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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】固体電解質材料およびそれを用いた電池
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20240226BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240226BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240226BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240226BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240226BHJP
   C01F 11/34 20060101ALI20240226BHJP
   C01F 11/20 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M4/62 Z
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M4/133
C01F11/34
C01F11/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020562976
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046738
(87)【国際公開番号】W WO2020137356
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2018248583
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019190378
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】浅野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】境田 真志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
H01M 4/62
H01M 10/0562
H01M 10/0585
H01M 4/133
C01F 11/34
C01F 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li、M、X、およびOから構成される結晶相を含有し、
Mは、Caであり、かつ
Xは、BrおよびIであり
前記結晶相は、Cu-Kα線を用いたX線回折測定によって得られるX線回折パターンにおいて、25°以上29°以下、29°以上33°以下、および41°以上47°以下の回折角2θの範囲にピークを有する、
固体電解質材料。
【請求項2】
前記結晶相は、さらにMAを含み、
Aは、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選択される少なくとも1つの元素である、
請求項1に記載の固体電解質材料。
【請求項3】
前記固体電解質材料のX線回折パターンの横軸を数式q=4πsinθ/λ(ここで、λはX線回折測定に用いられたX線の波長を表す)に基づいて回折角2θからqに変換することによって得られる第1変換パターンにおいて、前記qの値が1.76Å-1以上2.05Å-1以下である範囲に存在するピークの前記qの値がq0と定義され、かつ
前記X線回折パターンの横軸を前記回折角2θからq/q0に変換することによって得られる第2変換パターンにおいて、前記q/q0の値が1.13以上1.18以下および1.60以上1.66以下である範囲にピークが存在する、
請求項1または2に記載の固体電解質材料。
【請求項4】
Mに対するLiのモル比は、0.667以上11.3以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項5】
Mに対するXのモル比は、2.66以上13.34以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項6】
Mに対するOのモル比は、0より大きく0.2以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項7】
Mに対するMAのモル比は、0以上1.33以下である、
請求項に記載の固体電解質材料。
【請求項8】
Xに対するBrのモル比は、0.375以上0.625以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項9】
Xに対するIのモル比は、0.375以上0.625以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項10】
正極、
負極、および
前記正極および前記負極の間に配置されている電解質層、を備え、
前記正極、前記負極、および前記電解質層からなる群より選択される少なくとも1つは、請求項1からのいずれか一項に記載の固体電解質材料を含有する、
電池。
【請求項11】
前記負極は、前記固体電解質材料を含有する、
請求項10に記載の電池。
【請求項12】
前記負極は、グラファイトを含有する、
