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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ロッドチャック装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/06 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
E21B19/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020070197
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167500
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦志
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-190186(JP,A)
【文献】特開2003-147762(JP,A)
【文献】特開平09-004350(JP,A)
【文献】特開2006-143094(JP,A)
【文献】特開2002-254305(JP,A)
【文献】特開2014-219259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0217022(US,A1)
【文献】米国特許第04281724(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
E02D 7/00-13/10
F16C 19/00-19/56
F16C 33/30-33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングロッドの貫通孔が形成され、回転駆動力が伝達されるスピンドルと、
前記スピンドルの一部分を開口した開口部に設けられ、前記ボーリングロッドを把持する把持位置と把持を解除する解除位置との間で移動可能となっているチャックピースと、
前記チャックピースの外面に形成されたテーパ面に接触するテーパ面が内面に形成され、前記チャックピースの外面を摺動するように設けられるスライドリングと、
前記スライドリングの外側に結合したスライドプレートと、
前記スライドプレートが連結されており、前記スライドプレートを介して前記スライドリングを移動させるチャックシリンダと、
前記スライドリングと前記スライドプレートとの間に設けられ、スラスト荷重及びラジアル荷重を受けるクロスローラベアリングと、を備え、
前記クロスローラベアリングは、内輪がボルトによって前記スライドリングに固定され、外輪がボルトによって前記スライドプレートに固定されることにより前記スライドリングの下端側に位置するように設けられていることを特徴とするロッドチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良や掘削孔の施工に用いられるボーリングマシンに装着されてボーリングロッドを把持及び解放するロッドチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削を行うボーリングロッドをボーリングマシンに着脱するため、従来よりロッドチャック装置がボーリングマシンのドリルヘッドに取り付けられている(特許文献1及び2参照)。図8は従来のロッドチャック装置100の内部構造を示す。
【0003】
ロッドチャック装置100は、ドリルヘッド(図示省略)の内部に設けられており、ドリルヘッドの直線移動と共に直線的に往復移動する。ロッドチャック装置100の外郭を形成するハウジング103内には、スピンドル101が回転可能に設けられる。スピンドル101は外周側に設けたスピンドルギヤ104がドリルヘッド(図示省略)内の回転駆動機構に連結されることにより回転する。スピンドル101はハウジング103との間に設けたラジアルベアリング112によって回転が支持されている。
【0004】
スピンドル101には、チャックスピンドル102が同軸的に連結されてスピンドル101と一体的に回転するようになっている。スピンドル101及びチャックスピンドル102には、ボーリングロッド(図示省略)が貫通し、貫通したボーリングロッドをチャックスピンドル102が把持することによりボーリングロッドを回転させる。
【0005】
チャックスピンドル102には、ボーリングロッドの把持及び把持の解除を行うチャックピース105が設けられている。チャックピース105はチャックスプリング107によってチャックスピンドル102に取り付けられる。チャックピース105はチャックスピンドル102の径方向の複数箇所に配置されるものであり、このためチャックスピンドル102には、チャックピース105を配置するための開口部106が径方向の複数箇所に形成されている。
【0006】
チャックピース105の外周側には、スライドリング108が設けられている。チャックピース105の外面及びスライドリング108の内面はテーパ面に形成されている。これらのテーパ面は相互に接触しており、スライドリング108が軸方向に往復移動することによりチャックピース105が開口部106内を進退移動してボーリングロッドの把持及びその解除を行う。スライドリング108は筒状のベアリングリテーナ109の内部に設けられており、ベアリングリテーナ109がハウジング103の外側に設けられた複数(4つ)のチャックシリンダ(油圧シリンダ)120によって往復移動することによりスライドリング108が軸方向に往復移動する。
