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特許7442077設計支援システム、設計支援方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】設計支援システム、設計支援方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240226BHJP
   E04D 13/064 20060101ALI20240226BHJP
   G06F 113/14 20200101ALN20240226BHJP
【FI】
G06F30/13
E04D13/064 Z
E04D13/064 501Z
G06F113:14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023142315
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】西本 舞
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-166613(JP,A)
【文献】特開2018-025075(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114707678(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
E04D 13/064
G06F 113/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置及び入力装置に接続される演算回路を備え、
前記演算回路は、
前記表示装置により、竪樋を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報の入力のための入力画面を表示し、
前記入力装置により、前記入力情報の入力を受け付け、
前記表示装置により、前記入力情報に基づいて、前記配管システムの設計条件と、前記必要流量に対する前記設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報を提示する出力画面を表示し、
前記配管システムの高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記必要流量は、前記配管システムが達成することが求められる流量であり、
前記サイフォン現象の利用可能性の指標は、前記竪樋の満水率に基づいて決定され、前記満水率又は前記配管システムでサイフォン現象が利用可能であるか否かの表示の少なくとも一方を含む、
設計支援システム。
【請求項2】
前記設計条件は、
記竪樋の管径と、
前記竪樋の設置数と、
を含む、
請求項1の設計支援システム。
【請求項3】
前記満水率が第1閾値以上かつ前記第1閾値より大きい第2閾値以下である場合、前記配管システムでサイフォン現象が利用可能であると決定される、
請求項の設計支援システム。
【請求項4】
前記満水率は、サイフォン現象を利用した場合の前記竪樋の排水能力と前記竪樋の想定流量とに基づいて決定される、
請求項の設計支援システム。
【請求項5】
前記想定流量は、前記必要流量を前記設置数で除して求められる、
請求項の設計支援システム。
【請求項6】
前記設置数は、前記必要流量を満たす前記竪樋の必要数に基づいて設定され、
前記必要数は、前記必要流量と前記排水能力とから求められる、
請求項の設計支援システム。
【請求項7】
前記排水能力は、前記配管システムの高さ及び前記竪樋の管径に基づいて決定される、
請求項の設計支援システム。
【請求項8】
前記入力情報は、前記配管システムを設置する建物の構造に関する構造情報を含み、
前記配管システムの高さは、前記構造情報で特定される、
請求項の設計支援システム。
【請求項9】
前記出力情報は、前記配管システムの高さを含む複数の高さそれぞれでの前記管径と前記排水能力との関係を示す関係情報を含む、
請求項の設計支援システム。
【請求項10】
前記出力情報は、前記管径と前記設置数の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記設計条件と、前記複数の設計条件にそれぞれ対応する複数の前記指標と、を含む、
請求項2の設計支援システム。
【請求項11】
前記入力情報は、前記配管システムを設置する建物の構造に関する構造情報及び前記建物の場所に関する場所情報を含み、
前記必要流量は、前記構造情報で特定される屋根面積と、前記場所情報で特定される降雨強度とから求められる、
請求項1の設計支援システム。
【請求項12】
表示装置及び入力装置に接続される演算回路により実行され、
前記表示装置により、竪樋を有し、サイフォン現象を利用して排水を行う配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報の入力のための入力画面を表示し、
前記入力装置により、前記入力情報の入力を受け付け、
前記表示装置により、前記入力情報に基づいて、前記配管システムの設計条件と、前記必要流量に対する前記設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報を提示する出力画面を表示し、
前記配管システムの高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、鉛直方向における前記配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表され、
前記必要流量は、前記配管システムが達成することが求められる流量であり、
前記サイフォン現象の利用可能性の指標は、前記竪樋の満水率に基づいて決定され、前記満水率又は前記配管システムでサイフォン現象が利用可能であるか否かの表示の少なくとも一方を含む、
設計支援方法。
【請求項13】
請求項12の設計支援方法を、前記演算回路に実行させるための、
プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設計支援システム、設計支援方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、サイフォンの原理を利用する雨水排水構造を開示する。特許文献1は、雨水を溜める水溜り部に設けられた排水口と、前記排水口から雨水を排出する為の排水管とを有し、サイフォンの原理による排水を行なう雨水排水構造において、前記水溜り部の高さは、排水管の水封トラップを含む逆勾配により生じる水頭の総和よりも高いことを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-139659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配管システムの排水能力は、配管システムが設置される建物の規模、建物の周囲環境等に応じて適切な範囲で設定されることが好ましい。一般に、建物の規模が大きいほど、より大きな排水能力が求められる。建物の建設予定地が比較的降雨量が多い土地である場合にもより大きな排水能力が求められる。
【0005】
特許文献1は、排水の流量を計算する方法をいくつか開示する。しかしながら、排水の流量の計算には、専門的な知識を必要とし、専門知識を持たないユーザが排水の流量を計算することは難しい場合が多い。
【0006】
本開示は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする設計支援システム、設計支援方法、及び、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる設計支援システムは、表示装置及び入力装置に接続される演算回路を備え、演算回路は、表示装置により、配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報の入力のための入力画面を表示し、入力装置により、入力情報の入力を受け付け、表示装置により、入力情報に基づいて、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報を提示する出力画面を表示する。
【0008】
本開示の一態様にかかる設計支援方法は、表示装置及び入力装置に接続される演算回路により実行され、表示装置により、配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報の入力のための入力画面を表示し、入力装置により、入力情報の入力を受け付け、表示装置により、入力情報に基づいて、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報を提示する出力画面を表示する。
【0009】
本開示の一態様にかかるプログラムは、上記の設計支援方法を、演算回路に実行させるための、プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態の設計支援システムのブロック図
図2】一実施の形態の設計支援システムの情報端末のブロック図
図3】一実施の形態の設計支援システムの処理装置のブロック図
図4】建物の概略図
図5】配管システムの第1配管形式の概略図
図6】配管システムの第2配管形式の概略図
図7】配管システムの第1配管形式の計算モデルの説明図
図8】配管システムの高さと流量との関係を示すグラフ
図9】配管システムの第2配管形式の計算モデルの説明図
図10】一実施の形態の設計支援システムで表示される入力画面の一例の説明図
図11】一実施の形態の設計支援システムで表示される出力画面の第1例の説明図
図12】一実施の形態の設計支援システムで表示される出力画面の第1例の説明図
図13】一実施の形態の設計支援システムで表示される出力画面の第1例の説明図
図14】一実施の形態の設計支援システムで表示される出力画面の第2例の説明図
図15】一実施の形態の設計支援システムで表示される出力画面の第2例の説明図
図16】一実施の形態の設計支援システムで表示される出力画面の第2例の説明図
図17】変形例1の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図
図18】変形例2の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図
図19】変形例3の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図
図20】変形例4の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図
図21】変形例5の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.実施の形態]
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0014】
なお、以下の説明において、複数ある構成要素を互いに区別する必要がある場合には、「第1」、「第2」等の接頭辞を構成要素の名称に付すが、構成要素に付した符号により互いに区別可能である場合には、文章の読みやすさを考慮して、「第1」、「第2」等の接頭辞を省略する場合がある。
