(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】紫外線硬化性樹脂組成物、カラーレジスト、カラーフィルタ、発光装置及びカラーレジストの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240226BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240226BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240226BHJP
C08K 7/22 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02B5/20
B41M5/00 120
B41M5/00 100
C08L101/00
C08K7/22
(21)【出願番号】P 2019178080
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-05-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦岡 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕基
(72)【発明者】
【氏名】山本 広志
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特許第7228804(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/128144(WO,A1)
【文献】特開昭61-166848(JP,A)
【文献】特開2011-068811(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101348(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/235480(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
B41M 5/00
C08F 2/00- 2/60
C08G 59/00- 59/72
C08L 101/00ー101/16
C08K 7/22- 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形してから硬化させることで硬化物を作製するために用いられる紫外線硬化性樹脂組成物であり、
光重合性化合物(A)、
光重合開始剤(B)、
蛍光体(C)及び
中空粒子(D)を含有し、
溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が1質量%以下であ
り、
前記蛍光体(C)のメディアン径は1nm以上10nm以下であり、
前記中空粒子(D)のメディアン径は100nm以上3μm以下であり、
前記中空粒子(D)の比重は0.2以上1.2以下であり、
40℃における粘度が5mPa・s以上30mPa・s以下である、
紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記中空粒子(D)の含有割合は0.1質量%以上5質量%以下である、
請求項1に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記中空粒子(D)は、中空樹脂粒子を含有する、
請求項1又は2に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記蛍光体(C)は、量子ドット蛍光体(C1)を含有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記量子ドット蛍光体(C1)は、赤色の蛍光を発する半導体粒子と、緑色の蛍光を発する半導体粒子と、青色の蛍光を発する半導体粒子とからなる群から選択される少なくとも一種の半導体粒子を含有する、
請求項4に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記光重合性化合物(A)は、ラジカル重合性化合物(A1)を含有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ラジカル重合性化合物(A1)は、分子骨格中に窒素を有する化合物を含有する、
請求項6に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ラジカル重合性化合物(A1)は、アクリル化合物(Y)を含有する、
請求項6又は7に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記アクリル化合物(Y)は、多官能アクリル化合物(Y1)を含有する、
請求項8に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記光重合開始剤(B)は、フォトブリーチング性を有する光重合開始剤を含有する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
インクジェット法で成形される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
カラーレジスト作製用である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、
カラーレジスト。
【請求項14】
請求項13に記載のカラーレジストを備える、
カラーフィルタ。
【請求項15】
請求項14に記載のカラーフィルタと、前記カラーフィルタへ光を照射する光源とを備える、
発光装置。
【請求項16】
表示装置である、
請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の紫外線硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形してから、前記紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させる、
カラーレジストの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性樹脂組成物、カラーレジスト、カラーフィルタ、発光装置及びカラーレジストの製造方法に関し、詳しくは、蛍光体(C)を含有する紫外線硬化性樹脂組成物、この紫外線硬化性樹脂組成物から作製されたカラーレジスト、このカラーレジストを備えるカラーフィルタ、このカラーフィルタを備える発光装置、並びにこのカラーレジストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードなどの発光素子を備える発光装置は、照明用途、ディスプレイ用途などに適用されており、今後の更なる普及が期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、量子ドットを用いたバックライト部を有する液晶表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、量子ドットなどの蛍光体(C)を含有するカラーレジストの研究開発を進めていた。それにより得られた知見によると、カラーレジスト中に酸化チタンなどの光拡散性を有する粒子を配合してカラーレジスト内で光を散乱させれば、カラーレジストによる光の波長変換効率の向上が期待できるが、カラーレジストを作製する組成物中で粒子が沈降しやすく、そのため、組成物の保存安定性が損なわれてしまう。
【0006】
本発明の課題は、硬化物に光が照射された場合の光の波長変換効率を高めやすく、かつ保存安定性が損なわれにくい紫外線硬化性樹脂組成物、この紫外線硬化性樹脂組成物から作製されたカラーレジスト、このカラーレジストを備えるカラーフィルタ、このカラーフィルタを備える発光装置、並びにこのカラーレジストの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る紫外線硬化性樹脂組成物は、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、蛍光体(C)及び中空粒子(D)を含有する。
【0008】
本発明の一態様に係るカラーレジストは、前記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るカラーフィルタは、前記カラーレジストを含む。
【0010】
本発明の一態様に係る発光装置は、前記カラーフィルタと、前記カラーフィルタへ光を照射する光源とを備える。
【0011】
本発明の一態様に係るカラーレジストの製造方法では、前記紫外線硬化性樹脂組成物をインクジェット法で成形してから、前記紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によると、硬化物に光が照射された場合の光の波長変換効率を高めやすく、かつ保存安定性が損なわれにくい紫外線硬化性樹脂組成物、この紫外線硬化性樹脂組成物から作製されたカラーレジスト、このカラーレジストを備えるカラーフィルタ、このカラーフィルタを備える発光装置、並びにこのカラーレジストの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは本発明の一実施形態における液晶表示装置の一例の概略の断面図であり、
図1Bは本発明の一実施形態におけるLED表示装置の一例の概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態に係る紫外線硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)、蛍光体(C)及び中空粒子(D)を含有する。
【0016】
本実施形態によれば、組成物(X)を成形してから硬化させることで、光の波長変換機能を有する硬化物を作製できる。この硬化物を、例えばカラーフィルタ2におけるカラーレジスト1に適用できる(
図1A及び
図1B参照)。すなわち、本実施形態によれば、蛍光体(C)を含有するカラーレジスト1を備えるカラーフィルタ2を作製できる。
【0017】
本実施形態では、組成物(X)を硬化させるに当たって加熱する必要がないため、特に発光装置11におけるカラーフィルタ2を作製する場合に、発光装置11における光源等が熱により損傷しないようにできる。
【0018】
さらに、本実施形態では、組成物(X)の硬化物に光が照射された場合、中空粒子(D)が硬化物内で光を散乱させることができる。そのため、硬化物内で光が蛍光体(C)に到達する機会が多くなり、その結果、波長変換の効率が高くなる。そのため、硬化物は、そのサイズに比して高い波長変換効率を発現できる。
【0019】
本実施形態では、組成物(X)がインクジェット法で成形されることが好ましい。この場合、カラーレジスト1を位置精度良く作製しやすい。さらに、そのため、カラーフィルタ2におけるカラーレジスト1を高精細化しやすく、すなわち微少なカラーレジスト1を高密度に作製しやすい。このため、カラーフィルタ2を備える発光装置11、特に表示装置の、高精細化(高解像度化)を実現しやすい。また、スクリーン印刷法などの接触を伴う印刷法で成形する場合と比べて、組成物(X)をインクジェット法で成形する場合は、組成物(X)及びその硬化物に異物が混入しにくく、そのため、カラーレジスト1を作製するに当たっての歩留まりが悪化しにくい。
【0020】
組成物(X)がインクジェット法で成形されると、組成物(X)から作製されるカラーレジスト1の厚み寸法は大きくすることは難しく、そのためカラーレジスト1の厚みは例えば10μm以下である。しかし、本実施形態では上記のとおり組成物(X)の硬化物は、そのサイズに比して高い波長変換効率を発現できるため、カラーレジスト1の厚みが小さくても高い波長変換効率を発現しやすい。
【0021】
組成物(X)は溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量(組成物(X)全体に対する溶剤の百分比)が1質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)及び組成物(X)の硬化物からは、溶剤に由来するアウトガスが発生しにくい。このため、溶剤の揮発に起因する組成物(X)の粘度変化が生じにくくなり、これにより組成物(X)の保存安定性が高まる。また、カラーフィルタ2内にアウトガスに起因する空隙を生じにくくできる。このため空隙を通じてカラーレジスト1に水が到達するようなことを起こりにくくして、カラーレジスト1中の量子ドット蛍光体(C1)が水により劣化しにくくできる。また、カラーレジスト1の作製時に組成物(X)及び硬化物から溶剤を除去するための乾燥工程を不要にできる。組成物(X)及び硬化物の少なくとも一方から溶剤を除去するための乾燥工程があってもよいが、この場合は乾燥工程における加熱温度の低減と加熱時間の短縮化との、少なくとも一方を可能とできる。このため、カラーフィルタ2の製造効率を低下させることなく、カラーレジスト1からアウトガスを生じにくくできる。さらに、組成物(X)は溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が1質量%以下であれば、組成物(X)を特にインクジェット法で成形する場合に、成形後の組成物(X)から溶剤が揮発することによる厚みの減少が生じにくく、そのためカラーレジスト1の厚みの減少が生じにくい。そのため、インクジェット法で成形しながら、カラーレジスト1の厚みをできるだけ大きく確保して、カラーレジスト1による波長変換能をできるだけ大きく確保することができる。溶剤の含有量は、0.5質量%以下であればより好ましく、0.3質量%以下であれば更に好ましく、0.1質量%以下であれば特に好ましい。組成物(X)は、溶剤を含有せず、又は不可避的に混入する溶剤のみを含有することが、特に好ましい。
【0022】
組成物(X)の硬化物のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましい。すなわち、組成物(X)は、硬化することでガラス転移温度が80℃以上の硬化物になる性質を有することが好ましい。この場合、硬化物は良好な耐熱性を有することができる。そのため、例えば硬化物に温度上昇を伴う処理が施された場合に、硬化物が劣化しにくい。このため、例えば組成物(X)から作製されたカラーレジスト1を覆うように保護層5をプラズマCVD法といった蒸着法で作製する場合、カラーレジスト1が加熱されても、カラーレジスト1が劣化しにくい。また、耐熱性を高めることで、カラーレジスト1を、耐熱性に対する要求が厳しい車載用途に適合させることもできる。硬化物のガラス転移温度は90℃以上であればより好ましく、100℃以上であれば更に好ましい。この硬化物のガラス転移温度は、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
【0023】
組成物(X)の25℃での粘度は、30mPa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)を常温下でインクジェット法で成形しやすくできる。この粘度が25mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。この粘度が1mPa・s以上であることも好ましく、5mPa・s以上であることも好ましい。
【0024】
組成物(X)の40℃における粘度が1mPa・s以上30mPa・s以下であることも好ましい。この場合、常温における組成物(X)の粘度がいかなる値であっても、組成物(X)を僅かに加熱すれば低粘度化させることが可能である。このため、加熱すれば、組成物(X)をインクジェット法で成形しやすくできる。また、組成物(X)を大きく加熱することなく低粘度化させることができるので、組成物(X)中の成分が揮発することによる組成物(X)の組成の変化を生じにくくできる。この粘度が25mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。この粘度が5mPa・s以上であることも好ましい。
