(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】食器洗浄機
(51)【国際特許分類】
A47L 15/48 20060101AFI20240226BHJP
A47L 15/42 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A47L15/48
A47L15/42 J
(21)【出願番号】P 2018213454
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-07-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】西 秀隆
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-105267(JP,U)
【文献】実開昭59-31372(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第108464806(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L15/42
A47L15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽と、該洗浄槽の内部に設けて食器類を支持する食器かごとを備える食器洗浄機であって、
前記食器かごは、前記洗浄槽に収容される基枠と、該基枠上に設けられて複数の食器類を横倒姿勢で配列して支持可能な食器支持部材とを備え、前記基枠は、前記食器支持部材によって支持される食器類の径方向に沿って水平方向に延びて、前記食器支持部材を前記水平方向の任意の位置に配置可能とする支持部材移動手段を備え、前記食器支持部材は、前記支持部材移動手段
に沿って移動自在に複数設けられている食器洗浄機において、
前記食器支持部材は、該食器支持部材の移動方向に向かって突出する掛止爪を備え、
該掛止爪は、径方向を前記支持部材移動手段の延設方向と交差する方向に向けた他の横倒姿勢とされた食器類の縁部が掛止可能となる形状で一対設けられ、
前記基枠は、前記食器支持部材の移動方向に沿って延びる複数の横架材を備え、
前記横架材は、前記食器支持部材の下方に位置し、
2つの前記掛止爪の中央と2つの前記横架材の中央とは、同一鉛直線上に位置する
と共に、2つの前記横架材の中心間の間隔寸法よりも2つの前記掛止爪の外側縁間の間隔寸法が大きくなるように2つの前記掛止爪を設けることを特徴とする食器洗浄機。
【請求項2】
前記支持部材移動手段は、前記食器支持部材を水平方向に移動自在とするレールであることを特徴とする請求項1記載の食器洗浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器類を支持する食器かごを内部に備える食器洗浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機は、洗浄槽と、洗浄槽内に食器類を支持する食器かごとを備えている。食器洗浄機によって洗浄が行われる食器類としては、大皿、中鉢、小皿、椀、或いは、調理容器(フライパンや鍋)等、夫々形状の異なるものが挙げられる。これらの食器類は、食器かごに設けられている複数の支持棒間や支持ピン間に差し込むようにセットすることにより食器かごに支持され、この状態で洗浄槽に収容されることによって洗浄が行われる。
【0003】
食器かごは、高さ寸法や屈曲形状の異なる支持棒や支持ピンを多数備え、支持棒や支持ピンの大きさや間隔等によって、所定の食器を支持する領域が略決められている。
【0004】
ところで、食器類の大きさや種類によっては、何れの支持領域にも合致せず、やむを得ず故意に誤った位置に食器をセットしたり、形状の異なる食器同士を不規則に混在させて食器かごにセットしたりする場合がある。しかし、この場合には、洗浄水が適切に各食器に当たらない状態となって洗浄効率が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、食器かごの一部において、隣り合う支持棒同士の間隔(食器の深さ方向の支持間隔)を変更可能とした食器かごが提案されている(下記特許文献1参照)。しかし、支持棒の間隔を変更した場合には、皿等の深さ寸法の大小に対して対応可能となるのみであり、食器類の外径の大小には殆どの場合対応できず、食器同士が干渉したり食器と洗浄槽の内壁面とが干渉したりして、食器を安定して支持できない不都合がある。
【0006】