【0015】
なお、以下の説明において、複数ある構成要素を互いに区別する必要がある場合には、「-1」、「-2」等の接尾辞を構成要素の符号に付すが、複数ある構成要素を区別する必要がない場合には、文章の読みやすさを考慮して、「-1」、「-2」等の接尾辞を省略する場合がある。
【0016】
[1.1 構成]
図1は、一実施の形態にかかる設計支援システム1のブロック図である。設計支援システム1は、配管システムの設計の支援のために用いることができる。配管システムは、サイフォン現象を利用して排水を行うように設計される。配管システムは、例えば、雨樋システムである。雨樋システムは、建物からの雨水を地面のます部に流すために用いられる。建物は、例えば、店舗、オフィス、工場、ビル、学校、福祉施設又は病院等の非住宅施設、及び戸建住宅、集合住宅、又は戸建住宅若しくは集合住宅の各住戸等の住宅施設の建物である。非住宅施設には、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、百貨店、ホテル、旅館、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅及び空港等も含む。
【0017】
図1に示すように、設計支援システム1は、情報端末2-1,2-2,…,2-n(以下、総称して符号2を付す)と、処理装置3と、を備える。
【0018】
情報端末2は、通信ネットワーク4を介して、処理装置3に通信可能に接続可能である。通信ネットワーク4は、インターネットを含み得る。通信ネットワーク4は、単一の通信プロトコルに準拠したネットワークだけではなく、異なる通信プロトコルに準拠した複数のネットワークで構成され得る。通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。有線通信規格の例としては、イーサネット(登録商標)等の規格が挙げられる。無線通信規格の例としては、IEEE802.11、4G、又は5G等の規格が挙げられる。通信ネットワーク4は、リピータハブ、スイッチングハブ、ブリッジ、ゲートウェイ、ルータ等のデータ通信機器を含み得る。
【0019】
設計支援システム1では、情報端末2は、入力情報D1の入力に用いられる。情報端末2に入力された入力情報D1は、通信ネットワーク4を介して、処理装置3に送信される。処理装置3は、入力情報D1を用いて出力情報D2を生成する。処理装置3で生成された出力情報D2は、通信ネットワーク4を介して、入力情報D1の送信元の情報端末2(図1では、情報端末2-1)に送信される。情報端末2は、出力情報D2を提示する。
【0020】
図2は、情報端末2のブロック図である。情報端末2は、入力情報D1の入力、及び、出力情報D2の提示に用いられる。図1に示すように、情報端末2-1,2-2,…,2-nは、ユーザ5-1,5-2,…,5-n(以下、総称して符号5を付す)により操作される。ユーザ5は、例えば、配管システムの施工業者である。
【0021】
情報端末2は、入力装置21と、出力装置22と、通信装置23と、記憶装置24と、演算回路25と、を備える。情報端末2は、例えば、パーソナルコンピュータ(デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、)、携帯端末(スマートフォン、タブレット端末等)等により実現され得る。
【0022】
入力装置21は、情報入力のための1以上のヒューマン・マシン・インターフェースを備える。ヒューマン・マシン・インターフェースの例としては、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、トラックボール等)、タッチパッド、タッチパネルディスプレイの位置入力装置等の入力インターフェースが挙げられる。本実施の形態において、入力装置21の1以上のヒューマン・マシン・インターフェースは、タッチパネルディスプレイの位置入力装置21aを含む。入力装置21の1以上のヒューマン・マシン・インターフェースは、情報端末2に内蔵されてもよいし、外付けされてもよい。つまり、入力装置21は、情報端末2それ自体のヒューマン・マシン・インターフェース、及び、情報端末2に接続されたヒューマン・マシン・インターフェースを含み得る。
【0023】
出力装置22は、情報出力のための1以上のヒューマン・マシン・インターフェースを備える。ヒューマン・マシン・インターフェースの例としては、ディスプレイ、スピーカ、タッチパネルディスプレイの表示装置等の出力インターフェースが挙げられる。本実施の形態において、出力装置22の1以上のヒューマン・マシン・インターフェースは、タッチパネルディスプレイの表示装置22aを含む。出力装置22の1以上のヒューマン・マシン・インターフェースは、情報端末2に内蔵されてもよいし、外付けされてもよい。つまり、出力装置22は、情報端末2それ自体のヒューマン・マシン・インターフェース、及び、情報端末2に接続されたヒューマン・マシン・インターフェースを含み得る。
【0024】
通信装置23は、通信ネットワーク4を通じた処理装置3との通信に用いられる。通信装置23は、1以上の通信インターフェースを備える。通信装置23は、通信ネットワーク4に接続可能であり、通信ネットワーク4を通じた通信を行う機能を有する。通信装置23は、所定の通信プロトコルに準拠している。所定の通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。
【0025】
記憶装置24は、情報端末2が利用する情報及び情報端末2で生成される情報を記憶するために用いられる。記憶装置24は、1以上のストレージ(非一時的な記憶媒体)を含む。ストレージは、例えば、ハードディスクドライブ、光学ドライブ、及びソリッドステートドライブ(SSD)のいずれであってもよい。また、ストレージは、内蔵型、外付け型、及びNAS(network-attached storage)型のいずれであってもよい。
【0026】
記憶装置24に記憶される情報は、ウェブブラウザWB1、入力情報D1、及び、出力情報D2を含む。図2では、記憶装置24が、ウェブブラウザWB1、入力情報D1、及び、出力情報D2を記憶している状態を示している。ウェブブラウザWB1、入力情報D1、及び、出力情報D2は常に記憶装置24に記憶されている必要はなく、演算回路25で必要とされるときに記憶装置24に記憶されていればよい。ウェブブラウザWB1は、例えば、Safari(商標又は登録商標)、Microsoft Edge(商標又は登録商標)、Google Chrome(商標又は登録商標)等の従来周知のウェブブラウザであってよい。
【0027】
演算回路25は、入力装置21、出力装置22及び通信装置23に接続され、記憶装置24にアクセス可能である。演算回路25は、例えば、コンピュータシステムにより実現され得る。コンピュータシステムは、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含む。1以上のプロセッサが(1以上のメモリ又は記憶装置24に記憶された)プログラムを実行することで、情報端末2の種々の機能を実現する。プログラムは、記憶装置24に予め記録されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0028】
図3は、処理装置3のブロック図である。処理装置3は、入力情報D1に基づいて出力情報D2を生成するために用いられる。処理装置3は、配管システムの設計支援のサービスを提供する業者等により管理され得る。
【0029】
処理装置3は、入力装置31と、出力装置32と、通信装置33と、記憶装置34と、演算回路35と、を備える。処理装置3は、例えば、1以上のサーバ等により実現され得る。
【0030】
入力装置31は、情報入力のための1以上のヒューマン・マシン・インターフェースを備える。出力装置32は、情報出力のための1以上のヒューマン・マシン・インターフェースを備える。
【0031】
通信装置33は、通信ネットワーク4を通じた情報端末2との通信に用いられる。通信装置33は、1以上の通信インターフェースを備える。通信装置33は、通信装置23と同様の機能を有する。
【0032】
記憶装置34は、処理装置3が利用する情報及び処理装置3で生成される情報を記憶するために用いられる。記憶装置34は、1以上のストレージ(非一時的な記憶媒体)を含む。
【0033】
演算回路35は、入力装置31、出力装置32及び通信装置33に接続され、記憶装置34にアクセス可能である。演算回路35は、例えば、コンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが(1以上のメモリ又は記憶装置34に記憶された)プログラムを実行することで、処理装置3の種々の機能を実現する。プログラムは、記憶装置34に予め記録されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0034】
記憶装置34に記憶される情報は、演算プログラムP、入力情報D1、及び、出力情報D2を含む。図3では、記憶装置34が、演算プログラムP、入力情報D1、及び、出力情報D2を記憶している状態を示している。演算プログラムP、入力情報D1、及び、出力情報D2は常に記憶装置34に記憶されている必要はなく、演算回路35で必要とされるときに記憶装置34に記憶されていればよい。
【0035】
演算プログラムPは、入力情報D1を用いて出力情報D2を生成する処理を規定する。
【0036】
入力情報D1は、配管システムの必要流量の特定に用いられる。配管システムの必要流量は、配管システムが達成することが求められる流量である。必要流量は、建物から配管システムへの雨水の流量の最大値であり得る。
【0037】
必要流量は、屋根面積と、降雨強度とから求められる。ここでの屋根面積は、配管システムが雨水を受ける屋根の一部又は全部の面積である。屋根面積は、屋根の面積それ自体ではなく、屋根を水平面に投影した場合の面積(屋根投影面積)である。降雨強度は、単位時間当たりの降雨量である。必要流量をQ[l/s]、屋根面積をS[m]、降雨強度をR[m/s]とすると、Qは、Q=S×Rで表される。
【0038】
屋根面積は、建物の構造から特定することができる。屋根には、切妻屋根、寄棟屋根、入母屋屋根、片流れ屋根、方形屋根、半切妻屋根、差し掛け・招き屋根、越屋根、鋸屋根、バタフライ屋根等の様々な種類がある。屋根の種類に基づいて、建物の寸法から、配管システムに対応する屋根面積を決定することができる。
【0039】
図4は、建物200の概略図である。建物200は、屋根210を備える。屋根210は、切妻屋根である。屋根210は、棟211と、第1軒先212-1及び第2軒先212-2とを有する。屋根210において、棟211と第1軒先212-1との間が第1屋根部213-1、棟211と第2軒先212-2との間が第2屋根部213-2である。
【0040】
第1軒先212-1に配置される配管システムを考慮する。第1軒先212-1に配置する配管システムは、第1屋根部213-1からの雨水を受ける。第1軒先212-1に配置する配管システムに対応する屋根面積は、第1屋根部213-1の屋根面積である。第1屋根部213-1の屋根面積は、第1軒先212-1の長さL1[m]と、水平面内での棟211と第1軒先212-1との間の距離L2[m]とで求められる。第1屋根部213-1の屋根面積をS[m]とすると、Sは、S=L1×L2で表される。
