(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】水閘自動制御装置および水閘自動制御システム
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
(21)【出願番号】P 2022135584
(22)【出願日】2022-08-29
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】595134157
【氏名又は名称】株式会社ナラ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】奈良 幸則
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193914(JP,A)
【文献】特開2021-052646(JP,A)
【文献】特開2021-031913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に設けられ
た既存の水閘
に取り付けられ、前記水閘を自動制御する水閘自動制御装置であって、
前記既存の水閘は、操作桿を手作業によって上下させることにより、前記操作桿の下端部に設けられた止水弁を開閉するように構成されているとともに、
前記水閘自動制御装置は、
前記水閘の上端部に設けられる円筒状の蓋型筐体と、
前記蓋型筐体から前記水閘の内部に
揺動可能に吊り下げられ、上下方向に伸縮可能なロッドを有するリニアアクチュエータと、
前記リニアアクチュエータに制御信号を送信し、
既存の前記操作桿と連結された前記ロッ
ドを上下動させることにより
、前記止水弁を開閉する制御手段と、
を有しており、
前記制御手段は、圃場に設置されたセンサから取得した実測値が、事前に設定された目標値を保持するように前記止水弁を自動的に開閉する、水閘自動制御装置。
【請求項2】
前記ロッドの下端部に固定される筒状の基端部材と、
前記基端部材に対して上下方向にスライド可能な入れ子状の先端部材と、
前記先端部材が前記基端部材から抜けるのを防止するストッパーと、
前記基端部材と前記先端部材との間に設けられ、前記先端部材を下方に付勢する圧縮バネと、
前記先端部材に設けられ、前記ロッドと前記操作桿とを連結する連結金具と、
を有する、請求項
1に記載の水閘自動制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記蓋型筐体の内部に収容されている、請求項1または請求項2に記載の水閘自動制御装置。
【請求項4】
前記圃場が水田の場合、前記センサは水位計および/またはメタンガス計測器であり、
前記圃場が畑の場合、前記センサは土壌水分計である、
請求項1または請求項2に記載の水閘自動制御装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の水閘自動制御装置と、
各種のデータを保存可能なクラウドサーバと、
前記クラウドサーバと通信可能なユーザ端末と、
を有する水閘自動制御システムであって、
前記クラウドサーバは、前記水閘自動制御装置から取得した前記実測値を保存するとともに、前記ユーザ端末から送信された前記目標値を保存して前記制御手段に送信し、
前記ユーザ端末は、前記クラウドサーバに保存された前記実測値の履歴を参照するとともに、ユーザが入力した前記目標値を前記クラウドサーバに送信する、水閘自動制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の水位を調整するための水閘を自動制御するのに好適な水閘自動制御装置および水閘自動制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水田や畑等の圃場においては、地下に埋設された暗渠排水管を通じて余剰水を排出することにより冷害や湿害を軽減している。また、近年では、作物の生育状況を改善するため、弁の役割を果たす水閘を暗渠排水の排水口等に設置し、排水量を制御することで圃場の水位を調節している。
【0003】
