(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】保湿ペーパーの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
A47K10/16 D
(21)【出願番号】P 2022054504
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-10-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510152585
【氏名又は名称】比奈鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特許第4792131(JP,B1)
【文献】特表2007-533763(JP,A)
【文献】特開2021-050426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙工程で製造された原紙に保湿剤を含む薬液を塗工する保湿ペーパーの製造装置において、
円筒状のロールの表面に凸部が規則的に設けられ、該凸部の
頂部表面には
一定の容積を有する小さなセルが無数に彫刻され
て有する、ポイントエンボスロールと、
前記薬液を前記ポイントエンボスロールに転写する転写ロールと、を備え、
前記頂部表面に前記薬液を転写・含浸された前記ポイントエンボスロール
の前記凸部が前記原紙に押しつけられ、前記薬液が前記原紙に塗工されること、
を特徴とする保湿ペーパーの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保湿ペーパーの製造装置において、
前記ポイントエンボスロールは、第1ロールと第2ロールを含み、
前記第1ロールと前記第2ロールが対となって向かい合わせに配置され、前記第1ロールの前記凸部と前記第2ロールの前記凸部とが相対するように噛み合って前記原紙に押しつけられ、前記薬液が前記原紙に塗工されること、
を特徴とする保湿ペーパーの製造装置。
【請求項3】
抄紙工程で製造された原紙に保湿剤を含む薬液を塗工工程にて塗工する保湿ペーパーの製造方法において、
表面に規則的に凸部が設けられ
、該凸部の頂部表面に一定の容積を有する小さなセルが無数に彫刻されたポイントエンボスロールの、
前記凸部
の前記頂部表面に転写ロールを用いて前記薬液を転写し、
前記ポイントエンボスロールの前記凸部を前記原紙に押しつけることで、前記薬液を塗工すること、
を特徴とする保湿ペーパーの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の保湿ペーパーの製造方法において、
前記ポイントエンボスロールは、第1ロールと第2ロールを含み、
前記第1ロールと前記第2ロールが対となって向かい合わせに配置され、前記第1ロールの前記凸部と前記第2ロールの前記凸部とが相対するように噛み合って前記原紙に押しつけられ、前記薬液が前記原紙に塗工されること、
を特徴とする保湿ペーパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿ペーパーの製造方法であって、保湿ペーパーの原紙に液体を塗布する量を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肌触りを向上させる目的で、保湿性を高める薬液を塗布した高機能なティシューペーパー(ティッシュペーパー)が開発されている。これは、例えば花粉症などのアレルギー体質のユーザーが高頻度でティシューペーパーを使用した場合にも、皮膚への刺激を抑えて肌荒れを抑える効果が期待出来るものであり、この他にも多種多様な肌触りの向上やしっとり感を感じることを目的とした商品が提供されている。こうした、高機能なティシューペーパーの販売が増えると共に、その製造方法についても様々な提案がなされるようになっている。
【0003】
特許文献1に、ローションティシューペーパーに関する技術が示されている。パルプを主成分とするシートを1枚又は2枚以上重ねてなり、1枚のシートの坪量が17.0~20.0g/m2、紙厚が0.78~0.95mm/10枚である、薬液が塗布されたローションティシューペーパーの、JIS P8113に基づく乾燥時の引張強さDMDTと、乾燥時の横方向の引張強さの積の平方根である(DMDT×DCDT)1/2で表されるDGMTが1.0~1.9N/25mmである。この技術によって、ローションティシューペーパーの柔らかさとボリューム感を確保すると共に、シワを抑制して創業性を向上させることが可能となる。
