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特許7442148放射線線量測定ゲル、及びそれを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計
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  • 特許-放射線線量測定ゲル、及びそれを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】放射線線量測定ゲル、及びそれを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/02 20060101AFI20240226BHJP
   G01T 1/04 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
G01T1/02 B
G01T1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021524737
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2020019785
(87)【国際公開番号】W WO2020246229
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019105629
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻葉汀 ダニエルアントニオ
(72)【発明者】
【氏名】高梨 宇宙
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-015716(JP,B1)
【文献】特開昭62-293178(JP,A)
【文献】米国特許第02936276(US,A)
【文献】国際公開第2016/098888(WO,A1)
【文献】藤田 勝三 ほか,ヨウ素デンプン反応を応用した立体的線量分布観察用ファントーム,日本医学放射線学会雑誌,日本,日本医学放射線学会,1974年01月25日,第34巻第1号,第44-49頁
【文献】JORDAN, K,Optical CT scanning of cross-linked radiochromic gel without cylinder wall,5th International Conference on Radiotherapy Gel Dosimetry,英国,IOP Publishing,2009年,J. Phys.: Conf. Ser. 164 012029
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/02
G01T 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)、及びヒドロゲル(B)を含み、該水溶性重合体(A)が、ロイコ化合物由来の基を含む、放射線線量測定ゲル。
【請求項2】
さらに有機ハロゲン化合物(C)を含む、請求項1に記載の放射線線量計ゲル。
【請求項3】
上記水溶性重合体(A)が、下記式(A-1):
【化1】
(上記式(A-1)中、
Arは、
【化2】
を表し、
は、単結合、-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表し、
pは、Aが単結合を表す場合には0であり、またAが-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表す場合には1乃至12の整数であり、
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至30のアルキル基、炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至6のスルホアルキル基、炭素原子数2乃至7のカルボキシアルキル基、炭素原子数2乃至7のシアノアルキル基、炭素原子数2乃至6のアルコキシアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロゲノアルキル基、置換基を有する若しくは無置換のフェニル基、又は置換基を有する若しくは無置換のベンジル基を表すか、又はR同士が結合する窒素原子と共に3乃至10員環を形成していてもよく、X及びXは、夫々独立して、
【化3】
(上記式中、Rは上記と同じ意味を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。)を表し、
は、水溶性基を表し、
Qは、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表し、水溶性重合体(A)を構成する繰返し単位の総数を1としたときに、水溶性重合体(A)を構成する式(A-1)中の繰返し単位の割合n及びmは、0<n≦0.5、0<m≦1、かつ、m+n≦1を満たす数である。)
で表される、請求項1又は請求項2に記載の放射線線量測定ゲル。
【請求項4】
上記水溶性重合体(A)が、下記式(A-2):
【化4】
(上記式(A-2)中、
Arは、
【化5】
を表し、
は、単結合、-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表し。
21は、-O-又は-NR-を表し、
pは、Aが単結合を表す場合には0であり、またAが-COO-、-OCO-又は-O-を表す場合には1乃至12の整数を表し、
rは、1又は2の整数を表し、
qは、1乃至50の整数を表し、
は、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、
は、水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、
Qは、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表し、水溶性重合体(A)を構成する繰返し単位の総数を1としたときに、水溶性重合体(A)を構成する式(A-1)中の繰返し単位の割合n及びmは、0<n≦0.5、0<m≦1、かつ、m+n≦1を満たす数である。)
で表される、請求項1乃至請求項3いずれか1項に記載の放射線線量測定ゲル。
【請求項5】
上記ヒドロゲル(B)が、ゼラチン、アガロース又はジェランガムから選ばれる、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の放射線線量測定ゲル。
【請求項6】
上記ヒドロゲル(B)が、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A1)、ケイ酸塩(B1)、及び前記ケイ酸塩の分散剤(C1)を含む請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の放射線線量測定ゲル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の放射線線量測定ゲルを、放射線線量の計測材料として備える放射線線量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線線量測定ゲル、及びそれを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計に関する。より詳しくは、本発明は、3次元線量分布の測定に用いられる放射線線量測定ゲル、及びそれを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル線量計は放射線誘起の化学反応を利用した3次元線量計である。ゲル線量計に放射線を照射した後にゲル中に保持される反応生成物は核磁気共鳴画像診断装置(MRI)や光学的CT装置(OCT)などの3次元スキャナーにて読み取られ、線量分布へ換算される。ゲルの大部分は水であり、生体に近い組成を持つことから、特に放射線治療において計画される複雑な3次元線量分布の検証ツールとしての利用が期待される。
代表的な3次元線量分布の測定が可能なゲル線量計としては、フリッケゲル線量計やポリマーゲル線量計などが知られている。フリッケゲル線量計は、液体化学線量計として知られるフリッケ線量計の溶液(硫酸第一鉄を含む水溶液)をゲル化したものであり、放射線照射に伴う2価から3価への鉄の酸化反応(着色)が、吸収線量に比例して増加することを利用している。一方、ポリマーゲル線量計は、モノマーをゲル中に分散させたものであり、放射線照射すると線量に比例してポリマーが生成すること(重合反応)を利用している(特許文献1)。
【0003】
近年、色素を用いたゲル線量計が幅広く報告されている(特許文献2、非特許文献1乃至4)。例えば色素として使用されるロイコクリスタルバイオレット(LCV)の放射線による色変化のメカニズムを以下に示す。
【化1】
【0004】
また、ラジオクロミック化合物を用いた放射線線量計として、色素化合物と界面活性剤とのミセルを用いて拡散を抑えたシステムが報告されている(非特許文献1乃至4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5321357号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2546679号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】K. Jordan, N. Avvakumov, Phys. Med. Biol. 54 (2009) 6773-6789
【文献】S. Babic, J. Battista, K. Jordan, Phys. Med. Biol. 54 (2009) 6791-6808
【文献】J. Vandecasteele, S. Ghysel, S. H. Baete, Y De Deene, Phys. Med. Biol. 56 (2011) 627-651
【文献】A. T. Nasr, K. Alexander, L. J. Schreiner, K. B. McAuley, Phys. Med. Biol. 60 (2015) 4665-4683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ラジオクロミック化合物を用いる場合、色素化合物を界面活性剤とミセル化させないと、色素化合物の水への溶解性が低く、安定なヒドロゲルが得られ難いという問題がある。
また、非特許文献1乃至4に記載のシステムにおいては、組成の作製の時の各コンポーネントの添加量及び添加方法の調整が困難であり、色素化合物のミセル化のコントロールが得られず、保存安定性等に大きな影響を与えるという課題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、界面活性剤により色素化合物をミセル化する工程無しに、容易に作製でき、且つ、安定な放射線線量測定ゲルを提供することにある。
また、本発明の目的は、放射線の照射後に着色した水溶性重合体の拡散を抑制でき、線量計の照射後の解析に長い時間をかけることができる放射線線量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体、例えばロイコ化合物由来の基を含有する水溶性重合体とヒドロゲルとを用いた放射線線量測定ゲルを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、第1観点として、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)、及びヒドロゲル(B)を含む、放射線線量測定ゲルに関する。
第2観点として、さらに有機ハロゲン化合物(C)を含む、第1観点に記載の放射線線量計ゲルに関する。
第3観点として、上記水溶性重合体(A)が、ロイコ化合物由来の基を含む、第1観点又は第2観点に記載の放射線線量測定ゲルに関する。。
第4観点として、上記水溶性重合体(A)が、下記式(A-1):
【化2】

