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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】跳水防止ガイド付き取水装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/04 20060101AFI20240226BHJP
   E02B 5/08 20060101ALI20240226BHJP
   E02B 9/04 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
E03B3/04
E02B5/08 101Z
E02B9/04 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021006403
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110783
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】594150741
【氏名又は名称】日本エンヂニヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】牧志 龍男
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-074232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/04
E02B 5/08
E02B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口部に取水スクリーンが斜め後ろ下がりに設置され、該取水スクリーンの上方に連続した流入受板が斜め後ろ下がりに設置されたボックス状本体の左右両側面を構成する側面板のそれぞれに、跳水防止面を有する跳水防止ガイドが前記流入受板ないしは取水スクリーンの左右両端部の上方に設置され、前記流入受板から流入する表流水の跳水を前記跳水防止面で防止しつつ、前記取水スクリーンから表流水が取水されるように構成した取水装置であって、それぞれの前記跳水防止面は、前記流入受板ないしは前記取水スクリーンの表面との相互の間隔が、表流水の流入方向では、下流に向かって狭くなる角度にて配置され、前記表流水の流入方向と直交する方向では、内側に向かって広くなる角度にて内側へ突出して配置され、前記跳水防止ガイドが設置されていることを特徴とする取水装置。
【請求項2】
前記間隔が、下流に向かって狭くなる角度は30°以下であって、内側に向かって広くなる角度は60°以下であることを特徴とする請求項1に記載の取水装置。
【請求項3】
前記跳水防止ガイドは、形状は底面が直角三角形の三角柱であり、底面の斜辺を含む側面が跳水防止面であることを特徴とする請求項1または2に記載の取水装置。
【請求項4】
前記取水スクリーンはウェッジワイヤースクリーンであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の取水装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を必要とする水道施設や水力発電施設などにおいて、河川や用水路からの表流水を効率よく取水するための取水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川水を取水して、水道水などとして供給するため、河川や用水路などの水源より表流水を取水するための装置として、ボックス状本体の上面開口部に取水スクリーンを下流側に向かって斜め下り勾配に取り付けた取水装置が、本出願人より提供されており、図6図8にこの取水装置を示す(特許文献1を参照)。図6は外観斜視図であり、図7に示すように、この取水装置30は取水堰40に設置され、取水堰40を越流した河川の表流水が流入受板33から取り込まれ、取水スクリーン32の表面を流下する際に、取水スクリーン32を透過した水はボックス状の装置本体31に取水され、取水スクリーン32の目開きより大きい落ち葉や土砂などの塵芥は取水スクリーン32を透過せず、取水スクリーン32に取り込まれない水(余剰水)と一緒に下流に流れ去ることで除塵されるため、塵芥による目詰まりが非常に少なく、安定した取水量が確保できる。また、河川や用水路の著しい増水によって、表流水の流速が増した場合には、表流水の跳水現象が発生し、表流水は取水スクリーン32を飛び越えて下流に流下し、余剰水となり、取水量の低下を来すため、取水装置30には、跳水防止ガイド34が取り付けられ、跳水現象を防止して取水量の低下を防いでいる。
