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特許7442293危険度判定装置、危険度判定システム、危険度判定方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】危険度判定装置、危険度判定システム、危険度判定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240226BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240226BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61B5/00 102C
G08B21/02
G08B25/04 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019198975
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021069773
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 圭子
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183373(JP,A)
【文献】特開2013-090894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0029890(US,A1)
【文献】国際公開第2005/063065(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/01
A41D 13/00-13/005
G08B 21/02-21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得部と、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定部と、
を備え、
前記危険度判定部は、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定部は、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記衣服内部の温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定装置。
【請求項2】
外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得部と、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定部と、
を備え、
前記危険度判定部は、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定部は、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記環境温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定装置。
【請求項3】
前記危険度判定部は、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度以上である場合には、前記衣服内部の温度及び湿度によらず、熱ストレスによる前記人物の危険性が高いと判定する、請求項1又は2に記載の危険度判定装置。
【請求項4】
前記危険度判定部は、前記衣服内部の温度の時系列データに基づく判定の結果と、前記衣服内部の湿度の情報とを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する、請求項1又は3に記載の危険度判定装置。
【請求項5】
外部の環境温度を測定する第1のセンサと、人物の衣服内部の温度及び湿度を測定する第2のセンサと、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定装置と、前記危険度判定装置の判定結果を表示するユーザ端末とを備える危険度判定システムであって、
前記危険度判定装置は、
前記環境温度の情報と、前記人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得部と、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定部と、
前記判定結果を前記ユーザ端末に送信する通信部と、
を備え、
前記ユーザ端末は、
前記危険度判定装置から送信された判定結果を表示する表示部と、
を備え、
前記危険度判定部は、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定部は、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記衣服内部の温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定システム。
【請求項6】
外部の環境温度を測定する第1のセンサと、人物の衣服内部の温度及び湿度を測定する第2のセンサと、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定装置と、前記危険度判定装置の判定結果を表示するユーザ端末とを備える危険度判定システムであって、
前記危険度判定装置は、
前記環境温度の情報と、前記人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得部と、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定部と、
前記判定結果を前記ユーザ端末に送信する通信部と、
を備え、
前記ユーザ端末は、
前記危険度判定装置から送信された判定結果を表示する表示部と、
を備え、
前記危険度判定部は、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定部は、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記環境温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定システム。
【請求項7】
外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得ステップと、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定ステップと、
