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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】天井設置型照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240226BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240226BHJP
   F21V 14/02 20060101ALI20240226BHJP
   F21V 19/02 20060101ALI20240226BHJP
   F21S 8/02 20060101ALI20240226BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240226BHJP
【FI】
F21S2/00 600
F21V23/00 113
F21V23/00 140
F21V14/02 200
F21V19/02 400
F21S8/02 410
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021536659
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2020024400
(87)【国際公開番号】W WO2021019957
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019138849
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591186671
【氏名又は名称】株式会社エルコ
(73)【特許権者】
【識別番号】518250081
【氏名又は名称】株式会社エヴァース
(73)【特許権者】
【識別番号】391031786
【氏名又は名称】第一照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 満
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 孝仁
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-226031(JP,A)
【文献】特開2002-005738(JP,A)
【文献】特開2016-091813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 23/00
F21V 14/02
F21V 19/02
F21S 8/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
十字状に配列された4つの光センサと、この光センサの受光面と接するように配置された遮光体からなる受光部と、
同じ平面内に直交するように配された第1及び第2の回転軸が取り付けられた第1及び第2の可動体からなる傾き調整機構を有し、
上記遮光体には上記光センサの受光面と夫々対向する位置に4つの透孔が穿設され、
処置台側に置かれた傾き調整用の発光器より出射した単一の傾き調整光のうち上記透孔を通過したスポット状の4つの傾き調整光が、上記光センサの受光面に夫々集光するようになされ、
上記傾き調整機構は天井設置型照明装置を構成するハウジング内に取り付けられ、上記第2の可動体の回転中心軸上には、上記受光部と共に上記発光器側を照らす照明灯が取り付けられると共に、上記光センサからの出力に基づいて上記受光部の傾きが調整される
ことを特徴とする天井設置型照明装置。
【請求項2】
上記受光部は発光器からの傾き調整光を受光して同時に得られた上記4つの光センサからの出力を演算し、その演算出力に基づいて生成された上記受光部に対する傾き制御出力に基づいて、上記第1と第2の回転軸の回動を制御する制御回路を有する
ことを特徴とする請求項1記載の天井設置型照明装置。
【請求項3】
上記第2の可動体は第1の可動体の内側であって、該第1の可動体の回転軸と直交する回転平面内で回転自在に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1記載の天井設置型照明装置。
【請求項4】
上記第2の可動体は円錐台状をなし、この第2の可動体が逆円錐状に配置され、その上部側に上記照明灯が取り付けられると共に、その下部側に上記受光部が取り付けられた
ことを特徴とする請求項1記載の天井設置型照明装置。
【請求項5】
上記受光部と照明灯は上記第1および第2の可動体の中心軸を通る面内に配置される
