例1のレンズ系における1番目の面の自由曲面データを示す図
【
図8】数値実施例1のレンズ系における2番目の面の非球面データを示す図
【
図9】数値実施例1のレンズ系における3番目の面の非球面データを示す図
【
図10】数値実施例1のレンズ系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図11】数値実施例1のレンズ系における13番目の面の非球面データを示す図
【
図12】数値実施例1のレンズ系における14番目の面の自由曲面データを示す図
【
図13】数値実施例1のレンズ系における15番目の面の自由曲面データを示す図
【
図14】数値実施例1のレンズ系における16番目の面の自由曲面データを示す図
【
図15】数値実施例1におけるレンズ系の諸収差を示す収差図
【
図16A】実施形態1のレンズ系における諸条件の充足性を示す図表
【
図16C】実施形態1の像拡大率と条件式(1A)の関係を示す図
【
図16D】実施形態1の像拡大率と条件式(1B)の関係を示す図
【
図17】レンズ系の諸条件において基準とする高さを説明するための光線図
【
図18】レンズ系の諸条件におけるサグ量を説明するための図
【
図19】数値実施例1のレンズ系における位相方向とサグ量との関係を例示する図
【
図20】実施例2に係るレンズ系の構成を示すレンズ配置図
【
図21】数値実施例2におけるレンズ系の面データを示す図
【
図22】数値実施例2におけるレンズ系の各種データを示す図
【
図23】数値実施例2のレンズ系における1番目の面の自由曲面データを示す図
【
図24】数値実施例2のレンズ系における2番目の面の非球面データを示す図
【
図25】数値実施例2のレンズ系における3番目の面の非球面データを示す図
【
図26】数値実施例2のレンズ系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図27】数値実施例2のレンズ系における13番目の面の非球面データを示す図
【
図28】数値実施例2のレンズ系における14番目の面の自由曲面データを示す図
【
図29】数値実施例2のレンズ系における15番目の面の自由曲面データを示す図
【
図30】数値実施例2のレンズ系における16番目の面の自由曲面データを示す図
【
図31】数値実施例2のレンズ系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図32】数値実施例2におけるレンズ系の諸収差を示す収差図
【
図33】数値実施例2のレンズ系における位相方向とサグ量との関係を例示する図
【
図34】実施例3に係るレンズ系の構成を示すレンズ配置図
【
図35】数値実施例3におけるレンズ系の面データを示す図
【
図36】数値実施例3におけるレンズ系の各種データを示す図
【
図37】数値実施例3のレンズ系における1番目の面の自由曲面データを示す図
【
図38】数値実施例3のレンズ系における2番目の面の自由曲面データを示す図
【
図39】数値実施例3のレンズ系における5番目の面の非球面データを示す図
【
図40】数値実施例3のレンズ系における10番目の面の非球面データを示す図
【
図41】数値実施例3のレンズ系における12番目の面の自由曲面データを示す図
【
図42】数値実施例3のレンズ系における13番目の面の自由曲面データを示す図
【
図43】数値実施例3のレンズ系における14番目の面の自由曲面データを示す図
【
図44】数値実施例3のレンズ系における15番目の面の自由曲面データを示す図
【
図45】数値実施例3のレンズ系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図46】数値実施例3におけるレンズ系の諸収差を示す収差図
【
図47】数値実施例3のレンズ系における位相方向とサグ量との関係を例示する図
【
図48】実施例4に係るレンズ系の構成を示すレンズ配置図
【
図49】数値実施例4におけるレンズ系の面データを示す図
【
図50】数値実施例4におけるレンズ系の各種データを示す図
【
図51】数値実施例4のレンズ系における1番目の面の自由曲面データを示す図
【
図52】数値実施例4のレンズ系における2番目の面の自由曲面データを示す図
【
図53】数値実施例4のレンズ系における3番目の面の自由曲面データを示す図
【
図54】数値実施例4のレンズ系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図55】数値実施例4のレンズ系における9番目の面の自由曲面データを示す図
【
図56】数値実施例4のレンズ系における10番目の面の自由曲面データを示す図
【
図57】数値実施例4のレンズ系における13番目の面の自由曲面データを示す図
【
図58】数値実施例4のレンズ系における14番目の面の自由曲面データを示す図
【
図59】数値実施例4のレンズ系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図60】数値実施例4におけるレンズ系の諸収差を示す収差図
【
図61】数値実施例4のレンズ系における位相方向とサグ量との関係を例示する図
【
図62】実施例5に係るレンズ系の構成を示すレンズ配置図
【
図63】数値実施例5におけるレンズ系の面データを示す図
【
図64】数値実施例5におけるレンズ系の各種データを示す図
【
図65】数値実施例5のレンズ系における3番目の面の自由曲面データを示す図
【
図66】数値実施例5のレンズ系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図67】数値実施例5のレンズ系における11番目の面の自由曲面データを示す図
【
図68】数値実施例5のレンズ系における12番目の面の自由曲面データを示す図
【
図69】数値実施例5のレンズ系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図70】数値実施例5におけるレンズ系の諸収差を示す収差図
【
図71】実施例6に係るレンズ系の構成を示すレンズ配置図
【
図72】数値実施例6におけるレンズ系の面データを示す図
【
図73】数値実施例6におけるレンズ系の各種データを示す図
【
図74】数値実施例6のレンズ系における3番目の面の自由曲面データを示す図
【
図75】数値実施例6のレンズ系における4番目の面の自由曲面データを示す図
【
図76】数値実施例6のレンズ系における11番目の面の自由曲面データを示す図
【
図77】数値実施例6のレンズ系における12番目の面の自由曲面データを示す図
【
図78】数値実施例6のレンズ系における画角と像点との関係を示す散布図
【
図79】数値実施例6におけるレンズ系の諸収差を示す収差図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、或いは実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0014】
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0015】
(実施形態1)
以下、本開示に係るレンズ系、撮像装置及び撮像システムの実施形態1を、図面を用いて説明する。
【0016】
1.撮像システムについて
本実施形態に係る撮像システムについて、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る撮像システム10の構成を示す図である。
【0017】
本実施形態に係る撮像システム10は、例えば
図1に示すように、撮像装置11と、画像処理部13とを備える。本実施形態の撮像システム10は、例えば車載カメラ又はTOFセンサ等に適用可能である。撮像システム10は、特に図示していないが、赤外光源および発光を制御する制御部などを更に含んでもよい。
【0018】
撮像装置11は、レンズ系ILと、撮像素子12とを備える。撮像装置11は、種々の物体を被写体とする画像を撮像する装置であり、例えば各種のカメラ或いは画像センサを構成する。画像処理部13は、カメラ等に組み込まれてもよい。撮像装置10は、例えば波長900nm以上の赤外領域の光に基づき撮像動作を行う。撮像装置10は、可視領域の光に基づく撮像機能を有してもよい。以下、撮像装置11におけるレンズ系ILの光軸d0の方向をZ方向とし、Z方向に直交する垂直方向をY方向とし、Z,Y方向に直交する水平方向をX方向とする。Y,X方向は、それぞれ本実施形態における第1及び第2方向の一例である。
【0019】
レンズ系ILは、撮像装置11の外部から入射する光を取り込んで、取り込んだ光によるイメージサークル等の像を結像する。レンズ系ILは、例えば赤外領域の光を透過する各種レンズ材料で構成される。各種レンズ材料は、例えばSi,Ga等を含む。レンズ系ILの詳細については後述する。以下、
図1に示すように、レンズ系ILにおける+Z側を像面側とし、-Z側を物体側とする。