【0041】
降雨強度は、建物の場所から特定することができる。例えば、2以上の地域の降雨強度を含む地域別降雨強度情報から、建物の場所が属する地域の降雨強度を取得することができる。2以上の地域は、特に限定されないが、日本の都道府県、都道府県の市町村区等であってよい。降雨強度は、例えば、国、地方公共団体、又は企業が提供するデータに基づいて決定されてよい。一例として、降雨強度は、各都道府県が提供する降雨強度のデータ、国土交通省が提供する都道府県別の降雨強度式等から求めることができる。
【0042】
本実施の形態では、入力情報D1は、さらに、配管システムの高さの特定に用いられる。配管システムの高さは、サイフォン現象が有効な高さであり、これは、配管が分断されず、外気との完全な開放部分がなく、サイフォン現象が維持されている高さを意味する。配管システムの高さは、鉛直方向における配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間の距離で表される。配管システムの上流側開放点は、配管システムの上流側において外気圧に開放される部位である。配管システムの下流側開放点は、配管システムの下流側において外気圧に開放される部位である。配管システムの上流側開放点と下流側開放点との間には、外気との完全な開放部分が存在しない。つまり、下流側開放点は、大気圧に対して開放となり、サイフォン現象が停止する箇所である。したがって、上流側開放点と下流側開放点とは、配管システムにおいてサイフォン現象が維持される範囲の上流端及び下流端であるといえる。
【0043】
配管システムの高さについて更に説明する。
【0044】
配管システムには様々な配管形式がある。配管形式は、配管システムの流路の形状を特定する。例えば、流路の形状としては、直線形状、折れ曲がり形状、分岐形状等が挙げられる。配管形式には、流路の断面積、流路の長さ等は必ずしも含まれない。配管形式は、配管システムの分類に対応し得る。本実施の形態では、配管形式として、第1配管形式と、第2配管形式とが用いられる。第1配管形式は、建物からの雨水の落とし口の中心軸と竪樋の中心軸とが一致する雨樋システムの配管形式である。第2配管形式は、建物からの雨水の落とし口の中心軸と竪樋の中心軸とが一致しない雨樋システムの配管形式である。
【0045】
図5は、第1配管形式に対応する雨樋システム100Aの概略図である。雨樋システム100Aは、建物200Aの屋根210からの雨水を受けて、地面300のます部310に流す。ます部310に集められた雨水は、ます部310から埋設管320を通って雨水管に流れ出る。
【0046】
雨樋システム100Aは、軒樋120と、竪樋130と、ドレン140とを備える。
【0047】
軒樋120は、建物200Aの屋根210からの雨水を受ける。軒樋120は、建物200Aの屋根210の下に設置される。軒樋120は、長尺の桶状である。軒樋120は、底壁120aを有する。底壁120aに落とし口120bがある。
【0048】
ドレン140は、軒樋120の落とし口120bに配置される。ドレン140は、落とし口120bでの渦の発生及び空気の巻き込みを低減する。ドレン140は、サイフォン現象の発生に寄与し得る。ドレン140は、周知の構成であってよい。
【0049】
竪樋130は、落とし口120bから雨水を排水するために設置される。竪樋130は、控金具131a,131b,131cにより建物200の壁面220に固定される。竪樋130は、落とし口120bからの雨水を垂直に流すための流路を構成する。雨樋システム100Aでは、竪樋130には、軒樋120とは別の軒樋からの枝管等は接続されていない。つまり、竪樋130に、落とし口120bとは別の落とし口からの雨水が流入しないように構成されている。
【0050】
竪樋130は、上流側の端部130aと下流側の端部130bとを有する。上流側の端部130aは、竪樋130において落とし口120bに接続される端部(図5での上端部)である。竪樋130は落とし口120bに直接的に接続される。つまり、落とし口120bから雨水が竪樋130内に垂直に落下して、ます部310内に流入する。下流側の端部130bは、竪樋130において、ます部310に挿入される端部(図5での下端部)である。竪樋130とます部310との隙間からます部310内に雨水が流入しないように排水管カバー132が配置される。
【0051】
雨樋システム100Aでは、竪樋130が、落とし口120bに直接的に接続され、建物200Aからの雨水の落とし口120bの中心軸と竪樋130の中心軸とが一致する。第1配管形式では、配管システムの流路の形状は直線状である。第1配管形式は、慣用的に、直管タイプとも呼ばれる。
【0052】
図6は、配管システムの第2配管形式に対応する雨樋システム100Bの概略図である。雨樋システム100Bは、建物200Bの屋根210からの雨水を受けて、地面300のます部310に流す。ます部310に集められた雨水は、ます部310から埋設管320を通って雨水管に流れ出る。
【0053】
建物200Bは、建物200Aよりも軒が長い。建物200Bでは、落とし口120bに竪樋130を直接的に接続すると、竪樋130と建物200Bの壁面220との距離が大きくなり、竪樋130の施工基準を満たさなくなる。雨樋システム100Bは、軒が長い建物に適した構造を有する。
【0054】
雨樋システム100Bは、軒樋120と、竪樋130と、ドレン140と、呼び樋150と、第1エルボ161と、第2エルボ162と、接続管170と、を備える。
【0055】
雨樋システム100Bの軒樋120、竪樋130及びドレン140は、雨樋システム100Aの軒樋120、竪樋130及びドレン140と同様である。
【0056】
雨樋システム100Bでは、雨樋システム100Aとは異なり、竪樋130は、落とし口120bに直接的に接続されていない。竪樋130は、呼び樋150、第1エルボ161、第2エルボ162及び接続管170を介して、落とし口120bに接続される。
【0057】
呼び樋150は、建物200Bからの雨水の落とし口120bと竪樋130との間にある。第1エルボ161は、呼び樋150の上流側の端部150aを落とし口120bに接続する。第2エルボ162は、呼び樋150の下流側の端部150bを竪樋130の上流側の端部130aに接続する。接続管170は、落とし口120bと第1エルボ161との間を接続する。
【0058】
雨樋システム100Bでは、竪樋130が、落とし口120bに呼び樋150を介して接続され、建物200Aからの雨水の落とし口120bの中心軸と竪樋130の中心軸とが一致しない。第2配管形式では、配管システムの流路の形状は直線状ではなく、折れ曲がり状、特にクランク状又はS字状である。第2配管形式は、慣用的に、エルボ振りタイプとも呼ばれる。
【0059】
雨樋システム100A,100Bにおいて、上流側開放点は、ドレン140の下端であり、下流側開放点は、竪樋130の下流側の端部130bの開口である。雨樋システム100A,100Bにおいて、配管システムの高さをh[m]とする。hは、鉛直方向におけるドレン140の下端と竪樋130の下流側の端部130bの開口との間の距離である。なお、上流側開放点は、ドレン140の下端ではなく、落とし口120bの上端又は下端であってよい。一般的に、配管システムの高さhは、専ら竪樋130の長さによって決まるところ、上端側開放点がドレン140か落とし口120bかによるhの変化は、竪樋130の長さに比べれば無視できる程度に小さいと考えられる。なお、雨樋システム100Aにおいて、建物200Aに庇があり、竪樋130が、庇で、一旦、大気圧に対して開放されている場合には、下流側開放点は、竪樋130の下流側の端部130bの開口ではなく、庇で大気圧に対して開放されている部分になる。つまり、ドレン140の下端から、竪樋130において庇で大気圧に対して開放されている部分までの、鉛直方向の長さが、サイフォン現象が有効な高さ、つまり、配管システムの高さとなる。
【0060】
以上述べた配管システムの高さは、建物の構造に基づいて決定される。
【0061】
再度図4を参照し、第1軒先212-1に配置される配管システムを考慮する。第1軒先212-1に配置する配管システムの高さhは、建物200における地面から第1軒先212-1までの高さH[m]と実質的に等しいから、地面から第1軒先212-1までの高さHを、第1軒先212-1に配置する配管システムの高さhとして扱うことができる。
【0062】
入力情報D1は、さらに、配管システムの検索条件を含み得る。配管システムの検索条件は、配管システムの設計条件を絞り込みための情報である。詳しくは後述するが、配管システムの設計条件は、配管システムの竪樋の管径と、竪樋の設置数と、を含む。ユーザは、様々な制約の下で配管システムを設計する必要があることから、竪樋の管径又は竪樋の設置数の少なくとも一方を、ユーザの所望の範囲に制限することが便利である。そのめ、検索条件は、配管システムの竪樋の管径の範囲を特定する情報と、竪樋の設置数の範囲を特定する情報と、を含んでよい。竪樋の管径の範囲を特定する情報は、管径が満たすべき数値又は数値範囲であってよいし、竪樋に用いられる管材の種類であってもよい。竪樋の設置数の範囲を特定する情報は、設置数が満たすべき数値又は数値範囲であってよい。さらに、検索条件は、配管システムの配管形式を特定する情報を含んでよい。配管システムの配管形式を特定する情報は、配管システムが第1配管形式と第2配管形式のいずれであるかを特定する情報であってよい。
【0063】
本実施の形態では、入力情報D1は、必要流量Qを特定するための屋根面積S及び降雨強度Rを含む。入力情報D1は、さらに、配管システムの高さhを特定するために配管システムの高さh自体を含む。入力情報D1は、さらに、配管システムの設計条件を絞り込みための検索条件を含む。
【0064】
出力情報D2は、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む。
【0065】
設計条件は、配管システムの竪樋の管径と、竪樋の設置数と、を含む。
【0066】
配管システムの管径は、配管システムの流路の内径に相当する。従来から、配管システムの構築に利用可能な管材として、サイズが異なる管材が提供されている。管材のサイズとしては、呼び径を用いることができる。呼び径は、例えば、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格における呼び径であってよい。
【0067】
表1は、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格におけるVPの硬質ポリ塩化ビニル管の呼び径の一例である。表1において、外径(基準寸法)、厚さ(最小寸法)及び近似内径の単位はmmである。
【0068】
【表1】
【0069】
表2は、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格におけるVUの硬質ポリ塩化ビニル管の呼び径の一例である。表2において、外径(基準寸法)、厚さ(最小寸法)及び近似内径の単位はmmである。
【0070】
【表2】
【0071】
