(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】照明用光源、照明器具、携帯用照明器具、照明システム、照明環境適応方法及び照明方法
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240226BHJP
F21L 4/00 20060101ALI20240226BHJP
F21L 4/02 20060101ALI20240226BHJP
F21V 9/30 20180101ALI20240226BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240226BHJP
H05B 45/20 20200101ALI20240226BHJP
H05B 47/115 20200101ALI20240226BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20240226BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240226BHJP
F21Y 113/10 20160101ALN20240226BHJP
【FI】
F21S2/00 311
F21L4/00 510
F21L4/00 600
F21L4/02
F21V9/30
F21V23/00 115
F21V23/00 140
H05B45/20
H05B47/115
H01L33/00 L
F21Y115:10
F21Y113:10
(21)【出願番号】P 2020055075
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山江 和幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 英樹
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-047465(JP,A)
【文献】特開2013-219026(JP,A)
【文献】特開2008-181874(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21L 4/00
F21L 4/02
F21V 9/30
F21V 23/00
H05B 45/20
H05B 47/115
H01L 33/00
F21Y 115/10
F21Y 113/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色覚少数派用の照明光を照射する照明用光源であって、
青色光を発する青色発光部と、
赤色光を発する赤色発光部とを備え、
前記青色光と前記赤色光とを含む前記色覚少数派用の照明光のスペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、前記波長帯域内における最大値が、485nm以下、又は、585nm以上の範囲にあ
り、
前記赤色光のピーク強度は、前記青色光のピーク強度の4倍以上である
照明用光源。
【請求項2】
前記青色発光部は、前記青色光を発する青色LED(Light Emitting Diode)素子であり、
前記赤色発光部は、前記赤色光を発する赤色LED素子である
請求項1に記載の照明用光源。
【請求項3】
前記青色発光部は、前記青色光を発する青色LED素子であり、
前記赤色発光部は、前記青色光によって励起されて前記赤色光を発する赤色蛍光体である
請求項1に記載の照明用光源。
【請求項4】
前記照明用光源は、前記色覚少数派用の照明光と、色覚多数派用の照明光とを切り替えて照射可能であり、
前記色覚少数派用の照明光は、前記色覚多数派用の照明光より、前記赤色光及び前記青色光を多く含む
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明用光源。
【請求項5】
請求項4に記載の照明用光源と、
前記照明用光源の発光を制御する制御回路と、
人を検出する検出部とを備え、
前記制御回路は、
前記検出部によって検出された人が前記色覚少数派である場合に、前記照明用光源に前記色覚少数派用の照明光を照射させ、
前記検出部によって検出された人が前記色覚多数派である場合に、前記照明用光源に前記色覚多数派用の照明光を照射させる
照明器具。
【請求項6】
前記制御回路は、前記検出部によって複数の人が検出された場合に、(i)前記複数の人の少なくとも一人が前記色覚少数派であるとき、前記照明用光源に前記色覚少数派用の照明光を照射させ、(ii)前記複数の人の全員が前記色覚多数派であるとき、前記照明用光源に前記色覚多数派用の照明光を照射させる
請求項5に記載の照明器具。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明用光源を備える携帯用照明器具。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明用光源と、
前記照明光を色覚多数派用の照明光に変換する波長変換フィルタとを備える
照明システム。
【請求項9】
前記波長変換フィルタを備えるメガネを備える
請求項8に記載の照明システム。
【請求項10】
前記波長変換フィルタは、1種類以上の色素材料を含み、
前記波長変換フィルタの透過率は、前記波長帯域内における最大値が、535nm±50nmの範囲にある
請求項8又は9に記載の照明システム。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明用光源によって、色覚少数派用の照明光が照射された空間内において、前記照明光を色覚多数派用の照明光に変換するステップを含む
照明環境適応方法。
【請求項12】
