(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】炭素コイン装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240226BHJP
【FI】
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2022080411
(22)【出願日】2022-05-16
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】596009559
【氏名又は名称】姚 立和
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】姚 立和
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-091771(JP,A)
【文献】特開2010-122854(JP,A)
【文献】特開2011-164900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0100937(US,A1)
【文献】特開2013-171578(JP,A)
【文献】特開2011-145903(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0016612(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備に設置された認証装置(20)
と通信接続および電気的接続するとともに、リモートに設置された取引管理ホスト(10)と
通信接続し、炭素排出量の計算と炭素コイン取引を行うことができる炭素コイン装置(30)であって、
前記炭素コイン装置(30)が、少なくとも、
本体(300)と、
前記本体(300)内に設置されたプライシング回路(301)
と、を含み、
前記プライシング回路(301)が、少なくとも
、
処理装置(31)と、
記憶装置(32)と、
通信装置(33)と、
炭素量計算モジュール(34)
と、を含み、
そのうち、
前記処理装置(31)が内蔵プログラムの実行と各種データの処理に用いることができ、
前記記憶装置(32)が前記処理装置(31)に接続され、プログラム、有価デジタルトークン及び各種データの保存に用いることができ、
前記通信装置(33)が前記処理装置(31)に接続され、前記取引管理ホスト(10)及び前記認証装置(20)が接続を行い、各種コマンドとデータを送受信するために用いられ、
前記炭素量計算モジュール(34)が前記処理装置(31)に接続され、消費エネルギーデータに基づき炭素排出量の計算を行うために用いることができ
、
前記炭素コイン装置(30)の処理装置(31)にさらに電力貯蔵ユニット(35)が接続され、
前記電力貯蔵ユニット(35)が、
電力管理ユニット(351)と、
少なくとも1つの電力接続ポート(352)と、
少なくとも1つの蓄電装置(353)と、を含み、
前記電力管理ユニット(351)が各前記電力接続ポート(352)を介して各前記蓄電装置(353)に出入力される電力を管理することができ、さらに、電力貯蔵ユニット(35)が、前記認証装置(20)との間で電力変換を行うために用いることができ、
前記電力貯蔵ユニット(35)が前記処理装置(31)に接続され、前記炭素量計算モジュール(34)は、前記電力貯蔵ユニット(35)と連携して炭素排出量の計算を行うことができる
ことを特徴とする炭素コイン装置(30)。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素コイン装置(30)
において、
前記炭素コイン装置(30)の通信装置(33)が、WiFiモジュール、Bluetoothモジュール、近距離無線通信(NFC)モジュール、イーサネット(Ethernet)またはそのうち少なくとも2つの組み合わせとすることができる、
ことを特徴とする炭素コイン装置(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素コイン取引の技術分野に属し、具体的には、設備に組み合わせてリアルタイムで炭素排出量を計算し、かつ有価デジタルトークンに変換して保存し、使用者が炭素コインの取引を便利に行うことを可能にする、炭素コイン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガス排出量の削減という目標を達成するために、人々は脱炭素の方法として一般にインセンティブ戦略を採用し、炭素取引で炭素排出枠(炭素クレジットとも呼ばれる)の売買を行い、市場メカニズムの運用を通じて、炭素排出総量を効果的に管理している。
