(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240226BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20240226BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240226BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20240226BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240226BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240226BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240226BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20240226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240226BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240226BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240226BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240226BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23K10/16
A23L33/135
A61K8/99
A61K35/747
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/00 101
A61P17/06
A61P27/14
A61P29/00
A61P31/10
A61P37/02
A61P37/08
A61Q19/00
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2020565361
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2019006231
(87)【国際公開番号】W WO2019226002
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0058569
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCTC KCTC13519BP
(73)【特許権者】
【識別番号】520435511
【氏名又は名称】コバイオラブズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウ・リ・コ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・チョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ウク・ナム
(72)【発明者】
【氏名】グワン・ピョ・コ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジュ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソク・チョン・ソン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】鶴 剛史
【審判官】天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/013441(WO,A1)
【文献】特開2011-195513(JP,A)
【文献】国際公開第2007/138993(WO,A1)
【文献】特表2017-501741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0117100(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0151026(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104546947(CN,A)
【文献】特開2018-061473(JP,A)
【文献】特表2008-517015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus (JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー性疾患、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の軽減、予防又は治療の効果を有する、受託番号KCTC 13519BPを有するラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)KBL693株。
【請求項2】
配列番号1の16S rDNA配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載の株。
【請求項3】
請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、食品組成物。
【請求項4】
アレルギー症状の軽減、炎症症状の軽減、及び免疫調節からなる群から選択される少なくとも1つの効果を有する健康機能性食品組成物であることを特徴とする、請求項3に記載の食品組成物。
【請求項5】
前記アレルギー症状が、湿疹、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、及び食物アレルギーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、飼料組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、抗真菌組成物。
【請求項8】
マラセチア・フルフル(Malassezia furfur)に対する抗真菌活性を示すことを特徴とする、請求項7に記載の抗真菌組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の抗真菌組成物を含む、皮膚外用製剤。
【請求項10】
皮膚アレルギー、皮膚蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、真菌感染症、又は湿疹を改善するための医療用パッチであって、請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、医療用パッチ。
【請求項11】
アレルギー性疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患の処置のための医薬組成物であって、請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、医薬組成物。
【請求項12】
前記アレルギー性疾患が、湿疹、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、及び食品アレルギーからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記炎症性疾患又は自己免疫疾患が、関節リウマチ、リウマチ熱、狼瘡、全身性強皮症、アトピー性皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、結節性多発動脈炎、橋本甲状腺炎、側頭動脈炎、若年性糖尿病、円形脱毛症、天疱瘡、アフタ性口内炎、自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、アジソン病、クローン病、ベーチェット病、浮腫、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、慢性副鼻腔炎、咽頭喉頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、大腸炎、痛風、湿疹、ざ瘡、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、強直性脊椎炎、線維筋痛症、変形性関節症、肩の関節周囲炎、腱炎、腱鞘筋炎、肝炎、膀胱炎、腎炎、敗血症、血管炎、及び滑液包炎からなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
アレルギー性疾患、炎症性疾患、又は自己免疫疾患を処置するための方法であって、それを必要とする対象に請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを投与することを含み、前記対象はヒトを含まない動物である、方法。
【請求項15】
アレルギー性疾患、若しくは炎症性疾患、若しくは自己免疫疾患のための予防薬又は治療薬を調製するための組成物の使用であって、請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、組成物の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の株、前記株の培養物、
及び前記株の溶解
物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、化粧用組成物。
【請求項17】
皮膚アレルギー、皮膚蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、真菌感染症、又は湿疹を改善することを特徴とする、請求項16に記載の化粧用組成物。
【請求項18】
化粧用パッチである、請求項17に記載の化粧用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)KBL693株及びその使用に関する。より詳細には、本発明は、新規なラクトバチルス・クリスパタスKBL693のプロバイオティクス株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、アレルギー症状の軽減、炎症症状の軽減、及び免疫調節からなる群から選択される少なくとも1つの効果を有する健康機能性食品組成物;抗真菌組成物;並びにアトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患からなる群から選択される少なくとも1つの疾患の処置のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、腸内微生物のバランスを助ける抗微生物活性及び酵素活性を有する、微生物並びにそれらから得られる生成物を指す。加えて、プロバイオティクスは、乾燥細胞若しくは発酵産物の形態でヒト又は動物に提供される場合に、腸内フローラを改善する単一又は複数の株の形態の生細菌としても定義される。プロバイオティクスは、ヒトの腸に住みつかなければならず、非病原性及び非毒性でなければならず、かつそれらが腸に届くまで十分に長く生存していなければならない。更に、プロバイオティクスは、それらが送達される食品中で摂取されるまで生存能及び活性を維持しなければならず、感染を予防するために使用される抗生物質に対して感受性でなければならず、かつ抗生物質耐性プラスミドを有していてはならない。また、プロバイオティクスは、腸内環境において、酸、酵素及び胆汁に対して耐性でなければならない。