以上の構造に加えて、スライドリング108の軸方向の荷重を受けるためのスラストベアリング110及び回転方向の荷重を受けるためのラジアルベアリング111がベアリングリテーナ109の内部に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-190186号公報
【文献】特開平9-4350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のロッドチャック装置100では、ボーリングロッドの把持及びその解除を行うチャックピース105を作動させるためのスライドリング108に対し、油圧力で押し続けるためのスラストベアリング110及び回転方向の安定度を保つためのラジアルベアリング111を配置する必要がある。このため、ベアリングの数が多くなり、ロッドチャック装置100の構造が複雑となる問題がある。
これに加えて、ボーリングマシンの回転力が増すのに従って、ボーリングロッドの把持力も大きくなって油圧力が増大し、これによってスラストベアリング110やラジアルベアリング111が強固で大型化する問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、ベアリングの数を少なくして構造を簡単とすることができるロッドチャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のロッドチャック装置は、ボーリングロッドの貫通孔が形成され、回転駆動力が伝達されるスピンドルと、前記スピンドルの一部分を開口した開口部に設けられ、前記ボーリングロッドを把持する把持位置と把持を解除する解除位置との間で移動可能となっているチャックピースと、前記チャックピースの外面に形成されたテーパ面に接触するテーパ面が内面に形成され、前記チャックピースの外面を摺動するように設けられるスライドリングと、前記スライドリングの外側に結合したスライドプレートと、前記スライドプレートが連結されており、前記スライドプレートを介して前記スライドリングを移動させるチャックシリンダと、前記スライドリングと前記スライドプレートとの間に設けられ、スラスト荷重及びラジアル荷重を受けるクロスローラベアリングと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記クロスローラベアリングは、前記スライドリングの軸方向の一端側に位置するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベアリングの数を少なくしてロッドチャック装置の構造を簡単とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のロッドチャック装置の内部を部分破断斜視図である。
図2】一実施形態のロッドチャック装置の斜視図である。
図3】一実施形態のロッドチャック装置の半割断面図である。
図4】ロッドチャック装置を組み込んだボーリングマシンンの全体正面図である。
図5】ボーリングマシンの全体斜視図である。
図6】ボーリングマシンの背面図である。
図7】ボーリングマシンの下部からの斜視図である。
図8】従来のロッドチャック装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1図3は、本発明の一実施形態のロッドチャック装置1を示し、図4図7はこのロッドチャック装置1を用いた地盤改良用のボーリングマシン2を示す
【0015】
図4図7に示すように、ボーリングマシン2の台車3には、メインリーダ4及びサブリーダ5からなるリーダが立ち上がり状に搭載されている。メインリーダ4には、ドリルヘッド6が長手方向に沿って直線移動可能に設けられている。ドリルヘッド6はボーリングロッド(図示省略)を把持し、把持したボーリングロッドを回転させながら下方へ移動することにより、ボーリングロッドに回転力及び給進力を付与する。これによりボーリングロッドが地盤を穿孔する。この実施形態において、ロッドチャック装置1はドリルヘッド6に設けられる。
【0016】
メインリーダ4には、ウインチ7が設けられている。ウインチ7はドリルヘッド6を吊下したワイヤロープをヘッドシーブ8を介して巻き上げるように動作する。これによりボーリングロッドを掘削孔から引き上げることができる。なお、台車3には、ドリルヘッド6を回転し及び給進するための油圧力を付与する動力ユニット9が搭載されている。
【0017】
図1はこの実施形態のロッドチャック装置1の部分破断斜視図、図2は斜視図、図3は半割断面図である。
【0018】
ロッドチャック装置1はドリルヘッド6の内部に設けられ、ドリルヘッド6の直線移動と共に直線的に往復移動する。ロッドチャック装置1は、スピンドル11と、チャックピース12と、スライドリング13と、スライドプレート14と、チャックシリンダ15とを有している。
【0019】