色覚少数派用の照明光を色覚多数派用の照明光に変換する波長変換フィルタを備える光学部品を目に使用したユーザに対して、
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明用光源が、前記色覚少数派用の照明光を照射するステップを含む
照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用光源、照明器具、携帯用照明器具、照明システム、照明環境適応方法及び照明方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色覚異常を矯正するために、選択的に狭帯域の光を吸収するフィルタが知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のフィルタを色覚少数派のユーザが利用した場合、フィルタが光を吸収するので、目に到達する光の光量が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、光量の低下が抑制された色覚少数派用の照明光を照射することができる照明用光源、照明器具、携帯用照明器具、照明システム、照明環境適応方法及び照明方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る照明用光源は、色覚少数派用の照明光を照射する照明用光源であって、青色光を発する青色発光部と、赤色光を発する赤色発光部とを備え、前記青色光と前記赤色光とを含む前記色覚少数派用の照明光のスペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、前記波長帯域内における最大値が、485nm以下、又は、585nm以上の範囲にある。
【0007】
本発明の一態様に係る照明器具は、前記照明用光源と、前記照明用光源の発光を制御する制御回路と、人を検出する検出部を備え、前記制御回路は、前記検出部によって検出された人が前記色覚少数派である場合に、前記照明用光源に前記色覚少数派用の照明光を照射させ、前記検出部によって検出された人が前記色覚多数派である場合に、前記照明用光源に前記色覚多数派用の照明光を照射させる。
【0008】
本発明の一態様に係る携帯用照明器具は、前記照明用光源を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る照明システムは、色覚少数派用の照明光を照射する照明用光源と、前記照明光を色覚多数派用の照明光に変換する波長変換フィルタとを備える。
【0010】
本発明の一態様に係る照明環境適応方法は、色覚少数派用の照明光が照射された空間内において、前記照明光を色覚多数派用の照明光に変換するステップを含む。
【0011】
本発明の一態様に係る照明方法は、色覚少数派用の照明光を色覚多数派用の照明光に変換する波長変換フィルタを備える光学部品を目に使用したユーザに対して、前記色覚少数派用の照明光を照射するステップを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る照明用光源などによれば、光量の低下が抑制された色覚少数派用の照明光を照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る照明システムの概要を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る照明用光源及び照明器具の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、色覚少数派用の照明光を照射するときの照明用光源の各LED素子の発光スペクトルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、色覚多数派用の照明光の発光スペクトルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る波長変換フィルタの透過スペクトルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る波長変換フィルタを備えるメガネの外観図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る照明システムの動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る照明システムの具体的な動作例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る照明システムの具体的な動作例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る照明システムの具体的な動作例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る照明システムの具体的な動作例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る照明システムが形成する照明環境に適応する方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施の形態の変形例1に係る照明用光源及び照明器具の構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、実施の形態の変形例2に係る照明システムの概要を説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、実施の形態の変形例2に係る携帯用照明器具の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態に係る照明用光源、照明器具、携帯用照明器具、照明システム、照明環境適応方法及び照明方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0016】
