(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】粒状組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/335 20060101AFI20240226BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240226BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240226BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240226BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240226BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240226BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61K31/335
A61K9/16
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61P11/02
A61P17/04
A61P37/06
(21)【出願番号】P 2020535868
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2019031305
(87)【国際公開番号】W WO2020032159
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018151461
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018151686
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231796
【氏名又は名称】日本臓器製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 清
(72)【発明者】
【氏名】榊原 賢司
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063627(JP,A)
【文献】特開2016-222657(JP,A)
【文献】特開2011-020960(JP,A)
【文献】国際公開第2004/039408(WO,A1)
【文献】特開2014-084275(JP,A)
【文献】特表平11-514646(JP,A)
【文献】特開昭52-025015(JP,A)
【文献】特開2014-062064(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1408428(CN,A)
【文献】特開2009-114113(JP,A)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2013年,Vol.441,pp.121-127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オロパタジン又はその薬学的に許容される塩
0.01~2重量%、タウマチン
0.0005~0.02重量%及びアセスルファムカリウム
0.5~20重量%を含有する
ドライシロップ剤。
【請求項2】
白糖及び/又はトレハロース水和物を含有する請求項1に記載の
ドライシロップ剤。
【請求項3】
結合剤として、デキストリン及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを含有する請求項1又は2に記載の
ドライシロップ剤。
【請求項4】
矯味剤として、DL-リンゴ酸を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の
ドライシロップ剤。
【請求項5】
安定剤として、エデト酸ナトリウム水和物及び/又はジブチルヒドロキシトルエンを含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の
ドライシロップ剤。
【請求項6】
前記ドライシロップ剤が分包品である請求項1~5のいずれか一項に記載のドライシロップ剤。
【請求項7】
前記分包品の包材が、セロポリ、グラシン、アルミラミネートフィルム又はアルミ蒸着フィルムである請求項6に記載のドライシロップ剤。
【請求項8】
オロパタジン又はその薬学的に許容される塩
に、タウマチン及びアセスルファムカリウムを含有する添加剤を混合し、(a)湿式造粒、(b)乾燥及び(c)粉砕整粒の各工程を経て得られた造粒物を、(d)篩A及び篩Bで篩過する工程を行い、目開きが大きい方の篩Aの残留粒子A及び目開きが小さい方の篩Bの通過粒子Bについて、残留粒子Aについては上記(c)及び(d)の工程を、通過粒子Bについては上記(a)~(d)の工程をそれぞれ再度行うこと
によって得られた粒状組成物を用いてドライシロップ剤を製造する上で、(a)湿式造粒を行うに際し、全仕込量100重量%に対して4.5~5.5重量%の水に、濃度が7.5~8.5重量%となるようヒドロキシプロピルセルロースを含有させた造粒液を用いることを特徴とする、
ドライシロップ剤の製造方法。
【請求項9】
オロパタジン又はその薬学的に許容される塩
に、タウマチン及びアセスルファムカリウムを含有する添加剤を混合し、(a)湿式造粒、(b)乾燥及び(c)粉砕整粒の各工程を経て得られた造粒物を、(d)目開きが16~22メッシュのいずれかから選ばれる篩A及び目開きが93~119メッシュのいずれかから選ばれる篩Bで篩過する工程を行い、篩Aの残留粒子A及び篩Bの通過粒子Bについて、残留粒子Aについては上記(c)及び(d)の工程を、通過粒子Bについては上記(a)~(d)の工程をそれぞれ再度行うこと
によって得られた粒状組成物を用いてドライシロップ剤を製造する上で、(a)湿式造粒を行うに際し、全仕込量100重量%に対して4.5~5.5重量%の水に、濃度が7.5~8.5重量%となるようにヒドロキシプロピルセルロースを含有させた造粒液を用いることを特徴とする、全量100重量%に対して、粒径の下限が125~160μmで上限が710~1000μmである粒状組成物を85重量%以上含有する
ドライシロップ剤の製造方法。
【請求項10】
前記(a)工程と(b)工程の間に、さらに(a’)湿塊整粒の工程が含まれる請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記(a’)湿塊整粒が解砕整粒
によるものである請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記(c)粉砕整粒がオシレーター式整粒である請求項8~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記(c)工程において、初回より2回目以降は小さい目開きのスクリーンを用いて粉砕整粒する請求項8~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記(c)工程において、初回は12~18メッシュのいずれかから選ばれる目開きのスクリーンを用い、2回目以降は18~30メッシュのいずれかから選ばれる初回より小さい目開きのスクリーンを用いて粉砕整粒する請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記添加剤
に結合剤
