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特許7442219水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの生産
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの生産
(51)【国際特許分類】
   C01D 1/20 20060101AFI20240226BHJP
   C25B 1/46 20060101ALI20240226BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20240226BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240226BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20240226BHJP
【FI】
C01D1/20
C25B1/46
C25B1/02
C25B9/00 E
C25B9/19
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148323
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2022083086の分割
【原出願日】2022-05-20
(65)【公開番号】P2023024418
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】17/395,457
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522201004
【氏名又は名称】リチウム・アーク・ホールディング・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Lithium Ark Holding B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】エーレン,ピーター
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109516479(CN,A)
【文献】特開2004-149376(JP,A)
【文献】特開2021-050133(JP,A)
【文献】特表2018-500261(JP,A)
【文献】中国実用新案第205856014(CN,U)
【文献】特開2003-285020(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109592699(CN,A)
【文献】国際公開第2021/228936(WO,A1)
【文献】特開昭55-065372(JP,A)
【文献】特開昭56-025980(JP,A)
【文献】米国特許第04253923(US,A)
【文献】特開2001-233606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 1/20
C01D 1/30
C01D 1/32
C01D 3/04
C01D 3/14
C01D 15/02
C25B 1/00 - 9/77
13/00 -15/08
B01D 9/00
B01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって
酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、
水酸化カリウム、
塩化リチウム、
塩化カリウム、
水酸化リチウム、および
水を含む相互塩システムを形成するステップと、
前記相互塩システムから、前記塩化カリウムを選択的に結晶化させておよび前記水酸化リチウムを選択的に沈殿させて、
水酸化リチウム結晶、および
塩化カリウム結晶を形成するステップとを含み、
前記相互塩システムから、前記塩化カリウムを選択的に結晶化させておよび前記水酸化リチウムを選択的に沈殿させることが、冷却段階を含み、前記冷却段階が前記塩化カリウム結晶を選択的に結晶化させる、方法。
【請求項2】
前記水酸化カリウム溶液が、塩化カリウム溶液を電気分解することによって得られる、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記塩化カリウム溶液を電気分解すると、
水酸化カリウム溶液、
枯渇塩化カリウム溶液、
塩素ガス、および
水素ガスがさらに得られる、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記電気分解が、膜電気分解を使用して実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記電気分解が、塩素-アルカリ電気分解を使用して実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記水素ガスを前記塩素ガスと反応させて、塩酸を生成することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記塩化リチウム溶液を、天然由来のかん水から得ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記塩化リチウム溶液を、鉱石供給源から得ることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水酸化リチウムが、水酸化リチウム一水和物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水酸化リチウム結晶を、精製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記水酸化リチウム結晶を精製することが、
前記相互塩システムから前記水酸化リチウム結晶を分離することと、
前記水酸化リチウム結晶を水またはかん水に溶解させて、水酸化リチウム溶液を形成することと、
前記水酸化リチウム溶液から不溶性固体を分離することと、
前記水酸化リチウム溶液から水を蒸発させて、前記水酸化リチウム結晶を再結晶させることと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応、前記選択的に結晶化、および前記選択的に沈殿が、同時に、順次、またはそれらの組み合わせで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記相互塩システムから前記水酸化リチウム結晶、前記塩化カリウム結晶、またはそれらの組み合わせを分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記相互塩システムから前記塩化カリウム結晶を選択的に結晶化させておよび前記水酸化リチウム結晶選択的に沈殿させることが、蒸発加熱段階をさらに含み、前記蒸発加熱段階が前記水酸化リチウム結晶を選択的に沈殿させる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
方法であって、
相互塩システムから、塩化カリウムを選択的に結晶化させておよび水酸化リチウムを選択的に沈殿させて
水酸化リチウム結晶、および
塩化カリウム結晶を形成するステップと、を含み、
前記相互塩システムから、前記塩化カリウムを選択的に結晶化させておよび前記水酸化リチウムを選択的に沈殿させることが、冷却段階を含み、前記冷却段階が前記塩化カリウム結晶を選択的に結晶化させる、方法。
【請求項16】
前記相互塩システムが、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させることによって得られる、請求項15に記載の方法
【請求項17】
システムであって
なくとも1つの反応器であって、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、
水酸化カリウム
塩化リチウム
塩化カリウム
水酸化リチウム、および
水を含む相互塩システムを形成するように構成されている、少なくとも1つの反応器と、
少なくとも1つの結晶器であって、前記相互塩システムから前記塩化カリウムを選択的に結晶化させておよび前記水酸化リチウムを選択的に沈殿させて、
水酸化リチウム結晶、および
塩化カリウムの結晶を形成するように構成されている、少なくとも1つの結晶器と、を含み、
前記少なくとも1つの結晶器は、冷却段階を操作するようにさらに構成され、前記冷却段階が、塩化カリウムの結晶を選択的に結晶化させる、システム。
【請求項18】
少なくとも1つの電気分解セルであって、前記塩化カリウム溶液を電気分解して、
水酸化カリウム溶液
枯渇塩化カリウム溶液
塩素ガス、および
水素ガスを得るように構成されている、少なくとも1つの電気分解セル、をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも1つの分離器をさらに含み、前記少なくとも1つの分離器および前記少なくとも1つの結晶器は、単一のデバイスであり、前記単一のデバイスが、結晶化反応器である、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも1つの分離器をさらに含み、前記少なくとも1つの分離器および前記少なくとも1つの結晶器は、別個のデバイスである、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、一般に、リチウムの生産、より具体的には、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの生産に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムは地球上に広く分布しているが、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムなどのリチウム化合物の生産に好適な濃縮された値でリチウムが見つかる商業的な供給源はほとんどない。これらのリチウム化合物は、それらに限定されないが、医薬品およびエネルギー産業を含むいくつかの産業に需要がある。リチウムの1つの供給源は、スポジュメンなどの鉱石中にある。別の供給源は、サラール(salar)、塩湖、塩鉱山、および地熱資源にて見つかるものなどの天然由来のかん水である。リチウムが抽出および濃縮されると、従来の方法では、得られたリチウム溶液を1つ以上の試薬と反応させて、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを生産する。しかしながら、とりわけ、石灰、ソーダ灰、塩酸、および水酸化ナトリウムを含み得るこれらの試薬は、入手するのに高価であり得、有害な不純物を含み得る。加えて、既存の水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの生産プロセスは、非効率である可能性があり、廃棄物の削減および材料の再利用の改善を必要とする。したがって、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムを生産するための、より費用対効果が高く、効率的な方法およびシステムが必要である。
【発明の概要】
【0003】
水酸化リチウムの生産のための例示的な方法を記載する。本方法の1つ以上の実施形態は、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇(または消耗した、または消費した;depleted)塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るステップと、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含む相互塩システムを形成するステップと、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶および塩化カリウム結晶を形成するステップと、を含む。
【0004】