を有し、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記衣服内部の温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定方法。
【請求項8】
外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得ステップと、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定ステップと、
を有し、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記環境温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定方法。
【請求項9】
外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得ステップと、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記衣服内部の温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定するためのコンピュータプログラム。
【請求項10】
外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得ステップと、
取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定し、
前記危険度判定ステップにおいて、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記環境温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険度判定装置、危険度判定システム、危険度判定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末装置を用いることによって人の健康状態に関する情報を取得し、健康状態に変化が生じていないか判定する技術が提案されている(特許文献1参照)。このような技術では、定期的に収集された健康状態に関する情報を蓄積することによって、長期的な観点で人の健康状態に変化が生じていないか判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-215691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、温暖化の影響等によって、熱中症により健康状態に影響を受ける人が増加している。熱中症は、本来、深部体温や体温を継続的に計測し、計測結果の時間的な変化に基づいて発見している。しかしながら、深部体温は侵襲のため物理的に計測が難しく、現実的ではない。
また、厚生労働省の指針によるWBGT(Wet Bulb Globe Temperature)や、心拍変動を用いた暑さによる危険状態の推定も行われてきた。しかしながら、これらの手法では、個人差に関係なく一律に定められた指標のため、熱中症のリスクが高い、すなわち熱中症の可能性が高い人であるか否かを精度よく判定することは難しい。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、熱中症を始めとする熱ストレスによるユーザの危険度を簡便に精度よく判定することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得部と、取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定部と、を備える危険度判定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の危険度判定装置であって、前記危険度判定部は、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度以上である場合には、前記衣服内部の温度及び湿度によらず、熱ストレスによる前記人物の危険性が高いと判定する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の危険度判定装置であって、前記危険度判定部は、前記環境温度と、前記環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる第1の温度とを比較し、前記環境温度が前記第1の温度未満である場合には、前記衣服内部の温度の時系列データを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する。
【0009】
本発明の一態様は、上記の危険度判定装置であって、前記危険度判定部は、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記衣服内部の温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の危険度判定装置であって、前記危険度判定部は、前記環境温度が前記第1の温度未満であって、かつ、前記環境温度が一定である条件が満たされた場合、所定の時刻間の前記衣服内部の温度と前記環境温度との差分値の増減に基づいて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の危険度判定装置であって、前記危険度判定部は、前記衣服内部の温度の時系列データに基づく判定の結果と、前記衣服内部の湿度の情報とを用いて、前記熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する。
【0012】
本発明の一態様は、上記の危険度判定装置であって、前記情報取得部は、前記人物の生体情報をさらに取得し、前記危険度判定部は、前記外部の環境温度の情報と、前記人物の衣服内部の温度及び湿度の情報と、前記生体情報とに基づいて前記人物の危険度を判定する。
【0013】
本発明の一態様は、外部の環境温度を測定する第1のセンサと、人物の衣服内部の温度及び湿度を測定する第2のセンサと、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定装置と、前記危険度判定装置の判定結果を表示するユーザ端末とを備える危険度判定システムであって、前記危険度判定装置は、前記環境温度の情報と、前記人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得部と、取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定部と、前記判定結果を前記ユーザ端末に送信する通信部と、を備え、前記ユーザ端末は、前記危険度判定装置から送信された判定結果を表示する表示部と、を備える危険度判定システムである。