(上記式(A-1)中、
Arは、
【化3】

を表し、
は、単結合、-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表し、
pは、Aが単結合を表す場合には0であり、またAが-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表す場合には1乃至12の整数であり、
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至30のアルキル基、炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至6のスルホアルキル基、炭素原子数2乃至7のカルボキシアルキル基、炭素原子数2乃至7のシアノアルキル基、炭素原子数2乃至6のアルコキシアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロゲノアルキル基、置換基を有する若しくは無置換のフェニル基、又は置換基を有する若しくは無置換のベンジル基を表すか、又はR同士が結合する窒素原子と共に3乃至10員環を形成していてもよく、X及びXは、夫々独立して、
【化4】

(上記式中、Rは上記と同じ意味を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。)を表し、
は、水溶性基を表し、
Qは、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表し、水溶性重合体(A)を構成する繰返し単位の総数を1としたときに、水溶性重合体(A)を構成する式(A-1)中の繰返し単位の割合n及びmは、0<n≦0.5、0<m≦1、かつ、m+n≦1を満たす数である。)
で表される、第1観点乃至第3観点の何れか1つに記載の放射線線量測定ゲルに関する。
第5観点として、上記水溶性重合体(A)が、下記式(A-2):
【化5】

(上記式(A-2)中、
Arは、
【化6】

を表し、
は、単結合、-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表し。
21は、-O-又は-NR-を表し、
pは、Aが単結合を表す場合には0であり、またAが-COO-、-OCO-又は-O-を表す場合には1乃至12の整数を表し、
rは、1又は2の整数を表し、
qは、1乃至50の整数を表し、
は、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、
は、水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、
Qは、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表し、水溶性重合体(A)を構成する繰返し単位の総数を1としたときに、水溶性重合体(A)を構成する式(A-1)中の繰返し単位の割合n及びmは、0<n≦0.5、0<m≦1、かつ、m+n≦1を満たす数である。)
で表される、第1観点乃至第4観点いずれか1つに記載の放射線線量測定にゲル関する。
第6観点として、上記ヒドロゲル(B)が、ゼラチン、アガロース又はジェランガムから選ばれる、第1観点乃至第5観点の何れか1つに記載の放射線線量測定ゲルに関する。
第7観点として、上記ヒドロゲル(B)が、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A1)、ケイ酸塩(B1)、及び前記ケイ酸塩の分散剤(C1)を含む第1観点乃至第5観点の何れか1つに記載の放射線線量測定ゲルに関する。
第8観点として、第1観点乃至第7観点のいずれか1項に記載の放射線線量測定ゲルを、放射線線量の計測材料として備える放射線線量計に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体を使用することにより、放射線線量測定ゲルの作製時に、色素化合物と界面活性剤とのミセル化の工程が必要なく、簡易な工程で容易に放射線線量測定ゲルを提供できる。
また、本発明によれば、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体は、水への溶解性が良好で、ヒドロゲルとの相溶性が高いので、水溶性重合体の分離や沈殿が抑制でき、保存安定性に優れる安定な放射線線量測定ゲルを提供できる。
また、本発明によれば、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体は、低分子量の色素化合物又はそのミセルよりもゲル中への拡散が抑制されるので、本発明によれば、放射線線量計の照射後の解析に長い時間をかけることができる放射線線量測定ゲルを備えた放射線線量計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】x線放射線(30Gy)を照射した実施例1乃至実施例4の放射線線量測定ゲルの吸光度スペクトル測定の結果を示す図である。
図2】実施例1乃至実施例4の放射線線量計の放射線照射量に対する吸光度の増加量を示す図である。
図3】実施例6の線量計ゲルの拡散評価試験方法を表す概略図である。
図4】実施例6の基準試料の調製方法を表す概略図である。
図5】実施例6と比較例1の放射線線量測定ゲル(トリクロロ酢酸含有ゼラチンサンプル)の吸光度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[放射線線量測定ゲル]
本発明の放射線線量測定ゲルの成分として、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)、及びヒドロゲル(B)が挙げられるが、上記成分の他に、本発明の所期の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の成分を任意に配合してもよい。
【0014】
<成分(A):放射線分解生成物により着色する水溶性重合体>
本発明の放射線線量測定ゲルは、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)を含み、これにより、本発明の放射線線量測定ゲルを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計は蛍光ゲル線量計として機能する。
【0015】
放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)は、放射線分解生成物と反応して発色又は変色する構造を主鎖又は側鎖に有する水溶性重合体が挙げられる。特に、放射線分解生成物と反応して発色又は変色する構造を側鎖に有する水溶性重合体が好ましい。
放射線分解生成物としては、ヒドロゲルに放射線を照射することにより生じるものが挙げられ、例えば、ヒドロゲル中の水の放射線分解生成物であるヒドロキシラジカル又はスーパーオキシドラジカル等の活性酸素種が挙げられる。また、放射線分解生成物には、ヒドロゲルに含有されるその他の成分の放射線分解生成物、例えば後述する有機ハロゲン化合物の放射線分解生成物(ハロゲンラジカル)等も含まれる。
水溶性重合体(A)は、放射線の照射により発色又は変色するので、水溶性重合体(A)を含むヒドロゲルは、その発色又は変色により、容易にヒドロゲルへの放射線照射の有無の検出が可能である。
【0016】
放射線分解生成物により発色又は変色する構造としてロイコ化合物由来の基が好ましい。
ロイコ化合物としては、従来公知のロイコ化合物又はその前駆体化合物を使用できる。
例えば、これらに限定されるものではないが、トリフェニルメタンフタリド類、フルオラン類、フェノチアジン類、フェナジン類、インドリルフタリド類、ロイコオーラミン類、スピロピラン類、スピロフタラン類、スピロナフトオキサジン類、ナフトピラン類、ローダミンラクタム類、ローダミンラクトン類、インドリン類、ジフェニルメタン類、トリフェニルメタン類、アザフタリド類、トリアゼン類、クロメノインドール類、キサンテン類、ジアセチレン類、ナフトラクタム類及びアゾメチン類等のロイコ化合物を挙げることができ、例えばトリフェニルメタン類、ジフェニルビフェニルメタン類、ジフェニルナフチルメタン類のロイコ化合物が好ましく、トリフェニルメタン類のロイコ化合物が特に好ましい。
【0017】
ロイコ化合物の具体例としては、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化7】

(式(I)中、Ar及びRは、前記と同じ意味を表し、Aは-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表す。)
【0018】
ロイコ化合物由来の基を側鎖に含む水溶性重合体としては、例えば下記式(A-1)で表される水溶性重合体が挙げられる。
【化8】
【0019】
式(A-1)中、Arは、
【化9】

を表す。
式(A-1)中、Aは、単結合、-COO-、-OCO-もしくは-O-を表す。
式(A-1)中、Aが単結合を表す場合にはpは0であり、Aが単結合、-COO-、-OCO-、-NR-又は-O-を表す場合にはpは1乃至12である。好ましくはpは1乃至6の整数である。
式(A-1)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至30のアルキル基、炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1乃至6のスルホアルキル基、炭素原子数2乃至7のカルボキシアルキル基、炭素原子数2乃至7のシアノアルキル基、炭素原子数2乃至6のアルコキシアルキル基、炭素原子数1乃至6のハロゲノアルキル基、置換基を有する若しくは無置換のフェニル基、又は置換基を有する若しくは無置換のベンジル基を表すか、又はR同士が結合する窒素原子と共に3乃至10員環を形成してもよいことを表す。
式(A-1)中、X及びXは、夫々独立して、
【化10】