水酸化リチウムの生産のための追加の例示的な方法を記載する。本方法の1つ以上の実施形態は、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るステップと、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含む相互塩システムを形成するステップと、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶および塩化カリウム結晶を形成するステップと、塩化カリウム結晶を水または枯渇塩化カリウム溶液に溶解させるステップと、得られた混合物を濾過して、塩化カリウム溶液を得るステップと、電気分解、反応、沈殿、および溶解ステップを繰り返すステップと、を含む。
【0005】
水酸化リチウムの生産のためのさらなる例示的な方法を記載する。本方法の1つ以上の実施形態は、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るステップと、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含む相互塩システムを形成するステップと、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶、および塩化カリウム結晶を形成するステップと、水酸化リチウム結晶を精製するステップと、を含む。
【0006】
水酸化リチウムの生産のための例示的なシステムを記載する。本システムの1つ以上の実施形態は、少なくとも1つの電気分解セルであって、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るように構成されている、少なくとも1つの電気分解セルと、少なくとも1つの反応器であって、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含む相互塩システムを形成するように構成されている、少なくとも1つの反応器と、少なくとも1つの結晶器であって、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶、および塩化カリウム結晶を形成するように構成されている、少なくとも1つの結晶器と、を含む。
【0007】
水酸化リチウムの生産のための追加の例示的なシステムを記載する。本システムの1つ以上の実施形態は、少なくとも1つの電気分解セルであって、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るように構成されている、少なくとも1つの電気分解セルと、少なくとも1つの反応器であって、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウムおよび水を含む相互塩システムを形成し、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶、および塩化カリウム結晶を形成するように構成されている、少なくとも1つの反応器と、を含む。
【0008】
炭酸リチウムの生産のための例示的な方法を記載する。本方法の1つ以上の実施形態は、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るステップと、水酸化カリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウム溶液を形成するステップと、炭酸カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化カリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得るステップと、を含む。
【0009】
炭酸リチウムの生産のためのさらなる例示的な方法を記載する。本方法の1つ以上の実施形態は、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るステップと、水酸化カリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウム溶液を形成するステップと、炭酸カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化カリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得るステップと、混合物から炭酸リチウム固体を除去して、再生塩化カリウム溶液を形成するステップと、再生塩化カリウム溶液を枯渇塩化カリウム溶液と組み合わせて、塩化カリウム溶液を補充するステップと、電気分解、反応、除去、および組み合わせのステップを繰り返すステップと、を含む。
【0010】
炭酸リチウムの生産のための追加の例示的な方法を記載する。本方法の1つ以上の実施形態は、塩化ナトリウム溶液を電気分解して、水酸化ナトリウム溶液、枯渇塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るステップと、水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸ナトリウム溶液を形成するステップと、炭酸ナトリウム溶液を塩化ナトリウム溶液と反応させて、塩化ナトリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得るステップと、を含む。
【0011】
炭酸リチウムの生産のためのさらなる例示的な方法を記載する。本方法の1つ以上の実施形態は、塩化ナトリウム溶液を電気分解して、水酸化ナトリウム溶液、枯渇塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るステップと、水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸ナトリウム溶液を形成するステップと、炭酸ナトリウム溶液を塩化ナトリウム溶液と反応させて、塩化ナトリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得るステップと、混合物から炭酸リチウム固体を除去して、再生塩化ナトリウム溶液を形成するステップと、再生塩化ナトリウム溶液を枯渇塩化ナトリウム溶液と組み合わせて、塩化ナトリウム溶液を補充するステップと、電気分解、反応、除去、および組み合わせのステップを繰り返すステップと、を含む。
【0012】
炭酸リチウムの生産のための例示的なシステムを記載する。本システムの1つ以上の実施形態は、少なくとも1つの電気分解セルであって、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るように構成されている、少なくとも1つの電気分解セルと、少なくとも1つの反応器であって、水酸化カリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウム溶液を形成し、炭酸カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化カリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得るように構成されている、少なくとも1つの反応器と、を含む。
【0013】
炭酸リチウムの生産のためのさらなる例示的なシステムを記載する。本システムの1つ以上の実施形態は、少なくとも1つの電気分解セルであって、塩化ナトリウム溶液を電気分解して、水酸化ナトリウム溶液、枯渇塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得るように構成されている、少なくとも1つの電気分解セルと、少なくとも1つの反応器であって、水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸ナトリウム溶液を形成し、炭酸ナトリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化ナトリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得るように構成されている、少なくとも1つの反応器と、を含む。
【0014】
網羅される実施形態は、この概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この概要は、様々な態様の大まかな概要であり、以下の発明を実施するための形態のセクションでさらに記載される概念のうちのいくつかを紹介する。この概要は、特許請求される主題の主要または本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用することを意図するものでもない。主題は、本明細書全体、いずれかまたはすべての図面、および各特許請求の範囲の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の態様による、水酸化リチウムまたは炭酸リチウム生産システムの第1の例を示す。
図2】本開示の態様による、リチウム生産システムの第2の例を示す。
図3】本開示の態様による、水酸化リチウムまたは炭酸リチウム生産システムの第3の例を示す。
図4】本開示の態様による、少なくとも1つの電気分解セルの一例を示す。
図5】本開示の態様による、例示の膜の例示的な電流効率を示す。
図6】本開示の態様による、例示の膜の例示的な電圧を示す。
図7】本開示の態様による、例示的な結晶化反応器を示す。
図8】本開示の態様による、リチウム生産プロセスの例を示す。
図9】本開示の態様による、リチウム生産プロセスの例を示す。
図10】本開示の態様による、リチウム生産プロセスの例を示す。
図11】本開示の態様による、リチウム生産プロセスの例を示す。
図12】本開示の態様による、リチウム生産プロセスの例を示す。
図13】本開示の態様による、リチウム生産プロセスの例を示す。
図14】本開示の態様による、リチウム生産プロセスの例を示す。
図15】本開示の態様による、例示的な相互塩システムからの例示の温度および重量パーセントのデータを示す。
図16】本開示による、例示的な相互塩システムのJanecke図である。
図17】本開示の態様による、異なる温度で水酸化リチウムおよび塩化カリウムの相対溶解度試験を実施するために使用された第2の例示的な結晶化反応器の一例を示す。
図18】本開示の態様による、異なる温度での水酸化リチウムおよび塩化カリウムの相対溶解度試験の例示的な結果を示す。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態は、単なる例として、添付の図面を参照して本明細書に記載される。ここで、詳細に図面を具体的に参照すると、示される実施形態は、例としてのもの、かつ本開示の実施形態の例示的な考察の目的のためのものであることが強調される。この点に関して、図面とともに取られた説明は、本開示の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示のいくつかの実施形態による、水酸化リチウムの生産のための方法を記載する。いくつかの実施例では、水酸化リチウムは、試薬として塩化リチウム、塩化カリウム、および水を使用して生産することができる。いくつかの態様では、水酸化リチウムは、試薬として石灰、ソーダ灰、塩酸、水酸化ナトリウム、またはそれらの組み合わせを使用することなく生産することができる。
【0018】
いくつかの実施例では、水酸化リチウムは、水酸化リチウム一水和物である。いくつかの実施例では、水酸化リチウム一水和物は、「バッテリーグレード」であり、これは、それらに限定されないが、International Organization for Standardization(ISO)またはAmerican Society for Testing and Materials(ASTM)によって設定された技術基準などの適用可能な技術基準に準拠しているものとして本明細書で定義される。水酸化リチウム一水和物が「バッテリーグレード」であるかどうかを決定するための基準のそのような非限定的な例の1つは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、GB/T8766-2013である。いくつかの実施例では、水酸化リチウムは、水酸化リチウム(すなわち、無水水酸化リチウム)および水酸化リチウム一水和物の混合物である。本明細書では、水酸化リチウム一水和物中に無水水酸化リチウムが存在するか、あるいはその逆は、無水水酸化リチウムまたは水酸化リチウム一水和物の純度に悪影響を及ぼすとみなされない。
