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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/30 20200101AFI20240226BHJP
   D06F 37/22 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
D06F33/30
D06F37/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019223214
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021090633
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉村 慎一
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-273713(JP,A)
【文献】特開2012-170684(JP,A)
【文献】特開2011-251037(JP,A)
【文献】特開2007-289453(JP,A)
【文献】特開2011-245231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30
D06F 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機において、
筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾斜する回転軸周りに回転可能なドラムと、
前記外槽を正面から見たときの前記外槽の左右両側を支持するサスペンションと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記洗濯運転が終了すると、前記洗濯運転の回数をインクリメントし、
前記洗濯運転の回数が基準回数に達すると、前記脱水工程での、前記ドラムの回転数が所定の脱水回転数に立ち上げられた後に前記脱水工程が終了するまでの前記ドラムの回転方向を、それまでの前記脱水工程での前記回転方向と反対となるように切り替える、
とを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機において、
筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾斜する回転軸周りに回転可能なドラムと、
前記外槽を正面から見たときの前記外槽の左右両側を支持するサスペンションと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記脱水工程が終了すると、前記脱水工程の回数をインクリメントし、
前記脱水工程の回数が所定回数に達すると、前記脱水工程での、前記ドラムの回転数が所定の脱水回転数に立ち上げられた後に前記脱水工程が終了するまでの前記ドラムの回転方向を、それまでの前記脱水工程での前記回転方向と反対となるように切り替える、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機において、
筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾斜する回転軸周りに回転可能なドラムと、
前記外槽を正面から見たときの前記外槽の左右両側を支持するサスペンションと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記洗濯運転が終了した後において、前記サスペンションの劣化具合を診断し、当該劣化具合が所定基準を超えたとの判定に基づいて、前記ドラムの回転数が所定の脱水回転数に立ち上げられた後に前記脱水工程が終了するまでの前記ドラムの回転方向を、それまでの前記脱水工程での前記回転方向と反対となるように切り替える、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項4】
請求項3に記載のドラム式洗濯機において、
前記ドラムが回転したときの前記外槽の振動の大きさを検出する振動検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記振動検出部により検出された振動の大きさに基づいて前記劣化具合を判定する、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項5】
請求項3または4に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記脱水工程での前記ドラムの回転方向を切り替える際、所定の報知処理を行う、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項6】