設置数は、配管システムに利用する竪樋の数である。設置数が増えるほど、配管システムで対応できる流量が増える。設置数は、必要流量を満たす竪樋の数(必要数)に基づいて設定される。必要数は、必要流量を満たす竪樋の数である。必要数は、必要流量と、サイフォン現象を利用した場合の竪樋の排水能力とから求められる。
【0072】
サイフォン現象を利用した場合の竪樋の排水能力は、いわゆる通常排水時の竪樋の排水能力ではなく、配管システムにおいてサイフォン現象が発生し、維持されている場合の竪樋の排水能力をいう。サイフォン現象を利用した場合の竪樋の排水能力は、サイフォン現象による影響を受ける。以下では、単に文章を分かりやすくするため、特別な断りがない限り、「排水能力」は、サイフォン現象を利用した場合の排水能力をいう。
【0073】
竪樋の排水能力は、竪樋が一つの場合の配管システムの下流側開放点での流量で表される。配管システムの設計にあたっては、流量の実際の値に基づいて、流量の保証値が用いられることが多い。そこで、本実施の形態では、竪樋の排水能力は、配管システムの下流側開放点での流量の保証値を含む。
【0074】
次に、竪樋の排水能力の決定の仕方について説明する。
【0075】
図7は、図5の配管システムの第1配管形式の計算モデルの説明図である。第1配管形式の計算モデルは、上流側開放点111と下流側開放点112との間の流路が竪樋130により規定されている。ここで、上流側開放点111での位置エネルギーをH、圧力をP、運動エネルギーをVとする。下流側開放点112での位置エネルギーをH、圧力をP、運動エネルギーをVとする。配管システムの配管部材による圧力損失の和をΣDとする。配管システムの管路総圧力損失をDとする。この場合、ベルヌーイの定理から、次式(1)が成立する。
【0076】
【数1】
【0077】
上流側開放点111での位置エネルギーHと下流側開放点112での位置エネルギーHとの差は、上流側開放点111と下流側開放点112との高さの差で決まる。H,Hの単位をmとした場合、H-H=hである。
【0078】
上流側開放点111での圧力Pと下流側開放点112での圧力Pとは、いずれも0である。
【0079】
上流側開放点111での流速は0であるから、上流側開放点111での運動エネルギーVと下流側開放点112での運動エネルギーVとの差は、下流側開放点112での流速で決まる。下流側開放点112での流速をVとし、Vの単位をmとした場合、V=V /(2g)[m]である。gは重力加速度である。
【0080】
第1配管形式において、ΣDは、ΣD=Da+Dcで表すことができる。Daは、上流側開放点111での圧力損失(入口圧力損失)である。Dcは、配管システムにおいて生じるその他の微小な圧力損失の総和である。例えば、Dcは、配管システムの配管同士のつなぎ目の段差等により生じる圧力損失を含む。
【0081】
流速をVとし、ΣDの単位をmとすると、ΣD=Σd・V/g=(da+dc)・V/gとすることができる。da及びdcは、実験による雨樋システム100Aの評価等から、予め決定することができる。
【0082】
管路圧損Dは、配管システムの管径(つまり、竪樋の管径)をd、管摩擦係数をλ、配管システムの長さをL、流速をVとする。Dの単位をmとすると、Dと、次式(2)で与えられる。
【0083】
【数2】
【0084】
通常、配管システムの内壁は滑らかであるから、管摩擦係数λは、レイノルズ数に応じた式を用いることができる。例えば、レイノルズ数Reが2320未満の場合、ハーゲン・ポアズイユの法則により、λ=64/Reを用いることができる。レイノルズ数Reが3×10~1×10の場合、ブラジウスの式により、λ=0.3164×Re-1/4を用いることができる。レイノルズ数Reが1×10~3×10の場合、ニクラゼの式により、λ=0.0032+0.221×Re-0.237を用いることができる。以下では、ニクラゼの式を用いた場合を説明するなお、管摩擦係数λは、これらに限定されず、予め決められた図表等を用いて決定されてよい。
【0085】
下流側開放点112での流速をVとすると、流速Vは、次式(3)のように表すことができる。
【0086】
【数3】
【0087】
上式(3)において、f(Σd,L,d)は、流速の2乗の項の摩擦損失係数であり、Σd,L,dの関数とすることができる。f(L,d)は、流速の1.763乗の項の摩擦損失係数であり、L,dの関数とすることができる。
【0088】
Σdは、配管システムの配管部材による圧力損失の和に対応する係数である。第1配管形式では、Σd=da+dcである。上述したように、da及びdcは、実験による雨樋システム100Aの評価等から、予め決定することができる。したがって、Σdは、配管形式に基づいて特定することができる。第1配管形式では、L=hである。
【0089】
上式(3)から、管径d及び配管システムの高さhを特定することにより、流速Vを求めることができる。
【0090】
下流側開放点112での流量の保証値は、下流側開放点112での流量の実際の値に基づいて設定される。下流側開放点112での流量の実際の値は、上式(3)より求めた流量Vを用いて得られる下流側開放点112での流量の理論値から決定される。
【0091】
下流側開放点112での流量の理論値をQとする。Qは、次式(4)で表される。
【0092】
【数4】
【0093】
下流側開放点112での流量の実際の値をQとすると、Qは、Q=a×Qで表すことができる。実際の値は、理論値との対比で用いられており、あくまでも理論値に比べれば真の値に近いという意味合いである。aは、流量の理論値Qを流量の実際の値Qに変換するための補正係数である。aは、下流側開放点112での流量の理論値Qと、実験により求めた雨樋システム100Aの下流側開放点112での流量の実測値とから決定することができる。これによって、理論値だけではなく、理論値と実測とに基づいた流量を提示することが可能となる。流量の実際の値Qは、実測値に基づいているから、配管システムを安全に使用できる流量である配管システムの保証値を設定するのに適している。
【0094】
図8は、配管システムの高さと流量との関係を示すグラフである。図8のグラフは、第1配管形式、VP75の配管システムに対応する。F11は、配管システムの高さhに対する理論値Qの変化を示す近似曲線である。任意の高さhでの理論値Qに対する実測値の比率をaとして用いる。例えば、aは、h=3での理論値Qに対する実測値の比率であってよい。F12は、F11の近似曲線を示す式にaを乗じて得られる。図8では、F12は、実測値とよく一致していることがわかる。したがって、実験又は試験等によって流量を評価していない配管システムの構成についても、理論値Qを利用することで、実測に基づいた流量を求めることが可能になる。これにより、竪樋の管径dと配管システムの高さhで決まる下流側開放点112での流量の理論値Qから、下流側開放点112での流量の実際の値Qを精度よく求めることができる。
【0095】
下流側開放点112での流量の保証値をQとすると、Qは、Q=b×Qで表すことができる。bは、流量の実際の値Qに対する保証値Qの比率である。bは、いわゆる、配管システムの設計における安全率である。bは、配管システムのエア混入量、配管システムの高さ、配管形式、流量の保証値のマージン、配管システムの誤差(例えば、配管部材の形状誤差、組み立て誤差等)等の種々の事情を勘案して適宜決定されればよい。一例としてbは、0.7~0.9の範囲で設定されてよい。
【0096】
したがって、竪樋の管径dと配管システムの高さhとを用いて、竪樋の排水能力を示す下流側開放点112での流量の保証値Qを求めることができる。
【0097】
図9は、図6の配管システムの第2配管形式の計算モデルの説明図である。第2配管形式の計算モデルは、上流側開放点111と下流側開放点112との間の流路が、竪樋130、呼び樋150、第1エルボ161、第2エルボ162及び接続管170により規定されている。
【0098】
第2配管形式の計算モデルにおいても、上式(1)が成立する。
【0099】
第2配管形式においては、ΣDは、ΣD=Da+Db1+Db2+Dcで表すことができる。Db1は、第1エルボ161近傍での圧力損失である。Db2は、第2エルボ162近傍での圧力損失である。
【0100】
第2配管形式においては、ΣD=Σd・V/g=(da+db1+db2+dc)・V/gとすることができる。da、db1、db2及びdcは、実験による雨樋システム100Bの評価等から、予め決定することができる。Σdは、Σd=da+db1+db2+dcとして、配管形式に基づいて特定することができる。
【0101】
したがって、第2配管形式においても、流速Vは、上式(3)で表すことができる。
【0102】
Σdは、第2配管形式で決まる値である。第2配管形式では、Σd=da+db1+db2+dcである。上述したように、da、db1、db2及びdcは、実験による雨樋システム100Bの評価等から、予め決定することができる。したがって、Σdは、配管形式に基づいて特定することができる。第2配管形式では、L=h+lである。lは、呼び樋150、第1エルボ161及び第2エルボ162により規定される流路の長さである。第1エルボ161及び第2エルボ162が90°エルボである場合、lは、水平方向における配管システムの上流側開放点111と下流側開放点112との間の距離で表される。lは、例えば、第2配管形式の雨樋システム100Bの施行制約、平均的な構成等を参酌して予め決定されてよい。
【0103】
第2配管形式においても、上式(3)から、管径d及び配管システムの高さhを特定することにより、流速Vを求めることができる。
【0104】
第2配管形式においても、実験による雨樋システム100Bの評価等から、a及びbを予め特定することができる。したがって、Vが求まれば、Q、Q、及び、Qを求めることができる。
【0105】
したがって、第2配管形式においても、竪樋の管径dと配管システムの高さhとを用いて、竪樋の排水能力を示す下流側開放点112での流量の保証値Qを求めることができる。
【0106】
以上述べたように、サイフォン現象を利用した場合の竪樋の排水能力は、配管システムの高さ及び竪樋の管径に基づいて決定される。本実施の形態では、竪樋の排水能力は、竪樋の流量の理論値Q、実際の値Q、又は、保証値Qを含む。竪樋の排水能力は、配管システムの配管形式の影響を受け得る。例えば、配管システムが第1配管形式であるか第2配管形式であるかにより、竪樋の排水能力は変化し得る。検索条件において配管形式が特定されている場合には、特定された配管形式に対応する排水能力が用いられる。検索条件において配管形式が特定されていない場合には、第1配管形式と第2配管形式とに場合分けして排水能力が用いられる。
【0107】
本実施の形態では、竪樋の排水能力は、流量で表される。そのため、必要数は、必要流量を排水能力(流量)で除した値の小数点以下の端数を切り上げた値で与えられる。本実施の形態では、竪樋の排水能力は、竪樋の流量の理論値Q、実際の値Q、又は、保証値Qを含む。必要数を求めるにあたっては、保証値Qを用いることが好ましい。
【0108】
このようにして、必要流量から、管径及び設置数を決定して、設計条件を決定することができる。
【0109】
指標は、竪樋の満水率に基づいて決定される。本実施の形態では、指標は、竪樋の満水率それ自体である。
【0110】