として、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はデキストリン
が含有される請求項8~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記
ドライシロップ剤が分包品である請求項
8~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記分包品の包材が、セロポリ、グラシン、アルミラミネートフィルム又はアルミ蒸着フィルムである請求項
16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する粒状組成物、該粒状組成物の製造方法及び該粒状組成物を用いた製剤の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の利便性を改善することを目的として、既存の種々の薬物について新しい製剤の開発が行われている。患者のニーズに合った製剤を提供することは、患者の治療に対する満足度を上げるのみならず、患者の服薬を介助する者の負担軽減にも寄与する。
【0003】
固形医薬製剤には、錠剤の他、カプセル剤、顆粒剤、散剤、ドライシロップ剤等が存在し、一般的に経口投与により服用される。経口投与は最も簡便で汎用性が高い投与方法である。しかし、水やぬるま湯で服用する製剤は、口腔内において有効成分である薬物等の味を感じ易く、不快な味や苦味がある場合は、服用が苦痛になることもある。特に小児に苦味の強い製剤を服薬させる場合は、本人が服用を嫌がり、服薬を介助する親などが手を焼くことにもなる。このような問題を軽減するため、不快な味や苦味をマスキングすることで服薬コンプライアンスを向上させる製剤化が一般的に行われている。
【0004】
固形医薬製剤のうちドライシロップ剤は、主として小児向けに甘味剤や香料を加えて服用しやすいよう工夫されている製剤である。水に溶かして服用するのが通常であり、顆粒剤等と比べ甘味剤などの矯味剤を多く含有する製剤が少なくない。有効成分や添加剤が不快な味や苦味を呈する場合は、こうした味をマスキングして甘味を強くすることが行われている。
【0005】
実際には、例えば苦味の場合、いくら苦味をマスキングしようとしても、完全に苦味をなくすことは困難である。とはいえ、マスキングした後に残る苦味の程度によって服薬コンプライアンス及び服薬介助者の負担が変化することは確かである。従って、可能な限り苦味が抑えられ、且つ服用しやすい製剤を開発し提供することは、社会のニーズにかない有意義なことである。
【0006】
また、医薬製剤は服薬する者にとっては小容量である方が、負担が少なくなる。特に小児用のドライシロップ剤等の場合は、なるべく服用量を少なくしたほうが、一般的に服薬を嫌う小児本人のコンプライアンスが向上し、服薬介助者の負担も軽減されることにつながり好ましい。
【0007】
オロパタジンは抗アレルギー作用及び抗炎症作用を有することから、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎、痒疹等)等の治療剤として、その塩酸塩を含有する製剤が開発され既に広く使用されている。該既存製剤の剤形としては、最初に承認された錠剤の他に、口腔内崩壊錠(OD錠)や顆粒剤が存在している。顆粒剤については、2歳以上7歳未満の小児にも服用が可能とされているが、顆粒剤よりもさらに小児の服薬に適したドライシロップ剤については未だ市販されておらず、その登場が期待されている。
【0008】
一方、オロパタジンは特有の苦味を呈する薬物であるため、散剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、OD錠等の場合、口腔内で速やかに溶出して苦味が生じ、服用が困難なことがある。このため、これらの製剤設計においては、苦味のマスキングを検討することが重要な課題の一つとなる。苦味をマスキングする方法としては、甘味剤、矯味剤、矯香剤等の添加剤を配合することによる方法があるが、使用する添加剤には成形性や脆性が劣るものがあり、その添加量によっては、製造工程における造粒及び整粒に問題を生じることがある。また、オロパタジン自体も造粒性が悪いという問題もあった。そのため、造粒物を整粒することにより得られた顆粒等の粒状組成物には、微粉が多く発生し、所定の粒径の範囲から外れたものが含まれてしまう。微粉が多く含まれた粒状組成物やそれを製剤化した顆粒剤等には様々な不都合が生じる。例えば、当該製剤は、成分の密度や粒径の差異により偏析を生じ、主薬含量が不均一な製剤になることがある。また、微粉は静電気を発生しやすいため、当該製剤は流動性が悪く、ボトル容器等への充填や分包化する場合に作業性が悪いことがある。さらに、当該製剤は、服用した際に微粉が口腔内に残存し、服用性が悪いことがある。これに対し、処方設計上の対応策として、結合剤を多めに配合することが考えられる。しかし、過量の結合剤の配合により硬い造粒物が生成され、整粒時間が増大して製造性が悪くなる上に、さらに微粉や粗粒の発生量が増加することになるため、結合剤の種類及び配合量を十分検討する必要があった。また、処方設計のみならず、製造工程においても、微粉や粗粒の発生を抑える工夫が必要とされていた。
【0009】
特許文献1には、オロパタジン塩酸塩にグリチルリチン酸及び/又はその塩とを配合することにより、微粉を抑えて、造粒性を向上させる方法が開示されている。しかしながら、詳細には後述する本発明におけるオロパタジン又はその薬学的に許容される塩を含有する粒状組成物の製造方法のように、その製造工程を工夫することで、微粉や粗粒の発生を抑える方法を開示した文献は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩を含有し、処方的な工夫により特別な処理を伴わずに苦味が抑えられた粒状組成物、及び該粒状組成物を含有する固形医薬製剤を提供することを課題とする。また、本発明は、該粒状組成物の製造において、整粒時等に発生する微粉及び粗粒を抑えることで収率を高くし、該粒状組成物中の微粉及び粗粒の割合を低減することにより所定の粒度分布を有する均一性の高い粒状組成物を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩に適切な添加剤を組み合わせて含有させることにより、苦味が抑えられ、しかも、水に溶けやすく、溶かすと透明度の高い溶液となる製剤に用いられる粒状組成物、該粒状組成物を効率よく且つ均一性高く製造する方法等の発明を完成させた。さらに、本発明者らは、本発明粒状組成物を含有する製剤において、有効成分の濃度を先行する製剤(顆粒剤)の2倍とすることにも成功した。
【0013】
本発明粒状組成物の製造においては、通常の製造工程、すなわち、有効成分及び添加剤の混合→湿式造粒→乾燥→粉砕整粒→分級という順の工程により粒状組成物を試作したところ、分級したにもかかわらず、得られた粒状組成物には微粉が大量に含まれることを確認した。また、添加剤の種類及び配合量を含め、製造条件によっては、所定の粒径の範囲から外れた微粉のみならず、粗粒も多く発生し、収率が悪くなることがあるという問題が確認された。