【0019】
いくつかの実施例では、水酸化リチウムの生産方法は、塩化リチウムを直接的に電気分解することを含まない。本明細書で使用される場合、「塩化リチウムの直接電気分解」は、塩化リチウムが電気分解において電解質として使用される電気分解である。したがって、本方法の1つ以上の実施形態は、塩化カリウム溶液を電気分解することを含む。
【0020】
いくつかの実施例では、塩化カリウム溶液は、塩化カリウム溶液の総重量に基づいて、塩化カリウムの10重量%~40重量%の範囲の量で塩化カリウムを含む。さらなる実施例では、塩化カリウムは、塩化カリウム溶液の総重量に基づいて、20重量%~40重量%、30重量%~40重量%、10重量%~30重量%、10重量%~20重量%、20重量%~30重量%の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの例示的な量で存在し得る。
【0021】
いくつかの実施例では、塩化カリウム溶液は、塩化カリウムを得て(例えば、商業的に)、塩化カリウムを水、かん水または枯渇塩化カリウム溶液に溶解させることによって形成される。いくつかの実施例では、塩化カリウムは、水酸化カリウムを塩化リチウムと反応させることによって得られる(以下でより詳細に記載する)。ある特定の用途では、水酸化カリウムを塩化リチウムと反応させることによって生成される塩化カリウムは、再循環流などを介して電気分解セル内に再導入され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、電気分解は、以下でさらに詳細に考察するように、電気分解セルを使用して実施される。いくつかの実施例では、電気分解セルは、塩素-アルカリ電気分解セルである。本明細書で使用される場合、「塩素-アルカリ電気分解セル」は、以下の半電池反応を実施するように構成されている電気分解セルである:
アノード:2Cl→Cl+2e
カソード:HO+2e→H+2OH
【0023】
いくつかの実施例では、電気分解は、Castner-Kellnerプロセスを利用し得る少なくとも1つの水銀電池を使用して実施される。少なくとも1つの水銀電池の非限定的な例は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第528,322号に記載されている。
【0024】
電気分解は、いくつかの実施態様では、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上の温度で実施され得る。ある特定の実施例では、電気分解は、70℃~120℃、90℃~120℃、100℃~120℃、110℃~120℃、70℃~110℃、70℃~100℃、70℃~90°、またはそれらの任意の組み合わせの温度または動作温度で実施される。
【0025】
いくつかの実施例では、電気分解の温度は、電気分解を実施するために使用される少なくとも1つの電解質(例えば、アノード液、カソード液、または両方)の温度であり得る。したがって、いくつかの実施例では、温度は、電気分解中に、温度センサを少なくとも1つの電解質中に挿入することによって測定される。いくつかの実施例では、電気分解は、「定常状態」での電気分解の動作温度と比較して、開始中、停止中、または両方において、より低温で実施され得る。動作温度に対する停止および開始時の温度の間の例示的な差異は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、“Nafion(登録商標) Perfluorinated Membranes for KOH Production,” Nafion(登録商標) Product Bulletin,E.I.duPont de Nemours & Co.,Inc.,Wilmington(1988),Revised 2001(以下、「The Nafion(登録商標) Product Bulletin」)に記載されている。
【0026】
いくつかの実施例では、電気分解は、膜電気分解である。ある特定の実施態様では、膜電気分解に使用される膜は、陽イオンに対して選択的である。いくつかの実施例では、膜は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、またはポリカーボネートのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、膜は、フルオロポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、膜は、PVDF、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロピレン(FEP)、ポリ(エチレン-alt-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン-コ-ペルフルオロプロピルビニルエーテル)(PFA)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニル(PVF)、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施例では、膜は、それに限定されないが、DuPont(商標)から商業的に入手できるNafion(商標)膜などのスルホン化ペルフルオロ化膜である。
【0027】
いくつかの実施例では、塩化カリウム溶液を電気分解すると、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスが得られる。
【0028】
いくつかの実施例では、水素ガスおよび塩素ガスを反応させて、塩酸を形成することができ、例えば、以下の反応を介する:
(g)+Cl(g)→2HCl(aq)
生成された塩酸は、場合によっては、本明細書に記載される任意の溶液のpHを調整するために使用することができる。
【0029】
本方法の1つ以上の実施形態は、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させることを含む。
【0030】
いくつかの実施例では、塩化リチウム溶液は、塩化リチウム溶液の総重量に基づいて、塩化リチウムの10重量%~50重量%の範囲の量で塩化リチウムを含む。さらなる実施例では、塩化リチウムは、塩化リチウム溶液の総重量に基づいて、20重量%~50重量%、30重量%~50重量%、40重量%~50重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%、10重量%~20重量%、20重量%~40重量%の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの例示的な量で存在し得る。
【0031】
いくつかの実施例では、塩化リチウム溶液は、それに限定されないが、地熱かん水などの天然由来のかん水から得られる。塩化リチウムを含み得る天然由来のかん水のさらなる例としては、それらに限定されないが、サラールからのかん水、塩湖からのかん水、および塩鉱山からのかん水、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好適であり得る天然由来のかん水のいくつかの具体例としては、それらに限定されないが、Salar de Atacamaからのかん水、Salar de Hombre Muerto、Salar Olaroz、Salar de Cauchariからのかん水、Salar de Rincon、Salar Pastos Grandes、Salar el Centenariからのかん水、Salar de Maricungaからのかん水、Tres Quebradasからのかん水、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施例では、天然由来のかん水は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、硫酸イオン、塩化物イオン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例では、天然由来のかん水は、ホウ素を含み得る。
【0032】
いくつかの実施例では、塩化リチウム溶液は、天然由来のかん水を濃縮および精製することによって形成される。いくつかの実施例では、かん水の濃縮および精製は、それらに限定されないが、天日蒸発、機械的蒸発、膜濾過、化学沈殿、溶媒抽出、イオン交換、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つに、かん水を供することなど、当該技術分野で既知の任意のメカニズムによって実施され得る。いくつかの実施例では、膜濾過は、ナノ濾過、逆浸透、またはそれらの任意の組み合わせを含む。濃縮のための非限定的な方法の追加の例は、Bukowsky et al.,The recovery of pure lithium chloride from “brines” containing higher contents of calcium chloride and magnesium chloride,Hydrometallurgy,Volume 27,Issue 3,1991,Pages 317-325、およびSchultze et al.,Recovering Lithium Chloride from a Geothermal Brine,Jan 1984,U.S.Department of the Interior,Bureau of Mines、およびGarrett,D.2004.Handbook of lithium and natural calcium chloride:their deposits,processing,uses and propertiesに記載されており、これらの各々は、あらゆる目的のためにそのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
いくつかの実施例では、塩化リチウム溶液は、鉱石供給源から生産される。いくつかの実施例では、鉱石供給源は、スポジュメンである。スポジュメンから塩化リチウム溶液を生産するための方法の非限定的な例としては、米国特許第2,533,246号および同第3,024,083号、WIPO特許出願公開第2021/138345号、ならびにBarbosa et al.,Extraction of lithium from β-spodumene using chlorination roasting with calcium chloride,Thermochimica Acta,Volume 605,2015,Pages 63-67が挙げられ、これらの各々は、あらゆる目的のためにそのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施態様では、鉱石供給源は、ペタライト、レピドライト、ヘクトライト、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0034】
ある特定の実施態様では、塩化リチウム溶液は、炭酸リチウムから得ることができる。いくつかの実施例では、炭酸リチウムは、本明細書に記載される炭酸リチウムの生産方法によって生産することができる。
【0035】
いくつかの実施例では、炭酸リチウム(LiCO)を反応させて、塩化リチウム(LiCl)を形成するのは、以下のとおりである:
LiCO(s)+2HCl(aq)→2LiCl(aq)+CO(g)+HO(l)
上記の反応を利用するいくつかの実施形態では、塩酸(HCl)は、本明細書に記載される電気分解から得ることができる。上記の反応のいくつかの実施形態では、二酸化炭素(CO)は、本明細書に記載される二酸化炭素供給源(すなわち、炭酸リチウムを生産するために使用される二酸化炭素供給源)として再利用するために、(例えば、スクラバーを使用して)捕捉され得る。捕捉されたCOはまた、それらに限定されないが、炭酸カリウムの生産、または炭酸ナトリウムの生産、あるいは他の用途などの他の目的のために使用することができる。
【0036】