【0025】
このような組成物(X)の25℃又は40℃における低い粘度は、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
【0026】
組成物(X)20mgを、熱重量分析計を用いて100℃30分の条件で加熱する処理をした場合の揮発性は、40%以下であることが好ましい。組成物(X)の揮発性は、処理前の組成物(X)の重量に対する、処理後の組成物(X)の重量減少量(組成物(X)の、処理前の重量と処理後の重量との差)の百分比で規定される。この場合、組成物(X)の揮発性が低いことで、組成物(X)の保存安定性を高めることができる。また、組成物(X)の硬化物中及びカラーレジスト1からアウトガスが生じにくくなる。そのため、カラーフィルタ2内にアウトガスに起因する空隙が更に生じにくくなる。組成物(X)の揮発性は、組成物(X)20mgを熱重量分析計を用いて100℃30分の条件で加熱する処理をし、処理前の重量に対する処理後の重量の重量減少量を算出することで求めることができる。組成物(X)20mgを、熱重量分析計を用いて100℃30分の条件で加熱する処理をした場合の揮発性は、30%以下であることがより好ましく、20%以下であれば更に好ましい。組成物(X)の揮発性の下限は特に限定されないが、例えば、0.1%以上であってよい。
【0027】
組成物(X)が含有する成分について、更に詳しく説明する。
【0028】
まず、蛍光体(C)について説明する。蛍光体(C)は、量子ドット蛍光体(C1)を含有することが好ましい。蛍光体(C)が量子ドット蛍光体(C1)を含有する場合、組成物(X)から作製されるカラーレジスト1は、通常のカラーレジストと同様の波長変換機能を発揮するだけでなく、カラーフィルタ2から発せられる光の広色域化を実現させやすい。そのため、カラーフィルタ2を備える発光装置11、特に表示装置から発せられる光の広色域化を実現させやすい。また、カラーフィルタ2によって広色域化を実現できるので、発光装置11、特に表示装置に、広色域化のためのフィルタなどの部材を別途設けなくてもよい。このため、広色域化に当たっての発光装置11(表示装置)の部品点数の増大を抑制できる。このため、発光装置11(表示装置)の薄型化が可能であり、例えば曲げ可能なフレキシブルな発光装置11(表示装置)を実現させやすい。
【0029】
量子ドットとは量子サイズ効果を示す半導体粒子のことであり、量子ドット蛍光体(C1)は量子ドットからなる蛍光体(C)である。量子ドット蛍光体(C1)の平均粒径は例えば1nm以上10nm以下である。量子ドット蛍光体(C1)の平均粒径は2nm以上6nm以下であることが好ましい。なお、量子ドット蛍光体(C1)は、同じ組成を有しても、粒径が異なれば発する蛍光の波長が異なる。そのため、量子ドット蛍光体(C1)は、組成物(X)から作製されるカラーレジスト1が発する蛍光の波長に応じた粒径を有することが好ましい。量子ドット蛍光体(C1)は、例えば赤色の蛍光を発する半導体粒子と、緑色の蛍光を発する半導体粒子と、青色の蛍光を発する半導体粒子とからなる群から選択される少なくとも一種の半導体粒子を含有する。量子ドット蛍光体(C1)は、これら以外の色の蛍光を発する半導体粒子を含有してもよい。
【0030】
なお、量子ドット蛍光体(C1)の平均粒径は、動的光散乱法による測定結果から算出されるメディアン径、すなわち累積50%径(D50)である。測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のナノトラックNanotrac Waveシリーズを用いることができる。
【0031】
量子ドット蛍光体(C1)は、コアシェル構造を有する半導体粒子を含有してもよい。具体的には、量子ドット蛍光体(C1)は、例えばCdSeからなるコアとZnSからなるシェルとを有する半導体粒子(CdSe/ZnS)を含有する。量子ドット蛍光体(C1)は、これ以外の適宜の半導体粒子を含有してもよい。例えば量子ドット蛍光体(C1)は、GaN、GaP、InN、InP、Ga2O3、Ga2S3、In2O3、In2S3、ZnO、ZnS、CdO、CdS、ペロブスカイト型の半導体及びグラフェンタイプの半導体からなる群から選択される少なくとも一種の半導体を有する半導体粒子を含有してもよい。なお、量子ドット蛍光体(C1)が含みうる半導体粒子は前記に限られない。
【0032】
組成物(X)中の量子ドット蛍光体(C1)の量は、例えば組成物(X)全体に対して0.1質量%以上40質量%以下である。量子ドット蛍光体(C1)の量が0.1質量%以上であることで、組成物(X)の硬化物が波長変換機能を発現しやすい。また、量子ドット蛍光体(C1)の量が40質量%以下であれば、組成物(X)をインクジェット法で成形しやすくできる。量子ドット蛍光体(C1)の量は、1質量%以上であればより好ましく、2質量%以上であれば更に好ましく、3質量%以上であれば特に好ましい。また量子ドット蛍光体(C1)の量は、35質量%以下であればより好ましく、30質量%以下であれば更に好ましく、25質量%以下であれば特に好ましい。
【0033】
次に、中空粒子(D)について説明する。中空粒子(D)は、シェル部分と、シェル部分の内側の中空部分とを有することで、内部に屈折率差のある界面を有する。このため、中空粒子(D)は光を散乱させやすい。また、中空粒子(D)は中空部を有することで比重が小さく、そのため組成物(X)中で沈降しにくい。そのため、中空粒子(D)は組成物(X)の保存安定性を損ないにくい。
【0034】
中空粒子(D)のメディアン径は100nm以上3μm以下であることが好ましい。メディアン径は100nm以上であると、中空粒子(D)は光を効果的に散乱させやすい。メディアン径が3μm以下であると、インクジェット装置内での組成物(X)の詰まりや付着による装置のダメージを生じにくくできる。このメディアン径は150nm以上であればより好ましく、1μm以上であれば更に好ましい。また、このメディアン径は800nm以下であればより好ましく、500nm以下であれば更に好ましい。なお、中空粒子(D)のメディアン径は、動的光散乱法による測定結果から算出される。測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のナノトラックNanotrac Waveシリーズを用いることができる。
【0035】
中空粒子(D)の比重は0.2以上1.2以下であることが好ましい。比重が1.2以下であると、中空粒子(D)は組成物(X)中で特に沈降しにくく、そのため組成物(X)の保存安定性を特に損ないにくい。また、比重が0.4以上であると、硬化時に表面に浮き上がる現象が無くなり組成が均一化されやすく、また、物理的強度が高くなり中空粒子の破損も少なくなる。比重は1.0以下であればより好ましく、0.8以下であれば更に好ましい。また比重は0.3以上であればより好ましく、0.4以上であれば更に好ましい。
【0036】
中空粒子(D)の含有割合、すなわち組成物(X)の固形分全量に対する中空粒子(D)の割合は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この割合が0.1質量%以上であることで、中空粒子(D)がより効果的に光を散乱させやすい。この割合が5質量%以下であることで、組成物(X)のインクジェット性が良好になりやすい。この割合は0.3質量%以上であるとより好ましく、0.5質量%以上であれば更に好ましい。またこの割合は4質量%以下であるとより好ましく、3質量%以下であれば更に好ましい。
【0037】
中空粒子(D)は、有機樹脂製の粒子(以下、中空樹脂粒子という)とシリカ製の粒子(以下、中空シリカ粒子という)とのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、中空粒子(D)によって硬化物の光透過性が損なわれにくい。
【0038】
中空粒子(D)は、特に中空樹脂粒子を含むことが好ましい。中空樹脂粒子は、中空シリカ粒子と比べて、力が加わった場合に破損しにくい。そのため、中空樹脂粒子を含む組成物(X)を調製する場合の混練等の過程及び組成物(X)から硬化物を作製する過程で中空樹脂粒子に力が加わっても、中空樹脂粒子が破損しにくい。また、中空樹脂粒子は、組成物(X)の保存安定性をより損ないにくい。中空樹脂粒子は、例えばアクリル樹脂製であり、すなわち例えば中空アクリル粒子である。
【0039】
光重合性化合物(A)は、光重合開始剤(B)の存在下又は不存在下で、紫外線の照射を受けて重合反応を生じうる成分である。光重合開始剤(B)は硬化触媒を含んでもよい。光重合性化合物(A)は、例えばモノマー、オリゴマー及びプレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0040】
光重合性化合物(A)は、例えばラジカル重合性化合物(A1)とカチオン重合性化合物(W)とのうち少なくとも一方を含有する。光重合性化合物(A)がラジカル重合性化合物(A1)を含有する場合、組成物(X)は、光重合開始剤(B)として光ラジカル重合開始剤(B1)を更に含有することが好ましい。光重合性化合物(A)がカチオン重合性化合物(W)を含有する場合、組成物(X)は、光重合開始剤(B)として、光カチオン重合開始剤(B2)(カチオン硬化触媒)を更に含有することが好ましい。
【0041】
光重合性化合物(A)がラジカル重合性化合物(A1)を含有する場合、ラジカル重合性化合物(A1)は、アクリル化合物(Y)を含有することが好ましい。アクリル化合物(Y)は、一分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。
【0042】
アクリル化合物(Y)全体の25℃での粘度は50mPa・s以下であることが好ましい。この場合、アクリル化合物(Y)は組成物(X)を特に低粘度化させることができる。アクリル化合物(Y)全体の粘度は30mPa・s以下であれば更に好ましく、20mPa・s以下であれば特に好ましい。また、アクリル化合物(Y)全体の粘度は例えば3mPa・s以上である。
【0043】
アクリル化合物(Y)全体の40℃での粘度が50mPa・s以下であることも好ましい。この場合、アクリル化合物(Y)は、加熱された場合の組成物(X)を特に低粘度化させることができる。アクリル化合物(Y)全体の粘度は30mPa・s以下であれば更に好ましく、20mPa・s以下であれば特に好ましい。また、アクリル化合物(Y)全体の粘度は、例えば3mPa・s以上である。
【0044】
アクリル化合物(Y)中の、沸点が270℃以上である成分の百分比は、80質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性が特に損なわれにくく、かつ硬化物からアウトガスが特に生じにくい。アクリル化合物(Y)中の、沸点が280℃以上である成分の百分比が80質量%以上であれば、更に好ましい。
【0045】
アクリル化合物(Y)は、25℃での粘度が20mPa・s以下である成分を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)を低粘度化できる。
【0046】
アクリル化合物(Y)全量に対する、25℃での粘度が20mPa・s以下である成分の割合は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)を特に低粘度化でき、組成物(X)をインクジェット法で特に塗布しやすくなる。この割合は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、この割合は、95質量%以下であることもより好ましく、90質量%以下であることも更に好ましい。
【0047】
25℃での粘度が20mPa・s以下である成分は、80℃以上のガラス転移温度を有する化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)を低粘度化しながら、硬化物のガラス転移温度を高めることができる。この成分は、90℃以上のガラス転移温度を有する化合物を含有すればよりこの好ましく、100℃以上のガラス転移温度を有する化合物を含有すれば更に好ましい。この成分に含まれる化合物のガラス転移温度の上限に制限はないが、例えば150℃以下である。
【0048】
アクリル化合物(Y)が含みうる化合物について説明する。
【0049】
アクリル化合物(Y)は、一分子中に(メタ)アクリロイル基を含む二つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能アクリル化合物(Y1)を含有することが好ましい。この場合、多官能アクリル化合物(Y1)は、硬化物のガラス転移温度を高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を高めることができる。多官能アクリル化合物(Y1)の割合は、アクリル化合物(Y)全体に対して50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。アクリル化合物(Y)は、多官能アクリル化合物(Y1)のみを含有してもよい。
【0050】
多官能アクリル化合物(Y1)は、例えば1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ペンタトリエストールテトラアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、ヘキサジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、ビスペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ化1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びアクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0051】
多官能アクリル化合物(Y1)のアクリル当量は、150g/eq以下であることが好ましく、90g/eq以上150g/eq以下であることがより好ましい。多官能アクリル化合物(Y1)の重量平均分子量は、例えば100以上1000以下であり、200以上800以下がより好ましい。
【0052】
多官能アクリル化合物(Y1)が、下記式(200)に示す構造を有する化合物(Y11)を含有することが好ましい。
【0053】
CH2=CR1-COO-(R3-O)n-CO-CR2=CH2 …(200)
式(200)において、R1及びR2の各々は水素又はメチル基、nは1以上の整数、R3は炭素数1以上のアルキレン基であり、nが2以上の場合は一分子中の複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0054】
化合物(Y11)は、式(200)に示す構造を有すること、特に式(200)のR3の炭素数が3以上であることにより、硬化物の水との親和性を高めにくい。このため、蛍光体(C)が水によって劣化しにくい。R3の炭素数は、例えば1以上15以下であり、好ましくは3以上15以下である。また、化合物(Y11)は、式(200)に示す構造を有すること、特に一分子中に二つの(メタ)アクリロイル基を有することにより、硬化物のガラス転移温度を高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を高めることができる。また、式(200)のnは、例えば1以上12以下の整数である。
【0055】
アクリル化合物(Y)に対する化合物(Y11)の百分比は50質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物の水に対する親和性が特に高められにくい。アクリル化合物(Y)に対する化合物(Y11)の百分比は、例えば100質量%以下であり、又は95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。
【0056】