請求項5に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記報知処理として、前記サスペンションの劣化状況および交換推奨時期に係る情報のうち、少なくとも一つの情報を出力する、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。かかるドラム式洗濯機は、洗濯から乾燥まで連続的に行うものであっても良いし、洗濯は行うが乾燥は行わないものであっても良い。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム式洗濯機では、外槽内に横軸型のドラムが配置され、当該ドラムの回転により、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転が行われる。脱水工程では、ドラムが一方向に高速回転し、洗濯物が脱水される。脱水時の振動を抑制するため、外槽は、左右両側をサスペンションによって弾性的に支持される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-152862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脱水工程においてドラムが回転するとき、左右両側のサスペンションのうち、回転方向側のサスペンション、たとえば、ドラムが右方向に回転するときには右側のサスペンションの負担が、反対側のサスペンションよりも大きくなる。
【0005】
従来のドラム式洗濯機では、脱水工程でのドラムの回転方向が常に一定である。このため、脱水の際に、負担が大きくなるサスペンションは常に同じとなるため、そのサスペンションの寿命が短くなりやすかった。そして、そのサスペンションに寿命がくれば、洗濯運転ができなくなるため、サスペンションの交換作業が必要となる。よって、従来のドラム式洗濯機では、サスペンションの交換作業が必要となるまでの期間が短くなりやすいとの課題があった。
【0006】
特に、コインランドリ等に設置される大型のドラム式洗濯機では、外槽が重くなり、サスペンションに掛かる負荷が大きくなるため、上記のような課題が顕著に生じやすい。
【0007】
本願発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、サスペンションの交換作業が必要となるまでの期間を長くできるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機に関する。本態様に係るドラム式洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾斜する回転軸周りに回転可能なドラムと、前記外槽を正面から見たときの前記外槽の左右両側を支持するサスペンションと、制御部と、を備える。前記制御部は、前記洗濯運転が終了すると、前記洗濯運転の回数をインクリメントし、前記洗濯運転の回数が基準回数に達すると、前記脱水工程での、前記ドラムの回転数が所定の脱水回転数に立ち上げられた後に前記脱水工程が終了するまでの前記ドラムの回転方向を、それまでの前記脱水工程での前記回転方向と反対となるように切り替え
【0009】
上記の構成によれば、左右両側のサスペンションが寿命を迎えるようなタイミングで、サスペンションの交換作業を行うことが可能となる。これにより、サスペンションの交換作業が必要となるまでの期間を長くすることが可能となる。
さらに、ドラムの回転方向を切り替えるための制御処理が単純になり、容易となる。
【0010】
本発明の第2の態様は、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機に関する。本態様に係るドラム式洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾斜する回転軸周りに回転可能なドラムと、前記外槽を正面から見たときの前記外槽の左右両側を支持するサスペンションと、制御部と、を備える。前記制御部は、前記脱水工程が終了すると、前記脱水工程の回数をインクリメントし、前記脱水工程の回数が所定回数に達すると、前記脱水工程での、前記ドラムの回転数が所定の脱水回転数に立ち上げられた後に前記脱水工程が終了するまでの前記ドラムの回転方向を、それまでの前記脱水工程での前記回転方向と反対となるように切り替える。
【0011】
上記の構成によれば、左右両側のサスペンションが寿命を迎えるようなタイミングで、サスペンションの交換作業を行うことが可能となる。これにより、サスペンションの交換作業が必要となるまでの期間を長くすることが可能となる。
さらに、ドラムの回転方向を切り替えるための制御処理が単純になり、容易となる。
【0012】
