(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】回転伝達装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
A01G9/24 F
A01G9/24 K
(21)【出願番号】P 2020062093
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020000970
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004200
【氏名又は名称】弁理士法人山名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直正
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3180597(JP,U)
【文献】特開2010-048388(JP,A)
【文献】特開2002-034353(JP,A)
【文献】特開2000-346167(JP,A)
【文献】特開2013-245755(JP,A)
【文献】特開2018-007597(JP,A)
【文献】特開2006-070987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14 - 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシング内に、内接状態で配設され両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部を有するコイル状のブレーキバネと、回転中心線上に配置された軸ピンの両端部に同軸ピンを中心として回転自在に相対峙する入力軸と出力軸が配設され、且つ前記入力軸及び出力軸の各内端から回転伝達部と被回転伝達部が軸ピンと平行配置で突出され、前記ブレーキバネの両端のフック部に対して、入力軸の回転伝達部はフック部の内側部に当接してブレーキバネを縮径させ、出力軸の被回転伝達部は前記フック部の外側部に当接してブレーキバネを拡径させる回転伝達装置において、
前記入力軸及び出力軸は、貫通孔を有するパイプ体で成るパイプ式入力軸及びパイプ式出力軸に形成され、前記軸ピンを嵌め込んで固定する溝穴部が軸芯に穿設された軸受が、前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の内端にそれぞれ装着され、軸振れ防止機能を発揮して前記軸ピンが前記軸受によって回転中心線上に固定された状態で、前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸が回転自在に構成されていることを特徴とする回転伝達装置。
【請求項2】
前記軸受は、その内端に前記溝穴部を有するディスク状の膨出部が形成され、防水機能を発揮して前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の各内端に嵌め込んで装着することを特徴とする、請求項1に記載した回転伝達装置。
【請求項3】
前記軸ピンのいずれか一方の端部と前記軸受のいずれか一方が一体成型されており、前記軸ピンの他方の端部に他方の軸受が予め装着された状態で、前記各軸受がパイプ式入力軸又はパイプ式出力軸の内端に装着されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した回転伝達装置。
【請求項4】
前記パイプ式入力軸の回転伝達部とパイプ式出力軸の被回転伝達部の基端位置に軸受スリーブが嵌め込まれ、その軸受スリーブの先端の上面は、前記ブレーキバネの両端面部で傾斜するバネ端面部の傾斜角度に対応して傾斜するスロープ部にそれぞれ形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載した回転伝達装置。
【請求項5】
前記軸受スリーブはリング状に形成され、その基端に内向きに突出する突片が複数設けられており、パイプ式入力軸の回転伝達部とパイプ式出力軸の被回転伝達部の基端に前記突片が嵌り込む凹部が切欠してそれぞれ複数設けられていることを特徴とする、請求項
4に記載した回転伝達装置。
【請求項6】
前記パイプ式入力軸の回転伝達部の基端と先端に、前記ブレーキバネの両端のフック部をそれぞれ遊動状態で収納するスペースが確保された段差状の基端段差部及び先端段差部が、回転伝達部の両側縁部より内方に形成され、前記ブレーキバネの各フック部は前記基端段差部内及び先端段差部内に収納されて垂直方向の内方に微動自在に構成されており、前記パイプ式入力軸の正回転時に、まず同パイプ式入力軸の回転伝達部の側縁部が前記パイプ式出力軸の被回転伝達部の側縁部に当接してパイプ式入力軸がパイプ式出力軸に直結され、その直後に前記先端段差部の内側部が同先端段差部に収納されたフック部の内側部に当接され、前記パイプ式入力軸の逆回転時には、同様に前記パイプ式入力軸がパイプ式出力軸に当接して直結された直後に、前記基端段差部の内側部が同基端段差部に収納されたフック部の内側部に当接され、前記パイプ式出力軸に余分な力が加わらない状態でパイプ式出力軸の被回転伝達部が押されつつブレーキバネが押されて同ブレーキバネを縮径させることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載した回転伝達装置。
【請求項7】
前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の外周には各々軸受スリーブが嵌められ、前記軸受スリーブの内周面に環状の内パッキンが嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝が形成されており、その内パッキン拘束溝に嵌まり込んだ不動構造の内パッキンの内周