請求項10または11に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質材料およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、硫化物固体電解質材料が用いられた全固体電池を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-129312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、高いイオン伝導度を有する固体電解質材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の固体電解質材料は、Li、M、X、およびOから構成される結晶相を含有し、Mは、Mg、Ca、およびSrからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、かつXは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも2つの元素である。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、高いイオン伝導度を有する固体電解質材料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第2実施形態による電池1000の断面図を示す。
図2図2は、Cu-Kα線を用いたX線回折測定によって得られた、実施例1から19による固体電解質材料のX線回折パターンを示すグラフである。
図3図3は、図2のグラフの横軸を2θからq/qに変換したグラフである。
図4図4は、固体電解質材料のイオン伝導度を評価するために用いられる加圧成形ダイス300の模式図を示す。
図5図5は、実施例1による固体電解質材料のインピーダンス測定結果のCole-Cole線図を示すグラフである。
図6図6は、実施例1による電池の初期放電特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態が、図面を参照しながら説明される。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態による固体電解質材料は、Li、M、X、およびOから構成される結晶相を含有する。Mは、Mg、Ca、およびSrからなる群より選択される少なくとも1つの元素である。Xは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも2つの元素である。第1実施形態による固体電解質材料は、高いイオン伝導度を有する。
【0010】
第1実施形態による固体電解質材料は、硫黄を含有しないので、大気に暴露されても、硫化水素が発生しない。したがって、第1実施形態による固体電解質材料は、安全性に優れる。特許文献1に開示された硫化物固体電解質材料は、大気に曝露されると、硫化水素を発生し得ることに留意せよ。
【0011】
第1実施形態による固体電解質材料は、希土類元素を含有しないので、低コストで製造され得る。
【0012】
固体電解質材料のイオン伝導性を高めるために、Mは、Caを含んでいてもよい。固体電解質材料のイオン伝導性を高めるために、Mは、Caであってもよい。
【0013】
固体電解質材料のイオン伝導性を高めるために、Xは、BrおよびIであってもよい。
【0014】
固体電解質材料のイオン伝導性を高めるために、上記の結晶相は、さらにMを含んでいてもよい。Mは、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選択される少なくとも1つの元素である。
【0015】
上記の結晶相は、Cu-Kα線を用いたX線回折測定によって得られるX線回折パターンにおいて、25°以上29°以下、29°以上33°以下、および41°以上47°以下の回折角2θの範囲にピークを有していてもよい。
【0016】
上記の固体電解質材料のX線回折パターンの横軸を数式q=4πsinθ/λ(ここで、λはX線回折測定に用いられたX線の波長を表す)に基づいて回折角2θからqに変換することによって得られる第1変換パターンにおいて、qの値が1.76Å-1以上2.05Å-1以下である範囲に存在するピークの前記qの値がqと定義され、かつX線回折パターンの横軸を前記回折角2θからq/qに変換することによって得られる第2変換パターンにおいて、q/qの値が1.13以上1.18以下および1.60以上1.66以下である範囲にピークが存在してもよい。このようなピークを有する結晶相は、高いイオン伝導性を有する。上記の変換により、X線回折パターンから、異なる回折面間の面間隔比が抽出される。その結果、格子定数の違いに起因するピーク位置の変化が解消され、同一の結晶構造の特徴がより顕著に表される。
【0017】
上記の結晶相の結晶構造は限定されない。当該結晶構造の例は、空間群Fm-3mに属する結晶構造を有する岩塩構造、空間群Fd-3mに属する結晶構造を有するスピネル構造、または逆スピネル構造である。アニオンからなる副格子は、立方最密充填構造、または立方最密充填構造が歪んだ構造であってもよい。結晶中の各元素は、等価なサイトをランダムに占有してもよいし、規則的な配列をとっていてもよい。等価なサイトとは、空間群で規定される対称操作によって重なる位置をいう。
【0018】
第1実施形態により固体電解質材料は、上記の結晶相とは異なる結晶構造を有する結晶相を含有していていもよい。
【0019】
固体電解質材料のイオン伝導度を高めるために、Mに対するLiのモル比は、0.667以上11.3以下であってもよい。当該モル比が0.667以上であれば、結晶中に十分な量のリチウムイオンが存在するため、リチウムイオンが伝導しやすくなる。当該モル比が11.3以下であれば、結晶中のリチウムイオンが互いに干渉しにくくなり、リチウムイオンの十分な伝導パスを確保できる。
【0020】