また、これ以外には、小物入れを移動自在に設け、小物入れが一部の載置頻度の少ない食器類等を支持する支持部材を覆うようにした食器かごが提案されている(下記特許文献2参照)。
【0007】
このものでは、載置頻度の少ない食器類等を支持するときに、小物入れを移動させて、載置頻度の少ない食器類等を支持する支持部材を露出させるようにしている。しかし、小物入れは、箸やスプーン等を立てて支持するために比較的小型に形成されており、食器かご上で覆い隠すことができる面積は比較的小さい。従って、食器かご上で小物入れを移動させても、例えば、外径の大きな食器類を当該位置に支持することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-319486号公報
【文献】特開2014-83220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の点に鑑み、本発明は、食器類の支持スペースを効率よく使用して大きさの異なる食器類を安定して支持することができる食器かごを備える食器洗浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、洗浄槽と、該洗浄槽の内部に設けて食器類を支持する食器かごとを備える食器洗浄機であって、前記食器かごは、前記洗浄槽に収容される基枠と、該基枠上に設けられて複数の食器類を横倒姿勢で配列して支持可能な食器支持部材とを備え、前記基枠は、前記食器支持部材によって支持される食器類の径方向に沿って水平方向に延びて、前記食器支持部材を前記水平方向の任意の位置に配置可能とする支持部材移動手段を備え、前記食器支持部材は、前記支持部材移動手段に沿って移動自在に複数設けられている食器洗浄機において、前記食器支持部材は、該食器支持部材の移動方向に向かって突出する掛止爪を備え、該掛止爪は、径方向を前記支持部材移動手段の延設方向と交差する方向に向けた他の横倒姿勢とされた食器類の縁部が掛止可能となる形状で一対設けられ、前記基枠は、前記食器支持部材の移動方向に沿って延びる複数の横架材を備え、前記横架材は、前記食器支持部材の下方に位置し、2つの前記掛止爪の中央と2つの前記横架材の中央とは、同一鉛直線上に位置すると共に、2つの前記横架材の中心間の間隔寸法よりも、2つの前記掛止爪の外側縁間の間隔寸法が大きくなるように2つの前記掛止爪を設けることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、外径が比較的大きな食器を食器支持部材に支持したとき、その食器の外周縁が他の食器や洗浄槽の内壁面に干渉しない位置に各食器支持部材を配置させることで、外径が比較的大きな食器に合わせた支持スペースに広げることができる。
【0012】
よって、食器類の支持スペースを効率よく使用して、比較的大きな外径を有する食器類であっても容易に支持することができる。
【0013】
食器支持部材の移動方向に向かって突出する掛止爪を設けることにより、食器支持部材を移動させて広げたスペースに他の食器類(例えばフライパン等の外径の大きな調理器具)を支持させることができる。
【0014】
掛止爪は、他の横倒姿勢(即ち、食器支持部材に配列される食器類の向きと異なる向き)で食器類の縁部が掛止可能となる形状であるので、掛止爪によって支持される食器類は、食器支持部材に複数配列される食器類と異なる向きとなる。これにより、食器支持部材に複数配列されている食器類に対する洗浄を阻害することのない姿勢で比較的大型の食器類(例えばフライパン等)を支持することができる。よって、本発明によれば、食器類の支持スペースを一層効率よく使用することができる。
【0016】
また、本発明において、前記支持部材移動手段は、前記食器支持部材を水平方向に移動自在とするレールであることが好ましい。
【0017】
支持部材移動手段としてレールを採用することで、食器支持部材に食器を支持させた状態でレールに沿ってスライドさせるだけで、所望の位置に食器支持部材を配置させることができる。これにより、食器支持部材に支持した食器類の外径に合わせて各食器支持部材をスライド移動させて各食器支持部材の位置及び支持スペースを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の食器洗浄機の構成を模式的に示す説明図。
【
図3】
図2の食器かごに食器類を支持した状態を示す平面図。
【
図4】食器支持部材を移動した状態の食器かごを示す平面図。
【
図5】
図4の食器かごに食器類を支持した状態を示す平面図。
【
図7】食器支持部材とレール及び基枠の横架材を示す説明的断面図。
【