化合物(Y11)は、特に沸点が270℃以上である成分を含有することが好ましい。すなわち、アクリル化合物(Y)は、式(200)に示す構造を有し、かつ沸点が270℃以上である成分を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の保存中及び組成物(X)が加熱された場合に、組成物(X)からアクリル化合物(Y)が揮発しにくい。そのため、組成物(X)の保存安定性が損なわれにくい。また、組成物(X)の硬化物中に化合物(Y11)が未反応で残留していても、硬化物から化合物(Y11)に起因するアウトガスが生じにくい。そのため、カラーフィルタ2内に、アウトガスによる空隙が生じにくい。カラーフィルタ2中に空隙があると空隙を通じてカラーレジスト1に水分が侵入してしまうおそれがあるが、空隙が生じにくいと、カラーレジスト1に水分が侵入しにくい。なお、沸点は、減圧下の沸点を換算して得られる常圧下の沸点であり、例えばScience of Petroleum, Vol.II. P.1281(1938)に示される方法で求められる。化合物(Y11)が沸点が280℃以上である成分を含有すればより好ましい。
【0057】
アクリル化合物(Y)に対する化合物(Y11)の百分比は50質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性が効果的に高められ、かつ硬化物からのアウトガス発生が効果的に低減され、更に硬化物の水に対する親和性が特に高められにくい。アクリル化合物(Y)に対する化合物(Y11)の百分比は、例えば100質量%以下であり、又は95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。
【0058】
化合物(Y11)の25℃での粘度は25mPa・s以下であることが好ましい。この場合、化合物(Y11)は組成物(X)の粘度を低めることができる。化合物(Y11)の25℃での粘度は、25mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。また、化合物(Y11)の25℃での粘度は、例えば1mPa・s以上であり、3mPa・s以上であれば好ましく、5mPa・s以上であれば更に好ましい。
【0059】
化合物(Y11)は、例えばアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートと、ポリアルキレングルコールジ(メタ)アクリレートと、アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0060】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、式(200)においてnが1である化合物である。この場合、式(200)におけるR3の炭素数は4~12であることが好ましい。R3は、直鎖状でもよく、分岐を有していてもよい。特にアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、サートマー社製の品番SR213、大阪有機化学工業社製の品番V195、サートマー社製の品番SR212、サートマー社製の品番SR247、共栄化学工業社製の品名ライトアクリレートNP-A、サートマー社製の品番SR238NS、大阪有機化学工業社製の品番V230、ダイセル社製の品番HDDA、共栄化学工業社製の品番1,6HX-A、大阪有機化学工業社製の品番V260、共栄化学工業社製の品番1,9-ND-A、新中村化学工業社製の品番A-NOD-A、サートマー社製の品番CD595、サートマー社製の品番SR214NS、新中村化学工業社製の品番BD、サートマー社製の品番SR297、サートマー社製の品番SR248、共栄化学工業社製の品名ライトエステルNP、サートマー社製の品番SR239NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,6HX、新中村化学工業社製の品番HD-N、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,9ND、新中村化学工業社製の品番NOD-N、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,10DC、新中村化学工業社製の品番DOD-N、及びサートマー社製の品番SR262からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0061】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、例えば式(200)においてnが2以上である化合物である。nは例えば2~10であり、2~7であることが好ましく、2~6であることも好ましく、2~3であることも好ましい。R3の炭素数は例えば2~7であり、好ましくは2~5である。炭素数が多いほど、硬化物の疎水性が高くなり、硬化物が水分を透過させにくい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、特にジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート及びポリエチレングリコール200ジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、特にサートマー社製の品番SR230、サートマー社製の品番SR508NS、ダイセル社製の品番DPGDA、サートマー社製の品番SR306NS、ダイセル社製の品番TPGDA、大阪有機化学工業社製の品番V310HP、新中村化学工業社製の品番APG200、共栄化学工業株式会社製の品名ライトアクリレートPTMGA-250、サートマー社製の品番SR231NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル2EG、サートマー社製の品番SR205NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル3EG、サートマー社製の品番SR210NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル4EG、三菱化学社製の品名アクリエステルHX及び新中村化学工業社製の品番3PGからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0062】
アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、例えばプロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールを含有する。また、アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、例えばダイセル社製の品番EBECRYL145を含有する。
【0063】
アクリル化合物(Y)が式(200)に示す構造を有する化合物(Y11)を含有する場合、化合物(Y11)は、式(200)中のnの値が5以上の化合物を含まないことが好ましい。(R3-O)nがポリエチレングリコール骨格である場合に、式(200)中のnの値が5より大きい化合物を含まないことが特に好ましい。化合物(Y11)が式(200)中のnの値が5より大きい化合物を含む場合でも、アクリル化合物(Y)に対する、式(200)中のnの値が5より大きい化合物の百分比は、20質量%以下であることが好ましい。また、化合物(Y11)が式(200)中のnの値が5より大きい化合物を含む場合でも、化合物(Y11)は、nの値が9よりも大きい化合物を含まないことが好ましく、nの値が7よりも大きい化合物を含まないことが更に好ましい。これらの場合、組成物(X)の粘度上昇が特に生じにくくなる。
【0064】
多官能アクリル化合物(Y1)がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含有すれば、特に好ましい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、粘度が低く、かつ揮発しにくいため、組成物(X)の低粘度化に寄与でき、かつ組成物(X)の保存安定性の向上及び硬化物からのアウトガスの低減に寄与できる。
【0065】
多官能アクリル化合物(Y1)がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含有する場合、アクリル化合物(Y)に対するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの割合は、40質量%以上80質量%以下であることが好ましい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの割合が40質量%以上であると、組成物(X)の粘度を効果的に低下できる。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの割合が80質量%以下であると、分子中に三つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の割合が増加し、組成物(X)の反応性、及び硬化物のガラス転移温度を高めることができる。この割合は42質量%以上75質量%以下であればより好ましく、45質量%以上70質量%以下であれば更に好ましい。
【0066】
多官能アクリル化合物(Y1)は、一分子中に(メタ)アクリロイル基を含む三つ以上のラジカル重合性官能基を有する化合物を含有してもよい。この場合、多官能アクリル化合物(Y1)は、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。この場合、硬化物のガラス転移温度を特に高めることができ、このため、硬化物の耐熱性を特に高めることができる。
【0067】
多官能アクリル化合物(Y1)は、特にペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度を特に高めることができ、かつ組成物(X)の反応性を向上させることができる。組成物(X)の反応性が向上すると、大気雰囲気等の酸素を含む環境下で組成物(X)を容易に硬化させることができる。
【0068】
多官能アクリル化合物(Y1)がペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを含有する場合、アクリル化合物(Y)に対するペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの割合は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の高い反応性と低粘度とを両立可能である。この割合は1質量%以上9質量%以下であればより好ましく、2質量%以上8質量%以下であれば更に好ましい。
【0069】
多官能アクリル化合物(Y1)は、ベンゼン環、脂環及び極性基のうち少なくとも一つを有してもよい。極性基は、例えばOH基及びNHCO基のうち少なくとも一方である。この場合、組成物(X)が硬化する際の収縮を特に低減できる。さらに、硬化物と、窒化ケイ素、酸化ケイ素といった無機化合物との間の密着性を高めることもできる。多官能アクリル化合物(Y1)は、特にトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。これらの化合物は、組成物(X)が硬化する際の収縮を特に低減できる。さらに、これらの化合物は、硬化物と、窒化ケイ素、酸化ケイ素といった無機化合物との間の密着性を高めることもできる。
【0070】
硬化物と無機材料との密着性が高まると、カラーレジスト1がSiN膜などの無機材料製の膜(無機質膜)と重ねられる場合には、カラーレジスト1と無機質膜との間の高い密着性が得られやすい。また、厳密には光重合性化合物(A)が硬化した樹脂マトリクスと無機化合物との密着性が高まるため、蛍光体(C)が量子ドット蛍光体(C1)のような無機質の粒子である場合には、硬化物中で、樹脂マトリクスと蛍光体(C)との密着性が高まりやすい。
【0071】
多官能アクリル化合物(Y1)がポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートとを含有すれば特に好ましい。この場合、組成物(X)は低粘度でかつ反応性に優れる。このため、大気雰囲気等の酸素を含む環境下で組成物(X)を容易に硬化させることができる。
【0072】
アクリル化合物(Y)は、一分子中のラジカル重合性官能基が一つの(メタ)アクリロイル基のみである単官能アクリル化合物(Y2)を含有することも好ましい。単官能アクリル化合物(Y2)は、組成物(X)の硬化時の収縮を抑制できる。
【0073】
アクリル化合物(Y)全量に対する単官能アクリル化合物(Y2)の量は、0質量%より多く50質量%以下であることが好ましい。単官能アクリル化合物(Y2)の量が0質量%より多ければ、組成物(X)の硬化時の収縮を抑制できる。また、単官能アクリル化合物(Y2)の量が50質量%以下であれば、多官能アクリル化合物(Y1)の量が50質量%以上になりうることで、硬化物の耐熱性を特に向上できる。単官能アクリル化合物(Y2)の量が5質量%以上であれば更に好ましく、30質量%以下であることも更に好ましい。
【0074】
単官能アクリル化合物(Y2)は、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化(4)のニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加物、2-フェノキシエチルアクリレートのプロピレンオキサイド付加物、アクリロイルモルホリン、アクリル酸モルホリン-4-イル、ジシクロペンタニルアクリレ-ト、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0075】
単官能アクリル化合物(Y2)は、脂環式構造を有する化合物及び環状エーテル構造を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。
【0076】
脂環式構造を有する化合物は、例えばフェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加物、2-フェノキシエチルアクリレートのプロピレンオキサイド付加物、アクリロイルモルホリン、アクリル酸モルホリン-4-イル、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ-ト、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0077】
環状エーテル構造を有する化合物における環状エーテル構造の環員数は3以上が好ましく、3以上4以下がより好ましい。環状エーテル構造に含まれる炭素原子数は、2以上9以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。環状エーテル構造を有する化合物は、例えば3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0078】
アクリル化合物(Y)は、分子骨格中にケイ素を有する化合物を含有してもよい。この場合、硬化物と無機材料との間の密着性が向上する。分子骨格中にケイ素を有する化合物は、例えばアクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(例えば信越化学工業社製の品番KBM5103)及び(メタ)アクリル基含有アルコキシシランオリゴマー(例えば信越化学工業社製の品番KR-513)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0079】
アクリル化合物(Y)は、分子骨格中にリンを有する化合物を含有してもよい。この場合、硬化物と無機材料との間の密着性が向上する。分子骨格中にリンを有する化合物は、例えばアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートといった、アシッドホスホキシ(メタ)アクリレートを含む。