固体電解質材量のイオン伝導度を高めるために、Mに対するXのモル比は、2.66以上13.34以下であってもよい。結晶中のアニオンが増加すればリチウムイオンも増加し、アニオンが減少すればリチウムイオンも減少する。当該モル比が2.66以上であれば、結晶中に十分な量のリチウムイオンが存在する。当該モル比が13.34以下であれば、結晶中のリチウムイオンの十分な伝導パスを確保できる。
【0021】
固体電解質材量のイオン伝導度を高めるために、Mに対するMのモル比は、0以上1.33以下であってもよい。当該モル比が1.33以下であれば、結晶中にMが固溶しやすくなる。すなわち、結晶構造が崩れにくくなる。一例として、当該モル比は、0.110以上1.33以下であってもよい。
【0022】
固体電解質材量のイオン伝導度を高めるために、Mに対するOのモル比は、0より大きく0.2以下であってもよい。当該モル比が0.2以下であれば、2価のアニオンによるリチウムイオン伝導の阻害を抑制できる。
【0023】
固体電解質材料のイオン伝導度を高めるために、Xに対するBrのモル比は0.375以上0.625以下であってもよい。これにより、高いイオン伝導度を有する結晶構造を維持できる。
【0024】
固体電解質材量のイオン伝導度を高めるために、Xに対するIのモル比は、0.375以上0.625以下であってもよい。これにより、高いイオン伝導度を有する結晶構造を維持できる。
【0025】
第1実施形態による固体電解質材料の形状は、限定されない。当該形状の例は、針状、球状、または楕円球状である。第1実施形態による固体電解質材料は、粒子であってもよい。第1実施形態による固体電解質材料は、ペレットまたは板の形状を有するように形成されてもよい。
【0026】
第1実施形態による固体電解質材料が粒子状(例えば、球状)である場合、当該固体電解質材料は、0.1μm以上100μm以下のメジアン径を有していてもよく、望ましくは、0.5μm以上10μm以下のメジアン径を有していてもよい。これにより、第1実施形態による固体電解質材料は、より高いイオン伝導性を有する。さらに、第1実施形態による固体電解質材料および他の材料が良好に分散し得る。メジアン径は、体積基準の粒度分布における累積体積が50%に等しい場合の粒径を意味する。体積基準の粒度分布は、レーザー回折式測定装置または画像解析装置により測定され得る。
【0027】
第1実施形態による固体電解質材料および活物質を良好に分散させるために、第1実施形態による固体電解質材料は、活物質よりも小さいメジアン径を有していてもよい。
【0028】
<固体電解質の製造方法>
第1実施形態による体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造される。
【0029】
目的の組成を有するように、ハロゲン化物の原料粉が混合される。
【0030】
一例として、目的とされる組成がLiCaBrである場合、LiBr原料粉およびCaI原料粉が2:1のモル比で混合される。同じ組成を得るために、カチオンとアニオンの組み合わせが異なっていてもよい。例えば、LiI原料粉およびCaBr原料粉が2:1のモル比で混合されてもよい。合成過程において生じ得る組成変化を相殺するように、あらかじめ調整されたモル比で原料粉は混合されてもよい。
【0031】
原料粉を遊星型ボールミルのような混合装置内でメカノケミカル的に(すなわち、メカノケミカルミリングの方法を用いて)互いに反応させ、混合物を得る。反応物は、酸素を含有する雰囲気中で焼成されてもよい。あるいは、原料粉の混合物が酸素を含有する雰囲気中で焼成されて、反応物を得てもよい。当該酸素の濃度は、例えば、30ppm程度であってもよい。焼成は、100℃以上700℃以下で行われてもよく、あるいは、400℃以上600℃以下で行われてもよい。
【0032】
これらの方法により、第1実施形態による固体電解質材料が得られる。
【0033】
(第2実施形態)
以下、本開示の第2実施形態が説明される。第1実施形態において説明された事項は、適宜、省略される。
【0034】
第2実施形態による電池は、正極、電解質層、および負極を備える。電解質層は、正極および負極の間に配置されている。
【0035】
正極、電解質層、および負極からなる群より選択される少なくとも1つは、第1実施形態による固体電解質材料を含有する。
【0036】
第2実施形態による電池は、第1実施形態による固体電解質材料を含有するため、高い充放電特性を有する。
【0037】
以下、第2実施形態による電池の具体例が説明される。
【0038】
図1は、第2実施形態による電池1000の断面図を示す。
【0039】
電池1000は、正極201、電解質層202、および負極203を備える。
【0040】
正極201は、正極活物質粒子204および固体電解質粒子100を含有する。
【0041】
電解質層202は、正極201および負極203の間に配置されている。
【0042】
電解質層202は、電解質材料(例えば、固体電解質材料)を含有する。
【0043】
負極203は、負極活物質粒子205および固体電解質粒子100を含有する。
【0044】
固体電解質粒子100は、第1実施形態による固体電解質材料を主たる成分として含有する粒子である。第1実施形態による固体電解質材料を主たる成分として含有する粒子とは、最も多く含まれる成分が第1実施形態による固体電解質材料である粒子を意味する。固体電解質粒子100は、第1実施形態における固体電解質材料からなる粒子であってもよい。
【0045】
正極201は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵かつ放出可能な材料を含有する。当該材料は、例えば、正極活物質(例えば、正極活物質粒子204)である。