(式中、Rは上記と同じ意味を表し、Rは夫々独立に水素原子又はメチル基を表す。)
を表す。
式(A-1)中、Xは、水溶性基を表す。
Qは、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表す。ヘテロ原子で中断されていてもよいとは、上記アルキル基の主鎖又は側鎖に―O-、-S―結合を含むことを言う。
炭素原子数1乃至10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン、1-エチル-n-プロピレン基、シクロペンチレン基、1-メチル-シクロブチレン基、2-メチル-シクロブチレン基、3-メチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、シクロヘキシレン基、1-メチル-シクロペンチレン基、2-メチル-シクロペンチレン基、3-メチル-シクロペンチレン基、1-エチル-シクロブチレン基、2-エチル-シクロブチレン基、3-エチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロブチレン基、1,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,2-ジメチル-シクロブチレン基、2,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,4-ジメチル-シクロブチレン基、3,3-ジメチル-シクロブチレン基、1-n-プロピル-シクロプロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基又はn-デカニレン基が挙げられる。
【0020】
ロイコ化合物由来の基を側鎖に含む水溶性重合体としては、例えば下記式(A-3)で表される水溶性重合体であってもよい。
【化11】

上記式(A-3)中、Ar、A、X、X、X、Q、n、m及びpは、上記と同じ意味を表し、kは1乃至8の整数を表す。
【0021】
また、水溶性重合体(A)を構成する繰返し単位の総数を1としたときに、水溶性重合体(A)を構成する式(A-1)繰返し単位の割合n及びmは、0<n≦0.5、0<m≦1、かつ、m+n≦1を満たす数である。
水溶性重合体(A)のヒドロゲルへの溶解性、あるいは放射線分解生成物の反応性の向上の点から、n及びmは、夫々0<n≦0.4、0<m≦1、かつ、m+n≦1を満たす数であることが好ましく、また0.05<n≦0.3、0<m≦1、かつ、m+n≦1を満たす数であることがより好ましい。
nが0.5を超える数である場合、ヒドロゲルに対する水溶性重合体(A)の相溶性が悪くなり、水溶性重合体中に均一に分散しなかったり、長期保存時に沈殿が生じる等のヒドロゲルの保存安定性が悪くなる可能性がある。
【0022】
上記Rにおける炭素原子数1乃至30のアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも環状でもよく、炭素原子数1乃至6のものが好ましく、炭素原子数1乃至3のものがより好ましい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、シクロへキシル基、2-ヘプチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソアラキル基、イソエイコシル基、イソヘンイコシル基、イソドコシル基、イソトリコシル基、イソテトラコシル基、イソペンタコシル基、イソヘキサコシル基、イソヘプタコシル基、イソオクタコシル基、イソノナコシル基、イソトリアコンチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、1-メチルヘプチル基、1-シクロヘキシルエチル基、1-ヘプチルオクチル基、2-メチルシクロへキシル基、3-メチルシクロへキシル基、4-メチルシクロへキシル基、2,6-ジメチルシクロへキシル基、2,4-ジメチルシクロへキシル基、3,5-ジメチルシクロへキシル基、2,5-ジメチルシクロへキシル基、2,3-ジメチルシクロへキシル基、3,3,5-トリメチルシクロへキシル基、4-tert-ブチルシクロへキシル基、2-エチルヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基等がより好ましい。
【0023】
上記Rにおける炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数1乃至3のものが好ましく、具体的には、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
また、上記Rにおける炭素原子数1乃至6のスルホアルキル基としては、炭素原子数1乃至3のものが好ましく、具体的には、例えば、スルホメチル基、スルホエチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、スルホペンチル基、スルホヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
上記Rにおける炭素原子数2乃至7のカルボキシアルキル基としては、炭素原子数3乃至6のものが好ましく、具体的には、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基等が挙げられ、カルボキシエチル基が好ましい。
また、上記Rにおける炭素原子数2乃至7のシアノアルキル基としては、炭素原子数2乃至4のものが好ましく、具体的には、例えば、シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノブチル基、シアノペンチル基、シアノヘキシル基等が挙げられ、シアノエチル基が好ましい。
【0025】
上記Rにおける炭素原子数2乃至6のアルコキシアルキル基としては、炭素原子数3乃至5のものが好ましく、具体的には、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基等が挙げられる。
また、上記Rにおける炭素原子数1乃至6のハロゲノアルキル基としては、炭素原子数1乃至3のものが好ましく、具体的には、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリヨードメチル基等が挙げられる。
【0026】
上記Rにおける置換基を有するフェニル基またはベンジル基は、ベンゼン環内に1乃至5個、好ましくは1乃至3個の置換基を有する。その置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1乃至6のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;スルホ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プロポキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素原子数1乃至6のアルコキシ基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等の炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、ブトキシエチル基等の炭素原子数2乃至10のアルコキシアルキル基;2-ヒドロキシエトキシ基等の炭素原子数1乃至6のヒドロキシアルコキシ基;2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基等の炭素原子数2乃至10のアルコキシアルコキシ基;2-スルホエチル基等の炭素原子数1乃至6のスルホアルキル基;カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基等の炭素原子数2乃至7のカルボキシアルキル基;シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノブチル基、シアノペンチル基、シアノヘキシル基等の炭素原子数2乃至7のシアノアルキル基等が挙げられる。
【0027】
上記Rにおける、R同士が結合する窒素原子と共に形成する3乃至10員環は、好ましくは3乃至8員環、好ましくは4乃至6員環であり、好ましくは5又は6員環であり、具体的にはアジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環、アゾカン環等が挙げられる。また、形成される環は、上記置換基を有していても良い。
【0028】
上記Rの具体例の中でも、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0029】
上記水溶性基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びアミノ基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を有するアルキル基、又はポリエチレングリコールエステル構造、ポリプロピレングリコールエステル構造、ポリトリメチレングリコールエステル構造及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル構造から選ばれる1種又は2種以上の構造を有する有機基が挙げられ、好ましくは、ポリエチレングリコールエステル構造、ポリプロピレングリコールエステル構造、ポリトリメチレングリコールエステル構造及び/又は炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル構造が挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコールエステル構造及び/又はポリトリメチレングリコールエステル構造が挙げられる。
【0030】
本発明の水溶性重合体(A)は、好ましくは下記式(A-2)で表される。
【化12】