【0014】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、湿式造粒→乾燥→粉砕整粒という工程で得られた整粒物を分級する際に、(1)目開きの大きい方の篩の篩過残留粒子については、再度、粉砕整粒→分級という工程を施し、(2)目開きの小さい方の篩の篩過通過粒子については、再度、湿式造粒→乾燥→粉砕整粒→分級という工程を施すことにより、前述した微粉及び粗粒の発生が抑えられ、それらの割合が低減され所定の範囲の粒径を有する造粒組成物を得ることができることを見出した。また、上記工程において、湿式造粒により得られた湿塊造粒物を整粒すること、特に解砕整粒する工程を加えることで、さらに微粉及び粗粒の発生を抑えられることを見出した。さらには、結合剤のヒドロキシプロピルセルロースの全配合量のうち、一部のヒドロキシプロピルセルロースを含有させた一定量の造粒液により湿式造粒することで、さらに微粉及び粗粒の発生を抑えて収率が向上することを見出した。本発明者らは、以上の知見に基づき、さらに検討行うことにより本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明には、例えば下記の態様が包含される。ただし、本発明はこれらに限定されるものではく、実質的に同一の手段で同一の目的を達成するものは本発明に含まれる。
(1)オロパタジン又はその薬学的に許容される塩を含有する粒状組成物。
(2)オロパタジン又はその薬学的に許容される塩が、粒状組成物100重量%に対して、0.01~2重量%含有される上記(1)に記載の粒状組成物。
(3)タウマチン及び/又はアセスルファムカリウムを含有する上記(1)又は(2)に記載の粒状組成物。
(4)タウマチンが、粒状組成物100重量%に対して、0.0005~0.02重量%含有される上記(3)に記載の粒状組成物。
(5)アセスルファムカリウムが、粒状組成物100重量%に対して、0.5~20重量%含有される上記(3)又は(4)に記載の粒状組成物。
(6)白糖及び/又はトレハロース水和物を含有する上記(1)~(5)のいずれかに記載の粒状組成物。
(7)白糖が、粒状組成物100重量%に対して、30~90重量%含有される上記(6)に記載の粒状組成物。
(8)トレハロース水和物が、粒状組成物100重量%に対して、5~60重量%含有される上記(6)又は(7)に記載の粒状組成物。
(9)結合剤として、デキストリン及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを含有する上記(1)~(8)のいずれかに記載の粒状組成物。
(10)デキストリンが、粒状組成物100重量%に対して、0.5~20重量%含有される上記(9)に記載の粒状組成物。
(11)ヒドロキシプロピルセルロースが、粒状組成物100重量%に対して、0.5~15重量%含有される上記(9)又は(10)に記載の粒状組成物。
(12)矯味剤として、DL-リンゴ酸を含有する上記(1)~(11)のいずれかに記載の粒状組成物。
(13)DL-リンゴ酸が、粒状組成物100重量%に対して、0.01~5重量%含有される上記(12)に記載の粒状組成物。
(14)安定剤として、エデト酸ナトリウム水和物及び/又はジブチルヒドロキシトルエンを含有する上記(1)~(13)のいずれかに記載の粒状組成物。
(15)エデト酸ナトリウム水和物が、粒状組成物100重量%に対して、0.05~1重量%含有される上記(14)に記載の粒状組成物。
(16)ジブチルヒドロキシトルエンが、粒状組成物100重量%に対して、0.05~1重量%含有される上記(14)又は(15)に記載の粒状組成物。
(17)上記(1)~(16)のいずれかに記載の粒状組成物を含有する固形医薬製剤。
(18)オロパタジン又はその薬学的に許容される塩が、製剤100重量%に対して、0.01~2重量%含有される上記(17)に記載の固形医薬製剤。
(19)タウマチンが、製剤100重量%に対して、0.0005~0.02重量%含有される上記(17)又は(18)に記載の固形医薬製剤。
(20)アセスルファムカリウムが、製剤100重量%に対して、0.5~20重量%含有される上記(17)~(19)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(21)白糖が、製剤100重量%に対して、30~90重量%含有される上記(17)~(20)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(22)トレハロース水和物が、製剤100重量%に対して、5~60重量%含有される上記(17)~(21)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(23)デキストリンが、製剤100重量%に対して、0.5~20重量%含有される上記(17)~(22)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(24)ヒドロキシプロピルセルロースが、製剤100重量%に対して、0.5~15重量%含有される上記(17)~(23)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(25)DL-リンゴ酸が、製剤100重量%に対して、0.01~5重量%含有される上記(17)~(24)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(26)エデト酸ナトリウム水和物が、製剤100重量%に対して、0.05~1重量%含有される上記(17)~(25)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(27)ジブチルヒドロキシトルエンが、製剤100重量%に対して、0.05~1重量%含有される上記(17)~(26)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(28)流動化剤として、軽質無水ケイ酸を含有する上記(17)~(27)のいずれかに記載の固形医薬製剤。
(29)軽質無水ケイ酸が、製剤100重量%に対して、0.01~5重量%含有される上記(28)に記載の固形医薬製剤。
(30)前記固形医薬製剤が、顆粒剤、散剤、又はドライシロップ剤である上記(17)~(29)のいずれかにに記載の固形医薬製剤。
【0016】
(31)オロパタジン又はその薬学的に許容される塩及び添加剤を混合し、(a)湿式造粒、(b)乾燥及び(c)粉砕整粒の各工程を経て得られた造粒物を、(d)篩A及び篩Bで篩過する工程を行い、目開きが大きい方の篩Aの残留粒子A及び目開きが小さい方の篩Bの通過粒子Bについて、残留粒子Aについては上記(c)及び(d)の工程を、通過粒子Bについては上記(a)~(d)の工程をそれぞれ再度行うことを特徴とする、粒状組成物の製造方法。
(32)オロパタジン又はその薬学的に許容される塩及び添加剤を混合し、(a)湿式造粒、(b)乾燥及び(c)粉砕整粒の各工程を経て得られた造粒物を、(d)目開きが16~22メッシュのいずれかから選ばれる篩A及び目開きが93~119メッシュのいずれかから選ばれる篩Bで篩過する工程を行い、篩Aの残留粒子A及び篩Bの通過粒子Bについて、残留粒子Aについては上記(c)及び(d)の工程を、通過粒子Bについては上記(a)~(d)の工程をそれぞれ再度行うことを特徴とする、全量100重量%に対して、粒径の下限が125~160μmで上限が710~1000μmである粒状組成物を85重量%以上含有する粒状組成物の製造方法。
(33)オロパタジン又はその薬学的に許容される塩及び添加剤を混合し、(a)湿式造粒、(b)乾燥及び(c)粉砕整粒の各工程を経て得られた造粒物を、(d)目開きが18メッシュである篩A及び目開きが100メッシュである篩Bで篩過する工程を行い、篩Aの残留粒子A及び篩Bの通過粒子Bについて、残留粒子Aについては上記(c)及び(d)の工程を、通過粒子Bについては上記(a)~(d)の工程をそれぞれ再度行うことを特徴とする、全量100重量%に対して、粒径の下限が150μmで上限が850μmである粒状組成物を85重量%以上含有する粒状組成物の製造方法。