に、前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されていることを特徴とする、請求項
4又は5に記載した回転伝達装置。
【請求項8】
前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の外周には各々一対の軸受スリーブが嵌められる構成であり、前記一対の軸受スリーブの間に環状の内パッキンが挟み込まれ、その不動構造の内パッキンの内周にパイプ式入力軸とパイプ式出力軸がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されていることを特徴とする、請求項
4又は5又は7に記載した回転伝達装置。
【請求項9】
前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の外周に各々嵌められる単体又は一対で成る軸受スリーブの外周面に環状の外パッキンを介在した状態で、前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸は前記ケーシング内に配設されていることを特徴とする、請求項
4又は5又は7又は8に記載した回転伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、
図25に示したようなビニルハウスを覆うフィルムシートの巻き上げと巻き下げに使用される回転機の駆動部に適した回転伝達装置に関し、さらに言えば、軸ピンの軸振れ防止機能と防水機能を発揮してパイプ式の入力軸とパイプ式の出力軸を適用した回転伝達装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
換気用開閉システムの操作に好適な回転機の駆動部として内蔵される回転伝達装置に関し、例えば下記特許文献1には、ケーシング20内に装填されるコイルばね30と、前記コイルばね30に形成された各フック部31、32の内側面間に位置するように配置され、回転することにより、側端面のいずれかが前記いずれかのフック部31、32の内側面に当接し、コイルばね30を巻き締める入力側作用片43を有する入力軸40と、前記コイルばね30に形成された各フック部31、32の外側面間であって、入力軸40の入力側作用片43の形成位置よりも軸心寄りに位置するように形成された出力側作用片53を有すると共に、該出力側作用片53の側端面に、外向きに突出させた鍔部56、57を有し、回転することにより、該鍔部56、57が前記いずれかのフック部31、32における屈曲部位寄りの外側面に当接してコイルばね30を巻き戻す出力軸50を具備する回転伝達機構10が記載されている(同文献1の請求項1参照)。
【0003】
また、本出願人は、下記特許文献2に記載のように、制動ドラム10の筒内部に、捻りコイルバネ11が、外径面を制動ドラム10の内周面に接する状態に設置され、該コイルバネ11の両端の被駆動端部11aは半径方向内方側へ、且つ円周方向に相対峙する向きの半円形状に湾曲され、入力軸12と出力軸23は軸ピン14の両端部に、回転自在に相対峙する配置とされ、それぞれの内端部から軸ピン14と平行する方向に突き出された回転伝達部12cと被回転伝達部13cは、捻りコイルバネ11の被駆動端部11aに対して、入力軸12の回転伝達部12cは半円形状の内周側へ当たってコイルバネ11を縮径させ、出力軸23の被回転伝達部13cは前記半円形状の外周側へ当たってコイルバネ11を拡径させる回転伝達装置を開発しているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-34353号公報
【文献】実用新案登録第3180597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に係る回転伝達機構は、入力軸側からの回転力の伝達損失をできるだけ小さくする目的で案出され、入力軸から力を入れたときに、出力軸が内側に当たると、入力軸からの力が出力軸の内側に入っていくので、ロスが大きくなるため、鍔部56、57を出して同じ位置に当たるように入力軸と出力軸の関係を保ってはいる。しかし、鍔部56、57が当たるところによっては、中のロスが変ってくる。また、ハウス奥行きが長い場合やシートが厚い場合、ハウスバンドの締め込み方が緩い場合等に起こる高負荷や、経年使用によって鍔部56、57が変形し、軸ピンを備えない構成であるが故に、バランスを保てず回転が不安定になる恐れがある。
また、特許文献2に係る回転伝達装置は、軸ピン14を使用する形態であり、入力軸12と出力軸13は無垢のアルミニウム鋳物で製作されるため、その入力軸12と出力軸13自体の各内端に軸ピン14を嵌め込む軸孔13eが容易に形成されている。鋳物から成型される入力軸12と出力軸13は中空でないので防水の必要もない。しかし、当該回転伝達装置を鋳物から製作するので、コストが高騰し製作工程も多くなる点が解決すべき課題としてある。
しかるに、第一の解決すべき課題として、製作コストが低減されるパイプ式の入力軸とパイプ式の出力軸に、軸ピンを適用する回転伝達装置を実施しようとする場合、その軸ピンを防水しつつ支持固定する手段の案出が必要である。
第二の課題として、出力軸の作動時に、バネはケーシングの中にあるので、バネは拡径しようとするときケーシングの内壁に当たって止まる。一方、入力軸の作動時には、バネは縮径(収縮)する。この拡径と縮径に時間差(ロス)があると、拡径-縮径-拡径-縮径-を繰り返しガタガタする。よって、バネを緩める力を最小限にしつつ入力軸から出力軸に回転力を伝達することが課題となっている。
