(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】測定端末、測定システム、測定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20240226BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240226BHJP
【FI】
G01H17/00 C
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2022127946
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2018121556の分割
【原出願日】2018-06-27
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮太
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-180648(JP,A)
【文献】特開2011-027452(JP,A)
【文献】特開平03-289596(JP,A)
【文献】特開2005-180997(JP,A)
【文献】特開2015-114214(JP,A)
【文献】特開2012-078288(JP,A)
【文献】特開2002-181038(JP,A)
【文献】特開2004-361286(JP,A)
【文献】特開平11-326035(JP,A)
【文献】特開昭58-108419(JP,A)
【文献】特開2008-232934(JP,A)
【文献】特開昭52-129541(JP,A)
【文献】特開平08-122305(JP,A)
【文献】特開2020-003282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 17/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物からの音データを取得する取得部と、
前記検査対象物に対応する設定情報を前記検査対象物ごとに保持するメモリと、
前記設定情報に基づいて、前記検査対象物の検査に用いる前記検査対象物の音データの取得時間を導出する導出部と、
前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データの取得を促す表示をディスプレイに表示する制御部と、を備え、
前記設定情報は、前記検査対象物の検査スケジュールと、前記検査対象物の異常の発生に関する重要度と、を含む、
測定端末。
【請求項2】
前記設定情報は、前記検査対象物の音データの発生パターンを含む、
請求項1に記載の測定端末。
【請求項3】
前記導出された取得時間分の前記検査対象物の音データに基づいて、前記検査対象物の異常の有無を判定する解析部を備える、
請求項1に記載の測定端末。
【請求項4】
検査対象物からの音データを取得するステップと、
前記検査対象物に対応する設定情報を前記検査対象物ごとにメモリに保持するステップと、
前記設定情報に基づいて、前記検査対象物の検査に用いる前記検査対象物の音データの取得時間を導出するステップと、
前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データの取得を促す表示をディスプレイに表示するステップと、を有し、
前記設定情報は、前記検査対象物の検査スケジュールと、前記検査対象物の異常の発生に関する重要度と、を含む、
測定方法。
【請求項5】
検査対象物からの音データを取得する取得部と、取得された前記検査対象物からの音データおよび前記音データの解析指示を送信する第1の通信部と、を備える測定端末と、
前記検査対象物からの音データおよび前記解析指示を前記測定端末より受信する第2の通信部を備える解析装置と、により構成される測定システムであって、
前記解析装置は、さらに、
前記検査対象物の検査の特徴に関するパラメータおよび異常の特徴に関するパラメータを含む設定情報を前記検査対象物ごとに保持するメモリと、
前記検査対象物に対応する前記設定情報に基づいて、前記検査対象物の前記検査に要する前記検査対象物の音データの取得時間を導出する導出部と、
前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データに基づいて、前記検査対象物の異常の有無を判定する解析部と、
前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データの取得を促す表示をディスプレイに表示する制御部と、を備え、
前記設定情報は、前記検査対象物の検査スケジュールと、前記検査対象物の異常の発生に関する重要度と、を含む、
測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査対象物の音データを取得する測定端末、測定システム、測定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータやコンプレッサ等の振動部を有する製品に取り付けられた計測センサ(例えば加速度センサ)により計測された計測データから時間軸波形を求めて時間軸波形を解析する時間軸波形解析と、周波数軸波形を求めて周波数軸波形を解析する周波数軸波形解析とを並列実行する異常判定装置が開示されている。この異常判定装置は、時間軸波形解析および周波数軸波形解析の総合判定結果から製品の異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、異常判定の度に、振動部を有する製品に取り付けられた計測センサからの計測データが例えば1024点の固定となるデータブロックが用いられる。このため、検査対象物の異常の有無を迅速に判定するために、どの程度の時間分の計測データが必要であるかについては考慮されていない。従って、特許文献1の構成では、検査対象物の異常の有無を迅速かつ効率的に判定することは困難であるという課題があった。
【0005】