ことを特徴とする請求項1記載の天井設置型照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井などに設置された照明灯からの集光位置を調整できるようにした天井設置型照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明位置をコントロールできる医療用照明装置のうち手術室などにおいて使用されている照明装置としては、特許文献1に示すようなものが知られている。特許文献1に開示された照明装置は、手術部位に発光器からの光を当て、その反射光を受光器で受け、受光した光の強弱信号に基づいて、照明灯の照明位置が手術部位に集中するように、照明灯の位置をx軸とy軸の2軸に亘り制御するようにしたものである。
【0003】
特許文献2でも特許文献1と同様に、受光器で受光した光の強弱信号によって、ハウジング1のx、y、zの3軸を調整できるようにしたものである。
【0004】
特許文献3は特許文献2と同じく、x、y、zの3軸を調整することによって天井に設置した照明灯の集光位置を調整できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-226031号公報
【文献】特開平1-134801号公報
【文献】特公昭55-25681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1と2は共に、照明灯としては複数の照明灯がハウジング内に収容され、複数の照明灯の光束の向く方向を調整することによって手術部位を無影状態で照明できるように工夫された照明装置であり、照明装置自体、自在に動く取付アーム等に支持され、取り付けアームや照明灯自体の傾きなどを動かすことで手術部位に当たる光束の位置が調整される。そのためこの照明装置は、天井にハウジングそれ自体が埋め込み固定された構成ではない。
【0007】
特許文献1は2軸調整であり、特許文献2は3軸調整であるので、その調整の仕方は相違するが、いずれも発光器からの光を一旦手術部位に当てその反射光を受光器で受光することでハウジングの軸を調整している。
【0008】
手術部位は常にハウジングと対向する位置にあるとは限らないので、常に手術部位からの反射光を受光器で受光できるとは限らない。実際にはハウジング(照明灯)を手術部位に正確に対峙させるまでの調整に時間が掛かるといった問題がある。
【0009】
特許文献3は特許文献1,2とは異なり、分娩室のような処置室において使用される天井設置型照明装置であって、ハウジング(灯具)の両端に、プリズムと光センサ及びセンサユニット駆動用モータとを一体化したセンサユニットをそれぞれ取り付け、これら2個のセンサユニットを駆動してハウジングからの光を処置部位に集光させるようにしている。そのため、センサユニットの構成、センサユニットに対する位置制御がかなり複雑になる。つまり、センサユニットが動いた回転角を計算しながら、照明灯を動かす角度を計算して駆動モータを制御することになるからである。
【0010】
そこで、この発明はこれらの問題点を解決したものであって、処置室などにおいて使用される天井設置型で、処置台に対する照明灯の集光位置を調整できる照明装置であって、ハウジング内に設けられた照明灯用の傾き調整機構を簡素化して集光位置の調整が容易な天井設置型照明装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、請求項1記載の発明に係る天井設置型照明装置は、
十字状に配列された4つの光センサと、この光センサの受光面と接するように配置された遮光体からなる受光部と、
同じ平面内に直交するように配された第1及び第2の回転軸が取り付けられた第1及び第2の可動体からなる傾き調整機構を有し、
上記遮光体には上記光センサの受光面と夫々対向する位置に4つの透孔が穿設され、
処置台側に置かれた傾き調整用の発光器より出射した単一の傾き調整光のうち上記透孔を通過したスポット状の4つの傾き調整光が、上記光センサの受光面に夫々集光するようになされ、
上記傾き調整機構は天井設置型照明装置を構成するハウジング内に取り付けられ、上記第2の可動体の回転中心軸上には、上記受光部と共に上記発光器側を照らす照明灯が取り付けられると共に、上記光センサからの出力に基づいて上記受光部の傾きが調整される
ことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載のこの発明に係る天井設置型照明装置における受光部は、発光器からの傾き調整光を受光して同時に得られた上記4つの光センサからの出力を演算し、その演算出力に基づいて生成された上記受光部に対する傾き制御出力に基づいて、上記第1と第2の回転軸の回動を制御する制御回路を有することを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決するため、請求項3記載の発明に係る天井設置型照明装置における上記第2の可動体は、第1の可動体の内側であって該第1の可動体の回転軸と直交する回転平面内で回転自在に取り付けられることを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決するため、請求項4記載の発明に係る天井設置型照明装置は、上記第2の可動体は円錐台状をなし、この第2の可動体が逆円錐状に配置され、その上部側に上記照明灯が取り付けられると共に、その下部側に上記受光部が取り付けられた、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載のこの発明に係る天井設置型照明装置における上記受光部は、第1および第2の可動体の中心軸を通る面内に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したようにこの発明に係る天井設置型の照明装置では、ハウジング内に第1と第2の可動体からなる照明灯の傾き調整機構を配し、それぞれの可動体を回転自在とすると共に、それぞれの可動体に関連して4つの光センサからなる4つの透孔を有した遮光体を光センサの受光面側に配した受光部と、さらに照明灯を配し、処置台側に置かれた傾き調整用の発光器より発せられた傾き調整光を利用して光センサからの4つの受光信号に基づいて、処置台に対する受光部の傾きを検知して、この受光部が常に処置台と対峙するように受光部に同期して照明灯の傾きを調整できるようにしたものである。
【0017】
これによれば、発光器側からの直接光を傾き調整光として用いると共に、この直接光から同時に得られるスポット状に集光した光を用いて照明灯の傾きを調整できるため、傾き調整が容易で、かつ正確に行うことができる。傾き調整用として使用される2つの可動体はハウジング内で同一回転軸上に回転自在に配されると共に、これら可動体に関連して受光部と照明灯が配されているため、受光部と照明灯が同期して傾きが調整されるようになり、傾き調整機構の構成を簡略化できる特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】天井に備え付けられる照明灯を備えた天井設置型照明装置の一例を示す斜視図である。
図2図1の分解斜視図である。
図3】その一部を示す分解斜視図である。
図4図1の主要部を含む要部の平面図である。
図5図4の横方向の断面図である。
図6図5と直交する方向の断面図である。
図7】受光部の一例を示す要部の斜視図である。
図8】その横断面図である。
図9】センサ部と受光スポットとの関係を示す説明図である。
図10】発光器の一例を示す平面図である。
図11】その断面図である。
図12】4つの光センサと3軸の関係を示す説明図である。
図13】x軸方向に配された一対の光センサA、Bを用いた傾き調整のための説明図であって、発光器とセンサ部とが正対しているときの説明図である。
図14】発光器とセンサ部とが正対していない状態から、正対させたときの発光器とセンサ部の関係を示す説明図である。
図15】y軸方向に配された一対の光センサC、Dを用いた傾き調整のための説明図であって、発光器とセンサ部とが正対しているときの説明図である。
図16】発光器とセンサ部とが正対していない状態から、正対させたときの発光器とセンサ部の関係を示す説明図である。
図17】天井型照明装置の制御系の一例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0019】
続いて、この発明に係る天井型照明装置の一例を図面を参照して説明する。
手術室などにおいて使用される天井設置型照明装置は、上述した文献に開示されているように、術者や補助者が自由にその照明する方向や高さを調整できるようにしているが、以下説明する例は、分娩室などで使用される天井設置型の照明装置に適用した場合である。この種照明装置は一般にその天井に固定されている場合が多いので、処置台(処置ベット)のうち処置する場所に充分な光が届くようにするため、照明装置からの光の方向(集光方向)を微調整できるように工夫されている。
【0020】
図1は、この発明に係る天井型照明装置の一例を示す斜視図である。図2および図3の分解斜視図を参照しながら説明する。
【0021】