この点、上記した特許文献1に記載の回転伝達機構は、入力軸-バネ-出力軸というように、バネを介して出力軸を回していく構造である。そのため、バネにかかる力(応力)を解除する力を大きくする必要があって回転伝達効率が悪い。この点は特許文献2に記載の回転伝達装置についても同様のことがいえる。
さらに、例えば、上述した特許文献2に記載の入力軸12と出力軸23の外周に嵌められる軸受スリーブ15に、内外のパッキン(Oリング)G、Qを介在させて実施すると、
図26に示したように、内パッキンGは、ただ軸受スリーブ15の内部に入力軸12(又は出力軸23)との間で揺動可能に収まっているだけで内パッキンG自体が圧迫されておらず、内パッキンGは横方向(軸方向)に動ける遊びがある構造である。これは
図27に示した如く公知の内外のパッキンG’、Q’を、軸受スリーブZに入力軸Y(出力軸)を介在させて実施する当該リング状構造の内パッキンG’についても同様のことがいえる訳である。
それ故に、入力軸(12)と出力軸(23)の回転に応じて当該内パッキンG(G’)が動くと、その動いた隙間から装置の中に水が浸入してしまう。というのも、仮に内パッキンG(G’)を固く締めると、入力軸(12)と出力軸(23)が回転できなくなるので、そもそも圧力をかけられず、水の侵入を許容する構造となっている。そのため、回転伝達装置の中に水が浸入すると、部品が経年劣化したり、錆びてきしんだり、破損が生じる恐れがある問題も解決すべき課題となっている。
【0006】
したがって、本発明の主たる目的は、まずパイプ式の入力軸とパイプ式の出力軸を採用した際に、軸ピンを防水兼用の軸受手段で固定し、軸振れ防止機能と防水機能を発揮して軸ピンを回転中心線上にしっかり位置決めして高品質な上、製作コストの低減及び製作工程の簡易化を図った回転伝達装置を提供することであり、付随して、前記パイプ式入力軸の回転時に、同入力軸が最初に出力軸に当接された直後にバネに当接する構造により、バネを緩める力が最小限で済む回転伝達効率が良好で使い勝手に優れた回転伝達装置を提供することである。
さらに、パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の外周に嵌める軸受スリーブの中に不動構造のパッキンを設け、当該パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の水密状態での回転を確保して水の侵入が防止された高品質な回転伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明は、筒状のケーシング4内に、内接状態で配設され両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部30、31を有するコイル状のブレーキバネ3と、回転中心線上に配置された軸ピンPの両端部に同軸ピンPを中心として回転自在に相対峙する入力軸1と出力軸2が配設され、且つ前記入力軸1及び出力軸2の各内端から回転伝達部10と被回転伝達部20が軸ピンPと平行配置で突出され、前記ブレーキバネ3の両端のフック部30、31に対して、入力軸1の回転伝達部10はフック部30、31の内側部30a、31aに当接してブレーキバネ3を縮径させ、出力軸2の被回転伝達部20は前記フック部30、31の外側部30b、31bに当接してブレーキバネ3を拡径させる回転伝達装置において、
前記入力軸1及び出力軸2は、貫通孔15、25を有するパイプ体で成るパイプ式入力軸1及びパイプ式出力軸2に形成され、前記軸ピンPを嵌め込んで固定する溝穴部50が軸芯に穿設された軸受5が、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の内端にそれぞれ装着され、軸振れ防止機能を発揮して前記軸ピンPが前記軸受50によって回転中心線上に固定された状態で、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2が回転自在に構成されていることを特徴とする回転伝達装置である。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記請求項1に記載した回転伝達装置において、前記軸受5は、その内端に前記溝穴部50を有するディスク状の膨出部51が形成され、装着する際の位置決めが容易に出来ることに加え、防水機能を発揮して前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の各内端に嵌め込んで装着することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、前記請求項1又は2に記載した回転伝達装置において、前記軸ピンPのいずれか一方の端部と前記軸受5のいずれか一方が一体成型されており、前記軸ピンPの他方の端部に他方の軸受5が予め装着された状態で、前記各軸受5がパイプ式入力軸1又はパイプ式出力軸2の内端に装着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明は、前記請求項1~3のいずれか1項に記載した回転伝達装置において、前記パイプ式入力軸1の回転伝達部10とパイプ式出力軸2の被回転伝達部20の基端位置に軸受スリーブ8が嵌め込まれ、その軸受スリーブ8の先端の上面は、前記ブレーキバネ3の両端面部で傾斜するバネ端面部Bの傾斜角度に対応して傾斜するスロープ部Sにそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明は、前記請求項4に記載した回転伝達装置において、前記軸受スリーブ8はリング状に形成され、その基端に内向きに突出する突片8aが複数設けられており、パイプ式入力軸1の回転伝達部10とパイプ式出力軸2の被回転伝達部20の基端に前記突片8aが嵌り込む凹部13a、23aが切欠してそれぞれ複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載した発明は、前記請求項1~4のいずれか1項に記載した回転伝達装置において、前記パイプ式入力軸1の回転伝達部10の基端と先端に、前記ブレーキバネ3の両端のフック部30、31をそれぞれ遊動状態で収納するスペースが確保された段差状