本発明の第3の態様は、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を行うドラム式洗濯機に関する。本態様に係るドラム式洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾斜する回転軸周りに回転可能なドラムと、前記外槽を正面から見たときの前記外槽の左右両側を支持するサスペンションと、制御部と、を備える。前記制御部は、前記洗濯運転が終了した後において、前記サスペンションの劣化具合を診断し、当該劣化具合が所定基準を超えたとの判定に基づいて、前記ドラムの回転数が所定の脱水回転数に立ち上げられた後に前記脱水工程が終了するまでの前記ドラムの回転方向を、それまでの前記脱水工程での前記回転方向と反対となるように切り替える。
【0013】
たとえば、前記ドラムが回転したときの前記外槽の振動の大きさを検出する振動検出部がさらに備えられ、前記制御部は、前記振動検出部により検出された振動の大きさに基づいて前記劣化具合を判定する。
【0014】
上記の構成によれば、左右両側のサスペンションが寿命を迎えるようなタイミングで、サスペンションの交換作業を行うことが可能となる。これにより、サスペンションの交換作業が必要となるまでの期間を長くすることが可能となる。
さらに、実際のサスペンションの劣化の進行に合わせてドラムの回転方向の切替を行うことができる。
【0015】
上記の構成とされた場合、さらに、前記制御部は、前記脱水工程での前記ドラムの回転方向を切り替える際、所定の報知処理を行うような構成とされ得る。
【0016】
このような構成とされれば、ユーザや管理者は、サスペンションの劣化によりドラムの回転方向が切り替えられたことを把握することが可能となる。
【0017】
上記の構成とされた場合、さらに、前記制御部は、前記報知処理として、前記サスペンションの劣化状況および交換推奨時期に係る情報のうち、少なくとも一つの情報を出力するような構成とされ得る。
【0018】
たとえば、制御部から出力された情報は、表示部に表示される、または、インターネット回線等の通信回線を介してパーソナルコンピュータ等の端末装置に送信される。
【0019】
このような構成とされれば、ユーザや管理者は、劣化状況や交換推奨時期を把握できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、サスペンションの交換作業が必要となるまでの期間を長くできる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の内部の概略構成を示す側面断面図である。
図3図3は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の内部の概略構成を示す正面断面図である。
図4図4は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態に係る、洗濯運転の回数を切替条件とする回転方向切替処理を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態に係る、脱水工程での制御部による制御処理を示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態に係る、サスペンションの劣化具合を切替条件とする回転方向切替処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、ドラム式洗濯機1の外観を示す斜視図である。
【0025】
本実施の形態のドラム式洗濯機1は、10kg以上の洗濯物の洗濯が可能な大型のドラム式洗濯機であり、コインランドリや、寮、老人ホーム等の施設に設置される。
【0026】
ドラム式洗濯機1は、外郭を構成する方形状の筐体10を備える。筐体10の前面には、中央部に円形のドア11が配置される。ドア11には、ドア11を閉じた状態にロックするためのレバー11aが設けられる。筐体10の前面には、上部に、コイン投入部12、表示部13および操作部14が設けられる。コイン投入部12は、コインが投入されるコイン投入口12aと、コインの返却操作のための返却レバー12bを有する。表示部13は、たとえば、液晶パネルや複数個の7セグメントLEDにより構成され、利用金額などの所定の情報を表示する。操作部14には、洗濯容量に応じた複数の洗濯コースごとに、その洗濯コースを開始するための操作ボタン14aが配置される。
【0027】
図2は、ドラム式洗濯機1の内部の概略構成を示す側面断面図である。図3は、ドラム式洗濯機1の内部の概略構成を示す正面断面図である。
【0028】