図8】食器支持部材の掛止爪と基枠の横架材との位置関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態の食器洗浄機1は、システムキッチンに組み込んで設置されるビルトイン式のものであり、食器洗浄機1の筐体2は、前方が開放されて洗浄槽3を出し入れ自在に収容している。
【0020】
洗浄槽3の底部側には、洗浄水を噴出する洗浄ノズル4が設けられており、洗浄槽3の背面側には洗浄槽3内の食器を乾燥させるための乾燥用空気を導入する乾燥ダクト5及び乾燥ファン6が設けられている。
【0021】
更に、洗浄槽3の底部には、洗浄槽3内に残菜フィルタ7を介して連通する洗浄水の溜り部8が設けられている。洗浄槽3の底部下側には、溜り部8に連通する洗浄・排水ポンプ9が設置されている。洗浄・排水ポンプ9は、正転させることにより洗浄ノズル4に洗浄水を供給し、逆転させることにより洗浄槽3からの排水を行う。
【0022】
洗浄槽3には、食器を支持するための食器かご10が着脱自在に取り付けらている。前記洗浄ノズル4は、食器かご10より下方に位置して水平方向に長手の下ノズル11と、下ノズル11の長手方向中央部に立設されたセンターノズル12とにより構成されている。
【0023】
下ノズル11は、その長手方向中央部で鉛直軸線回りに旋回しつつ食器かご10に向けて洗浄水を噴出する。下ノズル11は、洗浄・排水ポンプ9から供給される洗浄水の噴出反力によって旋回するようになっている。
【0024】
センターノズル12は下ノズル11と一体に回転する下半部12aと、この下半部12aに上下動自在に挿設された上半部12bとで構成されている。洗浄・排水ポンプ9から洗浄水が供給されたとき、センターノズル12は下ノズル11と共に旋回しつつ水圧によって上半部12bが上方に延びるようになっている。そして、センターノズル12の下半部12a及び上半部12bから食器かご10に向けて洗浄水が噴出される。
【0025】
ここで、本発明の要旨となる食器かご10について詳細に説明する。食器かご10は、
図2に示すように、樹脂でコーティングされた金属製線材によって形成された基枠13と、合成樹脂製によって形成された箱形状の小物立て14とを備えている。小物立て14には、図示しないが、スプーン、フォーク、箸等を立てられる。
【0026】
食器かご10には、
図3に示すように、夫々形状の異なる食器である大皿Wa、椀Wb、小皿Wc、中鉢Wdを各別に集約して支持する領域が設定されている。
【0027】
即ち、食器かご10は、大皿Waを支持するための領域である大皿支持部15と、椀Wbを支持する領域である椀支持部16と、小皿Wcを支持する領域である小皿支持部17と、中鉢Wdを支持する領域である中鉢支持部18とに区分されている。
【0028】
食器かご10の中央部には、
図2に示すように、センターノズル12と各食器(大皿Wa、椀Wb、小皿Wc、中鉢Wd)との干渉を避けてセンターノズル12を挿通させるノズル用開放枠部19が形成されている。
【0029】
図2に示すように、大皿支持部15は、樹脂でコーティングされた金属製の複数の支持棒21によって形成されている。各支持棒21は基枠13に取り付けた合成樹脂製の大皿支持枠22に回転自在に支持された回転軸23を介して連結されており、各支持棒21を互いに向き合う方向に倒すことができるようになっている。各支持棒21は2本1組で大皿Waの裏面に当接し、大皿Waを各組の支持棒21間に差し込むようにセットすることで、大皿Waを横向きに立てた状態(横倒姿勢)で支持するようになっている。
【0030】
小皿支持部17は、ノズル用開放枠部19と一体の小皿支持枠24と、小皿支持枠24に一体に形成された複数の小皿用支持ピン25とを備え、各小皿用支持ピン25が2本1組で小皿Wcを横向きに立てた状態(横倒姿勢)で支持するようになっている。
【0031】
中鉢支持部18は、小皿支持部17の小皿支持枠24に隣接する中鉢支持枠26と、中鉢支持枠26に一体に形成された複数の中鉢用支持ピン27とを備え、各中鉢用支持ピン27が2本1組で中鉢Wdの開口縁を掛止して横向きに立てた状態(横倒姿勢)で支持するようになっている。
【0032】
椀支持部16は、複数(本実施形態では3つ)の同一形状の椀支持枠28を備えている。椀支持枠28は何れも本発明の食器支持部材に相当する。椀支持部16は、一対のレール29a,29bにより基枠13からの外れが防止されていると共に、両レール29a,29bに沿って移動自在に設けられている。
【0033】
両レール29a,29bは、基枠13の一側縁の略全長にわたって設けられている。一方のレール29aは、基枠13の一側縁に固定された合成樹脂製の部材により設けられ、他方のレール29bは、ノズル用開放枠部19及び小皿支持枠24の一側壁に形成されている。レール29a,29bは、本発明における支持部材移動手段として採用したものである。
