(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】把持システム、把持方法、制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
B25J15/08 C
(21)【出願番号】P 2022212669
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【氏名又は名称】坊野 康博
(72)【発明者】
【氏名】杉村 忠玄
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キルス
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖也
(72)【発明者】
【氏名】青柿 拓也
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176368(JP,A)
【文献】特開2022-013236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉する把持部材を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた把持システムであって、
前記制御装置は、
前記把持部材を閉状態とすることで、把持対象となる対象物を前記把持部材により把持する把持動作と、
前記把持部材を開状態とすることで、前記把持動作により把持した把持対象物を前記把持部材から解放する解放動作と、
前記解放動作により解放した解放対象物が落下する過程において、前記解放対象物に前記把持部材を接触させることで、前記解放対象物が所定の落下先に落下するよう案内する案内動作と、
前記把持部材を、前記案内動作により案内されて落下した前記解放対象物に接触させた状態で移動させることで、前記解放対象物の表面を整形する整形動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする把持システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記解放動作において、前記解放対象物の一部を第1の解放位置に落下するよう解放させ、
前記案内動作において、前記解放対象物の他の一部を前記第1の解放位置より離間した第2の解放位置に落下するよう案内させると共に、前記解放対象物のさらに他の一部を前記第1の解放位置と前記第2の解放位置の間の領域に落下するように案内させる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の把持システム。
【請求項3】
前記第1の解放位置は、前記解放対象物を解放すべき領域における所定方向の一端であり、前記第2の解放位置は、前記解放対象物を解放すべき領域における前記所定方向の他端である、
ことを特徴とする請求項
2に記載の把持システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記把持部材を、水平方向及び鉛直方向の双方に移動させることにより前記案内動作を実現する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の把持システム。
【請求項5】
開閉する把持部材を備えたロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
前記把持部材を閉状態とすることで、把持対象となる対象物を前記把持部材により把持する把持動作と、
前記把持部材を開状態とすることで、前記把持動作により把持した把持対象物を前記把持部材から解放する解放動作と、
前記解放動作により解放した解放対象物が落下する過程において、前記解放対象物に前記把持部材を接触させることで、前記解放対象物が所定の落下先に落下するよう案内する案内動作と、
前記把持部材を、前記案内動作により案内されて落下した前記解放対象物に接触させた状態で移動させることで、前記解放対象物の表面を整形する整形動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持システム、把持方法、制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、把持機能を備えたロボットにより、様々な作業が行われている。例えば、惣菜の盛り付け作業をロボットが行う場合、バット等の容器に蓄えられた具材をロボットが所定量把持し、惣菜の容器の定められた領域に移送して解放(リリース)することで盛り付け(プレース)作業が実現される。
このような、盛り付けを行うロボットに関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ロボットによる盛り付け作業では、盛り付け後の具材の状態が、適切な状態とならない場合があった。
例えば、ポテトサラダや卯の花といった、粘性や粘着性のある具材、あるいは相互に密着しやすい具材を把持する場合、把持部材から具材に対して与えられる把持力に起因し、具材同士が結合して1つの塊状となる。そして、この塊状となった具材を解放して容器に盛り付けた場合、具材は分離することなく容器内で自立する。更に、この自立した具材はその後重力によって横転し、結果として、具材が容器外にはみ出してしまう。
しかし、従来の技術では、このような特性がある具材を、適切な状態で盛り付けることは困難であった。
【0005】
また、この課題は、対象物が食材である場合に限られるものではなく、工業分野等の、ロボットによる把持を行う様々な分野全般に共通するものである。
すなわち、従来の技術では、ロボットによって把持した対象物を解放する場合に、解放された対象物の状態を適切な状態とすることについて、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、ロボットによって把持した対象物を解放する場合に、解放された対象物の状態を、より適切な状態とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る把持システムは、
開閉する把持部材を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた把持システムであって、
前記制御装置は、
前記把持部材を閉状態とすることで、把持対象となる対象物を前記把持部材により把持する把持動作と、
前記把持部材を開状態とすることで、前記把持動作により把持した把持対象物を前記把持部材から解放する解放動作と、
前記解放動作により解放した解放対象物が落下する過程において、前記解放対象物に前記把持部材を接触させることで、前記解放対象物が所定の落下先に落下するよう案内する案内動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットによって把持した対象物を解放する場合に、解放された対象物の状態を、より適切な状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る把持システム1が複数並べられた状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る把持システム1の主要部を拡大した斜視図である。