本開示は、上述した従来の状況に鑑みて案出され、検査対象物の検査および異常のそれぞれの特徴を考慮して、異常の有無を判定するための測定データの適切な測定時間を導出し、異常の有無の迅速かつ効率的な判定を支援する測定端末、測定システム、測定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、検査対象物からの音データを取得する取得部と、前記検査対象物に対応する設定情報を前記検査対象物ごとに保持するメモリと、前記設定情報に基づいて、前記検査対象物の検査に用いる前記検査対象物の音データの取得時間を導出する導出部と、前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データの取得を促す表示をディスプレイに表示する制御部と、を備え、前記設定情報は、前記検査対象物の検査スケジュールと、前記検査対象物の異常の発生に関する重要度と、を含む、測定端末を提供する。
【0007】
また、本開示は、検査対象物からの音データを取得するステップと、前記検査対象物に対応する設定情報を前記検査対象物ごとにメモリに保持するステップと、前記設定情報に基づいて、前記検査対象物の検査に用いる前記検査対象物の音データの取得時間を導出するステップと、前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データの取得を促す表示をディスプレイに表示するステップと、を有し、前記設定情報は、前記検査対象物の検査スケジュールと、前記検査対象物の異常の発生に関する重要度と、を含む、測定方法を提供する。
【0008】
また、本開示は、検査対象物からの音データを取得する取得部と、取得された前記検査対象物からの音データおよび前記音データの解析指示を送信する第1の通信部と、を備える測定端末と、前記検査対象物からの音データおよび前記解析指示を前記測定端末より受信する第2の通信部を備える解析装置と、により構成される測定システムであって、前記解析装置は、さらに、前記検査対象物の検査の特徴に関するパラメータおよび異常の特徴に関するパラメータを含む設定情報を前記検査対象物ごとに保持するメモリと、前記検査対象物に対応する前記設定情報に基づいて、前記検査対象物の前記検査に要する前記検査対象物の音データの取得時間を導出する導出部と、前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データに基づいて、前記検査対象物の異常の有無を判定する解析部と、前記導出された取得時間分の前記検査対象物からの音データの取得を促す表示をディスプレイに表示する制御部と、を備え、前記設定情報は、前記検査対象物の検査スケジュールと、前記検査対象物の異常の発生に関する重要度と、を含む、測定システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、検査対象物の検査および異常のそれぞれの特徴を考慮して、異常の有無を判定するための測定データの適切な測定時間を導出でき、異常の有無の迅速かつ効率的な判定を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る音検査システムにおける点検時の利用状況例を示す図
【
図2】実施の形態1に係る音検査システムのハードウェア構成例を示すブロック図
【
図3】検査対象物から発せられる正常な振動音の時間変化例を示す波形図
【
図4】検査対象物から発せられる異常な振動音の時間変化例を示す波形図
【
図6】実施の形態1に係る測定端末の測定時間算出処理の動作手順例を示すフローチャート
【
図8】実施の形態1に係る測定端末の点検処理の動作手順例を示すフローチャート
【
図9】第2変形例に係る音検査システムの動作手順例を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る測定端末、測定方法およびプログラムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る音検査システム5における点検時の利用状況例を示す図である。音検査システム5の検査の対象となる検査対象物は、例えば振動音を発する製品である。例えば、工場および商業施設等の建物100には、空調ファン102、コンプレッサ101、電気給湯器用のヒートポンプ103等、多くの検査対象物が設置されている。なお、検査対象物となる製品は、これらの機器に限らず、発電機、エレベータ、自動ドア、掃除機、フォークリフト等、振動音を発する種々の物であってよい。
【0013】
検査員hmは、これらの検査対象物を定期的に巡回し、測定端末10を用いて検査対象物が発する振動音を測定する。
図1に示す利用状況では、検査員hmは、建物100に隣接する地面に設置されたコンプレッサ101に測定端末10をかざし、コンプレッサ101が発する振動音を測定している。また、検査員hmは、建物100の壁面に取り付けられた空調ファン102、給油タンクに隣接するヒートポンプ103に近づいてそれぞれ測定端末10を向け、空調ファン102、ヒートポンプ103がそれぞれ発する振動音を測定する。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る音検査システム5のハードウェア構成例を示すブロック図である。音検査システム5は、測定端末10と、クラウドサーバ40と、ストレージ50とを含む構成である。測定端末10と、クラウドサーバ40と、ストレージ50とは、ネットワークNWを介して互いに通信可能に接続される。
【0015】
測定端末10は、プロセッサ11と、メモリ12と、マイク13と、記録装置14と、通信回路15と、ディスプレイ16と、入力デバイス17と、タイマカウンタ18とを含む構成である。