【0020】
撮像素子12は、例えばCMOS又はCCDイメージセンサ素子である。撮像素子12は、複数の画素が等間隔で二次元的に配置された撮像面を有する。撮像素子12は、撮像装置11において撮像面がレンズ系ILの像面に位置するように配置される。撮像素子12は、レンズ系ILを介して撮像面に結像した像を撮像し、撮像画像を示す撮像データを生成する。撮像素子12は、Y方向に対応する短辺と、X方向に対応する長辺とを有し、矩形形状をしている。
【0021】
画像処理部13は、撮像素子12からの撮像データに基づいて、撮像装置11による撮像画像に所定の画像処理を行う。画像処理は、例えばガンマ補正および歪曲補正等である。画像処理部13は、例えばTOF方式の距離演算を行って、距離画像を示す画像データを生成してもよい。画像処理部13は、例えば内部メモリに格納されたプログラムを実行することで種々の機能を実現するCPU又はMPU等を含む。画像処理部13は、所望の機能を実現するように設計された専用のハードウェア回路を含んでもよい。画像処理部13は、CPU、MPU、GPU、DSP、FPGA又はASIC等を含んでもよい。
【0022】
以上のような本実施形態の撮像システム10は、例えば車載用途において、外部環境等を検知する用途に適用可能である。本実施形態のレンズ系ILは、例えばこうした検知用途の高精度化の観点から、撮像システム10において特定の一方向に像を拡大する機能を実現する。本実施形態のレンズ系ILの機能の一例を、
図2を用いて説明する。
【0023】
図2は、撮像システム10による検知範囲20と、レンズ系ILのイメージサークル21と、撮像素子12の撮像面22とを例示している。レンズ系ILは、外部の検知範囲20からの光を取り込んで、イメージサークル21により、撮像素子12の撮像面22に結像する。撮像システム10では、撮像面22上に結像された画像の撮像データに基づき、各種の検知が行われる。
【0024】
本例において、撮像面22は、短辺aと長辺bとによるアスペクト比a/bを有する。撮像素子12は、例えば短辺aがY方向に平行となり、長辺bがX方向に平行となるように配置される。本実施形態のレンズ系ILのイメージサークル21は、例えば円形状から楕円などに歪んだ形状を有する。イメージサークル21は、撮像面22の範囲に包含されない部分を有してもよい。
【0025】
図2に例示する検知範囲20は、撮像面22のアスペクト比a/bとは異なるアスペクト比a0/b0を有する。検知範囲20のアスペクト比a0/b0は、撮像システム10の適用用途における各種要求から設定される。上記のような検知用途は、撮像データに含める検知範囲20の情報量を増やすことによって、検知精度を高められる。
【0026】
そこで、本実施形態の撮像システム10は、レンズ系ILによって、検知範囲20のアスペクト比a0/b0から撮像面22のアスペクト比a/bに変換するように、二方向の内の一方向に拡大された像を結像する。
図2の例では、撮像素子12の短辺aの方向に像を拡大することにより、検知範囲20の画角を長辺bの範囲内に収めながら、短辺aの方向に高解像度化することができる。
【0027】
又、上記のような検知用途では、遠方の検知範囲20、及び夜間などの光量が少ない状況が考えられる。レンズ系ILには、望遠の画角を用いたり、絞り値を開放に近付けたりする場合がある。本実施形態では、こうした場合であっても、像の一方向拡大を実現できるレンズ系ILを提供する。以下、本実施形態のレンズ系ILの詳細について説明する。
【0028】
2.レンズ系について
本実施形態に係るレンズ系ILが具体的に実施される一例として、レンズ系ILの実施例1~6を以下説明する。
【0029】
2-1.実施例1
図3~15を用いて、実施例1に係るレンズ系IL1について説明する。
【0030】
図3は、実施例1に係るレンズ系IL1の構成を示すレンズ配置図である。以下の各レンズ配置図は、例えばレンズ系IL1の無限遠合焦状態において、各種レンズの配置を示す。
図3(a)は、本実施例のレンズ系IL1のYZ断面におけるレンズ配置図を示す。
図3(b)は、レンズ系IL1のXZ断面におけるレンズ配置図を示す。YZ断面及びXZ断面は、それぞれレンズ系IL1の光軸d0に沿った仮想的な断面である。又、レンズ系IL1が結像する像面Sを例示している。
【0031】
図3(a)において、記号「●」を付した曲面は、自由曲面であることを示す。自由曲面は、光軸d0に対して回転非対称な曲面である。又、記号「△」を付した曲面は、回転対称な非球面であることを示す。なお、
図3(b)では、各種符号を省略している。
【0032】
本実施形態のレンズ系ILは、例えば
図3(a),(b)に示すように、X方向とY方向との間で非対称な自由曲面を複数、有する。以下、物体側と像面側の少なくとも一方に自由曲面を有するレンズ素子を自由曲面レンズという。
【0033】
実施例1のレンズ系IL1は、第1~第8レンズ素子L1~L8と、絞りAとを備える。
図3(a)に示すように、レンズ系IL1においては第1~第8レンズ素子L1~L8が、物体側から像面側へ順番に、光軸d0に沿って並んでいる。絞りAは、開口絞りである。
【0034】
本実施例のレンズ系IL1において、最も物体側の第1レンズ素子L1は、例えば物体側に自由曲面を有する自由曲面レンズである。例えば第1レンズ素子L1の自由曲面は、
図3(a)に示すようにY方向において物体側に凸状であり、
図3(b)に示すようにX方向において像面側に凸状である。第1レンズ素子L1の像面側の面は、例えば像面側に凸状の非球面である。本実施例の第1レンズ素子L1は、Y方向において正のパワー(即ち屈折力)を有し、X方向において負のパワーを有する自由曲面レンズの一例である。
【0035】
第2レンズ素子L2は、例えば像面側に自由曲面を有する自由曲面レンズである。第2レンズ素子L2の自由曲面は、例えば負のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、X,Y方向において物体側に凸状である。第2レンズ素子L2の物体側の面は、例えば像面側に凸状の非球面である。
【0036】
第3レンズ素子L3は、例えば両凸状の球面レンズである。第4レンズ素子L4は、例えば、正メニスカス形状であり、物体側に凸状の球面レンズである。第4レンズ素子L4と第5レンズ素子L5との間には、絞りAが配置される。第5レンズ素子L5は、例えば、負メニスカス形状であって物体側に凸状の球面レンズであり、第6レンズ素子L6と接合する。第6レンズ素子L6は、例えば正メニスカス形状であって物体側に凸状の球面レンズである。
【0037】
第7レンズ素子L7は、例えば像面側に自由曲面を有する自由曲面レンズである。第7レンズ素子L7の自由曲面は、例えば負のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、X,Y方向において物体側に凸状である。第7レンズ素子L7の物体側の面は、例えば像面側に凸状の非球面である。
【0038】
第8レンズ素子L8は、例えば両側に自由曲面を有する自由曲面レンズである。第8レンズ素子L8の物体側の自由曲面は、例えば正のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、X,Y方向において物体側に凸状である。第8レンズ素子L8の像面側の自由曲面は、例えば負のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、X,Y方向において物体側に凸状である。
【0039】
以上のように構成されるレンズ系IL1は、絞りAよりも物体側に、2枚の自由曲面レンズである第1及び第2レンズ素子L1,L2を有し、絞りAよりも像面側に、2枚の自由曲面レンズである第7及び第8レンズ素子L7,L8を有する。こうした自由曲面レンズによる複数の自由曲面によって、外部からレンズ系IL1が取り込んだ光の光線を非対称に制御して、レンズ系IL1が結像する像を、Y方向等の特定の方向に拡大することができる。このようなレンズ系IL1の作用効果について、
図4を用いて説明する。
【0040】
図4は、本実施例のレンズ系IL1における画角と像点P1との関係を示す散布図である。
図4においては、レンズ系IL1の画角全体における所定の角度幅毎に、入射する光が像面上で結像する像点P1をプロットしている。当該角度幅は、5°に設定した。また、レンズ系IL1は、無限遠合焦状態に設定した。
【0041】
図4のプロットは、実施例1のレンズ系IL1を数値的に実施した数値実施例1に基づいている。レンズ系IL1の数値実施例1については後述する。
図4では、光軸d0の位置を原点とする像面のXY平面において、第1象限の像点P1を例示している。本実施例のレンズ系IL1は、X軸及びY軸に対して線対称であることから、第2~第4象限についても
図4と同様である。
【0042】