【0046】
正極活物質の例は、リチウム含有遷移金属酸化物、遷移金属フッ化物、ポリアニオン材料、フッ素化ポリアニオン材料、遷移金属硫化物、遷移金属オキシフッ化物、遷移金属オキシ硫化物、または遷移金属オキシ窒化物である。リチウム含有遷移金属酸化物の例は、Li(NiCoAl)O、LiCoO、またはLi(NiCoMn)Oである。
【0047】
正極活物質粒子204は、0.1μm以上100μm以下のメジアン径を有していてもよい。正極活物質粒子204が0.1μm以上のメジアン径を有する場合、正極において、正極活物質粒子204および固体電解質粒子100が良好に分散し得る。これにより、電池の充放電特性が向上する。正極活物質粒子204が100μm以下のメジアン径を有する場合、正極活物質粒子204内のリチウム拡散速度が向上する。これにより、電池が高出力で動作し得る。
【0048】
正極活物質粒子204は、固体電解質粒子100よりも大きいメジアン径を有していてもよい。これにより、正極活物質粒子204および固体電解質粒子100が良好に分散し得る。
【0049】
電池のエネルギー密度および出力の観点から、正極201において、正極活物質粒子204の体積および固体電解質粒子100の体積の合計に対する正極活物質粒子204の体積の比は、0.30以上0.95以下であってもよい。
【0050】
電池のエネルギー密度および出力の観点から、正極201は、10μm以上500μm以下の厚みを有していてもよい。
【0051】
電解質層202は、電解質材料を含有する。当該電解質材料は、例えば、固体電解質材料である。電解質層202は、固体電解質層であってもよい。電解質層202に含まれる固体電解質材料は、第1実施形態による固体電解質材料を含有していてもよい。
【0052】
電解質層202は、第1実施形態による固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0053】
電解質層202は、第1実施形態による固体電解質材料とは異なる固体電解質材料のみから構成されていてもよい。第1実施形態による固体電解質材料とは異なる固体電解質材料の例は、LiMgX’、LiFeX’、Li(Al,Ga,In)X’4、Li(Al,Ga,In)X’、およびLiX’である。ここで、X’は、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1つの元素である。
【0054】
以下、第1実施形態による固体電解質材料は、第1固体電解質材料と呼ばれる。第1実施形態による固体電解質材料とは異なる固体電解質材料は、第2固体電解質材料と呼ばれる。
【0055】
電解質層202は、第1固体電解質材料だけでなく、第2固体電解質材料をも含有していてもよい。第1固体電解質材料および第2固体電解質材料は、均一に分散していてもよい。
【0056】
第1固体電解質材料からなる層および第2固体電解質材料からなる層が、電池1000の積層方向に沿って積層されていてもよい。
【0057】
電解質層202は、1μm以上100μm以下の厚みを有していてもよい。電解質層202が1μm以上の厚みを有する場合、正極201および負極203が短絡しにくくなる。電解質層202が100μm以下の厚みを有する場合、電池が高出力で動作し得る。
【0058】
負極203は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵かつ放出可能な材料を含有する。当該材料は、例えば、負極活物質(例えば、負極活物質粒子205)である。
【0059】
負極活物質の例は、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、または珪素化合物である。金属材料は、単体の金属材料であってもよく、あるいは合金であってもよい。金属材料の例は、リチウム金属またはリチウム合金である。炭素材料の例は、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、または非晶質炭素である。容量密度の観点から、負極活物質の好適な例は、珪素(すなわち、Si)、錫(すなわち、Sn)、珪素化合物、または錫化合物である。電池のエネルギー密度を向上させるために、グラファイトのような低い平均放電電圧を有する負極活物質が使用されてもよい。
【0060】
負極203は、第1固体電解質材料を含有していてもよい。第1固体電解質材料は高い耐還元性を有するため、グラファイトまたはリチウム金属のような負極活物質とともに使用することができる。
【0061】
負極活物質粒子205は、0.1μm以上100μm以下のメジアン径を有していてもよい。負極活物質粒子205が0.1μm以上のメジアン径を有する場合、負極において、負極活物質粒子205および固体電解質粒子100が良好に分散し得る。これにより、電池の充放電特性が向上する。負極活物質粒子205が100μm以下のメジアン径を有する場合、負極活物質粒子205内のリチウム拡散速度が向上する。これにより電池が高出力で動作し得る。
【0062】
電池のエネルギー密度および出力の観点から、負極203において、負極活物質粒子205の体積および固体電解質粒子100の体積の合計に対する負極活物質粒子205の体積の比は、0.30以上0.95以下であってもよい。
【0063】
電池のエネルギー密度および出力の観点から、負極203は、10μm以上500μm以下の厚みを有していてもよい。
【0064】
正極201、電解質層202、および負極203からなる群より選択される少なくとも1つは、イオン伝導性、化学的安定性、および電気化学的安定性を高める目的で、第2固体電解質材料を含有していてもよい。第2固体電解質材料の例は、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、または有機ポリマー固体電解質である。