筐体10内には、金属製の外槽20が配置される。外槽20は、外槽20を正面から見て左右両側の前後にそれぞれ設けられた4つの第1サスペンション21と、左右両側において前後の第1サスペンション21の間にそれぞれ設けられた2つの第2サスペンション22とによって弾性的に支持される。第1サスペンション21および第2サスペンション22は、本発明のサスペンションに相当する。
【0029】
第1サスペンション21は、オイル式のダンパー21aと、当該ダンパー21aの周囲に並列的に配置されたスプリング21bとにより構成される。第1サスペンション21は、上端部が外槽20の底部に設けられた固定部23aに固定され、下端部が、筐体10の底部に設けられた固定部15aに左右方向に揺動可能に固定される。
【0030】
第2サスペンション22は、オイル式のダンパーであり、上端部が外槽20の底部に設けられた固定部23bに固定され、下端部が、筐体10の底部に設けられた固定部15bに左右方向に揺動可能に固定される。
【0031】
外槽20の上部には、左右に錘となる金属製のブロック24が取り付けられる。2つのブロック24は、脱水時の外槽20の振動を抑制するために設けられる。
【0032】
外槽20内には、金属製のドラム25が回転自在に配置される。ドラム25は、水平軸周りに回転する。ドラム25は、前面に円形の開口部25aを有し、外槽20は、ドラム25の開口部25aの前方に円形の投入口20aを有する。投入口20aが、ドア11により閉鎖される。ドア11は、開閉自在に外槽20に取り付けられる。
【0033】
ドラム25の内周面には、多数の脱水孔25bが形成される。また、ドラム25の内周面には、周方向に等しい間隔で、3つのバッフル26が設けられる。各バッフル26は、ほぼ三角柱形状を有し、ドラム25の軸線方向に延びる。
【0034】
ドラム25には、後面の中央部に、ドラム軸27が設けられる。ドラム軸27は、外槽20の後方に突出し、外槽20に設けられた図示しない軸受部により回転可能に支持される。ドラム軸27の後端にドラムプーリ28が取り付けられる。
【0035】
外槽20の後底部には、ドラム25を駆動するトルクを発生させる駆動モータ30が取り付けられる。駆動モータ30のモータ軸30aには、モータプーリ31が取り付けられる。モータプーリ31は、ベルト32によってドラムプーリ28に連結される。
【0036】
駆動モータ30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム25を低速度、即ち、ドラム25内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転数で回転させる。一方、駆動モータ30は、脱水工程時には、ドラム25を高速度、即ち、ドラム25内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転数で回転させる。
【0037】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外に排出される。
【0038】
筐体10内の後側の上部には、給水バルブ50が配置される。給水バルブ50は、給水ホース51によって外槽20の前上部に設けられた注水口20cに接続される。給水バルブ50が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース51介して注水口20cから外槽20内に供給される。
【0039】
外槽20の上部には、2つのブロック24の間の位置に、加速度センサ60が設けられる。加速度センサ60は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の3軸方向の動加速度および静加速度を検出可能な3軸加速度センサである。加速度センサ60として、たとえば、3軸ピエゾ抵抗型加速度センサを用いることができる。加速度センサ60は、たとえば、X軸方向が左右方向、Y軸方向が上下方向、Z軸方向が前後方向となるように、外槽20に取り付けられる。
【0040】
図4は、ドラム式洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0041】
ドラム式洗濯機1は、上述した構成に加え、制御部101、記憶部102、コイン検出部103、操作検出部104、水位センサ105、表示駆動部106、モータ駆動部107、給水駆動部108、排水駆動部109および通信部110を備える。
【0042】
コイン検出部103は、コイン投入部12のコイン投入口12aから投入されたコインを検出し、コインの金額に応じた金額信号を制御部101に出力する。操作検出部104は、操作部14の操作ボタン14aに応じた操作信号を制御部101に出力する。
【0043】