【0004】
特許文献2に、保湿ティシューペーパーの製造方法に関する技術が示されている。抄紙工程で製造された原紙に保湿剤を塗布し(塗布工程)、保湿剤が塗布された保湿原紙の保湿剤を馴染ませ(エージング工程)、エージングを行った保湿原紙を所望の幅に切断し折り畳んで保湿ティシューペーパーとする(製品化工程)製造方法で、原紙の表面を、ハンドフィール値を参考に管理している。この技術によって、保湿ティシューペーパーのしっとり感を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-60982号公報
【文献】特開2021-106786号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の方法で保湿ティシューペーパーの製造を行った場合に、以下のような問題があると考えられる。
【0007】
特許文献1及び特許文献2の方法では、原紙に塗布する薬液は、薬液タンクからアニロックスロールに薬液を供給し、更にアニロックスロールからラバーロールに薬液を転写させ、ラバーロールを原紙に接触させて薬液塗布を行っている。こういった薬液塗布方法は、アニロックスロールの表面に彫り込まれたセルの大きさや密度を変化させることで薬液の塗布量を調整することができると考えられるが、塗布された薬液は原紙全体に広がるため、その湿り気によって原紙の強度を低下させると考えられる。
【0008】
そうすると、使用者がティシューペーパーを使う時に破れ易いといった問題が出てきてしまう。この問題に対しては紙厚を増やしたり密度を増やしたり紙の品質を高めたりすることで解決することが考えられるが、それに比例してコストが高くなるという問題を生ずる。また、薬液に比較的高価なものを用いることが多いため、厚手の原紙を用いるとより多量の薬液を使用する必要が生じてコストは更に高くなる。したがって、用いる薬液の量を節約したいというニーズがある。
【0009】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、薬液の塗布量を節約可能な保湿ペーパーの製造方法及び製造装置、及びそれを用いた保湿ペーパーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による保湿ペーパーの製造装置は、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)抄紙工程で製造された原紙に保湿剤を含む薬液を塗工する保湿ペーパーの製造装置において、
円筒状のロールの表面に凸部が規則的に設けられ、該凸部の先端にはアニロックスレーザー彫刻が施されたポイントエンボスロールと、
前記薬液を前記ポイントエンボスロールに転写する転写ロールと、を備え、
前記ポイントエンボスロールが前記原紙に押しつけられ、前記薬液が前記原紙に塗工されること、
を特徴とする。
【0012】
上記(1)に記載の態様によって、原紙に対する薬液の塗布量を減らし、塗工後の保湿ペーパーの強度を必要以上に低下させないので、使用者が保湿ペーパーを使うときに破れにくく、利便性を高めることに貢献する。これは、ポイントエンボスロールを用いて薬液を原紙に塗工するためであり、ポイントエンボスロールの表面に設けられた凸部の先端に薬液を転写し、原紙に塗工する構成を採用している。ポイントエンボスロールの表面に設けられた凸部は、ポイントエンボスロールの外周面に規則的に配置されているため、原紙には薬液が塗工される部分と塗工されない部分が特定のパターンで形成される。
【0013】
具体的には、例えば水玉模様のような塗工部分が原紙の上に形成されて、塗工されていない部分は強度低下が生じないため、結果的に破れにくい保湿ペーパーの提供ができる。この保湿ペーパーが保湿ティシューペーパーである場合には、使用者にとっては肌に触れる部分に薬液が付着していれば、従来の全面に薬液が塗工されているものと比べても使用感はさほど変わらない。したがって、結果的に塗工する薬液の量を減らしながら、使用者の触感を損なわない保湿ペーパーの提供が可能となり、コスト削減にも貢献できる。また、破れにくい保湿ペーパーの提供が実現できる。
【0014】
(2)(1)に記載の保湿ペーパーの製造装置において、