式(A-2)中、Ar、A、p、n及びmは上記と同じ意味を表す。
式(A-2)中、A21は、-O-又は-NR-を表す。
式(A-2)中、rは、1又は2の整数である。
式(A-2)中、qは、1乃至50の整数、好ましくは10乃至50の整数である。
式(A-2)中、Rは、炭素原子数1乃至6のアルキル基を表す。
式(A-2)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。
式(A-2)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。
ここで、炭素原子数1乃至6のアルキル基及び炭素原子数1乃至3のアルキル基の具体例は上述したものと同じである。
式(A-2)中、Qは、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表す。
【0031】
本発明の水溶性重合体は(A)の重量平均分子量は、水溶性重合体は(A)がヒドロゲル中に均一に溶解又は分散できれば特に限定されるものではないが、例えば、5千乃至100万であり、好ましくは1万乃至50万であり、より好ましくは1万乃至10万である。
重量平均分子量が100万を超えると、ヒドロゲルに対する溶解性が低下し、ハンドリング性が悪くなったり、均一に溶解又は分散しなくなるおそれがある。一方、重合平均分子量が5千未満であると、長期保存後に水溶性重合体(A)がヒドロゲル表面に浮き出してきたり、着色した水溶性重合体の拡散を抑制しにくくなるおそれがある。
なお、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0032】
また、本発明の水溶性重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、式(A-1)又は式(A-2)以外に他の繰返し単位を含んでも良い。他の繰り返し単位としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル化合物、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、およびN-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物およびビニル化合物の重合により生じる繰り返し単位である。
他の繰返し単位の含有割合は、本発明の所期の効果を損なわない範囲であればよく、例えば水溶性重合体(A)を構成する繰返し単位の総数を1としたときに、0.2以下であり、好ましくは0.1以下である。
他の繰り返し単位の含有割合が0.2を超えると、水溶性重合体(A)の放射線分解生成物との反応性が低下したり、又はヒドロゲルに対する水溶性重合体(A)の溶解性が低下したりするおそれがある。
【0033】
また、本発明の水溶性重合体(A)は、1種単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0034】
<水溶性重合体(A)の合成>
本発明の水溶性重合体(A)は、例えば、上記ロイコ化合物と、該ロイコ化合物中の基と反応可能な基を有する水溶性重合体とを反応させて製造することができる。
また、例えば、上記ロイコ化合物と、該ロイコ化合物中の基と反応可能な基、水溶性基及び重合性基を有する重合性化合物とを反応させて得られるロイコ化合物由来の基、水溶性基及び重合性基を有する重合性化合物を重合することにより、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体を製造することができる。
また、例えば、上記ロイコ化合物由来の基及び重合性基を有する重合性化合物と、水溶性基及び重合性基を有する重合性化合物とを共重合することにより放射線分解生成物により着色する水溶性重合体を製造することができる。
特に、上記ロイコ化合物由来の基及び重合性基を有する重合性化合物と、水溶性基及び重合性基を有する重合性化合物とを重合することにより得られる放射線分解生成物により着色する水溶性重合体が好ましい。
【0035】
重合性基としては、例えば重合性を有するエチレン性不飽和基を含む基が挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-フェニルアクリル酸、マレイミド由来の基又はα-メチレン-γ-ブチロラクトン由来の基が挙げられ、好ましくはアクリル基又はメタクリル基である。
【0036】
ロイコ化合物と重合性基とは、直接又は連結基を介して結合される。
連結基としては、例えば、-O-、-OCO-、-COO-、-NR-、炭素原子数1乃至21のアルキレン基又はそれらの組み合せ等が挙げられる。
炭素原子数1乃至21のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン、1-エチル-n-プロピレン基、シクロペンチレン基、1-メチル-シクロブチレン基、2-メチル-シクロブチレン基、3-メチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、シクロヘキシレン基、1-メチル-シクロペンチレン基、2-メチル-シクロペンチレン基、3-メチル-シクロペンチレン基、1-エチル-シクロブチレン基、2-エチル-シクロブチレン基、3-エチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロブチレン基、1,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,2-ジメチル-シクロブチレン基、2,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,4-ジメチル-シクロブチレン基、3,3-ジメチル-シクロブチレン基、1-n-プロピル-シクロプロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基又はn-デカニレン基が挙げられる。
【0037】
ロイコ化合物由来の基と重合性基とを有する重合性化合物としては、例えば下記式(a-1)乃至(a-3)で表される重合性化合物が挙げられ、好ましくは下記式(a-1)で表される化合物が挙げられる。
【化13】

式(a-1)中、R、Ar、A、A21、p及びQは上記と同じ意味を表し、R10は、水素原子、メチル基、又はフェニル基を表す。
式(a-2)及び(a-3)中、R、Ar、A、A21、p及びQは上記と同じ意味を表す。
【0038】
式(a-1)で表される重合性化合物は、下記の反応[工程1]及び[工程2]を順に行うとにより製造される。
[工程1]:下記式(I-1)で表される化合物と下記式(I-2)で表される化合物とを反応させて、式(I)で表されるロイコ化合物を合成する。
[工程2]:式(I)で表されるロイコ化合物に式(I-3)で表される化合物を反応させて、式(a-1)で表される重合性化合物を得る。
【0039】
【化14】

(式中、R、Ar、A、A21、A、p、R10及びQは、上記と同じ意味を表す。)
【0040】
上記反応[工程1]は公知の方法で行うことができ、本反応条件としては例えば式(I-1)で表される化合物と式(I-2)で表される化合物とを、溶媒中、酸触媒存在下で通常80乃至150℃、好ましくは100乃至130℃で、通常1乃至24時間、好ましくは5乃至15時間反応させることができる。
上記酸触媒としては、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等が挙げられ、パラトルエンスルホン酸が好ましい。酸触媒の使用量は、式(I-1)で表される化合物のmol数に対して、通常0.1乃至10当量、好ましくは0.5乃至2当量である。
上記溶媒としては、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類等の有機溶媒が挙げられ、中でも、MIBKが好ましい。これらは、それぞれ単独でも、或いは二種以上適宜組み合わせて用いてもよい。反応溶媒の使用量は、式(I-1)で表される化合物と式(I-2)で表される化合物の総重量に対して、通常1乃至20倍、好ましくは1乃至5倍である。
【0041】
式(I-2)で表される化合物の使用量は、式(I-1)で表される化合物のmol数に対して、通常2乃至6当量、好ましくは2乃至4当量である。
【0042】
式(I-1)で表される化合物の具体例としては、2-ホルミル安息香酸、3-ホルミル安息香酸、4-ホルミル安息香酸、2-ホルミルフェノール、3-ホルミルフェノール及び4-ホルミルフェノール等が挙げられる。
【0043】
式(I-2)で表される化合物としては、例えば、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、N-ブチルアニリン、N-ペンチルアニリン、N-ヘキシルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジプロピルアニリン、N,N-ブチルアニリン、N,N-ジペンチルアニリン、N,N-ジヘキシルアニリン、1-フェニルアジリジン、1-フェニルアゼチジン、1-フェニルピロリジン、1-フェニルピペリジン、1-フェニルアゼパン、1-フェニルアゾカン等が挙げられ、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジプロピルアニリンが好ましく、N,N-ジエチルアニリンがより好ましい。
【0044】
上記反応[工程1]において、式(I-2)で表される化合物として基Rの異なる2種の化合物を使用する場合、まず式(I-1)と一方の式(I-2)で表される化合物とを1:1で反応させ、その後得られた反応生成物と他方の式(I-2)で表される化合物とを反応させることができる。この場合の反応条件(反応溶媒、酸触媒、反応温度、反応時間、各使用量)は何れも上述した反応[工程1]と同じ反応条件である。
【0045】
上記反応[工程2]においては、式(I)で表される化合物と式(I-3)で表される化合物を、溶媒中、脱水縮合剤の存在下で通常0乃至80℃、好ましくは10乃至50℃で、通常1乃至24時間、好ましくは3乃至18時間反応させればよい。
溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;例えばアセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2-ヘキサノン、tert-ブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;例えばクロロメタン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;例えばn-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;例えばアセトニトリル等のニトリル類;例えばN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられ、中でも、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、炭化水素類が好ましく、テトラヒドロフラン、トルエン、塩化メチレンがより好ましい。これら溶媒は、それぞれ単独でも、或いは二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
反応溶媒の使用量は、式(I)で表される化合物と式(I-3)で表される化合物の総重量に対して、通常1乃至50倍、好ましくは5乃至10倍である。
【0046】
上記脱水縮合剤としては、通常のエステル合成に使用されるものであれば特に制限はないが、例えば向山試薬(2-クロロ-N-メチルピリジニウムアイオダイド)、DCC(1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩)、CDI(カルボニルジイミダゾール)、ジメチルプロピニルスルホニウムブロマイド、プロパルギルトリフェニルホスホニウムブロマイド、DEPC(シアノ燐酸ジエチル)等を使用できる。
脱水縮合剤の使用量は、式(I)で表されるロイコ化合物に対して1乃至20当量、好ましくは1乃至10当量、好ましくは1乃至5当量である。
上記式(I)で表されるロイコ化合物と一般式(I-3)で表される化合物とを反応させる方法においては、脱水縮合剤の効率を向上させるために、ジメチルアミノピリジン等の触媒を用いてもよい。該触媒の使用量は、一般式(I-3)で表される化合物に対して、0.1乃至10当量である。
【0047】
塩基の添加は必ずしも必要ではないが、塩基を用いる場合、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、イミダゾール、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン等の有機塩基等を式(I-3)で表される化合物に対して1乃至4当量用いることができる。反応が穏和に進行するためにピリジン及び4-(ジメチルアミノ)ピリジンが好ましい。
【0048】
式(I-3)で表される化合物の使用量は、式(I)で表される化合物のmol数に対して、通常1乃至2当量、好ましくは1乃至1.5当量である。
【0049】
式(I-3)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【化15】
【0050】
式(I-3)で表される化合物の代わりに、例えば、下記に挙げる化合物を用いることにより、マレイミド系重合性化合物(a-2)を得ることができる。
【化16】
【0051】