【0034】
椀支持枠28は、椀支持部16の領域内において、レール29a,29bの延設方向に沿って移動させることができるようになっている。即ち、
図2に示す椀支持枠28の位置は、互いに等間隔になっているが、
図4に示す位置に椀支持枠28を移動させることで、
図5に示すように、外径が少し大きな椀Weを、椀We同士で干渉することなく安定的に支持することができる。
【0035】
図6に示すように、椀支持枠28は、一体に形成された複数の椀用支持ピン30を備え、椀用支持ピン30が2本1組で椀Wb(又は椀We)の開口縁を掛止することで、椀Wb(又は椀We)を横向きに立てた状態で支持するようになっている。
【0036】
また、椀支持枠28は、レール29a,29b側に面する各側縁に一対ずつ摺接部31を備えている。摺接部31は、
図7に示すように、レール29a,29bに摺接する。
図6及び
図7に示すように、摺接部31の先端には、レール29a,29bの縦内壁面に接する小突起32が形成されている。摺接部31の上面には、レール29a,29bの上内壁面に接する薄突片33が形成されている。
【0037】
小突起32と薄突片33とは、何れもレール29a,29bとの接触面積が小さく、これによって、レール29a,29bに沿って摺接部31が動くときに摩擦抵抗を小さくして椀支持枠28をスムーズに移動させることができる。
【0038】
図7に示すように、椀支持枠28の下方には、基枠13に設けられてレール29a,29bに沿って延びる横架材34にも接する。横架材34は、レール29a,29bと平行に複数本設けられて基枠13を補強しているが、椀支持枠28が横架材34上に載った状態で摺動することで、椀支持枠28の歪みも防止される。
【0039】
更に、椀支持枠28における横架材34との接触位置には、凹部35が形成されている。これにより、椀支持枠28が移動しているときの、椀支持枠28がレール29a,29bに対して斜めになること等が防止される。よって、椀支持枠28の移動時の姿勢を安定させて椀支持枠28を円滑に移動させることができる。
【0040】
また、
図6に示すように、椀支持枠28の移動方向の両側面には夫々水平方向に突出する掛止爪36が一対ずつ設けられている。椀支持枠28はレール29a,29bに沿った方向であれば移動自在であるため、椀支持枠28同士の間隔を部分的に広くすることが可能である。そしてこのような広い間隔のスペースを利用してフライパンWf等の比較的大きな食器類(調理容器)を支持させるとき、掛止爪36に縁部を掛止して支持することができる。
【0041】
このとき、
図8に示すように、2つの掛止爪36の中央と2つの横架材34の中央とが略同一鉛直線x上に位置するように掛止爪36を設けると共に、2つの横架材34の中心間の間隔寸法aよりも、2つの掛止爪36の外側縁間の間隔寸法bが大きくなるように掛止爪36を設けることが好ましい。
【0042】
これによれば、径方向をレール29a,29bの延設方向と交差する方向に向けた他の横倒姿勢のフライパンWf等が周方向に転がることなく掛止爪36による良好な掛止状態が得られ、しかも、フライパンWf等の荷重を横架材34が受けることにより、椀支持枠28の歪みを防止して確実な掛止状態を得ることができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、3つの椀支持枠28を移動自在としたものを食器支持部材として挙げたが、複数の食器支持部材の夫々が十分に移動できるスペースがあれば、本発明の食器支持部材は3つに限るものではない。
【0044】
また、本実施形態においては、本発明における支持部材移動手段としてレール29a,29bを採用したが、本発明における支持部材移動手段はレール29a,29bに限るものではない。例えば、図示しないが、レール29a,29bに替えて、上部に短いクシ状のピンが複数立設された保持部材を設け、食器支持部材(椀支持枠28)を任意の位置で保持可能としてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、椀支持部16の領域内に設けた椀支持枠28を食器支持部材の例として挙げたが、食器支持部材を移動自在に設ける領域や当該食器支持部材が支持する食器類は、本実施形態のものに限らない。
【符号の説明】
【0046】
Wa,Wb,Wc,Wd,We,Wf…食器類、1…食器洗浄機、3…洗浄槽、10…食器かご、13…基枠、28…椀支持枠(食器支持部材)、29a,29b…レール、36…掛止爪。