【0080】
アクリル化合物(Y)は、分子骨格中に窒素を有する化合物を含有してもよい。この場合、硬化物と無機材料との間の密着性が向上する。また、アクリル化合物(Y)の反応性が向上しやすくなり、そのため硬化物からアウトガスが生じにくくなる。分子骨格中に窒素を有する化合物は、例えばアクリロイルモルホリン、アクリル酸モルホリン-4-イルといったモルホリン骨格を有する化合物、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びペンタメチルピペリジルメタクリレ-トからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
【0081】
アクリル化合物(Y)が、モルホリン骨格を有する化合物を含有することが特に好ましい。この場合、組成物(X)の反応性を更に向上でき、大気雰囲気下における組成物(X)の硬化性を更に高めることができる。アクリル化合物(Y)が、アクリロイルモルホリンとアクリル酸モルホリン-4-イルとのうち少なくとも一方を含有すれば特に好ましい。この場合、組成物(X)の硬化時の収縮を抑制できる。また、アクリロイルモルホリン及びアクリル酸モルホリン-4-イルの粘度は低く、そのため、これらの化合物は組成物(X)の粘度を増大させにくい。さらに、これらの化合物揮発しにくいため、組成物(X)の保存安定性を向上させやすい。
【0082】
アクリル化合物(Y)に対するモルホリン骨格を有する化合物の割合は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化物からアウトガスが発生しにくくなるという利点がある。この割合は7質量%以上45質量%以下であればより好ましく、10質量%以上40質量%以下であれば更に好ましい。
【0083】
アクリル化合物(Y)が、イソボルニル骨格を有する化合物を含有してもよい。イソボルニル骨格を有する化合物は、例えば、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。
【0084】
アクリル化合物(Y)は、ジシクロペンタジエン骨格、ジシクロペンタニル骨格、ジシクロペンテニル骨格、及びビスフェノール骨格からなる群から選択される少なくとも一種の骨格を有する化合物からなる成分を含有してもよい。具体的には、アクリル化合物(Y)は、例えばトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート及びビスフェノールFポリエトキシジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。この場合、硬化物と無機材料との密着性を高めることができる。
【0085】
アクリル化合物(Y)は、下記式(100)に示す化合物を含有してもよい。この場合、組成物(X)の反応性を高めることができ、かつ硬化物と無機材料との密着性を向上できる。
【0086】
【0087】
式(100)において、R0はH又はメチル基である。Xは単結合又は二価の炭化水素基である。R1からR11の各々はH、アルキル基又は-R12-OH、R12はアルキレン基でありかつR1からR11のうち少なくとも一つはアルキル基又は-R12-OHである。R1からR11は互いに化学結合していない。
【0088】
具体的には、例えばアクリル化合物(Y)は、下記式(110)に示す化合物、式(120)に示す化合物及び式(130)に示す化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。
【0089】
【0090】
ラジカル重合性化合物(A1)は、アクリル化合物(Y)以外のラジカル重合性化合物(Z)を含有してもよい。アクリル化合物(Y)とラジカル重合性化合物(Z)との合計量に対するラジカル重合性化合物(Z)の量は、例えば10質量%以下である。ラジカル重合性化合物(Z)は、一分子に二つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能ラジカル重合性化合物(Z1)と、一分子に一つのみのラジカル重合性官能基を有する単官能ラジカル重合性化合物(Z2)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。多官能ラジカル重合性化合物(Z1)は、例えば一分子中にエチレン性二重結合を2つ以上有する芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びその他特殊オリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。なお、多官能ラジカル重合性化合物(Z1)が含みうる成分は前記には限られない。単官能ラジカル重合性化合物(Z2)は、例えばN-ビニルホルムアミド、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、フェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3-ビニルシクロヘキセンオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンオキサイド、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、単官能ラジカル重合性化合物(Z2)が含みうる成分は前記には限られない。
【0091】
ラジカル重合性化合物(A1)がラジカル重合性化合物(Z)を含有する場合、ラジカル重合性化合物(Z)が分子骨格中に窒素を有する化合物を含有してもよい。分子骨格中に窒素を有する化合物は、例えばN-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。この場合、アクリル化合物(Y)が分子骨格中に窒素を有する化合物を含有する場合と同様、硬化物と無機材料との間の密着性が向上する。
【0092】
言い換えると、ラジカル重合性化合物(A1)は、分子骨格中に窒素を有する化合物を含有することが好ましい。この分子骨格中に窒素を有する化合物は、アクリル化合物(Y)に含まれる化合物を含有してもよく、ラジカル重合性化合物(Z)に含まれる化合物を含有してもよい。この場合、硬化物と無機材料との間の密着性が向上する。ラジカル重合性化合物(A1)全体に対する分子骨格中に窒素を有する化合物の割合は、5質量%以上80質量%以下であることが好ましい。この割合が5質量%以上であることで硬化物と無機材料との間の密着性が特に向上しやすい。この割合が80質量%以下であることで、分子骨格中に窒素を有する化合物が組成物(X)の保存安定性を阻害しにくく、組成物(X)をインクジェット法で噴射する場合のサテライトを生じさせにくい。このため組成物(X)のインクジェット性が阻害されにくい。さらに、分子骨格中に窒素を有する化合物に起因するアウトガスを生じにくくできる。この割合は10質量%以上70質量%以下であればより好ましく、20質量%以上60質量%以下であれば更に好ましく、25質量%以上50質量%が特に望ましい。
【0093】
光ラジカル重合開始剤(B1)は、紫外線が照射されるとラジカル種を生じさせる化合物であれば、特に制限されない。光ラジカル重合開始剤(B1)は、例えば芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。組成物(X)100質量部に対する光ラジカル重合開始剤(B1)の量は、例えば1重量部以上10質量部以下である。
【0094】
光ラジカル重合開始剤(B1)は、フォトブリーチング性を有する開始剤を含有することが好ましい。この場合、硬化物の光透過性が高まりやすい。
【0095】
フォトブリーチング性を有する開始剤は、例えばフォトブリーチング性を有するオキシムエステル化合物とアシルフォスフィンオキサイド化合物とのうち少なくとも一方を含有する。
【0096】
フォトブリーチング性を有するオキシムエステル化合物は、例えば下記式(401)に示す化合物と、下記式(402)に示す化合物とのうち、少なくとも一方を含有する。このうち式(402)に示す化合物は特に高感度であるため、組成物(X)の光硬化性を特に高めやすい。
【0097】
【0098】
【0099】
アシルフォスフィンオキサイド化合物は、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0100】
光ラジカル重合開始剤(B1)は、この光ラジカル重合開始剤(B1)の一部として増感剤を含有してもよい。増感剤は、光ラジカル重合開始剤(B1)のラジカル生成反応を促進させて、ラジカル重合の反応性を向上させ、かつ架橋密度を向上させうる。増感剤は、例えば9,10-ジブトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、アントラキノン、1,2-ジヒドロキシアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ジエトキシナフタレン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノベンゾフェノン、p-ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、及びp-ジエチルアミノベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。なお、増感剤が含みうる成分は前記には限られない。
【0101】
組成物(X)中の増感剤の含有量は、例えば組成物(X)の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。増感剤の含有量がこのような範囲であれば、空気中で組成物(X)を硬化させることができ、組成物(X)の硬化を窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行う必要がなくなる。
【0102】
組成物(X)は、光ラジカル重合開始剤(B1)に加えて、重合促進剤を含有してもよい。重合促進剤は、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸-2-ジメチルアミノエチル、p-ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルといったアミン化合物を含有する。なお、重合促進剤が含有しうる成分は前記には限られない。
【0103】
光重合性化合物(A)がカチオン重合性化合物(W)を含有する場合、カチオン重合性化合物(W)は、例えば多官能カチオン重合性化合物(W1)と単官能カチオン重合性化合物(W2)とのうち少なくとも一方を含有する。
【0104】
多官能カチオン重合性化合物(W1)は、シロキサン骨格を有さない多官能カチオン重合性化合物(W11)と、シロキサン骨格を有する多官能カチオン重合性化合物(W12)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。
【0105】
多官能カチオン重合性化合物(W11)は、シロキサン骨格を有さず、一分子あたり二以上のカチオン重合性官能基を有する。多官能カチオン重合性化合物(W11)の一分子あたりのカチオン重合性官能基の数は2~4個であることが好ましく、2~3個であれば更に好ましい。
【0106】
カチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
【0107】
多官能カチオン重合性化合物(W11)は、例えば多官能脂環式エポキシ化合物、多官能ヘテロ環式エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、及びアルキレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルからなる群から選択される化合物のうち、少なくとも一種の化合物を含有する。
【0108】
多官能脂環式エポキシ化合物は、例えば下記式(1)に示す化合物と下記式(20)に示す化合物とのうち、いずれか一方又は両方を含有する。
【0109】
【0110】
式(1)において、R1~R18の各々は独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基である。炭化水素基の炭素数は1~20の範囲内であることが好ましい。炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基といった炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、アリル基といった炭素数2~20のアルケニル基;又はエチリデン基、プロピリデン基といった炭素数2~20のアルキリデン基である。炭化水素基は、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい。R1~R18の各々は独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0111】
式(1)において、Xは単結合又は二価の有機基であり、有機基は、例えば-CO-O-CH2-である。
【0112】
式(1)に示す化合物の例は、下記式(1a)に示す化合物及び下記式(1b)に示す化合物を含む。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
式(20)中、R1~R12の各々は独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~20の炭化水素基である。ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。炭素数1~20の炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基といった炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、アリル基といった炭素数2~20のアルケニル基;又はエチリデン基、プロピリデン基といった炭素数2~20のアルキリデン基である。炭素数1~20の炭化水素基は、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0117】
R1~R12の各々は独立に、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0118】
式(20)に示す化合物の例は、下記式(20a)に示すテトラヒドロインデンジエポキシドを含む。
【0119】
【0120】
多官能ヘテロ環式エポキシ化合物は、例えば下記式(2)に示すような三官能エポキシ化合物を含有する。
【0121】
【0122】
多官能オキセタン化合物は、例えば下記式(3)に示すような二官能オキセタン化合物を含有する。
【0123】
【0124】
アルキレングリコールジグリシジルエーテルは、例えば下記式(4)~(7)に示す化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
アルキレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルは、例えば下記式(8)に示す化合物を含有する。
【0130】
【0131】
より具体的には、多官能カチオン重合性化合物(W11)は、例えばダイセル製のセロキサイド2021P及びセロキサイド8010、日産化学製のTEPIC-VL、東亞合成製のOXT-221、並びに四日市合成製の1,3-PD-DEP、1,4-BG-DEP、1,6-HD-DEP、NPG-DEP及びブチレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0132】
多官能カチオン重合性化合物(W11)は、多官能脂環式エポキシ化合物を含有することも好ましい。この場合、組成物(X)は特に高いカチオン重合反応性を有することができる。
【0133】