いくつかの実施例では、炭酸リチウム(LiCO)を反応させて、塩化リチウム(LiCl)を形成するのは、以下のとおりである:
2LiCO(s)+2Cl(g)→4LiCl(aq)+2CO(g)+O(g)。
上記の反応を利用するいくつかの実施形態では、塩素ガス(Cl)は、本明細書に記載される電気分解から得ることができる。上記の反応のいくつかの実施形態では、電気分解からの水素ガスは、エネルギー供給源として使用することができる。上記の反応のいくつかの実施形態では、二酸化炭素(CO)は、上記のように収集され得る。ある特定の実施例では、上記の反応は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kim,et al.,“Manufacture characteristics of metal oxide-hydroxides for the catalytic decomposition of a sodium hypochlorite solution,”Chemical Engineering Journal,Volumes 200-202,2012,pages 52-58に記載されているような触媒を使用して実施され得る。
【0037】
いくつかの実施例では、塩化リチウムを水酸化カリウム(KOH)と反応させることは、以下の反応を実施することを含み得る:
LiCl+KOH⇔LiOH+KCl。
【0038】
いくつかの実施態様では、塩化リチウムおよび水酸化カリウムを化学量論的に反応させる。本明細書で使用される場合、「化学量論的」は、塩化リチウムおよび水酸化カリウムが互いに1:1のモル比で組み合わされることを意味する。いくつかの実施例では、塩化リチウム対水酸化カリウムの非化学量論的モル比、例えば、それらに限定されないが、1:2、2:1、1:3、3:1、4:1、1:4...もまた使用され得る。しかしながら、以下でより詳細に考察するように、ある特定の実施形態では、非化学量論的モル比を使用することは、反応収率に影響を及ぼし得る。
【0039】
いくつかの実施例では、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させると、相互塩システムが得られる。いくつかの実施例では、相互塩システムは、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。本明細書で使用される場合、「相互塩システム」は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gamsjager,et al.“Glossary of terms related to solubility(IUPAC Recommendations 2008)”Pure and Applied Chemistry,vol.80,no.2,2008,pp.233-276に従って定義される。Gamsjager,et al.,によって提供される相互塩表記定義を使用して、本開示の例示的な相互塩システムを以下のとおりに定義することができる:
,Li||Cl,OH+H
【0040】
いくつかの実施形態は、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶および塩化カリウム結晶を形成することを含む。いくつかの実施例では、反応および沈殿は、同時に、順次、またはそれらの組み合わせで実施される。いくつかの実施例では、反応および沈殿ステップは、単一のデバイス、すなわち結晶化反応器内で実施される。いくつかの実施例では、沈殿は、相互塩システムが平衡である間に実施される。いくつかの実施例では、平衡は、化学平衡、相平衡、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施例では、反応および沈殿ステップは、別個のデバイスで実施される。例えば、反応は、(以下で記載するように)少なくとも1つの反応器内で実施され得、沈殿は、(以下で記載するように)少なくとも1つの結晶器を使用して実施され得る。
【0041】
いくつかの実施例では、反応、沈殿、またはそれらの任意の組み合わせは、-50℃~150℃、-25℃~150℃、0℃~150℃、25℃~150℃、50℃~150℃、75℃~150℃、100℃~150℃、125℃~150℃、-50℃~125℃、-50℃~100℃、-50℃~75℃、-50℃~50℃、-50℃~50℃、-50℃~25℃、-50℃~0℃、-50℃~-25℃、-25℃~125℃、0℃~100℃、25℃~75℃の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの温度で、周囲圧力で実施され得る。反応、沈殿、またはそれらの任意の組み合わせは、周囲圧力で、周囲圧力未満で(例えば、少なくとも1つの真空供給源を使用することによって)、または周囲圧力を超える圧力下で(例えば、加圧反応器を使用して)実施され得る。したがって、周囲圧力以外の圧力での動作温度の変更は、本開示のある特定の実施態様によって企図される。
【0042】
ある特定の実施態様では、相互塩システムは、相互塩システムの総重量に基づいて、5重量%~30重量%、10重量%~30重量%、15重量%~30重量%、20重量%~30重量%、25重量%~30重量%、5重量%~25重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、5重量%~10重量%、10重量%~25重量%、15重量%~20重量%の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの量で、塩化カリウムを含む。ある特定の実施態様では、相互塩システムは、相互塩システムの総重量に基づいて、1重量%~10重量%、2重量%~10重量%、5重量%~10重量%、7重量%~10重量%、9重量%~10重量%、1重量%~9重量%、1重量%~7重量%、1重量%~5重量%、1重量%~2重量%、2重量%~9重量%、5重量%~7重量%の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの量で、水酸化リチウムを含む。ある特定の実施態様では、相互塩システムは、相互塩システムの総重量に基づいて、60重量%~90重量%、70重量%~90重量%、80重量%~90重量%、60重量%~80重量%、60重量%~70重量%、70重量%~80重量%の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの量で、水を含む。
【0043】
いくつかの実施例では、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させることは、冷却段階を含む。いくつかの実施例では、冷却段階は、上述のように、温度が他の圧力で変更され得るという理解の下に、-50℃~50℃、-50℃~25℃、-50℃~0℃、-50℃~-25℃、-25℃~50℃、0℃~50℃、25℃~50℃、-25℃~25℃の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの温度で、周囲圧力で実施され得る。いくつかの実施例では、冷却段階は、塩化カリウム結晶を選択的に沈殿させる。いくつかの実施例では、結晶相における塩化カリウムの比率は、冷却段階中に増加する。いくつかの実施形態では、相互塩システムの総重量に対する結晶相における塩化カリウムの重量分率(g/g)は、冷却段階中にて、0.1~0.4.0.2~0.4、0.3~0.4、0.1~0.3、0.1~0.2、0.2~0.3の範囲、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0044】
いくつかの実施例では、塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させることは、蒸発加熱段階を含む。いくつかの実施例では、蒸発加熱段階は、上述のように、温度が他の圧力で変更され得るという理解の下に、25℃~150℃、50℃~150℃、75℃~150℃、100℃~150℃、125℃~150℃、25℃~125、25℃~100℃、25℃~75℃、25℃~50、50℃~125℃、75℃~105℃の範囲、またはそれらの任意の組み合わせの温度で、周囲圧力で実施され得る。いくつかの実施例では、蒸発加熱段階は、水酸化リチウム結晶を選択的に沈殿させる。いくつかの実施例では、結晶相における水酸化リチウムの比率は、蒸発加熱段階中に増加する。いくつかの実施形態では、相互塩システムの総重量に対する結晶相における水酸化リチウムの重量分率(g/g)は、蒸発加熱段階中にて、0.03~0.09.0.05~0.09、0.07~0.09、0.03~0.07、0.03~0.05、0.05~0.07の範囲、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0045】
いくつかの実施例は、水酸化リチウム結晶を精製することをさらに含む。水酸化リチウム結晶を精製するいくつかの実施例は、相互塩システムから水酸化リチウム結晶を分離することをさらに含む。水酸化リチウム結晶を精製するいくつかの実施例は、水酸化リチウム結晶を水またはかん水に溶解させて、水酸化リチウム溶液を形成することをさらに含む。水酸化リチウム結晶を精製するいくつかの実施例は、水酸化リチウム溶液から不溶性固体を分離することをさらに含む。水酸化リチウム結晶を精製するいくつかの実施例は、水酸化リチウム溶液から水を蒸発させて、水酸化リチウム結晶を再結晶させることをさらに含む。いくつかの実施例では、溶解、分離、および蒸発は、目標純度が達成されるまで繰り返される。いくつかの実施例では、目標純度は、水酸化リチウム結晶の総重量に基づいて、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、またはそれらの組み合わせの50%重量超である。いくつかの実施例では、目標純度は、水酸化リチウム結晶の総重量に基づいて、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、またはそれらの組み合わせの90重量%超である。いくつかの実施例では、目標純度は、水酸化リチウム結晶の総重量に基づいて、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、またはそれらの組み合わせの95重量%超である。いくつかの実施例では、目標純度は、水酸化リチウム結晶の総重量に基づいて、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、またはそれらの組み合わせの99重量%超である。いくつかの実施例では、目標純度は、水酸化リチウム結晶の総重量に基づいて、水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、またはそれらの組み合わせの99.5重量%超である。いくつかの実施例では、目標純度は、水酸化リチウム結晶の総重量に基づいて、水酸化リチウム一水和物の水酸化リチウム、またはそれらの組み合わせの99.9重量%超である。いくつかの実施例では、目標純度は、水酸化リチウム結晶の総重量に基づいて、水酸化リチウムの、50重量%~99.9重量%、90重量%~99.9重量%、95重量%~99.9重量%、99重量%~99.9重量%、50重量%~99重量%、50重量%~95重量%、50重量%~90重量%、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0046】
いくつかの実施例は、相互塩システムから水酸化リチウム結晶、塩化カリウム結晶、またはそれらの組み合わせを分離することをさらに含む。分離は、好適な分離器を使用して実施され得、その例は、以下でさらに詳細に示される。いくつかの実施例では、分離は、濾過、遠心分離、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実施される。いくつかの実施形態は、相互塩システムから水酸化リチウム結晶、塩化カリウム結晶、またはそれらの組み合わせの大部分(すなわち、>50%)を分離することを含み得る。いくつかの実施形態は、相互塩システムから水酸化リチウム結晶、塩化カリウム結晶、またはそれらの組み合わせのすべてまたは実質的にすべて(すなわち、≧99%)を分離することを含み得る。