【0014】
本発明の一態様は、外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得ステップと、取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定ステップと、を有する危険度判定方法である。
【0015】
本発明の一態様は、外部の環境温度の情報と、人物の衣服内部の温度及び湿度の情報とを取得する情報取得ステップと、取得された前記環境温度の情報と、前記衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによる前記人物の危険度を判定する危険度判定ステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、熱中症を始めとする熱ストレスによるユーザの危険度を簡便に精度よく判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における危険度判定システムのシステム構成を表す図である。
図2】本実施形態におけるユーザ端末の機能構成を表す概略ブロック図である。
図3】本実施形態における危険度判定装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
図4】本実施形態における環境温度テーブルの一具体例を示す図である。
図5】本実施形態におけるユーザ環境情報テーブルの一具体例を示す図である。
図6】本実施形態における危険度判定システムの処理の流れを示すシーケンス図である。
図7】本実施形態における危険度判定装置による危険度判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(概要)
本発明の実施形態は、熱中症を始めとする熱ストレスによるユーザの危険度の判定結果をユーザに提供することによって熱ストレスによるユーザの健康状態への影響を未然に低減させるものである。熱ストレスによるユーザの危険度とは、熱ストレスによるユーザの危険の度合いを表す指標である。例えば、熱ストレスによるユーザの危険度は、熱ストレスの可能性が高い又は低いで表される。
【0019】
一般的に熱中症の判定の指針に使用されているWBGTの情報のみでは熱ストレスの可能性が高い人であるか否かを判定することは難しい。特に、暑さを感じにくい人、厚着の人及び暑さにさらされている人等は、衣服内部の温度及び湿度による影響をより顕著に受けやすい。暑さを感じにくい人は、例えば乳幼児、子供、高齢者、体調が悪い人等である。厚着の人は、例えば消防士、自衛隊等のように規定の服を身に付けている人や寒さに弱い人である。暑さにさらされている人は、例えばスポーツ選手、室外で働く人(例えば、建設現場で働く人、警備員等)である。
【0020】
衣服内部の温度及び湿度によっては、環境温度が低くても熱中症になり得る。そのため、WBGTの情報のみでは、熱中症の可能性が高い人であるか否かを判定することは難しい。このように、熱ストレスは、ユーザがいる環境の温度に加えて、ユーザの衣服内部の温度及び湿度の影響も受ける。そこで、本発明の実施形態では、ユーザがいる環境の温度の他に、ユーザの衣服内部の温度及び湿度の情報も加味して、熱ストレスによるユーザの危険度を判定することで、熱中症のリスクがある人を早期に発見することができる。なお、上記では、一例として暑さを感じにくい人、厚着の人及び暑さにさらされている人を例に説明したが、本発明の対象となる人物は特に限定されない。
【0021】
図1は、本実施形態における危険度判定システム100のシステム構成を表す図である。危険度判定システム100は、環境温度センサ10、通信装置11、温湿度センサ20、ユーザ端末21及び危険度判定装置30を備える。環境温度センサ10と通信装置11とは、有線又は無線により通信可能に接続される。温湿度センサ20とユーザ端末21とは、有線又は無線により通信可能に接続される。通信装置11、ユーザ端末21及び危険度判定装置30は、ネットワーク40を介して互いに通信可能に接続される。ネットワーク40は、どのように構成されたネットワークであってもよい。例えば、ネットワーク40は、インターネットで構成されてもよいし、LAN(Local Area Network)で構成されてもよいし、WAN(Wide Area Network)で構成されてもよい。また、環境温度センサ10、通信装置11、温湿度センサ20及びユーザ端末21の台数は、複数であってもよい。
【0022】
環境温度センサ10は、自センサが設置されている環境の温度であるWBGTを測定する。以下、環境温度センサ10が測定するWBGTを環境温度と記載する。WBGTは、人体の熱収支に与える影響の大きい気温、湿度、気流、日射・輻射の気象条件を組み合わせて表される指標である。一般的に、WBGTは、日常生活においては31°C以上で危険、28~31°C未満で厳重警戒、25~28°C未満で警戒、25°C未満で注意に分類される。
【0023】
通信装置11は、環境温度センサ10によって測定された環境温度の情報を、ネットワーク40を介して危険度判定装置30に送信する。環境温度センサ10と、通信装置11とは、有線又は無線により接続される。通信装置11は、送信機能のみを備える装置であってもよいし、送信及び受信の機能を備える装置であってもよい。通信装置11は、環境温度センサ10に備えられてもよい。すなわち、環境温度センサ10と、通信装置11とは一体化されて構成されてもよい。
【0024】
温湿度センサ20は、ユーザ端末21を所持するユーザの衣服内部の温度及び湿度を測定する。温湿度センサ20は、ユーザ端末21を所持するユーザの衣服(例えば、上着)内部に設置されるセンサである。ユーザの体温は、環境温度の他に、ユーザの体調やユーザが身に着けている衣服においても変化する。特に、ユーザが汗をかいて放置していると、汗が蒸発しにくく体に熱がこもってしまう。これは、湿度が高いと水分が蒸発しにくいという現象により生じる。このように、環境温度と、ユーザの衣服内部の温度は、異なる状況が想定される。そのため、温湿度センサ20によりユーザの衣服内部の温度及び湿度を測定することでより精度よく熱ストレスによるユーザの危険度を判定することができる。
【0025】
ユーザ端末21は、温湿度センサ20によって測定された衣服内部の温度及び湿度の情報を、ネットワーク40を介して危険度判定装置30に送信する。温湿度センサ20と、ユーザ端末21とは、有線又は無線により接続される。ユーザ端末21は、温湿度センサ20を身に着けているユーザによって所持されている。ユーザ端末21は、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット端末等の情報処理装置を用いて構成される。