図4によると、本実施例のレンズ系IL1では、上記の角度幅毎の像点P1において、Y軸に沿った像点P1間の間隔が、X軸に沿った像点P1間の間隔よりも拡がっている。このことから、本実施例のレンズ系IL1は、Y方向において拡大された像を結像することができる。こうした像の拡大によると、撮像素子12の撮像面上の画素が、X方向よりもY方向に沿って多く割り当てられることとなる。よって、本実施形態の撮像装置11は、Y方向において高解像度の撮像画像を撮像することができる。
【0043】
以上のような実施例1のレンズ系IL1に対応する数値実施例1について、
図5~15を参照して説明する。
【0044】
図5は、数値実施例1におけるレンズ系IL1の面データを示す図である。
図5の面データは、レンズ系IL1において物体側から順番に並ぶ各面s1~s15について、各々の面のタイプと、mm単位の曲率半径r及び面間隔dと、d線に対する各レンズ素子の屈折率nd及びアッベ数vdとを示している。面のタイプは、球面と、非球面と、自由曲面の一例としてのXY多項式面とを含む。面のタイプは、自由曲面の別例としてアナモルフィック非球面を含んでもよい。
【0045】
図6は、数値実施例1におけるレンズ系IL1の各種データを示す図である。
図6の各種データは、本数値実施例のFナンバーと、垂直半画角と、水平半画角と、垂直半画角における水平像高と、水平半画角における水平像高とを示している。各種像高の単位は「mm」であり、各半画角の単位は「°」である。
【0046】
図7は、数値実施例1のレンズ系IL1における1番目の面s1の自由曲面データを示す図である。
図7の自由曲面データは、第1レンズ素子L1の物体側の面について、自由曲面としてのXY多項式面を規定するXY多項式の各種係数を示す。XY多項式は、次式(E1)のように表される。
【0047】
【0048】
上式(E1)において、cは頂点曲率であり、kはコーニック定数であり、cjは係数である。上式(E1)の右辺第2項において、例えばjは2以上66以下の整数であり、各jについての総和が取られる。上式(E1)によると、アナモルフィック非球面の規則性よりも自由に、対象とする面上の(x,y)座標の位置におけるサグ量zが規定される。こうしたXY多項式面によると、自由曲面の形状自由度を高められ、例えば撮像面22上の被写体像を拡大する効果、及び諸収差の補正効果を向上できる。
【0049】
図8は、数値実施例1のレンズ系IL1における2番目の面s2の非球面データを示す図である。
図8の非球面データは、第1レンズ素子L1の像面側の面について、非球面の形状を規定する次式(E2)の各種係数を示す。
【0050】
【0051】
上式(E2)において、hは径方向の高さであり、Kはコーニック定数であり、Anはn次の非球面係数である。上式(E2)の右辺第2項において、例えばnは4以上20以下の偶数であり、各nについての総和が取られる。上式(E2)によると、対象とする面上の径方向の高さhにおけるサグ量zが、回転対称に規定される。
【0052】
図9は、数値実施例1のレンズ系IL1における3番目の面s3の非球面データを示す図である。
図9の非球面データは、第2レンズ素子L2の物体側の面について、
図8と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0053】
図10は、数値実施例1のレンズ系IL1における4番目の面s4の自由曲面データを示す図である。
図10の自由曲面データは、第2レンズ素子L2の像面側の面について、
図7と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0054】
図11は、数値実施例1のレンズ系IL1における13番目の面s13の非球面データを示す図である。
図11の非球面データは、第7レンズ素子L7の物体側の面について、
図8と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0055】
図12は、数値実施例1のレンズ系IL1における14番目の面s14の自由曲面データを示す図である。
図12の自由曲面データは、第7レンズ素子L7の像面側の面について、
図7と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0056】
図13,14は、それぞれ数値実施例1のレンズ系IL1における15,16番目の面s15,s16の自由曲面データを示す図である。
図13,14の自由曲面データは、それぞれ第8レンズ素子L8の物体側及び像面側の面について、
図7と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0057】
図15は、本実施例におけるレンズ系IL1の諸収差を示す収差図である。以下の各収差図は、無限遠合焦状態における各種の縦収差を例示する。
図15(a)は、レンズ系IL1における球面収差「SA」を示す。
図15(b),(c),(d)は、それぞれY方向における非点収差「AST-V」、対角方向における非点収差「AST-D」、及びX方向における非点収差「AST-H」を示す。
【0058】
図15(a)~(d)の横軸は、それぞれmm単位で表される。
図15(a)の縦軸は、瞳高さを基準としている。
図15(a)では、波長940nmの近赤外光に対する球面収差の特性曲線を示している。また、
図15(b)~(d)の縦軸は、半画角を基準としている。
図15(b)~(d)では、それぞれX方向又はY方向と光軸D1とに沿ったXZ断面又はYZ断面に関する非点収差の特性曲線を示している。
【0059】
なお、本実施形態では、例えば
図7,10,12~14に示すように、各自由曲面においてx及びyの偶数項のみを使用している。このことから、対角方向の収差「AST-D」等は、第1~第4象限のいずれにおいても同じになる。
【0060】
2-2.諸条件について
以上のレンズ系IL1の数値実施例1を用いて、本実施形態に係るレンズ系ILが満たす各種条件について、
図16A~19を参照して説明する。
【0061】
図16Aは、本実施形態のレンズ系ILにおける諸条件の充足性を示す図表である。
図16Aに示す図表は、本実施形態のレンズ系ILが、各数値実施例1~6においてそれぞれ下記の条件(1A)~(7)を満たすことを示している。
図16Bは、
図16Aの比較例を示す図表である。
図16Bでは、比較例として特許文献2の各実施例についての計算結果を示している。
【0062】
2-2-1.条件(1A)について
条件(1A)は、絞りAよりも物体側の少なくとも一枚の自由曲面レンズが、以下の条件式(1A)を満たすことである。
T1/T2<0.8 …(1A)
【0063】
ここで、T1は、対象とする自由曲面レンズの第1方向における基準の高さ(即ち光軸d0からの距離)の箇所のレンズ厚みである。T2は、同自由曲面レンズの第2方向における上記と同じ基準の高さの箇所のレンズ厚みである。条件(1A)の基準の高さとしては、レンズ系ILにおいて軸上光線が最大となる高さが採用される。軸上光線の最大高さについて、
図17を用いて説明する。
【0064】
図17(a),(b)では、それぞれ
図3(a),(b)と同様のレンズ配置において、レンズ系IL1における軸上光線AXの光束を例示している。軸上光線AXは、物体側(-Z側)から光軸d0に平行な光線としてレンズ系IL1に入射し、レンズ間で光束の径を変化させながらレンズ系IL1を通過すると、像面Sの中心に集光する。
【0065】
軸上光線AXの高さは、
図17(a),(b)に示すようにレンズ系IL1における位置および方向に応じて変化する。本例では、軸上光線AXは、
図17(a)に示すように、Y方向(第1方向の一例)における第1レンズ素子L1の-Z側の面において、最大高さAXRhとなっている。
【0066】
軸上光線AXの最大高さAXRhは、絞りAのF値が小さいほど、即ち光学系が明るいほど高くなる。明るい光学系では、取り込む光束が太くなることから、光学設計の難度が上がってしまう。このため、所望の性能を得るためにはレンズ枚数を増やしたり光学系を大型化したりしなければならない事態が考えられる。
【0067】
これに対して、条件(1A)によると、明るい光学系で高くなる軸上光線の最大高さAXRhにおいて自由曲面レンズのレンズ厚みT1,T2を偏在させることで、明るい光学系であっても第1及び第2方向の内の一方に像を拡大させる性能を得ることができる。
【0068】
また、像を一方向に拡大させる割合である像拡大率Mは、第1方向と第2方向の像高と画角によって決まり、次式(α)のように表される。
M=(Y1/Y2)×(θ2/θ1) …(α)
【0069】
上式(α)において、θ1は第1方向の画角であり、θ2は第2方向の画角であり、Y1,Y2はそれぞれ第1及び第2方向の像高である。各々の画角θ1,θ2は、例えば半画角である。
図16Cに、像拡大率Mと条件式(1A)の関係を例示する。
図16Cの縦軸は像拡大率であり、横軸は条件式(1A)左辺の算出値である。ここで、「●」は本件の実施例において算出された数値を示し、「◇」は特許文献2の実施例における数値を示している。