上記のような水閘として、例えば、特開2007-263332号には、暗渠排水を止水する場合、保護管の内部に配置された弁棒を降下させて弁を弁座に着座させる一方、暗渠排水を排水する場合、弁棒を上昇させて弁を開放する竪管式水平水閘が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された水閘を含め、従来の水閘は、天候や季節等に応じて手作業で開閉されている。このため、圃場の数や面積が多いほど、水閘の開閉作業にかかる負担が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、既存の水閘に簡単に取り付けられて開閉作業を自動化し、ユーザの負担を軽減することができる水閘自動制御装置および水閘自動制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水閘自動制御装置は、既存の水閘に簡単に取り付けられて開閉作業を自動化し、ユーザの負担を軽減するという課題を解決するために、圃場に設けられる水閘を自動制御する水閘自動制御装置であって、前記水閘の上端部に設けられる円筒状の蓋型筐体と、前記蓋型筐体から前記水閘の内部に吊り下げられ、上下方向に伸縮可能なロッドを有するリニアアクチュエータと、前記リニアアクチュエータに制御信号を送信し、前記ロッドに固定される操作桿を上下動させることにより、前記操作桿の下端部に設けられた止水弁を開閉する制御手段と、を有しており、前記制御手段は、圃場に設置されたセンサから取得した実測値が、事前に設定された目標値を保持するように前記止水弁を自動的に開閉する。
【0008】
また、本発明の一態様として、リニアアクチュエータのロッドと操作桿との連結状態を保持し易くするという課題を解決するために、前記リニアアクチュエータの上端部は、前記蓋型筐体に対して揺動可能に吊り下げられていてもよい。
【0009】
さらに、本発明の一態様として、止水弁を閉塞する際に軸方向に生じる負荷を吸収し、部材が破損するのを防止するという課題を解決するために、前記ロッドの下端部に固定される筒状の基端部材と、前記基端部材に対して上下方向にスライド可能な入れ子状の先端部材と、前記先端部材が前記基端部材から抜けるのを防止するストッパーと、前記基端部材と前記先端部材との間に設けられ、前記先端部材を下方に付勢する圧縮バネと、前記先端部材に設けられ、前記ロッドと前記操作桿とを連結する連結金具と、を有していてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様として、耐候性を高めて壊れ難くするという課題を解決するために、前記制御手段は前記蓋型筐体の内部に収容されていてもよい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、圃場に応じた実測値を取得するという課題を解決するために、前記圃場が水田の場合、前記センサは水位計および/またはメタンガス計測器であり、前記圃場が畑の場合、前記センサは土壌水分計であってもよい。
【0012】
本発明に係る水閘自動制御システムは、遠隔から水閘を管理・制御するという課題を解決するために、上記いずれかの態様の水閘自動制御装置と、各種のデータを保存可能なクラウドサーバと、前記クラウドサーバと通信可能なユーザ端末と、を有する水閘自動制御システムであって、前記クラウドサーバは、前記水閘自動制御装置から取得した前記実測値を保存するとともに、前記ユーザ端末から送信された前記目標値を保存して前記制御手段に送信し、前記ユーザ端末は、前記クラウドサーバに保存された前記実測値の履歴を参照するとともに、ユーザが入力した前記目標値を前記クラウドサーバに送信する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既存の水閘に簡単に取り付けられて開閉作業を自動化し、ユーザの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る水閘自動制御装置および水閘自動制御システムの一実施形態を示す図である。
【
図2】本実施形態の水閘自動制御装置を示す一部断面図である。
【
図4】本実施形態における制御手段の構成要素を示すブロック図である。
【
図5】止水弁を開放した状態における水閘自動制御装置を示す図である。
【
図6】止水弁を閉塞した状態における水閘自動制御装置を示す図である。
【
図7】止水弁を下方に押し付けた状態の水閘自動制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る水閘自動制御装置および水閘自動制御システムの実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
本実施形態の水閘自動制御システム10は、