【
図3】ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
【
図4】把持動作等の動作を実行する場合の、収容空間10A、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。
【
図5】一対の把持部材31aの開閉について示す図である。
【
図6】制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
【
図7】制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
【
図8】多関節ロボット30による把持動作の一例を示す模式図である。
【
図9】従来技術を用いた場合の、解放動作の一例を示す模式図である。
【
図10】多関節ロボット30による、解放動作及び案内動作の一例を示す模式図である。
【
図11】多関節ロボット30による、解放動作及び案内動作の一例を示す模式図である。
【
図12】多関節ロボット30による整形動作の一例を示す模式図である。
【
図13】把持システム1が実行する具材盛り付け処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】多関節ロボット30による整形動作の変形例の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
[構成]
図1及び
図2は、本発明に係る把持システム1全体の構成を示す模式図であり、
図1は、把持システム1が複数並べられた状態を示す斜視図、
図2は、把持システム1の主要部を拡大した斜視図である。
本実施形態における把持システム1は、材料を盛り付けて盛り付けるシステムに本発明を適用することを想定したものである。以下の説明においては、把持システム1が、対象物として惣菜等の具材を把持し、この具材を個別の惣菜の容器に盛り付ける場合を例に挙げて説明する。なお、この個別の惣菜の容器への盛りつけは例示に過ぎず、他にも、例えば、複数の惣菜のそれぞれを、弁当の容器の対応する領域に個別に盛り付ける用途等に本実施形態を適用することも可能である。また、以下の説明において、盛り付けられる具材の量として、重量を例に挙げて説明するが、本発明は、重量以外であっても、体積、かさ、質量等、各種呼称の物理量を対象に適用することが可能である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、把持システム1は、具材収容部10と、容器供給部20と、多関節ロボット30と、制御装置40と、遮蔽部50と、を備えている。なお、把持システム1に隣接して、惣菜の容器を自動的に運搬するベルトコンベア2が設置されている。
【0012】
具材収容部10は、把持システム1において盛り付けられる惣菜等の具材を収容する収容空間10Aを備えている。この収容空間10Aは、例えば、具材収容部10自体により構成されてもよいし、具材収容部10に設置可能な大型のバットやトレー等の汎用の容器により構成されてもよい。そして、この収容空間10Aには、例えば、例えば、ポテトサラダ等の練りサラダ(粘性や粘着性を有する具材を含むサラダ)、卯の花(おから)、切り干し大根、なます、ひじき、煮豆、バターコーン等の惣菜が収容される。本実施形態において、具材収容部10には、1種類の具材が複数食分(例えば、数十食分~数百食分)収容されているものとする。そして、複数の把持システム1が何れかの惣菜等の具材を、対応する惣菜の容器に盛り付けることで、惣菜の盛り付け作業を完了させることができる。
具材収容部10の収容空間10Aは、作業者が手作業によって、又は、多関節ロボット30が自動的に交換することが可能である。
【0013】
容器供給部20は、把持システム1において、具材が盛り付けられる所定位置(
図2中の盛り付け位置P1)に惣菜の容器を供給する。容器供給部20には、惣菜の容器が複数収容されており、把持システム1が動作を開始すると、容器を1つずつ盛り付け位置P1に供給する。また、盛り付け位置P1には、惣菜の容器の重量を計測する重量センサ21が設置されており、盛り付け位置P1において具材が盛り付けられると、盛り付けられた具材の重量(すなわち、盛り付けによって増加した重量)を計測する。このとき計測された重量のデータは、制御装置40に出力される。そして、重量の計測が終了すると、容器供給部20に備えられた押し出し機構によって、惣菜の容器がベルトコンベア2に搬出される。
【0014】
多関節ロボット30は、例えば、水平多関節ロボットあるいは垂直多関節ロボット等によって構成され、盛り付けられる具材を把持可能なハンド31と、可動範囲において任意の位置にハンド31を移動させるロボットアーム32と、を備えている。
また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が把持部材31aにより把持した具材の物理量を取得する手段の一例として、把持した具材の重量を計測する重量センサ30Aが設置されている。また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が具材に接触したことを検出する手段の一例として、接触した具材からの反力(表面に接触されることで得られる力覚を含む)を計測する力センサ30Bが設置されている。重量センサ30Aによって計測された具材の重量(すなわち、把持された具材の重量)のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータは、制御装置40に出力される。
【0015】
更に、ハンド31を保持する関節は、ロボットアーム32に対してハンド31を捻り方向に回転させる軸を備えている。そのため、ハンド31が具材を把持する際に、ハンド31の向きを変化させることで、ハンド31が開閉する方向を調整することができる。これにより、ハンド31が容器の内壁面近傍に達した際に、収容空間10Aの内壁面と平行な方向にハンド31が開閉するようにハンド31の向きを変更することが可能となり、容器内壁面近傍の具材を把持し易くなる。
【0016】
図3は、ハンド31の先端に設置される把持部材31aの形状例を示す模式図である。
なお、
図3においては、一対で用いられる把持部材31aの一方のみが示されている。
図3に示すように、本実施形態における把持部材31aは、天板部と、主板部と、第1側板部と、第2側板部と、により構成されている。天板部は、長方形状の平面を有している。また、主板部は、天板部の有する平面を水平な状態とした場合に、この平面の長手方向の一端から、この平面の長手方向の他端の鉛直下方の離間した位置に向かって傾斜して延在している。更に、第1側板部と第2側板部は、天板部の有する平面を水平な状態とした場合に、この平面の両端それぞれから鉛直下方に向かって延在している。
なお、以下の説明において、これら一対の把持部材31aのそれぞれを区別することなく説明する際は、単に「把持部材31a」と称する。
【0017】
図4は、把持動作等の動作を実行する場合の、収容空間10A、ハンド31、把持部材31a、ロボットアーム32、及び具材の位置関係について示す図である。