図16Cによると、条件式(1A)の算出値が「0.8」前後で像拡大率Mに断続的な変化が生じており、条件(1A)を満たすことで像拡大の効果が得やすいことが明確である。
【0070】
以上の条件(1A)に関して、例えば次式(1Aa)のように下限値が設けられてもよい。
0.1<T1/T2<0.8 …(1Aa)
【0071】
上式(1Aa)の下限値を下回ると、第1方向のレンズ厚みT1と第2方向のレンズ厚みT2との差が大きくなり過ぎて、製造が困難になることが考えられる。さらに、いわゆるアス、即ち軸上においてメリディオナル方向とサジタル方向のピント位置のズレが許容できなくなる。条件(1A)の上限値を上回ると、像を拡大させる作用が低減されてしまう、或いは暗い光学系になってしまう。または、像を拡大させる作用と共に光学系の明るさを維持する場合、自由曲面レンズの屈折率を上げる必要がある。そうすると、像面湾曲或いは非点収差の発生が許容できなくなる。
【0072】
すなわち、条件(1Aa)によると、明るい光学系であっても、製造の困難化を回避しながら像を一方向に拡大することができる。こうした効果は、レンズ系ILが次式(1Ab)を満たす場合に更に顕著に得られる。
0.3<T1/T2<0.76 …(1Ab)
【0073】
数値実施例1のレンズ系IL1においては、第1方向をY方向とし、第2方向をX方向として、最も物体側にある第1レンズ素子L1が条件(1A)等を満たす。これにより、第2方向に対して第1方向に像を拡大させ易く、解像度を向上し易い。
【0074】
また、数値実施例1のレンズ系IL1においては、第2レンズ素子L2が、上記と逆に第1方向をX方向とし、第2方向をY方向とした場合の条件(1A)等を満たす。この場合は、方向を逆転させる代わりに各式(1A)~(1Ab)の逆数を取った式で表すこともできる。
【0075】
2-2-2.条件(1B)について
なお、本実施形態のレンズ系ILは、明るい光学系でなくてもよい。本実施形態のレンズ系ILは、これに代えて又は加えて、望遠の光学系であってもよい。
【0076】
条件(1B)は、レンズ系ILにおける絞りAよりも物体側の全ての自由曲面レンズの自由曲面が、総合的に下記の条件式(1B)を満たすことである。
【0077】
【0078】
上式(1B)において、Y2は第2方向の像高である。Θ1は第1方向の全画角である。Nは絞りAよりも物体側(即ち-Z側)にある自由曲面の総数である。kは絞りAよりも-Z側における各自由曲面を指定する番号であり、1~Nの整数である。以下、番号kは、総数Nの自由曲面における最も-Z側をk=1として、像面側(即ち+Z側)へ昇順に設定されることとする。
【0079】
上式(1B)右辺の分子は、絞りAよりも-Z側の自由曲面レンズの各自由曲面についての、下記のSG1k及びSG2k間の差分(SG1k-SG2k)の総和の絶対値である。
SG1k=SAG1k×Δndk
SG2k=SAG2k×Δndk
【0080】
ここで、SAG1kは、k番目の自由曲面における第1方向において基準とする高さの箇所のサグ量であり、当該自由曲面における短辺側のサグ量の代表的な値を示す。条件(1B)の基準とする高さは「0.4×Y1」であり、即ち第1方向の像高Y1の40%である。SAG2kは、k番目の自由曲面における長辺側のサグ量の代表値であって、第2方向における高さ0.4×Y1の箇所のサグ量である。Δndkは、k番目の自由曲面よりも+Z側における屈折率から-Z側における屈折率を差し引いた差分である。
【0081】
SG1
kは、k番目の自由曲面の第1方向のサグ量SAG1
kに応じたレンズのYZ断面におけるパワーの傾向を示す。SG2
kは、同面の第2方向のサグ量SAG2
kに応じたXZ断面におけるパワーの傾向を示す。SG1
k,SG2
kについて、
図18を用いて説明する。
【0082】
図18は、-Z側にk番目の自由曲面を有し、+Z側に(k+1)番目の自由曲面を有するレンズ素子LkのYZ断面を例示する。
図18では、レンズ素子Lkが全体的に両凸形状であって、両面において正のパワーを生じさせる場合を例示している。この場合、レンズ素子Lkの-Z側の面のサグ量SAG1
kは、
図18に示すように正である。また、同面の+Z側の屈折率はレンズ素子Lkの材料に基づく屈折率nkであり、-Z側の屈折率は空気等に基づく屈折率n0である。よって、同面の±Z側の屈折率nk,n0間の差分Δnd
kは正になり、SG1
k=SAG1
k×Δnd
k>0となる。
【0083】
また、レンズ素子Lkの+Z側の面のサグ量SAG1
k+1は、
図18に示すように負になる。これとともに、同面の±Z側の屈折率n0,nk間の差分Δnd
k+1も、Δnd
kから符号が反転して、負になる。よって、SG1
k+1=SAG1
k+1×Δnd
k+1>0となる。
【0084】
以上のように、SG1kの正負は、対応する自由曲面がレンズ素子Lkの+Z側であるか-Z側であるかに拘わらず、YZ断面におけるパワーの正負に対応している。XZ断面に関するSG2kの正負についても同様である。
【0085】
ここで、自由曲面においては、第1方向のサグ量SAG1kと第2方向のサグ量SAG2kとの違いに応じて、SG1kとSG2k間の差分が生じる。差分(SG1k-SG2k)が負の場合、対応する自由曲面は、レンズ素子LkのXZ断面よりもYZ断面において、即ち第2方向よりも第1方向においてパワーを負に強める傾向を有する。
【0086】
以上より、条件(1B)が満たされると、レンズ系ILの絞りAよりも-Z側の自由曲面が総合的に、第1及び第2方向のうちの一方においてパワーを強めることとなる。よって、条件(1B)により、レンズ系ILにおいて一方向に拡大された像を得ることができる。
【0087】
さらに、条件(1B)は、上記のような差分(SG1k-SG2k)の総和を第2方向の像高Y2で規格化すると共に、第1方向の全画角Θ1を導入して、全画角Θ1が比較的小さい望遠の光学系を意図している。望遠の光学系では、光線の高さが上がり過ぎないような制御を要し、光学設計の難度が上がってしまう。このため、所望の性能を得るためにはレンズ枚数の増加及び光学系の大型化を招くといった事態が考えられる。これに対して、条件(1B)によると、望遠の光学系であっても像を一方向に拡大させる性能を得ることができる。
【0088】
また、
図16Dに、像拡大率Mと条件式(1B)の関係を例示する。
図16Dの縦軸は像拡大率Mであり、横軸は条件式(1B)左辺の算出値である。ここで、「●」は本件の実施例において算出された数値を示し、「◇」は特許文献2の実施例における数値を示している。
図16Dによると、条件式(1B)の算出値が「0.0075」前後で像拡大率Mに断続的な変化が生じており、条件(1B)を満たすことで像拡大の効果が得やすいことが明確である。
【0089】
以上の条件(1B)に関して、例えば次式(1Ba)のように上限値が設けられてもよい。
【0090】
【0091】
上式(1Ba)の上限値を上回ると、製造の困難化が考えられる。この場合においても、上述したいわゆるアスが許容できなくなる。又、条件(1B)の下限値を下回ると、像を拡大させる作用の低減されてしまう、或いは広角化を招く。または、像を拡大させる作用と共に光学系の画角を維持する場合、絞りよりも像面側の自由曲面レンズで像を拡大させる必要がある。そうすると、像面湾曲或いは非点収差の発生を許容できなくなる。
【0092】
すなわち、条件(1Ba)によると、望遠の光学系であっても、製造の困難化を回避しながら像を一方向に拡大することができる。こうした効果は、レンズ系ILが次式(1Bb)を満たす場合に更に顕著に得られる。
【0093】
【0094】
2-2-3.条件(2)~(7)について
条件(2)は、第1方向における像高Y1及び軸上光線AXの最大高さAXRhに基づく以下の条件式(2)によって規定される。
2<AXRh/Y1<5 …(2)
【0095】
上記の条件(2)の下限値を下回ると、レンズ系ILが暗い光学系になってしまい、例えば上述した検知用途に適さないほど光量が不足する。または、像高Y1が高くなり過ぎ、非点収差或いは像面湾曲の発生を許容できなくなる。一方、条件式(2)の上限値を上回ると、光線高さが高くなり過ぎ、球面収差及びコマ収差が補正し難くなる。条件(2)によると、レンズ系ILにおける光量を確保しながら収差を補正可能にすることができる。こうした効果は、次式(2a)を満たす場合に更に顕著に得られる。
2.5<AXRh/Y1<4 …(2a)
【0096】
条件(3)は、レンズ系ILの絞りAよりも物体側において最も物体側の自由曲面レンズが、物体側の面に、以下の条件式(3)を満たす自由曲面を有することである。
0.005<(FSAG1-FSAG2)/AXRh<0.015 …(3)
【0097】
上式(3)において、FSAG1は、第1方向における軸上光線AXの高さAXRhの箇所のサグ量である。FSAG2は、第2方向における軸上光線AXの高さAXRhの箇所のサグ量である。
【0098】