式(I-3)で表される化合物の代わりに、例えば、下記に挙げる化合物を用いることにより、α‐メチレン‐γ‐ブチロラクトン系重合性化合物(a-3)を得ることができる。
【化17】
【0052】
また、水溶性基及び重合性基を有する重合性化合物の水溶性基及び重合性基は、上記の水溶性基及び重合性基である。
水溶性基及び重合性基を有する重合性化合物としては、公知の化合物を使用でき、例えばHO-(CH(CHO)-R(ここで、q、r及びRは上記と同じ意味を表す。)のモノアクリレート、モノメタクリレート又は2-フェニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2,5-ジオキソ-3-ピロリン-3-カルボアミド等が挙げられる。HO-(CH(CHO)-Rのモノアクリレート、モノメタクリレート又は2-フェニルアクリレートが好ましい。
これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0053】
また、本発明の水溶性重合体の合成において、本発明の効果を損なわない限り、その他の重合性化合物を併用することができる。
そのような重合性化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル化合物、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、およびN-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物およびビニル化合物等が挙げられる。
【0054】
上記ロイコ化合物由来の基及び重合性基を有する重合性化合物と、水溶性基及び重合性基を有する重合性化合物との共重合により水溶性重合体(A)を製造する方法としては公知の方法を使用できる。
水溶性重合体(A)を合成する方法としては、特に限定されず、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を採用し得る。これらのうち、特にラジカル重合が好ましく、具体的には、溶媒中、上記重合性化合物を重合開始剤の存在下で加熱し、重合させればよい。
得られた水溶性重合体(A)は、再結晶又は再沈澱等の公知の方法で精製することができ、例えば粉体形態で、または精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いることができる。
【0055】
上記重合開始剤としては、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0056】
上記重合開始剤の使用量は、重合性化合物1molに対して、0.01乃至0.05mol程度が好ましい。
反応温度は、0℃から使用する溶媒の沸点までで適宜設定すればよいが、20乃至100℃程度が好ましい。反応時間は、0.1乃至30時間程度が好ましい。
【0057】
重合反応に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、上記重合反応で一般的に使用されている各種溶媒から適宜選択して用いればよい。具体的には、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、イソペンタノール、t-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン,アニソール等の脂肪族又は芳香族炭化水素類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸類;ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド,アセトニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
水溶性重合体(A)が上記その他の繰返し単位を含む場合、その合成方法としては、上記重合の際に、上記他の繰り返し単位を与える重合性化合物を共存させて重合すればよい。
【0059】
なお、水溶性重合体(A)は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0060】
<成分(B):ヒドロゲル>
ヒドロゲルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のヒドロゲルを使用することができる。
例えば、天然、半合成又は合成のポリマーを含むヒドロゲル、或いは有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A1)、ケイ酸塩(B1)及び該ケイ酸塩の分散剤(C1)を含むヒドロゲルが挙げられる。
なお、前記ヒドロゲルには、前記成分の他に、該ヒドロゲルの所期の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の成分を任意に配合してもよい。
【0061】
天然及び半合成のポリマーとしては、例えば、アガロース、ジェランガム、セルロース等の多糖類、デンプン、トラガカント、アラビアゴム、キサンタンガム、寒天、ゼラチン、アルギン酸およびその塩、例えばアルギン酸ナトリウムおよびその誘導体、低級アルキルセルロース、例えばメチルセルロースまたはエチルセルロース、カルボキシ-またはヒドロキシ-低級-アルキルセルロース、例えばカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース等を挙げることができる。本発明でいうジェランガムは、天然由来でも脱アシル化ジェランガムの何れでもよい。合成のゲル化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸等を挙げることができる。好ましくは、アガロース、ジェランガム、ゼラチンが挙げられる。より好ましくはゼラチンが挙げられる。
【0062】
上記有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A1)としては、例えば、カルボキシル基を有するものとして、ポリ(メタ)アクリル酸塩、カルボキシビニルポリマーの塩、カルボキシメチルセルロースの塩;スルホニル基を有するものとして、ポリスチレンスルホン酸塩;ホスホニル基を有するものとして、ポリビニルホスホン酸塩等が挙げられる。前記塩としては、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。なお、本発明では、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方をいう。
【0063】
また、水溶性有機高分子(A1)は架橋又は共重合されてもよく、完全中和物又は部分中和物のいずれも使用できる。
【0064】
前記水溶性有機高分子(A1)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算で好ましくは100万乃至1000万であり、より好ましくは重量平均分子量200万乃至700万である。
また、市販品で入手できる水溶性有機高分子は、市販品に記載されている重量平均分子量として、好ましくは100万乃至1000万であり、より好ましくは重量平均分子量200万乃至700万である。
【0065】
前記水溶性有機高分子(A1)は、カルボン酸塩構造又はカルボキシアニオン構造を有する水溶性有機高分子化合物であることが好ましく、特に完全中和又は部分中和ポリアクリル酸塩であることが好ましい。具体的には、完全中和又は部分中和ポリアクリル酸ナトリウムが好ましく、特に重量平均分子量200万乃至700万の完全中和又は部分中和された非架橋型高重合ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。
【0066】
前記水溶性有機高分子(A1)の含有量は、ヒドロゲル100質量%中に0.01質量%乃至20質量%、好ましくは0.1質量%乃至10質量%である。
【0067】
ケイ酸塩(B1)は、好ましくは水膨潤性ケイ酸塩粒子である。ケイ酸塩(B1)としては、スメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、及び雲母等が挙げられ、水又は含水溶媒を分散媒としたコロイドを形成するものが好ましい。なお、スメクタイトとは、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのグループ名称である。
ケイ酸塩粒子の一次粒子の形状としては、円盤状、板状、球状、粒状、立方状、針状、棒状、無定形等が挙げられ、直径5nm乃至1000nmの円盤状又は板状のものが好ましい。
ケイ酸塩(B1)の好ましい具体例としては、層状ケイ酸塩が挙げられ、市販品として容易に入手可能な例として、ロックウッド・アディティブズ社製のラポナイト(LAPONITE、ビーワイケイ アディティブス リミテッド社登録商標)XLG(合成ヘクトライト)、XLS(合成ヘクトライト、分散剤としてピロリン酸ナトリウム含有)、XL21(ナトリウム・マグネシウム・フルオロシリケート)、RD(合成ヘクトライト)、RDS(合成ヘクトライト、分散剤として無機ポリリン酸塩含有)、及びS482(合成ヘクトライト、分散剤含有);クニミネ工業株式会社(旧:コープケミカル株式会社)製のルーセンタイト(片倉コープアグリ株式会社登録商標)SWN(合成スメクタイト)及びSWF(合成スメクタイト)、ミクロマイカ(合成雲母)、及びソマシフ(片倉コープアグリ株式会社登録商標、合成雲母);クニミネ工業株式会社製のクニピア(クニミネ工業株式会社登録商標、モンモリロナイト)、スメクトン(クニミネ工業株式会社登録商標)SA(合成サポナイト);株式会社ホージュン製のベンゲル(株式会社ホージュン登録商標、天然ベントナイト精製品)等が挙げられる。
【0068】
前記ケイ酸塩(B1)の含有量は、ヒドロゲル100質量%中に0.01質量%乃至20質量%、好ましくは0.1質量%乃至15質量%である。
また、本発明では、ケイ酸塩(B1)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
ケイ酸塩の分散剤(C1)は、好ましくは水膨潤性ケイ酸塩粒子の分散剤である。
ケイ酸塩の分散剤(C1)として、ケイ酸塩の分散性の向上や、層状ケイ酸塩を層剥離させる目的で使用される分散剤又は解膠剤を使用することができる。
ケイ酸塩の分散剤(C1)としては、例えば、リン酸塩系分散剤として、オルトリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム;ポリカルボン酸塩系分散剤として、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム/マレイン酸ナトリウム共重合体、アクリル酸アンモニウム/マレイン酸アンモニウム共重合体;アルカリとして作用するものとして、水酸化ナトリウム、ヒドロキシルアミン;多価カチオンと反応し不溶性塩又は錯塩を形成するものとして、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム;その他の有機解膠剤として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フミン酸ナトリウム、及びリグニンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0070】
好ましくは、リン酸塩系分散剤、ポリカルボン酸塩系分散剤、その他の有機解膠剤が挙げられる。ここで、ポリカルボン酸塩系分散剤は、重量平均分子量1000乃至2万のものがより好ましい。
【0071】