多官能脂環式エポキシ化合物は、特に式(1)に示す化合物及び式(20)に示す化合物のうち、いずれか一方又は両方を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)はより高いカチオン重合反応性を有することができる。
【0134】
多官能脂環式エポキシ化合物が式(1)に示す化合物を含有する場合、式(1)に示す化合物は、式(1a)に示す化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)は、より高いカチオン重合反応性を有するとともに、特に低い粘度を有することができる。
【0135】
また、特に式(20)に示す化合物は、低い粘度を有するため、式(20)に示す化合物を含有する場合、組成物(X)は、良好な紫外線硬化性を有することができるとともに、特に低い粘度を有することができる。さらに、式(20)に示す化合物は、低い粘度を有するわりには、揮発しにくい性質を有する。そのため、組成物(X)が式(20)に示す化合物を含有しても、組成物(X)には、式(20)に示す化合物の揮発による組成の変化が生じにくい。このため、組成物(X)は、式(20)に示す化合物を含有することで、保存安定性を損なうことなく低粘度化されうる。
【0136】
式(20)に示す化合物は、例えばテトラヒドロインデン骨格を有する環状オレフィン化合物を、酸化剤を用いて酸化することで合成できる。
【0137】
式(20)に示す化合物は、2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体を含みうる。式(20)に示す化合物は、4つの立体異性体のいずれを含んでもよい。すなわち、式(20)に示す化合物は、4つの立体異性体からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。式(20)に示す化合物中における、4つの立体異性体のうちのエキソ-エンド体とエンド-エンド体の合計量の割合は、エポキシ化合物(A1)全体に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であれば更に好ましい。この場合、硬化物の耐熱性を向上できる。なお、式(20)に示す化合物中の特定の立体異性体の割合は、ガスクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに現れるピーク面積比に基づいて、求めることができる。
【0138】
式(20)に示す化合物中のエキソ-エンド体及びエンド-エンド体の量を少なくするためには、式(20)に示す化合物を精密蒸留する方法、シリカゲルなどを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーを適用する方法といった、適宜の方法を適用できる。
【0139】
組成物(X)が多官能カチオン重合性化合物(W11)を含有する場合、樹脂成分全量に対する多官能カチオン重合性化合物(W11)の割合は、5~95質量%の範囲内であることが好ましい。なお、樹脂成分とは、組成物(X)中のカチオン重合性を有する化合物のことをいい、多官能カチオン重合性化合物(W1)及び単官能カチオン重合性化合物(W2)を含む。多官能カチオン重合性化合物(W11)の割合が5質量%以上であれば組成物(X)は光カチオン重合反応時に特に優れた反応性を有することができ、またそれによって、硬化物が高い強度(硬度)を有することができる。また、多官能カチオン重合性化合物(W11)の割合が95質量%以下であれば、組成物(X)が吸湿剤(C)を含有する場合に、組成物(X)中で吸湿剤(C)を特に均一に分散させやすくできる。この多官能カチオン重合性化合物(W11)の割合は、12質量%以上であればより好ましく、15質量%以上であれば更に好ましく、20質量%以上であれば更に好ましく、25質量%以上であれば特に好ましい。またこの多官能カチオン重合性化合物(W11)の割合は、85質量%以下であればより好ましく、60質量%以下であれば更に好ましい。例えば多官能カチオン重合性化合物(W11)の割合が20~60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0140】
多官能カチオン重合性化合物(W11)が多官能脂環式エポキシ化合物を含有する場合、多官能脂環式エポキシ化合物は、多官能カチオン重合性化合物(W11)の一部であってもよく、全部であってもよい。多官能カチオン重合性化合物(W11)に対する、多官能脂環式エポキシ化合物の割合は、15~100質量%の範囲内であることが好ましい。この割合が15質量%以上であると、多官能脂環式エポキシ化合物は組成物(X)の紫外線硬化性の向上に特に寄与できる。
【0141】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は、シロキサン骨格と、一分子あたり二以上のカチオン重合性官能基とを有する。多官能カチオン重合性化合物(W12)の一分子あたりのカチオン重合性官能基の数は、2~6個であることが好ましく、2~4個であれば更に好ましい。多官能カチオン重合性化合物(W12)は、組成物(X)のカチオン重合反応性の向上に寄与できるとともに、硬化物及び光学部品の耐熱変色性の向上に寄与できる。多官能カチオン重合性化合物(W12)は硬化物及び光学部品の低弾性率化にも寄与できる。組成物(X)が吸湿剤を含有する場合、多官能カチオン重合性化合物(W12)は組成物(X)中及び硬化物中の吸湿剤の分散性の向上にも寄与できる。
【0142】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は、25℃で液体であることが好ましい。特に多官能カチオン重合性化合物(W12)の25℃における粘度は、10~300mPa・sの範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X)の粘度上昇を抑制できる。
【0143】
多官能カチオン重合性化合物(W12)が有するカチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
【0144】
多官能カチオン重合性化合物(W12)が有するシロキサン骨格は、直鎖状でも分岐鎖状でも環状でもよい。シロキサン骨格が有するSi原子の数は、2~14の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X)は特に低い粘度を有することができる。このSi原子の数は、2~10の範囲内であればより好ましく、2~7の範囲内であれば更に好ましく、3~6の範囲内であれば特に好ましい。
【0145】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は、例えば式(10)に示す化合物と、式(11)に示す化合物とのうち、少なくとも一方を含有する。
【0146】
【0147】
【0148】
式(10)及び式(11)の各々におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、アルキレン基であることが好ましい。Yはシロキサン骨格であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、そのSi原子の数は2~14の範囲内の範囲内であることが好ましく、2~10の範囲内であることがより好ましく、2~7の範囲内であれば更に好ましく、3~6の範囲内であれば特に好ましい。nは2以上の整数であり、2~4の範囲内であることが好ましい。
【0149】
より具体的には、例えば多官能カチオン重合性化合物(W12)は、次の式(10a)に示す化合物を含有する。
【0150】
【0151】
式(10a)におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、炭素数1~4のアルキレン基であることが好ましい。式(10a)におけるnは0以上の整数である。nは、0~12の範囲内であることが好ましく、0~8の範囲内であることがより好ましく、0~5の範囲内であれば更に好ましく、1~4の範囲内であれば特に好ましい。
【0152】
式(10a)に示す化合物は、下記式(30)に示す化合物を含有することが好ましい。すなわち、多官能カチオン重合性化合物(W12)は、下記式(30)に示す化合物を含有することが好ましい。
【0153】
より具体的には、多官能カチオン重合性化合物(W12)は、例えば信越化学株式会社製の品番X-40-2669、X-40-2670、X-40-2715、X-40-2732、X-22-169AS、X-22-169B、X-22-2046、X-22-343、X-22-163、及びX-22-163Bからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。
【0154】
多官能カチオン重合性化合物(W12)は脂環式エポキシ構造を有することが好ましく、多官能カチオン重合性化合物(W12)が式(10a)に示す化合物を含有すれば特に好ましい。式(10a)に示す化合物は、組成物(X)のカチオン重合反応性の向上と低粘度化とに特に寄与できるとともに、硬化物及び光学部品の耐熱変色性の向上及び低弾性率化に特に寄与できる。組成物(X)が吸湿剤(C)を含有する場合は組成物(X)中の吸湿剤(C)の分散性向上にも特に寄与できる。
【0155】
組成物(X)が多官能カチオン重合性化合物(W12)を含有する場合、樹脂成分全量に対する多官能カチオン重合性化合物(W12)の割合は、5~95質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、特に組成物(X)が吸湿剤(C)を含有すると、組成物(X)中及び硬化物中での吸湿剤(C)の分散性が特に向上し、かつ組成物(X)が特に高い光カチオン重合反応性を有することができる。
【0156】
単官能カチオン重合性化合物(W2)は、カチオン重合性官能基を一分子に対して一つのみ有する。カチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
【0157】
単官能カチオン重合性化合物(W2)の25℃における粘度は8mPa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)が溶媒を含有しなくても、単官能カチオン重合性化合物(W2)は組成物(X)の粘度を低減できる。特に単官能カチオン重合性化合物(W2)の25℃における粘度は、0.1~8mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0158】
単官能カチオン重合性化合物(W2)は、例えば下記式(12)~(17)に示す化合物及びリモネンオキシドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
樹脂成分全量に対する単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合は、5~50質量%の範囲内であることが好ましい。単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合が5質量%以上であれば組成物(X)の粘度を特に低減できる。また、単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合が50質量%以下であれば、組成物(X)は光カチオン重合反応時に特に優れた反応性を有することができ、またそれによって、硬化物が高い強度(硬度)を有することができる。この単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合は、10質量%以上であればより好ましく、15質量%以上であれば更に好ましい。また、この単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合は、40質量%以下であればより好ましく、35質量%以下であれば更に好ましく、30質量%以下であれば特に好ましい。単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合が特に35質量%以下であれば、組成物(X)を保管している間の組成物(X)中の成分の揮発量を効果的に低減でき、そのため組成物(X)を長期間保存しても組成物(X)の特性が損なわれにくい。さらに、硬化物にタックが生じることを特に抑制できる。例えば単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合が10~35質量%の範囲内であることが好ましい。
【0166】
また、特に組成物(X)が多官能カチオン重合性化合物(W11)と多官能カチオン重合性化合物(W12)とを含有する場合、樹脂成分全量に対して、多官能カチオン重合性化合物(W11)の割合は、30~60質量%の範囲内、多官能カチオン重合性化合物(W12)の割合は15~30質量%の範囲内、単官能カチオン重合性化合物(W2)の割合は15~40質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X)の良好な保存安定性と低い粘度と良好なカチオン重合反応性とをバランス良く達成でき、更に硬化物の優れた透明性、優れた吸湿性及び高い屈折率をバランス良く達成できる。
【0167】
カチオン重合性化合物(W)が、式(3)に示す化合物と式(16)に示す化合物とを含有すれば、両者の比率を調整することで、組成物(X)から光硬化物を作製する場合の硬化反応の進行のしやすさを適度に調整しつつ、組成物(X)の低粘度化と保存安定性の向上とを実現できる。
【0168】
式(16)に示す化合物の量は、組成物(X)が前記の特性を有するように適宜調整される。例えば式(16)に示す化合物の量は、樹脂成分全量に対して10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0169】
カチオン重合性化合物(W)は、下記式(30)で示される化合物(f1)(以下、芳香族エポキシ化合物(f1)ともいう)を含有することが好ましい。
【0170】
【0171】
式(30)中、Xはハロゲン、H、炭化水素基及びアルキレングルコール基からなる群から選択される少なくとも一種であり、一分子中にXが複数ある場合は互いに同一であっても異なっていてもよい。炭化水素基は、例えばアルキル基又はアリール基である。Xが炭化水素基である場合のXの炭素数は例えば1から10までの範囲内である。Rは単結合又は二価の有機基である。Rが二価の有機基である場合、二価の有機基は例えばアルキレン基、オキシアルキレン基、カルボニルオキシアルキレン基(例えば-CO-O-CH2-)、又は-C(Ph)2-O-CH2-基である。YはH又は一価の有機基である。Yが一価の有機基である場合、一価の有機基は例えばアルキル基又はアリール基である。
【0172】
カチオン重合性化合物(W)が芳香族エポキシ化合物(f1)を含有すると、芳香族エポキシ化合物(f1)は低い粘度を有するため、芳香族エポキシ化合物(f1)は組成物(X)を低粘度化させやすい。また、芳香族エポキシ化合物(f1)は揮発しにくく、そのため組成物(X)を保存していても、組成物(X)には芳香族エポキシ化合物(f1)の揮発による組成の変化が生じにくい。そのため芳香族エポキシ化合物(f1)は組成物(X)の保存安定性を高めやすい。また、芳香族エポキシ化合物(f1)は高い反応性を有するため、硬化物中に未反応の成分が残留しにくく、そのため硬化物からアウトガスを発生させにくい。さらに、芳香族エポキシ化合物(f1)は硬化物のガラス転移温度を高めやすく、そのため硬化物の耐熱性を高めやすい。
【0173】
また、芳香族エポキシ化合物(f1)は、組成物(X)をインクジェット法で吐出する場合に、サテライトと呼ばれる不良な液滴を生じさせにくい。サテライトとは、インクジェット法で液滴を吐出する場合に、本来の液滴から分離して、塗布対象における本来の液滴の付着位置とは異なる位置に付着してしまう液滴である。サテライトが生じると、組成物(X)から作製される硬化物の寸法精度の悪化を招いてしまう。
【0174】