【0003】
しかしながら、どのような取引モデルもすべて大企業や国家間の取引が主であり、逆に、炭素排出量の大部分を占める中小企業や個人(以下、小規模事業体(small entities)という)にとっては、その炭素排出が経済規模を形成しにくいため、有効な炭素クレジット取引のシステムを確立できず、人々の脱炭素への意欲に影響を与えている。
【0004】
つまり、小規模事業体も炭素クレジットを効果的に取引できるようになれば、炭素クレジット取引が一部の大企業に独占され、私腹を肥やす道具にされている現状を変えるだけでなく、小規模事業体が脱炭素に参加するようになり、脱炭素の恩恵を受け、より迅速かつ効果的に温室効果を緩和することができるようになる。したがって、小規模事業体に適用する炭素クレジット取引モデルをどのように発展させ、炭素クレジット取引を体系的な条件下で実施できるようにするかが、現在非常に重要な課題となっており、本発明が解決を図る課題でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、小規模事業体間で炭素コイン取引を行うことができ、小規模事業体が脱炭素に参加し、炭素クレジットの利益を享受することを促進することにより、経済効果を生み出すことを可能にする、炭素コイン装置を提供することにある。
【0006】
本発明の別の主要な目的は、迅速かつ効果的に温室効果ガス排出削減目標を達成するためのインセンティブを小規模事業体に提供し、市場メカニズムの運用を通じて、炭素の総排出量を効果的に管理することができる、炭素コイン装置を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに別の主な目的は、リアルタイムに炭素排出量を計算できるようにすることで、一般の小規模事業体がいつでもどこでも炭素コイン取引を行えるようにし、小規模事業体が脱炭素の利益を享受するとともに、積極的に脱炭素に取り組む意欲を高めることができる、炭素コイン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下この発明について説明する。請求項1に記載する炭素コイン装置は、認証装置及び取引管理ホストと接続し、炭素排出量の計算と炭素コイン取引を行うことができる炭素コイン装置であって、前記炭素コイン装置が、少なくとも、本体と、前記本体内に設置されたプライシング回路を含み、前記プライシング回路が、少なくとも処理装置と、記憶装置と、通信装置と、炭素量計算モジュールを含み、そのうち、前記処理装置が内蔵プログラムの実行と各種データの処理に用いることができ、前記記憶装置が前記処理装置に接続され、プログラム、有価デジタルトークン及び各種データの保存に用いることができ、前記通信装置が前記処理装置に接続され、前記取引管理ホスト及び前記認証装置が接続を行い、各種コマンドとデータを送受信するために用いられ、前記炭素量計算モジュールが前記処理装置に接続され、消費エネルギーデータに基づき炭素排出量の計算を行うために用いることができる。
【0009】
請求項2に記載する炭素コイン装置は、請求項1における炭素コイン装置の処理装置にさらに、電力貯蔵ユニットが接続され、前記電力貯蔵ユニットが、電力管理ユニットと、少なくとも1つの電力接続ポートと、少なくとも1つの蓄電装置を含み、かつ前記電力管理ユニットが各前記電力接続ポートを介して各前記蓄電装置に出入力される電力を管理することができ、かつ前記電力貯蔵ユニットが前記処理装置に接続され、前記炭素量計算モジュールと連携して炭素排出量の計算を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載する炭素コイン装置は、請求項2における炭素コイン装置の電力貯蔵ユニットが、前記認証装置との間で電力変換を行うために用いることができる。
【0011】
請求項4に記載する炭素コイン装置は、請求項1における炭素コイン装置の通信装置が、WiFiモジュール、Bluetoothモジュール、近距離無線通信(NFC)モジュール、イーサネット(Ethernet)またはそのうち少なくとも2つの組み合わせとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】本発明を乗り物に応用した場合の外観図である。
【