図10では、鉛直方向をZ方向と称し、このZ方向と直交する第1の水平方向(紙面と直交する方向)をY方向と称し、これらZ方向及びY方向のそれぞれと直交する第2の水平方向をX方向と称する。すなわち、Z方向、Y方向、及びX方向はそれぞれ互いに直行する方向である。
【0018】
ハンド31は、ロボットアーム32の先端に配置される。また、把持部材31aは、結合部材により、このハンド31に結合されることで、ハンド31に支持される。そして、このハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、制御装置40の制御するロボットアーム32の動作に従って、X方向、Y方向、及びZ方向の各方向における、可動範囲内に移動することが可能である。また、ハンド31は、不図示のアクチュエータによって、一対の把持部材31aをY方向に開閉することで、把持動作を実現する。
また、ハンド31及びこれに結合された把持部材31aは、Z方向を回転軸として回転することが可能である。
このような構成により、本実施形態では、ハンド31及び把持部材31aの、位置や向きを任意に変化させることができ、これにより様々な動きで把持動作等の動作を適切に実行することが可能となる。
【0019】
図5は、一対の把持部材31aの開閉について示す図である。
図3に示す把持部材31aは、結合部材により、それぞれの開口部が対向するようにハンド31に結合される。また、
図5におけるX方向、Y方向、及びZ方向の各方向は、
図4において定義した各方向と同一である。一対の把持部材31aは、
図5(a)に示すように開閉方向(Y方向)に沿って、開く動作を行うことで、開状態となる。また、一対の把持部材31aは、把持動作を行うにあたって、
図5(b)に示すように開閉方向(Y方向)に沿って、閉じる動作を行うことで、閉状態となる。
【0020】
そして、一対の把持部材31aが閉状態となり、把持部材31a同士が当接することで、少なくとも先端及び側板部が閉じた内面が具材を把持するための容器形状となる。このような把持部材31aの形状の場合、練りサラダ等の具材に対して、把持部材31aの先端を表面から垂直に差し込み、所定の深さで一対の把持部材31aを閉じて具材を持ち上げることで、ほぼ一定量の具材を把持して収容空間10Aから取り出すことができる。
また、把持をした一対の把持部材31aを盛り付け位置P1の惣菜の容器の上に移送した後に、一対の把持部材31aが開状態となり、容器形状の開口部が露出することで、把持により取り出した具材が解放され、惣菜の容器にほぼ一定量の具材を盛り付けることができる。
【0021】
図1及び
図2に戻り、制御装置40は、PC(Personal Computer)又はプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、把持システム1全体を制御する。例えば、制御装置40は、容器供給部20が容器を供給する動作、及び多関節ロボット30が具材収容部10から具材を把持して、惣菜の容器に解放することで具材を盛り付ける動作等を制御する。より詳細には、例えば、制御装置40は、ロボットアーム32の駆動を制御することで、ハンド31を予め設定された所定位置に所定ルート及び所定速度で移動させる動作や、ハンド31のアクチェータの駆動を制御することで、把持部材31aによる具材の把持や解放をする動作を実現する。
【0022】
遮蔽部50は、把持システム1において、具材収容部10、容器供給部20及び多関節ロボット30が設置された領域の周囲及び情報を囲う板状部材によって構成されている。遮蔽部50を構成する板状部材は、ガラス又は樹脂等の透明な材料によって構成され、外部から把持システム1の稼動状況を視認することが可能となっている。また、遮蔽部50が構成する側壁の一部には、開閉可能な扉が設置されている。具材収容部10の収容空間10Aの交換、容器供給部20への惣菜の容器の追加あるいは把持システム1のメンテナンス等が行われる場合、作業者は遮蔽部50の扉を開けて各種作業を行うことができる。
【0023】
[制御装置40のハードウェア構成]
図6は、制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図6に示すように、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0024】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、又は、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0025】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0026】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置40に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0027】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置40の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0028】
[機能的構成]
次に、制御装置40の機能的構成について説明する。
図7は、制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図7に示すように、把持システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置40のCPU711においては、センサ情報取得部151と、具材状態判定部152と、具材量判定部153と、多関節ロボット制御部154と、容器供給制御部155と、記録制御部156と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0029】
パラメータ記憶部171には、把持システム1が動作する際に用いられる各種パラメータが記憶されている。例えば、パラメータ記憶部171には、具材収容部10の収容空間10Aの位置、容器供給部20から供給される惣菜の容器の位置、惣菜の容器内における具材を盛り付ける領域の位置、具材を把持する際のハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係(関数あるいはテーブル形式のデータ等)、多関節ロボット30の動作パターンを定義するパラメータ等が記憶される。本実施形態において、ハンド31の具材への差し込み量は、具材の重量(物理量)を推定する指標となっている。すなわち、ハンド31の具材への差し込み量と把持される具材の重量との関係から、把持された具材の実際の重量(目標とする把持重量)は、ハンド31の具材への差し込み量に基づいて推定される。
【0030】