【0003】
これらのプロバイオティクスとしては、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、及びホスファターゼ等の消化酵素を産生する優れた能力を有するバチルス種(Bacillus sp.)、乳酸を産生するラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)、並びに代謝プロセスにおいて家畜の糞便に残った悪臭原因物質(アンモニア、硫化水素、及びアミン等)を使用することによって悪臭を予防する光合成細菌が挙げられ得る。最近、プロバイオティクスは、腸の健康の改善を含む、各種の健康機能の改善効果を有することが報告されており、それにより、既存の化合物系治療剤に取って代わることができる主要な治療物質として注目を集めている。
【0004】
その一方で、アレルギーは、外来物質(抗原、アレルゲン)に対する固有の応答変化を示す生化学的現象である。症状を引き起こす外来物質は、アレルゲンと呼ばれる一方、これらの症状に由来する疾患は、アレルギー性疾患と呼ばれる。アレルギーは、抗原-抗体反応から生じる生体内の病理過程である。一般に、反応を引き起こす期間、及び補体の関与に応じて、4種類のアレルギーがある。これらの中で、1型は、標的器官が、主に、消化器官、皮膚、及び肺であるアナフィラキシー型(即時型)であり、一般的な症状としては、消化管アレルギー、蕁麻疹、萎縮性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、及び気管支喘息等が挙げられる。1型の病理学的機構は、以下の通り公知である:抗原が、肥満細胞及び好塩基球の表面に付着したIgE抗体に接触すると、標的細胞が活性化されて、ヒスタミン、ロイコトリエン、及びPAF等の化学伝達物質を分泌し、次いで、血管及び平滑筋が収縮する。このような機構は、多くの場合、4型(遅延型)と組み合わされ得る。言い換えれば、このようなアナフィラキシー及びアレルギー反応は、肥満細胞等における様々な変化に起因して生じ得る。脱顆粒をもたらす肥満細胞の活性化は、抗原、抗IgE、レクチン等のFc受容体への結合、アナフィラトキシン等、又はカルシウムイオノフォア、化合物48/80、コデイン、及び合成副腎皮質刺激ホルモン等の他の薬物の刺激によって引き起こされる。
【0005】
血液中の肥満細胞及び好塩基球は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、喘息、食品アレルギー、及びアナフィラキシーショック等の多くのアレルギー性疾患を引き起こす、身体中の主な細胞として公知である。これらの細胞は、アレルギーを引き起こす抗体であるIgEに対するそれらの表面上の受容体(FcRI)を有し、細胞は、アレルギー原因物質(抗原、アレルゲン)によって刺激されて、細胞外に、それら自身の各種のアレルギー原因物質を分泌する(Kim Kら、Eur J Pharmacol、581巻:191~203頁、2008年)。
【0006】
アレルギー性皮膚炎の中で、アトピー性皮膚炎は、一般に広く知られているように、新生児又は小児に影響を与える慢性の再発性皮膚疾患であり、成人になるまで持続する場合がある。喘息又はアレルギー性鼻炎のように、アトピー性皮膚炎は、IL-4及びIL-5を産生するTリンパ球の局所浸潤と関連する炎症性皮膚疾患である。IL-4は、一般によく知られているように、ヘルパーT2(Th2)表現型の発達を制御し、免疫グロブリン(Ig)の過剰産生及び好酸球増加、並びに血清IgEレベルの増加をもたらす。食品及び吸入アレルゲンに関する皮膚試験に対して陽性の対象のうちの80~90%は、アトピー性皮膚炎を有することが分かった。
【0007】
アレルギー性疾患及びアトピー性皮膚炎を処置又は予防するための種々の処置があるが、有効な処置は、まだ見出されていない。いくつかの薬物に基づく処置が知られているが、処置のための薬物の短期投与でさえ耐性を発達させ、長期投与は重篤な副作用を引き起こすことがあり、したがって、アレルギー性疾患及びアトピー性皮膚炎のそのような薬物に基づく処置は、最近、回避されている。この状況下、任意の絶対的な明白な効果を有する処置がなければ、アレルギーに加えて、皮膚のそう痒及び発赤等の刺激性症状は、多くの場合、改善されない。
【0008】
この状況下、本発明者らは、プロバイオティクスの研究に専心して、満足な処置がないアトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患のための薬物に基づく処置に代わる方法を見出した。したがって、本発明は、ラクトバチルス・クリスパタスの新規株が、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患に対して優れた治療効果を示したことを確認することによって、更に、前記株が、抗炎症、免疫調節、及び抗真菌活性に対する優位な効果も示したことを確認することによって、完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Kim Kら、Eur J Pharmacol、581巻:191~203頁、2008年
【文献】Slyter,L.L.、J. Animal Sci.、1976年、43巻、910~926頁
【文献】Johnson, D. Eら、J.Anim.Sci.、1983年、56巻、735~739頁
【文献】Williams, P. E. V.ら、1990年、211頁
【文献】L. Lachmanら、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy、第3版、1986年、365~373頁
【文献】H. Suckerら、Pharmazeutische Technologie、Thieme、1991年、355~359頁
【文献】Hagers Handbuchder pharmazeutischen Praxis、第4版、7巻、739~742頁、及び766~778頁、(SpringerVerlag、1971年)
【文献】Remington's Pharmaceutical Sciences、第13版、1689~1691頁(Mack Publ., Co.、1970年)
【文献】Passante E、Inflamm. Res.、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、アトピー性皮膚炎等のアレルギー症状の軽減、炎症症状の軽減、及び免疫調節に対する優れた効果を示す新規株、並びに様々なその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株(受託番号KCTC13519BP)を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、食品組成物又は食品添加物組成物を提供する。
【0013】
本発明は、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、飼料組成物又は飼料添加物組成物も提供する。
【0014】
本発明は、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、抗ふけ組成物等の抗真菌組成物も提供する。
【0015】
本発明は、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患の処置のための医薬組成物であって、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、医薬組成物も提供する。
【0016】
本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患を処置するための方法であって、それを必要とする対象に前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを投与することを含む、方法も提供する。
【0017】
本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患の予防又は処置する使用のための、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物も提供する。
【0018】
本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患のための予防薬又は治療薬を調製するための組成物の使用であって、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、組成物の使用も提供する。
【0019】
本発明は、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、化粧用組成物も提供する。
【0020】
本発明は、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、化粧用パッチ又は医療用パッチも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、RBL 2H3細胞株において抗原-抗体反応によりヒスタミン産生を誘導した後、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693を含む各種のラクトバチルス属(Lactobacillus)株及び抗ヒスタミン剤のケトチフェンの処置によるヒスタミン分泌の阻害効果を比較する結果を図示する。
【
図2】
図2は、EL4細胞株においてアレルギー反応を誘導した後、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株を含む各種のラクトバチルス属株によるIL-4発現の阻害効果を確認する結果を図示する。
【
図3】
図3は、EL4細胞株においてアレルギー反応を誘導した後、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株を含む各種のラクトバチルス属株によるIL-5発現の阻害効果を確認する結果を図示する。
【
図4】
図4は、U266B1細胞株においてアレルギー反応を誘導した後、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株を含む各種のラクトバチルス属株によるIgE分泌の阻害効果を確認する結果を図示する。
【
図5】
図5は、RAW 264.7細胞株において炎症反応を誘導した後、各種のラクトバチルス属株で処置した場合に、KBL693株の処置による抗炎症性のサイトカインであるIL-10の分泌の量を増加させる顕著な効果の観察の結果を図示する。
【
図6】