満水率は、竪樋内を水が占めている割合(竪樋内のエアを除いた水の割合)である。竪樋の現在の流量をQ[l/s]、竪樋内にエアがない場合の流量をQ[l/s]、満水率をFr[%]とすると、Fr=Q/Q×100で表される。
【0111】
は、竪樋の排水能力に基づいて決定される。本実施の形態では、竪樋の排水能力は、竪樋の流量の理論値Q、実際の値Q、又は、保証値Qを含む。Qは、理論値Q、実際の値Q、又は、保証値Qから選択されてよい。ここで、保証値Qはマージンを含むから、精度を考慮すると、理論値Q又は実際の値Qを用いることが望ましい。
【0112】
竪樋の現在の流量Qとしては、竪樋の想定流量が用いられる。竪樋の想定流量は、必要流量を設置数で除して求められる。竪樋の想定流量は、必要流量に対して配管システムの竪樋に想定される流量である。
【0113】
出力情報D2は、複数の設計条件と、複数の設計条件それぞれ対応する複数の指標と、を含み得る。ここで、複数の設計条件は、管径と設置数との少なくとも一方が異なるように設定され得る。例えば、複数の設計条件は、VP75、VP100、VP125の3種類の管径において設置数が同じであるように設定されてよい。例えば、複数の設計条件は、VP75の1種類の管径において設置数が異なるように設定されてよい。例えば、複数の設計条件は、VP75、VP100、VP125の3種類の管径においてそれぞれ設置数が複数あるように設定されてよい。複数の設計条件は、入力情報D1に含まれる検索条件に基づいて、決定され得る。例えば、検索条件において、管径がVP75、VP100に設定され、設置数が1~5に設定される場合、複数の設計条件は、VP75、VP100の2種類の管径と、1~5の設置数との組み合わせに基づいて設定され得る。検索条件において管径が特定されていない場合には、予め決められた管径又は選択可能なすべての管径が用いられてもよい。検索条件において設置数が特定されていない場合には、必要数が設置数として用いられてよいし、必要数を含む範囲の値が設置数として用いられてよい。
【0114】
出力情報D2は、さらに、複数の高さそれぞれでの管径とサイフォン現象を利用した場合の排水能力との関係を示す関係情報を含む。複数の高さは、入力情報D1で特定される配管システムの高さを含む。例えば、複数の高さは、入力情報D1で特定される配管システムの高さを中心とする一定範囲から選択されてよい。複数の高さは、特に限定されず、想定される建物の高さに基づいて設定されてよい。上述したように、上式(3)から、管径d及び配管システムの高さhを特定することにより、流速Vを求めることができる。そして、Vが求まれば、Q、Q、及び、Qを求めることができる。そのため、竪樋の管径dを固定して、配管システムの高さhを変化させることで、配管システムの高さを含む複数の高さそれぞれでの管径と排水能力との関係が得られる。
【0115】
[1.2 動作]
以上述べたように、設計支援システム1は、配管システムの必要流量に基づいて、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を提示する。次に、設計支援システム1の動作について、図10図16を参照して説明する。
【0116】
図10は、設計支援システム1で表示される入力画面の一例の説明図である。図10に示す入力画面G1は、入力情報D1の入力のために用いられる。
【0117】
設計支援システム1において、情報端末2は、ユーザ5からの入力情報D1の入力を受け付ける。より詳細には、情報端末2は、ユーザ5による情報端末2の入力装置21の位置入力装置21aの操作により、入力情報D1の入力のための入力画面G1を表示装置22aに表示する。本実施の形態では、入力画面G1は、ウェブブラウザWB1を利用して表示される。
【0118】
入力画面G1は、第1領域R11、第2領域R12、第3領域R13、第4領域R14、第5領域R15、第6領域R16、及び、ボタンB1を含む。
【0119】
第1領域R11~第6領域R16は、入力情報D1の入力のための領域である。
【0120】
第1領域R11及び第2領域R12は、必要流量を特定するための情報を入力するための領域である。
【0121】
第1領域R11は、屋根面積を入力するための領域である。第1領域R11は、屋根面積に関して、任意の数値を入力するための領域である。第1領域R11は、説明領域T11と、値表示領域F11と、を含む。説明領域T11は、屋根面積の入力を促すための文字列を表示する。図10の説明領域T11は、「屋根面積」という文字列を表示する。値表示領域F11は、屋根面積として用いる数値の入力を受け付け、入力された数値を表示する。本実施の形態では、屋根面積は、連続変数である。ただし、現実的には、数値間隔及び数値範囲には制限がある。
【0122】
第2領域R12は、降雨強度を入力するための領域である。第2領域R12は、降雨強度に関して、任意の数値を入力するための領域である。第2領域R12は、説明領域T12と、値表示領域F12と、を含む。説明領域T12は、降雨強度の入力を促すための文字列を表示する。図10の説明領域T12は、「降雨強度」という文字列を表示する。値表示領域F12は、降雨強度として用いる数値の入力を受け付け、入力された数値を表示する。本実施の形態では、降雨強度は、連続変数である。ただし、現実的には、数値間隔及び数値範囲には制限がある。
【0123】
第3領域R13は、配管システムの高さを入力するための領域である。本実施の形態では、第3領域R13は、配管システムの高さに関して、任意の数値を入力するための領域である。第3領域R13は、説明領域T13と、値表示領域F13と、を含む。説明領域T13は、配管システムの高さの入力を促すための文字列を表示する。図10の説明領域T13は、「配管システムの高さ」という文字列を表示する。値表示領域F13は、システムの高さとして用いる数値の入力を受け付け、入力された数値を表示する。本実施の形態では、配管システムの高さは、連続変数である。ただし、現実的には、数値間隔及び数値範囲には制限がある。
【0124】
第4領域R14~第6領域R16は、配管システムの検索条件を入力するための領域である。
【0125】
第4領域R14は、配管システムの竪樋の管径を指定するための領域である。本実施の形態では、第4領域R14は、管径を指定するかどうかの選択、及び、管径を指定する場合の管径の範囲の選択を可能にする。第4領域R14は、説明領域T141,T142,T143と、選択ボタンRB141,RB142と、ボタンB14と、を含む。説明領域T141は、管径の指定の有無を促すための文字列を表示する。図10の説明領域T141は、「管径」という文字列を表示する。選択ボタンRB141,RB142はいずれか一つだけを選択可能なラジオボタンである。選択ボタンRB141は管径を指定しないことに対応し、選択ボタンRB142は管径を指定することに対応する。説明領域T142は、選択ボタンRB141が管径を指定しないことに対応するということを示す文字列を表示する。図10の説明領域T142は、「指定なし」という文字列を表示する。説明領域T143は、選択ボタンRB142が管径を指定することに対応するということを示す文字列を表示する。図10の説明領域T143は、「指定あり」という文字列を表示する。ボタンB14は、指定する管径の選択のためのボタンである。ボタンB14が選択されると、指定可能な管径のリストが表示される。管径のリストは、例えば、「VU75」、「VP75」、「VP100」及び「VP125」の4種類の管径を含み、4種類の管径から指定する管径の選択を可能にする。
【0126】
第5領域R15は、配管システムの竪樋の設置数を指定するための領域である。本実施の形態では、第5領域R15は、設置数を指定するかどうかの選択、及び、設置数を指定する場合の設置数の範囲の選択を可能にする。第5領域R15は、説明領域T151,T152,T153と、選択ボタンRB151,RB152と、値表示領域F151,F152と、を含む。説明領域T151は、設置数の指定の有無を促すための文字列を表示する。図10の説明領域T151は、「竪樋の数」という文字列を表示する。選択ボタンRB151,RB152はいずれか一つだけを選択可能なラジオボタンである。選択ボタンRB151は設置数を指定しないことに対応し、選択ボタンRB152は設置数を指定することに対応する。説明領域T152は、選択ボタンRB151が設置数を指定しないことに対応するということを示す文字列を表示する。図10の説明領域T152は、「指定なし」という文字列を表示する。説明領域T153は、選択ボタンRB152が第1配管形式を指定することに対応するということを示す文字列を表示する。図10の説明領域T153は、「指定あり」という文字列を表示する。値表示領域F151は、指定する設置数の下限値として用いる数値の入力を受け付け、入力された数値を表示する。値表示領域F152は、指定する設置数の上限値として用いる数値の入力を受け付け、入力された数値を表示する。設置数の上限値と下限値とが同じ値、又は、設置数の上限値と下限値との一方だけが入力されている場合には、入力された値が設置数として採用されてよい。本実施の形態では、設置数は、1以上の整数である。
【0127】
第6領域R16は、配管システムの配管形式を指定するための領域である。本実施の形態では、第6領域R16は、配管形式を指定するかどうかの選択するため、及び、配管形式を指定する場合に互いに異なる複数の配管形式から一つを選択するための領域である。第6領域R16は、説明領域T161,T162,T163,T164と、選択ボタンRB161,RB162,RB163と、を含む。説明領域T161は、配管形式の指定の有無を促すための文字列を表示する。図10の説明領域T161は、「システムのタイプ」という文字列を表示する。選択ボタンRB161,RB162,RB163はいずれか一つだけを選択可能なラジオボタンである。選択ボタンRB161は配管形式を指定しないことに対応し、選択ボタンRB162は第1配管形式を指定することに対応し、選択ボタンRB163は第2配管形式を指定することに対応する。説明領域T162は、選択ボタンRB161が配管形式を指定しないことに対応するということを示す文字列を表示する。図10の説明領域T162は、「指定なし」という文字列を表示する。説明領域T163は、選択ボタンRB162が第1配管形式を指定することに対応するということを示す文字列を表示する。図10の説明領域T162は、「直管タイプ」という文字列を表示する。説明領域T164は、選択ボタンRB163が第2配管形式を指定することに対応するということを示す文字列を表示する。図10の説明領域T164は、「エルボ振りタイプ」という文字列を表示する。
【0128】
ボタンB1は、設計条件及び指標の計算を開始するためのボタンである。ボタンB1は、「計算」という文字列を含む。ボタンB1は、屋根面積、降雨強度、及び配管システムの高さの全てが入力された状態で操作可能となってよい。なお、検索条件(竪樋の管径、竪樋の設置数、及び、配管形式)の入力は任意であるから、検索条件が入力されていなくても、ボタンB1が操作可能であってよい。
【0129】