履歴DB172には、把持システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータ、あるいは把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データが履歴として記憶される。また、履歴DB172には、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップも記憶される。この具材状態マップの詳細については、具材状態マップを作成及び更新する記録制御部156の説明と共に後述する。
【0031】
センサ情報取得部151は、把持システム1に設置された各種センサによって検出された情報であるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部151は、多関節ロボット30の関節に設置された重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータや、容器供給部20の重量センサ21によって計測された具材の重量のデータを取得する。
【0032】
具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態を認識する。例えば、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータから、収容空間10A内の具材の深さ(収容空間10A内の具材表面から収容空間10A底面までの深さ)、表面の平坦度合(表面がどの程度荒れているか)を認識する。本実施形態では、カメラを用いた画像解析で具材の状態を判定するといった手法ではなく、力センサ30Bを用いた反力に基づいて具材の状態を測定するといった手法を用いる。そのため、例えば、カメラの導入コストや管理コストを削減できると共に、カメラの死角等を考慮する必要がないので、多関節ロボット30と収容空間10Aの位置等の配置をより柔軟に選択することができる。また、カメラを用いないことから、具材から生じる湯気や照明による撮影への影響を考慮する必要もない。
【0033】
また、具材状態判定部152は、具材の深さ及び表面の平坦度合を認識すると、これらが具材を把持するための条件に適合しているか否か(例えば、具材の深さ及び平坦度合が設定された閾値以上であるか否か)を判定する。なお、具材の表面の平坦度合は、例えば、表面が有する凹凸の大きさの絶対値等に基づいて定義することができ、具材の表面が平坦であるほど大きい値となるように定義することができる。また、具材の表面の部分毎に平坦度合を判定することとしてもよい。また、具材状態判定部152は、収容空間10A内の具材の状態が、一度の把持動作で規定量の具材を把持可能であるか否かを判定する。
【0034】
具材量判定部153は、多関節ロボット30の重量センサ30Aによって計測された具材の重量のデータや、容器供給部20の重量センサ21によって計測された具材の重量のデータに基づいて、規定量の具材が把持されたか否か、及び、規定量の具材が惣菜の容器に盛り付けられたか否かを判定する。
【0035】
多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、把持システム1において定義されている動作パターンに従って、具材を盛り付けるための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30のハンド31によって具材を把持する動作(把持動作)、把持した具材を惣菜の容器に移送する動作(移送動作)、把持している具材を解放する動作(解放動作)、解放具材が所定の落下先に落下するよう案内して盛り付ける動作(案内動作)、盛り付け後の解放具材の表面を整形する動作(整形動作)等を多関節ロボット30に実行させる。
【0036】
容器供給制御部155は、容器供給部20を制御し、把持システム1において盛り付けられる具材を盛り付けるための惣菜の容器を所定のタイミングで盛り付け位置P1に供給させる。また、容器供給制御部155は、容器供給部20を制御し、具材が盛り付けられた惣菜の容器をベルトコンベア2に搬出させる。
【0037】
記録制御部156は、把持システム1が把持動作した際に取得された制御に関するパラメータ及び把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データを履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを作成及び更新すると共に、この具材状態マップについても履歴DB172に記憶する。より詳細には、記録制御部156は、把持システム1が把持動作をした際に取得された具材の重量及び具材の反力の計測データや、後述の具材状態判定部152による判定結果や、把持システム1で盛り付けられた具材の重量の計測データに基づいて、収容空間10Aの各領域の具材の状態を検出し、各領域を識別する識別情報に紐づけて記憶することで、具材状態マップを生成する。この場合、具材の状態とは、各領域における具材の残量や、後述の具材状態判定部152が判定した具材の深さや平坦度合である。また、収容空間10A内の具材が盛り付けられた後に、収容空間10Aが新たに交換された場合には、予め定められた所定量の具材(例えば、収容空間10Aに対して充分な量の具材)が、所定の状態(例えば、表面が平坦な状態)で収容されているものとして具材状態マップが更新される。
【0038】
次に、多関節ロボット制御部154の制御に基づいて多関節ロボット30が実行する各動作の詳細について説明をする。
【0039】
[把持動作]
本実施形態に係る把持システム1においては、具材及び使用される把持部材31aの種類に応じて、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)と、そのときに把持される具材の重量との関係が、予め把握されている。例えば、把持される具材の密度(単位深さあたりの重量を表すパラメータ)を予め計測しておき、具材の密度と把持部材31aを差し込む深さとの乗算値を要素とする関数によって、把持される重量を算出(推定)することができる。これにより、簡単な演算によって、把持される具材の重量を推定することができる。
【0040】
また、このように算出される重量をテーブル形式のデータとして保持しておくこともできる。更に、1回の把持動作で平坦度合いが低下する具材の表面の範囲が把握できるため、収容空間10A内の具材の表面において、把持動作毎に把持位置をずらすピッチが設定されている。また、予め設定された把持部材31aを差し込む深さ及びピッチに基づいて、具材の表面のいずれの位置からどのように具材を把持するかの把持用の動作パターンが設定されている。そして、この把持用の動作パターンに従って、以下のように把持動作が行われる。
【0041】
図8は、多関節ロボット30による把持動作の一例を示す模式図である。