図6は、RAW 264.7細胞株において炎症反応を誘導した後、各種のラクトバチルス属株で処置した場合に、KBL693株の処置による顕著な免疫調節効果及び抗炎症効果、並びにIL-10/TNF-α値を確認する結果を図示する。
【
図7】
図7は、RAW 264.7細胞株において炎症反応を誘導した後、各種のラクトバチルス属株で処置した場合に、KBL693株の処置による顕著な免疫調節効果及び抗炎症効果、並びにIL-10/IL-6値を確認する結果を図示する。
【
図8】
図8は、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の抗真菌活性を確認するスポットアッセイの結果を図示する。
【
図9】
図9は、アトピー性皮膚炎が誘導されたマウスモデルに対する、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693の経口投与による皮膚炎スコアの低減効果を確認する結果を図示する。
【
図10】
図10は、アトピー性皮膚炎が誘導されたマウスモデルに対する、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の経口投与によるそう痒軽減効果を確認する結果を図示する。
【
図11】
図11は、アトピー性皮膚炎が誘導されたマウスモデルに対する、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の経口投与による耳の厚さの低下効果を確認する結果を図示する。
【
図12】
図12は、アトピー性皮膚炎が誘導されたマウスモデルに対する、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の経口投与による皮膚の厚さの低下効果を確認する結果を図示する。
【
図13】
図13(A)は、オボアルブミン(OVA)誘導喘息を有するマウスモデルを使用する実験計画を表し、
図13(B)は、H&E染色後の光学顕微鏡による、正常対照群(対照-PBS)、喘息誘導対照群(OVA-PBS)、及び試験群(OVA-LC206)の各群から収集された肺組織の観察を図示する。
【
図14】
図14は、正常対照群(対照-PBS)、喘息誘導対照群(OVA-PBS)、及び試験群(OVA-KBL693)のそれぞれから収集された肺組織中の総IL-5及び総IL-13の発現レベルの決定結果を図示する。
【
図15】
図15は、チリダニ(HDM)誘導喘息を有するマウスモデルに投与されたラクトバチルス・クリスパタスKBL693株による気道過敏症(AHR)の低減効果を確認する結果を図示する。
【
図16】
図16は、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の投与による、好酸球、IL-5
+ CD4 T細胞、及びIL-13
+ CD4 T細胞を低減する効果を確認する結果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語、科学用語は、当技術分野における通常の技能を有する者(「当業者」)によって理解されるものと同じものを意味する。一般に、本明細書で使用される命名法は、当技術分野において周知であり、一般的に使用されている。
【0023】
本発明は、ヒト身体に由来する微生物の抗アレルギー効果を見出し、優れたアレルギー阻害効果を有するラクトバチルス・クリスパタスKBL693株(受託番号KCTC13519BP)を選択した。前記株の16S rDNAの分析は、前記株が、これまで一般に知られていなかった新規株であることを実証する。
【0024】
本発明の1つの実施形態によれば、本発明は、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693(受託番号KCTC13519BP)の新規なプロバイオティクス株に関し、前記株は、配列番号1の16S rDNA配列を含むことによって特徴付けられる。
【0025】
<配列番号1>ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株(受託番号KCTC13519BP)の16S rDNA配列
CGCGGGGTGGCGCGAGCTATAATGCAGTCGAGCGAGCGGAACTAACAGATTTACTTCGGTAATGACGTTAGGAAAGCGAGCGGCGGATGGGTGAGTAACACGTGGGGAACCTGCCCCATAGTCTGGGATACCACTTGGAAACAGGTGCTAATACCGGATAAGAAAGCAGATCGCATGATCAGCTTTTAAAAGGCGGCGTAAGCTGTCGCTATGGGATGGCCCCGCGGTGCATTAGCTAGTTGGTAAGGTAAAGGCTTACCAAGGCGATGATGCATAGCCGAGTTGAGAGACTGATCGGCCACATTGGGACTGAGACACGGCCCAAACTCCTACGGGAGGCAGCAGTAGGGAATCTTCCACAATGGACGCAAGTCTGATGGAGCAACGCCGCGTGAGTGAAGAAGGTTTTCGGATCGTAAAGCTCTGTTGTTGGTGAAGAAGGATAGAGGTAGTAACTGGCCTTTATTTGACGGTAATCAACCAGAAAGTCACGGCTAACTACGTGCCAGCAGCCGCGGTAATACGTAGGTGGCAAGCGTTGTCCGGATTTATTGGGCGTAAAGCGAGCGCAGGCGGAAGAATAAGTCTGATGTGAAAGCCCTCGGCTTAACCGAGGAACTGCATCGGAAACTGTTTTTCTTGAGTGCAGAAGAGGAGAGTGGAACTCCATGTGTAGCGGTGGAATGCGTAGATATATGGAAGAACACCAGTGGCGAAGGCGGCTCTCTGGTCTGCAACTGACGCTGAGGCTCGAAAGCATGGGTAGCGAACAGGATTAGATACCCTGGTAGTCCATGCCGTAAACGATGAGTGCTAAGTGTTGGGAGGTTTCCGCCTCTCAGTGCTGCAGCTAACGCATTAAGCACTCCGCCTGGGGAGTACGACCGCAAGGTTGAAACTCAAAGGAATTGACGGGGGCCCGCACAAGCGGTGGAGCATGTGGTTTAATTCGAAGCAACGCGAAGAACCTTACCAGGTCTTGACATCTAGTGCCATTTGTAGAGATACAAAGTTCCCTTCGGGGACGCTAAGACAGGTGGTGCATGGCTGTCGTCAGCTCGTGTCGTGAGATGTTGGGTTAAGTCCCGCAACGAGCGCAACCCTTGTTATTAGTTGCCAGCATTAAGTTGGGCACTCTAATGAGACTGCCGGTGACAAACCGGAGGAAGGTGGGGATGACGTCAAGTCATCATGCCCCTTATGACCTGGGCTACACACGTGCTACAATGGGCAGTACAACGAGAAGCGAGCCTGCGAAGGCAAGCGAATCTCTGAAAGCTGTTCTCAGTTCGGACTGCAGTCTGCAACTCGACTGCACGAAGCTGGAATCGCTAGTAATCGCGGATCAGCACGCCGCGGTGAATACGTTCCCGGGCCTTGTACACACCGCCCGTCACACCATGGGAGTCTGCAATGCCCAAAGCCGGTGGCCTAACCTTCGGAAGGAGCCGTCTAAGTAGACAATGTGCA
【0026】
次いで、本発明は、前記株の有効性に関する実験を実施し、それにより、前記株が、アトピー性皮膚炎等のアレルギーに対する優れた阻害効果を有し、免疫調節性を有し、炎症反応を軽減し、かつ抗真菌活性を有することを検証した。更に、本発明者らは、前記効果が、生細菌の状態においてだけではなく、低温殺菌又は高温殺菌下においても、提供されたことを確認した。
【0027】
したがって、本発明の別の実施形態において、本発明は、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株(受託番号KCTC13519BP)、前記株の細胞成分、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、食品組成物又は食品添加物組成物に関する。
【0028】
組成物は、アトピー性皮膚炎等のアレルギー症状の軽減、炎症症状の軽減、及び免疫調節からなる群から選択される少なくとも1つの効果を有する健康機能性食品組成物であることを特徴とし得る。
【0029】
前記食品組成物又は食品添加物組成物は、限定されないが、例えば、食品、食品添加物、健康機能性食品組成物若しくは機能性飲料の主成分又は副成分として、アトピー性皮膚炎等のアレルギー症状の軽減、炎症症状の軽減、及び/又は免疫調節のため、並びにそれらの予防のために有効な食品として容易に利用することができる。
【0030】
「食品組成物」という用語は、少なくとも1つの栄養分を含む天然製品又は人工製品を指し、より好ましくは、ある特定の処理によって食用になる製品を指し、通常、食品、食品添加物、健康機能性食品、及び機能性飲料の全てを包含する。
【0031】
本発明による前記食品組成物を添加物として含み得る食品としては、例えば、色々な種類の食品、飲料、チューインガム、茶、複合ビタミン剤、又は機能性食品が挙げられ得る。加えて、本発明の食品としては、特別栄養食品(例えば、調製乳、幼児/乳児用食品)、加工肉製品、魚肉製品、豆腐、ムク、麺(例えば、ラーメン、アジアンヌードル)、ベーカリー製品、健康補助食品、調味料製品(例えば、醤油、大豆ペースト、赤唐辛子ペースト、混合ペースト)、ソース、菓子(例えば、スナック食品)、キャンディー、チョコレート、チューインガム、アイスクリーム、乳製品(例えば、発酵乳、チーズ)、他の加工食品、キムチ、塩漬け食品(例えば、色々な種類のキムチ、漬物)、飲料(例えば、フルーツジュース、野菜ジュース、豆乳、発酵飲料)、及び天然調味料(例えば、ラーメン用のブロス粉末)が挙げられるが、これらに限定されない。前記食品、飲料又は食品添加物は、従来の方法で調製することができる。
【0032】
「健康機能性食品」という用語は、物理的、生化学的、若しくは生物工学的手法を使用することによって、その機能が所定の目的のために発揮及び発現されるように価値が付与された食品、又は予防におけるリズム調整、疾患の予防、及び疾患からの回復等の関連する食品組成物の機能のインビボの調整機能が十分に発現されるように設計された加工食品の群である。このような機能性食品は、食品化学的に許容される食品補助添加物を含んでいてよく、その製造において一般に使用される適切な担体、賦形剤、及び希釈剤を追加で含んでいてよい。
【0033】
「機能性飲料」という用語は、本発明において使用される場合、口渇を緩和するため、又は味を味わうための飲料製品をまとめて指す。示された比率の必須成分として、アトピー性皮膚炎等のアレルギー症状の軽減、炎症症状の軽減、及び/又は免疫調節、並びにそれらの予防のための組成物が飲料中に含まれていなければならないことを除いて、特に制限されず、各種の香味剤又は天然炭水化物が、一般的な飲料におけるように、追加の成分としてその中に含有されてよい。
【0034】