図4】本発明を炭素通貨取引システムに応用した場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の炭素コイン装置の詳細な構成は、
図1と
図2に示すように、当該炭素コイン装置30が、本体300と、当該本体300内に設置されたプライシング回路301より構成され、かつ
図4に示すように、設備に設置された認証装置20と選択的に接続し、当該認証装置20に当該プライシング回路301と電気的接続を形成させ、当該炭素コイン装置30に当該認証装置20を介してリモートに設置された取引管理ホスト10と炭素量の計算と有価デジタルトークンの更新を行わせることができる。
【0014】
そのうち、当該炭素コイン装置30のプライシング回路301は、少なくとも、処理装置31と、記憶装置32と、通信装置33と、炭素量計算モジュール34を含み、そのうち、当該処理装置31は、内蔵プログラムの実行と各種データの処理に用いることができ、当該記憶装置32は、当該処理装置31に接続され、プログラム、有価デジタルトークン及び各種データの保存に用いることができ、当該通信装置33は、当該処理装置31に接続され、当該炭素コイン装置30と当該取引管理ホスト10及び当該認証装置20が接続を行い、各種コマンドとデータを送受信するために用いられ、かつ当該通信装置33は、WiFiモジュール、Bluetoothモジュール、近距離無線通信(NFC)モジュール、イーサネット(Ethernet)またはそのうち少なくとも2つの組み合わせなど、無線または有線の接続技術とすることができ、当該炭素量計算モジュール34は、当該処理装置31に接続され、設備の移動距離、出力トルク、モーター回転速度、移動速度、電力使用量等のデータに基づき、炭素排出量の計算を行い、当該記憶装置32内に保存するために用いることができる。さらに、一部の実施例によれば、そのうち当該処理装置31にはさらに電力貯蔵ユニット35が接続され、当該電力貯蔵ユニット35は当該認証装置20との間で電力変換を行うために用いることができ、当該電力貯蔵ユニット35は、電力管理ユニット351と、少なくとも1つの電力接続ポート352と、少なくとも1つの蓄電装置353を含むことができ、そのうち、当該電力管理ユニット351は各当該電力接続ポート352を介して各当該蓄電装置353に出入力される電力を管理することができ、かつ当該電力貯蔵ユニット35は当該処理装置31に接続し、炭素量計算モジュール34と連携して炭素排出量の計算を行うことができる。
【0015】
これにより、炭素排出量の計算と炭素コイン取引のデータ伝送を行うことができる炭素コイン装置が構成される。
【0016】
本発明の炭素コイン装置30は、少なくとも1つの設備(電動自転車、電動バイク、電気自動車、電力駆動以外の乗り物等、草刈り機、電動ツール、コーヒーマシン、扇風機、掃除機、電力駆動以外の機器・装置等)に応用することができ、
図3と
図4に示すように、当該炭素コイン装置30は、自転車80または草刈り機90に設置された認証装置20上に応用できる。そのうち、当該認証装置20は、当該設備の移動距離、動力出力、モーター回転速度、運動速度、電力使用量等の消費エネルギーデータを検出する機能を備え、かつ当該認証装置20は選択的に当該炭素コイン装置30と通信接続及び電気的接続を形成できる。また、当該炭素コイン装置30と当該認証装置20は、リモートの取引管理ホスト10と通信接続を形成し、データを相互に伝送して、少なくとも1つの炭素コイン取引を行うことができる。
【0017】
本発明の実際の使用方法は、以下の実施例からさらに理解することができる。
【実施例1】
【0018】
乗り物の炭素コイン取引
【0019】
図2、
図3、
図4に示すように、当該自転車80に認証装置20が設置され、炭素コイン装置30と相互に連結することができ、かつ当該認証装置20または炭素コイン装置30がさらに当該取引管理ホスト10と相互通信し、コマンドとデータの伝送を行うことができる。操作時は、まず、当該自転車80を起動して走行させたとき、当該認証装置20が当該車両の今回の運行後、移動距離、動力出力、モーター回転速度、運動速度、電力使用量等を含むがこれらに限らない消費エネルギーデータを検出することができ、また当該炭素コイン装置30が通信装置33を利用して当該認証装置20と相互接続し、前述の消費エネルギーデータを受け取り、炭素コイン取引イベントを生成することができる。次に、当該炭素コイン装置30が前述の消費エネルギーデータを受け取った後、当該炭素コイン装置30の炭素量計算モジュール34を通じて当該車両の今回の運行の第1の炭素排出量を計算する。