天井に設けられる照明装置10は図1及び図2で示すように、埋め込み型であって、天井内に埋め込んだ状態で取り付け固定されるハウジング20を有し、このハウジング20内に処置用に使用する照明灯60と、照明灯60の照射方向(光線の出射方向)を微調整するための傾き調整機構30が設けられている。
【0022】
ハウジング20は箱形に成型された金属板体が使用され、室内に向かってハの字状に開口した端縁22が設けられ、その中心部には所定の内腔24を持った底板26を有する。
【0023】
この底板26によって仕切られたハウジング20の内部に、上述した照明灯60と、その傾き調整機構30が設けられている。
【0024】
傾き調整機構30は、処置室の天井平面(天井面)のうち横方向をx、奥行き方向をy方向とするとき、この(x-y)平面内にそれぞれ回転して、照明灯60の傾きを調整するためのものであり、第1の可動体30Aと第2の可動体30Bとで構成される。何れも軽量化などの観点から樹脂製からなる成型物が使用される。
【0025】
第1の可動体30Aはx軸に関する照明灯60の傾きを調整する部材であり、ハウジング20に対して自由にそれ自身の傾きを調整することができる。この第1の可動体30Aは、図2に示すようなドーナツ状の可動体(回転体)であり、第1の可動体30Aの外周面に一対の回転軸が設けられる。図4に示すように、左右の回転軸の一方36bは底板26に設置された軸支部36に支承され、他方の回転軸36aは底板26に固定された駆動モータMxの駆動軸に連結されている。
【0026】
一対の回転軸36a、36bは第1の可動体30Aの内側に設けられた補強用のリブ34a,34bに取り付け固定されているが、これは第1の可動体30Aに対する機構的な取付強度を保つためである。
【0027】
図2および図3に示すように、第2の可動体30Bは第1の可動体30Aの内側に配置されるものであって、上下が開口された円錐状(ロート状)の回動体である。第2の可動体30Bは天井面に対し、y軸に関する傾きを調整するための部材である。そのため、第1の可動体30Aと同様にその外周面であって、第1の可動体30Aの回転軸(x軸)と直交するように、第2の可動体30Bの外周面に一対の回転軸46a、46bが設けられ(図4および図6参照)、一方の回転軸46b(図6で右側)は第1の可動体30Aのリブ34dを利用して取り付けられた軸支部31に支承され、他方の回転軸46aとしては第1の可動体30Aのリブ34cに取付固定された駆動モータMyの駆動軸が利用される。
【0028】
このように第1と第2の可動体30A,30Bで傾き調整機構30を構成すれば、第1の可動体30Aは天井面の横方向(x軸方向)の傾きを自由に調整でき、第2の可動体30Bは第1の可動体30Aに対し独立して第2の可動体30B自身のy軸方向に対する傾きを調整できることになる。
【0029】
傾き調整機構30には後述するように傾き検知用の受光部40と、この受光部40に同期してその傾きが調整される照明灯60が設けられ、傾き調整機構30を用いて照明灯60の照明方向(集光方向)が適切に調整される。上述した駆動モータMx、Myには減速機構が内在されており、比較的緩やかにx、y軸方向の傾きを調整できるように工夫されている。
【0030】
第2の可動体30Bの内部には照明灯60の傾きを調整するときに使用される受光部40が設けられる。後述するようにリモコン構成の発光器110(図17参照)から発せられた傾き調整用の基準光(例えば赤外線からなる傾き調整光)を、受光部40で受光し、その受光量の変化に基づいて発光器110の発射位置を特定し、受光部40が常に発光器110と正対するように、一対の駆動モータMx、Myが適宜制御される。
【0031】
発光器110の位置は処置部位と同じ位置とみなすことができるので、受光部40が発光器110と正対すれば、受光部40と同期して傾きが制御される照明灯60もまた処置部位と適切な位置に対峙することになる。よって、適切な光量で処置部位の位置を照明できる。発光器110や受光部40を含めたモータ制御例については後述する。
【0032】
受光部40は、第2の可動体30Bの内部であって、第1と第2の可動体30A、30Bの回転中心軸(z軸)上に位置するように取り付けられるものであって、そのため、この例では図3および図5図6に示すように三点支持が採用され、受光部40の外周から三方に延びるワイヤ44が利用され、これらを第2の可動体30Bの内周面に取り付け固定することで、受光部40を宙吊り状態で第2の可動体30Bの内面に支持することができる。
【0033】