上記に加えて、本発明による食品組成物又は食品添加物組成物を含む食品は、各種の栄養分、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成香味剤及び天然香味剤等の香味剤、着色剤及びフィラー(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド増粘剤、pH調整剤、安定剤、保存剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料において使用される炭酸化剤等を含有していてよく、上記成分のそれぞれは、単独で、又は互いに組み合わせて使用されてよい。
【0035】
本発明による食品組成物を含む食品において、本発明の組成物は、食品の総質量に対して、0.001質量%~100質量%、好ましくは、1質量%~99質量%の量で含まれていてよく、飲料の場合において、100mlに対して、0.001g~10g、好ましくは、0.01g~1gの量で含まれていてよい。しかしながら、健康及び衛生状態の目的、又は健康管理の目的のための長期間にわたる摂取のために、この量は、上記で言及した範囲を下回っていてよく、有効成分は、安全性プロファイルの観点で問題がないので、それらは、範囲を上回る量で使用することができ、それらは、上記で言及した量の範囲に限定されない。
【0036】
本発明による食品組成物は、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株を、単独で、若しくは許容される担体と組み合わせて含んでいてよく、又はヒト若しくは動物による食物摂取に適切な組成物の形態で調製されていてよい。即ち、組成物は、プロバイオティクス細菌を含まないか、又は2~3のプロバイオティクス細菌を含む、食品に添加されてよい。例えば、本発明の食品の調製において、本発明による株と組み合わせて使用することができる微生物は、ヒト又は動物による食物摂取に適切でなければならず、かつ病原体、有害細菌を阻害するか、又は取り込みの際に哺乳動物の腸管中の微生物のバランスを改善する、プロバイオティクス活性を有していなければならないが、これらに限定されない。このようなプロバイオティクス微生物としては、例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、又はトルロプシス属(Torulopsis)等の酵母、アスペルギルス属(Aspergillus)、リゾプス属(Rhizopus)、ムコール属(Mucor)、又はペニシリウム属(Penicillium)等の真菌、及びラクトバチルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、バチルス属(Bacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、又はペディオコッカス属(Pediococcus)の属に属する細菌が挙げられ得る。適切なプロバイオティクス微生物としては、具体的には、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブルッキィ(Lactobacillus delbruckii)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ファルシミナス(Lactobacillus farciminus)、ラクトバチルス・ガッセリー(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、又はペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)が挙げられ得る。好ましくは、本発明による食品組成物は、その効果を更に増強するために、優れたプロバイオティクス活性、並びに抗アレルギー、抗炎症、及び/又は免疫調節の改善の優位な活性を有するプロバイオティクス微生物混合物を更に含んでいてもよい。本発明の食品組成物に含まれ得る担体としては、例えば、増量剤、高繊維添加物、カプセル化剤、及び脂質が挙げられ得、これらは当技術分野において広く周知である。本発明におけるラクトバチルス・クリスパタスKBL693の株は、凍結乾燥形態若しくはカプセル化形態、又は培養懸濁液若しくは乾燥粉末の形態であり得る。
【0037】
本発明の組成物は、前記株を含む飼料添加物、又はこれを含む飼料の形態で提供することもできる。
【0038】
本発明の飼料添加物は、乾燥製剤又は液体製剤の形態であってよく、前記ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株に加えて、他の非病原微生物を更に含んでいてよい。飼料添加物に添加することができる微生物としては、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、及び糖変換酵素を産生し得るバチルス・サブティリス、ウシの胃におけるような嫌気性条件下で生理学的活性及び有機化合物の分解性を有するラクトバチルス属株、動物の体重増加、乳量、及び飼料の消化性に対する効果を示すアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(Slyter,L.L.、J. Animal Sci.、1976年、43巻、910~926頁)、並びにサッカロミセス・セレビシエ等の酵母(Johnson, D. Eら、J.Anim.Sci.、1983年、56巻、735~739頁;Williams, P. E. V.ら、1990年、211頁)が挙げられ得る。
【0039】
本発明の飼料添加物は、前記ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株に加えて、少なくとも1つの酵素剤を追加で含んでいてよい。追加の酵素剤は、乾燥形態又は液体形態であり得、例えば、リパーゼ等の脂肪分解酵素、フィチン酸を分解することによってホスフェート及びイノシトールホスフェートを産生するフィターゼ、アミラーゼ、即ち、例えば、デンプン及びグリコーゲンに含まれるα-1,4-グリコシド結合を加水分解する酵素、ホスファターゼ、即ち、有機リン酸エステルを加水分解する酵素、セルロースを分解するカルボキシメチルセルラーゼ、キシロースを分解するキシラーゼ、マルトースを2つのグルコース分子に加水分解するマルターゼ、並びにショ糖を加水分解することによってグルコース-フルクトース混合物を産生するインベルターゼ等の糖生成酵素が挙げられ得る。
【0040】
飼料添加物としての本発明のラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の使用において、各種の穀物及び大豆タンパク質を含む、ピーナッツ、エンドウ、ビート、果肉、穀物副産物、動物の腸の粉末、及び魚粉末等の飼料のための原材料を使用することができる。これらは、加工されていてよく、又は加工されていなくてよく、限定されずに使用することができる。加工としては、限定されないが、飼料の原材料が投入され、所与の出口に対して圧力下で圧縮され得るようなプロセスを挙げることができ、タンパク質については、好ましくは、タンパク質が変性されて利用能を増加させる押出を使用することができる。押出は、熱処理によりタンパク質を変性させて、抗酵素因子を破壊し、有利である。更に、大豆タンパク質については、その消化性は、大豆中に存在するプロテアーゼの阻害剤の1つであるチロシン阻害剤等の反栄養素を不活性化する押出によって改善することができる。更に、押出は、プロテアーゼによる消化性の改善を促進することができ、大豆タンパク質の栄養価を増強する。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、抗真菌組成物に関する。
【0042】
組成物は、限定されないが、マラセチア・フルフル(Malassezia furfur)、マラセチア・グロボーサ(Malassezia globos)、及びマラセチア・レストリクタからなる群から選択される1つに対する抗真菌活性を示すことによって特徴付けることができる。
【0043】
組成物は、脂漏性皮膚炎若しくはふけを、予防、軽減又は処置するための組成物であり得、前記脂漏性皮膚炎は、頭皮におけるものであり得る。
【0044】
更に、前記組成物は、真菌感染に起因する、蕁麻疹、発疹、体部白癬、股部白癬、又は足白癬を、予防、軽減又は処置するための組成物であり得る。
【0045】
前記株、並びに前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~50質量%の量で含まれ得る。
【0046】
前記抗真菌組成物は、医薬組成物、化粧用組成物又は健康食品組成物であり得、これは、皮膚外用製剤でもあり得る。
【0047】
前記化粧用組成物は、局所適用のために適切な全ての剤形、例えば、液体、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、懸濁液、固体、ゲル、粉末、ペースト、フォーム又はエアロゾルの形態で提供することができる。上記剤形の前記組成物は、当技術分野において使用される従来の方法で調製することができる。
【0048】
上記成分に加えて、前記組成物は、主たる効果を害しない量で、好ましくは、主たる効果に対して相乗効果を提供する量で、他の成分を含んでいてよい。本発明による組成物は、ビタミン、ポリペプチド、多糖類、及びスフィンゴ脂質からなる群から選択される物質を含んでいてよい。更に、本発明の化粧用組成物は、保湿剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、UV吸収剤、保存剤、殺菌剤、抗酸化剤、pH調整剤、有機及び無機顔料、香味剤、冷却剤、又は制汗剤を含んでいてもよい。前記成分を合わせたパーセンテージは、本発明の目的及び効果を妨げない範囲内で、当業者によって選択することができ、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、特に、0.01質量%~3質量%の範囲であり得る。
【0049】
上記の実施形態によれば、本発明の抗真菌組成物は、クリーム、軟膏、シャンプー、又はトリートメント等の皮膚外用製剤であり得る。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患の処置又は予防のための医薬組成物であって、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の細胞成分、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物に関する。
【0051】
本発明の医薬組成物は、生細菌の細胞成分、乾燥株、前記株の培養物、前記株の溶解物、又は薬学的に許容される担体若しくは媒体と組み合わせた組成物の形態で提供することができる。本明細書において使用することができる担体又は媒体としては、溶媒、分散剤、コーティング、エンハンサー、徐放性製剤(即ち、持続放出製剤)、又はデンプン、ポリオール、顆粒、極細セルロース、Celphere等の微結晶性セルロース、Celphereビーズ、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤を含む少なくとも1つの不活性賦形剤が挙げられ得る。上記組成物の錠剤は、必要に応じて、標準的な水性又は非水性の手法によってコーティングされてよい。薬学的に許容される不活性担体及び前記追加の成分としての使用のための薬学的に許容される担体及び賦形剤の例としては、例えば、結合剤、フィラー、崩壊剤、滑沢剤、抗菌剤、及びコーティング剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0052】