(34)上記(a)工程と(b)工程の間に、さらに(a')湿塊整粒の工程が含まれる上記(31)~(33)のいずれかに記載の製造方法。
(35)上記(a')湿塊整粒が解砕整粒である上記(34)に記載の製造方法。
(36)上記(c)粉砕整粒がオシレーター式整粒である上記(31)~(35)のいずれかに記載の製造方法。
(37)上記(c)工程において、初回より2回目以降は小さい目開きのスクリーンを用いて粉砕整粒する上記(31)~(36)のいずれかに記載の製造方法。
(38)上記(c)工程において、初回は12~18メッシュのいずれかから選ばれる目開きのスクリーンを用い、2回目以降は18~30メッシュのいずれかから選ばれる初回より小さい目開きのスクリーンを用いて粉砕整粒する上記(37)に記載の製造方法。
(39)上記(c)工程において、初回は16メッシュの目開きのスクリーンを用い、2回目以降は22メッシュの目開きのスクリーンを用いて粉砕整粒する上記(38)に記載の製造方法。
(40)添加剤として含有される結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はデキストリンである上記(31)~(39)のいずれかに記載の製造方法。
(41)ヒドロキシプロピルセルースの20℃における2%水溶液の粘度が2~10mPa・sである上記(40)に記載の製造方法。
(42)上記(a)工程において、ヒドロキシプロピルセルロースを含む造粒液を用いる上記(31)~(41)のいずれかに記載の製造方法。
(43)造粒液におけるヒドロキシプロピルセルロースの濃度が7~11重量%である上記(42)に記載の製造方法。
(44)全仕込量100重量%に対して3.5~5.5重量%の水に、濃度が7~11重量%となるようにヒドロキシプロピルセルロースを含有させた造粒液である上記(42)又は(43)に記載の製造方法。
(45)ヒドロキシプロピルセルロースを、全仕込量を100重量%に対して、0.5~5重量%配合する上記(40)~(44)のいずれかに記載の製造方法。
(46)デキストリンを、全仕込量100重量%に対して、0.5~5重量%配合する上記(40)~(45)のいずれかに記載の製造方法。
(47)上記(31)~(46)のいずれかに記載の製造方法により製造された粒状組成物を用いて固形医薬製剤を製造する方法。
(48)上記固形医薬製剤が顆粒剤、散剤、又はドライシロップ剤である上記(47)に記載の製造方法。
(49)上記固形医薬製剤が分包品である上記(47)又は(48)に記載の製造方法。
(50)分包品の包材が、セロポリ、グラシン、アルミラミネートフィルム又はアルミ蒸着フィルムである上記(49)に記載の製造方法。
(51)固形医薬製剤を製造するための上記(31)~(50)のいずれかに記載の製造方法により製造された粒状組成物の使用。
(52)固形医薬製剤が顆粒剤、散剤、又はドライシロップ剤である上記(51)に記載の使用。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るオロパタジン又はその薬学的に許容される塩を含有する粒状組成物(以下「本粒状組成物」ということがある。)を含有する固形医薬製剤(以下「本製剤」ということがある。)は、小児の服薬コンプライアンスの向上及び服薬介助者の負担軽減を目的に開発された製剤であって、苦味が低減された服用しやすい製剤として有用性が高い。また、本製剤は、有効成分の濃度を先行品の2倍とすることにより服用量が半分ですむものである。さらに、本製剤は、水に溶けやすく、溶かすと無色で透明度の高い溶液となるため、見た目にも服用しやすいという特徴を有する。
【0018】
また、本発明に係る製造方法(以下「本製造方法」ということがある。)によれば、製造工程における微粉及び粗粒の発生を抑えて、微粉及び粗粒の割合が低減された本粒状組成物を収率良く製造することができる。本粒状組成物及び本粒状組成物を用いて製造した顆粒剤等の製剤は、偏析を生じにくいことから、有効成分含量のバラツキが少なく、また、使用時又は調剤時に発塵が起こりにくく、非常に有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、オロパタジン塩酸塩2.5mgを精製水30mLに溶かした状態を示す図(写真)である。A、B及びDは既に販売されているオロパタジン塩酸塩顆粒剤(以下「先行品」という。)の顆粒0.5gを精製水30mLに溶かしたものであり、Cが本製剤0.25gを精製水30mLに溶かしたものである。
【
図2】
図2は、本製造方法の製造フローの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、有効成分としてオロパタジン又はその薬学的に許容される塩を含有する粒状組成物、特には、タウマチン及び/又はアセスルファムカリウムを含有する粒状組成物、並びに、該粒状組成物を含有する、苦味が抑えられ服用しやすくなった固形医薬製剤に関するものである。また、本発明は、該粒状組成物の効率的な製造方法に関するものである。より具体的には、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩及び添加剤を混合し、(a)湿式造粒、(b)乾燥及び(c)粉砕整粒の各工程を経て得られた造粒物を、(d)篩A及び篩Bで篩過する工程を行い、目開きが大きい方の篩Aの残留粒子A及び目開きが小さい方の篩Bの通過粒子Bについて、残留粒子Aについては上記(c)及び(d)の工程を、通過粒子Bについては上記(a)~(d)の工程をそれぞれ再度行うことを特徴とする、粒状組成物の製造方法に関する。
【0021】
本粒状組成物は、有効成分としてオロパタジン又はその薬学的に許容される塩を含有する。オロパタジンは、主作用である抗ヒスタミン作用に加えて、ヒスタミン、トロンボキサン、ロイコトリエン、血小板活性化因子(PAF)等の化学伝達物質の遊離抑制作用、インターロイキン-6(IL-6)やインターロイキン-8(IL-8)等のサイトカイン分泌抑制作用、血管内皮細胞における細胞接着分子の発現抑制作用等を示すと共に、好酸球湿潤抑制作用等の多彩で優れたアレルギー作用を有しており、小児から老人まで幅広い世代に利用されている薬剤である。オロパタジンは、薬学的に許容される酸付加塩であれば特に制限なく使用でき、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩や酢酸、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。特に好ましいのは、抗アレルギー薬として市販され広く臨床的に用いられているオロパタジン塩酸塩である。また、オロパタジンの立体異性体や水和物、溶媒和物も本粒状組成物の有効成分とされ得るオロパタジンに包含される。
【0022】
本発明において、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩の配合量は、特に制限されるものではなく、適宜選択できる。例えば、オロパタジン塩酸塩の場合は、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して、0.01~2重量%、好ましくは0.3~1.8重量%、更に好ましくは0.5~1.5重量%とすることができる。
【0023】
本粒状組成物の好ましい例としては、有効成分であるオロパタジン又はその薬学的に許容される塩に、タウマチン及び/又はアセスルファムカリウムが添加されていることが挙げられる。さらに、本粒状組成物には、白糖、トレハロース等の賦形剤、DL-リンゴ酸等の矯味剤といった添加剤が組み合わせて含有されていてもよい。これにより、本粒状組成物を含有する製剤(本製剤)は、苦味が抑えられて服用しやすい、水に溶けやすく、溶かすと無色で透明度の高い溶液になるといった服薬上好ましい特徴を有する。以下に本粒状組成物に加えられる添加剤について詳述する。