上記の条件(3)の下限値を下回ると、第1方向と第2方向間で性能差が小さくなり、一方向に像を拡大させる作用が低減されてしまう。あるいは、軸上光線AXの高さAXRhが高くなり過ぎることで、球面収差或いはコマ収差の発生が許容できなくなる。条件(3)の上限値を上回ると、レンズ系ILが暗い光学系になってしまい、例えば上述した検知用途に適さないほど光量が不足する。または、上述したいわゆるアスが許容できなくなる。
【0099】
条件(3)によると、レンズ系ILにおける光量を確保しながら一方向に像を拡大することができる。こうした効果は、次式(3a)を満たす場合に更に顕著に得られる。
0.009<(FSAG1-FSAG2)/AXRh<0.0014 …(3a)
【0100】
条件(4)は、第1方向の像高Y1及び前記第2方向の像高Y2に基づく以下の条件式(4)によって規定される。
1<(Y1/Y2)×|tanθ2/tanθ1|<4 …(4)
【0101】
上式(4)において、θ1は第1方向の画角であり、θ2は第2方向の画角である。各々の画角θ1,θ2は、例えば半画角である。
【0102】
上記の条件(4)の下限値を下回ると、第1方向と第2方向間で性能差が小さくなり、二方向の内の一方向に像を拡大させる作用が低減されてしまう。または、像を拡大させる作用を維持する場合、自由曲面レンズの屈折率を高める必要がある。そうすると、像面湾曲或いは非点収差の発生を許容できなくなる。条件(4)の上限値を上回ると、残る一方向で像が縮小してしまい、解像度の低下を招く。あるいは、解像度を維持しようとすると、球面収差の発生を許容できなくなる。
【0103】
条件(4)によると、解像度の低下を回避しつつ一方向に像を拡大することができる。こうした効果は、次式(4a)を満たす場合に更に顕著に得られる。
2<(Y1/Y2)×|tanθ2/tanθ1|<3.5 …(4a)
【0104】
条件(5)は、レンズ系ILの軸上光線AXの最大高さAXRhに基づく以下の条件式(5)によって規定される。
0.050<AXRh/OAL<0.350 …(5)
【0105】
上式(5)において、OALはレンズ系ILの光学全長である。
【0106】
上記の条件(5)の下限値を下回ると、レンズ系ILが暗い光学系になってしまい、例えば上述した検知用途に適さないほど光量が不足する。あるいは、光学全長が長くなり過ぎ、像面湾曲の発生を許容できなくなる。条件(5)の上限値を上回ると、光線高さが高くなり過ぎ、球面収差及びコマ収差が補正し難くなる。条件(5)によると、レンズ系ILにおける光量を確保しながら収差を補正可能にすることができる。こうした効果は、次式(5a)を満たす場合に更に顕著に得られる。
0.100<AXRh/OAL<0.250 …(5a)
【0107】
条件(6)は、以下の条件式(6)によって規定される。
0.30<FFN/FBN<3.00 …(6)
【0108】
上式(6)において、FFNは、レンズ系ILにおいて絞りAよりも物体側の自由曲面レンズの枚数である。FBNは、絞りAよりも像面側の自由曲面レンズの枚数である。
【0109】
上記の条件(6)の下限値を下回ると、絞りA後に自由曲面が多くなることから、一方向拡大の作用を得るためにはレンズ外径を大きくすることとなり、サイズ及びコストの増加を招いてしまう。さらに、像面湾曲或いは非点収差の発生を許容できなくなる。条件(6)の上限値を上回ると、レンズ系ILにおける諸収差、特に球面収差の補正が困難となる。条件(6)によると、サイズ及びコストの増加を回避しながら、諸収差を補正可能にすることができる。こうした効果は、次式(6a)を満たす場合に更に顕著に得られる。
0.50<FFN/FBN<1.00 …(6a)
【0110】
条件(7)は、条件(1B)と同様に絞りAよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づき、以下の条件式(7)により規定される。
【0111】
【0112】
上式(7)の総和は、条件式(1B)と同様の範囲で計算される。sag1kは、k番目の自由曲面の第1方向における高さがAXRhの40%の箇所のサグ量である。sag2kは、k番目の自由曲面の第2方向における高さがAXRhの40%の箇所のサグ量である。
【0113】
上記の条件(7)の下限値を下回ると、第1方向と第2方向間で性能差が小さくなり、一方向に像を拡大させる作用が低減されてしまう。或いは、光線高さが高くなり過ぎ、球面収差及びコマ収差が補正し難くなる。条件(7)の上限値を上回ると、レンズ系ILが暗い光学系になってしまい、例えば上述した検知用途に適さないほど光量が不足する。または、像面湾曲或いは非点収差の発生を許容できなくなる。条件(7)によると、レンズ系ILにおける光量を確保し、収差の補正を可能にしながら、一方向に像を拡大することができる。こうした効果は、次式(7a)を満たす場合に更に顕著に得られる。
【0114】
【0115】
2-2-4.更なる条件について
本実施形態のレンズ系ILは、以上の諸条件に加えて又はこれに代えて、以下の条件を満たしてもよい。
【0116】
本実施形態のレンズ系ILは、絞りAよりも像面側に配置された自由曲面レンズが、所定の基準高さにおけるサグ量が第1及び第2方向とは異なる位相方向に極値を持つ自由曲面を有してもよい。
図19に、数値実施例1のレンズ系IL1における位相方向とサグ量との関係を例示する。
【0117】
図19では、数値実施例1のレンズ系IL1における第8レンズ素子L8の像面側の自由曲面のサグ量のグラフG1を例示している。
図19のグラフG1において、縦軸は、軸上光線AXの最大高さAXRhの50%を基準の高さとするサグ量を示す。横軸は光軸d0の周りの位相方向を「deg」で示し、0deg及び90degが第1及び第2方向に対応する。グラフG1によると、この自由曲面は、第1及び第2方向以外の位相方向において、極値を有している。こうした形状の自由度が高い自由曲面により、第1方向と第2方向との間でも拡大効果を得やすく、収差補正の効果も向上する。
【0118】
本実施形態のレンズ系ILは、レンズ素子の枚数が、5枚以上であってもよい。これにより、収差補正を適切に行え、良好な結像性能を得られる。また、本実施形態のレンズ系ILは、絞りAのF値が、2.8よりも小さくてもよい。これにより、明るい光学系が得られ、上述した検知用途の性能を向上できる。また、本実施形態のレンズ系ILは、波長900nm以上の光を結像可能に構成されてもよい。これにより、特に夜間など、人間の眼に対する影響を回避しながら検知性能を確保できる。
【0119】
本実施形態では、レンズ系ILにおいて互いに交差する第1方向と第2方向とが、直交してもよい。これにより、例えば撮像素子12など矩形のセンサを活用し易い。また、第1方向は撮像素子12の短辺あるいは垂直方向に対応し、第2方向は撮像素子12の長辺あるいは水平方向に対応してもよい。これにより、垂直方向において不要な撮影エリアを除き、中央部分を縦に拡大することが求められるような適用用途にも利用し易い。
【0120】
本実施形態に係るレンズ系ILは、上述した実施例1のレンズ系IL1に限らず様々な形態で実施可能である。以下、レンズ系ILの実施例2~6について説明する。
【0121】
2-3.実施例2
図20~33を用いて、実施例2のレンズ系IL2について説明する。
【0122】
図20は、実施例2に係るレンズ系IL2の構成を示す。
図20(a),(b)は、それぞれ
図3(a),(b)と同様に、レンズ系IL2のレンズ配置図を示す。
【0123】
実施例2のレンズ系IL2は、実施例1と同様の構成から、各種レンズ素子L1~L8の形状等を変更している。本実施例のレンズ系IL2における自由曲面レンズは、実施例1と同様に、絞りAよりも物体側の2枚と、絞りAよりも像面側の2枚とである。実施例2のレンズ系IL2に対応する数値実施例を、
図21~30に示す。
【0124】
図21は、数値実施例2におけるレンズ系IL2の面データを示す図である。
図22は、本実施例におけるレンズ系IL2の各種データを示す図である。
図21,22は、それぞれ数値実施例1の
図5,6と同様に各データを示す。
【0125】
図23は、本実施例のレンズ系IL2における1番目の面s1の自由曲面データを示す図である。この自由曲面データは、第1レンズ素子L1の物体側の面について、数値実施例1と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0126】
図24,25は、本実施例のレンズ系IL2における2,3番目の面s2,s3の非球面データを示す図である。各非球面データは、それぞれ第1レンズ素子L1の像面側の面と、第2レンズ素子L2の物体側の面について、数値実施例1と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0127】
図26は、本実施例のレンズ系IL2における4番目の面s4の自由曲面データを示す図である。