【0016】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶された測定時間算出アプリケーションを起動し、検査対象物を点検する際、この測定時間算出アプリケーションの実行中にマイク13が収音するための音の測定時間を算出する。また、プロセッサ11は、メモリ12に記憶された点検アプリケーションを起動し、この点検アプリケーションの実行中に検査対象物の点検動作を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processor Unit),DSP(Digital Signal Processor)あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等が用いられる。
【0017】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)を有し、マイク13で収音された音の音データを一時記憶する。メモリ12は、ROM(Read Only Memory)を有し、測定時間算出アプリケーション、点検アプリケーションのそれぞれプログラムおよびデータを格納する。
【0018】
マイク13は、検査対象物が発する振動音を収音し、音データを生成してプロセッサ11に出力する。マイク13は、例えば無指向性マイクあるいは指向性マイクでよい。マイク13として、例えばダイナミックマイク(ムービングコイル型、リボン型)、コンデンサマイク(例えばECM(エレクトレックコンデンサマイク))等が用いられる。
【0019】
記録装置14(メモリの一例)は、測定された音データと比較される、正常な音データおよび異常な音データをそれぞれ記憶する。記録装置14は、検査対象物ごとに異なるパラメータおよび測定時間がそれぞれ登録されたパラメータテーブル90を記憶する。記録装置14は、例えばSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、書き換え可能なROM(例えばEEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等で構成される。
【0020】
通信回路15は、例えば無線LAN(Local Area Network)、モバイル通信網(例えば4G(第4世代移動通信システム)、5G(第5世代移動通信システム)等のセルラネットワーク網)を介して、ネットワークNWに接続され、クラウドサーバ40あるいはストレージ50との間で通信可能である。
【0021】
ディスプレイ16は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)、プラズマディスプレイ等の表示デバイスで構成される。ディスプレイ16は、検査対象物ごとに設定情報を設定するための設定画面を表示する。
【0022】
入力デバイス17は、検査対象物ごとの設定情報を設定する場合等、検査員hmによる操作を受け付ける。入力デバイス17は、例えばマウス、トラックボール、キーボード、タッチパッド等で構成される。ここでは、ディスプレイ16および入力デバイス17は、タッチパネルTPで一体に構成される。
【0023】
タイマカウンタ18は、プロセッサ11によりセットされたプリセット値を時間の経過と共に減算する(カウントダウンを行う)ダウンタイマである。なお、タイマカウンタ18の構成は、プロセッサ11においてソフトウェア的に実現されてもよい。
【0024】
クラウドサーバ40は、ネットワークNWを介して、測定端末10等に通信可能に接続される。クラウドサーバ40は、測定端末10から送信された音データを内部メモリ(図示略)に記憶し、また、内部メモリに記憶された音データやストレージ50に蓄積された音データを使用して音データを解析する処理を行う。クラウドサーバ40は、プロセッサ41と、メモリ42と、記録装置44と、通信回路45とを含む構成である。これらの各部の詳細については、後述する第2変形例において詳述する。
【0025】
ストレージ50は、ネットワークNWを介して、測定端末10やクラウドサーバ40に接続され、測定端末10や他の機器から送信された音データを膨大に蓄積する。
【0026】
ネットワークNWは、インターネットや有線LAN(Local Area Network)等であり、各種の機器を通信可能に接続する。
【0027】
次に、実施の形態1に係る音検査システム5の動作を説明する。
【0028】
音検査システム5は、検査対象物である製品から発せられる振動音を基に、検査対象物の異常の有無を判定する。検査対象物から発せられる振動音には、異常な音である振動音と、正常な音である振動音とがある。
【0029】
図3は、検査対象物から発せられる正常な振動音の時間変化例を示す波形図である。
図3の縦軸は音圧レベルを表し、
図3の横軸は時間を表す。振動音が正常である場合、例えば検査対象物の製品が起動している区間tpでは、振動音は、閾値th以下でほぼ一様な音圧レベルを示す。
【0030】
図4は、検査対象物から発せられる異常な振動音の時間変化例を示す波形図である。
図4の縦軸は音圧レベルを表し、
図4の横軸は時間を表す。振動音が異常である場合、例えば、
図4では、
図3と同様の区間tpにおいて、音圧レベルが閾値thを超えるような、大きな振動音sdが間欠的(不定期)に発生している。
【0031】
ここでは、異常な振動音として、不定期な異常音、つまり非定常的に起きる異常音を示したが、定常的に大きな音が発生する異常音でも同じである。これらの振動音は、時間軸に対する音圧レベルを表すグラフで表現される。この場合、振動音が閾値を超える大きな音を含むことで、異常音と判定される。また、異常音が特定の周波数成分を含む場合、振動音は、周波数軸に対する音圧レベルを表すグラフで表現される。この場合、音圧が閾値未満であっても、振動音が特定の周波数成分の音を含むことで、異常音と判定される。なお、異常音の判定は、時間軸および周波数軸の一方だけでなく両方に対する音圧レベルを基に、行われてもよい。
【0032】
(測定時間の算出)
図5は、測定端末10の動作概要例を示す図である。測定端末10のディスプレイ16は、プロセッサ11からの指示に従い、検査対象物ごとの設定情報を設定するための設定画面GM1を表示する。設定画面GM1には、検査スケジュール、異常発生パターン、および異音重要度の3つの選択項目が表示される。検査スケジュールの選択項目では、毎日検査を行うことを表す「毎日」と、所定の日数ごとに検査を行うことを表す「○日に△回」とが選択可能である。「○日に△回」として、例えば「2日に1回」が挙げられる。なお、「3日に1回」、「4日に1回」等が選択可能であってもよい。
