(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】オレフィン含有量が減少するストリームでオレフィン類をオリゴマー化する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 2/10 20060101AFI20240226BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20240226BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240226BHJP
B01J 23/78 20060101ALI20240226BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
C07C2/10
C07C11/08
C07C11/02
B01J23/78 M
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019191056
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ギード シュトホニオル
(72)【発明者】
【氏名】ヨェルグ シャーレンベルク
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン パイツ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの反応器及び少なくとも1つの蒸留カラムを各々含む、直列に接続された少なくとも3つの反応段階でC2~C8のオレフィン類をオリゴマー化する方法であって、以下の、
工程(a)C2~C8のオレフィン類を含む供給混合物を提供し、前記供給混合物を2つの供給ストリームに分ける工程であって、ここで、第1の供給ストリームは第1反応段階への供給ストリームとして供給され、第2の供給ストリームは、供給ストリーム中のオレフィン含有量が50質量%未満である下流の反応段階の少なくとも1つに供給ストリームとして供給され、
工程(b)第1反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、
前記少なくとも1つの反応器の第1反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを、下流の蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、前記蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして第2反応段階に少なくとも部分的に供給され、
工程(c)第2反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、
前記少なくとも1つの反応器で第2反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを
前記蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、
前記蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして少なくとも部分的に第3反応段階に供給され、
工程(d)第3反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、
前記少なくとも1つの反応器で第3反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを
前記蒸留カラムの底部生成物として分離し、
ここで、最終反応段階の前記反応器は断熱的に操作されるが、その前の反応段階の前記反応器は冷媒を用いて冷却され、かつ、
ここで、オリゴマー化触媒が個々の反応段階の
前記反応器で用いられ、アルミノケイ酸塩支持体物質上にニッケル化合物を含み、その全成分中に0.5質量%未満の二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを含む、
C2~C8のオレフィン類をオリゴマー化する方法。
【請求項2】
前記第1反応段階における前記反応器への100%の冷却力に基づき、次の反応段階の前記反応器における冷却力は、100%未満であるが、最後の反応段階においてのみ0%である、請求項1記載のオリゴマー化する方法。
【請求項3】
前記冷媒により吸収された熱が、1又はそれ以上の個々の反応段階への供給ストリームを加熱するために用いられる、請求項1又は2記載のオリゴマー化する方法。
【請求項4】
前記個々の反応段階への前記加熱された供給ストリームの温度は>50℃である、請求項3記載のオリゴマー化する方法。
【請求項5】
存在する各前記反応段階の前記オリゴマー化が、50~200℃、60~180℃、
又は60~130℃の範囲の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項6】
存在する各前記反応段階の前記オリゴマー化の圧力は10~70バール、
又は20~55バールである、請求項1~5のいずれか一項に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項7】
前記個々の反応段階の前記反応器の前記オリゴマー化触媒の組成物は、15~40質量%のNiO、5~30質量%のAl