入力画面G1においてボタンB1が操作されると、情報端末2は、第1領域R11で入力された屋根面積、第2領域R12で入力された降雨強度、及び、第3領域R13で入力された配管システムの高さを含む入力情報D1を、通信ネットワーク4を介して、処理装置3に送信する。処理装置3は、入力情報D1に基づいて、設計条件及び指標の計算を実行する。これによって、処理装置3は、設計条件及び指標を含む出力情報D2を生成する。処理装置3は、出力情報D2を、情報端末2に通信ネットワーク4を介して送信する。
【0130】
図11図13は、設計支援システム1で表示される出力画面の第1例の説明図である。第1例では、管径としてVP75,VP100が指定され、設置数及び配管形式は指定されていない。
【0131】
図11に示す出力画面G21は、出力情報D2の出力のために用いられる。出力画面G2は、出力情報D2に含まれる設計条件及び指標を提示するための説明領域T2を含む。説明領域T2は、設計条件及び指標を表形式で表示する。説明領域T2は、VP75とVP100の2種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)とエルボ振りタイプ(第2配管形式)とでの、排水能力、設置数、想定流量、及び、満水率を示す。
【0132】
図12に示す出力画面G22は、関係情報の出力のために用いられる。図12では、関係情報はグラフで表される。より詳細には、図12に示す関係情報は、横軸を配管システムの高さh、縦軸を竪樋の排水能力とするグラフである。図12に示す関係情報は、VP75とVP100の2種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)とエルボ振りタイプ(第2配管形式)とでの、配管システムの高さhに対する排水能力の変化を示す。排水能力としては、保証値Qが用いられる。
【0133】
図13に示す出力画面G23は、図12の出力画面G22と同様に、関係情報の出力のために用いられる。関係情報は図12ではグラフで表されていたが、図13では表で表される。より詳細には、図13の関係情報は、配管システムの高さh毎の竪樋の排水能力を示す表である。図13の関係情報は、VP75、VP100、VP125の3種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)とエルボ振りタイプ(第2配管形式)とでの、配管システムの高さhに対する排水能力の変化を示す。排水能力としては、保証値Qが用いられる。なお、図13において、「N/A」は、サイフォン現象の発生の可能性が低く実質的に利用できないことを意味している。
【0134】
図14図16は、設計支援システム1で表示される出力画面の第2例の説明図である。第2例では、管径としてVP75,VP100が指定され、設置数は指定されていないが、配管形式として第1配管形式が指定されている。
【0135】
図14に示す出力画面G21Aは、出力情報D2に含まれる設計条件及び指標を提示するための説明領域T2Aを含む。説明領域T2Aは、設計条件及び指標を表形式で表示する。説明領域T2Aは、VP75とVP100の2種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)での、排水能力、設置数、想定流量、及び、満水率を示す。
【0136】
図15に示す出力画面G22Aは、関係情報の出力のために用いられる。図15では、関係情報は図12と同様のグラフで表される。図15に示す関係情報は、VP75とVP100の2種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)での配管システムの高さhに対する排水能力の変化を示す。排水能力としては、保証値Qが用いられる。
【0137】
図16に示す出力画面G23Aは、図15の出力画面G22Aと同様に、関係情報の出力のために用いられる。関係情報は図15ではグラフで表されていたが、図16では表で表される。図16の関係情報は、VP75、VP100、VP125の3種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)での、配管システムの高さhに対する排水能力の変化を示す。排水能力としては、保証値Qが用いられる。なお、図16において、「N/A」は、図13と同様に、サイフォン現象の発生の可能性が低く実質的に利用できないことを意味している。
【0138】
このように、設計支援システム1は、配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報D1を用いて、図11及び図14に示すように、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報D2を提示する。必要流量の特定に用いられる入力情報D1は、例えば、屋根面積及び降雨強度であってよく、これらは排水の流量を計算するための専門的な知識がなくても入力可能である。そして、出力情報D2により、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を確認することができる。そのため、設計支援システム1を用いることで、必要流量を満足する配管システムを設計することが可能となる。
【0139】
特に、本発明者らは、配管システムの高さ(サイフォン有効高さ)が、サイフォン現象が発生するかどうかだけではなく、竪樋の排水能力に影響を及ぼすことに着目した。従来、サイフォン効果を利用する雨水排水システム等の配管システムにおいて、竪樋の排水能力は、「サイフォン現象発生の最低保証高さ」における排水能力であったため、配管システムの高さに関わらず、同一の排水能力で配管システムの設計をせざるを得ず、竪樋の数が実際に必要な数より多くなったり、竪樋の管径が実際に必要な関係より大きくなったりといった顧客不利益に繋がる可能性がある提案しかできていなかった。また、排水能力を確保しようとして実際に必要な管径より大きい管径の竪樋を提案する際、竪樋内の満水率が低くなって、サイフォン現象が利用できなくなるリスクがあるが、このようなリスクを提示することもできていなかった。
【0140】
しかしながら、上述したように、設計支援システム1を用いることで、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を確認することができる。そのため、サイフォン現象を利用する配管システムの設計条件(特に竪樋の管径及び数)の最適化が可能になり、従来よりも効率的で顧客にとって無駄がない、最適な配管システムの提示をすることが可能となる。
【0141】
設計支援システム1は、図12図13図15及び図16に示すような関係情報を提示する。このような関係情報により、ユーザ5は、配管システムの設計条件(特に竪樋の管径及び数)をどのように変更すべきかの判断を行いやすくなる。そのため、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化をさらに容易にする。
【0142】
[1.3 効果等]
以上述べた設計支援システム1は、表示装置22a及び入力装置21に接続される演算回路25を備え、演算回路25は、表示装置22aにより、配管システムの必要流量Qの特定に用いられる入力情報D1の入力のための入力画面を表示し、入力装置21により、入力情報D1の入力を受け付け、表示装置22aにより、入力情報D1に基づいて、配管システムが必要流量Qを満たす設計条件と、設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報D2を提示する出力画面を表示する。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0143】
設計支援システム1において、設計条件は、配管システムの竪樋の管径と、竪樋の設置数と、を含む。この構成は、配管システムの設計のさらなる容易化を可能にする。
【0144】
設計支援システム1において、指標は、竪樋の満水率に基づいて決定される。この構成は、配管システムでサイフォン現象を利用できるかどうかの把握を容易にできる。
【0145】
設計支援システム1において、満水率は、サイフォン現象を利用した場合の竪樋の排水能力と竪樋の想定流量とに基づいて決定される。この構成は、サイフォン現象の利用可能性の評価の精度を向上できる。
【0146】
設計支援システム1において、想定流量は、必要流量を設置数で除して求められる。この構成は、サイフォン現象の利用可能性の精度を向上できる。
【0147】
設計支援システム1において、設置数は、必要流量を満たす竪樋の必要数に基づいて設定され、必要数は、必要流量と排水能力とから求められる。この構成は、配管システムの設計のさらなる容易化を可能にする。
【0148】
設計支援システム1において、排水能力は、配管システムの高さ及び竪樋の管径に基づいて決定される。この構成は、排水能力の精度を向上できる。
【0149】
設計支援システム1において、出力情報D2は、配管システムの高さを含む複数の高さそれぞれでの管径と排水能力との関係を示す関係情報を含む。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化をさらに容易にする。
【0150】
設計支援システム1において、出力情報は、管径と設置数の少なくとも一方が互いに異なる複数の設計条件と、複数の設計条件にそれぞれ対応する複数の指標と、を含む。この構成は、複数の設計条件の比較を容易にする。
【0151】
以上述べた設計支援システム1は、以下の方法(設計支援方法)を実行しているといえる。設計支援方法は、表示装置22a及び入力装置21に接続される演算回路25により実行され、表示装置22aにより、配管システムの必要流量Qの特定に用いられる入力情報D1の入力のための入力画面を表示し、入力装置21により、入力情報D1の入力を受け付け、表示装置22aにより、入力情報D1に基づいて、配管システムが必要流量Qを満たす設計条件と、設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報D2を提示する出力画面を表示する。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0152】
設計支援システム1は、演算回路25を利用して実現されている。つまり、設計支援システム1が実行する設計支援方法は、演算回路25がプログラムを実行することにより実現され得る。このプログラムは、演算回路25に、設計支援方法を、演算回路に実行させるためのコンピュータプログラムである。この構成は、サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする。
【0153】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0154】
[2.1 変形例1]
変形例1にかかる設計支援システムの構成は、上記実施の形態の設計支援システム1と同様であるから、必要に応じて上記実施の形態の設計支援システム1についての図面及び符号を援用する。
【0155】
図17は、変形例1の設計支援システム1で表示される出力画面の一例の説明図である。図17に示す出力画面G21Bは、図11の説明領域T2に代えて採用され得る説明領域T41を示す。
【0156】
説明領域T41は、設計条件及び指標を表形式で表示する。説明領域T41は、VP75、VU75、VP100、VP125の4種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)での、排水能力、設置数、想定流量、及び、指標を示す。