【0024】
本粒状組成物の添加剤として使用され得るもののうち、甘味剤と呼ばれるものとしては、精製白糖、アスパルテーム、サッカリンNa水和物、D-マンニトール、デキストリン、エリスリトール、スクラロース、キシリトール、粉末還元麦芽糖水アメ、タウマチン、アセスルファムカリウム等、及びこれらの組合せが挙げられる。このうち、タウマチン及びアセスルファムカリウムの組合せが好ましい。タウマチンは、ソーマチンとも呼ばれ、西アフリカに生息するMarantaceae科(くずうこん科)に属する多年性植物であるソーマトコッカスダニエリの種子から得られたタンパク質系の甘味物質である。甘味度は砂糖の3000倍~8000倍であり、砂糖と比較しても甘味の発現が遅く、且つ、甘味が持続する特徴がある。アセスルファムカリウムは人工甘味料の一種であり、ショ糖と比較すると約200倍の甘味があるといわれ、単体で使用されるよりも併用で用いられることが多い。また、他の甘味剤よりも早めに甘味を呈することが知られている。
【0025】
本発明において、タウマチンの配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して、0.0005~0.02重量%、好ましくは0.001~0.01重量%、特に好ましくは0.002~0.008重量%、最も好ましくは0.0035~0.0044重量%とすることができる。一方、アセスルファムカリウムの配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して、0.5~20重量%、好ましくは1~15重量%、特に好ましくは2~8重量%、最も好ましくは4.5~5.4重量%とすることができる。
【0026】
本粒状組成物の添加剤として使用され得る賦形剤としては、トウモロコシデンプン、乳糖水和物、セルロース、デキストリン、ケイ酸Ca、二酸化ケイ素(無水ケイ酸)、微粒二酸化ケイ素、白糖、トレハロース水和物等、及びこれらの組合せが使用できるが、好ましい例として白糖及びトレハロースの組合せを挙げることができる。白糖は、種々の食品や医薬品などに添加剤として用いられており、市販品を容易に入手することができ、日本薬局方(第十七改正)に収載されたものを使用できる。また、トレハロースはグルコース2分子が結合した二糖である。天然に広く分布しており、きのこ類に多く含まれており、豆類、海藻類などにも含まれている。トレハロース水和物も、市販品を容易に入手することができ、日本薬局方(第十七改正)に収載されたものを使用できる。
【0027】
本発明において、賦形剤として白糖を用いる場合は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して、30~90重量%、好ましくは40~80重量%、より好ましくは40~75重量%を含有させるのが適当である。賦形剤としてトレハロース水和物を用いる場合は、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して、5~60重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは20~30重量%を含有させるのが適当である。
【0028】
本粒状組成物の添加物として使用され得る結合剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)ヒプロメロース、カルキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン共重合体(コポリビドン)、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、部分アルファー化デンプン、デキストリン、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、マクロゴール6000等、及びこれらの組合せが挙げられる。好ましい例としては、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はデキストリンを挙げることができる。結合剤を配合することにより、本粒状組成物は適度な粒度を持つ顆粒となり、より好適である。しかし、結合剤の過量の配合は硬い顆粒を生成し、整粒時間の増大と微粉の発生量の増加につながることから適切な配合率とすることが求められる。すなわち、本製剤の剤形としてドライシロップ剤を選択するためには、適度な溶出性と安定性を必要とされるが、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース及び/又はデキストリンを選択したときは、本粒状組成物の製造工程における微粉の発生を効果的に抑制することができる。
【0029】
本発明において、ヒドロキシプロピルセルロースの配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して通常、0.5~10%重量%、好ましくは0.8~5重量%、より好ましくは1~3重量%とすることができる。デキストリンの配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して通常、0.5~10重量%、好ましくは0.8~5重量%、より好ましくは1~3重量%とすることができる。
【0030】
本粒状組成物の添加物として使用され得る矯味剤としては、DL-リンゴ酸、塩化ナトリウム、クエン酸、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸2K、グリチルリチン酸モノアンモニウム、L-グルタミン酸Na、グリシン等、及びこれらの組合せが使用できるが、好ましい例としてDL-リンゴ酸を挙げることができる。本発明において、DL-リンゴ酸の配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して通常、0.01~5重量%、好ましくは0.05~2重量%、より好ましくは0.1~1重量%とすることができる。
【0031】
本粒状組成物の添加物として使用され得る安定剤としては、カルメロース、カルメロースCa、カルメロースNa、クエン酸Na、フマル酸Na、ポピドン、ラウリル硫酸Na、グリセリン脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、セタノール、ゼラチン、ポリソルベート80、β-シクロデキストリン、トコフェロール(ビタミンE)、デキストラン、アジピン酸、アスコルビン酸(ビタミンC)、エデト酸ナトリウム水和物、ジブチルヒドロキシトルエン等、及びこれらの組合せが使用できるが、好ましい例としてエデト酸ナトリウム水和物及びジブチルヒドロキシトルエンの組合せを挙げることができる。エデト酸ナトリウム水和物及びジブチルヒドロキシトルエンには、オロパタジン塩酸塩の光や熱に対する安定性を向上させる効果が認められている。また、エデト酸ナトリウム水和物にはpH調整という機能もある。
【0032】
本発明において、エデト酸ナトリウム水和物の配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して通常、0.05~1重量%、好ましくは0.1~0.8重量%、より好ましくは0.3~0.5重量%をとすることができる。ジブチルヒドロキシトルエンの配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して通常、0.05~1重量%、好ましくは0.1~0.8重量%、より好ましくは0.3~0.5重量%とすることができる。