水位センサ105は、外槽20内の水位を検出し、検出した水位に応じた水位信号を制御部101に出力する。加速度センサ60は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれの加速度に応じた加速度信号を制御部101に出力する。加速度センサ60が検出する加速度は、外槽20の振動に応じて変化する。よって、加速度センサ60は、外槽20の振動を検出することになる。加速度センサ60は、本発明の振動検出部に相当する。
【0044】
表示駆動部106は、制御部101から出力された情報信号に従って表示部13を駆動し、情報信号に対応する情報を表示部13に表示させる。モータ駆動部107は、制御部101からの制御信号に従って、駆動モータ30を駆動する。給水駆動部108は、制御部101からの制御信号に従って、給水バルブ50を駆動する。排水駆動部109は、制御部101からの制御信号に従って、排水バルブ40を駆動する。
【0045】
通信部110は、ドラム式洗濯機1の設置場所と離れた場所にいる管理者が保持するパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の端末装置とインターネット回線を介して通信する。
【0046】
記憶部102は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部102には、各種洗濯コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部102には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0047】
制御部101は、コイン検出部103、操作検出部104、水位センサ105、加速度センサ60等からの各信号に基づいて、記憶部102に記憶されたプログラムに従い、表示駆動部106、モータ駆動部107、給水駆動部108、排水駆動部109、通信部110を制御する。
【0048】
ドラム式洗濯機1では、洗濯コースに応じた洗濯運転が行われる。
【0049】
洗濯運転が開始されると、まず、洗い工程が行われる。洗濯コースで決められた洗濯容量、即ち洗濯物の負荷量に応じた所定水位まで、外槽20内に洗剤を含む水が溜められ、その水の中に浸された洗濯物が、ドラム25の正回転および逆回転が繰り返されることによりタンブリングされる。洗濯物の内部まで洗剤を含む水が浸透し、洗剤の力とタンブリングによる機械力とにより洗濯物の表面や内部に付着した汚れが落とされる。
【0050】
洗い工程の後に、中間の脱水工程、すすぎ工程および最終の脱水工程が順次行われる。
【0051】
すすぎ工程では、外槽20内に所定水位までの水が溜められた状態でドラム25が正回転および逆回転し、洗濯物がタンブリングされる。これにより、洗濯物がすすがれる。
【0052】
脱水工程では、ドラム25が高速回転する。ドラム25に発生する遠心力の作用により、洗濯物が脱水される。なお、脱水工程において、ドラム25内での洗濯物の片寄りが大きい場合、ドラム25が所定の脱水回転数まで立ち上げられる際に、外槽20が大きく振動し得る。制御部101は、この外槽20の振動の大きさを加速度センサ60に働く動加速度に基づいて判定し、許容される大きさを超える振動が発生した場合、ドラム25の回転の立ち上げを中止し、ドラム25を低速度で反転回転させて洗濯物をほぐすほぐし動作を行う。
【0053】
さて、脱水工程においてドラム25が回転するとき、左右両側のサスペンション21,22のうち、回転方向側のサスペンション21,22、たとえば、ドラム25が右方向に回転するときには右側のサスペンション21,22の負担が、反対側のサスペンション21,22よりも大きくなる。よって、脱水工程でのドラム25の回転方向が常に一定とされた場合は、脱水の際に、負担が大きくなるサスペンション21,22は常に同じとなるため、そのサスペンション21,22の寿命が短くなりやすい。そして、そのサスペンション21,22が寿命を迎えれば、そのサスペンション21,22の交換作業が必要となるため、交換作業が必要となるまでの期間が短くなる虞がある。
【0054】
そこで、本実施のドラム式洗濯機1では、制御部101により、以下に説明する回転方向切替処理が実行され、所定の切替条件が満たされたことに基づいて、脱水工程でのドラム25の回転方向が、それまでの脱水工程での回転方向と反対となるように切り替えられる。
【0055】
たとえば、洗濯運転の回数が所定回数に到達したことが切替条件とされる。また、サスペンション21,22の劣化具合が所定基準を超えたことが切替条件とされる。
【0056】
本実施の形態では、洗濯運転の回数を切替条件とする回転方向切替処理およびサスペンション21,22の劣化具合を切替条件とする回転方向切替処理のうち、何れかの回転方向切替処理が実行される。
【0057】
まず、洗濯運転の回数を切替条件とする回転方向切替処理が実行される場合について説明する。
【0058】
図5は、洗濯運転の回数を切替条件とする回転方向切替処理を示すフローチャートである。
【0059】