【0157】
説明領域T41では、指標は、配管システムでサイフォン現象が利用可能であるかの表示を含む。配管システムでサイフォン現象が利用可能であるかの表示は、メッセージ又は画像等により、配管システムでサイフォン現象が利用可能であるか否かを示す。サイフォン現象が利用可能であるか否かは、満水率と閾値との比較により決定される。より詳細には、演算回路35は、満水率が第1閾値以上かつ第1閾値より大きい第2閾値以下である場合、配管システムでサイフォン現象が利用可能であると決定する。演算回路35は、満水率が第1閾値未満又は第2閾値超過である場合、配管システムでサイフォン現象が利用可能ではないと決定する。例えば、特に限定されないが、第1閾値は50%であり、第2閾値は100%である。
【0158】
VP75の管径の竪管に対しては、満水率が111%である。VP75の管径の竪管に対しては、配管システムでサイフォン現象が利用可能ではないと決定される。VP75に対応する「サイフォン現象の利用可能性」の欄には、「利用できません」というメッセージとともに、100%を超える満水率を視覚的に表示する画像T41aが表示される。このメッセージ及び画像T41aは、配管システムでサイフォン現象が利用可能ではないことの表示である。
【0159】
VU75の管径の竪管に対しては、満水率が103%である。VU75の管径の竪管に対しては、配管システムでサイフォン現象が利用可能ではないと決定される。VU75に対応する「サイフォン現象の利用可能性」の欄には、「利用できません」というメッセージとともに、100%を超える満水率を視覚的に表示する画像T41aが表示される。
【0160】
VP100の管径の竪管に対しては、満水率が80%である。VP100の管径の竪管に対しては、配管システムでサイフォン現象が利用可能ではないと決定される。VP100に対応する「サイフォン現象の利用可能性」の欄には、「利用できます」というメッセージとともに、80%の満水率を視覚的に表示する画像T41bが表示される。このメッセージ及び画像T41aは、配管システムでサイフォン現象が利用可能であることの表示である。
【0161】
VP125の管径の竪管に対しては、満水率が40%である。VP125の管径の竪管に対しては、配管システムでサイフォン現象が利用可能ではないと決定される。VP125に対応する「サイフォン現象の利用可能性」の欄には、「利用できません」というメッセージとともに、40%の満水率を視覚的に表示する画像T41cが表示される。このメッセージ及び画像T41cは、配管システムでサイフォン現象が利用可能ではないことの表示である。
【0162】
変形例1において、指標は、配管システムでサイフォン現象が利用可能であるか否かの表示(メッセージ及び画像T41a,T41b,T41c)を示す。この構成は、サイフォン現象の利用可能性を分かりやすく示すことができる。
【0163】
変形例1において、満水率が第1閾値以上かつ第1閾値より大きい第2閾値以下である場合、配管システムでサイフォン現象が利用可能であると決定される。この構成は、サイフォン現象の利用可能性を分かりやすく示すことができる。
【0164】
[2.2 変形例2]
変形例2にかかる設計支援システムの構成は、上記実施の形態の設計支援システム1と同様であるから、必要に応じて上記実施の形態の設計支援システム1についての図面及び符号を援用する。
【0165】
上記の実施の形態に関して説明した図13の出力画面G23及び図16の出力画面G23Aにおいて、竪樋の排水能力は、流量で表されている。しかしながら、竪樋の排水能力は、流量以外で表されてよい。ここで、竪樋の流量をq[l/s]、対応屋根面積をs[m]、対応降雨強度をr[m/s]とすると、q=s×rで表される。対応屋根面積sは、所定の降雨強度に対して竪樋一つで対応可能な屋根面積を意味する。換言すれば、対応屋根面積sは、軒樋の制約が無い場合に、所定の降雨強度に対して落とし口一つあたりで対応可能な屋根面積の最大値である。対応降雨強度rは、所定の屋根面積に対して竪樋一つで対応可能な降雨強度を意味する。換言すれば、対応降雨強度rは、軒樋の制約が無い場合に、所定の屋根面積に対して落とし口一つあたりで対応可能な降雨強度の最大値である。
【0166】
竪樋の流量qは、上述のQ、Q、及び、Qから選択可能である。したがって、対応降雨強度rを固定すれば、竪樋の流量qから対応屋根面積sを求めることができる。対応降雨強度rには、任意の値を用いることが可能である。入力情報D1が降雨強度Rを含む場合には、降雨強度Rを対応降雨強度rの値として用いることができる。
【0167】
図18は、変形例2の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図である。図18に示す出力画面G23Cは、関係情報の出力のために用いられる。図18の関係情報は、配管システムの高さh毎の竪樋の排水能力を示す表である。図18の関係情報は、VP75の管径に対して、直管タイプ(第1配管形式)とエルボ振りタイプ(第2配管形式)とでの、配管システムの高さhに対する排水能力の変化を示す。排水能力は、竪樋一つ当たりの屋根面積で表される。
【0168】
このように、竪樋の排水能力は、竪樋一つ当たりの屋根面積で表されてもよい。竪樋一つ当たりの屋根面積は、落とし口一つ当たりの屋根面積であるといえる。
【0169】
一方で、対応屋根面積sを固定すれば、竪樋の流量qから対応降雨強度rを求めることができる。
【0170】
このように、竪樋の排水能力は、流量、対応屋根面積、又は、対応降雨強度の少なくとも一つにより表されてよい。
【0171】
[2.3 変形例3]
変形例3にかかる設計支援システムの構成は、上記実施の形態の設計支援システム1と同様であるから、必要に応じて上記実施の形態の設計支援システム1についての図面及び符号を援用する。
【0172】
上記の実施の形態に関して説明した図13の出力画面G23及び図16の出力画面G23Aにおいて、竪樋の排水能力は、配管システムの高さ毎に表されているが、配管システムの高さの異なる区間毎に表されてもよい。配管システムの高さの異なる区間は、一定の幅を有していてよい。例えば、配管システムの高さの区間は、特に限定されないが、3m以上6未満の区間、6m以上9m未満の区間、9m以上12m未満の区間、12m以上15m未満の区間等、3mの幅の区間であってよい。各区間の排水能力は、各区間における排水能力の代表値であってよい。代表値は、最小値、最大値、中央値、中間値、平均値等の統計的な値であってよい。排水能力の保証という観点からは、各区間の排水能力は、各区間における排水能力の最小値であってよい。
【0173】
図19は、変形例3の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図である。図19に示す出力画面G23Dは、関係情報の出力のために用いられる。図19の関係情報は、配管システムの高さの区間毎の竪樋の排水能力を示すグラフである。図19の関係情報は、VP75の管径に対して、直管タイプ(第1配管形式)での、配管システムの高さの区間毎の排水能力を示す。図19において、排水能力は、流量(例えば保証値Q)で表される。
【0174】
変形例3において、竪樋の排水能力は、配管システムの高さの異なる区間毎に表される。これによって、配管システムの高さから竪樋の排水能力を把握しやすくなる。
【0175】
[2.4 変形例4]
変形例4にかかる設計支援システムの構成は、上記実施の形態の設計支援システム1と同様であるから、必要に応じて上記実施の形態の設計支援システム1についての図面及び符号を援用する。
【0176】
図20は、変形例4の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図である。図20に示す出力画面G23Eは、関係情報の出力のために用いられる。図20の関係情報は、配管システムの高さが閾値未満である第1範囲の竪樋の排水能力と、配管システムの高さが閾値以上である第2範囲の竪樋の排水能力とを示す表である。閾値は、特に限定されないが、10mである。第1範囲の竪樋の排水能力は、第1範囲における排水能力の代表値であってよい。第2範囲の竪樋の排水能力は、第2範囲における排水能力の代表値であってよい。ここで、代表値は、最小値、最大値、中央値、中間値、平均値等の統計的な値であってよい。排水能力の保証という観点からは、第1範囲又は第2範囲の排水能力は、第1範囲又は第2範囲における排水能力の最小値であってよい。
【0177】
図20の関係情報は、VP75、VP100、VP125の3種類の管径それぞれに対して、直管タイプ(第1配管形式)とエルボ振りタイプ(第2配管形式)とでの、第1範囲及び第2範囲に対する排水能力を示す。図20において、排水能力は、流量(例えば保証値Q)で表される。
【0178】
変形例4において、竪樋の排水能力は、配管システムの高さが閾値未満である第1範囲の竪樋の排水能力と、配管システムの高さが閾値以上である第2範囲の竪樋の排水能力とで表される。これによって、配管システムの高さから竪樋の排水能力を把握しやすくなる。
【0179】
[2.5 変形例5]
変形例5にかかる設計支援システムの構成は、上記実施の形態の設計支援システム1と同様であるから、必要に応じて上記実施の形態の設計支援システム1についての図面及び符号を援用する。
【0180】
図21は、変形例5の設計支援システムで表示される出力画面の一例の説明図である。図21に示す出力画面G23Fは、関係情報の出力のために用いられる。図21の関係情報は、配管システムの高さの範囲毎の竪樋の排水能力の、対応降雨強度に対する変化を示す表である。上述したように、竪樋の流量qは、q=s×rで表される。竪樋の流量qは、上述のQ、Q、及び、Qから選択可能である。したがって、流量qが決まれば、対応降雨強度rの変化に対する対応屋根面積sの変化を求めることができる。図21の関係情報は、VP75の管径に対して、直管タイプ(第1配管形式)での、配管システムの高さの第1範囲及び第2範囲に対する対応屋根面積sの、対応降雨強度rに対する変化を示す。図20において、対応屋根面積sの単位は[m]、対応降雨強度rの単位は[mm/h]である。
【0181】
変形例5において、竪樋の排水能力は、対応降雨強度毎の対応屋根面積で表される。そのため、建物の屋根面積から、必要な竪樋の管径及び設置数を計算する作業が容易になる。
【0182】
[2.6 変形例6]
変形例6において、入力情報D1は、屋根面積S、降雨強度R、及び、配管システムの高さhを直接的に含んでいる必要はなく、屋根面積S、降雨強度R、及び、配管システムの高さhを間接的に含む情報を含んでよい。屋根面積S、降雨強度R、及び、配管システムの高さhを間接的に含む情報とは、屋根面積S、降雨強度R、及び、配管システムの高さhそれ自体ではないが、これらを特定でき得る情報をいう。例えば、入力情報D1は、配管システムを設置する建物に関する建物情報を含んでよい。建物情報は、建物の構造に関する構造情報と、建物の場所に関する場所情報と、を含み得る。構造情報は、例えば、建物の建築図面を含み得る。建築図面からは、少なくとも配管システムに雨水が流れ込む建物の屋根の屋根面積及び配管システムの高さを特定できる。場所情報は、例えば、建物の所在地を含み得る。建物の所在地からは、建物の場所を特定でき、これによって、降雨強度を特定することが可能となる。