の基端段差部11及び先端段差部12が、回転伝達部10の両側縁部14より内方に形成され、前記ブレーキバネ3の各フック部30、31は前記基端段差部11内及び先端段差部20内に収納されて垂直方向の内方に微動自在に構成されており、前記パイプ式入力軸1の正回転時に、まず同パイプ式入力軸1の回転伝達部10の側縁部14が前記パイプ式出力軸2の被回転伝達部20の側縁部24に当接してパイプ式入力軸1がパイプ式出力軸2に直結され、その直後に前記先端段差部12の内側部12aが同先端段差部12に収納されたフック部31の内側部31aに当接され、前記パイプ式入力軸1の逆回転時には、同様に前記パイプ式入力軸1がパイプ式出力軸2に当接して直結された直後に、前記基端段差部11の内側部11aが同基端段差部11に収納されたフック部30の内側部30aに当接され、前記パイプ式出力軸2に余分な力が加わらない状態でパイプ式出力軸2の被回転伝達部20が押されつつブレーキバネ3が押されて同ブレーキバネ3を縮径させることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載した発明は、前記請求項4又は5に記載した回転伝達装置において、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の外周には各々軸受スリーブ8が嵌められ、前記軸受スリーブ8の内周面81に内パッキン7が嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝82が形成されており、その内パッキン拘束溝82に嵌まり込んだ不動構造の内パッキン7の内周に、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載した発明は、前記請求項4又は5又は7に記載した回転伝達装置において、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の外周には各々一対の軸受スリーブ8、8が嵌められる構成であり、前記一対の軸受スリーブ8、8の間に内パッキン7が挟み込まれ、その不動構造の内パッキン7の内周にパイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載した発明は、前記請求項4又は5又は7又は8に記載した回転伝達装置において、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の外周面に各々嵌められる単体又は一対の軸受スリーブ8が外周83に外パッキン6を介在した状態で、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2は前記ケーシング4内に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1~5に係る回転伝達装置は、入力軸及び出力軸は、貫通孔を有するパイプ体で成るパイプ式入力軸及びパイプ式出力軸に形成され、軸ピンを嵌め込んで固定する溝穴部が軸芯に穿設された軸受が、前記パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の内端に装着され、軸振れ防止機能を発揮して軸ピンが軸受によって回転中心線上に固定された状態で、パイプ式入力軸とパイプ式出力軸が回転自在に構成されているので、パイプ式の入力軸と出力軸を採用した際に、軸振れ防止機能と防水機能を発揮して軸ピンが回転中心線上にしっかり位置決め固定され回転伝達力に優れると共に、製作コストが低減され、製作工程が簡易化された回転伝達装置が実現される。
また、請求項6の回転伝達装置は、入力軸の回転伝達部の基端と先端に、ブレーキバネの両端のフック部を収納する基端段差部と先端段差部が回転伝達部の両側縁部より内方に形成され、各フック部は各段差部内に収納されて垂直方向の内方に微動自在なので、入力は出力軸に当接した直後にブレーキバネに当接し、入力軸から出力軸に直結させた後にブレーキバネを緩めて回転伝達効率が良好で使い勝手に優れている。
さらに、 請求項7~9に係る回転伝達装置によれば、軸受スリーブの内周面に環状の内パッキンが嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝が形成され、その内パッキン拘束溝に嵌まり込んだ不動構造の内パッキンの内周にパイプ式入力軸とパイプ式出力軸が水密状態で摺動自在に嵌挿されているので、両パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の回転時における水の侵入の防止が高品質に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の回転伝達装置の各構成要素を分解して示した斜視図である。
【
図2】A、B、C、Dは、パイプ式入力軸の軸受とパイプ式出力軸の軸受への軸ピンの嵌め込み要領を示した斜視図である。
【
図3】Aは軸受が装着されたパイプ式入力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図、K、Lは縦断面図である。
【
図4】Aは軸受が装着されたパイプ式出力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図、K、Lは縦断面図である。
【
図5】Aはパイプ式入力軸に軸受スリーブを装着する直前状態を示した斜視図と正面図、BはAの軸受スリーブの装着状態を示した斜視図と正面図である。