ドラム式洗濯機1が設置されて最初に電力が供給されると、制御部101により、回転方向切替処理が開始される。なお、制御部101は、洗濯運転の回数、即ち運転回数をカウントするカウンタを有する。
【0060】
図5を参照して、制御部101は、洗濯運転の終了を監視する(S101)。そして、洗濯運転が終了すると(S101:YES)、制御部101は、運転回数をインクリメントし(S102)、運転回数が基準回数に到達したか否かを判定する(S103)。運転回数が基準回数に到達していなければ(S103:NO)、制御部101は、S101の処理に戻り、洗濯運転の終了の監視を継続する。
【0061】
運転回数が基準回数に到達すると(S103:YES)、制御部101は、現在設定されている脱水工程でのドラム25の回転方向を判定する(S104)。そして、ドラム25の回転方向が右方向に設定されていれば(S104:右方向)、回転方向を左方向に設定し(S105)、ドラム25の回転方向が左方向に設定されていれば(S104:左方向)、回転方向を右方向に設定する(S106)。これにより、次回からの脱水工程でのドラム25の回転方向が、それまで脱水工程での回転方向と反対の方向となるように切り替えられる。
【0062】
その後、制御部101は、運転回数をリセットし(S107)、S101の処理に戻って洗濯運転の終了の監視を継続する。
【0063】
なお、設定された回転方向と運転回数は、記憶部102のEEPROMに記憶され、停電などによりドラム式洗濯機1への電極供給が一時的に停止されても保持される。また、基準回数は、少なくともサスペンション21,22の劣化具合が、交換が必要となる劣化基準を超えてしまわない運転回数であれば、適宜の回数に決定できる。サスペンション21,22の交換作業が必要となるまでの回転方向の切替回数は、1回以上となり、基準回数が多くなれば少なくなり、基準回数が少なくなれば多くなる。
【0064】
図6は、脱水工程での制御部101による制御処理を示すフローチャートである。
【0065】
図6を参照し、脱水工程が開始されると、まず、制御部101は、設定されているドラム25の回転方向を確認する(S201)。
【0066】
回転方向が右方向に設定されている場合(S201:右方向)、制御部101は、駆動モータ30を正回転させ、ドラム25を右方向に回転させる(S202)。これにより、ドラム25が所定の脱水回転数で右方向に回転する。一方、回転方向が左方向に設定されている場合(S201:左方向)、制御部101は、駆動モータ30を逆回転させ、ドラム25を左方向に回転させる(S203)。これにより、ドラム25が所定の脱水回転数で左方向に回転する。なお、右方向がドラム25の正回転の方向となり、左方向がドラム25の逆回転の方向となる。
【0067】
その後、制御部101は、脱水工程の開始から所定の脱水時間が経過すると(S204:YES)、駆動モータ30を停止させて、ドラム25を停止させる(S205)。これにより、脱水工程が終了する。
【0068】
次に、サスペンション21,22の劣化具合を切替条件とする回転方向切替処理が実行される場合について説明する。
【0069】
図7は、サスペンション21,22の劣化具合を切替条件とする回転方向切替処理を示すフローチャートである。
【0070】
図7を参照して、制御部101は、洗濯運転の終了を監視する(S301)。そして、洗濯運転が終了すると(S301:YES)、制御部101は、運転回数をインクリメントし(S302)、運転回数が所定の診断回数に到達したか否かを判定する(S303)。
【0071】
運転回数が診断回数に到達すると(S303:YES)、制御部101は、以下のS304~S307の処理により、サスペンション21,22の劣化具合を診断する。まず、制御部101は、駆動モータ30を動作させて、ドラム25を現在設定されている回転方向に診断用の脱水回転数で回転させる(S304)。そして、ドラム25の回転中に、制御部101は、加速度センサ60により加速度、ここでは動加速度を検出する(S305)。加速度の検出が終了すると、ドラム25が停止する。
【0072】
次に、制御部101は、検出した加速度に基づいてサスペンション21,22の劣化具合を判定する(S306)。
【0073】
ドラム25が高速回転する場合、ドラム25内が空のときにも、洗濯物がある場合ほどではないが、外槽20が振動する。このときの外槽20の振動は、サスペンション21,22の劣化が進むほど大きくなる。また、外槽20は、ドラム25の回転軸の軸方向と垂直な方向である左右方向および上下方向に振動しやすい。
【0074】