【0033】
異常発生パターンの選択項目では、異音が定常的に発生することを表す「異音が続く」と、異音が非定常的に発生することを表す「異音が不定期に発生」とが選択可能である。
【0034】
異音重要度の選択項目では、重要度の高い検査対象物であることを表す「できるだけ早く検査したい」と、重要度の低い検査対象物であることを表す「故障前に検査したい」とが選択可能である。
【0035】
検査員hmは、タッチパネルTPのディスプレイ16に表示された選択項目を指でタッチすることで、上記選択項目を選択可能である。
【0036】
プロセッサ11は、タッチパネルTPの入力デバイス17を介して、検査員による設定画面GM1に対する選択操作を受け付けると、検査対象物ごとの設定情報を作成する。プロセッサ11は、メモリ12との協働により実現可能な測定時間算出部11zの機能を有し、作成した設定情報に従い、マイク13で収音し続ける時間である測定時間Tmを算出する。
【0037】
ディスプレイ16は、プロセッサ11によって点検アプリが起動すると、点検画面GM2を表示する。点検画面GM2には、測定開始ボタンbtが表示される。ディスプレイ16は、プロセッサ11からの指示に従い、測定開始時に収音を促すポップアップ画面pgmを表示する。ポップアップ画面pgmには、例えば「○○秒収音して下さい」のメッセージが表示される。検査員hmは、このメッセージに従い、測定開始ボタンbtを押下すると、マイク13による収音が開始する。
【0038】
図6は、実施の形態1に係る測定端末10の測定時間算出処理の動作手順例を示すフローチャートである。
図6の説明の前提として、測定端末10に予めインストールされた測定時間算出アプリケーションは起動済みである。測定時間Tmの算出は、検査対象物ごとに行われる。検査員hmは、測定時間Tmを算出するために、事前に検査対象物となる製品から発せられる振動音をマイク13で収音する。マイク13で振動音が収音されると、プロセッサ11は、振動音の音データをメモリ12に一時記憶する。
【0039】
プロセッサ11は、測定時間算出用として、メモリ12に記憶された音データが、定常的に発生している音(つまり、定常音)であるか、それとも、非定常的に発生している音(つまり、不定期音)であるかを判別する(S1)。
【0040】
定常音である場合(S1、定常的)、プロセッサ11は、測定時間Tmを基本時間T0(例えば10秒)に設定する(S2)。基本時間T0は、検査対象物となる製品によらず、固定値であってもよいし、製品ごとに異なる値であってもよい。この後、プロセッサ11は、
図6に示す測定時間算出処理を終了する。
【0041】
一方、ステップS1で不定期音である場合(S1、不定期)、プロセッサ11は、測定時間Tmを算出するためのパラメータを算出する。具体的には、プロセッサ11は、検査対象物ごとの設定情報に含まれる検査スケジュールを基に、係数αを算出する(S3)。係数αは、値0~値1の範囲の値であり、一例として、毎日点検を行う場合、値1.0であり、2日に1回点検を行う場合、値0.5である。点検回数が多いほど、係数αは大きな値となる。
【0042】
プロセッサ11は、検査対象物ごとの設定情報に含まれる異常重要度を基に、係数βを算出する(S4)。係数βは、任意な値である。例えば、検査対象物が重要度の高いものであってできるだけ早く検査したい場合、値5が用いられ、検査対象物が重要度のそれほど高いものではなく故障する前に検査できればよいものである場合、値1が用いられる。従って、故障すると悪影響が出るような重要度の高い検査対象物に対しては、速やかにかつ的確に故障箇所の有無を判断して迅速に修理が可能となるように、係数βは、値5と大きな値に設定される。一方、故障してもそれほど悪影響の出ないような重要度の低い検査対象物に対しては、故障前に検査ができればよいので、緊急度が低く、係数βは、値1と小さな値に設定される。
【0043】
プロセッサ11は、係数α,βを用いて、数式(1)に従って測定時間Tmを算出する(S5)。
【0044】
【0045】
数式(1)において、基本時間T0は、ステップS2において定常的な異常音に設定される時間(例えば、10秒)と同じ値に設定される。なお、基本時間T0は、定常的な異常音に設定される時間とは異なる値に設定されてもよい。また、基本時間T0は、固定値(例えば10秒)であったが、検査対象物となる製品ごとに異なる値に設定されてもよい。
【0046】
プロセッサ11は、ステップS5において、検査対象物の製品ごとに算出された係数α,βおよび測定時間Tmを、記録装置14に記憶されたパラメータテーブル90に登録する。
【0047】
図7は、パラメータテーブル90の登録内容例を示す表である。パラメータテーブル90は、記録装置14に記憶される。パラメータテーブル90には、検査対象物である製品ごとに、係数α,β、および算出された測定時間Tmが登録される。ここでは、検査対象物である、空調ファン102として、2台の製品AAA,BBCが登録される。コンプレッサ101として、2台の製品KMK,MMMが登録される。ヒートポンプ103として、1台の製品PPPが登録される。例えば、コンプレッサ101の製品AAAの係数α,βおよび測定時間Tmは、それぞれ値1,値5および50秒である。
【0048】
(点検動作)
図8は、実施の形態1に係る測定端末10の点検処理の動作手順例を示すフローチャートである。
図8の説明の前提として、測定端末10に予めインストールされた点検アプリケーションは起動済みである。点検を開始する際、検査員hmは、検査対象物に近づき、収音するために測定端末10を検査対象物に向ける。検査員hmが測定端末10のディスプレイ16に表示された測定開始ボタンbtを押下すると、プロセッサ11は、点検動作を開始する。
【0049】