図1に示すように、圃場に設けられた既存の水閘5に取り付けられる水閘自動制御装置1と、各種のデータを保存可能なクラウドサーバ11と、このクラウドサーバ11と通信可能なユーザ端末12と、を有している。
【0017】
水閘自動制御装置1は、水閘5を自動制御するものであり、
図2および
図3に示すように、主として、水閘5の上端部に設けられる蓋型筐体2と、蓋型筐体2から水閘5の内部に吊り下げられるリニアアクチュエータ3と、リニアアクチュエータ3に制御信号を送信する制御手段4と、を有している。以下、各構成について説明する。
【0018】
蓋型筐体2は、水閘自動制御装置1の筐体となるものである。本実施形態において、蓋型筐体2は、円筒状に形成されており、既存の水閘5の上端部に設けられた蓋の代わりに、アタッチメントとして取り付けられるようになっている。また、蓋型筐体2は、
図2および
図3に示すように、内部に仕切壁21を有しており、この仕切壁21で仕切られた内部空間に制御手段4が収容されている。
【0019】
また、本実施形態において、蓋型筐体2には、
図2および
図3に示すように、ソーラーパネル22が外付けされているとともに、その内部空間には、ソーラーパネル22からバッテリ24へ送られる電気を制御するソーラーコントローラ23と、バッテリ24とが収容されている。これにより、リニアアクチュエータ3は、外部電源を必要とせず、ソーラーパネル22によって自家発電された電気で駆動するようになっている。
【0020】
リニアアクチュエータ3は、水閘5の操作桿51を上下動させるものである。本実施形態において、リニアアクチュエータ3は、
図2および
図3に示すように、上下方向に伸縮可能なロッド31を有しており、制御手段4から送信される制御信号にしたがって伸縮するようになっている。
【0021】
また、本実施形態において、リニアアクチュエータ3の上端部は、蓋型筐体2の仕切壁21に固定された揺動金具32に取り付けられており、蓋型筐体2に対して揺動可能に吊り下げられている。これにより、既存の操作桿51の傾斜に合わせて、リニアアクチュエータ3を揺動させることで、操作桿51とロッド31との連結状態を保持し易くなる。ただし、この構成に限定されるものではなく、リニアアクチュエータ3は、蓋型筐体2から水閘5の内部に吊り下げられていればよい。
【0022】
さらに、本実施形態において、リニアアクチュエータ3は、水閘5の止水弁52を閉塞する際に軸方向に生じる負荷を吸収するための機構を有している。具体的には、
図2および
図3に示すように、ロッド31の下端部に固定される筒状の基端部材33と、この基端部材33に対して上下方向にスライド可能な入れ子状の先端部材34と、この先端部材34が基端部材33から抜けるのを防止するストッパー35と、基端部材33と先端部材34との間に設けられ、先端部材34を下方に付勢する圧縮バネ36と、先端部材34に設けられ、ロッド31と操作桿51とを連結する連結金具37と、を有している。
【0023】
制御手段4は、リニアアクチュエータ3を制御して、水閘5の止水弁52を自動的に開閉させるものである。本実施形態において、制御手段4は、
図4に示すように、各種センサ6から読み取った計測値(アナログ信号)をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ41と、リニアアクチュエータ3の駆動を制御するドライバー42と、クラウドサーバ11等と通信を行う通信モジュール43と、電源を管理する電源制御モジュール44と、各種の処理を実行するためのMPU(Micro-Processing Unit)45とを有している。
【0024】
制御手段4は、以上の構成により、MPU45からの指令によりドライバー42がリニアアクチュエータ3に制御信号を送信すると、ロッド31に固定された操作桿51を上下動させる。これにより、
図5から
図7に示すように、操作桿51の下端部に設けられた止水弁52が開閉する。また、制御手段4は、圃場に設置されたセンサ6から取得した実測値をA/Dコンバータ41でデジタル信号に変換するとともに、通信モジュール43を介して取得した目標値をMPU45に設定する。
【0025】
さらに、制御手段4は、一定の時間間隔で、センサ6から取得した実測値や、電源制御モジュール44から取得したバッテリ電圧等の最新データを通信モジュール43を介してクラウドサーバ11へ送信する。そして、制御手段4のMPU45には、実測値が目標値を保持するように止水弁52を自動的に開閉するプログラムが組み込まれている。