前記ポイントエンボスロールは、第1ロールと第2ロールの一対が向かい合わせに配置され、前記第1ロールの前記凸部と前記第2ロールの前記凸部とが相対するように噛み合って前記原紙に押しつけられ、前記薬液が前記原紙に塗工されること、
が好ましい。
【0015】
上記(2)に記載の態様によって、保湿ペーパーに薬液を塗工するにあたって、保湿ペーパーの外側(表面と裏面)に薬液を塗布することとなるため、例えばダブルのティシューペーパーであれば外側のみに薬液塗工を行うことになる。したがって、本来薬液が塗工されている必要のない裏側への薬液塗工を行わないことで、使用する薬液の量を減らすことができ、コストダウンに貢献することができる。一方、使用者はダブルのティシューペーパーの内側に触ることはないため、使用感には影響が出ない。
【0016】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による保湿ペーパーの製造方法は、以下のような特徴を有する。
【0017】
(3)抄紙工程で製造された原紙に保湿剤を含む薬液を塗工工程にて塗工する保湿ペーパーの製造方法において、
表面に規則的に凸部が設けられたポイントエンボスロールの、該凸部に転写ロールを用いて薬液を転写し、
前記ポイントエンボスロールの前記凸部を前記原紙に押しつけることで、前記薬液を塗工すること、
を特徴とする。
【0018】
上記(3)に記載の態様によれば、(1)に記載の保湿ペーパーの製造装置と同様に、ポイントエンボスロールを用いて原紙に薬液を塗工することで、破れにくい保湿ペーパーの提供ができる。また、塗工する薬液の量を減らすことが可能となり、コスト削減に貢献することが可能である。
【0019】
(4)(3)に記載の保湿ペーパーの製造方法において、
前記ポイントエンボスロールは、第1ロールと第2ロールを含み、
前記第1ロールと前記第2ロールが対となって向かい合わせに配置され、前記第1ロールの前記凸部と前記第2ロールの前記凸部とが相対するように噛み合って前記原紙に押しつけられ、前記薬液が前記原紙に塗工されること、
が好ましい。
【0020】
上記(4)に記載の態様によれば、(2)に記載の保湿ペーパーの製造装置と同様に、本来薬液が塗工されている必要のない裏側への薬液塗工を行わないことで、使用する薬液の量を減らすことができ、コストダウンに貢献することができる。
【0021】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による保湿ペーパーは、以下のような特徴を有する。
【0022】
(5)原紙に対して薬液が塗工されて湿感を有する保湿ペーパーにおいて、
前記薬液を塗工する塗工工程で、
先端にアニロックスレーザー彫刻が施された凸部を、その表面に規則的に配列されて有するポイントエンボスロールと、
前記薬液を供給する転写ロールと、が用いられ、
前記ポイントエンボスロールの前記凸部が、その先端に前記薬液を保持した状態で、前記原紙に押しつけられることで、前記原紙に前記薬液が塗工された、規則的に配列される塗工済部と、該塗工済部に挟まれて配列される未塗工部よりなる模様がその表面に形成されていること、
を特徴とする。
【0023】
上記(5)に記載の態様によれば、(1)又は(2)記載の製造装置、或いは(3)又は(4)に記載の製造方法によって製造される保湿ペーパーと同様に、破れにくい保湿ペーパーの提供ができる。また、塗工する薬液の量を減らすことが可能となり、コスト削減に貢献することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】第1実施形態の、塗工機の一部を拡大した模式図である。
【
図3】第1実施形態の、塗工機構部の部分拡大図である。
【
図4】第1実施形態の、ポイントエンボスロールの斜視図である。
【
図6】第1実施形態の、保湿ペーパーの平面図である。
【
図7】第2実施形態の、ポイントエンボスロールの斜視図である。
【
図9】第2実施形態の、保湿ペーパーの平面図である。
【
図10】第3実施形態の、製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1には、第1実施形態の、製造装置100の模式図を示している。製造装置100は、巻出機110、エッジエンボッサー120、塗工機130、及び織機140の4つの機械で構成されており、図示しない抄紙工程で製造された原紙Sを巻き出して、薬液を塗工し、所定の幅にカットした保湿ペーパーPを折り畳む機能を備えている。