図8に示すように、多関節ロボット30が具材を把持する場合、(1)具材にアプローチする、(2)具材の表面を検出する、(3)把持部材31aを具材に差し込む、(4)把持部材31aを閉じることで把持部材31aを閉状態とする、(5)把持した具材の重量(物理量)を計測する、という手順で具材が把持される。把持した重量が規定量に適合する場合、惣菜の容器に具材が移送されて解放される。なお、把持した重量が規定量に適合するとは、例えば、目標とする重量に対して、把持した具材の重量が所定誤差以内(±15%以内等)にあることをいう。ただし、把持部材31aに具材が粘着して解放されないケースを考慮し、把持した重量が規定量よりも多い場合の誤差を少ない場合の誤差よりも大きく設定することとしてもよい。一方、把持した重量が規定量に適合しない場合、更に、(6)収容空間10Aにおける把持した位置に具材を解放する(具材を戻す)、(7)把持した具材の重量が超過していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の上限を超えている場合)には、前回よりも把持部材31aを具材に差し込む深さを浅く修正して具材を把持する、(8)把持した具材の重量が不足していた場合(例えば、把持した具材の重量が規定量の範囲の下限を下回っている場合)には、前回よりも把持部材31aを具材に差し込む深さを深く修正して具材を把持する、という手順で具材が再把持される。
【0042】
手順(2)で具材の表面を検出することは、力センサ30Bにより、多関節ロボット30の把持部材31aが具材に接触することで受ける反力を計測することで可能である。
また、手順(3)で具材に把持部材31aを差し込む場合、多関節ロボット30の制御パラメータ(関節の回転角度等)から差し込み量を算出したり、手順(2)で具材の表面を検出して差し込みを開始してからの経過時間から差し込み量を算出したりすることが可能である。
【0043】
また、手順(8)において、前回よりも把持部材31aを具材に深く差し込んだとしても、規定量の具材を把持できない場合(規定量を取るために必要な差し込み深さよりも、把持予定位置における具材の深さが浅い場合)等には、具材表面の複数箇所から具材を把持することにより、複数回で把持した合計の具材の量が規定量となるように制御することも可能である。この場合、例えば、具材の表面における複数箇所に把持部材31aを差し込む深さの合計(差し込み量の合計)が、一度で規定量の具材を把持する場合に把持部材31aを具材に差し込む深さと同一となるように制御することができる。また、例えば、2箇所目以降の把持を行う場合に、把持済みの具材を次の把持予定位置に一旦解放し、解放した具材が存在する具材の表面に対して、一度で規定量の具材を把持する場合に差し込む深さまで把持部材31aを具材に差し込み、規定量の具材を改めて一度で把持するように制御することも可能である。
【0044】
なお、把持部材31aを具材に差し込む深さ(差し込み量)と、そのときに把持される具材の重量との関係については、具材の密度から算出(推定)することの他、把持部材31aを差し込んだ深さのデータと、そのときに把持された具材の重量を計測したデータとを機械学習し、機械学習によって生成された機械学習モデルを用いて、把持される重量を推定することとしてもよい。また、この機械学習の過程において具材の密度を算出し、算出した密度を用いて、把持部材31aを具材に差し込んだ深さ(差し込み量)から、把持された具材の重量を算出してもよい。
【0045】
[比較例(従来技術)]
次に、本実施形態における解放動作や案内動作について説明するが、その前提として、一般的な従来技術を用いて解放動作を行った場合に、どのような結果となるのかについて
図9を参照して説明をする。ここで、
図9は、従来技術を用いた場合の、解放動作の一例を示す模式図である。
なお、
図9は、あくまでも、比較例として従来技術を適用した場合について説明するものであり、本実施形態を適用した解放動作の作用及び効果を示すものではない。
【0046】
図9(A)において、Y方向は、把持部材31aによって把持及び解放を行う際の開閉方向であり、X方向は、水平面において開閉方向と直交する方向であり、Z方向は、高さ方向である。つまり、
図12は、一対の把持部材31aのX方向に対し垂直な断面(すなわち、YZ平面)を図示する模式図である。この
図9(A)におけるX方向、Y方向、及びZ方向の各方向は、
図4において定義した各方向と同一である。
なお、後述の
図10、
図11、
図12及び
図14の何れも同様の垂直断面(すなわち、YZ平面)を図示するものであるため、これらの図では各方向の図示を省略する。
【0047】
多関節ロボット30は、
図8に示した本実施形態特有の把持動作ではなく、従来技術における把持動作を行うことで収容空間10A内に収容されている具材を把持する。
次に、
図9(A)に示すように、多関節ロボット30は、把持をした一対の把持部材31aを盛り付け位置P1の惣菜の容器の上に移送する。そして、多関節ロボット30は、解放を行う高さまで把持部材31aを下降させる。なお、図中及び以下の説明では、把持部材31aが把持した具材を適宜「把持具材」と称する。
【0048】
次に、
図9(B)に示すように、多関節ロボット30は、解放を行う高さまで下降をすると、下降を停止してから把持部材31aを開閉方向に開いて開状態とすることで、把持部材31aから把持具材を解放する。この解放は、一般的に、惣菜の容器の水平面における中央で行われる。
この場合、容器中央で解放された解放具材は、容器中央に山状に高く盛り付けられる。特に、解放具材が、ポテトサラダや卯の花といった、粘性や粘着性のある具材、あるいは相互に密着しやすい具材を把持する場合、把持部材から把持具材に対して与えられる把持力に起因し、把持具材同士が結合して1つの塊状となっている。
【0049】
次に、
図9(C)に示すように、多関節ロボット30は、解放が完了すると上昇する。これにより、従来技術における解放動作は終了する。しかしながら、塊状となった把持具材を解放して容器に盛り付けた場合、盛り付けられた解放具材(図中、二点鎖線で示す)は分離することなく容器内で自立する。更に、この自立した具材は、その後重力によって横転(図中、黒矢印で示す)し、結果として、解放具材が飛散して容器外にはみ出してしまうという結果になる。
すなわち、従来技術における解放動作では、飛散する具材が発生してしまうという問題が生じる。そして、このように飛散した具材が発生すると、作業者が手作業にて清掃を行う必要が生じる。また、飛散した具材は廃棄することになるので、具材のロスが生じる。
そこで、本実施形態では、このように飛散する具材の発生を防ぐべく、以下に説明するようにして、本実施形態特有の解放動作や、案内動作を行う。
なお、図中及び以下の説明では、把持部材31aが解放した具材を適宜「解放具材」と称する。また、容器から飛散した具材を適宜「飛散具材」と称する。
【0050】
[解放動作、及び案内動作]
図10及び
図11は、多関節ロボット30による、解放動作及び案内動作の一例を示す模式図である。
多関節ロボット30は、
図8に示した本実施形態特有の把持動作を行うことで、差し込み深さ等から把持する具材の重量を推定し、収容空間10A内に収容されている具材を効率よく把持する。
【0051】
次に、
図10(a)に示すように、多関節ロボット30は、把持をした一対の把持部材31aを盛り付け位置P1の惣菜の容器の上に移送する。そして、多関節ロボット30は、解放を行う高さまで把持部材31aを下降させる。
【0052】
次に、
図10(b)に示すように、多関節ロボット30は、解放を行う高さまで下降をすると、下降を停止してから把持部材31aを開閉方向に開いて開状態とする。これにより、把持部材31aの開口部は露出し、把持具材に働きかける重力(図中、黒矢印で示す)によって、この開口部から把持具材が落下することで、把持部材31aから把持具材が解放される。