更に、本発明の医薬組成物は、軟膏、クリーム、ペースト、皮膚適用のための液体及び溶液、グリセロゼラチン、リニメント剤、皮膚適用のための粉末、エアロゾル、並びにパップ剤からなる群から選択される剤形を含む外用製剤として、使用することができる。
【0053】
本発明において、前記アレルギー性疾患は、IL-4又はIL-5発現と関連する状態を指し、例えば、湿疹、アレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹、又はアナフィラキシーが挙げられ得る。好ましくは、本発明は、疾患が、限定されないが、乳児湿疹、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、及び食品アレルギーからなる群から選択されることを特徴とし得る。
【0054】
本発明において、前記炎症性疾患若しくは自己免疫疾患、又は免疫調節によって軽減することができる症状は、抗炎症性の免疫調節性サイトカインであるIL-10の発現若しくは分泌を促進することによって、処置、軽減又は予防することができるものであり、例えば、関節リウマチ、リウマチ熱、狼瘡、全身性強皮症、アトピー性皮膚炎、乾癬、乾癬性関節炎、喘息、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、皮膚筋炎、多発性筋炎、多発性硬化症、自己免疫性脳脊髄炎、結節性多発動脈炎、橋本甲状腺炎、側頭動脈炎、若年性糖尿病、円形脱毛症、天疱瘡、アフタ性口内炎、自己免疫性溶血性貧血、ウェゲナー肉芽腫症、シェーグレン症候群、アジソン病、クローン病、ベーチェット病、浮腫、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、慢性副鼻腔炎、咽頭喉頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、大腸炎、痛風、湿疹、ざ瘡、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、強直性脊椎炎、線維筋痛症、変形性関節症、肩の関節周囲炎、腱炎、腱鞘筋炎、肝炎、膀胱炎、腎炎、敗血症、血管炎、滑液包炎等が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0055】
「処置する」という用語は、特に言及しない限り、前記用語と共に使用される疾患若しくは状態、又はその1つ若しくは複数の症状を反転又は軽減すること、その進行を阻害すること、或いはそれを予防することを指す。本発明において使用される「処置」という用語は、上記に定義する「処置する」の行為を指す。したがって、哺乳動物における疾患の処置又は治療レジメンは、以下のうちの1つ又は複数を含み得る。
(1)疾患の発展を阻害する、即ち、その発達を阻害する
(2)疾患の広がりを予防する
(3)疾患を軽減する
(4)疾患の再発を予防する、及び
(5)疾患の症状を緩和する
【0056】
アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患を予防又は処置するための本発明の組成物は、薬学的有効量のラクトバチルス・クリスパタスKBL693株を、単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤の少なくとも1つと組み合わせて、含み得る。
【0057】
本発明において、「有効量」という用語は、所望の効果を提供するのに十分に高いが、医学的判断下で重篤な副作用を予防するのに十分に低い、量を意味する。本発明の組成物によって身体に投与される微生物の量は、投与経路及び投与標的を考慮して、適切に調整することができる。
【0058】
本発明の組成物は、1日あたり1回又は複数回、対象に投与することができる。単位投薬量は、ヒト対象及び他の哺乳動物への単位投与のために適切な物理的な不連続単位を意味し、それぞれの単位は、適切な薬学的担体、及び治療効果を提供する所定量の本発明のラクトバチルス・クリスパタスKBL693株を含む。成人患者に対する経口投与のための投薬量単位は、好ましくは、0.001g以上の本発明の微生物を含有し、本発明の組成物の経口投薬量は、1用量あたり、0.001~10g、好ましくは、0.01g~5gである。本発明の微生物の薬学的有効量は、0.01g~10g/日である。しかしながら、投薬量は、患者の疾患の重症度、並びに一緒に使用される微生物及び補助有効成分に応じて変わる。加えて、1日の総投薬量は、数回に分けることができ、必要により連続的に投与することができる。したがって、上記投薬量範囲は、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0059】
更に、上記で使用される「薬学的に許容される」という用語は、ヒトに投与された場合に、生理学的に許容され、胃腸障害若しくは眩暈等のアレルギー反応、又は同様の反応を引き起こさない、組成物を指す。
【0060】
本発明の組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の即時放出、持続放出、又は遅延放出を提供することができるように、当技術分野において公知の方法を使用して製剤化することができる。剤形は、散剤、顆粒剤、錠剤、乳剤、シロップ剤、エアロゾル、軟若しくは硬ゼラチンカプセル剤、滅菌注射液、又は滅菌粉末であり得る。更に、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患を予防又は処置するための本発明の組成物は、経口、経皮、皮下、静脈内、又は筋肉内投与を含む、いくつかの経路を介して投与することができる。活性成分の投薬量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重、及び患者の重症度等の各種の要因に応じて、適切に選択することができる。アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患を処置するための本発明の組成物は、関連する症状を、予防、軽減、又は処置する効果を有する公知化合物と組み合わせて投与することができる。
【0061】
本発明の医薬組成物は、特に、腸溶コーティング製剤の経口単位剤形で提供することができる。「腸溶コーティング」という用語は、本明細書で使用される場合、胃酸によって分解されることなく、胃中に留まることができ、かつ腸管中で十分に崩壊して、そこで活性成分を放出することができる、任意の公知の薬学的に許容されるコーティングを含む。本発明の「腸溶コーティング」は、pH1のHCl溶液等の人工胃液を36℃~38℃で接触させた場合に、2時間又はそれよりも長く維持され得、その後、pH6.8のKH2PO4緩衝液等の人工腸液中で、好ましくは、30分内に崩壊し得る、コーティングを指す。
【0062】
本発明の腸溶コーティングは、1つのコア上に、約16mg~30mg、好ましくは、16mg~20mg、又は25mg以下の量でコーティングされる。本発明の腸溶コーティングの厚さが、5μm~100μm、好ましくは、20μm~80μmである場合、満足のいく結果を、腸溶コーティングとして得ることができる。腸溶コーティングの材料は、公知のポリマー材料から適切に選択することができる。適切なポリマー材料は、多くの公知文献[L. Lachmanら、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy、第3版、1986年、365~373頁;H. Suckerら、Pharmazeutische Technologie、Thieme、1991年、355~359頁;Hagers Handbuchder pharmazeutischen Praxis、第4版、7巻、739~742頁、及び766~778頁、(SpringerVerlag、1971年);並びにRemington's Pharmaceutical Sciences、第13版、1689~1691頁(Mack Publ., Co.、1970年)]に列挙されており、セルロースエステル誘導体、セルロースエーテル、アクリル樹脂及びメタクリレートのコポリマー、並びにマレイン酸及びフタル酸誘導体のコポリマーが、そこに含まれ得る。
【0063】
本発明の腸溶コーティングは、腸溶コーティング液がコア上に噴霧される、従来の腸溶コーティング法を使用して、調製することができる。腸溶コーティングプロセスのために使用される適切な溶媒は、エタノール等のアルコール、アセトン等のケトン、ジクロロメタン(CH2Cl2)等のハロゲン化炭化水素溶媒、及びこれらの溶媒の混合溶媒である。フタル酸ジ-n-ブチル又はトリアセチン等の軟化剤は、1:約0.05~約0.3(コーティング材料:軟化剤)の比で、コーティング液に添加される。噴霧プロセスを連続的に行うことが適切であり、コーティングの条件を考慮して、噴霧量を調整することが可能である。噴霧手順は、各種調整することができ、満足のいく結果は、一般に、約1bar~約1.5barの噴霧圧力を用いて得ることができる。
【0064】
本発明の別の実施形態において、本発明は、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患を予防若しくは処置するための前記株又は前記組成物の使用、並びに上記疾患のための治療剤を調製するための前記株又は前記組成物の使用を提供する。
【0065】
特に、本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患の予防又は処置する使用のための、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物に関する。
【0066】
本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患のための予防薬又は治療薬を調製するための組成物の使用であって、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、組成物の使用にも関する。
【0067】
「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患を低減するために、疾患を防ぐこと、遅延させること、妨げること又は邪魔することと関連する。
【0068】
「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患の症状を、寛解、治癒若しくは低減するため、又は疾患の進行を低減若しくは停止するために、疾患に罹患した対象について世話することと関連する。
【0069】
本発明の別の実施形態において、本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患を予防又は処置するための方法であって、薬学的有効量の株又は前記組成物を、前記疾患の予防若しくは処置を必要とする対象、又は前記疾患の軽減を必要とする対象に、投与することを含む、方法を提供する。