2O
3、55~80質量%のSiO
2、及び0.01~2.5質量%のアルカリ金属酸化物である、請求項1~6のいずれか一項に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項8】
4つの反応段階がある前記方法であって、ここで、
請求項1に基づいて修飾された工程(d)第3反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、
前記少なくとも1つの反応器で第3反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを
前記蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、
前記蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして少なくとも部分的に第4反応段階に供給され、並びに、
さらなる工程(e)第4反応段階:
前記供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、
前記少なくとも1つの反応器で第4反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを
前記蒸留カラムの底部生成物として分離する工程と、
がある、請求項1~7のいずれか一項に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項9】
5つの反応段階がある前記方法であって、ここで、
請求項8に基づいて修飾された工程(e)第4反応段階:
前記供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、
前記少なくとも1つの反応器で第4反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを、
前記蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、
前記蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして少なくとも部分的に第5反応段階に供給される工程と、並びに、
さらなる工程(f)第5反応段階:
前記供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、
前記少なくとも1つの反応器で第5反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを
前記蒸留カラムの底部生成物として分離する工程と、
がある、請求項8に記載のオリゴマー化する方法。
【請求項10】
最後の反応段階、すなわち、前記第3、第4、又は第5
の反応段階の
前記蒸留カラムのオーバーヘッド生成物が、前記反応段階で部分的に又は完全に
前記反応器にリサイクルされ、及び/又は前記方法から部分的に又は完全に排出される、請求項1~9のいずれか一項に記載のオリゴマー化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給混合物と反応段階からの各反応物が分離されて、様々な反応段階に供給される、いくつかの反応段階でC2~C8のオレフィン類をオリゴマー化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴマー化は、一般に、不飽和炭化水素どうしが反応して、対応するより長鎖の炭化水素、いわゆるオリゴマーを形成することを意味すると理解される。すなわち、例えば、炭素原子が3のオレフィンが2つオリゴマー化されると炭素原子が6のオレフィン(ヘキセン)が形成される。この2分子のオリゴマー化は二量化ともいわれる。
【0003】
得られたオリゴマーは、例えば、アルデヒド、カルボン酸及びアルコールを形成するために用いられる中間体である。オレフィン類のオリゴマー化は、溶媒を用いた均一相中で、又は固体触媒上で不均一に、又はその他二相触媒系を用いて、工業規模で大規模に実施される。
【0004】
オレフィン類をオリゴマー化する方法は先行技術で十分に知られており、工業規模で用いられる。その生産量はドイツだけでも年間数千キロトンに達する。変換率がなるべく高く、かつオリゴマー化方法がなるべく連続的に運転されるよう、工業プラントは、通常、1つの反応段階だけでなく、直列に接続された少なくとも2つの反応段階を含む。その結果、1つの反応段階に不具合があっても、当該オリゴマー化方法を連続運転しうる。
【0005】
オリゴマー化方法のオレフィン類源は通常、エチレンやプロピレン等のナフサ短鎖オレフィン類、並びにブタジエン含有及びブテン含有のC4留分(いわゆるクラックC4)が得られうる蒸気クラッカーであり、その後イソブテンが除去されて、オリゴマー化に供給されうる。その後、蒸気クラッカーの原料としてのナフサからシェールガス由来の安価なエタンに切り替える場合、得られたストリーム中のオレフィンの比率が低くなる。
【発明の概要】
【0006】