【
図6】Aはパイプ式出力軸に軸受スリーブを装着する直前状態を示した斜視図と正面図、BはAの軸受スリーブの装着状態を示した斜視図と正面図である。
【
図7】パイプ式入力軸とパイプ式出力軸の組み立て状態を示した斜視図と正面図である。
【
図8】Aは異なるパイプ式入力軸に異なる軸受スリーブを装着する直前状態を示した斜視図と正面図、BはAの異なる軸受スリーブの装着状態を示した斜視図と正面図である。
【
図9】Aは異なるパイプ式出力軸に異なる軸受スリーブを装着する直前状態を示した斜視図と正面図、BはAの異なる軸受スリーブの装着状態を示した斜視図と正面図である。
【
図10】異なるパイプ式入力軸と異なるパイプ式出力軸の組み立て状態を示した斜視図と正面図である。
【
図11】Aは段差部が形成されたパイプ式入力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図である。
【
図12】Aは
図11の段差部が形成されたパイプ式入力軸に共用されるパイプ式出力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図である。
【
図13】Aはブレーキバネが装着された
図14のパイプ式入力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図である。
【
図14】A、Bの各図は、段差部が形成されたパイプ式入力軸が半時計回り(正回転)で回転する際の説明図である。Aの上図は回転直前の状態の正面図で、Aの中図は前記A上図のC-C線断面図、Aの下図は前記A上図のD-D線断面図を示している。Bの上図は前記入力軸が回転して前記出力軸に当接した状態の正面図で、Bの中図は前記B上図のA-A線断面図、Bの下図は前記B上図のB-B線断面図を示している。
【
図15】本発明の回転伝達装置を示した斜視図である。
【
図17】Aは
図16の回転伝達装置の内部構造を(B)のA-A矢視断面で示した図と、Bは
図16の側面図である。
【
図18】は
図17Aにおいて内外のパッキンを装着した状態の回転伝達装置の断面図である。
【
図19】軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した斜視図である。
【
図20】Aは軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した側面図、BはAのF-F線断面図である。
【
図21】外パッキンが装填された軸受スリーブと、同軸受スリーブに拘束される前段階の内パッキンを示した斜視図である。
【
図22】異なる軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した斜視図である。
【
図23】Aは
図22の異なる軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した側面図、BはAのE-E線断面図である。
【
図24】
図22の異なる軸受スリーブに外パッキンが装填された状態と、同軸受スリーブに拘束される前段階の内パッキンを示した斜視図である。
【
図25】本発明の回転伝達装置を適用した回転機によるビニルハウスでの実施状況を例示した斜視図である。
【
図26】Aは従来の軸受スリーブに装填された内パッキンと外パッキンを示した断面図(BのH-H線断面)、Bは同正面図である。
【
図27】Aは異なる従来の軸受スリーブに装填された内パッキンと外パッキンを示した断面図(BのG-G線断面)、Bは同正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の回転伝達装置は、
図25に示したようなビニルハウスの側面から屋根面にかけて非止着状態に覆い、上端(又は下端)のみ止着したプラスチック製フィルムシートNの下端側(又は上端側)を巻き軸Rへ巻き込み、支持棒9aを握りつつ前記巻き軸Rを回転機9のハンドルMで正転させることにより、少ない力でスムーズにフィルムシートNを巻き上げて換気用開口Tを形成し、又は逆に巻き軸Rを逆回転させて同フィルムシートNを巻き下ろし換気用開口TをフィルムシートNで閉鎖する、換気用開閉システムの操作に適した回転機9の内蔵駆動部として好適に実施されるものである。
なお、前記回転機9が負担する後記のブレーキ力(制動力)に対する反力は、最終的には、
図25に示した如く地面へ垂直に突き挿して固定したガイドバーXによって与えられる。即ち、回転機9に形成された垂直方向の貫通孔にガイドバーXを通し、入力軸1へハンドルMを取り付け、出力軸2へは巻き軸Rを接続し、使用者は一方の手で支持棒9aを握って使用姿勢を保ち、他方の手でハンドルMを回転操作して、開口Tの開閉を行う仕組みである。
【0019】
この回転伝達装置の基本的な構成は、
図1に示したように、両端部を半径方向内方へ突出するように屈曲したフック部30、31を有するコイル状のブレーキバネ3が、内径31mm程度、長さ43mm程度の筒状のケーシング4内に、内接された状態で配設されている。なお、前記筒状のケーシング4の前後両端には、相対峙して切り欠かれた凹部40がそれぞれ2つずつ形成されており、組み立て時に前記凹部40が嵌合する凸部80が後述する軸受スリーブ8の基端寄り外周にそれぞれ形成されている。また、当該ケーシング4内には、
図2に示したように、回転中心線上に配置された軸ピンPの両端部に同軸ピンPを中心として回転自在に相対峙するパイプ式の入力軸1とパイプ式の出力軸2が配設されている。そして、前記パイプ式入力軸1及びパイプ式出力軸2の各内端から回転伝達部10と被回転伝達部20が軸ピンPと平行配置で突出され、前記ブレーキバネ3の両端のフック部30、31に対して、入力軸1の回転伝達部10はフック部30、31の内側部30a、31aに当接してブレーキバネ3を縮径させ、出力軸2の被回転伝達部20は前記フック部30、31の外側部30b、31bに当接してブレーキバネ3を拡径させる構成である。