(実施の形態)
[照明システム]
まず、本実施の形態に係る照明システムの概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る照明システム1の概要を説明するための模式図である。
【0017】
本実施の形態に係る照明システム1は、色覚少数派にとって色識別が行いやすい照明環境を形成するシステムである。一般的に人は、色覚多数派と色覚少数派とに分けることができる。
【0018】
色覚多数派は、C型(Common:一般型)の色覚を有するグループであり、S錐体、M錐体、L錐体のいずれも有する。
【0019】
色覚少数派は、色覚多数派とは異なる色覚を有するグループである。つまり、色覚少数派は、C型以外の色覚を持つグループである。例えば、色覚少数派は、主にP型(Protanope:1型)又はD型(Deuteranope:2型)の色覚を持つグループである。P型色覚には、L錐体を持たない(P型強度)場合、及び、L錐体の分光感度がずれてM錐体に似通っている(P型弱度)場合が含まれる。D型色覚には、M錐体を持たない(D型強度)場合、及び、M錐体の分光感度がずれてL錐体に似通っている(D型弱度)場合が含まれる。P型又はD型の色覚少数派は、赤から緑の範囲の識別がつきにくい特性を有する。
【0020】
図1に示されるように、照明システム1は、照明器具10と、波長変換フィルタ20とを備える。照明器具10は、色覚少数派用の照明光L1を照射する。照明光L1は、対象物2で反射され、反射された照明光L1は、色覚少数派のユーザU1の目に入る。照明光L1は、色覚少数派が色識別をできるようにスペクトルが調整された光であるので、ユーザU1は、対象物2の色識別を容易に行うことができる。
【0021】
なお、対象物2は、照明器具10が照射する照明光L1が照射される物体であり、例えば、室内に配置された家具若しくは家電、又は、床、壁、柱若しくは天井などである。対象物2は、料理又はジュースなどであってもよく、ペットなどであってもよい。対象物2は、照明光L1を反射する物体であれば、固体又は液体でもよく、静止物体又は動物であってもよい。
【0022】
照明光L1は、色覚少数派による色識別が行いやすいように調整された光であるので、色覚多数派にとっては、違和感を与える光である。そこで、照明システム1では、
図1に示されるように、色覚多数派のユーザU2は、波長変換フィルタ20を介して照明光L1を見る。波長変換フィルタ20は、色覚少数派用の照明光L1を色覚多数派用の照明光L2に変換するフィルタである。このため、色覚多数派のユーザU2にとっても、違和感少なく対象物2を見ることができる。
【0023】
[照明器具]
次に、照明器具10の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る照明器具10の構成を示すブロック図である。
【0024】
照明器具10は、所定の設置場所に設置される照明器具である。例えば、照明器具10は、天井面に設置されるシーリングライト、又は、天井に埋込配設されるダウンライトである。あるいは、照明器具10は、フロアライト、ウォールライト又はスポットライトなどであってもよい。
図2に示されるように、照明器具10は、照明用光源11と、制御回路12と、検出部13とを備える。
【0025】
照明用光源11は、色覚少数派用の照明光L1を照射する光源である。本実施の形態では、照明用光源11は、色覚多数派用の照明光L3(
図9及び
図11を参照)も照射可能である。つまり、照明用光源11は、色覚少数派用の照明光L1と、色覚多数派用の照明光L3とを切り替えて照射可能である。色覚多数派用の照明光L3は、例えば一般的な白色光である。
【0026】
図2に示されるように、照明用光源11は、いわゆるRGB光源であり、青色LED(Light Emitting Diode)素子11Bと、赤色LED素子11Rと、緑色LED素子11Gとを備える。青色LED素子11Bは、青色光L1bを発する青色発光部の一例である。赤色LED素子11Rは、赤色光L1rを発する赤色発光部の一例である。緑色LED素子11Gは、緑色光L1gを発する緑色発光部の一例である。
【0027】
なお、照明用光源11は、青色LED素子11B、赤色LED素子11R及び緑色LED素子11Gの各々を複数個備えていてもよい。各LED素子の個数比は、B:G:R=1:1:1であってもよく、1:2:1であってもよい。また、照明用光源11は、白色LED素子を備えてもよい。
【0028】
照明用光源11は、青色光L1b、赤色光L1r及び緑色光L1gの混合光として、色覚少数派用の照明光L1及び色覚多数派用の照明光L3のいずれか一方を照射する。色覚少数派用の照明光L1と色覚多数派用の照明光L3とでは、それぞれに含まれる青色光L1b、赤色光L1r及び緑色光L1gの光量比(混合比)が異なる。青色光L1b、赤色光L1r及び緑色光L1gの各々の発光量は、制御回路12によって制御される。
【0029】
色覚少数派用の照明光L1のスペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域における最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、かつ、440nm以上600nm以下の波長帯域における最大値が、485nm以下、又は、585nm以上の範囲にある。つまり、照明光L1は、緑色光L1gの発光量が少ない代わりに、赤色光L1r及び青色光L1bの発光量が多い光である。照明光L1は、例えば、照明光L3よりも緑色光L1gの光量が少なく、赤色光L1r及び青色光L1bの光量が多い光である。照明光L1の全光量(全光束)は、照明光L3の全光量(全光束)と同じであってもよい。