【0047】
本方法のいくつかの実施例は、相互塩溶液から除去した塩化カリウム結晶を水、かん水、または枯渇塩化カリウム溶液に溶解させて、得られた混合物を濾過して塩化カリウム溶液を再循環させることをさらに含む。いくつかの実施例では、塩化カリウム溶液のpHは、上記の方法で生成された塩酸を使用して調整され得る。さらに、上記に言及したように、ある特定の実施態様では、この再循環塩化カリウム溶液は、再循環され、少なくとも1つの電気分解セルにおいて再利用され得る。したがって、いくつかの実施例では、溶解、電気分解、反応、および沈殿ステップは、1回または任意の回数繰り返され得る。さらに、いくつかの実施態様では、再循環塩化カリウム溶液は、例えば、少なくとも1つの再循環流を介して、電気分解セルと流体連通することができる。さらなる実施態様では、再循環塩化カリウム溶液は、バッチで、または当該技術分野で既知の任意の他のフロー配置によって電気分解セルに添加され得る。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態による、炭酸リチウムの生産のための方法を記載する。いくつかの実施例では、炭酸リチウムは、試薬として塩化リチウム、塩化カリウムまたは塩化ナトリウム、水、および二酸化炭素供給源を使用して生産することができる。いくつかの態様では、炭酸リチウムは、試薬として石灰、ソーダ灰、塩酸、水酸化ナトリウム、またはそれらの組み合わせを使用することなく生産することができる。
【0049】
炭酸リチウムを生産するための方法の1つ以上の実施形態は、上記のように、塩化カリウムまたは塩化ナトリウム溶液を電気分解することを含む。塩化ナトリウム溶液を使用する実施例では、特定の電気分解ステップにおいて、塩化ナトリウムを塩化カリウムに置き換えることができる。塩化ナトリウムを使用する場合の電気分解条件からの逸脱は、ある特定の実施例では、上記のNafion(登録商標) Product Bulletinに従って行われ得る。
【0050】
ある特定の実施例では、電気分解により、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液、枯渇塩化カリウムまたは枯渇塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスが得られる。いくつかの実施例では、塩素ガスおよび水素ガスを反応させて、上記のように塩酸を形成することができる。この塩酸は、上記および下記にさらに記載されるように、pH調整剤として使用することができる。
【0051】
本方法の1つ以上の実施形態は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液を形成することを含む。反応は、以下の反応のうちの少なくとも1つを含み得る:
(1)2KOH(aq)+2CO(g)→KCO(aq)+HO(aq)。
(2)2NaOH(aq)+2CO(g)→NaCO(aq)+HO(aq)。
【0052】
二酸化炭素供給源は、場合によっては、二酸化炭素ガス(CO)であり得る。いくつかの実施態様では、二酸化炭素ガスは、空気から、発電から、または当該技術分野で既知の任意の他の手段から得ることができる。いくつかの実施例では、二酸化炭素ガスは、塩化リチウム溶液を形成するための上記の反応から得ることができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、二酸化炭素供給源は、反応させたときにCOを形成する化学元素または化合物であり得る。例えば、特定の実施態様では、二酸化炭素供給源は、アルカリ金属重炭酸塩(以下、MHCO)および酢酸を含み得る。アルカリ金属Mは、いくつかの実施形態では、ナトリウムまたはカリウムであり得る。アルカリ金属重炭酸塩(MHCO)および酢酸(CHCOOH)は、以下の反応で反応して、COおよびアルカリ金属酢酸塩(MCHCOO)を形成することができる:
MHCO(aq)+CHCOOH(l)→CO(g)+HO(l)+MCHCOO(aq)。
【0054】
いくつかの実施形態では、本方法は、炭酸カリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させることを含む。ある特定の実施態様では、反応は、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムおよび塩化リチウムを含む反応混合物を用いて実施される。
【0055】
いくつかの実施例では、反応は、以下の反応のうちの少なくとも1つを含む:
(1)KCO(aq)+2LiCl(aq)→LiCO(s)+2KCl(aq)。
(2)NaCO(aq)+2LiCl(aq)→LiCO(s)+2NaCl(aq)。
【0056】
いくつかの実施例では、炭酸カリウムを塩化リチウムと反応させることは、反応混合物を、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムと塩化リチウムとを反応させるのに十分な温度に加熱することによって実施される。いくつかの実施例では、温度は、30℃~120℃、40℃~120℃、50℃~120℃60℃~120℃、70℃~120℃、80℃~120℃、90℃~120℃、100℃~120℃、110℃~120℃、30℃~110℃、30℃~100℃、30℃~90℃、30℃~80℃、30℃~70℃、30℃~60℃、30℃~50℃、30℃~40℃、40℃~110℃、50℃~100℃、60℃~90℃、70℃~80℃、またはそれらの任意の組み合わせまで上昇させる。
【0057】
ある特定の実施態様では、反応により、塩化カリウムまたは塩化ナトリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物が得られる。いくつかの実施形態は、生成物混合物から炭酸リチウム固体を除去することを含む。ある特定の実施形態では、炭酸リチウム固体のうちの少なくともいくつかは、生成物混合物から除去される。ある特定の実施形態では、炭酸リチウム固体の大部分(>50%)は、生成物混合物から除去される。ある特定の実施形態では、炭酸リチウム固体のすべてまたは実質的にすべて(≧99%)が、生成物混合物から除去される。除去は、本明細書に記載される少なくとも1つの好適な分離器を用いて実施され得る。
【0058】
ある特定の実施例では、炭酸リチウム固体の除去により、再生塩化カリウム溶液または再生塩化ナトリウム溶液が得られる。
【0059】
いくつかの実施形態は、再生塩化カリウム溶液または再生塩化ナトリウム溶液を枯渇塩化カリウム溶液または枯渇塩化ナトリウム溶液と組み合わせて、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を補充することを含む。したがって、ある特定の実施例では、電気分解、反応、除去、および組み合わせのステップは、1回または任意の回数繰り返され得る。塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液の再生は、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つの再循環流を使用して実施され得る。
【0060】
いくつかの実施例は、塩化カリウム溶液、再生塩化カリウム溶液、塩化ナトリウム溶液、または再生塩化ナトリウム溶液のpHを調整することをさらに含む。ある特定の実施態様では、pHは、上記で考察するように、塩酸(例えば、水素および塩素ガスを反応させることによって得られる塩酸)を使用して調整することができる。いくつかの実施例では、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液のpHは、2~8、5~8、6~8、7~8、4~7、4~6、4~5、5~7、またはそれらの任意の組み合わせに調整される。
【0061】
図1は、本開示の態様による、リチウム生産システム100の第1の例を示す。
【0062】
リチウム生産システム100は、本開示に従って、水酸化リチウム(水酸化リチウム一水和物を含む)、炭酸リチウム、またはそれらの任意の組み合わせを生産するために使用され得る。示される例は、少なくとも1つの電気分解セル105、および少なくとも1つの反応器110を含む。システム100は、図2および3を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、電気分解セル105は、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液、枯渇塩化カリウムまたは塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。いくつかの実施例では、電気分解セル105は、塩素-アルカリ電気分解を実施する。いくつかの実施例では、電気分解セル105は、水銀電池技術を利用する。電気分解セル105は、図2~4を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの反応器110は、水酸化カリウム溶液を塩化リチウムと反応させる。いくつかの実施例では、反応器110は、水素ガスを塩素ガスと反応させて塩酸を生成する。いくつかの実施例では、少なくとも1つの反応器110は、少なくとも1つの結晶化反応器110を含む。いくつかの実施例では、反応器110は、直列または並列のいずれかで複数の反応器(図1に示されていない)の形態を取ることができる。少なくとも1つの反応器110の追加の非限定的な例としては、それらに限定されないが、バッチ反応器、連続撹拌槽反応器(CSTR)、プラグフロー反応器(PFR)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの反応器110は、水酸化カリウム溶液または水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液を形成する。いくつかの実施例では、少なくとも1つの反応器110は、炭酸カリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化カリウムまたは塩化ナトリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得る。いくつかの実施例では、少なくとも1つの反応器110は、水酸化ナトリウム溶液または水酸化カリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸ナトリウム溶液または炭酸カリウム溶液を形成し、炭酸ナトリウム溶液または炭酸カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得るように構成される。少なくとも1つの反応器110は、図2および3を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。
【0065】
図2は、本開示の態様による、リチウム生産システム200の第2の例を示す。示される例は、少なくとも1つの電気分解セル205、少なくとも1つの反応器210、および少なくとも1つの結晶器215を含む。
【0066】
システム200は、図1および3を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。
【0067】