【0183】
演算回路35は、構造情報に基づいて屋根面積Sを特定し、場所情報に基づいて降雨強度Rを特定する。演算回路35は、構造情報で特定される屋根面積Sと、場所情報で特定される降雨強度Rとから、必要流量Qを求める。演算回路35は、構造情報に基づいて配管システムの高さhを特定する。このような入力情報D1から、演算回路35は、必要流量Q、及び、配管システムの高さhを求めることができる。
【0184】
変形例6において、入力情報D1は、配管システムを設置する建物の構造に関する構造情報を含む。配管システムの高さは、構造情報で特定される。この構成は、構造情報から配管システムの高さを自動的に求めるから、ユーザが配管システムの高さを入力する作業の容易化を図ることができる。
【0185】
変形例6において、入力情報D1は、配管システムを設置する建物の構造に関する構造情報及び建物の場所に関する場所情報を含む。必要流量は、構造情報で特定される屋根面積と、場所情報で特定される降雨強度とから求められる。この構成は、構造情報及び場所情報から必要流量を自動的に求めるから、ユーザが必要流量を入力する作業の容易化を図ることができる。
【0186】
[2.7 その他の変形例]
一変形例において、配管形式は、上述した第1配管形式及び第2配管形式に限定されない。第1配管形式及び第2配管形式は、雨樋システムにおいて比較的典型的な配管形式ではあるが、雨樋システムではさらに多様な配管形式が用いられていることはいうまでもない。配管形式としては、本管に対して分岐管が合流する形式や、複数の分岐管が一つにまとまる形式等が挙げられる。
【0187】
一変形例において、入力情報D1は、配管形式と、配管形式で用いられる1以上の配管部材の情報と、を含んでよい。配管部材は、特に、圧力損失が生じる配管部材から選択され得る。配管部材の例としては、エルボ、インクリーザ、ソケット、チーズ等の継手が挙げられる。
【0188】
例えば、第2配管形式においては、上述したように、ΣDは、ΣD=Da+Db1+Db2+Dcで表すことができる。Db1は、第1エルボ161近傍での圧力損失である。Db2は、第2エルボ162近傍での圧力損失である。第1エルボ161及び第2エルボ162としては、様々な周知のエルボが利用され得る。例えば、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」では、90°エルボ、90°大曲がりエルボ、45°エルボ等がある。第1エルボ161及び第2エルボ162にどのようなエルボを用いるかで、第1エルボ161及び第2エルボ162近傍での圧力損失は変化し得る。そのため、配管形式で用いられる1以上の配管部材の情報は、第1エルボ161及び第2エルボ162の種類に関する情報を含んでよい。これによって、排水能力の演算の精度の向上が期待できる。
【0189】
一変形例において、入力情報D1は、配管システムの高さhを含んでいなくてもよい。この場合、配管システムの設計条件を決めるための配管システムの高さが予め決められていてよい。
【0190】
一変形例において、検索条件は、竪樋の管径、竪樋の設置数、及び、配管形式の全てを含んでいる必要はなく、これらのうちの少なくとも一つを含んでよい。また、入力情報D1は、必ずしも検索条件を含んでいる必要はない。
【0191】
一変形例において、竪樋の管径は、竪樋に用いる配管の種類ではなく、管径を示す離散変数であってよい。管径を示す離散変数としては、表1及び表2に挙げられる近似内径の値を用いることができる。例えば、第2情報は、VU75に対応する83mm、VP75に対応する77mm、VP100に対応する100mm、VP125に対応する125mmから選択可能であってよい。竪樋の管径は、管径を示す連続変数であってよい。これによって、配管システムの設計の自由度が高い場合にも対応できる。
【0192】
一変形例において、入力画面及び出力画面は、別々の画面ではなく、一画面とされてよい。
【0193】
一変形例において、関係情報は、配管システムの設計条件及び必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と同じ画面に表示されてもよいし、別画面に表示されてもよい。また、出力情報D2は、必ずしも、関係情報を含んでいる必要はない。
【0194】
一変形例において、ボタンB1は必須ではない。設計支援システム1は、入力情報D1の入力が完了すると自動的に出力情報D2を生成してよい。
【0195】
一変形例において、設計支援システム1は、単一のコンピュータシステムで実現されてもよい。例えば、設計支援システム1は、情報端末2により実現されてよい。この場合、情報端末2の演算回路25が、処理装置3の演算回路35としても機能することになる。つまり、情報端末2の演算回路25が、入力情報D1に基づいて出力情報D2を生成する。
【0196】
一変形例において、設計支援システム1は、複数台のサーバ等のコンピュータシステムで実現されてもよい。設計支援システム1における複数の機能(構成要素)が、1つの筐体内に集約されていることは必須ではなく、設計支援システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、設計支援システム1の少なくとも一部の機能、例えば、演算回路25,35の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0197】
以上述べた設計支援システムは、雨樋システム以外の配管システムにも利用可能である。配管システムの例としては、上水道又は下水道のための配管システム、工場等の施設内において目的の流体を搬送数ための配管システムが挙げられる。つまり、配管システムで搬送する流体は、雨水に限定されない。
【0198】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0199】
[態様1]
表示装置及び入力装置に接続される演算回路を備え、
前記演算回路は、
前記表示装置により、配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報の入力のための入力画面を表示し、
前記入力装置により、前記入力情報の入力を受け付け、
前記表示装置により、前記入力情報に基づいて、前記配管システムの設計条件と、前記必要流量に対する前記設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報を提示する出力画面を表示する、
設計支援システム。
【0200】
[態様2]
前記設計条件は、
前記配管システムの竪樋の管径と、
前記竪樋の設置数と、
を含む、
態様1の設計支援システム。
【0201】
[態様3]
前記指標は、前記竪樋の満水率に基づいて決定される、
態様2の設計支援システム。
【0202】
[態様4]
前記指標は、配管システムでサイフォン現象が利用可能であるか否かの表示を含む、
態様3の設計支援システム。
【0203】
[態様5]
前記満水率が第1閾値以上かつ前記第1閾値より大きい第2閾値以下である場合、前記配管システムでサイフォン現象が利用可能であると決定される、
態様4の設計支援システム。
【0204】
[態様6]
前記満水率は、サイフォン現象を利用した場合の前記竪樋の排水能力と前記竪樋の想定流量とに基づいて決定される、
態様3~5のいずれか一つの設計支援システム。
【0205】
[態様7]
前記想定流量は、前記必要流量を前記設置数で除して求められる、
態様6の設計支援システム。
【0206】
[態様8]
前記設置数は、前記必要流量を満たす前記竪樋の必要数に基づいて設定され、
前記必要数は、前記必要流量と前記排水能力とから求められる、
態様7の設計支援システム。
【0207】
[態様9]
前記排水能力は、前記配管システムの高さ及び前記竪樋の管径に基づいて決定される、
態様6~8のいずれか一つの設計支援システム。
【0208】
[態様10]
前記入力情報は、前記配管システムを設置する建物の構造に関する構造情報を含み、
前記配管システムの高さは、前記構造情報で特定される、
態様9の設計支援システム。
【0209】
[態様11]
前記出力情報は、前記配管システムの高さを含む複数の高さそれぞれでの前記管径と前記排水能力との関係を示す関係情報を含む、
態様9又は10の設計支援システム。
【0210】
[態様12]
前記出力情報は、前記管径が互い異なる複数の前記設計条件と、前記複数の設計条件にそれぞれ対応する複数の前記指標と、を含む、
態様2~11のいずれか一つの設計支援システム。
【0211】
[態様13]
前記入力情報は、前記配管システムを設置する建物の構造に関する構造情報及び前記建物の場所に関する場所情報を含み、
前記必要流量は、前記構造情報で特定される屋根面積と、前記場所情報で特定される降雨強度とから求められる、
態様1~12のいずれか一つの設計支援システム。
【0212】
[態様14]
表示装置及び入力装置に接続される演算回路により実行され、
前記表示装置により、配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報の入力のための入力画面を表示し、
前記入力装置により、前記入力情報の入力を受け付け、
前記表示装置により、前記入力情報に基づいて、前記配管システムの設計条件と、前記必要流量に対する前記設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報を提示する出力画面を表示する、
設計支援方法。
【0213】
[態様15]
態様14の設計支援方法を、前記演算回路に実行させるための、
プログラム。
【0214】
態様2~13は、任意の要素であり、必須ではない。態様2~13は、態様14に適宜組み合わせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本開示は、設計支援システム、設計支援方法、及び、プログラム(コンピュータプログラム)に適用可能である。具体的には、サイフォン現象を利用する配管システムの設計のための設計支援システム、設計支援方法、及び、プログラムに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0216】
1 設計支援システム
21 入力装置
22a 表示装置
25 演算回路
【要約】
【課題】サイフォン現象を利用する配管システムの設計の最適化及び容易化を可能にする設計支援システム、設計支援方法、及び、プログラムを提供する。
【解決手段】設計支援システム1は、表示装置22a及び入力装置21に接続される演算回路25を備える。演算回路25は、表示装置22aにより、配管システムの必要流量の特定に用いられる入力情報D1の入力のための入力画面を表示し、入力装置21により、入力情報D1の入力を受け付け、表示装置22aにより、入力情報D1に基づいて、配管システムの設計条件と、必要流量に対する設計条件でのサイフォン現象の利用可能性の指標と、を含む出力情報D2を提示する出力画面を表示する。
【選択図】図1
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