【0003】
しかしながら、図8の側面説明図に示すように、前記跳水防止ガイド34は、流入受板33と取水スクリーン32の一部を覆うように取り付けられ、この両者の隙間は上流から下流に向かってほぼ一定ないしは若干広がるように配置されており、跳水防止ガイド34と流入受板33との隙間に流れ込んだ表流水のみが取水スクリーン32から装置内部に取り込まれ、導水管37より導水流38として取水される。そのため、増水して流入受板33での水深が増すと、跳水防止ガイド34を乗り越えた表流水が流下して、余剰水が増加する。また、跳水防止ガイド34と流入受板33との隙間への転石の噛み込みや流木の引掛りが発生し易く、取水スクリーン32に表流水が導かれない部分ができ取水量の低下が発生する。噛み込まれた転石や引掛かった流木は容易に除去できず、足元が滑りやすい河川においての除去作業は危険な作業となる。
【0004】
また、跳水防止ガイド34は、増水により表流水の流速が増したり、流入受板33上の水深が増したりした際にも必要な取水量を確保するために、流入受板33から取水スクリーン32の上方部に亘り、両側部から中央部に向けて一定量覆うことのできる幅に設定されている。この場合、取水量の確保のために跳水防止ガイド34の幅を大きくすると、取付け固定されている側板35からの寸法が長くなり、機械的強度が低下し、大きな転石が直撃すると変形し跳水防止ガイド34と流入受板33とが適切な間隔を維持できなくなり、さらに転石の噛み込みが発生しやすくなる。そのため、装置の全幅に制限が生じ、取水量の大きい装置とするために取水スクリーン32の面積を広げようとすると取水スクリーン32の寸法を水の流れ方向に延長せざるを得ず、装置の高さが高くなり設置する取水堰40の高さを高くする必要がある。取水堰40の高さを高くすると、取水堰40より上流側の河川水位が上昇し、護岸工事が余分に発生するといった建設コストにも影響を及ぼす。
【0005】
そして、河川表流水に混入してくる落ち葉、流木などの異物を中央部へ寄せ集め表流水の流勢で洗い流すため、流入受板33を覆う跳水防止ガイド34の上流部分(前半部分)における内側部分を斜めに切り落としてテーパー部を形成している。この異物の洗い流しの効率をよくするために、表流水の流れ方向における跳水防止ガイド34におけるこの部分の長さを長くしようとすると、装置全体の水の流れ方向である前後寸法が長くなり、取水装置30を設置する取水堰40の堤体を厚くする必要があることから取水堰の建設コスト上昇を招き、加えて、装置の重量が重くなることで重機が入れないような山間部の道路事情が悪い現場への運搬や取水堰への据付工事が困難になるなど装置の運搬や据付工事に関するコストの上昇にもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3075928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ボックス状本体の上面開口部に取水スクリーンが下流側に向かって斜め下り勾配に取り付けられた従来の取水装置における跳水防止ガイドの問題点である転石の噛み込みや流木の引掛りがなく、装置のサイズを大きくする必要もなく、余剰水を減少し、取水量を確保できる跳水防止ガイドが設置された取水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の取水装置は、面開口部に取水スクリーンが斜め後ろ下がりに設置され、該取水スクリーンの上方に連続した流入受板が斜め後ろ下がりに設置されたボックス状本体の左右両側面を構成する側面板のそれぞれに、跳水防止面を有する跳水防止ガイドが前記流入受板ないしは取水スクリーンの左右両端部の上方に設置され、前記流入受板から流入する表流水の跳水を前記跳水防止面で防止しつつ、前記取水スクリーンから表流水が取水されるように構成した取水装置であって、それぞれの前記跳水防止面は、前記流入受板ないしは前記取水スクリーンの表面との相互の間隔が、表流水の流入方向では、下流に向かって狭くなる角度にて配置され、前記表流水の流入方向と直交する方向では、内側に向かって広くなる角度にて内側へ突出して配置され、前記跳水防止ガイドが設置されていることを特徴とする。
【0009】