【0065】
硫化物固体電解質の例は、LiS-P、LiS-SiS、LiS-B、LiS-GeS、Li3.25Ge0.250.75、またはLi10GeP12である。
【0066】
酸化物固体電解質の例は、
(i)LiTi(POまたはその元素置換体のようなNASICON型固体電解質、
(ii)(LaLi)TiOのようなペロブスカイト型固体電解質、
(iii)Li14ZnGe16、LiSiO、LiGeOまたはその元素置換体のようなLISICON型固体電解質、
(iv)LiLaZr12またはその元素置換体のようなガーネット型固体電解質、または
(v)LiPOまたはそのN置換体
である。
【0067】
ハロゲン化物固体電解質の例は、上述のように、LiMgX’、LiFeX’、Li(Al,Ga,In)X’4、Li(Al,Ga,In)X’、およびLiX’である。
【0068】
ハロゲン化物固体電解質の他の例は、LiMeにより表される化合物である。ここで、p+m’q+3r=6、およびr>0が充足される。Meは、LiおよびY以外の金属元素と半金属元素とからなる群より選択される少なくとも1つの元素である。m’の値は、Meの価数を表す。Zは、F、Cl、Br、およびIからなる群より選択される少なくとも1種の元素である。「半金属元素」は、B、Si、Ge、As、Sb、およびTeである。「金属元素」は、周期表1族から第12族中に含まれる全ての元素(ただし、水素を除く)、および周期表13族から第16族に含まれる全ての元素(ただし、B、Si、Ge、As、Sb、Te、C、N、P、O、S、およびSeを除く)である。ハロゲン化物固体電解質のイオン伝導度の観点から、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、およびNbからなる群より選択される少なくとも1つの元素であってもよい。
【0069】
有機ポリマー固体電解質の例は、高分子化合物およびリチウム塩の化合物である。高分子化合物は、エチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有する高分子化合物は、リチウム塩を多く含有できるため、イオン伝導率を高めることができる。リチウム塩の例は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、またはLiC(SOCFである。これらから選択される1種のリチウム塩が単独で使用されてもよい。あるいは、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が使用されてもよい。
【0070】
正極201、電解質層202、および負極203からなる群より選択される少なくとも1つは、リチウムイオンの授受を容易にし、電池の出力特性を向上する目的で、非水電解質液、ゲル電解質、またはイオン液体を含有していてもよい。
【0071】
非水電解液は、非水溶媒および当該非水溶媒に溶けたリチウム塩を含む。
【0072】
非水溶媒の例は、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、またはフッ素溶媒である。環状炭酸エステル溶媒の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはブチレンカーボネートである。鎖状炭酸エステル溶媒の例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、またはジエチルカーボネートである。環状エーテル溶媒の例は、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、または1,3-ジオキソランである。鎖状エーテル溶媒の例は、1,2-ジメトキシエタンまたは1,2-ジエトキシエタンである。鎖状エステル溶媒の例は、酢酸メチルである。フッ素溶媒の例は、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート、またはフルオロジメチレンカーボネートである。これらから選択される1種の非水溶媒が単独で使用されてもよい。あるいは、これらから選択される2種以上の非水溶媒の混合物が使用されてもよい。リチウム塩の例は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、またはLiC(SOCFである。これらから選択される1種のリチウム塩が単独で使用されてもよい。あるいは、これらから選択される2種以上のリチウム塩の化合物が使用されてもよい。
【0073】
リチウム塩の濃度は、例えば、0.5mol/リットル以上かつ2mol/リットル以下であってもよい。
【0074】
ゲル電解質は、非水電解液を含浸させたポリマー材料が使用され得る。ポリマー材料の例は、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、またはエチレンオキシド結合を有するポリマーである。
【0075】
イオン液体に含まれるカチオンの例は、
(i)テトラアルキルアンモニウムまたはテトラアルキルホスホニウムのような脂肪族鎖状4級塩類、
(ii)ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジウム類、ピペラジニウム類、またはピペリジニウム類のような脂肪族環状アンモニウム、または
(iii)ピリジニウム類またはイミダゾリウム類のような含窒ヘテロ環芳香族カチオン
である。
【0076】
イオン液体に含まれるアニオンの例は、PF 、BF 、SbF 、AsF 、SOCF 、N(SOCF 、N(SO 、N(SOCF)(SO、またはC(SOCF である。