【0020】
前記ブレーキバネ3は、厚さが約2.5mm程度、高さが約2.0mm程度で、4.3周程度巻装された外径が約31.3mm程度で成り、その両端で各々駆動されるフック部30、31が形成されている(
図1、
図13)。各フック部30、31は、半径方向内向きの略半円形状に湾曲され、パイプ式入力軸1の回転伝達部10の両側縁を挟み付けるが如く、円周方向に略相対峙する向きに形成され、入力軸1の略弓形をなす回転伝達部10が占める回転角の100°程度と略同じ角度で配置される。或いは後述する段差部11、12付き回転伝達部10に実施される場合、各フック部30、31は、同段差部11、12付き回転伝達部10が占める回転角の168°程度と略同じ角度で配置される(
図11、
図13参照)。
【0021】
本実施形態のパイプ式入力軸1(
図3)とパイプ式出力軸2(
図4)は、鉄等の金属製パイプ体を加工して製作されている。このパイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2は、およそ同形、同大で略対称的形態の構成であり、
図1と
図17に示したように、上記ブレーキバネ3の内径部へ納まる外径を有し、一定大きさの回転トルクを伝達可能な厚みのあるパイプ体で成る。また、両者は、同径の貫通孔15、25を各々有するパイプ体の軸部の内端側に、後述する軸受5を前記貫通孔15、25に装着しその外側をやや膨張させた大径の膨出部13、23がそれぞれ加圧形成され、さらに同膨出部13、23から内方へ延びる略弓形断面の回転伝達部10と被回転伝達部20がそれぞれ形成されている。本実施形態の回転伝達部10の弓形角度は約100°程度、被回転伝達部20の弓形角度は約180°程度である。
当該回転伝達部10と被回転伝達部20の軸方向長さは、回転中心を形成する軸ピンPの両端部に、パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の内端側中心部に装着した軸受5を嵌めて回転自在に相対峙する配置に組み立てた際、ケーシング4の内周面に内接するように設置したブレーキバネ3の中空部内へ組み入れた状態で、回転伝達部10と被回転伝達部20が内部に納まって、各々の先端が他方の膨出部23、13に互いに突き当たる長さに形成されている(
図2参照)。
そして、例えば
図15に示したように組み立てた場合、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2には、各々前記膨出部13、23にぴったり接する位置まで、
図1に示した大きな外側の外パッキン6と小さな内側の内パッキン7を介して軸受けスリーブ8が嵌められ、
図25に例示した形態の回転機9を形成するケーシング4によって支持され、パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の安定した回転自在状態が確保される。
【0022】
ここで、内パッキン7と内パッキン拘束溝82について説明する。
図17~
図21に示したように、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2(外径は各々約19mm程度)の外周に各々嵌められる軸受スリーブ8の内周面81を一周するように、Oリングの内パッキン7が嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝82が窪んで形成されている(
図17参照)。
図21に示した如く内パッキン7(及び外パッキン6)はOリングで成り、本実施例の内パッキン7の内径は約18.8mm程度、外径は約22.6mm程度、厚さは約1.9mm程度である。内パッキン拘束溝82の外径は約22mm程度、溝幅は約2.5mm程度である。したがって、前記の内パッキン拘束溝82に嵌まり込んで装填した不動構造の内パッキン7の内周に、パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿された構成となっている。
また、軸受スリーブ8の外周面83にOリングの外パッキン6が嵌まり込む凹状の外周溝84が形成されており、その外周溝84に外パッキン6が装填されている。よって、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の外周に各々嵌められる軸受スリーブ8が外周面83に外パッキン6を介在した状態で、パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2はケーシング4内に配設されている(下記の一対の軸受スリーブ8A、8Bにおいても同じ)。なお、前記内パッキン7と外パッキン6はゴム製で好適に実施されるが、合成樹脂製その他の材質でもよい。
【0023】
また、
図22~
図24に示したような分割タイプの一対の軸受スリーブ8A、8Bに異なる内パッキン拘束溝82’と内パッキン7を適用する実施形態も好適に実施される。すなわち、このタイプの軸受スリーブ8A、8Bは、略中央の横断面で2分割され、パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の外周に各々一対の軸受スリーブ8A、8Bが嵌められる構成である。
図24に示した如く2分割された一方の分割片に係る軸受スリーブ8A(又は図示を省略した軸受スリーブ8B)の内方の内周面81’(一周)に、上記のような内パッキン拘束溝82’が形成されている。その内パッキン拘束溝82’に内パッキン7を嵌め込み、挟み込むように前記一対の軸受スリーブ8A、8Bが合体され(