図26の自由曲面データは、第2レンズ素子L2の像面側の面について、数値実施例1と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0128】
図27は、本実施例のレンズ系IL2における13番目の面s13の非球面データを示す図である。この非球面データは、第7レンズ素子L7の物体側の面について、数値実施例1と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0129】
図28~30は、本実施例のレンズ系IL2における14~16番目の面s14~s16の自由曲面データを示す図である。各自由曲面データは、それぞれ第7レンズ素子L7の像面側の面と、第8レンズ素子L8の両面について、数値実施例1と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0130】
以上の数値実施例2に基づいて、
図31に、本実施例のレンズ系IL2における画角と像点P2との関係を示す。また、
図32は、本実施例におけるレンズ系IL2の諸収差を示す。
図32(a),(b),(c),(d)は、それぞれ
図15(a)~(d)と同様に、本実施例におけるレンズ系IL2の各収差図を示している。
【0131】
図33は、数値実施例2のレンズ系IL2における位相方向とサグ量との関係を例示する。
図33は、数値実施例2のレンズ系IL2における第8レンズ素子L8の像面側の自由曲面のサグ量のグラフG2を、
図19と同様に示す。本実施例のレンズ系IL2によっても、実施例1と同様に、像を一方向に拡大することができる。
【0132】
2-4.実施例3
実施例3では、絞りAよりも物体側における自由曲面レンズが1枚であるレンズ系ILの一例を説明する。
図34~47を用いて、実施例3のレンズ系IL3について説明する。
【0133】
図34は、実施例3に係るレンズ系IL3の構成を示す。
図34(a),(b)は、それぞれ
図3(a),(b)と同様に、レンズ系IL3のレンズ配置図を示す。
【0134】
実施例3のレンズ系IL3は、実施例1と同様に順番に配置された第1~第8レンズ素子L1~L8と、第5及び第6レンズ素子L5,L6間に配置された絞りAとを備える。本実施例のレンズ系IL3において、絞りAよりも物体側の自由曲面レンズは第1レンズ素子L1であり、絞りAよりも像面側の自由曲面レンズは第7及び第8レンズ素子L7,L8である。
【0135】
本実施例において、第1レンズ素子L1は両側に自由曲面を有する。物体側の自由曲面は、Y方向において物体側に凸状であり、X方向において像面側に凸状である。像面側の自由曲面は、例えば負のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、X,Y方向において物体側に凸状である。
【0136】
第2レンズ素子L2は、両凹状の球面レンズであり、第3レンズ素子L3と接合する。第3レンズ素子L3は、両凸状であって、物体側に球面を有し、像面側に非球面を有する。第4レンズ素子L4は、両凸状の球面レンズであり、第5レンズ素子L5と接合する。第5レンズ素子L5は、両凹状の球面レンズである。第6レンズ素子L6は、物体側に凸状の負メニスカス形状であって、物体側に非球面を有し、像面側に球面を有する。
【0137】
第7レンズ素子L7は、例えば両側に自由曲面を有する。物体側の自由曲面は、例えば負のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、X,Y方向において像面側に凸状である。像面側の自由曲面は、Y方向において物体側に凸状であり、X方向において像面側に凸状である。
【0138】
第8レンズ素子L8は、例えば両側に自由曲面を有する。物体側の自由曲面は、例えば正のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、X,Y方向において物体側に凸状である。像面側の自由曲面は、例えば負のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、X,Y方向において物体側に凸状である。
【0139】
実施例3のレンズ系IL3に対応する数値実施例を、
図35~44に示す。
図35は、数値実施例3におけるレンズ系IL3の面データを示す図である。
図36は、本実施例におけるレンズ系IL3の各種データを示す図である。
図35,36は、それぞれ数値実施例1の
図5,6と同様に各データを示す。
【0140】
図37,38は、本実施例のレンズ系IL3における1,2番目の面s1,s2の自由曲面データを示す図である。各自由曲面データは、それぞれ第1レンズ素子L1の両側の面について、数値実施例1と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0141】
図39,40は、本実施例のレンズ系IL3における5,10番目の面s5,s10の非球面データを示す図である。各非球面データは、それぞれ第3レンズ素子L3の像面側の面と第6レンズ素子L6の物体側の面について、数値実施例1と同様に式(E2)の各種係数を示す。
【0142】
図41~44は、それぞれレンズ系IL3における12~15番目の面s12~s15の自由曲面データを示す図である。
図41~44は、第7及び第8レンズ素子L7,L8の両面についての各自由曲面データを、
図37等と同様に示す。
【0143】
以上の数値実施例3に基づいて、
図45に、本実施例のレンズ系IL3における画角と像点P3との関係を示す。また、
図46は、本実施例におけるレンズ系IL3の諸収差を示す。
図46(a),(b),(c),(d)は、それぞれ
図15(a)~(d)と同様に、本実施例におけるレンズ系IL3の各収差図を示している。
【0144】
図47は、数値実施例3のレンズ系IL3における位相方向とサグ量との関係を例示する。
図47は、数値実施例3のレンズ系IL3における第8レンズ素子L8の像面側の自由曲面のサグ量のグラフG3を、
図19と同様に示す。本実施例のレンズ系IL3によっても、上記各実施例と同様に、像を一方向に拡大することができる。
【0145】
2-5.実施例4
実施例4では、非球面を用いないレンズ系ILの一例を説明する。
図48~61を用いて、実施例4のレンズ系IL4について説明する。
【0146】
図48は、実施例4に係るレンズ系IL4の構成を示す。
図48(a),(b)は、それぞれ
図3(a),(b)と同様に、レンズ系IL4のレンズ配置図を示す。
【0147】
実施例4のレンズ系IL4は、実施例1と同様に順番に配置された第1~第7レンズ素子L1~L7と、第4及び第5レンズ素子L4,L5間に配置された絞りAとを備える。本実施例のレンズ系IL4において、絞りAよりも物体側の自由曲面レンズは第1及び第2レンズ素子L1,L2であり、絞りAよりも像面側の自由曲面レンズは第5及び第7レンズ素子L5,L7である。本実施例において、上記の各自由曲面レンズは、それぞれ両側に自由曲面を有する。
【0148】
本実施例において、第1レンズ素子L1の物体側の自由曲面は、Y方向において物体側に凸状であり、X方向において像面側に凸状である。第1レンズ素子L1の像面側の自由曲面は、例えば負のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、物体側に凸状である。第2レンズ素子L2の物体側の自由曲面は、例えば正のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、物体側に凸状である。第2レンズ素子L2の像面側の自由曲面は、例えば正のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、像面側に凸状である。
【0149】
第5レンズ素子L5の物体側の自由曲面は、例えば負のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、像面側に凸状である。第5レンズ素子L5の像面側の自由曲面は、例えば正のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、像面側に凸状である。第7レンズ素子L7の物体側の自由曲面は、例えば負のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、像面側に凸状である。第7レンズ素子L7の像面側の自由曲面は、例えば負のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、物体側に凸状である。
【0150】
実施例4のレンズ系IL4に対応する数値実施例を、
図49~58に示す。
図49は、数値実施例4におけるレンズ系IL4の面データを示す図である。
図50は、本実施例におけるレンズ系IL4の各種データを示す図である。
図49,50は、それぞれ数値実施例1の
図5,6と同様に各データを示す。
【0151】