【0033】
本粒状組成物の添加物として使用され得る流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク等を挙げることができる。軽質無水ケイ酸は、造粒(混合)時の流動性、最終混合時の流動性・静電気の抑制に関わる。本発明において、軽質無水ケイ酸の配合量は、特に制限されるものではないが、本粒状組成物又は本製剤100重量%に対して通常、0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.1~1重量%とすることができる。
【0034】
本粒状組成物は、上記の他に、発明の効果に支障のない限り、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば、上記に例示した以外の賦形剤、結合剤や矯味剤、さらに崩壊剤、発泡剤、香料、滑沢剤、着色剤等が挙げられ、目的に応じて適宜選択して添加することができる。
【0035】
本粒状組成物は、必要に応じてコーティングを施してもよい。コーティングすることによって、製剤の損傷・摩損が起こり難くなり、輸送や包装に有利であることがある。
【0036】
本発明製造方法について、
図2の製造フローに基づいて以下に説明する。なお、下記の用語及び符号は本製造フローに記載の用語及び符号と一致する。
本粒状組成物は、好ましくは湿式造粒法を用いて製造することができる。具体的には、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩に添加剤を粉体混合し、これに溶液状に調製した結合剤(以下「造粒液」ということがある。)を加えて造粒し(湿式造粒)、乾燥、整粒した後、分級して、粗粒については、再度、粉砕整粒・分級し、微粉については、再度、湿式造粒から分級まで(以下「再造粒~分級」ということがある。)の工程を実施することで、所望の粒度分布を有する粒子組成物を製造することができる。これを工程毎に記載すると下記のようになる。
【0037】
(I)オロパタジン又はその薬学的に許容される塩に添加剤を粉体混合し、溶液状の結合剤(造粒液)を添加して(a)湿式造粒する工程、
(II)必要に応じて、上記工程(I)で得られる造粒物を(a’)湿塊整粒する工程、
(III)上記工程(I)又は(II)で得られる造粒物又は整粒物を(b)乾燥し、(c)粉砕整粒する工程、
(IV)上記工程(III)で得られる整粒物を篩過して、粗粒(残留粒子A)、所望の粒径を有する粒状組成物(分級品)及び微粉(通過粒子B)に(d)分級する工程、
(V)上記工程(IV)で得られる粗粒(残留粒子A)について、再度(c)粉砕整粒し、得られる整粒物を篩過して、粗粒(残留粒子A)、所望の粒径を有する粒状組成物(分級品)及び微粉(通過粒子B)に(d)分級する工程、
(VI)上記工程(IV)及び(V)で得られる微粉(通過粒子B)について、再度、(a)湿式造粒し、上記工程(II)~(IV)を行う工程、及び
(VII)上記工程(IV)、(V)及び(VI)で得られる粒状組成物(分級品)を混合する工程。
【0038】
なお、上記工程(VII)において、当該粒状組成物に、滑沢剤及び/又は流動化剤、並びに、必要に応じて、その他添加剤を造粒することなく粉末で混合して、顆粒剤、散剤、又はドライシロップ剤等の製剤に調製することもできる。
以下、(I)から(VII)の工程について詳述する。
【0039】
(I)混合・造粒工程
混合工程において、有効成分であるオロパタジン又は薬学的に許容される塩及び添加剤の混合は、これらの成分の粉体物が均一に混合できる方法であればよく、混合方法に特に制限はされない。例えば、容器回転型混合機(V型混合機、二重円錐型混合機等)、容器固定型混合機(拡販型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機等)、複合型混合機(回転型混合機に攪拌羽根を取り付けたもの等)等の混合機を用いて混合する方法を例示することができる。また、原料粉末の混合、攪拌のみならず、造粒液を添加して練合しながら造粒までできる品川式混合攪拌機等を用いてもよい。なお、添加剤については、予め粉砕機(ピンミル、カッターミル、回転ミル、ハンマーミル、ロールミル、剪断ミル、ボールミル、ジェットミル等)で粉砕し、また必要に応じて分級しておいてもよい。
【0040】
造粒は、上記で調製した粉体混合物に溶液状の結合剤、好ましくは水溶液の結合剤を加えて造粒する方法(湿式造粒法)で行うことができる。本製造方法において、結合剤は造粒工程において水等に溶解した溶液状の結合剤(造粒液)として配合するのとは別に上記混合工程において粉体として配合してもよく、また、造粒液には結合剤以外の添加剤を配合してもよい。
【0041】
造粒方法は、一般的に使用される湿式造粒法であればよく、特に限定されるものではないが、例えば原料粉体混合物に造粒液を加えて練合し、練合物をスクリーンから押出して成形造粒する方法である押出し造粒法;上記の方法で練合して調製した練合塊を造粒機の回転刃で切断し、遠心力により外周のスクリューの目からはじき出す方法である解砕造粒法;原料粉体混合物に造粒液を加えて加湿した粉体に回転運動又は振動を与えて凝集させ、球状に近い粒子を得る方法である転動造粒法;原料粉体混合物を下方から熱気流により流動させ、これに造粒液を噴霧して造粒する方法である流動層造粒法;原料粉体を容器に投入して回転するブレードで撹拌しながら水又は造粒液を添加して、原料粉粒体を球形に凝集させる撹拌造粒法;原料粉末に造粒液を加えて、混合、攪拌しながら造粒する混合攪拌造粒法等を挙げることができる。
【0042】
なお、造粒液として用いる結合剤としては、特に制限されるものではないが、好ましい例としては、ヒドロキシプロピルセルロースを挙げることができる。ヒドロキシプロピルセルロースを用いる場合、全仕込量100重量%に対して3.5~5.5重量%、好ましくは4.5~5.5重量%の水に、濃度が7~11重量%、好ましくは7.5~8.5重量%となるようにヒドロキシプロピルセルロースを含有させた造粒液を用いることが好ましく、本製造方法において微粉及び粗粒の発生を抑えるのに効果的である。
【0043】
(II)湿塊整粒工程
本製造方法の過程において、必要に応じて、湿式造粒工程の後に湿塊整粒工程を行ってから乾燥工程を行うことができ、これにより本発明の効果がさらに発揮される。すなわち、製造工程における微粉及び粗粒の発生を抑えて、微粉及び粗粒の割合が低減されたオロパタジン又は薬学的に許容される塩を含有する粒状組成物及び該粒状組成物を用いた製剤を収率良く製造することができる。
【0044】
湿塊整粒工程において用いられる装置としては、特に限定されるものではなく、通常使用される整粒機又は造粒機が使用できるが、特に解砕整粒機を使用することが好ましい。「解砕」は棒状の回転体(回転数:約800rpm~3000rpm)等により押しつぶすような作用で粒子を細かくする操作であり、「解砕」と同様に粒子を細かくする処理として「粉砕」があるが、粉砕機はハンマーやピンにより粉末粒子を圧縮、衝撃、摩擦、せん断等の作用で細かくする点で異なる操作である。解砕整粒機としては、例えば、投入した原料粉末を回転するインペラ(回転羽根)による遠心力で円筒状のスクリーンに押し付けで解砕し、インペラ上で整粒した後、スクリーンに設けられた多数の開口部から整粒物を排出するという機能を有するものが挙げられる。本製造方法において、解砕整粒機のスクリーン径(スクリーンの開口部の直径)は、好ましくは5mm~20mm、より好ましくは10mm~15mmに、また、回転数は好ましくは800~2000rpm、より好ましくは1000~1500rpmに設定することができる。