式(30)中のRが単結合又はアルキレン基であることが好ましい。式(30)中のnが2又は3である場合には、式(30)中の複数のRのうち少なくとも一つが単結合又はアルキレン基であることが好ましい。これらの場合、芳香族エポキシ化合物(f1)の反応性が高くなりやすく、そのため組成物(X)に紫外線を照射した場合の組成物(X)の硬化性が高くなりやすい。
【0175】
芳香族エポキシ化合物(f1)は、例えば下記式(301)~(318)にそれぞれ示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
【0176】
【0177】
特に芳香族エポキシ化合物(f1)が式(301)~(305)、(312)、(314)及び(318)にそれぞれ示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。これらの化合物は、化合物中の少なくとも一つのエポキシ基(オキシラン)とベンゼ環とが単結合又はアルキレン基で結合されていることで、高い反応性を有しやすく、そのため組成物(X)の硬化性を高めやすい。
【0178】
カチオン重合性化合物(W)全体に対する芳香族エポキシ化合物(f1)の割合は、5質量%以上であることが好ましい。この場合、芳香族エポキシ化合物(f1)による上記の作用が特に得られやすい。この割合は、95質量%以下であることも好ましい。この場合、組成物(X)の保管性が良好となりやすい。この割合は10質量%以上90質量%以下であればより好ましく、20質量%以上85質量%以下であれば更に好ましい。
【0179】
カチオン重合性化合物(W)が、オキシアルキレン骨格を有する化合物(f2)を含有することも好ましい。オキシアルキレン骨格とは、一又は複数の直鎖状のオキシアルキレン単位からなる直鎖状の骨格である。
【0180】
カチオン重合性化合物(W)が化合物(f2)を含有すると、化合物(f2)は低い粘度を有するため、化合物(f2)は組成物(X)を低粘度化させやすい。また、化合物(f2)は揮発しにくく、そのため組成物(X)を保存していても、組成物(X)には芳香族エポキシ化合物(f1)の揮発による組成の変化が生じにくい。そのため化合物(f2)は組成物(X)の保存安定性を高めやすい。
【0181】
また、化合物(f2)は、組成物(X)をインクジェット法で吐出する場合に、サテライトと呼ばれる不良な液滴を生じさせにくい。さらに、化合物(f2)は、インクジェット法で吐出される液滴の速度を速くしてもサテライトを生じにくくできる。そのため、インクジェットの条件にもよるが、例えばサテライトを生じさせることなくインクジェット法による液滴の吐出速度を4m/s又はそれ以上にすることも可能である。液滴の速度を速くできると、液滴の軌跡が外乱の影響を受けにくくなるので、組成物(X)から作製される硬化物の寸法精度を高めることができる。さらに、化合物(f2)は上述のとおり組成物(X)の保存安定性を高めることができるので、組成物(X)を長期間保管しても、サテライトを生じにくいという組成物(X)の特性が維持されやすい。
【0182】
オキシアルキレン骨格は、特に「-C-C-O-」という構造、すなわちオキシメチレン単位を含むことが好ましい。この場合、サテライトが特に生じにくくなり、例えばインクジェット法で組成物(X)を吐出するに当たっての駆動周波数を変動させてもサテライトが生じにくくなる。また、化合物(f2)がより揮発しにくく、かつより低粘度になりやすく、更に組成物(X)の無機材料に対する親和性(濡れ性)が高まりやすい。
【0183】
化合物(f2)におけるオキシアルキレン骨格中のオキシアルキレン単位の数は1以上8以下であることが好ましい。この場合、化合物(f2)がより低粘度になりやすいため、サテライトが特に生じにくくなり、かつ硬化物の架橋密度が高くなりやすいことで硬化物のガラス転移温度が特に高くなりやすい。このオキシアルキレン単位の数は1以上6以下であればより好ましく、1以上4以下であれば更に好ましい。
【0184】
なお、化合物(f2)におけるオキシアルキレン骨格中のオキシアルキレン単位には、水素以外の置換基が結合していてもよい。例えばオキシアルキレン骨格に含まれているオキシメチレン単位が「-CH(CH3)-CH2-O-」という構造を有してもよい。
【0185】
化合物(f2)の割合はカチオン重合性化合物(W)に対して10質量%以上であることが好ましい。この場合、インクジェット性が良好となり、基材への濡れ性がよくなる。
この割合が70重量%以下であることも好ましい。この場合、十分にガラス転移温度を高めることができる。この割合は15質量%以上60質量%以下であればより好ましく、20質量%以上50質量%以下であれば更に好ましい。
【0186】
化合物(f2)は、例えばオキシアルキレン骨格とエポキシ基とを有する化合物(f21)と、オキシアルキレン基とオキセタン基とを有する化合物(f22)とのうち、少なくとも一種の化合物を含有する。
【0187】
化合物(f21)は、例えば上記の式(1b)に示す化合物、式(4)に示す化合物、式(5)に示す化合物、式(6)に示す化合物、式(7)に示す化合物、式(8)に示す化合物、式(13)に示す化合物、式(14)に示す化合物等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、化合物(f21)が含有しうる成分は前記のみには制限されない。
【0188】
化合物(f22)は、例えば上記の式(3)に示す化合物、式(12)に示す化合物、式(16)に示す化合物、及び式(17)に示す化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、化合物(f22)が含有しうる成分は前記のみには制限されない。
【0189】
光重合性化合物(A)が重合することで生成する樹脂マトリクスの屈折率は、中空粒子(D)のシェル部分の屈折率よりも高いことが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化物中では、中空粒子のシェル部分と樹脂マトリクスとの界面でも光の散乱が生じやすく、そのため、カラーレジスト1の波長変換能がより高まりやすい。この場合のシェル部分と樹脂マトリクスとの屈折率の差は0.01以上であると好ましく、0.05以上であればより好ましく、0.10以上であれば更に好ましい。樹脂マトリクスの屈折率を高めるには、例えば光重合性化合物(A)に、芳香族環を有する化合物、フッ素以外のハロゲン基を有する化合物、硫黄を有する化合物、及び脂環式基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有させる。樹脂マトリクスに芳香族環、フッ素原子、硫黄原子及び脂環式基からなる群から選択される少なくとも一種が導入されると、樹脂マトリクスの屈折率が高まりやすい。なお、樹脂マトリクスの屈折率とは、後掲の実施例における樹脂の屈折率のことである。
【0190】
硫黄を有する化合物は、1分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和基を有し、かつ1分子中に少なくとも一つの硫黄原子を有することが好ましい。エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基であってもよく、(メタ)アクリロイル基以外の基であってもよい。硫黄を有する化合物は、特にフェニルスルフィド骨格を有する化合物を含有することが好ましい。フェニルスルフィド骨格とは、フェニル基と硫黄原子とが単結合で直接結合した構造をいう。フェニルスルフィド骨格を有する化合物は、ポリアリーレンスルフィド化合物を含有することが好ましい。ポリアリーレンスルフィド化合物とは、分子内に、[-Ar-S-]で示す繰り返し単位を有する化合物である。Arは、アリーレン基であり、例えばフェニレン基である。硫黄を有する化合物は、例えばアリルフェニルスルフィド、ビニルフェニルスルフィド、及びビス(4-メタクリロイルチオフェニル)スルフィド等からなる群から選択される少なくとも一種を含む。特に、硫黄を有する化合物が、臭気を発生させにくいビス(4-メタクリロイルチオフェニル)スルフィドを含有することが好ましい。光重合性化合物(A)に対する硫黄を有する化合物の割合は、例えば10質量%以上90質量%以下、好ましくは25質量%以上80質量%以下、更に好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0191】
なお、上記の樹脂マトリクスの屈折率と、中空粒子(D)のシェル部分の屈折率とは、波長587.6nmの光(ヘリウムのd線)についての、25℃での屈折率である。
【0192】
カチオン重合性化合物(W)は、エポキシ化合物と上記の化合物(f22)とを含有することも好ましい。エポキシ化合物は、例えば上述のカチオン重合性化合物(W)に含まれうる化合物のうちのエポキシ基を有する化合物のうち、少なくとも一種の化合物を含有する。カチオン重合性化合物(W)がエポキシ化合物と化合物(f22)とを含有すると、組成物(X)に紫外線が照射された場合の組成物(X)の硬化性が高まりやすく、かつこのときの組成物(X)の急激過ぎる硬化が起こりにくくなり、そのため硬化物に白濁などによる透明性の悪化が起こりにくくなる。この作用を生じさせる機序は次のとおりであると推察される。化合物(f22)の反応性はエポキシ化合物の反応性よりも低いことから、組成物(X)に紫外線が照射されると、まずエポキシ化合物が反応する。このエポキシ化合物の反応によって、組成物(X)の硬化性が高くなりやすくなる。続いて、化合物(f22)が反応することで、エポキシ化合物と化合物(f22)とが一度に反応する事態を生じにくくできる。これにより急激過ぎる反応が起こりにくくなると考えられる。この場合のカチオン重合性化合物(W)に対する化合物(f22)の割合は、20質量%以上であることが好ましい。この場合、化合物(f22)によって、組成物(X)を特に低粘度化させやすく、かつ組成物(X)の保存安定性を特に高めやすい。さらに、化合物(f22)によって組成物(X)の硬化性を特に高めやすい。化合物(f22)の割合は、90質量%以下であることも好ましい。この場合、硬化物の硬化性を十分に高めることができる。化合物(f22)の割合は10質量%以上90質量%以下であればより好ましく、20質量%以上80質量%以下であれば更に好ましい。また、この場合のエポキシ化合物の割合は、カチオン重合性化合物(W)の総量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、20質量%以上80質量%以下であればより好ましく、25質量%以上75質量%以下であれば更に好ましい。これらの場合、硬化物中の未反応基を十分に減少させて、硬化物の硬化性を十分に高めることができる。
【0193】
エポキシ化合物は、グリシジルエーテル基を構成しないオキシラン環を少なくとも一つ有する化合物を含有することが好ましい。この場合、エポキシ化合物は、組成物(X)の硬化性を特に高めやすい。エポキシ化合物が、グリシジルエーテル基を構成しないオキシラン環を二以上有する化合物を含有すれば、より好ましい。エポキシ化合物が、グリシジルエーテル基を有さない化合物を含有することも好ましい。エポキシ化合物が、グリシジルエーテル基を構成しないオキシラン環を二以上有し、かつグリシジルエーテル基を有さない化合物を含有すれば、特に好ましい。
【0194】
カチオン重合性化合物(W)が化合物(f2)とエポキシ化合物とを含有し、更にエポキシ化合物が上述の芳香族エポキシ化合物(f1)を含有すれば、特に好ましい。この場合、組成物(X)は特に優れた保存安定性を有しやすく、また組成物(X)をインクジェット法で吐出する場合に、サテライトと呼ばれる不良な液滴を特に生じさせにくい。さらに、インクジェット法で吐出される液滴の速度を速くしてもサテライトを特に生じにくくできる。さらに、組成物(X)を長期間保管しても、サテライトを生じにくいという組成物(X)の特性が特に維持されやすい。この場合に化合物(f2)が化合物(f22)を含有すれば特に好ましい。
【0195】
カチオン重合性化合物(W)に対する芳香族エポキシ化合物(f1)と化合物(f22)との合計の割合は、55質量%以上であることが好ましい。この場合、芳香族エポキシ化合物(f1)と化合物(f22)との組み合わせによる作用が特に顕著に得られる。この割合は60質量%以上であればより好ましく、70質量%以上であれば更に好ましい。カチオン重合性化合物(W)が芳香族エポキシ化合物(f1)と化合物(f22)とのみを含有すれば特に好ましい。
【0196】
組成物(X)がカチオン重合性化合物(W)を含有する場合、組成物(X)は、増感剤を更に含有することが好ましい。この場合、組成物(X)は特に高いカチオン重合反応性を有することができる。増感剤は、例えば9,10-ジブトキシアントラセン及び9,10-ジエトキシアントラセンのうちいずれか一方又は両方を含有する。カチオン重合性化合物(W)に対する増感剤の割合は、0質量%より多く、1質量%以下の範囲内であることが好ましい。この場合、増感剤が硬化物の透明性を阻害しにくく、そのため硬化物は良好な透明性を有することができる。
【0197】
組成物(X)がカチオン重合性化合物(W)を含有する場合、組成物(X)は、光カチオン重合開始剤(B2)を更に含有することが好ましい。光カチオン重合開始剤(B2)は、光照射を受けてプロトン酸又はルイス酸を発生する触媒であれば、特に制限されない。光カチオン重合開始剤(B2)は、イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒と、非イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒とのうち、少なくとも一方を含有できる。
【0198】
イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、オニウム塩類と有機金属錯体とのうち少なくとも一方を含有できる。オニウム塩類の例は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、及び芳香族スルホニウム塩を含む。有機金属錯体の例は、鉄-アレン錯体、チタノセン錯体、及びアリールシラノール-アルミニウム錯体を含む。イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、これらの成分のうち少なくとも一種の成分を含有できる。
【0199】
非イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、例えばニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、及びN-ヒドロキシイミドホスホナートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。なお、非イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒が含有しうる成分は前記には限られない。
【0200】
光カチオン重合開始剤(B2)が含有できる化合物のより具体的な例は、みどり化学製のDPIシリーズ(105,106、109、201など)、BI-105、MPIシリーズ(103、105、106、109など)、BBIシリーズ(101、102、103、105、106、109、110、200、210、300、301など)、TSPシリーズ(102、103、105、106、109、200、300、1000など)、HDS-109、MDSシリーズ(103、105、109、203、205、209など)、BDS-109、MNPS-109、DTSシリーズ(102、103、105、200など)、NDSシリーズ(103、105、155、165など)、DAMシリーズ(101、102、103、105、201など)、SIシリーズ(105、106など)、PI-106、NDIシリーズ(105、106、109、1001、1004など)、PAIシリーズ(01、101、106、1001、1002、1003、1004など)、MBZ-101、PYR-100、NBシリーズ(101、201など)、NAIシリーズ(100、1002,1003、1004、101、105、106、109など)、TAZシリーズ(100、101、102、103、104、107、108、109、110、113、114、118、122、123、203、204など)、NBC-101、ANC-101、TPS-Acetate、DTS-Acetate、Di-Boc Bisphinol A、tert-Butyl lithocholate、tert-Butyl deoxycholate、tert-Butyl cholate、BX、BC-2、MPI-103、BDS-105、TPS-103、NAT-103、BMS-105、及びTMS-105;