図51~54は、本実施例のレンズ系IL4における1~4番目の面s1~s4の自由曲面データを示す図である。各自由曲面データは、それぞれ第1レンズ素子L1の両側の面及び第2レンズ素子L2の両側の面について、数値実施例1と同様に式(E1)の各種係数を示す。
【0152】
図55~58は、それぞれレンズ系IL4における9,10,13,14番目の面s9~s14の自由曲面データを示す図である。
図55~58は、第5及び第7レンズ素子L5,L7の両面についての各自由曲面データを、
図51等と同様に示す。
【0153】
以上の数値実施例4に基づいて、
図59に、本実施例のレンズ系IL4における画角と像点P4との関係を示す。また、
図60は、本実施例におけるレンズ系IL4の諸収差を示す。
図60(a),(b),(c),(d)は、それぞれ
図15(a)~(d)と同様に、本実施例におけるレンズ系IL4の各収差図を示している。
【0154】
図61は、数値実施例4のレンズ系IL4における位相方向とサグ量との関係を例示する。
図61は、数値実施例4のレンズ系IL4における第7レンズ素子L7の像面側の自由曲面のサグ量のグラフG4を、
図19と同様に示す。本実施例のレンズ系IL4によっても、上記各実施例と同様に、像を一方向に拡大することができる。
【0155】
2-6.実施例5
実施例5では、可視光が利用可能なレンズ系ILの一例を説明する。
図62~70を用いて、実施例5のレンズ系IL5について説明する。
【0156】
図62は、実施例5に係るレンズ系IL5の構成を示す。
図62(a),(b)は、それぞれ
図3(a),(b)と同様に、レンズ系IL5のレンズ配置図を示す。
【0157】
実施例5のレンズ系IL5は、実施例1と同様に順番に配置された第1~第6レンズ素子L1~L6と、第3及び第4レンズ素子L3,L4間に配置された絞りAとを備える。本実施例のレンズ系IL5において、絞りAよりも物体側の自由曲面レンズは第2レンズ素子L2であり、絞りAよりも像面側の自由曲面レンズは第6レンズ素子L6である。本実施例において、上記の各自由曲面レンズは、それぞれ両側に自由曲面を有する。
【0158】
本実施例において、第2レンズ素子L2の物体側の自由曲面は、Y方向において物体側に凸状であり、X方向において像面側に凸状である。第2レンズ素子L2の像面側の自由曲面は、例えば負のパワーがX方向においてY方向よりも強くなるように、物体側に凸状である。
【0159】
第6レンズ素子L6の物体側の自由曲面は、例えばY方向において、中央近傍では物体側に凸状であり、周辺部に向けて曲率の向きが変化する。同自由曲面は、例えばX方向において物体側に凸状である。第6レンズ素子L6の像面側の自由曲面は、例えば正のパワーがY方向においてX方向よりも強くなるように、像面側に凸状である。
【0160】
実施例5のレンズ系IL5に対応する数値実施例を、
図63~68に示す。
図63は、数値実施例5におけるレンズ系IL5の面データを示す図である。
図64は、本実施例におけるレンズ系IL5の各種データを示す図である。
図63,64は、それぞれ数値実施例1の
図5,6と同様に各データを示す。
【0161】
図65,66は、本実施例のレンズ系IL5における3,4番目の面s3,s4の自由曲面データを示す図である。各自由曲面データは、それぞれ第2レンズ素子L2の両側の面について、自由曲面としてのアナモルフィック非球面を規定する次式(E3)の各種係数を示す。
【0162】
【0163】
上式(E3)において、CUX,CUY,AR,AP,BR,BP,CR,CP,DR,DPは係数である。上式(E3)によると、対象とする面上の(x,y)座標の位置におけるサグ量zが規定される。ここで、上式(E3)は、各座標変数x,yについて、x2とy2とを上記の係数で重み付けした加重和の形式でのみ依存する規則性を有する。すなわち、アナモルフィック非球面は、上式(E3)の規則性の範囲内において回転非対称となる自由曲面である。
【0164】
図67,68は、本実施例のレンズ系IL5における11,12番目の面s11,s12の自由曲面データを示す図である。各自由曲面データは、それぞれ第6レンズ素子L6の両側の面について、上記と同様に式(E3)の各種係数を示す。
【0165】
以上の数値実施例5に基づいて、
図69に、本実施例のレンズ系IL5における画角と像点P5との関係を示す。また、
図70は、本実施例におけるレンズ系IL5の諸収差を示す。
図15(a)では、
図15(a)と同様の近赤外光に加えて、波長656nm,587nm,486nmの可視光に対する球面収差の特性曲線を示している。
図70(b),(c),(d)は、それぞれ
図15(b)~(d)と同様に、本実施例におけるレンズ系IL5の各収差図を示している。本実施例のレンズ系IL5によっても、上記各実施例と同様に、像を一方向に拡大することができる。
【0166】
2-7.実施例6
図71~79を用いて、実施例6のレンズ系IL6について説明する。
【0167】
図71は、実施例6に係るレンズ系IL6の構成を示す。
図71(a),(b)は、それぞれ
図3(a),(b)と同様に、レンズ系IL2のレンズ配置図を示す。
【0168】
実施例6のレンズ系IL6は、実施例5と同様の構成から、各種レンズ素子L1~L6の形状等を変更している。本実施例のレンズ系IL6における自由曲面レンズは、実施例5と同様に、絞りAよりも物体側の1枚と、絞りAよりも像面側の1枚とである。実施例6のレンズ系IL6に対応する数値実施例を、
図72~77に示す。
【0169】
図72は、数値実施例6におけるレンズ系IL6の面データを示す図である。
図73は、本実施例におけるレンズ系IL6の各種データを示す図である。
図72,73は、それぞれ数値実施例1の
図5,6と同様に各データを示す。
【0170】
図74~77は、本実施例のレンズ系IL6における3,4,11,12番目の面s3,s4,s11,s12の自由曲面データを示す図である。各自由曲面データは、それぞれ第2レンズ素子L2の両側の面、及び第6レンズ素子L6の両側の面について、数値実施例6と同様に式(E3)の各種係数を示す。
【0171】
以上の数値実施例6に基づいて、
図78に、本実施例のレンズ系IL6における画角と像点P6との関係を示す。また、
図79は、本実施例におけるレンズ系IL6の諸収差を示す。
図79(a),(b),(c),(d)は、それぞれ
図70(a)~(d)と同様に、本実施例におけるレンズ系IL6の各収差図を示している。本実施例のレンズ系IL6によっても、実施例5と同様に、像を一方向に拡大することができる。
【0172】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記各実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0173】
上記の実施形態1では、
図2において長方形の撮像面22を例示したが、撮像素子12の撮像面はこれに限らない。本実施形態において、撮像素子12の撮像面は、長方形でない各種の矩形状であってもよく、部分的にマスクされていてもよい。また、撮像素子12の撮像面は、湾曲していてもよい。このような撮像素子12に対しても、本実施形態のレンズ系ILによって実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0174】
例えば、本実施形態の撮像素子12の長辺bと短辺aとは直交していなくてもよく、各種の角度で交差してもよい。また、撮像素子12は、長辺b及び短辺aの代わりに同じ長さの二辺を有してもよい。本実施形態において、レンズ系ILの第1及び第2方向も、互いに直交していなくてもよく、各種の角度で交差してもよい。また、イメージサークル21における第1及び第2方向の径の長さが異なってもよいし、同じであってもよい。イメージサークル21は、必ずしも円形から歪んでいなくてもよい。
【0175】
上記の各実施形態では、自由曲面の一例として、XY多項式面およびアナモルフィック非球面を例示した。本実施形態において、自由曲面は上記に限らず、例えばトーリック面であってもよい。また、本実施形態のレンズ系は、アナモルフィックではない自由曲面を備えてもよい。アナモルフィックではない自由曲面は、XY多項式面は含む一方でアナモルフィック非球面を含まない。アナモルフィックではない自由曲面は、例えば対称面を有さなくてもよい。
【0176】
本実施形態の撮像システム10は、各種の用途に適用可能であり、例えば車載用途に適用可能である。例えば、撮像装置11が、車両等の移動体の後方のシーンを撮像するように、車載カメラを構成してもよい。また、車載カメラとしての撮像装置11は移動体の後方に限らず、前方あるいは側方等の各種シーンを撮像する用途に適用されてもよい。また、撮像システム10は車載用途に限らず、例えば種々の状況を監視する監視カメラにも適用可能である。