ワイヤ44による三点支持を採用したのは照明灯60からの光ができるだけ遮られないで処置台まで到達するようにするためである。ワイヤ44による三点支持の場合、モータ駆動時受光部40が揺れたり、振動することも考えられるため、図3に示すように受光部40の外周にはダンパー用のリング56を用いてワイヤ44を支持して、振動軽減効果を付与している。第2の可動体30Bの斜面の一部には、図3図5に示すようにワイヤ44を通すための切欠54が設けられている。
【0034】
第2の可動体30Bの内側であって、受光部40の上面例には、図3のように照明灯60が取り付けられたラッパ状の放射体からなる集光用のプロジェクター50を有する。プロジェクター50の頂面側は開口され、開口部を塞ぐように平板状の照明灯60が取り付けられ、プロジェクター50の端縁58側は第2の可動体30Bの端縁34の内部に係合することでプロジェクター50が第2の可動体30Bと一体化される。プロジェクター50の端縁58と第2の可動体30Bの端縁34は同一径となされて両者が合体された構成となされる。
【0035】
これで、第2の可動体30Bのy軸方向に回転(傾き)すれば、これと共に照明灯60も回転することになる。プロジェクター50は照明灯60からの光の範囲を制限し、処置台上に集光されるためのものである。
【0036】
照明灯60は面状照明灯であって、この例では所定の個数が平面上に配置されたLEDで構成されると共に、その頂面側には放熱板62が取付られている。LEDの使用個数は処置台上で必要とされる明るさ(照度)に応じて選定される。
【0037】
ここで、上述したように照明灯60に対する傾き調整を行うため、処置室内にはリモコンとして機能する発光器110(図15)が用意され、一方照明装置10側には図3図5などに示すように、上述した受光部40が設けられている。受光部40を構成するこの例では4つの光センサA~D(図9等参照)の各受光量の大小を判別することで、発光器110に対する受光部40の傾きを知ることができる。受光部40の傾きは照明灯60の傾きと一致しているので、受光部40の傾きを調整することで照明灯60の傾きを調整することができる。
【0038】
図7は傾き調整機構30のうちその中心部に配置される受光部40の一例を示す斜視図、図8はその横断面図である。受光部40はほぼ十字状に配された4つの光センサA~Dからなるセンサ部45を有し、このセンサ部45は回路基板43上に取り付けられると共に、この回路基板43を介してケース42に取り付け固定される。
【0039】
光センサとしてこの例では赤外線センサが使用され、光センサ部45の前面(受光面)側には、光を所定のエリアのみに当てる遮光体55が光センサ部45と接するように配される。所定エリアとは図9に示すように、この例では光センサA~Dの四隅(角部)付近であってこれら四隅付近に光束が集光するように遮光体55が配される。
【0040】
遮光体55には4つの透孔47が設けられる。4つの透孔47は光センサA~Dと対峙すると共に、光スポットが図9の破線図示の位置に、図のような大きさで集光するように、遮光体55の厚みと径の大きさが選定される。例えばセンサ部45の大きさが2×2cmの正方形状であるとき、実験によればスポット径は2.5mm程度に選定される。
【0041】
このように光スポットを敢えて中央からずらして四隅に集光させたのは、光センサを近接配置しても、各センサ出力に基づいて受光量の差を検出できるようにするためであり、また各光センサの感度のバラツキによる影響をできるだけ少なくするためである。遮光体55に設けられた一対の腕55a,55bによってケース42内に設けられたボス42bに締め付け固定される。
【0042】
センサ部45と遮光体55は蓋48によって閉塞される。蓋48に設けられた脚49を用いてケース42の外部から固定される。
【0043】
蓋48の中央部は所定の幅と長さを有するスリット48aが形成され、このスリット48aによって外部からの不要な光がセンサ部45に差し込まないように工夫されている。受光部40の傾きを調整するための傾き調整光は、このスリット48aを介してセンサ部45に到達する。
【0044】
続いて、発光器110について説明するも、これは傾き調整機構30の傾き(x軸方向及びy軸方向)を調整するためのリモコンとして機能する。
【0045】
図10は発光器110の平面図であり、図11はその横断面図である。発光器110は回路基板112上に取り付けられた複数の発光ダイオード120を有する。発光ダイオード120としてこの例では3個の赤外線発光ダイオード(IR・LED)が使用され、これらが図10のようにほぼ120°の間隔で同一円周上に配置される。赤外線発光ダイオードに代えて可視光発光ダイオードを使用することもできる。
【0046】