【0070】
特に、本発明は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー性疾患、及び/又は炎症性疾患若しくは自己免疫疾患を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の、前記株、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを投与することを含む、方法も提供する。
【0071】
前記疾患を予防又は処置するための方法、その投与方法のために使用される医薬組成物は、上記に記載しているので、組成物及び方法の間で重複する内容は、本明細書の必要以上の複雑さを避けるために、本明細書において省略する。
【0072】
その一方で、前記疾患を予防又は処置するための組成物を投与することができる前記対象としては、ヒトを含む全ての動物が挙げられる。例えば、対象は、イヌ、ネコ、又はマウス等の動物であり得る。
【0073】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は、薬学的有効量の、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の細胞成分、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、化粧用組成物に関する。
【0074】
化粧用組成物は、限定されないが、皮膚アレルギー、皮膚蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、真菌感染症、及び湿疹からなる群から選択される少なくとも1つの敏感肌状態を軽減するその機能によって特徴付けられ得る。
【0075】
「化粧用組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の細胞成分、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む組成物を指し、任意の種類の剤形を取り得る。例えば、前記化粧用組成物を使用することによって調製される化粧品としては、クリーム、パック、ローション、エッセンス、化粧液、ファンデーション、及び化粧下地が挙げられ得、限定されないが、本発明の目的を達成するために、上記に列挙された任意の剤形で商業化され得る。本発明の化粧用組成物に含まれる成分としては、上記の成分に加えて、化粧用組成物において通常使用される成分、例えば、抗酸化剤、安定剤、可溶化剤、ビタミン、顔料及び香料、並びに担体等の従来の補助剤が挙げられる。
【0076】
本発明の別の実施形態において、本発明は、ラクトバチルス・クリスパタスKBL693株の細胞成分、前記株の培養物、前記株の溶解物、及び前記株の抽出物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、機能性パッチに関し、前記機能性パッチは、化粧用又は医療用の目的のために使用され得る。
【0077】
パッチは、限定されないが、皮膚アレルギー、皮膚蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、真菌感染症、及び湿疹からなる群から選択される少なくとも1つの敏感肌状態を軽減するその機能によって特徴付けられ得る。
【0078】
本発明において、パッチは、典型的には、送達される物質を含有する小さな粘着包帯であり、包帯は、様々な形態を取ることができる。最も単純な形態は、支持体上に置かれた送達される物質を含有するリザーバーを含む単一の接着体である。リザーバーは、典型的には、化粧的又は薬学的に許容される感圧接着剤から形成されるが、一部の場合では、皮膚接触表面に適切な薄い接着層を備えた非接着物質から形成されてもよい。送達される物質がパッチからパッチを着けた対象に投与される速度は、送達される物質に対する皮膚の透過性が、通常、個体及び皮膚の場所に依存するので、変化させることができ、これは、当業者によって容易に選択することができる。
【0079】
本明細書の以下において、本発明を、実施例を通してより詳細に記載する。これらの実施例は、本発明を説明するのみのためであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されると解釈されるべきではないことは当業者に明らかであろう。
【実施例1】
【0080】
好塩基球におけるヒスタミン分泌の阻害から生じるアレルギー反応に対するKBL693による軽減及び処置効果
アレルギー反応において、ヒスタミンは、組織中で発現し、炎症反応を引き起こし、ヒスタミン分泌を抑制すると、ヒスタミンによる反応を遮断することによってアレルギー症状の軽減をもたらすことが報告されている。本発明は、ヒスタミン分泌の阻害によるアレルギー反応の軽減及び処置に対する効果を示し得るプロバイオティクス株の選択を試みた。この目的で、ヒト腟に由来する全部で8つのラクトバチルス属株を、ヒスタミン分泌を抑制する能力について評価した。ヒスタミン分泌を抑制する能力を、RBL-2H3細胞株を培養後に脱顆粒を誘導し、次いで、基質との比色分析反応を使用して、ヒスタミンと共に共分泌されるβ-ヘキソサミニダーゼの活性を測定することによって、確認した。
【0081】
1-1.RBL-2H3細胞株のインキュベーション
RBL-2H3(ATCC番号CRL-2256)細胞を、10%のFBS(ウシ胎仔血清)、ペニシリン(100μg/mL)及びストレプトマイシン(100μg/mL)で補充されたDMEM培地中、5%のCO2下、37℃で培養し、次いで、3日ごとに1回継代した。RBL-2H3細胞を、1×106個細胞/ウェルの濃度で6ウェルプレートに播種し、次いで、3時間培養し、次いで、IgE(0.5μg/mL)で処置して、16~20時間インキュベートした。
【0082】
1-2.株のインキュベーション及び培養液の調製
使用するラクトバチルス・クリスパタス株を、0.5%のシステインで補充されたMRS培地中で培養し、18時間間隔で合計で2回の継代により活性化し、次いで、実験に使用した。得られた培養液を15,000×gで3分間遠心分離して、上清を収集した。
【0083】
1-3.株の処置後の脱顆粒の誘導
6ウェルプレートに以前に播種されたRBL-2H3細胞の培地を除去した後、細胞を1mlのSiraganian緩衝液(pH7.2)で2回洗浄した。その後、細胞を、ウェルあたり120μLの以前に調製された細菌培養液又は陽性対照群のケトチフェン(20μg/mL)で処置し、5%のCO2インキュベーター中、37℃で20分間インキュベートし、続いて、60μLの抗原(DNP-HAS、1μg/mL)で処置して、抗原-抗体反応による脱顆粒を誘導した。陰性対照として、脱顆粒を、120μLのSiraganian緩衝液で処置した後、誘導した。反応を、5%のCO2インキュベーター中、37℃で20分間行い、次いで、上清を収集した。
【0084】
1-4.呈色反応の特定
β-ヘキソサミニダーゼの活性を特定するために、実施例1-3で収集された上清の25μLを、96ウェルプレートの各ウェルに移し、次いで、25μLの各基質(p-ニトロフェニルN-アセチル-D-グルコサミニダーゼ)をそこに添加し、続いて、反応を、5%のCO2インキュベーター中、37℃で90分間行った。次いで、200μLの停止溶液(Na2CO3/NaHCO3)を添加して、反応を停止し、次いで、吸光度を405nmで測定した。それぞれの種類のラクトバチルス・クリスパタスで処置した場合の吸光度を陰性対照群と比較し、パーセンテージに変換して、脱顆粒の阻害のレベルを示した。
【0085】
結果として、
図1及びTable 1(表1)において見ることができるように、KBL693株を含む10種類のラクトバチルス・クリスパタス株は、陰性対照群と比較して、顕著に低い量のβ-ヘキソサミニダーゼ分泌を示し、これらの中で9種は、陽性対照の市販の抗ヒスタミン剤であるケトチフェンのものよりも更に低いβ-ヘキソサミニダーゼ分泌の量を示した。結果として、KBL693を含むラクトバチルス・クリスパタス株が、ヒスタミンの過剰分泌によって引き起こされるアレルギー症状を効果的に軽減する、優れた脱顆粒予防活性を示したことが分かった。
【0086】
【実施例2】
【0087】
T細胞におけるTh2型サイトカインの阻害から生じるアレルギー反応に対するKBL693による軽減及び処置効果
IL-4及びIL-5等の2型ヘルパーT細胞(Th2)関連サイトカインは、Th2関連免疫反応を増加させること、及びIgE産生を増加させることによって、慢性アレルギー反応に寄与することが報告されている(Passante E、Inflamm. Res.、2009年)。本発明は、実施例1においてヒスタミン分泌の阻害に対する優れた効果を示すラクトバチルス・クリスパタス株の中で、慢性アレルギー反応の阻害に対する効果のさらなる比較を試みた。この目的で、IL-4及びIL-5の分泌を阻害する効果を、マウスT細胞株であるEL4細胞株を使用して、以下の通り試験した。
【0088】
2-1.EL-4細胞株のインキュベーション
EL4(ATCC番号TIB-39)細胞を、10%のFBS、ペニシリン(100μg/mL)及びストレプトマイシン(100μg/mL)で補充されたDMEM培地中、5%のCO2下、37℃で培養し、次いで、3日ごとに1回継代した。EL4細胞を、4×105個細胞/ウェルの濃度で24ウェルプレートに播種し、次いで、16~20時間培養して、アレルギー反応を誘導し、株で処置した。
【0089】
2-2.株のインキュベーション及び回収
使用するKBL693を含む9つのラクトバチルス・クリスパタス株を全部(KBL693、KBL709、KBL702、KBL696、KBL708、KBL707、KBL692、KBL694及びKBL706)、0.5%のシステインで補充されたMRS培地中で培養し、18時間間隔で合計で2回の継代により活性化し、次いで、実験に使用した。得られた培養液を15,000×gで3分間遠心分離し、沈殿をPBS緩衝液で洗浄した。株を、フローサイトメトリーのためのLIVE/DEAD(商標)BacLight(商標)細菌生存率及び計数キット(Thermo Fisher Scientific社、米国)を使用することによって、SYTO9及びPIで、15分間染色した。次いで、含有されているビーズを添加し、染色された生細菌の数を、フローサイトメトリーアッセイを使用することによって、計数した。
【0090】
2-3.株の処置、及びアレルギー反応を誘導した後のIL-4及びIL-5の量の測定
24ウェルプレートに以前に播種されたEL4細胞においてアレルギー反応を誘導するために、各ウェルを100μLのPMA(20ng/mL)及びイオノマイシン(1μg/mL)で処置した。次いで、300μLの以前に調製された株を、1:10の細胞の株に対する比で処置した。5%のCO2インキュベーター中、37℃で24時間のインキュベーション後、上清を収集し、マウスIL-4 ELISAセット(カタログ番号555232、BD OptEIA(商標))及びマウスIL-5 ELISAセット(カタログ番号555236、BD OptEIA(商標))を使用して、製造者の方法に従って、分泌されたIL-4及びIL-5の量を測定した。
【0091】
結果として、