【0026】
各構成について簡単に説明する。まず巻出機110だが、原反ロール10から原紙Sを巻き出している。原反ロール10は巻出機110の2箇所に配置される。第1実施形態では、保湿ティシューペーパーPをダブルとするため、原反ロール10は2プライのものを採用している。次にエッジエンボッサー120では、重ねられて2プライとなっている原紙Sがズレないように紙送り方向と平行にエンボス加工を施している。そして塗工機130では、後述する手順で原紙Sに対して薬液を塗工する。最後に織機140では、保湿ティシューペーパーPを交互に折り畳むようにして箱詰めを行う。なお、原反ロール10には厚さ40μm程度のティシューペーパー原紙が巻かれているものとしているが、厚みは適宜変更することを妨げない。
【0027】
本発明では、この製造装置100のうち塗工機130に特徴があるため、次に、塗工機130の構成について説明する。
【0028】
図2に、塗工機130の一部を、模式図を用いて説明する。原紙Sは、エッジエンボッサー120を通過して塗工機130へと搬送され、塗工機130に備える第1ポイントエンボスロール31と第2エンボスロール32の間を通過することで薬液が塗工される。ここでは便宜上、第1ポイントエンボスロール31及び第2ポイントエンボスロール32と呼び分けているが、以下、特に指示無くポイントエンボスロール30と表記した場合には、第1ポイントエンボスロール31又は第2ポイントエンボスロール32の何れか、若しくは両方のことを指すものとする。
【0029】
ポイントエンボスロール30には、それぞれ薬液転写ロール33が接するように配置される。薬液転写ロール33にはアニロックスロール35が接するように配置される。薬液は図示しないチャンバーから供給されてアニロックスロール35を介して薬液転写ロール33に転写され、ポイントエンボスロール30に供給される。ここで用いられる薬液は、グリセリンを主剤とした保湿剤を想定しているが、これに限定されるものではない。
【0030】
アニロックスロール35の表面には、レーザー彫刻機などを用いて一定の容積を持たせた小さなセルが無数に彫刻されており、図示しないチャンバーから供給される薬液をこのセルの内部に蓄える。この時に図示しないドクターブレードによって表面を掻き取られることで、定量の薬液を薬液転写ロール33の表面に供給することができる。薬液転写ロール33は表面が樹脂製のローラーであり、ポイントエンボスロール30に対して薬液を供給する。
【0031】
巻出機110から巻き出される原紙Sは、エッジエンボッサー120を通過して第1ポイントエンボスロール31と第2ポイントエンボスロール32の間を通すことで薬液が塗工される。そして、織機140に送られる。そして、塗工機130には、入り側の原紙Sの支える第1フリーローラー131と出側の原紙Sを支える第2フリーローラー132が備えられ、原反ロール10から引き出された原紙Sのテンションを維持している。
【0032】
図3に、塗工機構部の部分拡大図を示す。
図4に、ポイントエンボスロール30の斜視図を示す。
図5に、ポイントエンボスロール30の表面の拡大図を示す。ポイントエンボスロール30は、
図4に示すようにその表面に等間隔(市松模様)に設けられるポイント310と凹部320が設けられている。凹部320はポイント310よりも一段低い位置、つまり凹部320が切削されて設けられている。
【0033】
ポイント310の頂部は1辺が1mm程度の大きさとされており、頂部表面には硬質クロムメッキ及びセラミック溶射等の表面処理を施した後にレーザー彫刻によって一定の容量を持たせた小さなセルが無数に設けられている。このポイント310の頂部が薬液転写ロール33の表面に触れることで、ポイント310の頂部に設けられたセルに所定量の薬液が転写・含浸され、このポイント310の頂部が原紙Sに当接することよって原紙Sの表面に薬液を塗工することができる。
【0034】
また、ポイントエンボスロール30のポイント310は第1ポイントエンボスロール31と第2ポイントエンボスロール32にそれぞれ同様に形成されて、噛み合うような位置調整が行われ配置されている。つまり、