【0053】
ここで、
図9(B)に示したように、通常、解放は惣菜の容器の水平面における中央で行われる。これは、容器中央において解放した方が、解放具材が容器外に飛散することを避けることができる、という一般的な思想に基づくものである。しかしながら、本実施形態では、次に行われる案内動作において、解放具材が所定の落下先に落下するよう案内することができる。
【0054】
そこで、本実施形態では、まずは、意図的に容器内の所定方向(ここでは、開閉方向であるY方向)の一端において、解放を行う。そして、以下で説明する案内動作で、解放した解放具材が落下する過程において、解放具材に把持部材31aを接触させることで、解放具材が所定の落下先に落下するよう案内する。
具体的には、解放を行った所定方向の一端(第1の解放位置)と、所定方向の他端(第2の解放位置)と、その間の領域とのそれぞれに、解放具材の一部が分散して落下するように案内する。これにより、例えば、解放具材が容器内の所定の位置のみに偏って多量に落下することを防止できる。また、このように案内することで、具材を解放すべき領域である容器内にのみ解放具材が落下し、飛散具材が発生しないように案内をすることができる。
【0055】
この案内動作では、
図10(c)に示すように、多関節ロボット30は、解放された全ての解放具材が容器底面に落下する前に、露出した把持部材31aの開口部を解放具材に接触させた状態として、把持部材31aを移動させることで案内動作を開始する。
この場合に、多関節ロボット30は、解放具材の一部が容器底面に落下したタイミングで移動を開始してもよいし、解放具材が未だ容器底面には落下しておらず、解放具材が空中にあるタイミングで移動を開始してもよい。何れにせよ、本実施形態では、解放動作により露出した開口部をそのまま利用して、解放具材の全てが自然に落下する前に、迅速に案内動作を実現することができる。
【0056】
また、移動する方向についてであるが、把持部材31aは、解放を行った所定方向の一端(第1の解放位置)に加えて、所定方向の他端(第2の解放位置)と、その間の領域とのそれぞれにも、解放具材の一部が分散して落下するように案内するため移動する。そのために、把持部材31aは、例えば、水平方向(すなわち、Y方向)にのみ移動してもよいが、これに加えて鉛直方向(すなわち、Z方向)等にも移動してもよい。例えば、把持部材31aは、第2の開放位置に向かって案内するための平行移動と、重力により解放具材が落下する影響を低減するための鉛直上方に向かっての垂直移動とを組み合わせて行ってもよい。すなわち、斜め方向への移動を行ってもよい。
ここで、重力により解放具材が落下する影響を低減するとは、例えば、把持部材31aの移動により解放具材に与えられる鉛直上方への慣性力と、把持部材31aの開口部と容器底面との距離を遠ざけることとによって、解放具材が全て落下するまでの時間を延ばすことである。これにより、解放具材の案内を、より容易に実現することが可能となる。
【0057】
このように、把持部材31aが解放具材に接触しながら移動することで、解放具材は、把持部材31a移動により解放具材に与えられる慣性力と、解放具材に働きかける重力との合力(図中、黒矢印で示す)により、案内先に向かって落下していく。
【0058】
次に、
図11(d)に示すように、多関節ロボット30は、全ての解放具材が落下するまで、案内動作における移動を継続する。これにより、
図11(e)に示すように、案内先となる、解放を行った所定方向の一端(第1の解放位置)に加えて、所定方向の他端(第2の解放位置)と、その間の領域とのそれぞれにも、解放具材の一部が分散して落下する。すなわち、多関節ロボット30は、具材を案内して落下させることで、具材を解放すべき容器内の全域に均等に解放具材を落下させると共に、具材を解放することを意図していない容器外には解放具材を落下させないことができる。意図していない場所(例えば、容器外)に落下してしまうことを防止できる。従って、例えば、把持により1つの塊状となってしまうような特性を有する具材であっても、適切に盛り付けることができる。
【0059】
すなわち、多関節ロボット30が、案内動作を行うことによって、把持した具材を解放する場合に、解放された具材の状態を、より適切な状態とする、という課題を解決することができる。
また、この案内動作は、把持部材31aを動作させるのみで実現できる。そのため、解放具材を案内するための専用の部材や機構等を別途用意する必要もない、という効果も奏する。
【0060】
[整形動作]
図12は、多関節ロボット30による整形動作の一例を示す模式図である。
上述した解放動作、及び案内動作により、解放具材は飛散することなく容器内におおむね均一に落下して、盛り付けられている。しかしながら、例えば、盛り付けた具材を提供する事業者の要望や、盛り付ける具材の種類によっては、盛り付けられた解放具材の表面の状態を、より一層、平坦な状態にしたい場合がある。また、卯の花等の相互に密着しやすい特性を有する具材の場合には、単に落下により盛り付けると、具材同士が結合した状態が維持されてしまうので、この結合を分離することにより、ふんわりとした盛り付け状態としたい場合がある。
【0061】
このような場合に、多関節ロボット30は、整形動作を行う。
図12(f-1)に示すように、多関節ロボット30は、解放動作、及び案内動作を行った後、把持部材31aを閉状態とした上で、把持部材31aの先端を容器に盛り付けられた解放具材に接触させる。そして、多関節ロボット30は、その状態で把持部材31aに少なくとも一回以上、上下運動を行わせる。すなわち、多関節ロボット30は、整形動作として、把持部材31aの先端で、解放具材を一度鉛直下方に押し下げてから、押し下げを取りやめることを繰り返すことになる。これにより、
図12(g)に示すように、相対的に解放具材が高く盛り付けられている領域の解放具材が、相対的に解放具材が低く盛り付けられている領域に移動する。そのため、落下して盛り付けられた解放具材の表面の状態を、より一層、平坦な状態することができる。また、具材同士の結合を分離することにより、ふんわりとした盛り付け状態とすることもできる。
【0062】
また、
図12(f-2)に示すように、多関節ロボット30は、解放動作、及び案内動作を行った後、把持部材31aを開状態とした上で、把持部材31aの先端を容器に盛り付けられた解放具材に接触させるようにしてもよい。この場合であっても、
図12(f-1)に示した場合と同様の効果を奏することができる。
【0063】
あるいは、これらを組み合わせて、把持部材31aの開閉状態を異ならせながら、それぞれの状態において、把持部材31aに少なくとも一回ずつ以上、上下運動を行わせる。これにより、盛り付けられている解放具材全体を対象として、
図12(f-1)に示した場合と同様の効果を奏することができる。
【0064】
[全体動作]
次に、把持システム1の全体動作を説明する。
図13は、把持システム1が実行する具材盛り付け処理の流れを示すフローチャートである。具材盛り付け処理は、例えば、作業者によって具材盛り付け処理を開始させる操作が行われたことを契機として開始される。
【0065】
具材盛り付け処理が開始されると、