しかし、オレフィン濃度が低い場合、さらなる処理は経済的及び技術的課題となりうる。既存のプラントは、元来の構造のため、通常、オレフィン濃度が低い場合であっても、変換率が十分に高く保たれるようには設計されていない。さらに、アルカン等の不活性留分の比率が高すぎると、統合された蒸留カラムは流体力学的限界に達する可能性がある。当該不活性留分は方法全体に悪影響を及ぼすため、不活性留分の比率が高いと費用がかさむ。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題が生じないオレフィン類のオリゴマー化方法を提供することであった。本発明の基本目的は、請求項1に記載のオリゴマー化する方法により達成された。好ましい構成は、従属クレームで特定される。
【0008】
本発明の方法は、少なくとも1つの反応器と少なくとも1つの蒸留カラムとを各々含む、直列に接続された少なくとも3つの反応段階でC2~C8のオレフィン類をオリゴマー化する方法であって、以下の、
工程(a)C2~C8のオレフィン類を含む供給混合物を提供し、前記供給混合物を2つの供給ストリームに分ける工程であって、ここで、第1の供給ストリームは第1反応段階への供給ストリームとして供給され、第2の供給ストリームは、供給ストリーム中のオレフィン含有量が50質量%未満である下流反応段階の少なくとも1つに供給ストリームとして供給され、
工程(b)第1反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、少なくとも1つの反応器の第1反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを、下流の蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、前記蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして第2反応段階に少なくとも部分的に供給され、
工程(c)第2反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、少なくとも1つの反応器で第2反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして少なくとも部分的に第3反応段階に供給され、
工程(d)第3反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、少なくとも1つの反応器で第3反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを蒸留カラムの底部生成物として分離し、
ここで、前記最終反応段階の前記反応器は断熱的に操作される、
方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の文脈における用語「反応段階」は、反応器の下流にある1又はそれ以上の反応器及び1又はそれ以上の蒸留カラムを含むプラントセクションを意味する。好ましい実施形態では、各反応段階で蒸留カラムは1つのみ存在する。蒸留カラムでは、特に、生成されたオリゴマーは、例えば、アルカン及び未変換のオレフィン類を含む反応器の残留出力ストリームから分離される。例えば、当業者にはよく知られている供給用の予熱器、熱交換器等の反応段階に組み込まれうる典型的なプロセスエンジニアリングユニットは、ここでは個別に列挙されない。
【0011】
本明細書に記載されたストリームの分配、可変反応器操作、及び最適化処理方式の組合せを表す方法を用いると、特に下流の反応段階の1つの供給ストリーム中のオレフィン含有量が比較的低い場合、従来の運転方法と比較して、存在するオレフィン類を著しく効率的に利用することができた。上流の反応段階でオレフィン類の消費が低すぎて、その後の反応段階の1つの供給ストリーム中へのオレフィン含有量が低すぎる場合、変換及び空間時間収率は悪化する。このような経済的に問題のある方法レジームは、本発明の方法で防ぎうる。
【0012】
しかしながら、本発明の方法は、工程(a)で提供された供給混合物を分けるだけでなく、最終段階での反応器の断熱的操作モードも提供する。用語「断熱的に操作される(adiabatisch betrieben)」は、反応器が最終反応段階で活発に冷却されないことを意味すると理解されるべきである。代わりに、オリゴマー化で放出された熱は、生成物ストリームと共に反応器から排出されるため、下流蒸留カラムでの蒸発に必要なエネルギーがより少なくてよく、エネルギーを節約して蒸留を行いうる。
【0013】
本発明の方法は、少なくとも3つの反応段階を含む。好ましい実施形態では、オリゴマー化する方法の段階は、最大5つである。特に好ましいのは、反応段階が4つ又は5つである方法手順である。これらの各反応段階は、互いに独立して、反応器からの残留出力ストリームから形成されたオリゴマーを分離するために、1又はそれ以上の反応器及び1又はそれ以上の下流蒸留カラムを含む。しかしながら、1つの反応段階が2以上の反応器を含むのに対して、上流又は下流の反応段階では、反応器が1つしか存在しないことも考えられる。
【0014】
4つの反応段階が存在する場合、修飾された工程(d)及びさらなる工程(e)がある本発明による上記方法は以下のように実行されるが、ここで工程(a)~(c)は、上記のとおりであり、
工程(d)第3反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、少なくとも1つの反応器で第3反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして少なくとも部分的に第4反応段階に供給される。