【0077】
イオン液体は、リチウム塩を含有してもよい。
【0078】
正極201、電解質層202、および負極203からなる群より選択される少なくとも1つは、粒子同士の密着性を向上する目的で、結着剤を含有していてもよい。
【0079】
結着剤の例は、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレン、ブタジエンゴム、またはカルボキシメチルセルロースである。共重合体もまた、結着剤として使用され得る。このような結着剤の例は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、アクリル酸、およびヘキサジエンからなる群より選択される2種以上の材料の共重合体である。上記の材料から選択される2種以上の混合物が結着剤として用いられてもよい。
【0080】
正極201および負極203からなる群より選択される少なくとも1つは、電子伝導性を高める目的で、導電助剤を含有していてもよい。
【0081】
導電助剤の例は、
(i)天然黒鉛または人造黒鉛のようなグラファイト類、
(ii)アセチレンブラックまたはケッチェンブラックのようなカーボンブラック類、
(iii)炭素繊維または金属繊維のような導電性繊維類、
(iv)フッ化カーボン、
(v)アルミニウムのような金属粉末類、
(vi)酸化亜鉛またはチタン酸カリウムのような導電性ウィスカー類、
(vii)酸化チタンのような導電性金属酸化物、または
(viii)ポリアニリン、ポリピロール、またはポリチオフェンのような導電性高分子化合物
である。低コスト化のために、上記(i)または(ii)の導電助剤が使用されてもよい。
【0082】
第2実施形態による電池の形状の例は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、または積層型である。
【0083】
(実施例)
以下、実施例を参照しながら、本開示がより詳細に説明される。
【0084】
(実施例1)
[固体電解質材料の作製]
-60℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気(以下、「乾燥アルゴン雰囲気」と呼ばれる)中で、原料粉として、LiBrおよびCaIが、2:1のLiBr:CaIモル比となるように用意された。これらの原料粉は、乳鉢中で粉砕され、混合された。このようにして、混合粉が得られた。次いで、-60℃以下の露点および20ppmの酸素濃度を有するアルゴン雰囲気中で、焼成炉を用いて、600℃で、30分、混合粉は焼成された。このようにして、実施例1による固体電解質材料の粉末が得られた。実施例1による固体電解質材料は、LiCaBrの組成を有していた。
【0085】
[結晶構造の解析]
図2は、固体電解質材料のX線回折パターンを示すグラフである。図2に示される結果は、下記の方法により、測定された。
【0086】
-45℃以下の露点を有するドライ雰囲気中で、X線回折装置(RIGAKU社、MiniFlex600)を用いて、実施例1による固体電解質材料のX線回折パターンが測定された。X線源は、Cu-Kα線が用いられた。
【0087】
実施例1による固体電解質材料のX線回折パターンにおいては、回折角2θの値が、12.70°、25.60°、29.64°、および42.48°であるピークが存在していた。
【0088】
これらのピーク角度は、12.01Åの格子定数aを有する逆スピネル構造のX線回折パターンにおいて観測される一部のピーク角度と略一致していた。
【0089】
図3は、図2に示されるX線回折パターンの横軸を回折角2θからq/qに変換したグラフである。すなわち、図3は、第2変換パターンを示すグラフである。実施例1による固体電解質材料のX線回折パターンにおいて、回折角2θの値が25.60°であるピークが、qに相当するピークである。実施例1による固体電解質材料の第2変換パターンにおいては、q/qの値が、0.499、1.155、1.635、であるピークが存在していた。
【0090】
[元素分析]
実施例1による固体電解質材料の酸素含有量は、酸素・窒素・水素分析装置(堀場製作所、EMGA-930)を用いて、非分散型赤外線吸収法により測定された。実施例1による固体電解質材料(12.7mg)がニッケル製の専用カプセルに封入された。次いで、当該カプセルおよびSn(500mg)が試料ホルダーに投入され、酸素含有量が測定された。その結果、酸素量は固体電解質材料全体に対して0.530重量%であった。測定された酸素量をもとに、Caに対するモル比を算出したところ、0.156であった。
【0091】
[イオン伝導度の測定]
図4は、固体電解質材料のイオン伝導度を評価するために用いられた加圧成形ダイス300の模式図を示す。
【0092】
加圧成形ダイス300は、パンチ上部301、枠型302、およびパンチ下部303を具備していた。枠型302は、絶縁性のポリカーボネートから形成されていた。パンチ上部301およびパンチ下部303は、電子伝導性のステンレスから形成されていた。
【0093】
図4に示される加圧成形ダイス300を用いて、下記の方法により、実施例1による固体電解質材料のイオン伝導度が測定された。
【0094】
-80℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気中で、実施例1による固体電解質材料の粉末(すなわち、図4において固体電解質材料の粉末101)が加圧成形ダイス300の内部に充填された。加圧成形ダイス300の内部で、パンチ上部301およびパンチ下部を用いて、実施例1による固体電解質材料の粉末に360MPaの圧力が印加された。
【0095】