図13のステップS11において、多関節ロボット制御部154は、具材盛り付け処理における一連の動作を実行するための動作用のデータ(動作パターンのデータ及びハンド31の差し込み量のデータ等)をパラメータ記憶部171から読み込むことで、具材を把持するための準備を行う。
【0066】
ステップS12において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、収容空間10Aへ、ハンド31を移送する。
【0067】
ステップS13において、具材状態判定部152は、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを履歴DB172から読み込むことで、収容空間10Aにおける具材の状態を認識する。具材状態判定部152は、その後も、センサ情報取得部151が取得した、力センサ30Bによって計測された具材からの反力のデータに基づいて、具材の状態の認識を継続する。
【0068】
ステップS14において、ステップS11において読み込んだ動作パターンのデータと、ステップS13において認識した収容空間10Aにおける具材の状態とに基づいて、具材に対して把持部材31aを差し込む深さを決定する。
ステップS15において、多関節ロボット制御部154は、決定された差し込み深さまで、具材に対して把持部材31aを差し込む。
ステップS16において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを閉じて具材を把持する。
【0069】
ステップS17において、具材量判定部153は、把持している把持具材の重量(物理量)を計測し、規定量の具材が把持されているか否かを判定する。規定量の具材が把持されている場合は、ステップS17においてYesと判定され、処理はステップS18に進む。一方で、規定量の具材が把持されていない場合は、ステップS17においてNoと判定され、処理はステップS14から再度行われる。この場合、把持している把持具材が規定量より超過しているのであれば、再度行われるステップS14において、差し込み深さはより浅くなるように再決定される。一方で、把持している把持具材が規定量より不足しているのであれば、再度行われるステップS14において、差し込み深さはより深くなるように再決定される。なお、このステップS14からステップS17までの処理は、
図8を参照して説明した把持動作に相当する。
【0070】
ステップS18において、多関節ロボット制御部154は、把持部材31aを惣菜の容器の位置に移送する。
ステップS19において、多関節ロボット制御部154は、容器内の所定の領域(例えば、Y方向における容器の一端)に解放する。
【0071】
ステップS20において、多関節ロボット制御部154は、案内動作により、解放具材が所定の落下先に落下するよう案内する。例えば、多関節ロボット制御部154は、解放を行ったY方向の一端(第1の解放位置)と、Y方向の他端(第2の解放位置)と、その間の領域とのそれぞれに、解放具材の一部が分散して落下するように案内する。
ステップS21において、多関節ロボット制御部154は、整形動作により解放具材を整形する。
【0072】
ステップS22において、記録制御部156は、具材盛り付け処理において取得された制御に関するパラメータ及び盛り付けられた具材の重量の計測データ(履歴データ)を履歴DB172に記憶する。また、記録制御部156は、具材収容部10の収容空間10Aにおける具材の状態を示す具材状態マップを更新し、この更新後の具材状態マップも履歴DB172に記憶する。なお、この場合に、盛り付けられた具材の重量に過不足がある場合には、作業者に対してアラートを出力する等してもよい。
【0073】
ステップS23において、多関節ロボット制御部154は、具材盛り付け処理を終了する条件に適合したか否かを判定する。この場合、具材盛り付け処理を終了する条件としては、予定された数の惣菜の容器に具材を盛り付けたこと、あるいは、作業者によって具材盛り付け処理を終了させる操作が行われたこと等を定義することができる。
具材盛り付け処理を終了する条件に適合していない場合は、ステップS23においてNoと判定されて、処理はステップS12から再度行われる。一方で、具材盛り付け処理を終了する条件に適合している場合は、ステップS23においてYesと判定されて、具材盛り付け処理は終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る把持システム1は、多関節ロボット30によって把持した具材を解放する場合に、解放された解放具材の状態を、より適切な状態とすることができる。これに加えて、本実施形態に係る把持システム1は、解放動作、案内動作、及び整形動作の説明の際に上述したような、様々な効果も奏する。
【0075】
[変形例1]
上述の実施形態では、
図12(f-1)及び
図12(f-2)に示すように、多関節ロボット30は、把持部材31aの先端で、解放具材を一度鉛直下方に押し下げてから、押し下げを取りやめることを繰り返すことで整形動作を実現していた。これに限らず、他の方法で整形動作を実現するようにしてもよい。
【0076】
図14は、多関節ロボット30による整形動作の変形例の一例を示す模式図である。本変形例では、把持部材31aの先端が直線状の縁部を有することを利用する。具体的には、
図14(f-3)に示すように、把持部材31aを閉状態として把持部材31aの先端を容器に盛り付けられた解放具材に接触させた上で、把持部材31aを容器底面から同一の高さでY方向に左右運動させる。これにより、
図14(g)に示すように、容器に盛り付けられた解放具材の表面の状態を、より一層、平坦な状態することができる。
ただし、具材の特性にもよるが、具材同士が結合した状態を分離する点においては、
図12(f-1)及び
図12(f-2)に示した、押し下げによる整形動作を行った方が有効な場合もある。このような場合には、本変形例の整形動作と、上述した押し下げによる整形動作を組み合わせて行うようにするとよい。
【0077】
[変形例2]
上述の実施形態において、一対の把持部材31a(すなわち、2つの把持部材31a)を用いることを想定したが、これに限られない。3つ以上の複数の把持部材31aを用いるようにしてもよい。そして、各把持部材31aの開口部を近づけることで把持動作を行い、各把持部材31aの開口部を遠ざけることで解放動作を行うような構成としてもよい。
この場合、例えば、3つの把持部材31aを用いるのであれば、鉛直上方から俯瞰した場合に、それぞれの中心角が120°の3つの把持部材31aの先端を中央に近づけたり遠ざけたりするようにする。
このようにしても、上述した案内動作等の各動作を実行することができる。
【0078】
[変形例3]
上述の実施形態において、具材状態判定部152は、力センサ30Bによって計測された具材からの反力(すなわち、具材への接触の検出結果)のデータに基づいて、具材の状態を判定するものとしたが、これに限られない。
【0079】
カメラの設置コスト等が問題とならない場合には、カメラ(すなわち、撮像装置)によって撮影を行うことにより、具材の状態を判定するようにしてもよい。また、上述の実施形態において、多関節ロボット30が把持した具材の重量あるいは惣菜の容器に盛り付けられた具材の重量を重量センサ30A,21によって計測するものとしたが、これに限られない。