上記間隔が、下流に向かって狭くなる角度は30°以下であって、内側に向かって広くなる角度は60°以下であることが好ましい。そして、前記跳水防止ガイドは、形状は底面が直角三角形の三角柱であり、底面の斜辺を含む側面が跳水防止面であることが好ましく、前記取水スクリーンはウェッジワイヤースクリーンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の跳水防止ガイドでは、増水で流入受け板上の水深が増すと跳水防止ガイドの跳水防止面に水流がぶつかり、流入受板から離脱しようとした表流水は内側かつ斜め下に向きが変えられ、左右の跳水防止ガイドから離れた内側に流れ込み跳水防止面にぶつからない水も巻き込みながら、離脱することが抑え込まれ、取水スクリーン上に表流水が誘導され装置内部に取り込まれる。そのため、本発明の跳水防止ガイドでは、従来の跳水防止ガイドと比較してより小さな幅の跳水防止面を流入受板や取水スクリーンの両側部のみに配置されることで、効率的に跳水を抑え込むことができ、取水装置のサイズを大きくすることなく効率よく取水ができる。そして、跳水防止面は流入受板ないしは取水スクリーンの両側部に配置されているため、跳水防止面は流入受板ないしは取水スクリーンの表面との相互の間隔が、表流水の流入方向では、下流に向かって狭くなるよう配置されているものの、水流方向と直角の向きでは、内側に向かって大きくなるよう配置され、流木や転石が入り込んでも水流によって内側に押し出されるようになり、それらを噛み込むことが皆無である。
【0011】
上記の通り、本発明の取水装置は、小さくとも効率の良い跳水ガイドを設置することで装置のサイズを大きくすることなく、コストを抑えると共に、設置建設コストを低減することができる。さらに、流木や転石などによる除去作業や補修作業を減少し、装置の維持メンテナンスコストを低減でき、安定した取水ができる取水装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の取水装置の外観斜視図。
図2】取水装置を堰堤に設置した例の斜視説明図。
図3】表流水の流入方向での跳水防止面と、流水受板および取水スクリーンの表面との配置を示す断面説明図。
図4】流入方向と直交する方向での跳水防止面と取水スクリーン表面との配置を示す断面説明図。
図5】跳水防止ガイドによる表流水の跳水防止作用の説明図。
図6】従来の跳水防止ガイドを設置した取水装置の外観斜視図。
図7】従来の取水装置を堰堤に設置した例の斜視説明図。
図8】従来の跳水防止ガイドと、流水受板および取水スクリーンの表面との配置を示す断面説明図。
図9】従来の跳水防止ガイドによる表流水の跳水防止作用の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の取水装置1であり、図2には取水堰40に設置されている取水装置1を示しており、前記した図7にて示した従来の取水装置と同様に、取水堰40を越流した河川の表流水が流入受板3から取り込まれ、取水スクリーン2の表面を流下しながら、取水スクリーン2を透過した水はボックス状の装置本体31に取水される。
【0014】
取水装置1の跳水防止ガイド4は、底面が直角三角形の三角柱であり、底面の斜辺を含む側面が跳水防止面5である形状を例としており、跳水防止面5を内側に向け、取水スクリーン2と上流側にて連続して設置された流入受板3との接続部ないしはその近傍の左右両側部の上方にて、左右の側面板6に設置されている。この装置では、流入受板3から流入する表流水の跳水を設置された左右の跳水防止ガイド4の跳水防止面5で防止すると共に、表流水の流れを取水スクリーン2の表面に向けて、表流水を取水するように構成されている。跳水防止ガイド4は流入受板3ないしは取水スクリーン2の左右両端部の上方にて、左右の側面板6に取付けられるが、効率よく表流水の流れを取水スクリーン2の表面に向けるためには、流入受板3と取水スクリーン2との接続部ないしはその近傍の上方に設置することが好ましい。そして、跳水防止面5は、流入受板3ないしは取水スクリーン2との相互の間隔が、表流水の流入方向では、下流に向かって狭くなる角度に配置され、表流水の流入方向と直交する方向では、内側に向かって広くなる角度にて内側へ突出して配置されるように、跳水防止ガイド4が設置されている。
【0015】
図3は、表流水の流入方向における、跳水防止面5と流入受板3または取水スクリーン2の表面との相互の配置を示す断面説明図であり、跳水防止面5は、表流水の流入方向では、流入受板3または取水スクリーン2の表面と下流に向かって間隔が狭くなる角度に配置されている。図3に示すX方向が表流水の流入方向であり、一点鎖線Xで示すのは流入受板3または取水スクリーン2の表面と平行する面を示し、跳水防止面5はこの平行する面と角度aにて下流に向かって間隔が狭くなる角度に配置されている。角度aは30°以下であることが好ましく、表流水の流入方向であるX方向での跳水防止面5の長さLは、取水スクリーン2のX方向での長さの1/2~1/10の長さであることが好ましい。