図23)、やはり不動構造の内パッキン7の内周にパイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されている。
【0024】
前記軸受5は、合成樹脂成型品で防水機能を備えている(但し、材質は合成樹脂製に限定されるものではない)。前記パイプ式入力軸1の貫通孔15又はパイプ式出力軸2の貫通孔25に嵌り込む外径約14mm程度の筒状の基部52の内端に、やや大きい外径のディスク状の膨出部51が形成されている。この膨出部51は、前記パイプ式入力軸1の膨出部13及びパイプ式出力軸2の膨出部23に係止する大きさとして、本実施例では直径約19mm程度に形成されている。当該軸受5の膨出部51の中央軸芯に、前記軸ピンPを嵌め込んで固定する大きさ(内径約6mm程度、深さ約14.3mm程度)で凹まれた溝穴部50が穿設されている。
かくして、この軸受5は、防水機能を発揮して前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の各内端に嵌め込んで装着され、当該軸受5の溝穴部50に軸ピンPが嵌め込まれる。よって、軸振れ防止機能を発揮して軸ピンPが当該軸受50により回転中心線上に固定された状態で、前記パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2が安定して回転するように構成されている(
図17A参照)。
但し、前記軸ピンPのいずれか一方の端部と前記軸受5のいずれか一方を一体成型し、前記軸ピンPの他方の端部に他方の軸受5が予め装着された状態で、前記各軸受5をパイプ式入力軸1又はパイプ式出力軸2の内端に装着する形態でも好適に実施される。
【0025】
軸受スリーブ8は、一般的には、
図5~
図7に示したように、パイプ式入力軸1及びパイプ式出力軸2の外端から嵌挿し、同パイプ式入力軸1の膨出部13又はパイプ式出力軸2の膨出部23の基端位置で嵌め込んで係止する内径約24.5mm程度のリング体に構成されている。なお、この
図5~
図7に示した軸受スリーブ8の先端上面には、下記の傾斜するスロープ部Sが形成されていなく、ブレーキバネ3の傾斜する両端面部に若干の遊びができるが、ブレーキバネ3を大きく動かさない必要最低限の安定化は図れる。
図8~
図10に示した軸受スリーブ8は、その基端に、内向きに突出する突片8aが複数設けられていると共に、パイプ式入力軸1の回転伝達部10とパイプ式出力軸2の被回転伝達部20の基端に前記突片8aが嵌り込む凹部13a、23aが切欠してそれぞれ複数設けられている。理由は、軸受スリーブ8に下記のスロープ部Sを設けるとパイプ式入力軸1(パイプ式出力軸2)と軸受スリーブ8が同時に回転する必要があるため、突出する突片8aを設けている。また、本実施形態の場合、当該突片8a及び対応する凹部13a(23a)はそれぞれ4ケ所設けてあるが、1ケ所だけ小さくなっており、軸受スリーブ8の段差の位置と、パイプ式入力軸1(パイプ式出力軸2)の膨出部13(23)の位置取りを決め易くしている。
その上、この軸受スリーブ8の先端の上面は、前記ブレーキバネ3の両端面部で傾斜するバネ端面部Bの傾斜角度(当該傾斜角度は約3°程度)に対応してブレーキバネ3が水平状態を維持できるように同じ傾斜角度(約3°程度)で傾斜するスロープ部Sにそれぞれ形成されている。ブレーキバネ3は、通常は水平方向に真っすぐカーブを描くが、ビニルハウスの奥行きが長い場合やフィルムシートNが厚い場合、又はハウスバンドの締め込み方が緩い場合等に起こる高負荷や、経年使用で変形してしまう。つまり、ブレーキバネ3のフック部30、31は、水平方向の厚みが2.5mm程度あって水平方向からの負荷に強く、遊びで当該フック部30、31が斜めになると、高さが2.0mm程度である上方向あるいは下方向に低い負荷で変形してしまう。そのため、ブレーキバネ3をケーシング4内で真っすぐにするため、パイプ式の入力軸1と出力軸2側の軸受スリーブ8に前記のスロープ部Sを設けて、ブレーキバネ3の遊びを極力減らし、ケーシング4に内接するブレーキバネ3を真っすぐに当てて力が維持できると共に、フック部30、31と出力軸2を真っすぐに当ててフック部30、31の力を維持できる構成になっている。
【0026】
したがって、上述したパイプ式の入力軸1と出力軸2を採用した際に、軸振れ防止機能と防水機能を発揮して軸ピンPが回転中心線上にしっかり位置決め固定されて安定した回転伝達力が確保されている。すなわち、パイプ式入力軸1の回転伝達部10の側縁部14が、回転に伴って、ブレーキバネ3のフック部30又は31の内周面へ当接すると、即座にブレーキバネ3は縮径されて、ケーシング4の筒内面と間に生じているブレーキ力が解消し、
図25に示すハンドルMは、正転方向又は逆転方向のいずれへも軽快に回転操作できる。その結果、ブレーキバネ3は、前記ハンドルMの正・逆方向の回転を、フック部30又は31を通じて、パイプ式出力軸2の被回転伝達部20へ同一の回転角速度にて伝達する。
逆に、パイプ式出力軸2が回転すると、その被回転伝達部20の両側縁部24は、図示を省略したブレーキバネ3の前記フック部30又は31の外側部30b又は31bへ突き当たりる。しかしこの場合、その外側部30b又は31bは半径方向外向きに押し出されてブレーキバネ3を拡径させる作用を及ぼし、ブレーキバネ3がケーシング4の筒内面へ一層強く密接して大きな制動力を発生させ、正・逆いずれの回転もきっちり止められて回転する(
図17参照)。
【0027】
図11~
図14は、前記パイプ式入力軸1の回転伝達部10の基端と先端に、段差部11、12を形成した実施形態を示している。