発光ダイオード120の上面には凸レンズ114を介して保護カバー116が配され、この凸レンズ114の作用で夫々の発光ダイオード120からの光(光束)が混合された状態で受光部40側に届くように工夫されている。受光部40までは2~3mほどの距離が有るのでそれに見合った光出射強度となるように発光ダイオードの強度が調整される。
【0047】
なお、各発光ダイオードからの傾き調整光(光信号)はパルス変調されたものが使用される。これは外光による影響を避けると共に、照明灯60の強さそのものを、パルス幅を変えることで制御できるようにするためである。パルス幅変調に代えて周波数を可変することでも同じ効果が得られる。
【0048】
図10において、118は光信号のオン・オフを司るスイッチであり、119はスイッチを押す毎に”強””中””弱”と光量を可変する調光スイッチである。
【0049】
続いて、照明灯60の傾きを調整例を図12以下を参照して説明する。
図12のように、受光部40を十文字状(田の字状)に配列された4つの光センサA、B、C、Dで構成し、その中心(十文字の中心)Pを回転中心としたとき、中心pを通る垂直軸zに対し、これと互いに直交する2軸(x、y軸)によって形成される(x-y)平面は、上述したように天井の面と同一の平面となるように、上述した受光部40の傾き調整機構30が配置される。
【0050】
受光部40は傾き調整機構30と一体化されているので、受光部40の傾きを変えることで処置台に投光される照明灯60の集光位置が変わる。発光器110からの光スポットSa~Sdは、上述したように光センサA~Dの各受光面の全面に集光するのではなく、図9のように、光センサA~Dの四隅(コーナー部)にのみ集光するように、センサ部45に対する遮光体55の透孔47の位置及び大きさが選定されている。
【0051】
受光部40の傾きは以下のように調整される。
まず、受光部40の(x-y)平面が天井面と並行になっているときで、発光器110の出射中心qが受光中心pと正対しているときの例を図13図15に示す。図13はx軸上に並んだ一対の光センサA、Bの関係を示し、図15はy軸上に並んだ一対の光センサA、Cの関係を示す。
【0052】
傾き調整モードとしては、x軸を駆動して受光部40をx軸の周りに回転させる(傾ける)x軸調整モードと、y軸の周りに受光部40を回転させる(傾ける)y軸調整モードがある。
【0053】
(1)まず、光センサA~Dの各受光量をLa~Ldとするとき、x軸調整モードでは、
La+Lb=Lc+Ld・・・・(1)
となるまで、すなわち左辺の受光量の和と、右辺の受光量の和が等しくなるように
x軸が回転制御される(図12参照)。これによって、x軸上の傾きが調整される。
【0054】
同様に、y軸制御モードでは、
La+Lc=Lb+Ld・・・・・(2)
となるまで、図12矢印のようにy軸が回転制御されることで、y軸上の傾きが調整される。
【0055】
図13のように光センサA、Bから出射中心qまでの距離をa、bとするとき、出射中心qと受光中心pとが正対している場合には、a=bであるので、光センサA、Bの各受光量La,Lbは、
La=Lb
となり、光センサC,Dの各受光量Lc、Ldは、
Lc=Ld
となる。a=bであるので、x軸方向に対して隣り合う光センサAとB及びCとDの受光量の和は、(1)式と等しく、
La+Lb=Lc+Ld ・・・・(3)
となる。
【0056】
同じく、y軸方向に対して隣り合う光センサAとCおよびBとDの受光量の和は、
(2)式と同じく、
La+Lc=Lb+Ld ・・・・(4)
となるから、受光量は共に平衡状態を保持する。そのため、駆動モータMx、Myは何れも駆動制御されない。つまり、x軸及びy軸とも傾きの調整は行われない。
【0057】
(2)図13のように-x軸方向にΔxだけ発光器110の出射中心qを動かしたときには、つまり受光中心pに対しΔxだけずれているときには、
a’<b’となる。受光量は距離の二乗に反比例するから、この場合には、
La’>Lb’なり、同じく図示はしないが、Lc’>Ld’となって、受光量の平衡関係は崩れる。しかし、La’=Lc’、Lb’=Ld’であるため、光センサAとBの受光量の和と、光センサCとDの受光量の和の関係は、
La’+Lb’=Lc’+Ld’ ・・・・(5)
となって、平衡関係は保持される。そのため、x軸モータMxは駆動されない。
【0058】
これに対し、光センサAとCの受光量の和と光センサBとDの受光量の和の関係は、
La’+Lc’>Lb’+Ld’・・・・(6)
となって、平衡関係が崩れ、(6)式が平衡するまで、y軸モータMyが駆動される(図14参照)。
【0059】
その結果、図12矢印で示すようにy軸のみが駆動され、受光部40は図14のように出射中心qに受光中心pが正対してa”=b”となるように、その傾きが制御される。