圧力が印加されたまま、パンチ上部301およびパンチ下部303が、周波数応答アナライザが搭載されたポテンショスタット(Biologic社、VSP-300)に接続された。パンチ上部301は、作用極および電位測定用端子に接続された。パンチ下部303は、対極および参照極に接続された。固体電解質材料のイオン伝導度は、室温において、電気化学インピーダンス測定法により測定された。
【0096】
図5は、実施例1による固体電解質材料のインピーダンス測定結果のCole-Cole線図を示すグラフである。
【0097】
図5において、複素インピーダンスの位相の絶対値が最も小さい測定点でのインピーダンスの実数値が、固体電解質材料のイオン伝導に対する抵抗値とみなされた。当該実数値については、図5において示される矢印RSEを参照せよ。
【0098】
当該抵抗値を用いて、下記の数式(1)に基づいて、イオン伝導度が算出された。
【0099】
σ=(RSE×S/t)-1 ・・・(1)
ここで、σはイオン伝導度を表す。Sは固体電解質材料のパンチ上部301との接触面積(図4において、枠型302の中空部の断面積に等しい)を表す。R-SEはインピーダンス測定における固体電解質材料の抵抗値を表す。tは圧力が印加された固体電解質材料の厚み(図4において、固体電解質材料の粉末101から形成される層の厚みに等しい)を表す。25℃で測定された、実施例1による固体電解質材料のイオン伝導度は、5.9×10-5S/cmであった。
【0100】
[二次電池の作製]
乾燥アルゴン雰囲気中で、実施例1による固体電解質材料および負極活物質であるグラファイトが、50:50の体積比率で用意された。これらの材料がメノウ乳鉢中で混合され、負極混合物が得られた。
【0101】
9.5mmの内径を有する絶縁性の筒の中で、硫化物固体電解質75LiS-P(80mg)および上記の負極混合物(3.37mg、負極活物質2mgが含まれる)が、順に積層され、積層体が得られた。この積層体に、360MPaの圧力が印加され、固体電解質層および負極が形成された。
【0102】
次に、固体電解質層に、金属In箔(厚さ200μm)、金属Li箔(厚さ200μm)、および金属In箔(厚さ200μm)が順に積層され、積層体が得られた。この積層体に80MPaの圧力が印加され、正極が形成された。
【0103】
次に、ステンレス鋼から形成された集電体が正極および負極に取り付けられ、当該集電体に集電リードが取り付けられた。
【0104】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性の筒の内部が外部雰囲気から遮断され、当該筒の内部が密閉された。
【0105】
このようにして、実施例1による電池が得られた。
【0106】
図6は、実施例1による電池の初期充放電特性を示すグラフである。図6に示される結果は下記の方法により、測定された。
【0107】
26.1μA/cmの電流密度で、-0.62Vの電圧に達するまで、実施例1による電池が充電された。当該電流密度は、0.025Cレートに相当する。充電とは、リチウムイオンがIn-Li合金正極からグラファイトを含む負極へ流れる方向に流れる状態のことである。次に、26.1μA/cmの電流密度で、1.9Vの電圧に達するまで、実施例1による電池が放電された。当該電流密度は、0.025Cレートに相当する。放電とは、リチウムイオンがグラファイトを含む負極からIn-Li正極へ流れる方向に流れる状態のことである。
【0108】
充放電試験の結果、実施例1による電池は90.3%の初期充放電効率を有していた。
【0109】
(実施例2~19)
[固体電解質材料の作製]
実施例2では、原料粉としてLiBr、CaBr、およびCaIが、1.34:0.33:1のLiBr:CaBr:CaIモル比となるように用意された。
【0110】
実施例3では、原料粉としてLiBr、CaBr、およびCaIが、1:0.5:1のLiBr:CaBr:CaIモル比となるように用意された。
【0111】
実施例4では、原料粉としてLiBr、LiI、およびCaIが、2:1:0.5のLiBr:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0112】
実施例5では、原料粉としてLiBr、LiI、およびCaIが、2:1.4:0.3のLiBr:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0113】
実施例6では、原料粉としてLiBr、LiI、およびCaIが、2.5:0.5:0.5のLiBr:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0114】
実施例7では、原料粉としてLiBrおよびCaIが、3:0.5のLiBr:CaIモル比となるように用意された。
【0115】
実施例8では、原料粉としてLiBr、LiI、およびCaIが、1.5:1.5:0.5のLiBr:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0116】
実施例9では、原料粉としてLiBr、LiI、およびCaIが、1:2:0.5のLiBr:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0117】
実施例10では、原料粉としてLiBr、CaBr2、およびCaIが、1.34:0.58:0.75のLiBr:CaBr:CaIモル比となるように用意された。
【0118】
実施例11では、原料粉としてCaBr、LiI、およびCaIが、0.75:1.34:0.58のCaBr:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0119】