具体的には、リン酸塩系分散剤としてピロリン酸ナトリウム、ポリカルボン酸塩系分散剤として重量平均分子量1000乃至2万のポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸アンモニウム、その他の有機解膠剤では重量平均分子量200乃至2万のポリエチレングリコール(PEG900等)が好ましい。
【0072】
重量平均分子量1000乃至2万の低重合ポリアクリル酸ナトリウムはケイ酸塩粒子と相互作用して粒子表面にカルボシキアニオン由来の負電荷を生じさせ、電荷の反発によりケイ酸塩を分散させる等の機構により分散剤として作用することが知られている。
【0073】
前記分散剤(C1)の含有量は、ヒドロゲル100質量%中に0.001質量%乃至20質量%、好ましくは0.01質量%乃至10質量%である。
なお、有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A1)、ケイ酸塩(B1)及び該ケイ酸塩の分散剤(C1)を含むヒドロゲルの作製において、上記成分(B1)として分散剤を含有するケイ酸塩を使用する場合は、成分(C1)である分散剤をさらに添加しても、添加しなくてもよい。
【0074】
また、上記ヒドロゲルには、層状ケイ酸塩の層間にインターカレートし、剥離を促進させるものとして、メタノール、エタノール、グリコール等の一価又は多価アルコール、ホルムアミド、ヒドラジン、ジメチルスルホキシド、尿素、アセトアミド、及び酢酸カリウム等を添加することができる。
【0075】
有機酸塩構造又は有機酸アニオン構造を有する水溶性有機高分子(A1)、ケイ酸塩(B1)及び該ケイ酸塩の分散剤(C1)を含むヒドロゲルとしては、ケイ酸塩(粘土鉱物)と水分散剤、ポリアクリル酸塩を含む組成物から形成されるものが好ましい。
【0076】
また、上記水溶性有機高分子(A1)、ケイ酸塩(B1)、及び前記ケイ酸塩の分散剤(C1)の好ましい組合せとしては、ヒドロゲル100質量%中、成分(A1)として重量平均分子量200万乃至700万の完全中和又は部分中和された非架橋型高重合ポリアクリル酸ナトリウム0.1質量%乃至10質量%、成分(B1)として水膨潤性スメクタイト又はサポナイト0.1質量%乃至15質量%、及び成分(C1)としてピロリン酸ナトリウム0.01質量%乃至10質量%、重量平均分子量1000乃至2万のポリアクリル酸塩0.01質量%乃至10質量%、又は重量平均分子量200乃至2万のポリエチレングリコール0.01質量%乃至10質量%である。
【0077】
本発明の放射線線量測定ゲルにおいて、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)、及びヒドロゲル(B)の好ましい組合せとしては、放射線線量測定ゲル100質量%中、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)0.1質量%乃至3.0質量%、好ましくは0.2質量%乃至2.0質量%、及び放射線線量測定ゲル100質量%中、成分(B)としてゼラチン0.1質量%乃至10質量%の組合せが挙げられる。
上記放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)中に存在する放射線分解生成物により着色する置換基の濃度は、ゲル中に0.1mM乃至5.0mM存在することが好ましい。置換基の濃度が0.1mMより低い場合、放射線に対する感度が不十分になる可能性がある。
【0078】
また、本発明の放射線線量測定ゲルにおいて、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)、ケイ酸塩の分散剤(B)、水溶性有機高分子(A1)及びケイ酸塩(B1)及びケイ酸塩の分散剤(C1)の好ましい組合せとしては、放射線線量測定ゲル100質量%中、放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)0.1質量%乃至1.0質量%、好ましくは0.1質量%乃至0.5質量%、、放射線線量測定ゲル100質量%中、成分(A1)として重量平均分子量250万以上500万以下の完全中和又は部分中和の直鎖型ポリアクリル酸ナトリウム0.03質量%乃至10質量%、成分(B1)として水膨潤性スメクタイト又はサポナイト0.1質量%乃至10質量%、及び成分(C1)としてピロリン酸ナトリウム0.01質量%乃至10質量%、又は重量平均分子量1000以上2万以下の低重合ポリアクリル酸ナトリウム0.01質量%乃至10質量%の組合せが挙げられる。
【0079】
上記ヒドロゲル(B)は1種又は2種以上の組み合わせであってもよいが、1種類からなることが好ましい。
【0080】
上記放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)中に存在する放射線分解生成物により着色する置換基の濃度は、ゲル中に0.1mM乃至0.5mM存在することが好ましい。置換基の濃度が0.1mMより低い場合、放射線に対する感度が不十分になる可能性がある。
【0081】
また、本発明の放射線線量測定ゲルは、放射線に対する感度を向上させるために、有機ハロゲン化合物を含有することができる。
有機ハロゲン化合物としては、原則的には、従来公知のものを何れも用いることができ、特に限定されるものではないが、特に、放射線の照射によりハロゲンラジカルを放出しやすい構造の有機ハロゲン化合物を使用することが好ましい。
【0082】
このような化合物の一例を挙げると、四塩化炭素、テトラブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロルメタン、ジブロモメタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,2,3-トリクロロプロパン、1,2,3-トリブロモプロパン、1,1,1-トリクロロエタン、1,3-ジブロモブタン、1,4-ジブロモブタン、1,2-ジクロロエタン、n-オクチルクロライド、イソプロピルブロマイド、パークレン、トリクレン、1,2,3,4-テトラクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、o-ジブロモベンゼン、p-ジクロロベンゼン、p-ジブロモベンゼン、モノクロロベンゼン、モノブロモベンゼン、モノヨードベンゼン、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、α-ブロモイソ酪酸エチル、フェニルトリフルオロメタン、1,1,3-トリヒドロテトラフルオロプロパノール、4,4′-ジクロロジフェニル-2,2-プロパン、o-クロロアニリン、p-クロロアセトフェノン、o-クロロ安息香酸、3,4-ジクロロトルエン、o-クロロニトロベンゼン、p-クロロベンゾトリクロライド、ベンゾトリフルオライド、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン、N-ブロモスクシンイミド、α,α,α-トリブロモメチルフェニルスルホン、2′,2′-ビス(2-クロロフェニル)-4,4′,5,5′-テトラフェニル-1,1′-ビ-1H-イミダゾール、抱水クロラール等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、トリクロロ酢酸又はトリブロモ酢酸が挙げられる。
【0083】
有機ハロゲン化物の配合量は、放射線線量測定ゲル全体を100質量部とした場合、0.1質量部乃至1.0質量部の範囲で用いることができる。
有機ハロゲン化合物は放射線の照射により分解しハロゲンラジカルを生成することができるので、放射線線量測定ゲルの感度を向上させることができる。
【0084】
また、本発明の放射線線量測定ゲルは、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のpH調節剤を含むことができる。pH調節剤としては、例えばグルコノ-δ-ラクトン、過塩素酸、硫酸及び食塩等のpH調整剤が挙げられる。
また、本発明の放射線線量測定ゲルは放射線照射後の残存モノマーによる重合を抑制するために公知の重合禁止剤や紫外線吸収剤などを含んでもよい。
【0085】
[放射線線量測定ゲルの製造方法]
本発明の放射線線量測定ゲルの製造方法は特に限定されるものではないが、成分(A)及び成分(B)を混合することによってゲル化させる方法、又は成分(A)、成分(A1)、成分(B1)及び成分(C1)のうちの少なくとも2種の成分の混合物若しくはその水溶液又は含水溶液と、残りの成分若しくは残りの成分の混合物又はその水溶液若しくは含水溶液とを混合することによってゲル化させる方法等が挙げられる。
必要に応じて、成分(A)をトリクロロ酢酸等の酸類と反応させて塩形態にし、その他の成分と混合することもできる。
【0086】
各成分を混合する方法としては、機械式又は手動による撹拌の他、超音波処理を用いることができるが、特に機械式撹拌が好ましい。機械式撹拌には、例えば、マグネチックスターラー、プロペラ式撹拌機、自転・公転式ミキサー、ディスパー、ホモジナイザー、振とう機、ボルテックスミキサー、ボールミル、ニーダー、超音波発振器等を使用することができる。その中でも、好ましくは自転・公転式ミキサーによる混合である。
【0087】
混合する際の温度は、水溶液又は水分散液の凝固点乃至沸点、好ましくは-5℃乃至50℃である。
【0088】
混合直後は強度が弱くゾル状であるが、静置することでゲル化する。静置時間は2時間乃至100時間が好ましい。静置温度は-5℃乃至100℃であり、好ましくは0℃乃至30℃である。また、混合直後のゲル化する前に型に流し込んだり、押出成型したりすることにより、任意形状の放射線線量測定ゲルを作製することができる。
また、放射線線量測定能を失わない範囲で、ゾル状のままでも使用できる。
【0089】
<放射線線量計>
本発明の放射線線量測定ゲルは放射線線量の計測材料に適するため、当該放射線線量測定ゲルを容器に充填して放射線線量計、例えばファントムとすることができる。容器は放射線を透過し、耐溶剤性及び気密性等を有していれば特に限定されず、その材質はガラス、アクリル樹脂、ポリエステル及びエチレン-ビニルアルコール共重合体等が好ましい。また、容器に充填した後、窒素ガス等で置換してもよい。
【実施例
【0090】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
実施例において、試料の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
(1)H-NMR
化合物を重水素化クロロホルム(CDCl)に溶解し、核磁気共鳴装置(300MHz、ジオール社製)を用いてH-NMRを測定した。
(2)平均分子量測定
GPC装置((株)島津製作所製、カラム:KF804L及びKF803L、溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流量:1ml、検量線:標準ポリスチレン)を用いて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。
(3)X線照射
装置:工業用X線装置(ラジオフレックス250CG、リガク)
照射条件:250kVp,4mA,1mmアルミフィルターであり、線量率は1.0Gy/分である。18cmΦの円周上にサンプルを配置して照射した。
(4)光吸収スペクトル測定
装置:Agilent 8453 UV-Visible Spectroscopy
System(アジレントテクノロジー(株)製)
(5)拡散の評価/比較実験
装置:UV-3600 UV-VIS-NIR Spectrophotometer((株)島津製作所製)
【0092】
合成例1
化合物(3)の合成
【化18】