工程(e)第4反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、少なくとも1つの反応器で第4反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを蒸留カラムの底部生成物として分離する。
【0015】
5つの反応段階が存在する場合、修飾された工程(e)及びさらなる工程(f)がある本発明による上記方法は以下のように実行されるが、ここで、工程(a)~(d)は、上記のとおりであり、
工程(e)第4反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、少なくとも1つの反応器で第4反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを、蒸留カラムの底部生成物として分離する工程であって、ここで、蒸留カラムで形成されたオーバーヘッド生成物は、供給ストリームとして少なくとも部分的に第5反応段階に供給される。
工程(f)第5反応段階:供給ストリーム中のオレフィン類を、オリゴマー化触媒を用いて、少なくとも1つの反応器で第5反応段階への供給ストリーム中でオリゴマー化し、かつ、ここで形成されたオリゴマーを蒸留カラムの底部生成物として分離する。
【0016】
本発明の方法は、一般的に以下のように実施しうる。出発点は、C2~C8オレフィン類を含む供給混合物の提供である。供給混合物は、最初の反応段階への供給前に、2つの供給ストリームに分割される。当該分割は、当業者に公知の方法、例えば、(第1供給ストリーム用)主パイプラインから分流するパイプラインにより行うことができる。ストリームは、例えば、質量調整器を介して分離することができる。1つの(第1)供給ストリームは、第1反応段階への供給ストリームとして供給され、他方の(第2)供給ストリームは、供給ストリーム中のオレフィン含有量に応じて、下流の1つに供給される。下流の反応段階、すなわち第2反応段階及びさらなる反応段階への供給ストリームは、それぞれの上流の反応段階の蒸留カラムのオーバーヘッド生成物から少なくとも部分的に供給される。次の1つの反応段階への供給ストリーム中のオレフィン含有量が50質量%未満である場合、第2供給ストリームの少なくとも一部を追加的に計量供給して、供給ストリーム中のオレフィン類の比率を高める。
【0017】
個々の反応段階では、各供給ストリームは、少なくとも1つの反応器で本発明によりオリゴマー化され、得られたオリゴマーは各々蒸留カラムに送られ、そこで形成されたオリゴマーは、各々、少なくともアルカン及び未反応オレフィン類をオーバーヘッド生成物として含む反応器の残留出力ストリームから底部生成物として分離される。次いで、反応段階に応じて、オーバーヘッド生成物は、少なくとも部分的に供給ストリームとし各々次の反応段階に送られ、場合によっては、各反応段階の反応器に部分的にリサイクルされる。最終反応段階、すなわち、第3、第4、第5、又はそれ以降の反応段階では、蒸留カラムのオーバーヘッド生成物を、この反応段階で反応器に部分的にリサイクルし、当該方法から部分的に排出しうる。最終反応段階の蒸留カラムのオーバーヘッド生成物が本明細書で開示の方法から排出される場合、さらなる方法(例えば、ヒドロホルミル化、アセチレン製造における光アークの炭素(C)源)の合成原料として、又はアルカンへ完全に水素化した後の推進ガス、例えば調理ガス等に供しうる。
【0018】
本発明の方法に用いられるオレフィン類としては、C2~C8オレフィン類、好ましくはC2~C6オレフィン類、より好ましくはC3~C5オレフィン類、又はそれらのオレフィン混合物があげられ、これらの混合物のアルカン比率は類似してよい。適当なオレフィン類としては、特に、α-オレフィン類、n-オレフィン類及びシクロアルケン、好ましくはn-オレフィン類があげられる。好ましい実施形態では、オレフィンはn-ブテンである。
【0019】
オレフィン類は通常、純粋な形態の反応剤としてではなく、工業的に入手可能な混合物で用いられる。従って、本発明で用いられる用語「供給混合物」は、経済的にオリゴマー化を行いうる量でオリゴマー化されるような対応するオレフィン類を含むいかなる種類の混合物に関すると理解されるべきである。本発明で用いられる供給混合物には、好ましくは、実質的に、ジエン又はアセチレン誘導体等のさらなる不飽和化合物及び多価不飽和化合物を含まない。オレフィン比率に基づいて、分岐オレフィン類含量が質量%未満、特に2質量%未満である供給混合物を用いるのが好ましい。
【0020】
プロピレンはナフサの分解により大規模な工業的規模で製造され、容易に入手しうる汎用化学物質である。C5オレフィン類は、精製所又はクラッカー由来の軽質石油留分中に存在する。直鎖状C4オレフィン類を含む工業的混合物は、精製所由来の軽質石油留分、FCクラッカー又は蒸気クラッカー由来のC4留分、フィッシャー・トロプシュ合成由来の混合物、ブタンの脱水素由来の混合物、及びメタセシス又は他の工業的方法で形成された混合物である。本発明の方法に適する直鎖状ブテン類の混合物は、例えば、スチームクラッカーのC4留分から獲得しうる。ここでブタジエンは最初の段階で除去される。これは、ブタジエンの抽出(蒸留)又はその選択的水素化により達成される。どちらの場合も、実質的にブタジエンを含まないC4-カット、いわゆるラフィネートIが得られる。第2段階では、イソブテンは、例えばメタノールとの反応によるMTBEの形成により、C4流から除去される。このときイソブテン非含有、かつ、ブタジエン非含有のC4-カット、いわゆるラフィネートIIは、直鎖状ブテン類と場合によってはブタン類を含む。得られた1-ブテンの少なくとも一部を除去すると、いわゆるラフィネートIIIが得られる。