【0030】
図3は、色覚少数派用の照明光L1を照射するときの照明用光源11の各LED素子の発光スペクトルの一例を示す図である。
図3において横軸は波長を表し、縦軸は発光強度を表している。色覚少数派用の照明光L1は、
図3に示される青色光、赤色光及び緑色光の合成光(混合光)である。
図3に示されるように、各色の光のピーク強度は、赤色光、青色光、緑色光の順に小さくなる。赤色光のピーク強度は、青色光のピーク強度の4倍以上である。緑色光のピーク強度は、青色光のピーク強度の1/5以下である。
【0031】
照明光L1に含まれる緑色光L1gの光量が少なくなることにより、色覚少数派にとっては、緑色と赤色との識別が行いやすくなる。このため、色覚少数派のユーザU1は、照明光L1によって照明された対象物2の色の識別を行うことができる。
【0032】
図4は、色覚多数派用の照明光L3の発光スペクトルの一例を示す図である。
図4において横軸は波長を表し、縦軸は発光強度を表している。色覚多数派用の照明光L3は、
図4に示されるように、約460nmにピークを有する青色光、約520nmにピークを有する緑色光、及び、約630nmにピークを有する赤色光を含んでいる。照明光L3は、照明光L1と比較して、約520nmにピークを有する点が相違する。つまり、照明光L3は、照明光L1よりも、緑色光L1gの光量が多くなっている。
【0033】
制御回路12は、照明用光源11の発光を制御する。制御回路12は、青色LED素子11B、赤色LED素子11R及び緑色LED素子11Gの各々の点灯を制御するLED点灯回路である。制御回路12は、1つ又は複数の回路素子(回路部品)から構成される。例えば、制御回路12は、整流回路、検知抵抗、ヒューズ素子、抵抗、コンデンサ、コイル、ダイオード又はトランジスタなどを回路素子として含んでいる。
【0034】
本実施の形態では、制御回路12は、青色LED素子11B、赤色LED素子11R及び緑色LED素子11Gの各々の発光量を制御する。例えば、制御回路12は、照明用光源11に色覚少数派用の照明光L1を照射させる場合、青色LED素子11Bと赤色LED素子11Rとの各々の発光量を、照明用光源11に色覚多数派用の照明光L3を照射させる場合よりも多くする。これにより、色覚少数派用の照明光L1は、色覚多数派用の照明光L3より、赤色光L1r及び青色光L1bを多く含む光になる。
【0035】
また、制御回路12は、検出部13による検出結果に基づいて照明用光源11を制御する。具体的には、制御回路12は、検出部13によって検出された人が色覚少数派であるか色覚多数派であるかに応じて、照明用光源11が照射する照明光を、色覚少数派用の照明光L1と色覚多数派用の照明光L3とで切り替える。より具体的には、制御回路12は、検出部13によって検出された人の中に色覚少数派が含まれる場合、照明用光源11に色覚少数派用の照明光L1を照射させ、検出部13によって検出された人の中に色覚少数派が含まれない場合、照明用光源11に色覚多数派用の照明光L3を照射させる。
【0036】
検出部13によって検出された人が色覚少数派であるか色覚多数派であるかは、例えば、顔認証結果と、予め登録された個人毎の色覚情報とによって判別することができる。具体的には、制御回路12は、人の顔の特徴と、当該人が色覚少数派であるか色覚多数派であるかを示す色覚情報とを対応付けた対応情報を予め記憶部(図示せず)に記憶しておく。記憶部は、例えば制御回路12に備えられている。制御回路12は、検出部13によって検出された人の顔を画像処理により解析することで、顔の特徴を抽出する。制御回路12は、抽出した特徴に対応付けられた色覚情報を参照することで、検出部13によって検出された人が色覚少数派であるか色覚多数派であるかを判別することができる。
【0037】
なお、対応情報に含まれない人が検出された場合には、制御回路12は、当該人を色覚少数派とみなす。あるいは、対応情報に含まれない人が検出された場合には、制御回路12は、当該人を色覚多数派とみなしてもよい。
【0038】
あるいは、制御回路12は、検出された人が波長変換フィルタ20を所持しているか否かによって、色覚少数派であるか色覚多数派であるかを判定してもよい。具体的には、制御回路12は、検出された人が波長変換フィルタ20を所持している場合に、当該人が色覚多数派であると判定する。制御回路12は、検出された人が波長変換フィルタ20を所持していない場合に、当該人が色覚少数派であると判定する。波長変換フィルタ20を所持しているか否かは、画像処理によって判別可能である。あるいは、波長変換フィルタ20には、RFID(Radio Frequency IDentifier)が記憶されたタグが取り付けられていてもよい。例えば、波長変換フィルタ20を備えるメガネのフレームにタグが取り付けられていてもよい。制御回路12は、タグが発する電波を受信することにより、波長変換フィルタ20の有無を検出することができる。
【0039】
検出部13は、人を検出する。具体的には、検出部13は、照明器具10による照明空間に居る人を検出する。検出部13は、例えば、人感センサ、赤外線センサ、熱画像センサ又は可視光カメラなどである。
【0040】
なお、照明用光源11は、青色LED素子11B、赤色LED素子11R及び緑色LED素子11Gの代わりに、各色の光を出射する有機EL(Electroluminescence)素子、又は、半導体レーザ素子を備えてもよい。
【0041】
照明用光源11及び照明器具10はいずれも、緑色成分の透過を抑制するフィルタを備えない。具体的には、照明用光源11及び照明器具10は、通過する照明光の発光スペクトルを変換することで、440nm以上600nm以下の波長帯域内において535nm±50nmの範囲内に最小値を形成するためのフィルタを備えない。