【0045】
(III)乾燥・粉砕整粒工程
上記工程(I)又は(II)で調製された造粒物又は整粒物の乾燥には、一般的な方法、例えば、並行流箱型乾燥機、通気流箱型乾燥機、流動層乾燥機、真空式乾燥機等の各種の乾燥装置を用いた乾燥方法を採用することができる。
【0046】
粉砕整粒方法は、特に限定されるものではなく、一般的な整粒方法で通常使用される整粒機又は造粒機を使用して行うことができる。粉砕整粒装置として、特に限定されるものではないが、例えば、オシュレータ式整粒機、網式造粒機等を挙げることができる。本工程においては、造粒工程等で得られた造粒物を、所定の粒度分布の粒状組成物とするために、整粒装置のスクリーン(メッシュ、パンチング等)の種類、スクリーンの目開き、パンチングの穴形状・サイズ等を選定する必要がある。例えば、1000μm未満の粒径を有する粒状組成物を得たい場合には、初回の粉砕・整粒工程において、目開き1180μm(14メッシュ)又は1400μm(12メッシュ)、2回目以降の粉砕・整粒工程において、目開き850μm(18メッシュ)又は710μm(22メッシュ)のスクリーンをそれぞれ採用することができる。また、850μm未満の粒径を有する粒状組成物を得たい場合には、初回の粉砕・整粒工程において、目開き1000μm(16メッシュ)又は1180μm(14メッシュ)、2回目以降の粉砕・整粒工程において、目開き710μm(22メッシュ)又は600μm(26メッシュ)のスクリーンをそれぞれ採用することができる。また、710μm未満の粒径を有する粒状組成物を得たい場合には、初回の粉砕・整粒工程において、目開き850μm(18メッシュ)又は1000μm(16メッシュ)、2回目以降の粉砕・整粒工程において、目開き600μm(26メッシュ)又は500μm(30メッシュ)のスクリーンをそれぞれ採用することができる。この様に、初回の粉砕・整粒工程においては所望の粒径よりも少し大きめの目開きのメッシュのスクリーンを採用し、2回目以降の粉砕・整粒工程においては、所望の粒径よりも少し小さめの目開きのメッシュのスクリーンを採用することが好ましく、そうすることで微粉の発生を抑えることができる。本発明においては、好ましくは、初回は12~18メッシュのいずれかから選ばれる目開きのスクリーンを用い、2回目以降は18~30メッシュのいずれかから選ばれる初回より小さい目開きのスクリーンを用い、さらに好ましくは、初回は16メッシュの目開きのスクリーンを用い、2回目以降は22メッシュの目開きのスクリーンを用いる。なお、本願におけるメッシュサイズの表記は表1に基づくものである。
【0047】
【0048】
(IV)分級工程
分級操作には、気体を媒体とする乾式分級と液体を媒体とする湿式分級があるが、本製造方法においては乾式分級を選択するのが好ましい。また、乾式分級には、網面の上に粉体を載せ、何らかの手法で粒子に運動を与えることにより分ける篩分け法と、粒径による沈降速度の差を利用して分ける気流分散法があるが、本製造方法においては篩分け法を選択するのが好ましく、その装置には特に制限はない。本分級工程においては、上記工程(III)で調製された整粒物を振動篩等の篩分け装置により、所望の粒度分布に応じて、表1のメッシュの篩を選択して分級する。例えば、150~850μmの粒径を有する粒状組成物を分級により得たい場合、18メッシュの篩(篩A)と100メッシュの篩(篩B)を用いて篩過し、粗粒:18メッシュの篩に残留するもの(残留粒子A)、分級品:18メッシュの篩を通過し100メッシュの篩に残留するもの、及び、微粉:100メッシュの篩を通過するもの(通過粒子B)、に分ける。本発明においては、粒径の下限が125~160μmで上限が710μm~1000μmである粒状組成物を得る場合、目開きが16~22メッシュのいずれかから選ばれる篩A及び目開きが93~119メッシュのいずれかから選ばれる篩Bで篩過するのが好ましい。
【0049】
(V)再整粒・分級工程
本工程(V)では、上記工程(IV)において得られた粗粒(残留粒子A)について、再度、上記工程(III)の粉砕整粒工程及び上記工程(IV)を行い、粗粒(残留粒子A)、分級品及び微粉(通過粒子B)に分級する。ここで、粗粒(残留粒子A)については廃棄する。本工程(V)における粉砕整粒工程では、上記工程(III)の粉砕整粒工程で用いた篩よりも目開きが小さい篩を用いることが好ましい。例えば、850μm未満の粒径を有する粒状組成物を得たい場合には、本工程(V)においては、上記工程(III)において好ましいメッシュである目開き1000μm(16メッシュ)又は1180μm(14メッシュ)等よりも小さい目開き710μm(22メッシュ)又は600μm(26メッシュ)等のメッシュを採用することが好ましい。そうすることで微粉の発生を抑えると共に、より多くの850μm未満の粒径を有する粒状組成物を得ることができる。
【0050】
(VI)再造粒~分級工程
本工程(V)では、上記工程(IV)及び(V)において得られた微粉(通過粒子B)について、再度、(a)湿式造粒し、上記工程(II)~(IV)を行い、粗粒(残留粒子A)、分級品及び微粉(通過粒子B)に分級する。ここで、粗粒(残留粒子A)及び微粉(通過粒子B)については廃棄する。また、本工程(VI)における粉砕整粒工程では、上記工程(V)と同様に、上記工程(III)の粉砕整粒工程で用いた篩よりも目開きが小さいメッシュの篩を用いることが好ましい。
【0051】
(VII)混合工程
本工程(VII)では、上記工程(IV)、(V)及び(VI)で得られた分級品を、特に限定はされないが、回転式混合機等の混合機に入れて、混合することができる。また、本工程(VII)において、さらに滑沢剤及び/又は流動化剤、並びに、必要に応じて、その他添加剤を造粒することなく粉末で添加して混合することにより、顆粒剤、散剤、又はドライシロップ剤等の本製剤を調製することができる。
【実施例】
【0052】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
【0053】
本製剤の一例として調製されたオロパタジン塩酸塩ドライシロップ剤の処方を、製剤1g(1000mg)当たりの各含有成分の配合量により表2に示した。該ドライシロップ剤は、下記実施例に記載された調製方法により製造することができる。
【0054】
【0055】
実施例1:粒状組成物及び製剤の調製
白糖64.816部、DL-リンゴ酸0.4部、ジブチルヒドロキシトルエン0.4部、トレハロース水和物24部、オロパタジン塩酸塩1部、アセスルファムカリウム5部、デキストリン2部、軽質無水ケイ酸0.25部、エデト酸ナトリウム水和物0.44部、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)1.06部を撹拌造粒機に入れた。ここに、別途、HPC 0.44部、タウマチン0.004部を精製水5部に溶解させて調製した造粒液を入れ、造粒した。造粒後、解砕整粒機で湿塊整粒し、45℃で乾燥し、造粒乾燥品1を得た。造粒乾燥品1を目開き1000μmスクリーンの粉砕整粒機に入れて整粒し、整粒品1を得た。整粒品1を振動篩に入れ、目開き850μmと目開き150μmの篩で分級し、篩上品1、分級品1及び篩下品1を得た。
【0056】