少なくとも1つの電気分解セル205は、図1、3、および4を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。少なくとも1つの反応器210は、図1および3を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。電気分解セル205は、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液または水酸化ナトリウム溶液を得ることができる。図2の実施例では、電気分解セル205は、少なくとも1つの膜を含み得、電気分解は、それに限定されないが、塩素-アルカリ電気分解などの膜電気分解を使用して実施され得る。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの結晶器215は、相互塩システム200から塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶および塩化カリウム結晶を形成するように構成される。いくつかの実施例では、少なくとも1つの結晶器215は、図3を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。いくつかの実施例では、少なくとも1つの反応器210および少なくとも1つの結晶器215は、それに限定されないが、結晶化反応器などの単一のデバイスであってもよい。いくつかの実施例では、少なくとも1つの結晶器215は、少なくとも1つの反応器210から分離され得る。いくつかのそのような実施例では、少なくとも1つの結晶器215は、それに限定されないが、多重効果結晶器列などの直列または並列のいずれかで複数の結晶器の形態を取ることができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの結晶器215は、機械的な蒸気圧縮器の結晶器を含み得る。いくつかの実施例では、少なくとも1つの結晶器215は、誘導熱供給源または対流熱供給源と熱連通していてもよい。例示的な対流熱供給源の1つは、蒸気である。例示的な誘導熱供給源の1つは、加熱コイルである。少なくとも1つの結晶器215のさらなる非限定的な例としては、連続式完全混合槽(mixed suspension mixed product removal、MSMPR)結晶器、循環液結晶器、掻面型結晶器(scraped surface crystallizer)、タンク式結晶器、強制循環結晶器、ドラフトチューブバッフル(DTB)結晶器、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0069】
図3は、本開示の態様による、リチウム生産システム300の第3の例を示す。示される例は、少なくとも1つの電気分解セル305、少なくとも1つの反応器310、少なくとも1つの結晶器315、少なくとも1つの混合器320、および少なくとも1つの分離器325を含む。システム300は、図1および2を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。電気分解セル305は、図1、2および4を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。反応器310は、図1および2を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。結晶器315は、図2を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。
【0070】
いくつかの実施例では、混合器320は、塩化カリウム結晶または塩化ナトリウム結晶を水、かん水、枯渇塩化カリウム溶液、または枯渇塩化ナトリウム溶液に溶解させて、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を得る。いくつかの実施例では、混合器320は、水酸化リチウム結晶を水またはかん水に溶解させて、水酸化リチウム溶液を形成する。いくつかの実施形態によれば、混合器320は、再生塩化カリウム溶液を枯渇塩化カリウム溶液または枯渇塩化ナトリウム溶液と組み合わせて、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を補充する。いくつかの実施例では、混合器320は、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液のpHを調整する。いくつかの実施例では、混合器320は、直列または並列のいずれかで複数の混合器の形態を取ることができる。混合器320の非限定的な例としては、垂直もしくは水平撹拌型タンク、高もしくは低剪断管状混合器、水平パドル混合器、スクリュー輸送混合器、連続高剪断混合器、プログレッシブキャビティ混合ポンプ、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、分離器325は、相互塩システム300から水酸化リチウム結晶を分離する。いくつかの実施例では、分離器325は、水酸化リチウム溶液から不溶性固体を分離する。いくつかの実施例では、分離器325は、相互塩システム300から水酸化リチウム結晶、塩化カリウム結晶、またはそれらの組み合わせを分離する。いくつかの実施例では、分離器325は、濾過、遠心分離、またはそれらの任意の組み合わせを使用して、相互塩システム300から水酸化リチウム結晶、塩化カリウム結晶、またはそれらの組み合わせを分離する。いくつかの実施例では、少なくとも1つの分離器325は、遠心分離器、濾過器、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態によれば、分離器325は、生成物混合物から炭酸リチウム固体を分離して、再生塩化カリウム溶液または再生塩化ナトリウム溶液を得る。いくつかの実施形態によれば、分離器325は、少なくとも1つの分離器325を含み、少なくとも1つの分離器325は、炭酸リチウム、および塩化ナトリウムまたは塩化カリウムの生成物混合物から炭酸リチウム固体を除去するように構成される。いくつかの実施例では、分離器325は、圧濾器、ベルト濾過器、プレート濾過器、沈降遠心分離器、遠心濾過器、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0072】
リチウム生産システム300は、少なくとも1つの熱供給源330、少なくとも1つの冷却供給源335、少なくとも1つの温度センサ340、少なくとも1つの電力供給源345、少なくとも1つの真空供給源350、少なくとも1つの再循環流355、少なくとも1つの蒸発器360、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。
【0073】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの熱供給源330は、炉、ボイラ、ヒートポンプ、ストーブ、オーブン、フランジ加熱器、循環加熱器、スクリュープラグ加熱器、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0074】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの冷却供給源335は、冷媒、冷却ジャケット、蒸発冷却器、冷却塔、ポンプ圧送可能な氷、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0075】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの温度センサ340は、熱電対、温度モニタコントローラ、抵抗温度検出器、サーミスタ、半導体ベースの集積回路、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0076】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの電力供給源345は、電気、機械的電力、少なくとも1つの化石燃料、石炭、原子力、水素、少なくとも1つの燃料電池、少なくとも1つの核分裂反応器、少なくとも1つの核融合反応器、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0077】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの真空供給源350は、周囲圧力未満の圧力で、本明細書に記載される反応または沈殿を実施するために使用され得る。いくつかの実施例では、少なくとも1つの真空供給源350は、回転羽根ポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、スクロールポンプ、スクリューポンプ、外部羽根ポンプ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0078】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの再循環流355は、再生塩化カリウム溶液を枯渇塩化カリウム溶液と組み合わせて、塩化カリウム溶液を補充する。いくつかの実施例では、少なくとも1つの再循環流355は、再生塩化ナトリウム溶液を枯渇塩化ナトリウム溶液と組み合わせて、塩化ナトリウム溶液を補充する。いくつかの実施例では、少なくとも1つの再循環流355は、再循環塩化カリウムを電気分解セル305内に再導入することができる。
【0079】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの蒸発器360は、水酸化リチウム溶液から水を蒸発させて、水酸化リチウム結晶を再結晶させることができる。少なくとも1つの蒸発器360は、いくつかの実施例では、上昇薄膜蒸発器、短管垂直蒸発器、バスケット型蒸発器、長管垂直蒸発器、プレート蒸発器、水平管シェル側蒸発器(horizontal tube shell-side evaporator)、トラフ蒸発器、回転ドラム蒸発器、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0080】
図4は、本開示の態様による、少なくとも1つの電気分解セル400の一例を示す。電気分解セル400は、図1~3を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。ある実施形態では、電気分解セル400は、塩素ガス405、水素ガス410、塩化カリウム溶液415または塩化ナトリウム溶液420、水酸化カリウム溶液425または水酸化ナトリウム溶液430、および膜435を含む。塩化カリウム溶液415は、図7を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。水酸化カリウム溶液425は、図7を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。膜435は、図5および6を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよく、あるいは本明細書に記載されるように、それらに限定されないが、ペルフルオロ化スルホン化膜(例えば、Nafion(登録商標))などの任意の膜であってもよい。
【0081】
図5は、本開示の態様に従って使用され得る膜500の例示的な電流効率を示す。膜500は、図4および6を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。具体的には、示される電流効率は、膜500-aおよび500-bに関連付けられている。膜500-aおよび500-bは、DuPont(商標)から商業的に入手可能なNafion(登録商標)膜である。例示的な電流効率は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Fluorinated Ionomers(Second Edition),Plastics Design Library 2011,Pages 81-156から得た(以下、「Fluorinated Ionomers」)。示されるように、異なる膜の種類および異なる濃度の水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムは、膜電気分解の効率に影響を及ぼし得る。
【0082】
図6は、本開示の態様による、例えば膜600の例示的な電圧を示す。膜600は、図4および5を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。DuPont(商標)から商業的に入手できるNafion(登録商標)膜を使用して、32重量%のKOH、および170~200g/lのKClを使用して、図6を90℃で生成した。膜600-a、600-b、600-c、600-d、および600-eの例示的な電圧は、異なる電流密度で示される。例示的な電圧は、上記で参照されたFluorinated Ionomersから得た。示されるように、異なる膜の種類および異なる濃度の水酸化カリウムは、膜電気分解の効率に影響を及ぼし得る。いくつかの実施例では、水酸化ナトリウムの存在(水酸化カリウム溶液中または水酸化ナトリウム溶液としてのいずれか)は、本開示の範囲から逸脱することなく、図6に示されない効率に対して、この効率に影響を及ぼし得る。