国際公開第2016/002842号パンフレットに記載の方法に準じて合成した。
ディーン・スターク管、及び冷却管付き200mlナスフラスコに、メチルイソブチルケトン(MIBK)60ml、4-ホルミル安息香酸5.0g(33mmol)、N,N-ジエチルアニリン16.1g(133mmol)及びp-トルエンスルホン酸・一水和物(p-TSA)6.3g(33mmol)を加えて混合物とし、温度129℃で20時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、ジクロロメタン150mlを加えて、純水にて2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、緑色液体を得た。
この液体をシリカカラムクロマトグラフィー(カラム:シリカゲル60 0.063-0.200mmメルク社製、溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製した。ここで得られた溶液の溶媒を留去して、目的の化合物(3)8.9g(収率63%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ:1.15 (t, 12H), 3.33 (q, 8H), 5.38 (s, 1H), 6.60 (m, 4H), 6.95 (m,4H), 7.25 (m, 2H), 7.98 (m, 2H).
【0093】
化合物(4)の合成
【化19】

国際公開第2016/002842号パンフレットに記載の方法に準じて合成した。
化合物(3)1.6g(3.7mmol)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)0.49g(3.7mmol)、及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)0.14gを室温にて攪拌下、塩化メチレン16mlに懸濁させ、それに1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)0.78g(4.1mmol)を溶解させた溶液を加えて48時間攪拌した。反応後、純水150mlにて2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、黄色液体を得た。この液体をシリカカラムクロマトグラフィー(カラム:シリカゲル60 0.063-0.200mmメルク社製、溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製した。ここで得られた溶液の溶媒を留去して、目的の重合性化合物(4)1.9g(収率95%)を得た。
1H NMR (CDCl3) δ:1.13 (t, 12H),1.95(s, 3H), 3.32 (q, 8H), 4.46(m, 2H), 4.54(m, 2H), 5.37 (s, 1H), 5.59 (m, 1H), 6.14 (m, 1H), 6.60 (m, 4H), 6.95 (m, 4H), 7.25(m, 2H), 7.94 (m, 2H).
【0094】
重合体(1)の合成
【化20】