先ず、プロセッサ11は、マイク13に収音開始を指示し、タイマカウンタ18のカウント動作を開始する。マイク13は、検査対象物から発せられる振動音を含む周囲の音を収音し、音データを生成する(S11)。プロセッサ11は、マイク13から出力される音データをメモリ12に一時記憶する。ここでは、ステップS12で音データを判別するために、測定時間Tmより短い一定時間(例えば10秒)分の音データが記憶される。なお、ステップS19で音データの解析を行うために必要な測定時間Tm分の音データが記憶されてもよい。つまり、プロセッサ11は、解析に必要な時間分の音データを取得した後、ステップS12以降の処理に進むようにしてもよい。
【0050】
プロセッサ11は、マイク13で収音された音の音を判別する(S12)。この音の判別では、収音された音が既知の正常音であるか、既知の異常音であるか、未知の音であるかが判別される。この音の判別では、例えば音データのパターンマッチングが行われる。記録装置14には、正常音の音データおよび異常音の音データが登録されている。パターンマッチングの結果、収音された音データと、記録装置14に登録されている音データ(正常音の音データ、異常音の音データを含む)とが一致する場合、既知の音データの音であると判定される。
【0051】
一方、不一致である場合、未知の音データの音であると判定される。未知の音データは、記録装置14に登録されていない音データである。登録されていない音データとして、過去に発生していない異常音、周囲の騒音、風切り音等の音データが挙げられる。なお、この音の判別は、音データが所定時間分(ただし、測定時間Tm未満)蓄積された状態で行われてもよいし、逐次行われてもよい。例えば、音データが特定の周波数成分を含む場合、短時間であっても、既知の音であるか否かを即座に判別可能である。
【0052】
ステップS12で既知の正常音あるいは既知の異常音であると判別された場合(S12、既知の音)、プロセッサ11は、
図6の測定時間算出処理で算出されてパラメータテーブル90に登録された、検査対象物に対応する測定時間Tmを読み出し、タイマカウンタ18にプリセット値としてセットする(S13)。
【0053】
一方、ステップS12で未知の音であると判別された場合(S12、未知の音)、プロセッサ11は、プリセット値のカウントを延長済みであるか否かを判別する(S14)。カウント延長済みでない場合(S14、NO)、プロセッサ11は、パラメータテーブル90に登録されている、検査対象物に対応する測定時間Tmを読み出し、この測定時間Tmに延長時間を加えた時間をタイマカウンタ18にプリセット値としてセットする(S15)。一方、カウント延長済みである場合(S14、YES)、プロセッサ11の処理はステップS16に進む。
【0054】
ステップS13またはステップS15の処理後、プロセッサ11は、タイマカウンタ18のカウントダウンを開始する(S16)。プロセッサ11は、タイマカウンタ18のカウント値が値0に達し、タイマカウンタ18からタイムアップ信号が入力されたか否かを判別する(S17)。カウント値が値0に達していない場合(S17、NO)、つまり測定時間Tmが経過していない場合、プロセッサ11は、ステップS16の処理に戻り、カウント値が値0になるまでマイク13による収音動作を継続する。
【0055】
一方、ステップS17でカウント値が値0に達した場合(S17、YES)、プロセッサ11は、検査に必要な音データを蓄積できたとして、マイク13による収音動作を終了する(S18)。プロセッサ11は、メモリ12に蓄積された、測定時間Tm分の音データを基に、音データを解析する(S19)。
【0056】
プロセッサ11は、ステップS18で音データを解析する際、人工知能(AI:Artificial Intelligent)を用いて行う。プロセッサ11は、人工知能を搭載し、予めディープラーニング等の機械学習によって、検査対象物ごとに種々の異常な音データを学習し、学習の結果得られた学習済みモデルを生成しておく。プロセッサ11は、この学習済みモデルに対し、収音された音データを入力し、検査対象物の正常あるいは異常の判定結果を出力させる。異常があった場合、この判定結果は、異常の程度、異常箇所、異常原因等の情報を含んでよい。また、判定結果は、修理の要否、緊急度等の情報を含んでもよい。以上のように、プロセッサ11は、予め機械学習によって生成あるいは更新された学習済みモデルを用いて収音された音データを機械的に解析することにより、測定端末10における検査対象物の異常の有無の判定精度が高まる。なお、学習済みモデルを生成するための機械学習は、1つ以上の統計的分類技術を用いて行っても良い。統計的分類技術としては、例えば、線形分類器(linear classifiers)、サポートベクターマシン(support vector machines)、二次分類器(quadratic classifiers)、カーネル密度推定(kernel estimation)、決定木(decision trees)、人工ニューラルネットワーク(artificial neural networks)、ベイジアン技術および/またはネットワーク(Bayesian techniques and/or networks)、隠れマルコフモデル(hidden Markov models)、バイナリ分類子(binary classifiers)、マルチクラス分類器(multi-class classifiers)クラスタリング(a clustering technique)、ランダムフォレスト(a random forest technique)、ロジスティック回帰(a logistic regression technique)、線形回帰(a linear regression technique)、勾配ブースティング(a gradient boosting technique)等が挙げられる。ただし、使用される統計的分類技術はこれらに限定されない。
【0057】