【0016】
図4は、表流水の流入方向と直交する方向における、左右の跳水防止面5と取水スクリーン2の表面との相互の配置を示す断面図であり、左右の跳水防止面5は、取水スクリーン2の表面と内側に向かって間隔が広くなる角度bにて内側へ突出して配置されている。図4に示すY方向が表流水の流入方向と直交する方向であり、一点鎖線Yで示すのが取水スクリーン2と平行する面を示し、左右の跳水防止面5はこの平行する面と角度bにて間隔が広くなる方向に突出して配置される。角度bは60°以下であることが好ましく、流入方向と直交する方向での跳水防止板5が突出する幅dは、取水スクリーン2の幅Dの1/5~1/20の長さであることが好ましい。
【0017】
本発明の跳水防止ガイド4における跳水防止面5は、前記したように増水で流入受け板3上の水深が増した場合でも、流入受板3から離脱しようとした表流水を取水スクリーン2上に誘導して装置内部に取り込む跳水防止作用を発揮する。図5はこの跳水防止面5の作用の説明図であり、図9には従来の跳水防止ガイド34の作用の説明である。両図の(イ)は上面説明図、(ハ)は側面説明図、(ロ)、(ニ)は上流側から下流側をみた正面説明図である。いずれの場合でも、通常は両端の側面板6、35に挟まれた流入受板3、33の表面上に達した表流水は、流入受板3、33の表面に沿って流下し、取水スクリーン2、32に達し、装置内部に取り込まれる。一方、豪雨などによる著しい増水によって流速が増した表流水は流入受板3、33の表面から離脱し、取水スクリーン2.32を飛び越える跳水により下流に流下して余剰水となり、装置内部に取り込まれなくなる。図9に示す従来の取水装置30では、跳水防止ガイド34と流入受板33との隙間に流れ込んだ表流水Aのみが、跳水防止ガイド34によって流れの方向を下向きに変えられることで、離脱を押さえ込まれて取水スクリーン32装置内に取り込まれる。しかし、左右の跳水防止ガイド34の間を流下したり、跳水防止ガイド34の上を乗り越えたりした表流水Bは、取水スクリーン32を飛び越えて離脱して余剰水Cとなってしまう。
【0018】
一方、図5に示した本発明の取水装置1では、増水で流入受板3の表面上の水深が増すと、左右の側板6のそれぞれに設置された跳水防止ガイド4の跳水防止面5に表流水Aがぶつかり、表流水Aの流れの向きが内側かつ斜めの方向に変えられて、跳水防止面に直接ぶつからない表流水Aも共に巻き込まれて取水スクリーン2の表面に流れ込み、中央を流れる一部の表流水Bが余剰水Cとなる以外は、取水スクリーン2の表面から離脱すことなく装置に取り込まれる。
【0019】
以上のように、本発明の跳水防止ガイドは従来の跳水防止ガイドに比べ小さいサイズにもかかわらず、増水時における表流水の跳水を防止して、表流水を取水スクリーン上に誘導することができる。そのため、本発明の取水装置は、装置のサイズを大きくすることなく、コストを抑えると共に、設置建設コストを低減することができ、さらに、跳水防止ガイドのサイズと形状から流木や転石などを噛み込むことがなく、除去作業や補修作業が減少し、装置の維持メンテナンスコストを低減することができ、低コストで安定した取水ができる取水装置となる。
【0020】
跳水防止ガイドは前記説明したような三角柱だけでなく、前記した条件を満たすように設置できる跳水防止面を有するものであれば、その形状は特段限定されず、錐体や多面体だけでなく、一方の片の外面が跳水防止面である、断面がL、T、V字状の部材や、跳水防止面の裏側を支柱で支える形状でもよい。さらには、跳水防止面は平面だけでなく、曲面であってもよい。
【0021】
取水装置に取付けられる取水スクリーンはウェッジワイヤースクリーンであり、スクリーンを構成するワイヤーバーは水流方向と平行または直交して配置されるが、直交して配置されていることが好ましく、取水スクリーンに用いられるワイヤーバーの断面は三角形状であり、三角形の底辺がスクリーン表面となるように配置されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0022】
1 取水装置 2 取水スクリーン
3 流入受板 4 跳水防止ガイド
5 跳水防止面 6 側面板
7 後面板
30 取水装置(従来) 31 装置本体(従来)
32 取水スクリーン 33 流入受板
34 跳水防止ガイド(従来) 35 側面板(従来)
36 後面板 37 導水管
38 導水流 40 取水堰
X 流入方向 Y 流入方向の直交方向
、A 取水可能表流水 B、B 取水不可表流水
、C 余剰水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9