実施例12では、原料粉としてLiBr、KI、およびCaIが、2:0.2:0.9のLiBr:KI:CaIモル比となるように用意された。
【0120】
実施例13では、原料粉としてLiBr、KI、およびCaIが、2:0.4:0.8のLiBr:KI:CaIモル比となるように用意された。
【0121】
実施例14では、原料粉としてLiBr、RbI、およびCaIが、2:0.1:0.95のLiBr:RbI:CaIモル比となるように用意された。
【0122】
実施例15では、原料粉としてLiBr、RbI、およびCaIが、2:0.2:0.9のLiBr:RbI:CaIモル比となるように用意された。
【0123】
実施例16では、原料粉としてLiBr、NaI、およびCaIが、2:0.4:0.8のLiBr:NaI:CaIモル比となるように用意された。
【0124】
実施例17では、原料粉としてLiBr、NaI、およびCaIが、2:0.8:0.6のLiBr:NaI:CaIモル比となるように用意された。
【0125】
実施例18では、原料粉としてLiBr、NaI、LiI、およびCaIが、2:0.2:0.2:0.8のLiBr:NaI:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0126】
実施例19では、原料粉としてLiBr、NaI、LiI、およびCaIが、2:0.4:0.4:0.6のLiBr:NaI:LiI:CaIモル比となるように用意された。
【0127】
上記の事項以外は、実施例1と同様にして、実施例2~19による固体電解質材料が得られた。
【0128】
[結晶構造の解析]
実施例2~19による固体電解質材料のX線回折パターンが、実施例1と同様に測定された。
【0129】
実施例2~19による固体電解質材料のX線回折パターンは、図2に示される。全ての実施例2~19において、回折角2θの値が、25°以上29°以下、29°以上33°以下、および41°以上47°以下である範囲のそれぞれにピークが存在していた。これらのピーク角度は、岩塩構造のX線回折パターンにおいて観測されるピーク角度と略一致していた。
【0130】
実施例2、3、10、および11のX線回折パターンにおいては、回折角2θの値が、12°以上14°以下である範囲にさらにピークが存在していた。これらのピーク角度は、逆スピネル構造のX線回折パターンにおいて観測されるピーク角度と略一致していた。したがって、実施例1~3、10、および11による固体電解質材料は、逆スピネル構造を有する結晶相を含有すると考えられる。
【0131】
実施例1と同様にして、図2に示されるX線回折パターンの横軸が変換された。回折角2θの値が、25°以上29°以下の範囲に存在するピークが、qに相当するピークである。実施例2~19による固体電解質材料の第2変換パターンが、図3に示される。全ての実施例2~19において、q/qの値が、1.13以上1.18以下、および1.60以上1.66以下である範囲のそれぞれにピークが存在していた。
【0132】
実施例2、3、10、および11の第2変換パターンにおいては、q/qの値が、0.45以上0.55以下である範囲にさらにピークが存在していた。
【0133】
[元素分析]
実施例2~19による固体電解質材料に対し、実施例1と同様に元素分析が行われた。測定結果は、表1に示される。
【0134】
[イオン伝導度の評価]
実施例2~19による固体電解質材料のイオン伝導度が、実施例1と同様に測定された。測定結果は表1に示される。
【0135】
実施例1~19による固体電解質材料について、組成および評価結果が表1に示される。
【0136】
【表1】
【0137】
(考察)
表1から明らかなように、実施例1~19による固体電解質材料は、いずれも1.0×10-6S/cm以上の高いイオン伝導度を有していた。
【0138】
実施例1~19による固体電解質材料は、Cu-Kα線を用いたX線回折測定によって得られるX線回折パターンにおいて、回折角2θの値が、25°以上29°以下、29°以上33°以下、および41°以上47°以下である範囲のそれぞれにピークが存在する。さらに、第2変換パターンにおいて、q/qの値が、1.13以上1.18以下、および1.60以上1.66以下である範囲のそれぞれにピークが存在していた。したがって、実施例1~19による固体電解質材料は、岩塩構造、または、岩塩構造に類似する結晶構造を有する結晶相を含有すると考えられる。
【0139】
実施例1~19による固体電解質材料は、硫黄を含有しないため、硫化水素が発生しない。
【0140】
実施例1~19による固体電解質材料は、希土類元素を含有しない。
【0141】
実施例1による固体電解質材料は、活物質としてグラファイトが用いられた電池において、Li電位で良好な充放電特性を示した。したがって、実施例1による固体電解質材料は高い耐還元性を有するといえる。
【0142】
以上のように、本開示の固体電解質材料は、希土類元素および硫黄を含有せず、高いイオン伝導度を有し、かつ高い耐還元性を有する。さらに、良好に充電および放電可能な電池を得るために適切である。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本開示の固体電解質材料は、例えば、全固体リチウムイオン二次電池において利用される。
【符号の説明】
【0144】
100 固体電解質粒子
101 固体電解質材料の粉末
201 正極
202 電解質層
203 負極
204 正極活物質粒子
205 負極活物質粒子
300 加圧成形ダイス
301 パンチ上部
302 枠型
303 パンチ下部
1000 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6