【0021】
本発明の方法の好ましい実施形態では、C4オレフィン含有流が供給混合物として供給される。適当なオレフィン混合物は、特にラフィネートI及びラフィネートII及びラフィネートIIIである。
【0022】
当業者に公知の全ての反応器は、例えば、管状反応器、管束反応器、セトラーライザー反応器、スラリー反応器等の、オリゴマー化に適する各反応段階の反応器として用いうる。好ましくは、管状反応器及び/又は管束反応器である。1つの反応段階に複数の反応器がある場合、当該反応器は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。また、反応段階での当該反応器は、その構造又は配置が多様であってよい。反応段階の第1反応器の体積は、例えば、同じ反応段階の下流の反応器よりも大きくてよい。また、個々の反応段階での当該反応器は同一であるか、又は互いに異なってよい。また、個々の反応段階の当該反応器は、その構造や配置が異なってよい。第1反応段階の反応器の体積は、例えば、下流の反応段階の1又は全ての反応器よりも大きくてよい。
【0023】
個々の反応段階の1又はそれ以上の反応器は各々、オリゴマー化を行うオリゴマー化触媒、とくに不均一なオリゴマー化触媒を含む。当該オリゴマー化触媒は、特に顆粒、押出物又は錠剤の形態である。
【0024】
(不均一)オリゴマー化触媒は、アルミノケイ酸塩支持材上にニッケル化合物、好ましくは酸化ニッケルを含むが、当該オリゴマー化触媒の全成分中に、0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満の二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを含む。当該支持体材料としては、アモルファスのメソ多孔質アルミノケイ酸塩、結晶質の微孔質アルミノケイ酸塩、又はアモルファス相と結晶相があるアルミノケイ酸塩があげられる。本発明の文脈における「アモルファス」とは、固体が、結晶性固体とは対照的に、非結晶構造、すなわち、長距離秩序がないという事実から生じる、固体の特性を意味するものと理解されるべきである。
【0025】
さらに、本発明では、オリゴマー化触媒の組成は、好ましくは、15%~40質量%、好ましくは15%~30質量%のNiO、5%~30質量%のAl2O3、55%~80質量%のSiO2及び0.01%~2.5質量%、好ましくは0.05%~2質量%のアルカリ金属酸化物、好ましくは酸化ナトリウムである。これは100質量%の全組成に基づく。当該オリゴマー化触媒は、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを実質的に含まず、特に当該オリゴマー化触媒は、その全組成中に0.5質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満の二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムを含む。
【0026】
当該オリゴマー化触媒の比表面積は、好ましくは、150~700m2/g、より好ましくは190~600m2/g、特に好ましくは220~550m2/g(BETに従って計算)である。BET表面積は、DIN―ISO9277(2014-01版)に準拠した窒素物理吸着法で測定される。
【0027】
当該反応段階の個々の反応器に存在するオリゴマー化触媒は各々、上記物質から互いに独立して選択されうる。当該反応器中の個々の当該オリゴマー化触媒は必ずしも完全に同一ではなく、組成は各々異なり、場合によっては、限られた範囲での構成が異なる。これはまた、本発明の方法の最初の起動時には各反応器が完全に同一の触媒組成物を含んでいたとしても、当該組成物は、操作中経時的に変化し、最も多様な効果(再生触媒は、新たに調製された触媒とは、操作中の摩耗、様々な経年変化及び/又は中毒などに対して異なる挙動を示す)により変化するという事実による。
【0028】
オリゴマー化触媒は、公知の含浸方法で作製でき、ここで、支持体物質は、遷移金属化合物、とくにニッケル化合物の溶液に含浸された後、焼成、又は共沈により、触媒組成物全体が単一の大部分の水溶液から沈殿される。当該オリゴマー化触媒は、当業者に公知の他の方法でも作製しうる。
【0029】
オリゴマー化は、50~200℃、好ましくは60~180℃、好ましくは60~130℃の範囲の温度で利用しうる当該各反応段階で行いうる。利用しうる反応段階の各圧力は、10~70バール、好ましくは20~55バールでありうる。本発明の好ましい実施形態では、オリゴマー化の各反応段階は液相で行われる。オリゴマー化が液相中で行われる場合には、パラメータの圧力及び温度を選択して反応物流(用いられるオレフィン類又はオレフィン混合物)が液相にあるようにする必要がある。
【0030】
重量に基づく空間速度(単位時間当たりの単位触媒質量当たりの反応物質質量;重量時間空間速度(WHSV))は、触媒1g当たり及び1時間当たりの反応物質1g(1h-1)から190h-1の範囲であり、好ましくは2h-1から35h-1との間、特に好ましくは3h-1と25h-1との間の範囲である。
【0031】