【0083】
図7は、本開示の態様による、例示的な結晶化反応器700を示す。結晶化反応器700は、図17を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。ある実施形態では、結晶化反応器700は、相互塩システム705、水710、塩化リチウム715、水酸化カリウム溶液720、水酸化リチウム溶液725、および塩化カリウム溶液730を含む。相互塩システム705は、図15を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。相互塩システム705は、いくつかの実施例では、以下のとおりに表され得る:K,Li||Cl,OH+HO。水酸化カリウム溶液720は、図4を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。塩化カリウム溶液730は、図4を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。いくつかの実施例では、結晶化反応器700は、連続結晶化反応器、バッチ結晶化反応器、撹拌容器結晶化反応器、トラフ結晶化反応器、冷却結晶化反応器、直接接触冷却結晶化反応器、蒸気加熱蒸発結晶化反応器、強制循環蒸発結晶化反応器、DTB結晶化反応器、乱流結晶化反応器、流動床撹拌結晶化反応器、多段真空結晶化反応器、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0084】
図8は、本開示の態様による、水酸化リチウムの生産のためのプロセスの一例を示す。場合によっては、本明細書で記載される動作は、様々なサブステップで構成されるか、または他の動作と併せて実施される。動作800において、システムは、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。動作805において、システムは、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含む相互塩システムを形成する。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作810において、システムは、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶および塩化カリウム結晶を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図2および3を参照して記載されるような結晶器を参照するか、またはそれによって実施され得る。
【0085】
図9は、本開示の態様による、水酸化リチウムの生産のためのプロセスの一例を示す。動作900において、システムは、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。動作905において、システムは、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含む相互塩システムを形成する。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作910において、システムは、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶および塩化カリウム結晶を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図2および3を参照して記載されるような結晶器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作915において、システムは、塩化カリウム結晶を水、かん水、または枯渇塩化カリウム溶液に溶解させて、塩化カリウム溶液を得る。場合によっては、このステップの動作は、図3を参照して記載されるような混合器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作920において、システムは、電気分解、反応、沈殿、溶解、および濾過ステップを繰り返す。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。
【0086】
図10は、本開示の態様による、水酸化リチウムの生産のためのプロセスの一例を示す。場合によっては、本明細書で記載される動作は、様々なサブステップで構成されるか、または他の動作と併せて実施される。動作1000において、システムは、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1005において、システムは、水酸化カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、水酸化カリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、水酸化リチウム、および水を含む相互塩システムを形成する。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1010において、システムは、相互塩システムから塩化カリウムおよび水酸化リチウムを沈殿させて、水酸化リチウム結晶および塩化カリウム結晶を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図2および3を参照して記載されるような結晶器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1015において、システムは、水酸化リチウム結晶を精製する。場合によっては、このステップの動作は、図3を参照して記載されるような混合器を参照するか、またはそれによって実施され得る。
【0087】
図11は、本開示の態様による、塩化リチウムおよび塩化カリウムからの炭酸リチウムの生産のためのプロセスの一例を示す。動作1100において、システムは、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1105において、システムは、水酸化カリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウム溶液を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1110において、システムは、炭酸カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化カリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。
【0088】
図12は、本開示の態様による、炭酸リチウムの生産のためのプロセスの一例を示す。動作1200において、システムは、塩化カリウム溶液を電気分解して、水酸化カリウム溶液、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1205において、システムは、水酸化カリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウム溶液を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1210において、システムは、炭酸カリウム溶液を塩化リチウム溶液と反応させて、塩化カリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1215において、システムは、混合物から炭酸リチウム固体を除去して、再生塩化カリウム溶液を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図3を参照して記載されるような分離器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1220において、システムは、再生塩化カリウム溶液を枯渇塩化カリウム溶液と組み合わせて、塩化カリウム溶液を補充する。場合によっては、このステップの動作は、図3を参照して記載されるような混合器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1225において、システムは、電気分解、反応、除去、および組み合わせのステップを繰り返す。
【0089】
図13は、本開示の態様による、炭酸リチウムの生産のためのプロセスの一例を示す。動作1300において、システムは、塩化ナトリウム溶液を電気分解して、水酸化ナトリウム溶液、枯渇塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1305において、システムは、水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸ナトリウム溶液を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1310において、システムは、炭酸ナトリウム溶液を塩化ナトリウム溶液と反応させて、塩化ナトリウムおよび炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。
【0090】
図14は、本開示の態様による、炭酸リチウムの生産のためのプロセスの一例を示す。動作1400において、システムは、塩化ナトリウム溶液を電気分解して、水酸化ナトリウム溶液、枯渇塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、および水素ガスを得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~4を参照して記載されるような電気分解セルを参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1405において、システムは、水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸ナトリウム溶液を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1410において、システムは、炭酸ナトリウム溶液を塩化ナトリウム溶液と反応させて、塩化カリウム、および炭酸リチウム固体を含む生成物混合物を得る。場合によっては、このステップの動作は、図1~3を参照して記載されるような反応器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1415において、システムは、混合物から炭酸リチウム固体を除去して、再生塩化ナトリウム溶液を形成する。場合によっては、このステップの動作は、図3を参照して記載されるような分離器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1420において、システムは、再生塩化ナトリウム溶液を枯渇塩化ナトリウム溶液と組み合わせて、塩化ナトリウム溶液を補充する。場合によっては、このステップの動作は、図3を参照して記載されるような混合器を参照するか、またはそれによって実施され得る。動作1425において、システムは、電気分解、反応、除去、および組み合わせのステップを繰り返す。
【0091】
図15は、本開示の態様による、相互塩システム1500からの例示の温度および重量パーセントデータを示す。相互塩システム1500は、図7を参照して記載される対応する要素の一例であってもよく、またはその態様を含んでもよい。これらのラインは、異なる温度での水酸化リチウムならびに塩化カリウムの飽和の共晶点を表す。公的に入手可能な科学的文献からの値を使用してラインを生成した。グラフは、いくつかの実施例(例えば、以下の実施例3)において、本開示による水酸化リチウムおよび塩化カリウムの選択的沈殿を導くために使用することができる。
【0092】