例えば、撮像装置によって撮像された具材の画像から、具材の体積を推定し、密度と推定された体積を乗算すること等により、具材の重量を算出することも可能である。
この場合、重量センサ30A,21を用いることなく、具材の重量を算出する手段を実装することができる。
【0080】
[構成例]
以上のように、本実施形態における把持システム1は、開閉する把持部材31aを備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。
制御装置40は、
把持部材31aを閉状態とすることで、把持対象となる対象物を把持部材31aにより把持する把持動作と、
把持部材31aを開状態とすることで、把持動作により把持した把持対象物を把持部材31aから解放する解放動作と、
解放動作により解放した解放対象物が落下する過程において、解放対象物に把持部材31aを接触させることで、解放対象物が所定の落下先に落下するよう案内する案内動作と、
を多関節ロボット30に実行させる。
これにより、解放対象物を所定の落下先(例えば、容器内)に案内して落下させることができる。そのため、解放対象物が、意図していない場所(例えば、容器外)に落下してしまうことを防止できる。従って、例えば、把持により1つの塊状となってしまうような特性を有する対象物であっても、適切に盛り付けることができる。
すなわち、把持システム1によれば、ロボットによって把持した対象物を解放する場合に、解放された対象物の状態を、より適切な状態とすることができる。
また、この案内動作は、把持部材31aを動作させるのみで実現できる。そのため、解放対象物を案内するための専用の部材や機構等を別途用意する必要もない、という効果も奏する。
【0081】
制御装置40は、
解放動作において、解放対象物の一部を第1の解放位置に落下するよう解放させ、
案内動作において、解放対象物の他の一部を第1の解放位置より離間した第2の解放位置に落下するよう案内させると共に、解放対象物のさらに他の一部を第1の解放位置と第2の解放位置の間の領域に落下するように案内させる。
これにより、解放位置、解放位置から離間した位置、及びその間の領域というように、解放対象物が複数の位置に分散して落下するように案内することができる。これにより、例えば、解放対象物が所定の位置のみに偏って多量に落下することを防止できる。
【0082】
第1の解放位置は、解放対象物を解放すべき領域における所定方向の一端であり、第2の解放位置は、解放対象物を解放すべき領域における所定方向の他端である。
これにより、解放すべき領域内(例えば、容器内)にのみ、解放対象物が落下するよう、案内をすることができる。
【0083】
把持部材31aは解放するための開口部を有する容器形状であり、
制御装置40は、
解放動作で開状態とすることで露出した把持部材31aの開口部を解放対象物に接触させた状態として、把持部材31aを移動させることで案内動作を実現する。
これにより、解放動作により露出した開口部を利用して、解放対象物の全てが自然に落下する前に、迅速に案内動作を実現することができる。
【0084】
制御装置40は、
把持部材31aを、水平方向及び鉛直方向の双方に移動させることにより案内動作を実現する。
これにより、複数の方向を組み合わせた、より適切な動きで、解放対象物の落下先をコントロールすることができる。
【0085】
制御装置40は、
把持部材31aを、案内動作により案内されて落下した解放対象物に接触させた状態で移動させることで、解放対象物の表面を整形する整形動作を、さらに多関節ロボット30に実行させる。
これにより、落下して盛り付けられた解放具材の表面の状態を、より一層、平坦な状態することができる。
【0086】
制御装置40は、
把持部材31aにより、解放対象物を鉛直下方に押し下げることで整形動作を実行させる。
これにより、落下して盛り付けられた解放対象物を容器底面に向けて押し下げてほぐすことができ、解放対象物の表面の状態を、より均一に平坦な状態とすることができる。
【0087】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態及び変形例において、惣菜を盛り付ける把持システムに本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の対象物を把持するシステムに適用することができる。例えば、練ったモルタル、コンクリート、漆喰、粘土等、粘性あるいは粘着性が高い材料を把持するシステムに本発明を適用することができる。本発明は、作業温度又は室温において中粘度以上(5000mPa・s)以上の粘度を有する対象物を把持する際に好適である。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図7の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が把持システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図7の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0088】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0089】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0090】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0091】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 把持システム、2 ベルトコンベア、10 具材収容部、10A 収容空間、20 容器供給部、21,30A 重量センサ、30 多関節ロボット、30B 力センサ、31 ハンド、31a 把持部材、32 ロボットアーム、40 制御装置、50 遮蔽部、151 センサ情報取得部、152 具材状態判定部、153 具材量判定部、154 多関節ロボット制御部、155 容器供給制御部、156 記録制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア
【要約】
【課題】ロボットによって把持した対象物を解放する場合に、解放された対象物の状態を、より適切な状態とする。
【解決手段】把持システム1は、開閉する把持部材31aを備えた多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。制御装置40は、把持部材31aを閉状態とすることで、把持対象となる対象物を把持部材31aにより把持する把持動作と、把持部材31aを開状態とすることで、把持動作により把持した把持対象物を把持部材31aから解放する解放動作と、解放動作により解放した解放対象物が落下する過程において、解放対象物に把持部材31aを接触させることで、解放対象物が所定の落下先に落下するよう案内する案内動作と、を多関節ロボット30に実行させる。
【選択図】
図7