スピンドル11はボーリングロッドの貫通孔17が軸方向に形成されてハウジング16内に回転可能に設けられる。スピンドル11の回転荷重を受けるため、ハウジング16とスピンドル11との間には、ラジアルベアリング19が配置される。スピンドル11の外周には、スピンドルギヤ18が取り付けられており、スピンドルギヤ18がドリルヘッド6の回転駆動機構(図示省略)に連結されることによりスピンドル11が回転する。スピンドル11の軸方向の中間部分には、スピンドル11の一部を開口した開口部20が形成されている。開口部20はスピンドル11の径方向に沿って複数形成され、それぞれの開口部20に対してチャックピース12が配置されている。
図3において、符号26はハウジング16に取り付けられたカバープレート、符号27はカバープレート26の反対側に設けられたエンドプレートであり、スピンドル11はこれらの間に配置されている。
【0020】
チャックピース12の上下端部にはチャックスプリング21が取り付けられ、上下のチャックスプリング21によってチャックピース12はスピンドル11のそれぞれの開口部20に取り付けられる。チャックピース12はスピンドル11内を貫通したボーリングロッドを把持すると共に、把持を解除するように移動するものであり、把持の解除はチャックスプリング21の弾性力によって行われる。チャックピース12におけるボーリングロッド側の内面はボーリングロッドとの摩擦力を大きくするように粗面23に形成されている。また、チャックピース12の外面はテーパ面22に形成されている。
【0021】
スライドリング13は軸方向に延びた筒状に形成されており、全てのチャックピース12の外側を覆うように設けられる。スライドリング13の内面はチャックピース12のテーパ面22に接触するテーパ面24に形成されている。スライドリング13はテーパ面24がチャックピース12のテーパ面22に接触した状態で軸方向に移動可能となっており、この移動によりスライドリング13はチャックピース12に対して摺動する。スライドリング13の一方向(図3における上方向)への移動によってスライドリング13はチャックピース12を押すように動作し、これによりチャックピース12がスピンドル11から押し出されてボーリングロッドに食い込み、ボーリングロッドを把持する。
【0022】
スライドリング13の軸方向の一端部(図3における下端部)には、スライドプレート14が取り付けられており、このスライドプレート14がチャックシリンダ15に連結されている。チャックシリンダ15は図2に示すように、スライドリング13の周囲に複数が配置されており、伸縮動作することによりスライドプレート14を軸方向に往復移動させる。これによりスライドリング13が一体的に往復移動する。スライドリング13が一方向(図3における上方向)に移動すると、既述したように、そのテーパ面24がチャックピース12のテーパ面22を摺動してチャックピース12を押し出し、チャックピース12がボーリングロッドを把持する。一方、スライドリング13が逆方向に移動すると、チャックピース12はチャックスプリング2のばね力によって退避するため、ボーリングロッドの把持が解除される。
【0023】
以上の構造に加えて、スライドリング13とスライドプレート14との間にはクロスローラベアリング30が配置されている。この実施形態において、クロスローラベアリング30はスライドリング13の軸方向の一端側(図3における下端側)に位置するように配置されるものである。なお、クロスローラベアリング30をスライドリング13の軸方向の中間部分に設けても良い。
【0024】
クロスローラベアリング30は内輪31がスライドリング13にボルトによって固定され、外輪32がスライドプレート14にボルトによって固定される。内輪31と外輪32との間には複数のローラ33が並んだ状態で挟まれるが、隣接したローラ33は直交して配置される。
このようにローラ33が直交して配置されることにより、クロスローラベアリング30はスラスト荷重及びラジアル荷重の双方の荷重を受けることができる。すなわちクロスローラベアリング30はスラストベアリング及びラジアルベアリングの双方のベアリングと同様に機能する。このためスラストベアリング及びラジアルベアリングを設ける必要がなく、ベアリング数を削減できると共に、ベアリングを配置するための構造も簡素化することができる。
また、ボーリングロッドの把持力を大きくするために油圧力を増大した場合であっても、ベアリング数を削減できる分、クロスローラベアリング30を大きくすることができるため、ボーリングロッドの把持力に対応することができる。
【0025】
この実施形態のロッドチャック装置1においては、スピンドル11にチャックピース12を直接に設けた構造となっている。このため、図8に示すようなチャックピース105を設けるためのチャックスピンドル102が不要となる。その分、構造を簡単とすることができる。
また、本発明は、地盤改良用のボーリングマシンだけなく、他のボーリングマシンにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ロッドチャック装置
11 スピンドル
12 チャックピース
13 スライドリング
14 スライドプレート
15 チャックシリンダ
16 ハウジング
17 貫通孔
18 スピンドルギヤ
20 開口部
22 テーパ面
24 テーパ面
30 クロスローラベアリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8