【0026】
例えば、圃場が水田の場合、センサ6として水位計を水田に設置するとともに、制御手段4には、水位の目標値を事前に設定する。そして、制御手段4は、水位計から取得した水位の実測値が目標値より低い場合は、止水弁52を閉塞して貯水させる。一方、水位の実測値が目標値よりも高い場合は、止水弁52を開放して排水させる。これにより、水田の水位が目標値を保持する。
【0027】
また、圃場が水田の場合、水位計の代わりに、あるいは水位計と合わせてメタンガス計測器を水田に設置するとともに、制御手段4には、メタンガスの目標値を事前に設定する。そして、制御手段4は、メタンガス計測器から取得したメタンガスの実測値が目標値よりも高い場合は、止水弁52を開放して排水させる。これにより、メタンガスの発生原因である古くなった水が排水される。なお、メタンガスの実測値が目標値よりも低い場合は、水位に応じた制御を優先させてもよい。
【0028】
さらに、圃場が畑の場合、センサ6として土壌水分計を畑に埋設するとともに、制御手段4には、土壌水分の目標値(pF値等)を事前に設定する。そして、制御手段4は、土壌水分計から取得した土壌水分の実測値が目標値より低い場合は、止水弁52を閉塞して畑の乾燥を防ぐ。一方、土壌水分の実測値が目標値よりも高い場合は、止水弁52を開放して畑を乾燥させる。これにより、畑の土壌水分が目標値を保持する。
【0029】
なお、畑における作物は、根の生長点が所定の土壌水分範囲内で保持されていることが望ましいとされている。このため、例えば、土壌水分計を所定の深さ位置に埋設し、根の生長点が近傍にあると思われる時期は、上述した所定の土壌水分範囲内に目標値を設定する。一方、根が生長して生長点が土壌水分計から離れるに従って、徐々に目標値を上記土壌水分範囲より低め(土壌水分が少ない状態)に設定する。これにより、土壌水分計が一つであっても、根の生長によらず、根の生長点が所定の土壌水分範囲内で保持される。
【0030】
あるいは、複数の土壌水分計を使用できる場合、土壌水分計を深さ方向に所定間隔で複数埋設し、根の生長点が到達したと思われる位置にある土壌水分計の実測値が目標値となるように制御してもよい。これにより、根の生長点周辺における土壌水分が正確に把握されるため、根の生長に合わせて、土壌水分が好適な範囲で保持される。
【0031】
クラウドサーバ11は、水閘自動制御装置1から取得した実測値を保存するとともに、ユーザ端末12から送信された目標値やその他の設定情報(測定間隔等)をデータベースに保存する。また、クラウドサーバ11は、ユーザによって入力された目標値やその他の設定情報を別途、水閘自動制御装置1の制御手段4に送信し、遠隔から設定しうるようになっている。
【0032】
ユーザ端末12は、スマートフォンやノートパソコン等から構成されており、水閘自動制御装置1を管理するためのアプリケーションがインストールされている。このアプリケーションを介して、ユーザ端末12は、クラウドサーバ11に保存された実測値の履歴を参照するとともに、ユーザが入力した目標値やその他の設定情報をクラウドサーバ11に送信するようになっている。
【0033】
つぎに、本実施形態の水閘自動制御装置1および水閘自動制御システム10の作用について説明する。なお、以下の説明では、圃場としての水田に、センサ6として水位計を設置し、水位を自動調整する場合の例について説明する。
【0034】
本実施形態の水閘自動制御装置1および水閘自動制御システム10を用いて、圃場に設置された水閘5を制御する場合、まず水閘5の上端部に取り付けられている蓋を取り外し、操作桿51を引き上げる。つぎに、引き上げた操作桿51を連結金具37に固定し、ロッド31と連結させる。これにより、ロッド31と操作桿51とが一体的に上下動することとなる。
【0035】
つづいて、操作桿51と共にリニアアクチュエータ3を水閘5の内部に挿入し、蓋型筐体2を水閘5の上端部に固定する。これにより、
図5に示すように、水閘自動制御装置1が簡単に既存の水閘5に取り付けられる。このとき、操作桿51の位置や傾斜は水閘5ごとに多少異なるが、当該位置や傾斜に合わせてリニアアクチュエータ3が蓋型筐体2に対して揺動するため、ロッド31と操作桿51との連結状態が保持される。また、制御手段4が蓋型筐体2の内部に収容されるため、耐候性が高く壊れ難い。
【0036】