図3に示すようにポイント310の頂部同士が原紙Sを介して当接(噛み合う)する構成となっている。したがって、ポイント310と溝320の高さの差は、第1ポイントエンボスロール31と第2ポイントエンボスロール32とが向き合った時に、原紙Sと距離があり触れない程度の段差として形成されている。このような構成は、第1塗工機構部130Aと第2塗工機構部130Bの2箇所に並列に、塗工機130に設けられている。
【0035】
第1実施形態の製造装置100は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0036】
まず、第1実施形態の製造装置100を用いることで、薬液の塗布量を抑制することが可能となる。これは、抄紙工程で製造された原紙Sに保湿剤を含む薬液を塗工する保湿ティシューペーパーPの製造装置100において、円筒状のロールの表面に凸部(ポイント310)が規則的に設けられ、ポイント310の先端にはアニロックスレーザー彫刻が施されたポイントエンボスロール30と、薬液を前記ポイントエンボスロール30に転写する薬液転写ロール33と、を備え、ポイントエンボスロール30が原紙Sに押しつけられ、薬液が原紙Sに塗工される構成となっているためである。
【0037】
図6に、保湿ティシューペーパーPの平面図を示す。上記構成であることで、原紙Sに対して
図4に示すようにポイントエンボスロール30の表面にポイント310が設けられ、その頂部に薬液が保持されて原紙Sの表面に塗工される。つまり、出来上がった保湿ティシューペーパーPは、薬液が塗工された塗工済部M(分かり易い様に
図6では網掛けして示している)と、薬液の塗工されない未塗工部Dが交互に、格子状に配置されることになる。この結果、塗工済部Mの面積は保湿ティシューペーパーPの表面積の半分ということになり、つまり塗工に必要な薬液も半分で済むことになる。
【0038】
保湿ティシューペーパーPに用いる薬液は単価が高いため、単純に薬液の塗工面積が減ることで、製造に必要とする薬液の使用量を減らすことができる。結果、保湿ティシューペーパーPの製造コストを下げることが可能となる。
【0039】
また、薬液を保湿ティシューペーパーPの全面に塗工する場合に比べて、塗工する薬液の量を半減させた保湿ティシューペーパーPに含まれる水分が少なくなるため、触感がさらりとしたものとなる。触感の好みは人によって異なるが、ウェット感の強い製品を好まないユーザーには好意を持って受け入れられると考えられる。更に、未塗工部Dが規則的な配置で設けられることになるので、保湿ティシューペーパーPの引っ張り強度を高める結果となる。
【0040】
また、保湿ティシューペーパーPの製造装置100において、ポイントエンボスロール30は、第1ポイントエンボスロール31と第2ポイントエンボスロール32の一対が向かい合わせに配置され、第1ポイントエンボスロール31のポイント310と第2ポイントエンボスロール32のポイント310とが相対するように噛み合って原紙Sに押しつけられ、薬液が原紙Sに塗工される構成になっているので、ダブルの保湿ティシューペーパーPであれば、外側だけに薬液が塗布される結果となる。このため、より塗工する薬液の量を減らすことが可能となり、コスト削減に貢献する。
【0041】
この場合、保湿ティシューペーパーPの外側だけ(ダブルであるため)に薬液が塗られており、内側には薬液が塗られていない。つまり、使用者の肌に直接触れる部分にだけ薬液が塗られていることを意味する。したがって、保湿ティシューペーパーPとしての機能を損なわずに薬液の使用量を減らすことを実現できる。また、保湿ティシューペーパーPの製造過程で出る切り落とし部分や端材等は、薬液を塗工しているためにリサイクルすることが困難である。このため、不要部分は産業廃棄物として廃棄する必要があるが、薬液の付着量が減るために重量を減らすことができ、結果的に廃棄コストを下げることにも貢献することができる。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を用いて説明を行う。第2実施形態の製造装置100は、第1実施形態と同様の構成であるが、ポイントエンボスロール30の形状が若干異なるので、その点について説明を行う。
【0043】
図7に、第2実施形態のポイントエンボスロールの斜視図を示す。
図8に、ポイントエンボスロールの表面の拡大図を示す。第2実施形態のポイントエンボスロール30は、
図8に示すように、溝部321が切削して設けられてポイント310は所定の間隔で規則的に配置されている。溝部321は、ポイント310よりも低い位置に設けられる事になる。