図16は、本開示による、例示的な相互塩システムのJanecke図を示す。Janecke図は、2021年7月23日に最終アクセスされた、https://www.beyonddiscovery.org/crystal-growth/473-janecke-diagrams.htmlにて利用可能な「Beyond Discovery」の定義に従って無視される。「Beyond Discovery」ウェブサイトの少なくとも上述のセクションは、あらゆる目的のためにそのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
例示的なJanecke図1600では、対応する相互塩システムは、K,Li||Cl,OH+HOとして示すことができる。例示的なJanecke図1600におけるプロットされたモル比は、K/(K+Li)およびCl(Cl+OH)である。例示的なJanecke図1600では、塩化リチウム(LiCl)および水酸化カリウム(KOH)は、非常に可溶性であり、顕著な量で沈殿しない。例示的なJanecke図1600では、最高収率は、塩化リチウム(LiCl)および塩化カリウム(KCl)の化学量論的混合物(M1)により得ることができる。Aを使用することもできるが、収率はそれほど高くない場合がある。
【0094】
示されるように、混合物M1を0℃(C1)まで冷却することができる。冷却中、モル組成物C1の溶液が形成され得る。KClを分離することができ、溶液C1を100℃における点E1まで蒸発させることができ、いくつかの実施形態に従ってLiOHが結晶化される。この結晶を分離することができる。いくつかの実施態様では、溶液E1を、M1と混合することができる。次いで、E1とM1との間の点にある得られた混合物をC1まで冷却して、KClを形成することができる。蒸発、結晶化、分離、および混合は、いくつかの実施態様では、繰り返され得る。
【0095】
非限定的な実施例1:水酸化リチウムの生産:
塩化リチウム溶液の重量に対して、塩化リチウムの10重量%~50重量%の範囲の塩化リチウム濃度を有する塩化リチウム溶液を、(i)溶液の重量に対して、塩化カリウムの10重量%~40重量%の範囲の濃度を有する水酸化カリウム溶液と、(ii)再循環水酸化カリウム溶液と混合する。得られた混合物を結晶化反応器に添加して、相互塩システムを得る。相互塩システムが、水酸化リチウムの飽和点未満で維持されるように、相互塩システムをモニタする(例えば、図15を参照のこと)。
【0096】
相互塩システムを冷却して、塩化カリウムを選択的に沈殿させる。得られた塩化カリウム結晶を、遠心分離器またはベルト濾過器のいずれかで分離し、水またはかん水に溶解させる。不溶性固体を塩化カリウムから濾過する。得られた溶液を電気分解セルにて処理して、枯渇塩化カリウム溶液、塩素ガス、水酸化カリウム溶液、および水素ガスを生成し、上記の再循環水酸化カリウム溶液(ii)を得る。
【0097】
相互塩システムを加熱し、水を蒸発させて水酸化リチウムを選択的に沈殿させる。図15に示されるように、溶液が塩化カリウムの飽和点を下回るまで蒸発加熱を実施する。次に、結晶化した水酸化リチウム一水和物を遠心分離器によって分離する。固体の水酸化リチウム一水和物結晶を水に溶解させる。次に、ポリッシュ濾過器(polish filter)を適用して、得られた水酸化リチウム溶液から不溶性固体を除去する。溶液を、精製された水酸化リチウム一水和物結晶が形成されるまで蒸発する。遠心分離器またはベルト濾過器を適用して、水酸化リチウム一水和物結晶を分離し、洗浄し、次いで、乾燥させ、充填することができる。
【0098】
非限定的な実施例2:炭酸リチウムの生産:
電気分解セルにて塩化カリウムまたは塩化ナトリウムを処理し、枯渇塩化カリウムまたは塩化ナトリウム溶液、塩素ガス、水素ガス、および水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液を形成することによって、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム溶液を得る。
【0099】
形成された水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム溶液を二酸化炭素供給源と反応させて、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムを得る。
【0100】
塩化リチウム溶液をかん水から精製し、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウム溶液と、60℃~120℃の範囲の温度で反応させて、炭酸リチウム固体および塩化カリウムまたは塩化ナトリウムを含む生成物混合物を形成する。炭酸リチウム固体を分離し、洗浄し、乾燥させ、収集する。
【0101】
塩化カリウムまたは塩化ナトリウム溶液のpHを調整して、溶解した炭酸塩を除去する。次に、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を、蒸発器中で濃縮し、塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液を補充するように、枯渇塩化カリウム溶液または塩化ナトリウム溶液と組み合わせる。
【0102】
非限定的な実施例3:水酸化リチウムおよび塩化カリウムの相対溶解度試験:
相対溶解度試験は、以下の実験的設定を用いて実施した。
・オーバーヘッド混合器、インペラ、およびバッフルを含む、3リットル(3L)のガラスジャケット付き結晶器の反応器1700(図17に示す、-9.8℃にて)。
・ガラスジャケット付き結晶器の反応器1700に接続された加熱および冷却システム。
・熱電対および温度モニタコントローラ。
・真空フラスコ、Buchner漏斗、および実験室規模の遠心分離器
【0103】
以下の実験的手順に従った。
・LiOHおよびKClの飽和溶液を、95℃を超える温度で、それぞれ12重量%および32重量%の初期目標重量パーセントを用いて調製した。
・飽和溶液をT>95℃で1時間保持し、70℃、40℃、10℃および-10℃に低下させた。
・飽和溶液を各温度で1時間保持し、以下の手順に従ってサンプルを採取した。
・実験室規模の遠心分離器および28μmの濾材(ポリプロピレン生地)を使用して脱水することによって、T>95℃、40℃、および-10℃(初期、中間、および最終)における固体サンプルおよび溶液サンプルを採取した。
・収集した濾液および結晶の質量を記録した。
・次に、上記ステップに従って、70℃および10℃におけるサンプルを採取した。
【0104】
図18は、本実施例の例示的な相対溶解度試験の結果を示す。示される重量パーセントは、水相中(すなわち、「溶液中」)の重量パーセントに対応する。示されるように、塩化カリウムは、水相中のより低温での塩化カリウムのより低い重量パーセントによって示されるように、より低温で選択的に沈殿させることができる。逆に、水酸化リチウムは、水相中の最高温度での水酸化リチウムのより低い重量パーセントによって示されるように、より高温で選択的に沈殿させることができる。
【0105】
追加の結果はまた、以下の表1および2に示される。
【表1】
【表2】
【0106】
上記の結果は、本開示による相互塩システムから、水酸化リチウムおよび塩化カリウムを選択的に沈殿させることができることを示す。
【0107】
本明細書に記載される説明および図面は、例示の構成を表し、特許請求の範囲の範囲内のすべての実施態様を表すものではない。例えば、動作およびステップは、再配置され、組み合わされ、または他の方法で修正され得る。また、構造およびデバイスは、構成要素間の関係を表し、記載された概念を曖昧にすることを回避するために、ブロック図の形態で表され得る。同様の構成要素または特徴は、同じ名称を有し得るが、異なる図面に対応する異なる参照番号を有し得る。
【0108】
本開示に対するいくつかの修正は、当業者には容易に明らかであり得、本明細書で定義される原理は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の変形形態に適用され得る。したがって、本開示は、本明細書に記載される実施例および設計に限定されず、本明細書に開示される原理および新規の特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。開示されているそれらの利益および改善のうち、本開示の他の目的および利点は、添付の図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。本開示の詳細な実施形態が本明細書に開示されるが、しかしながら、開示された実施形態は、様々な形態で実施され得る本開示の例示に過ぎないことを理解されたい。加えて、本開示の様々な実施形態に関して与えられた実施例の各々であり、これは、例示的であり、限定的ではないことを意図する。
【0109】
本開示および以下の特許請求の範囲では、「または」という単語は、例えば、X、Y、またはZのリストが、XまたはYまたはZまたはXYまたはXZまたはYZまたはXYZを意味するような包括的なリストを示す。また、「に基づいて」という語句は、閉じたセットの条件を表すために使用されない。例えば、「条件Aに基づいて」と記載されるステップは、条件Aおよび条件Bの両方に基づいていることができる。言い換えると、「に基づいて」という語句は、「に少なくとも部分的に基づいて」を意味すると解釈されるべきである。また、「a」または「an」という単語は、「少なくとも1つ」を示す。
【0110】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈が明示的に別様に指示しない限り、本明細書で明確に関連付けられた意味を取る。本明細書で使用される「ある実施形態では」、「一実施形態では」、および「いくつかの実施形態では」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、そうである場合もある。さらに、本明細書で使用される「別の実施形態では」および「いくつかの他の実施形態では」という語句は、必ずしも異なる実施形態を指すものではないが、そうである場合もある。本開示のすべての実施形態は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく組み合わせ可能であることが意図される。
【0111】
本明細書で使用される場合、「に基づいて」という用語は、文脈が明示的に別様に指示しない限り、排他的ではなく、記載されない追加の要因に基づいていることを可能にする。加えて、本明細書全体を通じて、「a」、「an」、および「the」の意味は、複数の指示対象を含む。「内(in)」の意味は、「内(in)」および「上(on)」を含む。
【0112】
本明細書で参照されるすべての先行特許、刊行物、および試験方法は、それら全体が参照により組み込まれる。
【0113】
上記の本開示の実施形態に対する変形形態、修正、および変更は、当業者にはそれら自体が明らかであろう。すべてのそのような変形形態、修正、変更などは、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される、本開示の趣旨および範囲内に入ることが意図される。
【0114】
本明細書で肯定的に識別される任意の特徴または要素は、特許請求の範囲で定義される本開示の実施形態の特徴または要素として具体的に除外され得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、特定の特許請求の範囲の範囲を、特定の材料またはステップ、および特定の特許請求の範囲の基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0116】
本明細書に記載される開示は、本明細書に具体的に開示されていない要素(複数可)、制限(複数可)が存在しない場合に実施され得る。したがって、例えば、本明細書の各事例において、「含む」、「から本質的になる、および「からなる」という用語のいずれかは、他の2つの用語のいずれかと置き換えられ得る。用いられている用語および表現は、説明の用語として使用され、制限するものではなく、そのような用語および表現の使用には、示され記載される特徴またはその一部の任意の等価物を除外する意図はないが、様々な修正が本開示の範囲内で可能であることが認識される。
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