なお、ステップS19における音データの解析では、人工知能を用いる代わりに、ステップS12と同様、音データのパターンマッチングが行われてもよい。ただし、ステップS12で行われた音データの判別と比べ、ステップS19における音データのパターンマッチングは、より詳細に行われる。例えば、記録装置14には、音データの判別に用いられる正常音および異常音の音データに比べ、より膨大な音データが登録されている。ステップS18における音データのパターンマッチングでは、これらの膨大な音データと収音された音データとが比較される。従って、検査対象物の異常の有無を正確かつ詳細に判定可能である。
【0058】
プロセッサ11は、検査対象物の異常の有無の判定結果をディスプレイ16に表示する(S20)。検査員は、ディスプレイ16に表示された、異常の有無の判定結果を視認する。この後、プロセッサ11は、
図8に示す点検処理を終了する。
【0059】
以上により、実施の形態1に係る測定端末10あるいは測定端末10による測定方法によれば、マイク13(取得部の一例)は、検査対象物から発せられる振動音を含む周囲の音を収音し、音データを生成する(つまり、取得する)。メモリ12は、検査対象物の検査スケジュールに基づく係数αおよび異常重度度に基づく係数β(検査および異常の特徴に関するパラメータの一例)を含む設定情報を検査対象物ごとに記憶(つまり、保持)する。プロセッサ11(導出部の一例)は、検査対象物に対応する設定情報に基づいて、検査対象物の異常の有無を判定するために用いる測定時間Tm(検査対象物からの音データを取得するための所要時間の一例)を算出(つまり、導出)する。プロセッサ11(解析部の一例)は、算出された測定時間Tm分の検査対象物からの音データに基づいて、検査対象物の異常の有無を判定する。
【0060】
これにより、実施の形態1に係る測定端末10は、検査対象物ごとの検査および異常のそれぞれのパラメータ等の特徴を考慮して、異常の有無を判定するための測定データの適切な測定時間を導出し、異常の有無の迅速かつ効率的な判定を支援することができる。
【0061】
また、プロセッサ11(制御部の一例)は、算出された測定時間Tm分(所要時間分の一例)の検査対象物からの音データの取得を促す表示をディスプレイ16に表示する。この音データの取得を促す表示の処理は、例えば、測定端末10において検査対象物の異常の有無が判定されるよりも先立って実行される。これにより、検査員hmは、測定開始のタイミンクを視覚的かつ簡易に把握できる。
【0062】
また、設定情報は、検査対象物の検査スケジュールと、検査対象物の異常の発生パターンと、検査対象物の異常の発生に関する重要度とを含む。これにより、測定端末10は、検査対象物の動作状態に合わせて、適切な測定時間を算出できる。
【0063】
また、プロセッサ11は、検査対象物からの音データを逐次入力し、算出された測定時間Tm分の検査対象物からの音データを入力した場合に、測定時間Tm分の音データに基づく異常の有無の判定結果をディスプレイ16に表示する。これにより、検査員hmは、検査対象物の異常の有無を視覚的に把握できる。
【0064】
また、測定端末10は、検査員hm(ユーザ)が携帯可能である。これにより、検査員hmが、建物に設置された、複数の検査対象物(空調ファン、コンプレッサ等)を巡回して検査する際、検査対象物が設置された場所に容易に移動できる。また、検査員hmは、測定端末10を操作し易い。
【0065】
また、記録装置14(メモリの一例)は、算出された検査対象物ごとの測定時間Tmを記憶(つまり、保持)する。このように、一度、測定端末10は、算出した測定時間を検査対象物ごとに記録装置に登録しておくことで、検査対象物を点検する際、登録された測定時間を読み出して使用することができる。従って、測定端末10は、検査対象物を点検する度に、測定時間を算出する手間を省くことができ、検査員の作業効率を改善できる。
【0066】
また、プロセッサ11は、異常無しであると判定された正常音の音データと、異常有りと判定された異常音の音データとを予め記録装置14に登録するとともに、マイク13で逐次入力された(つまり、逐次収音された)音の音データが記録装置14に登録された正常音の音データおよび異常音の音データのいずれとも不一致である場合、マイク13で音が収音される測定時間Tmを延長する。これにより、測定端末10は、検査対象物から測定端末10が登録していない音データ(つまり、未知の音データ)を入力した場合でも、測定時間Tmを延長することで、登録されている正常音の音データおよび異常音の音データのパターンに一致した音データを検知できる可能性が高まり、未知の音データにも効率的に対処できる。
【0067】
また、プロセッサ11は、マイク13で収音された異常音の出現頻度に応じて、測定時間Tmの長さを伸縮させるように所要時間を導出する。これにより、測定端末10は、検査対象物の異常音の出現頻度が多く、故障に至る可能性が高いと判断される場合、測定時間を延長して振動音の音データを生成できる。また、測定端末10は、収音された振動音の音データを基に、検査対象物の異常の有無を正確に判定できる。一方、検査対象物の異常音の出現頻度が少なく、故障に至る可能性が低いと想定される場合、測定端末10は、測定時間を短縮して検査を効率化できる。
【0068】
また、プロセッサ11は、予め機械学習(例えば、上述した統計的分類技術を用いた機械学習)によって生成あるいは更新されて測定端末10に保存(保持)された学習済みモデルを用いて、マイク13により収音された音データを機械的に解析することにより、検査対象物の異常の有無を判定する。これにより、測定端末10は、検査対象物の異常の有無の判定精度を高めることができる。
【0069】
(第1変形例)
第1変形例においても測定端末10の構成は実施の形態1に係る測定端末10と同一であるため、重複する内容の説明は簡略化または省略し、異なる内容について説明する。
【0070】
上述した実施の形態1では、基本時間T0に対し、検査スケジュールに基づく係数αと、異常重要度に基づく係数βとを乗算することによって、測定時間Tmが算出された。第1変形例では、不定期に発生する異常音の出現頻度が予め分かっている場合、出現頻度に対応する係数γを設定し、この係数γを加味し、式(2)に従って、測定時間Tmを算出する。