【0044】
ポイント310の頂部は1辺が1mm程度の大きさとされており、頂部表面にはレーザー彫刻によって一定の容量を持たせた小さなセルが無数に設けられている。このポイント310の頂部が薬液転写ロール33の表面に触れることで、ポイント310の頂部に設けられたセルに所定量の薬液が転写され、このポイント310の頂部が原紙Sに当接することよって原紙Sの表面に薬液を塗工することができる。なお、ポイント310の形状に関しては、ポイントエンボスロール30の外周面に同様の配置で形成される図示しない円形や楕円形の凸部としても良い。
【0045】
図9に、保湿ティシューペーパーPの平面図を示す。第2実施形態の製造装置100は上記構成であることで、
図9に示すように、薬液が塗工された塗工済部M(分かり易い様に
図9では網掛けしてある)が定間隔で配置され、薬液の塗工されない未塗工部Dが格子状に配置されることになる。この結果、塗工済部Mの面積は保湿ティシューペーパーPの表面積の半分ということになり、つまり塗工に必要な薬液も半分で済むことになる。
【0046】
また、未塗工部Dが連続して形成され、塗工済部Mが独立して存在する塗工パターンとなっているため、保湿ティシューペーパーPの強度向上が望める。これは、原紙Sに全面に薬液が塗工された保湿ティシューペーパーPは水分が満遍なく含まれることで、水分の含有量によっては紙としての強度が低下してしまう。しかし、不連続な塗工済部Mを形成し、連続して形成された未塗工部Dを有することで、保湿ティシューペーパーPの強度を原紙Sからさほど低下させずに維持することができる。
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態について、図面を用いて説明を行う。第3実施形態の製造装置(プライマシン105)は、第1実施形態と類似の構成であるが、織機140の代わりにスリット巻き取り機150を備えている。このため、原反ロール10は巻き出されて塗工された後に幅方向にスリットを入れられて巻き取られ、ログRとして排出される。なお、第1実施形態とは異なり第3実施形態では、塗工機130には1箇所の塗工機構部130Cが設けられている。
【0048】
塗工機構部130Cでは、第1実施形態と同様に原紙Sに対して薬液が塗工されるため、巻き取られたログRは、
図6に示されたようなパターン、即ち薬液が塗工された塗工済部Mと、薬液の塗工されない未塗工部Dが交互に、格子状に配置されるように薬液が塗工された状態で巻き取られている。その結果、プライマシン105に用いる薬液の節約が可能となる。また、未塗工部Dを設けることでログRの引っ張り強度を高めることが可能となる。もちろん、第2実施形態で用いたようなパターンのポイントエンボスロール30を用いるなど、異なるパターンを採用することを妨げない。
【0049】
以上、本発明に係る保湿ティシューペーパーPの製造装置100などに関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態乃至第3実施形態では、何れもポイントエンボスロール30には、第1ポイントエンボスロール31と第2ポイントエンボスロール32の2つを設け、この間に原紙Sを通す形で説明しているが、保湿ティシューペーパーPに裏表を設けて、薬液の塗工される表面と薬液の塗工されない裏面とを必要とする場合には、ポイントエンボスロール30は片側だけで、対応する側には圧胴を設ける形としても良い。
【0050】
また、第1実施形態乃至第3実施形態では、
図6及び
図9に保湿ティシューペーパーPに形成される薬液の塗工済部Mのパターンを示しているが、保湿ティシューペーパーPの表面に塗工済部Mと未塗工部Dを交互に配置することが趣旨であるため、これ以外のパターン、或いは大きさに変更することを妨げない。例えば保湿ティシューペーパーPの表面の塗工済部Mが円形で、全体的には水玉模様のようなパターンを採用しても良い。或いは、別の幾何学的な繰り返し模様のパターンや、その他未塗工部Dを設けた模様を用いたパターンなどを採用しても良い。また、保湿ティシューペーパーPと説明しているが、ティシューペーパーに限らず、より厚手のペーパーに本発明を適用することを妨げない。
【符号の説明】
【0051】
P 保湿ティシューペーパー
S 原紙
10 原反ロール
30 ポイントエンボスロール
33 薬液転写ロール
35 アニロックスロール
100 製造装置