篩上品1を目開き710μmのスクリーンの粉砕整粒機に入れて整粒し、整粒品2を得た。整粒品2を振動篩に入れ、目開き850μmと目開き150μmの篩で分級し、篩上品2、分級品2及び篩下品2を得た。篩下品1及び篩下品2を撹拌造粒機に入れ、精製水(総篩下品×0.08部)で造粒した。造粒後、解砕整粒機で湿塊整粒し、45℃で乾燥し、造粒乾燥品2を得た。造粒乾燥品2を目開き710μmのスクリ-ンの粉砕整粒機に入れて整粒し、整粒品3を得た。整粒品3を振動篩に入れ、目開き850μmと目開き150μmの篩で分級し、篩上品3、分級品3及び篩下品3を得た。分級品1~3と軽質無水ケイ酸0.19部を回転式混合機に入れて混合し、ドライシロップ剤を得た。
【0057】
試験例(1):味覚官能試験1
ランダムに選んだ男女計8名をパネラーとして味覚官能試験を実施した。対照品を先行品A(
図1のAに対応する顆粒製剤)とし、評価品を実施例1で得られた本製剤とした。はじめに対照品0.5g(オロパタジン塩酸塩として2.5mg)を水約50mLに混合/溶解し、全量を口に含み、30秒後に吐き出した。その後同様に、評価品0.25g(オロパタジン塩酸塩として2.5mg)を水約50mLに混合/溶解し、全量を口に含み、30秒後に吐き出した。対照品の甘味・苦味を基準に、評価品の甘味・苦味を評価した。
【0058】
評価結果は、「弱い」、「やや弱い」、「変わらない」、「やや強い」、「強い」の5段階で表した。その結果、甘味については、評価品が対照品に比べて「やや強い」が4名、「強い」が4名であった。苦味については、評価品と対照品とで「変わらない」が8名であった。
【0059】
試験例(2):味覚官能試験2
ランダムに選んだ男女計7名をパネラーとして味覚官能試験を実施した。対照品を先行品Aとし、評価品を実施例1で得られた本製剤とした。はじめに対照品0.5g(オロパタジン塩酸塩として2.5mg)を水約2mLに混合/溶解し、全量を口に含み、30秒後に吐き出した。その後、同様に、評価品0.25g(オロパタジン塩酸塩として2.5mg)を水約2mLに混合/溶解し、全量を口に含み、15秒後に吐き出した。対照品の甘味・苦味を基準に、評価品の甘味・苦味を評価した。
【0060】
評価結果は、試験例(1)と同様に表した。甘味については、評価品が対照品と比べて「変わらない」と答えた人数は1名、「やや強い」は2名、「強い」は4名であった。苦味については、評価品が対照品と比べて「やや弱い」は2名、「変わらない」は2名、「やや強い」は2名、「強い」が1名であった。
【0061】
試験例(3):溶液の透明度
オロパタジン塩酸塩2.5mgを含有する先行品3品の顆粒0.5g(いずれもオロパタジン塩酸塩として2.5mg)と実施例1で得られた本製剤0.25g(オロパタジン塩酸塩として2.5mg)を精製水30mLに混和した。溶液の透明度は
図1(写真)に示すとおりであった。
【0062】
A、B及びDは先行品の顆粒剤0.5g(いずれもオロパタジン塩酸塩として2.5mg)を精製水30mLに混和したものであり、Cが本製剤0.25g(オロパタジン塩酸塩として2.5mg)を精製水30mLに混和したものである。先行品Aは色素として黄色三二酸化鉄、酸化チタン、三二酸化鉄を含む製剤であり、水に混和した状態では黄色がかった乳白色を呈した。先行品B(
図1のBに対応する顆粒製剤)に含まれる色素は不明であるが、水に混和した状態では橙色を呈した。本製剤の結果を示すCでは、無色のほとんど透明な溶液となった。先行品D(
図1のDに対応する顆粒製剤)は色素として黄色三二酸化鉄、酸化チタン、三二酸化鉄を含む製剤であり、水に混和した状態では赤色がかった乳白色を呈した。
【0063】
先行品A、B及びDは、水に混和した際の色による印象と懸濁した透明でない溶液であることにより、飲みやすさを感じさせない(いかにも異物を服用する)感覚を生ぜしめ、特に小児には嫌悪されやすい。一方、本製剤を溶かした溶液であるCは無色で透明度が高いため、そのような悪い印象を与えない。そのため小児でも服用しやすくなり、服薬介助者の負担も軽減されるメリットがある。
【0064】
試験例(4)
実施例1と同様の製造工程、すなわち再整粒・再造粒の工程を実施して粒状組成物を製造した試験例1~4と再整粒・再造粒の工程を実施せずに粒状組成物を製造した比較例1~4において、得られた目開き850μmの篩上品(粗粒)、150μmの篩上品(分級品)及び150μmの篩下品(微粉)の合計量に対する各々の割合(重量%)を算出した。また、全仕込量に対する150μmの篩上品(分級品)の割合を回収率(重量%)として算出した。結果の一例を表3に示す。
【0065】
【0066】
表3から明らかなように、再整粒・再造粒の工程を実施することにより、粗粒及び微粉の発生を抑えて、所望の粒径150~850μmの粒子組成物を製造することができ、回収率も上げることができた。
【0067】
試験例(5)
実施例1の製造工程により得られたドライシロップ製剤のロットA~Cについて、篩分けによる粒度分布の測定を行った。結果の一例を表4に示す。
【0068】
【0069】
製造工程上の分級により粒径150~850μmの分級品として分けられた粒子組成物から調製されたドライシロップ剤について、粒度分布を測定した結果の表4から明らかなように、粒径150~850μmの分級品中には、実際には粒径150~850μmの粒子が約90%含有されることが確認された。
【0070】
試験例(6)
実施例1の製造工程により得られたドライシロップ剤ロットA~Cについて、混合機内からサンプリングした10サンプル(1.上層左端、2.上層中央部、3.上層右端、4.中層左端、5.中層中央部、6.上層右端、7.下層左端、8.下層中央部、9.下層右端、10.中層中央部奥側)中の有効成分のオロパタジン塩酸塩含量(重量%)の測定を行った。結果の一例を表5に示す。
【0071】
【0072】
表5から明らかなように、本製造方法により製造されたドライシロップ剤は、有効成分含量のバラツキが少なく、偏析が生じていないことが確認された。
【0073】
試験例(7)
白糖74.5部、トレハロース24部及びHPC 1.5部を用いて、実施例1で用いる造粒液中のHPCの濃度及び造粒液の調製に用いる精製水の量(全仕込量に対する割合)について検討した。また、本工程中の湿塊整粒の要否についても検討した。試験No. (1)~(7)を表6の条件にて行った。
【0074】
【0075】
なお、本検討においては、処方中の含量割合が少ない有効成分及び上記3成分以外の添加剤については配合せず、それら成分の配合量は便宜的に白糖の配合量に置き換えた。評価は、実施例1の分級操作における粒径850μm以上の粗粒(篩上品1)、粒径150~850μmの分級品1及び粒径150μmの微粉(篩下品1)の割合を算出して行った。但し、試験No.(1)及び(3)については、湿塊整粒は行わなかった。結果の一例を表6に示す。
【0076】
【0077】
表7から明らかなように、本製造工程において、生成物の微粉及び粗粒の発生を抑えるという点で、造粒液のHPCの濃度は8重量%で、全仕込量に対して5重量%の精製水を用いるのが好ましく、さらには、湿塊整粒の工程を実施するほうが好ましいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0078】
上述のとおり、オロパタジン又はその薬学的に許容される塩を含有する本粒状組成物及び本製剤は、苦味が抑えられて服用しやすい、先行品に比べて有効成分濃度が2倍あり服用量が半分ですむ、水に溶けやすく、溶かすと無色の透明度の高い溶液となるため見た目にも服用しやすいといった特徴を有する。
また、本製造方法によると、製造工程における微粉及び粗粒の発生が抑えられ、本粒状組成物を収率良く製造することができる。また、本製造方法により製造された粒状組成物及び本製剤は、偏析を生じにくいことから、有効成分含量のバラツキが少なく、また、使用時又は調剤時に発塵が起こりにくいという利点を有する。