その後、当該炭素コイン装置30は自ら、または当該認証装置20を通じて、当該第1の炭素排出量等の消費エネルギーデータを含む当該炭素コイン取引イベントを当該取引管理ホスト10にアップロードすることができる。続いて、当該取引管理ホスト10がアップロードされた当該炭素コイン取引イベントのデータに基づき、当該車両の取引者に対して代替宣告の照会(取引者の当該移動の他の代替案を含むが、これに限らない)を送信し、かつ公告された標準炭素排出パラメーター等のデータに基づいて第2の炭素排出量を計算する。続いて、当該取引管理ホスト10がさらに、当該第1の炭素排出量と当該第2の炭素排出量の差異に基づき、その他所定の参考データ(ボーナス係数など)を組み合わせ、取引者が取得できる有価デジタルトークンを算出する。さらに続いて、当該取引管理ホスト10は当該有価デジタルトークンを当該炭素コイン取引イベントに記録し、かつ関連記録を更新して後続の管理に提供する。最後に、当該取引管理ホスト10は当該有価デジタルトークンのデータを当該取引者の炭素コイン装置30中にダウンロードし、更新を行う。これにより、当該取引者は当該炭素コイン装置30中の有価デジタルトークンを使用して有価取引を行い、炭素コイン取引全体を完了することができる。
【実施例2】
【0020】
機器の炭素コイン取引
【0021】
図2、
図3、
図4に示すように、草刈り機90に応用する場合、当該草刈り機90に認証装置20が接続され、炭素コイン装置30と当該認証装置20を相互に連結することができ、かつ当該認証装置20または炭素コイン装置30がさらに当該取引管理ホスト10と相互通信し、コマンドとデータの伝送を行うことができる。操作時は、まず、当該草刈り機90を起動して運転させたとき、当該認証装置20が今回の起動後の運転等を含むがこれらに限らない消費エネルギーデータを検出することができ、また当該炭素コイン装置30が通信装置33を利用して当該認証装置20と相互接続し、前述の消費エネルギーデータを受け取り、炭素コイン取引イベントを生成することができる。次に、当該炭素コイン装置30が前述の消費エネルギーデータを受け取った後、当該炭素コイン装置30の炭素量計算モジュール34を通じて当該設備の今回の運転の第1の炭素排出量を計算する。その後、当該炭素コイン装置30は自ら、または当該認証装置20を通じて、当該第1の炭素排出量等の消費エネルギーデータを含む当該炭素コイン取引イベントを当該取引管理ホスト10にアップロードすることができる。続いて、当該取引管理ホスト10がアップロードされた当該炭素コイン取引イベントのデータに基づき、当該設備の取引者に対して代替宣告の照会(取引者の当該草刈り機90の他の運転代替案を含むが、これに限らない)を送信し、かつ公告された標準炭素排出パラメーター等のデータに基づいて第2の炭素排出量を計算する。続いて、当該取引管理ホスト10がさらに、当該第1の炭素排出量と当該第2の炭素排出量の差異に基づき、その他所定の参考データ(ボーナス係数など)を組み合わせ、取引者が取得できる有価デジタルトークンを算出する。さらに続いて、当該取引管理ホスト10は当該有価デジタルトークンを当該炭素コイン取引イベントに記録し、かつ関連記録を更新して後続の管理に提供する。最後に、当該取引管理ホスト10は当該有価デジタルトークンのデータを当該取引者の炭素コイン装置30中にダウンロードし、更新を行う。これにより、当該取引者は当該炭素コイン装置30中の有価デジタルトークンを使用して有価取引を行い、炭素コイン取引全体を完了することができる。
【0022】
前述から分かるように、本発明の炭素コイン装置は小規模企業や個人の各小規模事業体間で炭素コイン取引を行い、かつ有価デジタルトークンを保存して有価取引を行うことができ、取引者がいつでもどこでも直接売買取引を行うことを可能にする。これにより、迅速かつ効果的に温室効果ガス排出削減目標を達成するためのインセンティブを小規模事業体に提供し、インセンティブを提供することで、小規模事業体が脱炭素に参加し、脱炭素の利益を享受することを促進する。市場メカニズムの運用を通じて、炭素の総排出量を効果的に管理することができ、経済効果を生み出すとともに、製品の付加価値を高めることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 取引管理ホスト
20 認証装置
30 炭素コイン装置
300 本体
301 プライシング回路
31 処理装置
32 記憶装置
33 通信装置
34 炭素量計算モジュール
35 電力貯蔵ユニット
351 電力管理ユニット
352 電力接続ポート
353 蓄電装置
80 自転車
90 草刈り機