【0060】
(3)上述とは逆に図15のように、-y軸方向にΔyだけ出射中心qがずれているときには、c’<a’となる。
そのため、受光量LaとLcは、Lc’>La’となり、同様に、Ld’>Lb’となって、平衡関係が崩れるが、光センサA,Bと、C,Dはx軸に関して並行しているので、Lc’=Ld’,La’=Lb’ ・・・・(7)
となる。この関係式より光センサAとCの和と光センサBとDの和の関係は
La’+Lc’=Lb’+Ld’・・・・・(8)
となって、平衡関係は保持される。
【0061】
しかしながら、光センサCとDの和と光センサAとBの和の関係は、
Lc’+Ld’>La’+Lb’・・・・・(9)
となるから、(9)式の両辺が一致するまでx軸モータMxが駆動される。
【0062】
その結果、図12矢印で示すように、y軸が駆動され、受光部40は図16のようにx軸側であって、出射中心qに受光中心pが正対してa”=b”となるようにその傾きが制御される。
【0063】
(4)出射中心qがx、y軸上から外れた(x-y)平面内にあるときは、Δx、Δyとも有限の値をとるので、その場合には、上述した項目(2)と(3)の制御が共に実行されて、出射中心qに追随して受光部40の傾きが制御される結果、常に受光中心pが出射中心qと正対するように自動制御される。具体的には図12のようにモータMx,Myを駆動してx軸とy軸を回動制御することによって、受光中心pを出射中心qに正対させることができる。これによって、照明装置10を常に処置台の所望とする位置付近に集光させることが可能になる。この受光部40の自動追尾は発光器110がオンしている間だけ行われる。
【0064】
図17は傾き調整機構30に設けられた傾き制御系100の一例を示す。
受光部40には上述したセンサ部45とセンサ部45からの4つの出力信号を演算する演算回路140が設けられ、4つの演算出力はハウジング20の上部に取付られたマイコン制御回路142に供給される。
【0065】
演算回路140では(1)及び(2)式に示す信号のうち、x軸に関する演算(CX)、
La+Lb=CX1
Lc+Ld-=CX2
と、y軸に関する演算(CY)、
La+Lc=CY1
Lb+Ld=CY2
が交互に行われ、これら演算出力はマイコン制御回路142でその大小が判別される結果、マイコン制御回路142の出力で上述したようにモータMx、Myの回転量と回転方向が制御される。判別結果が(3)式と(4)式と同じになれば、センサ部45の傾き調整は行われず、CX1の演算結果が(6)式のようになればモータMyのみが駆動されて、y軸の傾き調整が行われる。同様に、演算結果が(9)式となれば、今度はモータMxが駆動されて(9)式の両辺が一致するまでモータMxが制御される。
【0066】
演算結果が(6)式と(9)式となれば、両式の左辺と右辺が等しくなるように、モータMxとMyが交互に制御されるので、結果として受光部がx軸、y軸のいずれの方向に傾いていたとしても、最終的には受光部40が発光器110と正対するように制御される。
【0067】
このほかにマイコン制御回路142では照明灯60の明るさを調整するための出力信号も生成される。マイコン制御回路142は発光器110のスイッチ119からの信号を読み取り、スイッチが押される毎に”強””中””弱”の信号が照明灯60に対する照明制御回路146に供給され、調光される。明るさは、照明灯60への印加電圧等をPWM制御することで達成できる。
【0068】
なお、図17において、回路102は主電源回路であり、回路144は制御回路130等に対する電源回路である。
【0069】
上述した実施例は、この発明を医療用の照明装置に適用したが、照明灯の集光位置を調整する必要のある天井型の照明装置にもこの発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明は、医療用として使用される天井に埋め込まれた照明装置に適用して好適である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・医療用照明装置
30・・・傾き調整機構
30A、30B・・・第1および第2の可動体
40・・・受光部
45・・・センサ部
47・・・透孔
48・・・蓋
55・・・遮光体
60・・・照明灯
110・・・発光器
120・・・赤外線発光ダイオード
114・・・凸レンズ
A~D・・・光センサ
p・・・・・受光中心
q・・・・・出射中心
Mx,My・・・傾き制御モータ
図1
図2
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図17