【0071】
【0072】
これにより、測定端末10は、異常音の出現頻度に応じて、測定時間の長短を決定できる。例えば、検査対象物の異常音の出現頻度が多い場合、係数γを大きな値に設定し、一方、検査対象物の異常音の出現頻度が少ない場合、係数γを小さい値に設定してもよい。出現頻度の高い異常音に対しては、故障に至る蓋然性が高いとし、収音時間を長くして正確に音データを解析できるようにする。一方、出現頻度の低い異常音に対しては、すぐに故障する心配は少ないと判断し、測定時間を短くする。
【0073】
逆に、検査対象物の異常音の出現頻度が多い場合、係数γを小さい値に設定し、一方、出現頻度が少ない場合、係数γを大きな値に設定してもよい。出現頻度の高い異常音に対しては、収音時間が短くても異常音の音データを収音できる。一方、出現頻度の低い異常音に対しては、異常音の音データを収音できる確率が高くなる。
【0074】
(第2変形例)
上述した実施の形態1では、測定端末が検査対象物から発せられる音を収音して音データを解析し、音データを基に検査対象物の異常の有無を判定した。第2変形例では、外部装置であるクラウドサーバが測定端末で収音された音の音データを解析し、音データを基に検査対象物の異常の有無を判定する場合を示す。
【0075】
第2変形例においても測定端末10の構成は実施の形態1に係る測定端末10と同一であるため、重複する内容の説明は簡略化または省略し、異なる内容について説明する。
【0076】
第2変形例において、クラウドサーバ40は、実施の形態1に係る測定端末10のように、測定端末10のマイク13により収音された検査対象物の音データを測定端末10から受信して取得する。クラウドサーバ40は、受信された検査対象物の音データを解析することにより、検査対象物の異常の有無を判定し、判定結果を測定端末10に送信する。
【0077】
クラウドサーバ40は、プロセッサ41と、メモリ42と、記録装置44と、通信回路45とを含む構成である。
【0078】
プロセッサ41は、検査員hmが検査対象物を点検する際、測定端末10における測定時間算出アプリケーションの実行中にマイク13が収音するための音の測定時間を算出する。また、プロセッサ41は、測定端末10が点検アプリケーションを実行中に、測定端末10から送信されてくる検査対象物の音データを用いて、検査対象物の点検動作を行う。プロセッサ41は、例えば、CPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processor Unit),DSP(Digital Signal Processor)あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等が用いられる。
【0079】
メモリ42は、RAM(Random Access Memory)を有し、通信回路45において受信された検査対象物の音データを一時記憶する。メモリ42は、ROM(Read Only Memory)を有し、プロセッサ41の処理を規定するためのプログラムおよびデータを格納する。
【0080】
記録装置44(メモリの一例)は、測定端末10により収音された音データと比較される、正常な音データおよび異常な音データをそれぞれ記憶する。記録装置44は、検査対象物ごとに異なるパラメータおよび測定時間がそれぞれ登録されたパラメータテーブル90を記憶する。記録装置44は、例えばSSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、書き換え可能なROM(例えばEEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等で構成される。
【0081】
通信回路45は、例えば無線LAN(Local Area Network)、モバイル通信網(例えば4G(第4世代移動通信システム)、5G(第5世代移動通信システム)等のセルラネットワーク網)を介して、ネットワークNWに接続され、測定端末10あるいはストレージ50との間で通信可能である。
【0082】
図9は、変形例2における音検査システム5の動作手順を示すシーケンス図である。
図9の説明の前提として、測定端末10に予めインストールされた点検アプリケーションは起動済みである。クラウドサーバ40は、測定端末10から音データを受信するまで待つ、待機状態にある(T1)。点検を開始する際、検査員は、検査対象物に近寄り、測定端末10を検査対象物に向ける。検査員が測定端末10のディスプレイ16に表示された測定開始ボタンbtを押下すると、測定端末10は、検査対象物から発せられる振動音を含む周囲の音をマイク13で収音し、音データを逐次生成する(T2)。
【0083】
測定端末10は、逐次生成した音データを、通信回路15およびネットワークNWを介して、クラウドサーバ40に送信する(T3)。クラウドサーバ40は、測定端末10から送信された音データを受信し、内部メモリ(図示略)に蓄積する(T4)。
【0084】
測定端末10は、タイマカウンタ18が値0になり、測定時間Tmが経過したか否かを判別する(T5)。タイマカウンタ18が値0でない場合、測定端末10は、手順T2に戻り、マイク13による収音動作を継続する。
【0085】