図2及び3に示すように、これらのラクトバチルス・クリスパタス株は、一般に、IL-4及びIL-5分泌の阻害に対する効果を示し、特にこれらの中でKBL693株において、最も低い量のIL-4分泌が見出され、2番目に低い量のIL-5分泌が見出された。したがって、KBL693が、アレルギー反応を媒介するTh2型サイトカインの分泌の阻害によるアレルギーに対する治療及び予防効果を提供できたことが分かった。
【実施例3】
【0092】
IgE阻害から生じるアレルギー反応の軽減及び処置に対するKBL693の効果
免疫グロブリンE(IgE)は、免疫グロブリンの1種であり、アレルギー性疾患の発達に関与することが知られている。一般に、血清中のIgEの総量は、アレルギー性疾患を診断するために最も優先される方法の1つとして測定される。したがって、本発明は、ヒトB細胞株であるU266B1細胞株を使用することによって、KBL693によるIgE分泌の阻害効果の検証を試みた。
【0093】
3-1.U266B1細胞株のインキュベーション
U266B1(ATCC番号TIB-196)細胞を、10%のFBS、ペニシリン(100μg/mL)及びストレプトマイシン(100μg/mL)で補充されたRPMI-1640培地中、5%のCO2下、37℃で培養し、次いで、3日ごとに1回継代した。U266B1細胞を、1×105個細胞/ウェルの濃度で24ウェルプレートに播種し、次いで、16~20時間培養して、炎症反応を誘導し、次いで、それにより株で処置した。
【0094】
3-2.株のインキュベーション及び回収
本実験において使用する株を、実施例2-2と同様の方法で調製した。
【0095】
3-3.株の処置、及びアレルギー反応を誘導した後のIgE分泌の量の測定
24ウェルプレートに以前に播種されたU266B1細胞においてアレルギー反応を誘導するために、各ウェルを100μLのLPS(10μg/mL)及びIL-4(5ng/mL)で処置した。次いで、300μLの以前に調製された株を、1:10の細胞の株に対する比で処置した。5%のCO2インキュベーター中、37℃で48時間のインキュベーション後、上清を収集し、ヒトIgE ELISAキット(カタログ番号E88-108、Bethyl Laboratories社)を使用して、製造者の方法に従って、測定した。
【0096】
結果として、
図4に示すように、KBL693を含む7つのラクトバチルス・クリスパタス株で処置された群が、陰性対照群と比較して、IgE分泌の阻害に対する効果を示したことを確認した。本実験は、KBL693が、アレルギー反応に関与する主要な因子であるIgEの阻害によるアレルギー性疾患に対する治療及び予防効果を提供できたことを示した。
【実施例4】
【0097】
KBL693の免疫調節及び炎症阻害効果の分析
KBL693の免疫調節及び炎症阻害効果も、その抗アレルギー有効性に加えて、検証した。この目的で、免疫調節機能を有する代表的なサイトカインであるIL-10、炎症反応の主要な指標としてのサイトカインであるTNF-α及びIL-6の間の比(IL-10/TNF-α、IL-10/IL-6)を、炎症反応において重要な役割を果たすマクロファージを使用することによって測定した。
【0098】
4-1.RAW264.7細胞株のインキュベーション
RAW264.7(ATCC番号TIB-71)細胞を、10%のFBS、ペニシリン(100μg/mL)及びストレプトマイシン(100μg/mL)で補充されたDMEM培地中、5%のCO2下、37℃で培養し、次いで、3日ごとに1回継代した。RAW264.7細胞を、1×105個細胞/ウェルの濃度で24ウェルプレートに播種し、次いで、16~20時間培養し、次いで、実施例4-3のために使用した。
【0099】
4-2.株のインキュベーション及び試料の調製
同数の生細菌を有する培養液を収集し、次いで、3つの試料:生細菌、低温殺菌及び熱死滅として、調製した。生細菌、低温殺菌及び熱死滅のための試料を、実施例2-2の方法と同じ方法により、調製した。
【0100】
次いで、低温殺菌のための試料を70℃で30分間反応させ、同じ遠心分離プロセスにより調製した。熱死滅の試料を121℃で15分間滅菌し、同じプロセスにより調製した。陰性対照群として、0.5%のシステインで補充されたMRS培地を使用した。
【0101】
4-3.株の処置、及び炎症反応を誘導した後に分泌された炎症性サイトカインの量の測定
24ウェルプレートに以前に播種されたRAW264.7細胞において炎症反応を誘導するために、各ウェルを500μLのLPS(20ng/mL)で処置した。次いで、300μLの以前に調製された株を、1:10の細胞の株に対する比で処置し、5%のCO2インキュベーター中、37℃で24時間インキュベートした。培養された細胞株混合物中の上清を収集し、マウスTNF ELISAセットII(カタログ番号558534、BD OptEIA(商標))、マウスIL-6 ELISAセット(カタログ番号555240、BD OptEIA(商標))、及びマウスIL-10 ELISAセット(カタログ番号555252、BD OptEIA(商標))を使用して、製造者の方法に従って、各サイトカインの量を測定した。
【0102】
結果として、
図5に示すように、ラクトバチルス・クリスパタス株の中で、特にKBL693が、IL-10分泌を誘導し、したがって、免疫調節及び炎症反応の抑制の観点で優れた効果を示したことを確認した。
図6及び
図7に示すように、炎症促進性サイトカインのTNF-α及びIL-6で正されたIL-10を分泌する能力から、KBL693処置群が、対照群と比較してはるかに増強された、炎症阻害効果及び免疫調節能力を示したことを確認した。したがって、KBL693が、IL-10分泌による免疫調節及び炎症阻害活性を有することが分かった。加えて、これらの効果は、生細菌においてだけでなく、低温殺菌又は熱死滅した死体においても同様に確認され(Table 2(表2)及びTable(表3)を参照のこと)、KBL693を、死細菌等の各種の形態で免疫を調節し、炎症反応を抑制するために使用することができることを示す。
【0103】
【0104】
【実施例5】
【0105】
KBL693の抗真菌効果の分析
KBL693の抗真菌効果を、スポットアッセイ法によって確認した。約1%のKBL693を、MRS液体培地上に接種し、次いで、静置培養のために、嫌気性条件下、37℃のインキュベーター中で約24時間インキュベートした。細胞がインキュベートされた培養液を、嫌気性条件下で調製されたMRS個体培地に、各回で10μLの量でスポットし、次いで、嫌気性条件下、37℃で約24時間インキュベートした。真菌微生物であるマラセチア・フルフルKCTC 7545を、好気性条件下で調製されたmYPG液体培地に、1%の割合で接種することによって調製し、続いて、37℃のインキュベーター中、約24~48時間インキュベートした。抗真菌有効性の評価のために使用するmYPGソフト培地を、Table 4(表4)に示される成分を用いて調製し、2.5mLの調製した培養培地に、500μLのM.フルフル(M.furfur)をインキュベートした培養液を接種した。M.フルフルを接種した2.5mLのmYPGソフト培地を、KBL693でスポットされたMRS培地に注ぎ、1時間乾燥させた。乾燥培地を、好気性条件下、37℃のインキュベーター中、約24~48時間インキュベートした。透明ゾーンが培養培地中で特定された時に、抗真菌活性を、スポットされた乳酸菌の外側から透明ゾーンまでの長さを測定することによって、決定した。透明ゾーンは、真菌の成長が阻害された部分であり、乳酸菌によって引き起こされる抗真菌活性を、透明ゾーンまでの長さにより決定した。
【0106】
3回の繰り返し実験の結果として、透明ゾーンを、KBL693でスポットされた部分と約4.33mmの間隔で特定し(
図8)、これは、KBL693が真菌微生物の成長を効果的に抑制することができることを示す。
【0107】
【実施例6】
【0108】
アトピー状態の軽減に対するKBL693の効果
インビトロスクリーニング試験結果の包括的な再調査に基づいて、動物試験を、最も優れた免疫調節効果を有していたラクトバチルス・クリスパタスKBL692、KBL693及びKBL702を選択することによって、実施した。KBL693のアレルギー改善効果の中でアトピーの軽減に対する効果を検証するために、アトピー性皮膚疾患の動物モデルであるNC/Ngaマウスモデルを使用した。
【0109】
NC/Ngaマウスを5頭のマウスの群に分けた後、各マウスの背を耳の下側から尾の上側まで脱毛し、マウスを24時間放置した。次いで、200μLの1%のDNCB(ジニトロクロロベンゼン)溶液(アセトン:オリーブ油=3:1)を、脱毛された部分に、週に2回適用して、アトピー性皮膚炎を誘導した。皮膚炎の誘導の3週目から、200μLのPBSのみを対照群のマウスに毎日投与し;培養された試験株を遠心分離し、PBSでの希釈により洗浄し、回収し、次いで、少なくとも2×109CFUが200μLのPBSに添加されるように調製し、これを、試験群のマウスに、200μL/日で経口投与した。その一方で、200μLのデキサメタゾン(60μg/mL)を、陽性対照群のマウスに投与した。次いで、細菌の投与の3週間の間、対照群及び試験群のマウスの皮膚炎スコアを毎週測定し、細菌の投与の3週間後に、マウスの引っ掻き時間及び皮膚の厚さを測定した。
【0110】
6-1.皮膚炎スコアの評価
DNCB誘導皮膚病変を評価するために、皮膚炎スコアを以下の方法によって測定した。皮膚の状態を、株を投与してから3週目から、1週間の間隔で3週間、写真を撮ることによってモニターした。乾燥、浮腫、紅斑/出血の4つの指標、及び皮膚のびらん/剥脱をチェックした。そして、病変がない状態を0ポイント、軽度の状態を1ポイント、中度の状態を2ポイント、及び重度の状態を3ポイントとして、スコア化し、総スコアを評価した。
【0111】
結果として、
図9に示すように、DNCBによって誘導された皮膚炎スコアは、アトピー性皮膚炎が誘導された対照群(陰性)及び他のラクトバチルス・クリスパタス株を投与された群と比較して、KBL693を投与された試験群において顕著に低減された。結果として、KBL693の投与によるアトピー性皮膚炎を処置する効果を検証した。
【0112】
6-2.そう痒緩和効果
DNCBによって誘導されたアトピー性皮膚炎を患うマウスモデルにおけるKBL693の投与によるそう痒を軽減する効果を検証するために、引っ掻き時間を、株の投与の3週間後に10分間、マウスモデルのビデオを撮影することによって測定した。
【0113】
結果として、
図10において見ることができるように、引っ掻き時間は、アトピー性皮膚炎が誘導された対照群(陰性)及び他のラクトバチルス・クリスパタス株を投与された群と比較して、KBL693を投与された試験群において顕著に低減されたと思われ、これは、アトピー性皮膚炎のそう痒症状が、KBL693の投与によって非常に軽減されたことを確認した。
【0114】
6-3.皮膚の厚さの減少
DNCBによって誘導されたアトピー性皮膚炎を患うマウスモデルに対するKBL693の投与後のそう痒を軽減する効果を検証するために、マウスの耳の厚さ及び背面の皮膚の厚さを、株が投与された3週間後にキャリパーで測定し、アトピー性皮膚炎に起因する浮腫の症状の緩和を観察した。
【0115】
結果として、