米国ユニオンカーバイド社製のサイラキュアUVI-6970、サイラキュアUVI-6974、サイラキュアUVI-6990、及びサイラキュアUVI-950;
BASF社製のイルガキュア250、イルガキュア261及びイルガキュア264;
チバガイギー社製のCG-24-61;
株式会社ADEKA製のアデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-151、アデカオプトマーSP-170及びアデカオプトマーSP-171;
株式会社ダイセル製のDAICAT II;
ダイセル・サイテック株式会社製のUVAC1590及びUVAC1591;
日本曹達株式会社製のCI-2064、CI-2639、CI-2624、CI-2481、CI-2734、CI-2855、CI-2823、CI-2758、及びCIT-1682;
ローディア社製のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トルイルクミルヨードニウム塩であるPI-2074;
3M社製のFFC509;
米国Sartomer社製のCD-1010、CD-1011及びCD-1012;
サンアプロ株式会社製のCPI-100P、CPI-101A、CPI-110P、CPI-110A及びCPI-210S;並びに
ダウ・ケミカル社製のUVI-6992及びUVI-6976を、含む。光カチオン重合開始剤(B2)は、これらの化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0201】
カチオン重合性化合物(W)に対する光カチオン重合開始剤(B2)の割合は、1~4質量%の範囲内であることが好ましい。この割合が1質量%以上であることで、組成物(X)は特に良好なカチオン重合反応性を有することができる。また、この割合が4質量%以下であることで、組成物(X)は良好な保存安定性を有することができ、また過剰な光カチオン重合開始剤(B2)を含有しないことで製造コスト削減が可能である。
【0202】
組成物(X)は、分散剤(E)を含有してもよい。分散剤(E)は組成物(X)中での蛍光体(C)の分散性を向上できる。このため、分散剤(E)は、蛍光体(C)に起因する組成物(X)の粘度の増大と保存安定性の低下とが、生じにくい。
【0203】
なお、分散剤(E)は、粒子に吸着しうる界面活性剤である。分散剤(E)は、粒子に吸着されうる吸着基(一般にアンカーともいう)と、吸着基が粒子に吸着することでこの粒子に付着する分子骨格(一般にテールともいう)とを、有する。分散剤(E)は、例えばテールがアクリル系の分子鎖であるアクリル系分散剤と、テールがウレタン系の分子鎖であるウレタン系分散剤と、テールがポリエステル系の分子鎖であるポリエステル系分散剤とからなら群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。吸着基は、例えば塩基性の極性官能基と酸性の極性官能基とのうち少なくとも一方を含む。塩基性の極性官能基は、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、及び含窒素複素環基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。酸性の極性官能基は、例えばカルボキシル基とリン酸基とからなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。分散剤(E)は、例えば日本ルーブルリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ及び味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。なお、分散剤(E)が含有しうる成分は前記には限られない。
【0204】
蛍光体(C)に対する分散剤(E)の量は、5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。分散剤(E)の量が5質量部以上であることで分散剤(E)の機能が効果的に発現でき、また60質量部以下であることでカラーレジスト1中の分散剤(E)の遊離の分子がカラーレジスト1と無機材料製の部材との間の密着性を阻害することを抑制できる。また、分散剤(D)の量は15質量部以上であればより好ましく、50質量部以下であることもより好ましく、40質量部以下であればより更に好ましく、30質量部以下であれば特に好ましい。
【0205】
分散剤(D)は、必要に応じて組成物(X)に配合される。蛍光体(C)に分散性向上のための表面処理が施されている場合などには、組成物(X)が分散剤(E)を含有しなくても、蛍光体(C)が良好に分散しうることがある。
【0206】
上記のとおり、本実施形態では、組成物(X)は溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が1質量%以下であることが好ましい。このため、組成物(X)及び硬化物からアウトガスが生じにくい。また、組成物(X)の保存安定性が更に高くなる。
【0207】
上述の成分を混合することで、組成物(X)を調製できる。組成物(X)は25℃で液状であることが好ましい。
【0208】
組成物(X)は吸湿剤(F)を更に含有してもよい。組成物(X)が吸湿剤(F)を含有すると、組成物(X)の硬化物及びカラーレジスト1が水分に曝されても、吸湿剤(F)が水分を吸収することで、硬化物及びカラーレジスト1中の量子ドット蛍光体(C1)が劣化しにくくなる。吸湿剤(F)の平均粒径は200nm以下であることが好ましい。この場合、硬化物は高い透明性を有することができる。
【0209】
吸湿剤(F)は、吸湿性を有する無機粒子であることが好ましく、例えばゼオライト粒子、シリカゲル粒子、塩化カルシウム粒子、及び酸化チタンナノチューブ粒子からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。なお、吸湿剤(F)が含有しうる成分は前記には限られない。吸湿剤(F)がゼオライト粒子を含有することが特に好ましい。
【0210】
平均粒径200nm以下のゼオライト粒子は、例えば一般的な工業用ゼオライトを粉砕することで製造できる。ゼオライト粒子を製造するに当たって、ゼオライトを粉砕してから水熱合成などによって結晶化させてもよく、この場合、ゼオライト粒子は特に高い吸湿性を有することができる。このようなゼオライト粒子の製造方法の例は、特開2016-69266号公報、特開2013-049602号公報などに開示されている。
【0211】
ゼオライト粒子はナトリウムイオンを含有することが好ましく、そのためゼオライト粒子はナトリウムイオンを含有するゼオライトを原料として作製されることが好ましい。ナトリウムイオンを含有するゼオライトのうちA型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種を原料とすることがより好ましい。ゼオライト粒子が、A型ゼオライトのうち4A型ゼオライトを原料として作製されることが特に好ましい。これらの場合、ゼオライト粒子は、水分の吸着に好適な結晶構造を有する。
【0212】
吸湿剤(F)の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。この平均粒径が200nm以下であれば、硬化物は特に高い透明性を有することができる。また、この平均粒径が10nm以上であれば、吸湿剤(F)の良好な吸湿性を維持できる。なお、この平均粒径は、動的光散乱法による測定結果から算出されるメディアン径、すなわち累積50%径(D50)である。なお、測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のナノトラックNanotrac Waveシリーズを用いることができる。
【0213】
吸湿剤(F)の平均粒径は、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であれば更に好ましく、70nm以下であれば特に好ましい。また、吸湿剤(F)の平均粒径が20nm以上であることが好ましく、50nm以上であればより好ましい。この場合、硬化物は、特に良好な透明性と吸湿性とを有することができる。
【0214】
吸湿剤(F)の累積90%径(D90)が300nm以下であることが好ましく、100nm以下であれば更に好ましい。この場合、硬化物は特に高い透明性を有することができる。
【0215】
組成物(X)が吸湿剤(F)を含有する場合、組成物(X)の全量に対する吸湿剤(F)の割合は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。吸湿剤(F)の割合が1質量%以上であれば硬化物は特に高い吸湿性を有することができる。また、吸湿剤(F)の割合が20質量%以下であれば組成物(X)の粘度を特に低減でき、組成物(X)がインクジェット法で塗布可能な程度の十分な低粘度を有することもできる。吸湿剤(F)の割合は、3質量%以上であれば更に好ましく、5質量%以上であれば特に好ましい。また、吸湿剤(F)の割合は、15質量%以下であればより好ましく、13質量%以下であれば特に好ましい。
【0216】
組成物(X)から作製されるカラーレジスト1、カラーレジスト1を備えるカラーフィルタ2、及びカラーフィルタ2を備える発光装置11について、説明する。
【0217】
カラーフィルタ2は、例えば支持基板4、支持基板4上に支持されたカラーレジスト1、及びカラーレジスト1を覆う保護層5を備える(
図1A及び
図1B参照)。
【0218】
組成物(X)をインクジェット法で成形してから、組成物(X)に紫外線を照射して硬化することで、カラーレジスト1を作製できる。
【0219】
組成物(X)をインクジェット法で成形するに当たっては、組成物(X)が常温で十分に低い粘度を有する場合、例えば25℃における粘度が30mPa・s以下、特に15mPa・s以下である場合には、組成物(X)を加熱せずにインクジェット法で塗布することで成形できる。
【0220】
組成物(X)が加熱されることで低粘度化する性質を有する場合、組成物(X)を加熱してから組成物(X)をインクジェット法で塗布して成形してもよい。組成物(X)の40℃における粘度が30mPa・s以下、特に15mPa・s以下である場合、組成物(X)を僅かに加熱しただけで低粘度化させることができ、この低粘度化した組成物(X)をインクジェット法で吐出することができる。組成物(X)の加熱温度は、例えば20℃以上50℃以下である。
【0221】
また、組成物(X)を硬化させる際、組成物(X)中の蛍光体(C)が紫外線を吸収する場合には、蛍光体(C)が紫外線を吸収することによる反応効率の低下が生じ難いように、組成物(X)へ照射する紫外線の波長を選択することが好ましい。例えばCdSe/ZnSコアシェル型半導体粒子からなる緑色量子ドット蛍光体が使用される場合は、組成物(X)へ照射する紫外線の波長が395nm以上であることが好ましい。
【0222】
より具体的には、例えばまず、透明な支持基板4を準備する。支持基板4は、例えば透明な樹脂又はガラスから作製される。この支持基板4の一面上に隔壁3を作製する。隔壁3は、例えばポリイミド樹脂から作製される。これにより、支持基板4の上に、隔壁3で仕切られた複数の凹所14が形成される。次に、凹所14内に組成物(X)をインクジェット法で吐出する。続いて、凹所14内の組成物(X)に紫外線を照射することで硬化させて、カラーレジスト1を作製する。
【0223】
次に、カラーレジスト1を覆うように保護層5を作製する。保護層5は、例えば樹脂から作製された層(樹脂層という)を含む。保護層5は、無機質材料から作製された層(無機質層という)を含んでもよい。無機質層は、例えば窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製される。保護層5は、樹脂層と無機質層とのうちいずれか一方を含んでもよく、両方を含んでもよい。保護層5が樹脂層と無機質層とを両方含む場合、保護層5は複数の樹脂層を含んでもよく、複数の無機質層を含んでもよい。保護層5が樹脂層と無機質層とを含む場合、保護層5内では、隣り合う樹脂層と無機質層とは、カラーレジスト1と保護層5とが並ぶ方向に並んでいる。例えば保護層5は、二つの無機質層と一つの樹脂層とを含み、無機質層、樹脂層及び無機質層が、この順に並んでいてもよい。保護層5が、一つの無機質層と二つの樹脂層とを含み、樹脂層、無機質層及び樹脂層が、この順に並んでいてもよい。保護層5の厚みは、例えば0.1μm以上2μm以下である。
【0224】
保護層5が無機質層を含む場合、無機質層は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。この場合、カラーレジスト1は真空下又は減圧下に曝されるが、上記のとおり、本実施形態では真空下又は減圧下でカラーレジスト1からアウトガスを発生しにくくできる。このため、カラーフィルタ2の製造工程においてカラーレジスト1が真空下又は減圧下に曝されても、カラーフィルタ2にアウトガスによる空隙が生じにくくできる。
【0225】
組成物(X)からカラーレジスト1を作製する工程は、組成物(X)を成形してから硬化させるまでの間に、組成物(X)を乾燥させる乾燥工程を含まないことが好ましい。組成物(X)を乾燥させる乾燥工程とは、組成物(X)中の溶剤の少なくとも一部を除去することである。この場合、組成物(X)を乾燥させることが不要であることで、カラーレジスト1を作製する効率を高めることができる。特に組成物(X)が溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が1質量%以下であれば、組成物(X)を乾燥させなくても、カラーレジスト1からアウトガスを発生しにくくできる。
【0226】
組成物(X)が1質量%以下の溶剤を含有する場合、必要により、組成物(X)からカラーレジスト1を作製する工程が、組成物(X)を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。この場合、特に組成物(X)の溶剤の含有量が1質量%以下であれば、組成物(X)を乾燥させる場合の、組成物(X)の加熱温度の低減化と加熱時間の短縮化の少なくとも一方を実現しやすい。例えば加熱温度を120℃以下にすることができ、100℃未満にすることもでき、50℃未満にすることもできる。組成物(X)を乾燥させると、カラーレジスト1からアウトガスを更に発生しにくくできる。
【0227】
カラーフィルタ2の製造方法が、カラーレジスト1を作製することと保護層5を作製することとを含む場合、この製造方法は、組成物(X)からカラーレジスト1を作製してから保護層5を作製するまでの間、カラーレジスト1を乾燥させる乾燥工程を含まないことが好ましい。この場合、カラーレジスト1を乾燥させることが不要であることで、カラーフィルタ2の製造効率を高めることができる。また、本実施形態では組成物(X)が溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が1質量%以下であるため、カラーレジスト1を乾燥させなくても、カラーレジスト1からアウトガスを発生しにくくできる。
【0228】