冷却管を備えたフラスコに、合成例1で得られた重合性化合物(4)0.7g(1.3mmol)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(Mn950)4.5g(4.7mmol)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)12g及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、75℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を300mLのヘキサンに投入し、白色粉末を沈殿した。この粉末をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ヘキサンに添加することにより再沈殿を行った後、デカンテーションにより得られた粉末を真空乾燥し、重合体(1)3.7g(収率71%)を得た。
得られた重合体(1)のMnは31857、Mwは48080であった(Mw/Mn=1.5)。
【0095】
[実施例1:放射線線量測定ゲルを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計(色素ゲル線量計)の製造]
合成例1で得られた重合体(1)0.06gを水10.0gに加え、室温で10分間撹拌後、トリクロロ酢酸(TCAA、東京化成工業株式会社製)0.06gを加え、室温で2分間撹拌した。
一方、ゼラチン(Gelatin from porcine skin, Sigma-Aldrich)1.2gを水18.7gに加え45℃で攪拌した。得られたゼラチン溶液に30℃で重合体(1)/TCAAの溶液を加え、攪拌した。得られた混合物を1×1×4.5cmキュベットに充填後12時間冷暗所で静置し、照射試験用の放射線線量計を得た。
【0096】
[実施例2:放射線線量測定ゲルを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計(色素ゲル線量計)の製造]
合成例1で得られた重合体(1)0.12gを水10.0gに加え、室温で10分間撹拌後、トリクロロ酢酸(東京化成工業株式会社製)0.06gを加え、室温で2分間撹拌した。
一方、ゼラチン(Gelatin from porcine skin, Sigma-Aldrich)1.2gを水18.6gに加え45℃で攪拌した。得られたゼラチン溶液に30℃で重合体(1)/TCAAの溶液を加え、攪拌した。得られた混合物を1×1×4.5cmキュベットに充填後12時間冷暗所で静置し、照射試験用の放射線線量計を得た。
【0097】
[実施例3:放射線線量測定ゲルを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計(色素ゲル線量計)の製造]
合成例1で得られた重合体(1)0.06gを水10.0gに加え、室温で10分間撹拌後、トリクロロ酢酸(東京化成工業株式会社製)0.12gを加え、室温で2分間撹拌した。
一方、ゼラチン(Gelatin from porcine skin, Sigma-Aldrich)1.2gを水18.7gに加え45℃で攪拌した。得られたゼラチン溶液に30℃でポリマー(1)/TCAAの溶液を加え、攪拌した。得られた混合物を1×1×4.5cmキュベットに充填後12時間冷暗所で静置し、照射試験用の放射線線量計を得た。
【0098】
[実施例4:放射線線量測定ゲルを放射線線量の計測材料として備える放射線線量計(色素ゲル線量計)の製造]
合成例1で得られた重合体(1)0.12gを水10.0gに加え、室温で10分間撹拌後、トリクロロ酢酸(東京化成工業株式会社製)0.12gを加え、室温で2分間撹拌した。
一方、ゼラチン(Gelatin from porcine skin, Sigma-Aldrich)1.2gを水18.6gに加え45℃で攪拌した。得られたゼラチン溶液に30℃で重合体(1)/TCAAの溶液を加え、攪拌した。得られた混合物を1×1×4.5cmキュベットに充填後12時間冷暗所で静置し、照射試験用の放射線線量計を得た。
【0099】
[実施例5:製造された放射線線量計(色素ゲル線量計)の照射試験]
ラジオフレックス 250CG(理化学電気株式会社)を用いてX線(250kV,4mA)を1Gy/分で3、5、10、20、30、及び40Gyを実施例1で製造した照射試験用の放射線線量計に照射し光吸収スペクトルを用いた着色(薄い緑色)を確認した。照射量が大きくなるにつれ、緑色の着色が徐々に濃くなることが観察できた。
同様に、実施例1乃至実施例4の放射線線量測定ゲルへ0乃至40Gyのx線放射線を用いた照射を行い、照射した放射線線量測定ゲルの吸光度スペクトル測定を行った。
x線放射線(30Gy)を照射した実施例1乃至実施例4の放射線線量測定ゲルの吸光スペクトル測定の結果を図1に示す。図1より、トリクロロ酢酸の添加量の多い実施例3及び実施例4の放射線線量測定ゲルは、トリクロロ酢酸の添加量の少ない実施例1及び実施例2の放射線線量測定ゲルよりも、放射線線量計の感度の向上が得られることが確認できた。
また、吸光度スペクトルの最大波長(約650nm)の吸光度について、照射量依存性(放射線照射量に対する吸光度の増加量)の結果を図2に示す。図2より、放射線照射量に対する吸光度の増加量は、線形線量応答性を示すことが明らかになった。したがって、本発明の放射線線量測定ゲルは、吸光度を測定可能な装置に使用でき、放射線線量計として使用することができることが確認された。
【0100】
[実施例6:反応済の放射線線量測定ゲルの拡散評価試験]
合成例1で得られた重合体(1)0.12gを水10.0gに加え、室温で10分間撹拌後、トリクロロ酢酸(東京化成工業株式会社製)0.12gを加え、室温で2分間撹拌した。
一方、ゼラチン(Gelatin from porcine skin, Sigma-Aldrich)1.2gを水18.6gに加え45℃で攪拌した。得られたゼラチン溶液に30℃で重合体(1)/TCAAの溶液を加え、攪拌した。得られた混合物をを用いて放射線線量測定ゲルの拡散評価試験を行った。
トリクロロ酢酸0.12g、ゼラチン(Gelatin from porcine skin, Sigma-Aldrich)1.20g、及び水28.7gから得られたトリクロロ酢酸含有ゼラチンサンプルを1×1×4.5cmのキュベットに2.5cmまで充填した。キュベットの上部に、Handy UV Lamp SLUV-4(365nm、AS ONE製)を用いて紫外線を照射した実施例4の放射線線量測定ゲル1.0gを、ゲルの状態で充填した。このキュベットのトリクロロ酢酸含有ゼラチンサンプルの吸収スペクトル(400乃至800nm)を測定することにより、放射線線量計ゲルからゼラチンに拡散する色素の評価を行った(図3参照)。
一方、実施例及び比較例の拡散比較するための基準試料として、1×1×4.5cmキュベットにトリクロロ酢酸含有ゼラチンサンプルを2.5cmまで充填し、その上部に、Handy UV Lamp SLUV-4を用いて紫外線を照射した実施例4の放射線線量測定ゲル1.0gを、ゲルの状態で充填したたものを、加熱溶融して均一化したものを調製した(図4参照)。
基準試料の吸収度を基準(100%)として、各放射線線量測定ゲルのトリクロロ酢酸含有ゼラチンサンプルへの拡散速度を評価した。
【0101】
[比較例1:反応済みのミセル線量計ゲルの拡散評価試験]
ロイコクリスタルバイオレット(LCV)0.014gを水10.0gに加え、室温で10分間撹拌後、トリクロロ酢酸(東京化成工業株式会社製)0.15g、及びポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(東京化成工業株式会社製)0.26gを加え、室温で2分間撹拌し、LCV/TCAA/ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテルの溶液を得た。
一方、ゼラチン(Gelatin from porcine skin, Sigma-Aldrich)1.50gを水15.44gに加え45℃で攪拌した。得られたゼラチン溶液に30℃でLCV/TCAA/ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテルの溶液を加え、攪拌した。得られた混合物を50ml用のガラスバイアルに充填後12時間冷暗所で静置し、拡散評価試験用の放射線線量測定ゲルを得た。
この放射線線量測定ゲルを[実施例6]と同じ方法で拡散評価実験を行った。
【0102】
実施例6及び比較例1の放射線線量測定ゲルについて、試料作成した0日後(当日)、1日後、2日後、3日後、6日後、8日後、10日後及び14日後のトリクロロ酢酸含有ゼラチンサンプル部分の吸光度測定行い、最大吸収波長(実施例6:約650nm、比較例1:約600nm)値を読み取り、基準試料の吸収度(100%)に対する相対的な吸光度の増加量の経時変化をプロットしたグラフを図5に示す。
図5より、実施例6及び比較例1は共に直線的な相対的な吸光度の増加が観察されたが、本発明の放射線分解生成物により着色する水溶性重合体(A)を含む放射線線量測定ゲルの方が、ロイコ化合物(ロイコクリスタルバイオレット)を含むゲルよりも拡散速度が抑制されていることが確認できた。
よって、本発明の放射線線量計ゲルは、放射線線量計の計測材料として使用できることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5