水閘5に対する水閘自動制御装置1の取り付けが完了すると、制御手段4は、クラウドサーバ11を介してユーザ端末12から送信された目標値等を保存するとともに、水田に設置された水位計から送られてくる水位の実測値を監視する。そして、制御手段4は、水位の実測値が目標値より低い場合、
図6に示すように、ロッド31を下方に伸長させることで操作桿51を下方へ押し下げ止水弁52を閉塞する。これにより、暗渠排水が排水されなくなるため、水田の水位が目標値まで上昇する。
【0037】
このとき、止水弁52を完全に閉塞させるには、強めに押圧する必要があるが、押圧力が強すぎると、水閘自動制御装置1に無理な負荷がかかり、破損するおそれがある。このため、本実施形態では、
図7に示すように、止水弁52に軸方向の無理な負荷がかかると、先端部材34が圧縮バネ36を圧縮しながら基端部材33に入り込み、余分な負荷を吸収する。これにより、水閘自動制御装置1を破損させることなく、止水弁52が確実に閉塞される。
【0038】
一方、制御手段4は、水位の実測値が目標値よりも高い場合、
図5に示すように、ロッド31を上方に短縮させることで操作桿51を上方へ引き上げ止水弁52を開放する。これにより、暗渠排水が排水されるため、水田の水位が目標値まで下降する。以上のようにして、制御手段4は、水田に設置された水位計から取得した実測値が、事前に設定された目標値を保持するように止水弁52を自動的に開閉する。
【0039】
水閘自動制御装置1が動作している間、制御手段4は、一定の時間間隔で、水位計から取得した水位の実測値や、電源駆動モジュールから取得したバッテリ電圧値等の最新データを通信モジュール43を介してクラウドサーバ11へ送信する。これにより、ユーザは、ユーザ端末12を用いてクラウドサーバ11にアクセスし、実測値等の履歴や最新データを参照しつつ、遠隔から水閘5を管理・制御しうるようになっている。
【0040】
以上のような本実施形態の水閘自動制御装置1および水閘自動制御システム10によれば、以下のような効果を奏する。
1.既存の水閘5に簡単に取り付けられて開閉作業を自動化し、ユーザの負担を軽減することができる。
2.リニアアクチュエータ3のロッド31と操作桿51との連結状態を保持し易くすることができる。
3.止水弁52を閉塞する際に軸方向に生じる負荷を吸収し、部材が破損するのを防止することができる。
4.耐候性を高めて壊れ難くすることができる。
5.圃場に応じた実測値を取得することができる。
6.遠隔から水閘5を管理・制御することができる。
7.圃場の水位を適切に調節したり、メタンガスの発生を抑制することで、作物の収量を向上することができる。
8.大雨の際には、河川近傍の圃場における水閘を一時的に閉塞することで洪水を防止することができる。
【0041】
なお、本発明に係る水閘自動制御装置1および水閘自動制御システム10は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0042】
例えば、上述した本実施形態では、センサ6として、水位計、メタンガス計測器および土壌水分計を挙げているが、これらに限定されるものではなく、暗渠排水の排水量を調節する際に考慮すべき情報を検知するものであればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 水閘自動制御装置
2 蓋型筐体
3 リニアアクチュエータ
4 制御手段
5 水閘
6 センサ
10 水閘自動制御システム
11 クラウドサーバ
12 ユーザ端末
21 仕切壁
22 ソーラーパネル
23 ソーラーコントローラ
24 バッテリ
31 ロッド
32 揺動金具
33 基端部材
34 先端部材
35 ストッパー
36 圧縮バネ
37 連結金具
41 A/Dコンバータ
42 ドライバー
43 通信モジュール
44 電源制御モジュール
45 MPU
51 操作桿
52 止水弁
【要約】
【課題】既存の水閘に簡単に取り付けられて開閉作業を自動化し、ユーザの負担を軽減することができる水閘自動制御装置および水閘自動制御システムを提供する。
【解決手段】水閘5の上端部に設けられる蓋型筐体2と、蓋型筐体2から水閘5の内部に吊り下げられ上下方向に伸縮可能なロッド31を有するリニアアクチュエータ3と、リニアアクチュエータ3に制御信号を送信し、ロッド31に固定される操作桿51を上下動させることにより止水弁52を開閉する制御手段4とを有し、制御手段4は、センサ6から取得した実測値が目標値を保持するように止水弁52を自動的に開閉する。
【選択図】
図1