【0042】
つまり、本実施の形態に係る照明用光源11及び照明器具10は、一部の光の透過を抑制するフィルタを備えるのではなく、光源の発光量を調整することにより、色覚少数派用の照明光L1を照射する。このため、フィルタを用いる場合に比べて、光量の多い照明光L1を照射することができる。
【0043】
[波長変換フィルタ]
次に、波長変換フィルタ20について説明する。
【0044】
波長変換フィルタ20は、色覚少数派用の照明光L1を色覚多数派用の照明光L2に変換する。波長変換フィルタ20は、1種類以上の色素材料を含んでいる。例えば、色素材料は、メロシアニン系、又は、フタロシアニン系の色素材料である。具体的には、波長変換フィルタ20は、板状の透明基材と、当該透明基材の内部に分散された複数の色素材料とを有する。透明基材は、アクリル(PMMA)又はポリカーボネート系の樹脂基材である。色素材料を混合した樹脂を所定形状に成形し、硬化させることで、波長変換フィルタ20は形成される。色素材料は、透明基材の全体に分散されている。
【0045】
波長変換フィルタ20の透過率は、440nm以上600nm以下の波長帯域内における最大値が、535nm±50nmの範囲にある。つまり、波長変換フィルタ20は、440nm以上600nm以下の波長帯域内において、色覚少数派用の照明光L1に含まれる光量が少ない緑色光を十分に透過させ、他の成分の透過を抑制する。
【0046】
図5は、本実施の形態に係る波長変換フィルタ20の透過スペクトルの一例を示す図である。
図5において、横軸は波長を表し、縦軸は透過率を表している。
図5に示される例では、透過率の最大値になる波長(ピーク波長)は、約520nmであり、535nm±50nmの範囲に含まれている。また、440nm以上485nm未満の範囲において実質的に透過率が0である。また、600nm以上680nm未満の範囲において透過率が約10%以下である。このように、波長変換フィルタ20は、緑色光を透過させ、青色光及び赤色光の透過を抑制する。これにより、照明光L1に含まれる緑色光の光量に合わせて赤色光及び青色光の光量を減らすことができ、色覚多数派のユーザU2は、違和感なく対象物2を見ることができる。
【0047】
波長変換フィルタ20は、例えば、
図6に示されるように、メガネ30などの光学部品に使用される。
図6は、本実施の形態に係る波長変換フィルタ20を備えるメガネ30の外観図である。具体的には、波長変換フィルタ20は、メガネレンズに適した形状に成形され、メガネ30のフレーム31に嵌め入れられている。色覚多数派のユーザU2は、波長変換フィルタ20を備えるメガネ30を着用することにより、色覚少数派用の照明光L1が照射された空間内においても、色覚多数派用の照明光L2を目に入射させることができる。
【0048】
なお、波長変換フィルタ20を備える光学部品は、メガネ30に限らず、コンタクトレンズ又はゴーグルであってもよい。あるいは、波長変換フィルタ20を備える光学部品は、ユーザU2の顔に着用するものでなくてもよく、例えば、ルーペなどのユーザU2の目の前で使用される物品であってもよい。
【0049】
[照明システムの動作(照明方法)]
次に、本実施の形態に係る照明システム1の動作について、
図7~
図11を用いて説明する。
図7は、本実施の形態に係る照明システム1の動作を示すフローチャートである。
図8~
図11はそれぞれ、本実施の形態に係る照明システム1の具体的な動作例を示す模式図である。
【0050】
図7に示されるように、照明システム1では、まず検出部13によって人が検出されるまで待機する(S10でNo)。待機中には、照明器具10は消灯している。
【0051】
検出部13によって人が検出され、かつ、検出された人が1人のみの場合(S10でYes、S11でNo)、制御回路12は、検出された人が色覚少数派であるか否かを判定する(S12)。検出された人が色覚少数派である場合(S12でYes)、照明器具10は、色覚少数派用の照明光L1を照射する(S14)。例えば、
図8に示されるように、照明器具10による照明空間3内に、色覚少数派のユーザU1のみが検出された場合、照明器具10は、色覚少数派用の照明光L1を照射する。これにより、ユーザU1は、色覚補正用のメガネなどを着用しなくても、色識別を行うことができる。
【0052】
図7に戻り、検出された人が色覚多数派である場合(S12でNo)、照明器具10は、色覚多数派用の照明光L3を照射する(S15)。例えば、
図9に示されるように、照明器具10による照明空間3内に、色覚多数派のユーザU2のみが検出された場合、照明器具10は、色覚多数派用の照明光L3を照射する。これにより、ユーザU2は、波長変換フィルタ20を使用しなくても、色識別を行うことができる。
【0053】
図7に戻り、検出部13によって人が検出され、かつ、検出された人が複数である場合(S10でYes、S11でYes)、制御回路12は、検出された人の全員が色覚多数派であるか否かを判定する(S13)。言い変えると、制御回路12は、検出された複数の人の中に色覚少数派が含まれるか否かを判定する。
【0054】
検出された複数の人の中に色覚少数派が含まれる場合(S13でNo)、照明器具10は、色覚少数派用の照明光L1を照射する(S14)。例えば、
図10に示される例では、照明空間3内に検出された3人には、1人の色覚少数派用のユーザU1と、2人の色覚多数派用のユーザU2とが含まれている。この場合、照明器具10は、色覚少数派用の照明光L1を照射する。つまり、照明システム1では、色覚少数派のユーザU1を優先して色覚少数派用の照明光L1を照射する。このとき、照明空間3では、色覚多数派のユーザU2にとっては違和感のある照明環境が形成されている。このため、
図10に示されるように、色覚多数派のユーザU2は、波長変換フィルタ20を備えるメガネ30を着用することで、違和感を軽減することができる。