外槽20の振動が大きくなれば、加速度センサ60により検出される加速度が大きくなる。よって、制御部101は、たとえば、左右方向に対応するX軸方向の加速度および上下方向に対応するY軸方向の加速度のうちの何れかが、それぞれに決められた閾値を超える場合に、サスペンション21,22の劣化具合が所定基準を超えたと判定する。本実施の形態では、加速度の閾値、即ち劣化具合の基準は、複数用意され、サスペンション21,22の劣化が進んでドラム25の回転方向が切り替えられる度に大きな値に変更される。加速度の閾値、即ち劣化具合の基準が多いほど、回転方向の切替回数が多くなる。
【0075】
なお、X軸方向の加速度およびY軸方向の加速度の何れもが閾値を超える場合、あるいは、X軸方向とY軸方向の加速度の合成値が閾値を超える場合、あるいは3軸方向全ての加速度の合成値が閾値を超える場合に、サスペンション21,22の劣化具合が所定基準を超えたと判定されてもよい。
【0076】
制御部101は、サスペンション21,22の劣化具合が所定基準を超えていないと判定した場合(S307:NO)、運転回数をリセットし(S308)、S301に戻って洗濯運転の終了の監視を継続する。
【0077】
一方、制御部101は、サスペンション21,22の劣化具合が所定基準を超えていると判定した場合(S307:YES)、サスペンション21,22の劣化状況の情報を、これら情報を報知するために出力する(S309)。出力された情報は、表示部13で表示されるとともに、通信部110から管理者の端末装置に向けて送信される。劣化状況の情報は、たとえば、エラーコードとされ得る。この場合、劣化の進行度合いに応じて異なるエラーコードが用意される。たとえば、交換を推奨する程度であれば「E01」、交換が必要な程度であれば「E02」、交換が至急必要な程度であれば「E03」というようなエラーコードとなる。劣化状況の情報は、劣化の進行度合いに応じて異なるエラーメッセージとされてもよい。
【0078】
次に、制御部101は、今後の洗濯運転が可能か否かを判定する(S310)。先のS307で用いられた所定基準が最終的なものでなければ、未だ洗濯運転が可能である。よって、この場合、制御部101は、洗濯運転が可能と判定し(S310:YES)、ドラム25の回転方向が右方向に設定されていれば(S311:右方向)、回転方向を左方向に設定し(S312)、ドラム25の回転方向が左方向に設定されていれば(S311:左方向)、回転方向を右方向に設定する(S313)。その後、制御部101は、運転回数をリセットし(S314)、S301の処理に戻って洗濯運転の終了の監視を継続する。
【0079】
一方、先のS308で用いられた所定基準が最終的なものであり、この基準を超えた場合には、至急交換が必要な程度までサスペンション21,22が劣化しているため、もはや洗濯運転はできない。よって、この場合、制御部101は、S310で洗濯運転が不可能と判定し(S310:NO)、ドラム25の回転方向を切り替えることなく、回転方向切替処理を終了させる。このときは、S309において、制御部101からサスペンション21,22の至急の交換を要求する劣化状況の情報、たとえば、「E03」のエラーコードが出力されることになる。
【0080】
なお、加速度の閾値、即ち劣化具合の基準が最優的な値1つのみとされてもよく、この場合、ドラム25の回転方向の切替は1回のみとなる。また、劣化状況の報知も、1つのエラーコードやエラーメッセージのみとなる。
【0081】
サスペンション21,22の劣化具合を切替条件とした回転方向切替処理が実行される場合も、脱水工程では、制御部101により、図6の制御処理が実行される。
【0082】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、所定の切替条件が満たされたことに基づいて、脱水工程でのドラム25の回転方向が、それまでの脱水工程での回転方向と反対となるように切り替えられるので、左右両側のサスペンション21,22が寿命を迎えるようなタイミングで、サスペンション21,22の交換作業を行うことが可能となる。これにより、サスペンション21,22の交換作業が必要となるまでの期間を長くすることが可能となる。また、サスペンション21,22の交換作業が必要となるまでに行える洗濯運転の回数を多くすることが可能となる。
【0083】
また、洗濯運転の回数が切替条件とされた場合は、サスペンション21,22の劣化具合を判定するためにドラム25を回転させて外槽20の振動を検出するような制御処理が行われないので、ドラム25の回転方向を切り替えるための制御処理が単純になり、容易となる。
【0084】
一方で、サスペンション21,22の劣化具合が切替条件とされた場合は、実際のサスペンション21,22の劣化の進行に合わせて、無駄なくドラム25の回転方向の切替を行うことができる。
【0085】
さらに、ドラム25の回転方向が切り替えられる際に、サスペンション21,22の劣化状況に係る情報が報知されるので、ユーザや管理者は、サスペンション21,22の劣化状況を把握できる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0087】