図11及び12において見ることができるように、KBL693が投与された試験群及び陽性対照群において、耳及び背面の皮膚の厚さが顕著に低減されたことが観察された。
図11及び12において、693-7、693-8及び693-9は、それぞれ、KBL693が少なくとも2×10
7、2×10
8及び2×10
9CFUが200μLのPBSに添加されるように調製された試験群を意味し、これを、200μL/日で試験群のマウスに経口投与した。
【実施例7】
【0116】
オボアルブミン(OVA)誘導喘息のマウスモデルにおける喘息の処置及び予防に対するKBL693の効果
アレルギー性喘息に対するKBL693(LC206)の効果を検証するために、OVA誘導喘息のマウスモデルを以下の通り調製し、組織病理学検査を実施し、IL-5及びIL-13の発現レベルを評価した。
【0117】
7-1.OVA誘導喘息のマウスモデルの調製
約15gの平均体重を有する5週齢のBalb/cマウスを、1週間順化に付し、次いで、基本的な健康診断下で異常を示さなかったマウスを選択した。
図13(A)に示すように、使用するマウスを、正常対照群(対照-PBS;OVA投与又は吸入なし;n=8)、喘息誘導対照群(OVA-PBS;OVA投与又は吸入;n=9)、及び試験群(OVA-LC206;n=8)に分類した。マウスを実験の開始から31日目に犠牲にする前に、200μLのPBSを、正常対照群及び喘息誘導対照群に、毎日経口投与し、200μLの少なくとも2×10
9CFU/0.2mLでPBSに希釈されたKBL693を、試験群に、毎日経口投与した。
【0118】
感作を、それぞれ、1週間の順化後の1週間後(D7)及び3週間後(D21)に、マウスに、2mgの水酸化アルミニウム(Imject(商標)ミョウバンアジュバント、Thermofisher)及び20μgのOVA(オボアルブミン、Sigma-aldrich社)を懸濁させた200μLのリン酸緩衝液(pH7.4)を腹腔内注射することによって行った。実験の開始から28日目~30日目に、1%のOVAを、経鼻投与により肺に吸入した(3回の負荷)。ペントバルビタールを、最後の負荷後24時間経過した時に投与し(D31)、次いで、気管支切開を行って、肺組織試料を収集した。
【0119】
7-2.組織病理学検査
好酸球、好中球及びマクロファージからなる炎症細胞の浸潤を、抗原が処置された気管支において観察することができる。したがって、喘息に対するKBL693の効果を検証するために、実施例7-1において得られた各群の肺組織試料の組織病理学検査を行った。実施例7-1において得られた肺組織試料を、従来のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片手順により、4μm厚さの組織切片に調製し、次いで、ヘマトキシリン及びエオシンY(エオシンY;ThermoShandon社、ピッツバーグ、PA)によるH&E染色を実施した。H&E染色後、各群の組織切片を、光学顕微鏡で観察した(
図13(B))。
【0120】
結果として、
図13(B)に示すように、喘息誘導対照群(OVA-PBS)において、好酸球を含む多くの炎症細胞が、気管支の周囲に浸潤し、過剰増殖した上皮細胞、及び肥厚した気管支平滑筋も見られた。他方で、KBL693を投与された試験群(OVA-LC206)において、好酸球を含む炎症細胞の浸潤が顕著に低減され、気管支組織の厚さが低減され、上皮細胞はほとんど損傷を受けていなかった。結果として、OVA誘導アレルギー性喘息に対するKBL693の治療効果が確認された。
【0121】
7-3.総IL-5及び総IL-13の発現レベルのアッセイ
フローサイトメーター(LSRFortessa X-20、BD社)を使用して、各群から収集された肺組織試料からの肺における免疫細胞を評価した。IL-5
+ CD4
+ T細胞、IL-13
+ CD4
+ T細胞を染色するために、いくつかのマーカー(抗マウスCD45、BioLegend社;抗マウスCD3ε、BD社;抗マウス/ヒトIL-5、BioLegend社;抗マウスIL-13、Invitrogen社)に対する抗体を使用した。IL-5
+及びIL-13
+細胞を、マーカーとしてCD45及びCDεを有するリンパ球の中で、IL-5又はIL-13を産生する細胞を計数することによって決定した(
図14)。
【0122】
結果として、
図14に示すように、喘息誘導対照群(OVA-PBS)のマウスにおけるIL-5及びIL-13レベルが、正常対照群(PBS)と比較して、顕著に増加したが、KBL693を投与された試験群(OVA-KBL693)のマウスにおける総IL-5及び総IL-13のレベルが、喘息誘導対照群と比較して、顕著に減少したことが分かった。したがって、本発明のKBL693が、アレルギー反応を媒介するTh2型サイトカインであるIL-5及びIL-13の分泌の阻害によるアレルギー性喘息に対する治療及び予防効果を提供できたことが分かった。
【実施例8】
【0123】
チリダニ(HDM)誘導喘息のモデルにおける喘息の処置及び予防に対するKBL693の効果
チリダニは、外因性喘息の原因をもたらすアレルゲンである。アレルギー性喘息に対するKBL693の効果を検証するために、HDM誘導喘息のマウスモデルを以下の通り調製し、気道過敏性を評価し、CD45+細胞における好酸球の割合、CD4+ T細胞におけるIL-5+ CD4 T細胞の割合、及びCD4+ T細胞におけるIL-13+ CD4 T細胞の割合を決定した。
【0124】
8-1.HDM誘導喘息のマウスモデルの調製
約15gの平均体重を有する5週齢のBalb/cマウスを、1週間順化に付し、次いで、基本的な健康診断下で異常を示さなかったマウスを選択した。使用するマウスを、正常対照群(対照-PBS;HDM投与なし)、喘息誘導対照群(HDM-PBS;HDM投与)、及び試験群(HDM-KBL693)に分類し、各群あたり5頭のマウスを使用して、気道過敏症(AHR)を評価し、各群あたり8頭のマウスを使用して、肺における免疫細胞を評価した。
【0125】
感作を、1週間の順化後の1週間後(D7)に、マウスに10μgのHDM(Greer社)を懸濁させた50μLのリン酸緩衝液(pH7.4)を腹腔内投与することによって行った。感作から1週間後、10μgのHDMを懸濁させた50μLのリン酸緩衝液を、5日間(D14~D18)、経鼻投与を介して肺に吸入した(5回の負荷)。ペントバルビタールを、最後の負荷後24時間経過した時に投与し(D19)、次いで、気道過敏症(AHR)を評価し(実施例8-2)、気管支切開を行って、肺組織試料を収集した。
【0126】
8-2.AHRの評価
ペントバルビタールの投与により麻酔されたマウスを、AHRメーター(FinePointe Resistance and Compliance、DSI-Buxco社)に接続し、PBSに溶解された各種の濃度のメタコリン(0、5、10、20、及び40mg/mL)をそこに投与した。次いで、AHR値を、気道を通過する空気の体積を測定することによって計算した(
図15)。
【0127】
結果として、
図15に示すように、増加したメタコリンの濃度として、AHR(R
L)は正常対照群(CTRL)においてゆっくりと増加したが、AHRは喘息誘導対照群(HDM)において急速に増加したことを確認した。他方で、KBL693を投与された試験群(HDM+KBL693)において、AHRは、メタコリンの全濃度にわたり、喘息誘導群(HDM)と比較して顕著に低減された。この相違は、低濃度のメタコリンよりも高濃度のメタコリンを投与された場合により明らかであった。したがって、KBL693が、喘息を引き起こすAHRを有効に阻害することができ、したがって、アレルギー性喘息の処置及び予防のために有効に使用することができたことが分かった。
【0128】
8-3.CD45
+細胞における好酸球の割合、CD4
+ T細胞におけるIL-5
+ CD4 T細胞の割合、及びCD4
+ T細胞におけるIL-13
+ CD4 T細胞の割合の決定
フローサイトメーター(LSRFortessa X-20、BD社)を使用して、肺における免疫細胞を評価した。好酸球、及びIL-5
+ CD4
+ T細胞、IL-13
+ CD4
+ T細胞を染色するために、いくつかのマーカー(抗マウスCD45、BioLegend社;ラット抗マウスSiglec-F、BD社;抗マウスCD11b、BD社;抗マウスCD3ε、BD社;抗マウスTCRβ、BioLegend社;抗マウスCD4、BioLegend社;抗マウス/ヒトIL-5、BioLegend社;抗マウスIL-13、Invitrogen社)に対する抗体を使用した。好酸球を、CD45を発現する細胞の中で、一般的な白血球マーカーであるSiglec-f
+ CD11b
+細胞を計数することによって決定し、IL-5
+ CD4
+ T細胞、IL-13
+ CD4
+ T細胞を、マーカーとしてCDε、TCRβ、及びCD4を有するCD4
+ T細胞の中で、IL-5又はIL-13を産生する細胞を計数することによって決定した(
図16)。
【0129】
結果として、
図16に示すように、喘息誘導対照群(HDM)の場合において、免疫細胞、即ち、好酸球、IL-5
+ CD4 T細胞、及びIL-13
+ CD4 T細胞の割合は、正常対照群(PBS)と比較して全て顕著に増加したが、KBL693を投与された試験群(HDM+KBL693)の場合において、好酸球、IL-5
+ CD4 T細胞、及びIL-13
+ CD4 T細胞の割合は、喘息誘導対照群と比較して全て顕著に減少したことを確認した。したがって、KBL693が、炎症細胞、即ち、好酸球、IL-5
+ CD4 T細胞、及びIL-13
+ CD4 T細胞の阻害によるアレルギー性喘息に対する治療及び予防効果を提供できたことが分かった。
【0130】
本発明の特定の態様を上記に詳細に記載し、これらの特定の態様が、好ましい実施形態のみであって、本発明の範囲がそれらによって限定されないことは当業者には自明である。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲と特許請求の範囲の均等物によって実質的に定義される。
【受託番号】
【0131】
寄託機関の名称:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC13519BP
受託日:2018年4月27日
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明によるラクトバチルス・クリスパタスKBL693株(受託番号KCTC13519BP)は、細胞のアレルギー反応を弱め、アトピー性皮膚炎の症状を著しく改善し、抗炎症効果、免疫調節効果及び抗真菌効果を示す。したがって、単一株のみで、アレルギー性疾患を軽減する目的並びに炎症性疾患及び自己免疫疾患を改善する目的、それによってプロバイオティクス物質としての有利な適用を見出す目的の全てを達成することができる。加えて、その抗真菌活性に基づいて、真菌によって引き起こされる各種の皮膚疾患に対する皮膚外用製剤において、並びに敏感肌を軽減するための化粧用組成物及び機能性パッチにおいて、有利に利用することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0133】
【配列表】