【0177】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0178】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0179】
また、上述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において、種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【0180】
(態様のまとめ)
以下、本開示に係る各種態様を例示する。
【0181】
本開示に係る第1の態様は、物体側から像面側に並んだ複数のレンズ素子と、前記複数のレンズ素子の間に配置された絞りとを備えたレンズ系を提供する。前記複数のレンズ素子は、互いに交差する第1方向と第2方向との間で非対称な自由曲面を有する複数の自由曲面レンズを含む。前記絞りよりも像面側に、少なくとも1枚の自由曲面レンズが配置される。前記絞りよりも物体側に、以下の条件式(1A)を満たす少なくとも1枚の自由曲面レンズが配置される。
T1/T2<0.8 …(1A)
ここで、
T1:軸上光線の最大高さにおける前記第1方向のレンズ厚み
T2:軸上光線の最大高さにおける前記第2方向のレンズ厚み
である。
【0182】
以上のレンズ系によると、条件式(1A)によって、絞りよりも物体側の自由曲面レンズの第1方向と第2方向とにサグ差を設けて、像を一方向に拡大することができる。例えばレンズ系が明るい光学系であっても、こうした像の一方向拡大を実現できる。
【0183】
本開示に係る第1の態様のレンズ系は、上式(1A)に代えて、又はこれに加えて、前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(1B)を満たしてもよい。
【数9】
ここで、
N:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
SAG1
k:k番目の自由曲面の前記第1方向における高さが、前記第1方向の像高の40%の箇所のサグ量
SAG2
k:k番目の自由曲面の前記第2方向における高さが、前記第1方向の像高の40%の箇所のサグ量
Y2:前記第2方向の像高
Θ1:前記第1方向の全画角
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である。
【0184】
以上のレンズ系によると、条件式(1B)によって、絞りよりも物体側の自由曲面レンズ全体の第1方向と第2方向とにサグ差を設けて、像を一方向に拡大することができる。例えばレンズ系が望遠の光学系であっても、こうした像の一方向拡大を実現できる。
【0185】
第2の態様では、第1の態様のレンズ系が、以下の条件式(2)を満たす。
2<AXRh/Y1<5 …(2)
ここで、
AXRh:軸上光線の最大高さ
Y1:前記第1方向の像高
である。これにより、レンズ系を明るくしながら収差を補正可能にすることができる。
【0186】
第3の態様では、第1又は第2の態様のレンズ系において、前記複数の自由曲面レンズにおける最も物体側の自由曲面レンズが、物体側に、以下の条件式(3)を満たす自由曲面を有する。
0.005<(FSAG1-FSAG2)/AXRh<0.015 …(3)
ここで、
FSAG1:高さAXRhにおける前記第1方向のサグ量
FSAG2:高さAXRhにおける前記第2方向のサグ量
AXRh:軸上光線の最大高さ
である。これにより、レンズ系の明るさを確保しながら一方向に像を拡大することができる。
【0187】
第4の態様では、第1~第3のいずれかの態様のレンズ系が、以下の条件式(4)を満たす。
1<(Y1/Y2)×|tanθ2/tanθ1|<4 …(4)
ここで、
Y1:前記第1方向の像高
Y2:前記第2方向の像高
θ1:前記第1方向の画角
θ2:前記第2方向の画角
である。これにより、解像度の低下を回避しつつ一方向に像を拡大することができる。
【0188】
第5の態様では、第1~第4のいずれかの態様のレンズ系が、以下の条件式(5)を満たす。
0.050<AXRh/OAL<0.350 …(5)
ここで、
AXRh:軸上光線の最大高さ
OAL:レンズ系の光学全長
である。これにより、レンズ系ILの明るさを確保しながら収差を補正可能にすることができる。
【0189】
第6の態様では、第1~第5のいずれかの態様のレンズ系が、以下の条件式(6)を満たす。
0.30<FFN/FBN<3.00 …(6)
ここで、
FFN:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの枚数
FBN:前記絞りよりも像面側の自由曲面レンズの枚数
である。これにより、レンズ系の大型化等を回避しながら、諸収差を補正可能にすることができる。
【0190】
第7の態様では、第1~第6のいずれかの態様のレンズ系が、前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズの自由曲面に関する総和に基づく以下の条件式(7)を満たす。
【数10】
ここで、
N:前記絞りよりも物体側の自由曲面レンズにおける自由曲面の総数
k:総数Nの自由曲面における各自由曲面を示す番号
sag1
k:k番目の自由曲面の前記第1方向における高さがAXRhの40%の箇所のサグ量
sag2
k:k番目の自由曲面の前記第2方向における高さがAXRhの40%の箇所のサグ量
AXRh:軸上光線の最大高さ
Δnd
k:当該自由曲面よりも像面側における屈折率から物体側における屈折率を差し引いた差分
である。これにより、レンズ系の明るさを確保し、収差の補正を可能にしながら、一方向に像を拡大することができる。
【0191】
第8の態様では、第1~第7のいずれかの態様のレンズ系において、最も物体側の自由曲面レンズが、前記条件式(1A)を満たす。即ち、最も物体側の自由曲面レンズにおいて、軸上光線の最大高さにおける前記第1方向のレンズ厚みが、軸上光線の最大高さにおける前記第2方向のレンズ厚みの80%よりも小さい。これにより、最も物体側で高い光線を制御して、像の一方向拡大を得やすくすることができる。
【0192】
第9の態様では、第1~第8のいずれかの態様のレンズ系において、前記絞りよりも像面側に配置された自由曲面レンズが、軸上光線の最大高さの50%の高さにおけるサグ量が、光軸の周りの位相方向において前記第1及び第2方向とは異なる位相方向に極値を持つ自由曲面を有する。これにより、形状の自由度を高めて、第1方向と第2方向との間でも拡大効果を得やすく、収差補正の効果も向上させることができる。
【0193】
第10の態様では、第1~第9のいずれかの態様のレンズ系において、前記複数のレンズ素子の枚数が、5枚以上である。これにより、諸収差の適切に補でき、結像性能を向上できる。
【0194】
第11の態様では、第1~第10のいずれかの態様のレンズ系において、前記絞りのF値が、2.8よりも小さい。これにより、明るい光学系が得られ、例えば撮像による検知性能を向上できる。
【0195】
第12の態様では、第1~第11のいずれかの態様のレンズ系において、前記複数の自由曲面レンズは、前記第1方向において正のパワーを有し、前記第2方向において負のパワーを有する自由曲面レンズを含む。これにより、第2方向に対して第1方向に像を拡大させ易く、解像度を向上させ易い。
【0196】
第13の態様では、第1~第12のいずれかの態様のレンズ系において、前記第1方向と前記第2方向とは、互いに直交する。これにより、例えば矩形の撮像面等を活用し易くすることができる。
【0197】
第14の態様では、第1~第13のいずれかの態様のレンズ系が、波長900nm以上の光を結像可能に構成される。これにより、特に夜間など、人間の眼に対する影響を回避しながら検知性能を確保できる。
【0198】
第15の態様は、第1~第14のいずれかの態様のレンズ系と、前記レンズ系によって結像される像を撮像する撮像素子とを備える撮像装置を提供する。こうした撮像装置によると、レンズ系により、一方向に像を拡大することができる。
【0199】
第16の態様では、第15の態様の撮像装置において、前記撮像素子は、前記第1方向に対応する短辺と、前記第2方向に対応する長辺とを有する。これにより、例えば短辺の方向では不要な撮影エリアを捨象して、解像度を向上させるような用途に用いやすい。
【0200】
第17の態様は、第15又は第16の態様の撮像装置と、前記撮像装置の撮像素子によって撮像された画像に画像処理を実行する画像処理部とを備える撮像システムを提供する。こうした撮像システムによると、撮像装置のレンズ系により、一方向に像を拡大することができる。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本開示に係る撮像システムは、種々の撮像及び検知用途に適用可能であり、例えば車載カメラ、TOFセンサ、監視カメラ、Webカメラ、及びデジタルカメラ等に適用可能である。また、本開示に係るレンズ系は、交換レンズ装置において提供されてもよい。