【0055】
図7に戻り、検出された人の全員が色覚多数派である場合(S13でYes)、照明器具10は、色覚多数派用の照明光L3を照射する(S15)。例えば、
図11に示される例では、照明空間3内に検出された3人は、いずれも色覚多数派用の照明光L3を照射する。これにより、色覚多数派のユーザU2は全員、波長変換フィルタ20を使用しなくても、色識別を行うことができる。
【0056】
以上のように、照明空間3内に色覚少数派のユーザU1が存在する場合には、色覚少数派用の照明光L1が照射される。これにより、色覚少数派のユーザU1は、色覚補正用のメガネなどを着用しなくても、色識別を行うことができる。色覚多数派のユーザU2は、照明光L1を色覚多数派用の照明光L3に変換する波長変換フィルタ20を使用することにより、照明光L1が照射された照明空間3内においても違和感少なく色識別を行うことができる。
【0057】
なお、制御回路12は、色覚少数派と色覚多数派との人数に応じて、照明用光源11が照射する照明光を切り替えてもよい。例えば、制御回路12は、色覚少数派の人数が色覚多数派の人数以上である場合に、色覚少数派用の照明光L1を照射してもよい。制御回路12は、色覚多数派の人数が色覚少数派の人数より多い場合には、色覚多数派用の照明光L3を照射してもよい。
【0058】
[照明環境適応方法]
次に、本実施の形態に係る照明システム1における照明環境適応方法について、
図12を用いて説明する。
図12は、本実施の形態に係る照明システム1が形成する照明環境に適応する方法を示すフローチャートである。
図12に示される方法は、色覚多数派のユーザU2によって行われる。
【0059】
図12に示されるように、ユーザU2が照明空間3に入室し(S20)、照明空間3に色覚少数派のユーザU1が存在しない場合(S21でNo)、
図9及び
図11に示されるように、照明空間3には色覚多数派用の照明光L3が照射されているので、ユーザU2は何もしなくてもよい。照明空間3に色覚少数派のユーザU1が存在する場合(S21でYes)、
図8及び
図10に示されるように、照明空間3には色覚少数派用の照明光L1が照射されているので、ユーザU2は、波長変換フィルタ20を備えるメガネ30を着用する(S22)。これにより、ユーザU2は、照明光L1が照射された照明空間3内においても違和感少なく色識別を行うことができる。
【0060】
なお、ユーザU2が入室する場合を例に説明したが、ユーザU2が存在する照明空間3に色覚少数派のユーザU1が入室する場合も同様である。ユーザU1が入室することで、照明空間3には色覚少数派のユーザU1が存在することになる(S21でYes)。したがって、照明器具10は、色覚多数派用の照明光L3から色覚少数派用の照明光L1に切り替えて照射する。このため、色覚多数派のユーザU2は、波長変換フィルタ20を備えるメガネ30を着用する(S22)。つまり、新たに入室したユーザU1ではなく、元々在室していたユーザU2がメガネ30を着用する。
【0061】
このように、本実施の形態では、色覚少数派用の照明光L1が照射された照明空間3内において、波長変換フィルタ20によって照明光L1を色覚多数派用の照明光L3に変換する。これにより、色覚少数派のユーザU1及び色覚多数派のユーザU2のいずれも、色識別が行いやすい環境を形成することができる。
【0062】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る照明用光源11は、色覚少数派用の照明光L1を照射する照明用光源である。照明用光源11は、青色光L1bを発する青色発光部と、赤色光L1rを発する赤色発光部とを備える。青色光L1bと赤色光L1rとを含む色覚少数派用の照明光L1のスペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、かつ、最大値が、485nm以下、又は、585nm以上の範囲にある。
【0063】
これにより、照明用光源11は、光の一部の透過を抑制するフィルタを備えないので、色覚少数派のユーザU1の目に届く光の光量の低下を抑制することができる。
【0064】
また、例えば、青色発光部は、青色光L1bを発する青色LED素子11Bである。赤色発光部は、赤色光L1rを発する赤色LED素子11Rである。
【0065】
これにより、青色LED素子11Bと赤色LED素子11Rとの発光量を調整することにより、色覚少数派用の照明光L1を照射することができる。
【0066】
また、例えば、照明用光源11は、色覚少数派用の照明光L1と、色覚多数派用の照明光L3とを切り替えて照射可能である。色覚少数派用の照明光L1は、色覚多数派用の照明光L3より、赤色光L1r及び青色光L1bを多く含む。
【0067】
これにより、例えば、色覚少数派用の照明光L1の全光量を色覚多数派用の照明光L3の全光量と同等にすることができるので、色覚少数派のユーザU1の目に届く光の光量の低下を抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態に係る照明器具10は、照明用光源11と、照明用光源11の発光を制御する制御回路12と、人を検出する検出部13とを備える。制御回路12は、検出部13によって検出された人が色覚少数派である場合に、照明用光源11に色覚少数派用の照明光L1を照射させ、検出部13によって検出された人が色覚多数派である場合に、照明用光源11に色覚多数派用の照明光L3を照射させる。
【0069】
これにより、照明空間3内に居る人に応じて適切な照明光を照射することができるので、ユーザ利便性を高めることができる。
【0070】