手順T5でタイマカウンタ18が値0になると、測定端末10は、通信回路15およびネットワークNWを介して、クラウドサーバ40に解析指示を送信する(T6)。クラウドサーバ40は、ネットワークNWを介して、測定端末10からの解析指示を受信すると、内部メモリに蓄積した測定時間Tm分の音データを解析する(T7)。この解析は、上記実施形態のステップS19において、測定端末10が行った解析と同じであってもよいし、より詳細な解析であってもよい。例えば、人工知能を用いて解析を行う場合、クラウドサーバ40によって生成された学習済みモデルでは、測定端末10と比べ、ストレージ50に蓄積された音データを用いてもよく、学習量が膨大であると想定されるので、生成される学習済みモデルは処理精度の高いものとなる。従って、測定端末10により収音された音データをクラウドサーバ40で解析することで、クラウドサーバ40における検査対象物の異常の有無の判定精度が高まる。なお、学習済みモデルを生成するための機械学習は、1つ以上の統計的分類技術を用いて行っても良い。統計的分類技術としては、例えば、線形分類器(linear classifiers)、サポートベクターマシン(support vector machines)、二次分類器(quadratic classifiers)、カーネル密度推定(kernel estimation)、決定木(decision trees)、人工ニューラルネットワーク(artificial neural networks)、ベイジアン技術および/またはネットワーク(Bayesian techniques and/or networks)、隠れマルコフモデル(hidden Markov models)、バイナリ分類子(binary classifiers)、マルチクラス分類器(multi-class classifiers)クラスタリング(a clustering technique)、ランダムフォレスト(a random forest technique)、ロジスティック回帰(a logistic regression technique)、線形回帰(a linear regression technique)、勾配ブースティング(a gradient boosting technique)等が挙げられる。ただし、使用される統計的分類技術はこれらに限定されない。
【0086】
クラウドサーバ40は、ネットワークNWを介して、この解析結果を測定端末10に送信する(T8)。測定端末10は、通信回路15およびネットワークNWを介して、クラウドサーバ40からの解析結果を受信する(T9)。解析結果には、音データに基づく検査対象物の異常の有無の判定結果が含まれる。測定端末10は、ディスプレイ16にこの判定結果を表示する(T10)。検査員は、ディスプレイ16に表示された、検査対象物の異常の有無の判定結果を把握し、次の検査対象物に移動する。
【0087】
以上により、第2変形例に係る音検査システム5(測定システムの一例)では、測定端末10は、検査対象物からの音データを取得するプロセッサ11(取得部の一例)と、取得された検査対象物からの音データおよび音データの解析指示を送信し、検査対象物からの音データに基づく異常の有無の判定結果を受信する通信回路15(第1の通信部の一例)と、を備え、その受信された判定結果をディスプレイ16に表示する。クラウドサーバ40(解析装置の一例)は、検査対象物からの音データおよび解析指示を測定端末10より受信し、判定結果を測定端末10に送信する通信回路45(第2の通信部の一例)を備える。クラウドサーバ40では、メモリ42は、検査対象物の検査および異常の特徴に関するパラメータを含む設定情報を検査対象物ごとに保持する。プロセッサ41(導出部の一例)は、検査対象物に対応する設定情報に基づいて、検査対象物の異常の有無を判定するために用いる検査対象物からの音データを取得するための所要時間を導出する。プロセッサ41(解析部の一例)は、導出された所要時間分の検査対象物からの音データに基づいて、検査対象物の異常の有無を判定する。
【0088】
このように、クラウドサーバ40が音データを解析することで、測定端末10が音データの解析を行う場合に比べて、より詳細かつ高精度に行うことが可能である。従って、検査員hmは、検査対象物の異常の有無の判定に対し、精度の高い判定結果を得ることができる。また、測定端末10が解析処理を行わなくて済むので、測定端末10による処理の負担を軽減でき、測定端末10を簡易かつ安価な機器として提供できる。
【0089】
また、クラウドサーバ40では、プロセッサ41は、予め機械学習(例えば、上述した統計的分類技術を用いた機械学習)によって生成あるいは更新されてクラウドサーバ40に保存(保持)された学習済みモデルを用いて、測定端末10のマイク13により収音された音データを機械的かつ高精度に解析することにより、検査対象物の異常の有無を判定する。これにより、クラウドサーバ40は、検査対象物の異常の有無の判定精度を、測定端末10が検査対象物の異常の有無を判定する場合に比べてより高めることができる。
【0090】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0091】
例えば、測定端末10は、検査員hmが携帯可能なスマートフォン、タブレット端末、ノートPC等の装置であることが望ましいが、台車等に載せられて移動可能な可搬型の装置であってもよい。
【0092】
また、本開示は、上述した実施の形態に係る測定端末10の機能を実現するプログラムを、ネットワークあるいは各種記憶媒体を介してコンピュータである測定端末に供給し、この測定端末のプロセッサが読み出して実行するプログラム、およびこのプログラムが記憶された記録媒体も適用範囲である。また、本開示は、上述した実施の形態に係る音検査システム5のクラウドサーバ40の機能を実現するプログラムを、ネットワークあるいは各種記憶媒体を介してコンピュータであるクラウドサーバ40に供給し、このクラウドサーバ40のプロセッサ41が読み出して実行するプログラム、およびこのプログラムが記憶された記録媒体も適用範囲としてよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本開示は、検査対象物の異常の有無を判定するための測定データの適切な測定時間を導出し、異常の有無の迅速かつ効率的な判定を支援することができる測定端末、測定方法およびプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0094】
5 音検査システム
10 測定端末
11 プロセッサ
12 メモリ
13 マイク
14 記録装置
15 通信回路
16 ディスプレイ
17 入力デバイス
18 タイマカウンタ
40 クラウドサーバ
50 ストレージ
TP タッチパネル