たとえば、上記実施の形態では、外槽20の左右それぞれが、前後に配置された2本の第1サスペンション21と、これら第1サスペンション21の間に配置された1本の第2サスペンション22とで支持された。しかしながら、サスペンションの配置構成は、上記のものに限定されない。たとえば、外槽20の左右において、互いに近接配置された第1サスペンション21と第2サスペンション22からなるユニットが、前後に設けられるような構成が採られてもよい。また、第2サスペンション22が設けられず、4本の第1サスペンション21のみにより外槽20が支持される構成が採られてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、ドラム25の回転方向を切り替えるための切替条件として、洗濯運転の回数が用いられた。しかしながら、切替条件として、脱水工程の回数が用いられてもよい。この場合、図5と同様の回転方向切替処理が実行され、脱水工程の回数が所定回数に到達したことに基づいて、ドラム25の回転方向が切り替えられる。ただし、S101では脱水工程の終了が監視され、S102では脱水工程の回数がインクリメントされ、S103では、脱水工程の回数が所定回数と比較される。さらには、サスペンション21,22の劣化の進行に合わせてドラム25の回転方向を切り替えるための他の切替条件が用いられた回転方向切替処理が実行されてもよい。
【0089】
さらに、上記実施の形態では、図7のサスペンション21,22の劣化具合を切替条件とする回転方向切替処理において、洗濯運転の回数が所定の診断回数に到達したときに、S304~S307のサスペンション21,22の劣化具合を診断する処理に移行した。しかしながら、運転回数が診断回数に到達したことに替えて、または、これに加えて、ユーザによる所定の操作が行われたときに、S304~S307の診断処理に移行するようにしてもよい。
【0090】
さらに、図7の回転方向切替処理のS309において、制御部101から劣化状況でなく交換推奨時期の情報が出力されてもよい。この場合、ドラム式洗濯機1が未使用の状態から使用されてサスペンション21,22の交換が必要となるまでの間、加速度センサ60で検出された加速度データが、横軸を洗濯運転のサイクルとしてグラフ化され、そのグラフデータが記憶部102に記憶される。そして、制御部101は、劣化具合が所定基準を超えたとき、即ち加速度センサ60で検出された加速度が閾値を超えたとき、そのときの加速度からグラフデータの近似式を用いて残りの洗濯運転のサイクルを推測し、交換時期を推測する。そして、制御部101からは、たとえば、交換推奨時期に応じたコードが表示される。たとえば、交換推奨時期が現在から1年以内であれば「A01」、現在から1ヶ月位以内であれば「A02」、現在であれば「A03」というようなコードとなる。なお、制御部101は、S309において、劣化状況と交換推奨時期の双方の情報を出力してもよい。さらに、出力された劣化状況や交換推奨時期の情報が表示部13に表示され、管理者の端末装置に送信されないような構成が採られてもよいし、それら情報が表示部13に表示されず、管理者の端末装置に送信されるような構成が採られてもよい。さらに、劣化状況および交換推奨時期以外の情報、たとえば、単にドラム25の回転方向が切り替えられたことを示す情報が制御部101から出力されてもよい。
【0091】
さらに、上記実施の形態では、外槽20の振動の大きさが、加速度センサ60により検出されたが、振動が検出可能な他のセンサにより検出されてよい。
【0092】
さらに、上記実施の形態では、ドラム式洗濯機1は、ドラム25が水平軸周りに回転するような構成とされた。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム25が水平方向に対して傾斜した回転軸周りに回転するような構成とされても良い。
【0093】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、コインランドリ等に設置される大型のドラム式洗濯機であった。しかしながら、本発明は、洗濯容量が比較的小さい家庭用のドラム式洗濯機に適用することもできる。さらには、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0094】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 筐体
20 外槽
21 第1サスペンション(サスペンション)
22 第2サスペンション(サスペンション)
25 ドラム
60 加速度センサ(振動検出部)
101 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7