また、例えば、制御回路12は、検出部13によって複数の人が検出された場合に、(i)複数の人の少なくとも一人が色覚少数派であるとき、照明用光源11に色覚少数派用の照明光L1を照射させ、(ii)複数の人の全員が色覚多数派であるとき、照明用光源11に色覚多数派用の照明光L3を照射させる。
【0071】
これにより、色覚少数派のユーザU1を優先することができ、色覚少数派のユーザU1にとってより快適な照明環境を実現することができる。
【0072】
また、本実施の形態に係る照明システム1は、色覚少数派用の照明光L1を照射する照明用光源11と、照明光L1を色覚多数派用の照明光L2に変換する波長変換フィルタ20とを備える。
【0073】
これにより、色覚多数派のユーザU2は波長変換フィルタ20を利用することで、色覚少数派用の照明光L1を色覚多数派用の照明光L2に変換することができる。このため、色覚少数派と色覚多数派とが1つの空間内でお互いに色識別が可能な状態で共存することができる。
【0074】
また、例えば、照明システム1は、波長変換フィルタ20を備えるメガネ30を備える。
【0075】
これにより、色覚多数派のユーザU2は、波長変換フィルタ20の着脱を容易に行うことができる。
【0076】
また、例えば、色覚少数派用の照明光L1のスペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における最小値が、535nm±50nmの範囲にあり、かつ、最大値が、485nm以下、又は、585nm以上の範囲にある。波長変換フィルタ20は、1種類以上の色素材料を含む。波長変換フィルタ20の透過率は、440nm以上600nm以下の波長帯域内における最大値が、535nm±50nmの範囲にある。
【0077】
これにより、色素材料の含有量を調整することにより、所望の透過特性を有する波長変換フィルタ20を容易に形成することができる。照明器具10が照射する照明光L1の波長に合わせて適切な透過帯域を有する波長変換フィルタ20を容易に実現することができる。このため、波長変換フィルタ20を利用する色覚多数派のユーザU2が覚える違和感をより軽減することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る照明環境適応方法は、色覚少数派用の照明光L1が照射された空間内において、照明光L1を色覚多数派用の照明光L2に変換するステップを含む。
【0079】
これにより、色覚多数派のユーザU2は、色覚少数派用の照明光L1が照射された照明空間3内においても違和感少なく色識別を行うことができる。
【0080】
また、本実施の形態に係る照明方法は、色覚少数派用の照明光L1を色覚多数派用の照明光L2に変換する波長変換フィルタ20を備える光学部品を目に使用したユーザU2に対して、色覚少数派用の照明光L1を照射するステップを含む。
【0081】
これにより、色覚多数派のユーザU2が波長変換フィルタ20を利用することができるので、色覚少数派のユーザU1に適した照明光L1を照射することで、色覚少数派及び色覚多数派のいずれも、色識別が行いやすい環境を形成することができる。
【0082】
(変形例)
続いて、上記実施の形態の変形例について説明する。
【0083】
[変形例1]
まず、変形例1に係る照明器具について、
図13を用いて説明する。
図13は、本変形例に係る照明用光源11a及び照明器具10aの構成を示すブロック図である。
【0084】
図13に示されるように、照明器具10aは、照明用光源11aと、制御回路12とを備える。照明器具10aは、検出部13を備えない。本変形例では、照明用光源11aは、色覚多数派用の照明光L3を照射せず、色覚少数派用の照明光L1のみを照射する。
【0085】
照明用光源11aは、青色LED素子11Bと、赤色蛍光体11rとを備える。なお、照明用光源11aは、緑色LED素子11G又は白色LED素子を備えてもよい。
【0086】
青色LED素子11Bは、実施の形態と同様に、青色光を発する青色発光部の一例である。赤色蛍光体11rは、赤色光を発する赤色発光部の一例である。具体的には、赤色蛍光体11rは、青色LED素子11Bが発する青色光によって励起されて赤色光を発する。例えば、赤色蛍光体11rは、青色LED素子11Bの光出射側に配置されている。赤色蛍光体11rを通過した青色光と、赤色蛍光体11rが発する赤色光とが混合することにより、色覚少数派用の照明光L1が照射される。なお、照明光L1には、緑色LED素子11Gから発せられる緑色光、又は、白色LED素子から発せられる白色光が含まれていてもよい。
【0087】
以上のように、本変形例に係る照明用光源11aでは、青色発光部は、青色光L1bを発する青色LED素子11Bである。赤色発光部は、青色光L1bによって励起されて赤色光L1rを発する赤色蛍光体11rである。
【0088】
これにより、上記実施の形態に係る照明用光源11と同様に、光の一部の透過を抑制するフィルタを備えないので、色覚少数派のユーザU1の目に届く光の光量の低下を抑制することができる。
【0089】
[変形例2]
次に、変形例2に係る照明器具及び照明システムについて、
図14及び
図15を用いて説明する。
図14は、本変形例に係る照明システム101の概要を説明するための模式図である。
図15は、本変形例に係る携帯用照明器具110の構成を示すブロック図である。
【0090】
図14に示されるように、照明システム101は、実施の形態に係る照明器具10の代わりに、携帯用照明器具110を備える。携帯用照明器具110は、色覚少数派のユーザU1が持ち運び可能な大きさ及び重さの照明器具である。携帯用照明器具110は、例えば、片手で持てる懐中電灯又はペンライトである。あるいは、携帯用照明器具110は、発光部を有するスマートフォンなどの携帯端末であってもよい。
【0091】