組成物(X)が1質量%以下の溶剤を含有する場合、必要により、カラーフィルタ2の製造方法が、組成物(X)からカラーレジスト1を作製してから保護層5を作製するまでの間、カラーレジスト1を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。この場合、組成物(X)の溶剤の含有量が1質量%以下であることで、カラーレジスト1を乾燥させる場合の、カラーレジスト1の加熱温度の低減化と加熱時間の短縮化の少なくとも一方を実現しやすい。例えば加熱温度を120℃以下にすることができ、100℃未満にすることもでき、50℃未満にすることもできる。カラーレジスト1を乾燥させると、カラーレジスト1からアウトガスを更に発生しにくくできる。
【0229】
カラーフィルタ2の製造方法が、組成物(X)を成形してから保護層5を作製するまでの間、組成物(X)を乾燥させる乾燥工程及びカラーレジスト1を乾燥させる乾燥工程をいずれも含まないことが、特に好ましい。ただし、組成物(X)が1質量%以下の溶剤を含有する場合、必要により、カラーフィルタ2の製造方法が、組成物(X)とカラーレジスト1とのうち少なくとも一方を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。この場合も、上述のとおり、乾燥のための加熱温度の低減化と加熱時間の短縮化の少なくとも一方を実現しやすい。
【0230】
組成物(X)を乾燥させる乾燥工程は組成物(X)を減圧雰囲気下又は真空下で加熱することを含んでもよい。カラーレジスト1を乾燥させる乾燥工程はカラーレジスト1を減圧雰囲気下又は真空下で加熱することを含んでもよい。これらの場合も、例えば加熱温度を120℃以下にすることができ、100℃未満にすることもでき、50℃未満にすることもできる。
【0231】
なお、カラーレジスト1を作製した後に、カラーレジスト1を乾燥させる以外の目的でカラーレジストを加熱することは、カラーレジスト1を乾燥させる乾燥工程には含まれない。例えば、カラーレジスト1の上に上述の無機質層をプラズマCVD法といった蒸着法で作製するために、カラーレジスト1がチャンバー内で真空下又は減圧下で加熱されることは、乾燥工程には含まれない。
【0232】
次に、カラーフィルタ2を備える発光装置11について説明する。発光装置11は、例えばカラーレジスト1を備えるカラーフィルタ2と、カラーフィルタ2へ光を照射する光源とを備える。発光装置11は、光によって映像等の情報を可視表示する表示装置(ディスプレイ)であってもよい。
【0233】
図1Aに示す発光装置11は、表示装置であり、より具体的には液晶表示装置12である。液晶表示装置12は、光源を含むバックライトユニット7、液晶パネル6、及びカラーフィルタ2を備え、これらはこの順番に積層している。バックライトユニット7における光源は、例えば冷陰極管又は発光ダイオードである。
【0234】
この液晶表示装置12におけるカラーフィルタ2のカラーレジスト1は、例えば赤色の蛍光を発するカラーレジスト1r(以下、赤色カラーレジスト1rともいう)と、緑色の蛍光を発するカラーレジスト1g(以下、緑色カラーレジスト1gともいう)と、蛍光を発しないレジスト1b(以下、透明レジスト1bともいう)とを含む。この場合、光源が青色光を発するならば、三原色を利用したフルカラー表示が可能である。赤色カラーレジスト1r及びこれを作製するための組成物(X)は、赤色の蛍光を発する量子ドット蛍光体(C1)を含有する。緑色カラーレジスト1g及びこれを作製するための組成物(X)は、緑色の蛍光を発する量子ドット蛍光体(C1)を含有する。透明レジスト1bを作製するための組成物は、透明な硬化物を作製できればよいが、例えば組成物(X)から蛍光体(C)を除いた組成を有する。
【0235】
なお、カラーフィルタ2におけるカラーレジスト1の発する蛍光の色、及び量子ドット蛍光体(C1)の発する蛍光の色は、前記には限られない。例えば、光源が白色光を発する場合、カラーレジスト1は、透明レジスト1bに代えて、青色の蛍光を発するカラーレジスト(以下、青色カラーレジストともいう)を含んでもよい。青色カラーレジスト及びこれを作製するための組成物(X)は、青色の蛍光を発する量子ドット蛍光体(C1)を含有する。この場合も、三原色を利用したフルカラー表示が可能である。
【0236】
液晶表示装置12を製造する場合には、カラーフィルタ2を作製してから、カラーフィルタ2を液晶パネル6に重ねてもよい。液晶パネル6の上に支持基板4を重ねてから、この支持基板4上に上記の方法で隔壁3、カラーレジスト1及び保護層5を作製することで、カラーフィルタ2を作製してもよい。液晶パネル6の上に直接上記の方法で隔壁3、カラーレジスト1及び保護層5を作製することで、カラーフィルタ2を作製してもよい。
【0237】
液晶表示装置12は、上記以外の要素を更に備えてもよい。例えば液晶表示装置12は、カラーフィルタ2に重なる透明な基板を更に備えてもよい。液晶表示装置12は、カラーフィルタ2に重なるタッチパネルを更に備えてもよい。
【0238】
図1Bに示す発光装置11は、表示装置であり、より具体的にはLED(発光ダイオード)表示装置である。LED表示装置13は、光源である複数の発光ダイオード9を含む発光ユニット8と、カラーフィルタ2とを備える。発光ダイオード9は、例えばマイクロ発光ダイオード又は有機発光ダイオード(有機エレクトロルミネッセンス素子)である。
【0239】
発光ユニット8は、基板10と、基板10上に搭載されている複数の発光ダイオード9と、発光ダイオード9を覆う保護層15とを備える。発光ユニット8における保護層15は、例えばカラーフィルタ2における保護層5と同様に、樹脂層と無機質層とのうちいずれか一方を含み、又は樹脂層と無機質層との両方を含む。
【0240】
このLED表示装置13におけるカラーフィルタ2のカラーレジスト1は、例えば上記の液晶表示装置12の場合と同様、赤色カラーレジスト1r、緑色カラーレジスト1g及び透明レジスト1bを含む。カラーフィルタ2における複数のカラーレジスト1は、複数の発光ダイオード9のそれぞれと対になっている。発光ダイオード9が発する光は、対となるカラーレジスト1に照射され、それによってカラーレジスト1から蛍光が発せられる。このため、発光ダイオード9が青色光を発する場合、LED表示装置13から外部に発せられる光には、赤色カラーレジスト1rから発せられる赤色の蛍光と、緑色カラーレジスト1gから発せられる緑色の蛍光と、透明レジスト1bを通過する青色の光とが含まれる。このため、三原色を利用したフルカラー表示が可能である。
【0241】
なお、発光ダイオード9が白色の光を発する場合には、透明レジスト1bに代えて、青色の蛍光を発する青色カラーレジストを含んでもよい。この場合、発光ダイオード9は、赤色カラーレジスト1rと対となる発光ダイオード(第一発光ダイオード)と、緑色カラーレジスト1gと対となる発光ダイオード(第二発光ダイオード)と、青色カラーレジストと対になる発光ダイオード(第三発光ダイオード)とを含んでもよい。換言すると、発光ダイオード9は、赤色カラーレジスト1rに光を照射する第一発光ダイオードと、緑色カラーレジスト1gに光を照射する第二発光ダイオードと、青色カラーレジストに光を照射する第三発光ダイオードとを含んでもよい。この場合、LED表示装置13から外部に発せられる光には、赤色カラーレジスト1rから発せられる赤色の蛍光と、緑色カラーレジスト1gから発せられる緑色の蛍光と、青色カラーレジストから発せられる青色の蛍光とが含まれる。このため、三原色を利用したフルカラー表示が可能である。
【実施例】
【0242】
1.組成物の調製
下記表に示す成分を混合することで、実施例及び比較例の組成物を調製した。
【0243】
なお、表中に示される成分の詳細は次のとおりである。また、下記の各成分の粘度はレオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用し、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定された値である。
-3PG:トリス(プロピレングリコール)ジメタクリレート、新中村化学工業社製、沸点400℃、粘度13mPa・s。
-APG200:トリス(プロピレングリコール)ジアクリレート、新中村化学工業社製、沸点295℃、粘度12mPa・s。
-3G:トリエチレングリコールジメタクリレート、新中村化学工業社製、沸点290、粘度8mPa・s。
-BD:1,4-ブタンジオールジメタクリレート、新中村化学工業社製、沸点280、粘度7mPa・s。
-SR351S:トリメチロールプロパントリアクリレート、沸点300℃以上、粘度106mPa・s。
-ビス(4-メタクリロイルチオフェニル)スルフィド:東京化成工業社製、屈折率1,668、粘度20mPa・s。
-ビニルフェニルスルフィド:東京化成工業社製、屈折率1.599、粘度10mPa・s。
-VEEA:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、沸点260℃、粘度4mPa・s。
-ACMO:アクリロイルモルフォリン、沸点265、粘度12mPa・s。
-N-ビニル-ε-カプロラクタム:BASF製、粘度6mPa・s。
-Irgacure907:BASF製、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン。
-IrgacureTPO:BASF製、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド。
-緑色量子ドット蛍光体(C1):CdSe/ZnSコアシェル型半導体粒子、メディアン径3.3nm、SIGMA-ALDRICH社製、製品名CdSe/ZnS530。
-赤色量子ドット蛍光体(C1):CdSe/ZnSコアシェル型半導体粒子、メディアン系5.2nm、SIGMA-ALDRICH社製、製品名CdSe/ZnS610。
-中空アクリル粒子1:屈折率1.50のアクリル樹脂から作製された、メディアン径400nm、中空率70%、比重0.45の中空アクリル粒子。
-中空アクリル粒子2:屈折率1.50のアクリル樹脂から作製された、メディアン径220nm、中空率55%、比重0.55の中空アクリル粒子。
-中空アクリル粒子3:屈折率1.50のアクリル樹脂から作製された、メディアン径80nm、中空率40%、比重0.75の中空アクリル粒子。
-中空シリカ粒子:屈折率1.45のシリカから作製された、メディアン径60nm、中空率44%、比重1.12の中空シリカ粒子。
-酸化チタン粒子:ルチル型二酸化チタン粒子、メディアン径210nm、比重4.0、ハンツマン製、品番R-TC30。
-酸化亜鉛粒子:酸化亜鉛1種、平均粒径0.6μm、比重6.2、堺化学製。
-分散剤:吸着基としてカルボキシル基を有する両末端型及び側鎖末端型分散剤、酸価98mgKOH/g、粘度9000mP・s、重量平均分子量3000、綜研化学製、品番CBB3098。
【0244】
2.評価試験
実施例及び比較例について、次の評価試験を実施した。その結果を表に示す。
【0245】
(1)25℃粘度
組成物の粘度を、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用して、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定した。
【0246】
(2)40℃粘度
組成物の粘度を、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用して、温度40℃、せん断速度1000s-1の条件で測定した。
【0247】
(3)ガラス転移温度
組成物を塗布して塗膜を作製し、この塗膜を、大気雰囲気下、パナソニック電工サンクス製のLED-UV照射器(ピーク波長385nm)を用いて、500mW/cm2の条件で20秒間紫外線照射して光硬化させることで、厚み300μmのフィルムを作製した。このフィルムから切り出したサンプルのガラス転移温度を、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、型番DMA7100)を用いて測定した。
【0248】
(4)密着性
石英ガラス片(寸法50mm×25mm×1mm)上に組成物を塗布して厚み50μmの塗膜を作製した。この塗膜の上に、別の石英ガラス片を、両者が接触する領域の寸法が12.5mm×25mmとなるように重ねた。続いて、塗膜に、パナソニック電工サンクス製のLED-UV照射器(ピーク波長385nm)を用いて500mW/cm2の条件で20秒間紫外線照射して塗膜を光硬化させた。
【0249】
次に、二つの石英ガラス片の間の密着強度を、JIS-K-6850に準じ、引張剪断(引張速度5mm/分)試験を行うことで、次の基準で評価した。
A:15MPa以上。
B:15MPa未満。
【0250】
(5)アウトガス評価
組成物の硬化物を加熱した場合のアウトガスをヘッドスペース法でサンプリングしてガスクロマトグラフにより測定した。詳しくは、まずヘッドスペース用バイアルに組成物を100mg入れた。続いて、組成物に、パナソニック電工サンクス製のLED-UV照射器(ピーク波長385nm)を用いて、紫外線を500mW/cm2の条件で3秒間積算光量1500mJ/cm2の条件で照射して組成物を硬化させた後、バイアルを封止した。続いて組成物を80℃で30分間加熱してから、バイアル中の気相部分をガスクロマトグラフに導入して分析した。その結果、発生したガスが300ppm以下であった場合を「A」、300ppmを超え500ppm未満であった場合を「B」、500ppm以上であった場合を「C」と評価した。
【0251】
(6)保存安定性
組成物を窒素雰囲気下、40℃の温度で1か月間放置した。この試験の前の組成物の粘度と、試験の後の組成物の粘度とを、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR-2)を使用して、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定し、その結果から、粘度の変化率を算出した。この変化率が5%未満である場合を「A」、5%以上10%未満である場合を「B」、10%以上である場合を「C」と評価した。
【0252】
(7)インクジェット性
組成物をインクジェットプリンター(リコー製、形式MH2420)のカートリッジに入れ、インクジェットプリンターにおけるノズルからカートリッジ内の組成物を吐出しうることを確認してから、ノズルから組成物を吐出させてテストパターンを連続で印刷した。その結果、組成物を1時間吐出できるとともに吐出動作が安定していた場合を「A」、組成物を1時間吐出できたが吐出動作が断続的に不安定になった場合を「B」、吐出開始から1時間経過前にノズルが詰まって組成物を吐出できなくなった場合を「C」と、評価した。
【0253】
(8)樹脂の屈折率
組成物の成分のうち、ラジカル重合性化合物及び光重合開始剤のみを含む混合物から、「(3)ガラス転移温度」の場合と同じ方法で、樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物の、波長589nmの光についての、25℃での屈折率を、アタゴ社製の多波長アッベ屈折計DR-M4を用いて測定した。
【0254】
(9)波長変換能
組成物を厚さ1mmの石英ガラス上に塗布して、この組成物の塗膜を、大気雰囲気下、パナソニック電工サンクス製のLED-UV照射器(ピーク波長385nm)を用いて、紫外線を500mW/cm2の条件で3秒間(積算光量1500mJ/cm2)照射して硬化させ、厚み10μmのフィルムを作製した。これにより、フィルム付石英ガラスを得た。このフィルム付石英ガラスの、波長450nmの光の透過率を測定した。測定に当たっては、分光光度計(株式会社日立製作所製 U-4100)を用いた。なお、フィルムの波長変換能が高いほど、フィルム中で波長450nmの光が蛍光体に吸収されやすくなり、フィルムを透過する光の中の波長450nmの光の割合が低くなる。このため、波長450nmの光の透過率の測定値が低いほど、波長変換能が高いと判断できる。透過率が60%以下であれば「A」、60%超75%以下であれば「B」、75%超85%以下であれば「C」、85%超であれば「D」と、評価した。
【0255】
【0256】