図11で各方向から示したように、前記パイプ式入力軸1の回転伝達部10の基端に、前記ブレーキバネ3の一端(基端)のフック部30が収納される段差状の基端段差部11が形成されている。この段差状の基端段差部11は、ブレーキバネ3の基端フック部30が遊動状態で収納するスペースを確保するように、パイプ式入力軸1の回転伝達部10の一方の端縁部14の下部を中心側湾曲部と円周側コ字状部の凹状に切欠して形成されている。その際、段差部11のスペースを余り大きくとらないで、段差部11がフック部30に極力近くなるようにして上述したブレーキバネ3の解除時間のロスを少なくするのが肝要である。本実施形態の場合、ブレーキバネ3のフック部30の厚み(2.5mm程度)より若干長い約4mm程度の前記中心側湾曲状部と円周側コ字状部における奥行が確保されている。また、その高さは、前記湾曲した中心側湾曲状部では回転伝達部10の高さと同等に長い一方、前記円周側コ字状部ではフック部30端部の高さ(2mm程度)より若干長い約4mm程度に形成されている。
かくして、前記ブレーキバネ3の一方の基端フック部30は、
図13に示した如く前記基端段差部11内に僅かに遊動可能に収納され、回転伝達部10(基端段差部11)による解除の時間(ロス)が少なくなるよう設計されているため、パイプ式入力軸1の回転によってパイプ式出力軸2に伝達された直後に垂直方向の内方に微動自在に構成されている(
図15参照)。
【0028】
また、同様に、回転伝達部10の先端にも、前記ブレーキバネ3の他端(先端)のフック部31を遊動状態で収納するスペースが確保された段差状の先端段差部12が形成されている。この段差状の先端段差部12は、ブレーキバネ3の他方の先端フック部31が遊動状態で収納するスペースを確保するように、パイプ式入力軸1の回転伝達部10の他方の端縁部14の上部を中心側湾曲部と円周側L字状部の凹状に切欠して形成されている。本実施形態の場合も上記のようにブレーキバネ3の解除時間のロスを少なくするため段差部12をフック部31に極力近くなるように、ブレーキバネ3のフック部31の厚み(2.5mm程度)より若干長い約4mm程度の前記中心側湾曲状部と円周側L字状部における奥行が確保されている。その高さは、前記中心側湾曲状部と円周側L字状部ともフック部31端部の高さ(2mm程度)より若干長い約4mm程度に形成されている。
よって、前記ブレーキバネ3の他方の先端フック部31においても、前記先端段差部12内に僅かに遊動可能に収納され、回転伝達部10(先端段差部12)による解除時間のロスが少なくなるよう設計されているため、パイプ式入力軸1の回転によってパイプ式出力軸2に伝達された直後に垂直方向の内方に微動自在に構成されている。
なお、本実施形態の段差部11、12を備えた回転伝達部10の弓形角度は約170°程度、被回転伝達部20の弓形角度は約135°程度で好適に実施される。
【0029】
したがって、上記構成により、パイプ式入力軸1が正方向(反時計回り)に回転する時に、同パイプ式入力軸1の回転伝達部10の一方の側縁部14は、パイプ式出力軸2の被回転伝達部20の一方の側縁部24に直接当接してパイプ式入力軸1がパイプ式出力軸2に直結され、その直後に、パイプ式入力軸1の回転伝達部10の凹状先端段差部12の内側部12aが同先端段差部12に収納されたフック部31の内側部31aに当接され、パイプ式出力軸2に余分な力が加わらない状態でパイプ式出力軸2の被回転伝達部20が押されつつブレーキバネ3が押され同ブレーキバネ3が縮径されて回転力が伝達される。
これを
図14の詳細図により説明する。同
図14Aは、パイプ式入力軸1を正回転(反時計回り)する直前の状態を示している。同
図17A上図のD-D線断面でみた同
図14A下図に示したように、パイプ式出力軸2がブレーキバネ3の外側部31bに当接して出力軸2でブレーキバネ3が拡径状態にあり、これより更に入力軸1が正方向(反時計回り)に回転するとブレーキバネ3の負荷がなくなっていく(
図14B参照)。
図14Bは、パイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2の直結直後の状態を示している。前記
図14Aの状態から、パイプ式入力軸1が更に正方向に回転してパイプ式出力軸2に当接し、直後にブレーキバネ3を押している状態を示している。即ち、同
図14B上図のA-A断面を示した同
図14B中図のように、パイプ式入力軸1がまず最初に直接パイプ式出力軸2に当接して同パイプ式出力軸2を押しているためパイプ式入力軸1とパイプ式出力軸2が直結状態となるので、パイプ式出力軸2を押しながら、その直後にケーシング4に内接しているブレーキバネ3が引きずられていくように押される(
図14B下図参照)。
なお、上記したパイプ式入力軸1の正回転時と同様に、逆方向(時計回り)に回転時する際も前記と同様であり、その詳細図に基づく説明は省略する。また、本実施形態のパイプ式出力軸2が回転すると、ブレーキバネ3の制動力によって回転が止められるのも上述と同様で詳細説明は省略する。
【0030】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために申し添える。
【符号の説明】
【0031】
1 パイプ式入力軸
10 回転伝達部
11 基端段差部
11a 内側部
12 先端段差部
12a 内側部
13 膨出部
13a 凹部
14 側縁部
15 貫通孔
2 パイプ式出力軸
20 被回転伝達部
23 膨出部
23a 凹部
24 側縁部
25 貫通孔
3 ブレーキバネ
30 フック部
30a 内側部
30b 外側部
31 フック部
31a 内側部
31b 外側部
4 ケーシング
5 軸受
50 溝穴部
51 膨出部
52 基部
6 外パッキン(Oリング)
7 内パッキン(Oリング)
8 軸受スリーブ
8A、8B 一対の軸受スリーブ
80 凸部
81 内周面
82 内パッキン拘束溝
83 外周面
8a 突片
80 凸部
P 軸ピン
B バネ端面部
S スロープ部