図15に示されるように、携帯用照明器具110は、照明用光源11aと、制御回路12と、電池114と、操作スイッチ115とを備える。照明用光源11a及び制御回路12は、変形例1と同じである。なお、携帯用照明器具110は、照明用光源11aの代わりに、照明用光源11を備えてもよい。
【0092】
電池114は、着脱自在で交換可能である。制御回路12は、電池114の電力を変換して照明用光源11aに供給する。
【0093】
操作スイッチ115は、ユーザU1が操作可能であり、照明用光源11aの点灯及び消灯を切り替えるスイッチである。制御回路12は、操作スイッチ115による操作に応じて照明用光源11aの点灯及び消灯を切り替える。
【0094】
なお、携帯用照明器具110が色覚少数派用の照明光L1と色覚多数派用の照明光L3とを切り替えて照射することができる場合、操作スイッチ115は、照明光L1と照明光L3との切り替えの操作を受付可能であってもよい。これにより、携帯用照明器具110は、色覚少数派のユーザU1だけでなく、色覚多数派のユーザU2にも利用可能になる。
【0095】
図14に示されるように、照明システム101では、空間内には色覚多数派用の照明光L3を発する照明器具110aが設置されている。色覚少数派のユーザU1は、必要に応じて携帯用照明器具110を点灯させることにより、色覚少数派用の照明光L1を対象物2に照射することができる。これにより、ユーザU1の目には、対象物2によって反射された照明光L1が届くので、対象物2の色識別を容易に行うことができる。
【0096】
また、色覚多数派のユーザU2は、色覚少数派のユーザU1が携帯用照明器具110を点灯させた場合に、波長変換フィルタ20を使用すればよい。これにより、波長変換フィルタ20によって照明光L1が色覚多数派用の照明光L2に変換されるので、色覚多数派のユーザU2も対象物2の色識別を行うことができる。
【0097】
以上のように、本変形例に係る照明器具は、照明用光源11又は11aを備える携帯用照明器具である。
【0098】
これにより、色覚少数派のユーザU1が携帯用照明器具110を自由に持ち運ぶことができるので、必要なときに照明光L1を照射することができる。
【0099】
(その他)
以上、本発明に係る照明用光源、照明器具、携帯用照明器具、照明システム、照明環境適応方法及び照明方法について、上記の実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0100】
例えば、上記の実施の形態では、色覚少数派にとって色識別が容易になる照明光であれば、色覚少数派用の照明光の発光スペクトルは、440nm以上600nm以下の波長帯域内における最小値が、535nm±50nmの範囲になくてもよく、前記波長帯域内における最大値が、485nm以下の範囲、又は、585nm以上の範囲になくてもよい。例えば、最小値及び最大値のいずれかが上記範囲から外れていてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態で説明した装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間で無線通信が行われる場合、無線通信の方式(通信規格)は、例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は、無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信である。あるいは、無線通信の方式(通信規格)は、インターネットなどの広域通信ネットワークを介した通信でもよい。また、装置間においては、無線通信に代えて、有線通信が行われてもよい。有線通信は、具体的には、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)又は有線LANを用いた通信などである。
【0102】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、照明システム1又は101が備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。
【0103】
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0104】
また、上記実施の形態において、制御部などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD(Hard Disk Drive)又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0105】
また、制御部などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0106】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)などが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGA(Field Programmable Gate Array)も同じ目的で使うことができる。
【0107】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0108】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1、101 照明システム
3 照明空間
10、10a 照明器具
11、11a 照明用光源
11B 青色LED素子
11R 赤色LED素子
11r 赤色蛍光体
12 制御回路
13 検出部
20 波長変換フィルタ
30 メガネ(光学部品)
L1 色覚少数派用の光
L1b 青色光
L1r 赤色光
L2、L3 色覚多数派用の光
U1 色覚少数派のユーザ
U2 色覚多数派のユーザ
110 携帯用照明器具