特に、ニッケル化合物、好ましくは酸化ニッケルを含む触媒がアルミノケイ酸塩支持体上で用いられる場合、変換された反応物に基づく、オリゴマー化後の二量化の程度(「二量化に基づく選択率」ともいう)は、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%である。
【0032】
オレフィン類のオリゴマー化は発熱反応、すなわち熱が放出される反応である。反応器を冷却して、放出された熱の一部又は全部を放散することで、オリゴマー化温度を所望の範囲に維持しうる。この放散熱をそれ以降の方法で利用するため、冷却は、最終反応段階の場合のように、部分的に完全に省略しうる。オリゴマー化中に放出された熱は、生成物流の出力により反応器から除去され、蒸留カラムで用いて、蒸留で所望の分離効果を達成するために提供するエネルギーをより少なくするのに貢献しうる。
【0033】
好ましい実施形態では、前の反応段階の全ての反応器は最終反応段階まで冷却される。この場合、当業者に公知の冷媒、例えば冷却水が用いられうる。好ましい実施形態では、反応器の温度上昇は冷却にもかかわらず5Kを超えてはならない。これは、反応器の等温動作モードに対応する。第1反応段階の反応器の冷却力を100%とすると、それ以降の反応段階の反応器の冷却力は100%以下であるが、最終反応段階を除き0%にはならない。
【0034】
とりわけ好ましい実施形態では、反応段階が3つの場合、第1反応段階の反応器に対する冷却力は100%であり、第2反応段階の反応器に対する冷却力は10~60%であり、第3及び最終反応段階の反応器は断熱的に操作される。さらに好ましい実施形態では、反応段階が4つでは、第1反応段階の反応器に対する冷却力は100%、第2反応段階の反応器に対する冷却力は40~60%、第3反応段階の反応器に対する冷却力は10~30%であり、第4及び最終反応段階の反応器は断熱的に操作される。
【0035】
断熱的に操作される反応段階より前の反応段階での冷却中に冷媒により吸収される熱は、好ましくは1又はそれ以上の供給ストリーム、好ましくは全ての供給ストリームを個々の反応段階、好ましくは温度T>50℃に加熱するために好ましい実施形態で用いうる。これは、特に熱交換器を用いて、当業者に公知の方法で行いうる。したがって、反応中に形成され、冷却中に冷媒で吸収された熱は、経済的及び生態学的観点から有利な他の方法でも用いられうる。
【0036】
オリゴマー化産物又は形成された二量体の直線性は、二量体中のメチル分枝数の平均値であるISO指数で表される。例えば(ブテンを反応物とすると)C8留分のISO指数に対してn-オクテンは0に、メチルヘプテンは1に、ジメチルヘキセンは2である。ISO指数が低いほど、各留分中の分子構築は直線的になる。ISO指数は、以下の一般式
【0037】
【数1】
に従って計算され、個々の二量体留分の割合は、全二量体留分を示す。
従って、ISO指数が1.0である二量体混合物のメチル分岐は、二量体分子当たり正確に1である。
【0038】
本発明のオリゴマー化方法の生成物のISO指数は、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.8~1.15である。
【0039】
本発明の方法で作製されたオリゴマーは、とりわけアルデヒド、アルコール及びカルボン酸の作製に用いられる。たとえば、直鎖状ブテンの二量体はヒドロホルミル化によりノナナール混合物を産生する。これにより、酸化により対応するカルボン酸か、又は水素化によりC9アルコール混合物がもたらされる。C9酸混合物は、潤滑剤又は乾燥剤の作製に用いられうる。C9アルコール混合物は、可塑剤、特にフタル酸ジノニル、又はDINCHの作製における前駆体である。
【0040】
図1は、本発明の実施形態を示す。まず、開始流(1)は、点(2)で、第1反応段階(3)への供給ストリームと、オレフィン含有量が50%未満である少なくとも1つの下流反応段階(4)への供給ストリームに分けられる。その後、供給ストリーム(3)を第1反応段階(A)の反応器(5)に供給し、反応器から得られたオリゴマー化物を蒸留カラム(6)に供給し、そこで形成されたオリゴマーを底部生成物として分離する。オーバーヘッド生成物は、部分的に反応器(5)に送られ、部分的に次の第2反応段階(B)に送られる。場合によっては、すなわち、第2段階のオレフィン含有量が供給中に既に50%未満である場合、開始流から分離された供給ストリーム(4)は、第2反応段階(B)へ既に計量供給しうる。そこで、まず、反応器(7)でオリゴマー化を行う。得られたオリゴマー化物は蒸留カラム(8)に到着し、そこで、第2段階(B)の反応器(7)で形成されたオリゴマーが底部を介して分離される。オーバーヘッド生成物は部分的に反応器(7)に供給され、部分的に第3段階(C)に供給される。そこで、供給ストリームを反応器(9)中でオリゴマー化にかけ、オリゴマーを蒸留カラム(10)で底部生成物として分離する。一部のオーバーヘッド生成物は反応器(9)にリサイクルされる。開始ストリームから分離された供給ストリーム(4)は、ここで、リサイクルされたオーバーヘッド生成物(破線の矢印)に追加的に供給しうる。場合によっては第4反応段階(D)があってよく、したがって破線で表される。当該第4段階も、同様に、反応器(11)及び蒸留カラム(12)を含む。反応段階が4である実施形態では、供給ストリームを第3及び/又は第4反応段階に供給しうる。反応段階が5である実施形態は
図1には示されないが、示された設定は、単に反応段階(D)の下流の反応段階を含むに過ぎない。