【0026】
危険度判定装置30は、通信装置11から送信された環境温度の情報と、ユーザ端末21から送信された衣服内部の温度及び湿度の情報とに基づいて、熱ストレスによるユーザの危険度を判定する。危険度判定装置30が危険度を判定するユーザは、衣服内部の温度及び湿度の取得元となるユーザである。すなわち、危険度判定装置30が危険度を判定するユーザは、ユーザ端末21を所持しているユーザである。危険度判定装置30は、判定結果を、ネットワーク40を介してユーザ端末21に送信する。例えば、危険度判定装置30は、熱ストレスの可能性が高い又は低いことを示す情報を含む判定結果をユーザ端末21に送信する。なお、危険度判定装置30は、熱ストレスの可能性が高い又は低いことを複数段階で判定してもよい。例えば、危険度判定装置30は、熱ストレスの可能性が「高い(要注意)」、「低い」、「限りなく低い」のように複数段階(例えば、3段階以上)で判定してもよい。ここで、「高い(要注意)」、「低い」、「限りなく低い」の順番で熱ストレスの可能性が低いことを意味する。すなわち、「限りなく低い」とは、熱ストレスの可能性が最も低いことを意味する。
【0027】
図2は、本実施形態におけるユーザ端末21の機能構成を表す概略ブロック図である。ユーザ端末21は、通信部22、操作部23、表示部24、制御部25及び記憶部26を備える。
通信部22は、ネットワーク40を介して危険度判定装置30との間で通信を行う。通信部22と、危険度判定装置30との間の通信は、有線であってもよいし、無線であってもよい。例えば、通信部22は、温湿度センサ20によって測定された衣服内部の温度及び湿度の情報を危険度判定装置30に送信する。また、例えば、通信部22は、危険度判定装置30から送信された判定結果を受信する。
【0028】
操作部23は、ユーザの指示をユーザ端末21に入力するための入力装置である。例えば、操作部23は、危険度判定装置30から得られる判定結果の表示指示の入力を受け付ける。操作部23は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、タッチパネル、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。また、操作部23は、入力装置をユーザ端末21に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、操作部23は、入力装置においてユーザの入力に応じて生成された入力信号をユーザ端末21に入力する。
【0029】
表示部24は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の画像表示装置やタグのような小さなデバイスである。表示部24は、危険度判定装置30によって判定された熱ストレスの判定結果を表示する。表示部24は、画像表示装置をユーザ端末21に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部24は、熱ストレスの判定結果を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0030】
制御部25は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部25は、プログラムを実行することによって、センサ情報取得部251、位置情報取得部252、通信制御部253及び表示制御部254の機能を有する。これらの機能の一部(例えば、センサ情報取得部251及び位置情報取得部252)は、予めユーザ端末21に搭載されている必要はなく、追加のアプリケーションプログラムがユーザ端末21にインストールされることで実現されてもよい。
【0031】
センサ情報取得部251は、通信部22によって受信された衣服内部の温度及び湿度の情報を取得する。
位置情報取得部252は、ユーザ端末21の位置情報を取得する。例えば、位置情報取得部252は、予め設定されたタイミングで位置情報を取得する。位置情報取得部252は、例えばGPS(Global Positioning System)であってもよい。
【0032】
通信制御部253は、通信部22を制御する。例えば、通信制御部253は、通信部22を制御して、衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを危険度判定装置30に送信させる。
表示制御部254は、表示部24を制御する。例えば、表示制御部254は、操作部23を介して入力された表示指示に応じて、表示部24を制御して記憶部26に記憶されている判定結果を表示部24に表示させる。
【0033】
記憶部26は、危険度判定装置30から送信された判定結果261を記憶する。記憶部26は、時系列順に複数の判定結果261を記憶してもよい。記憶部26は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
【0034】
図3は、本実施形態における危険度判定装置30の機能構成を表す概略ブロック図である。危険度判定装置30は、通信部31、制御部32及び記憶部33を備える。
通信部31は、ネットワーク40を介して通信装置11及びユーザ端末21との間で通信を行う。通信部31と、通信装置11及びユーザ端末21との間の通信は、有線であってもよいし、無線であってもよい。例えば、通信部31は、通信装置11から環境温度の情報を受信する。例えば、通信部31は、ユーザ端末21から衣服内部の温度及び湿度の情報と、位置情報とを受信する。例えば、通信部31は、熱ストレスにユーザの危険度の判定結果をユーザ端末21に送信する。
【0035】
制御部32は、CPU等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部32は、プログラムを実行することによって、情報取得部321、危険度判定部322及び通信制御部323の機能を有する。これらの機能の一部(例えば、情報取得部321及び危険度判定部322)は、予め危険度判定装置30に搭載されている必要はなく、追加のアプリケーションプログラムが危険度判定装置30にインストールされることで実現されてもよい。
【0036】
情報取得部321は、通信装置11から送信された環境温度の情報と、ユーザ端末21から送信された衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを取得する。情報取得部321は、取得した情報を記憶部33に保存する。例えば、情報取得部321は、取得した環境温度の情報を、環境温度情報331として記憶部33に保存する。例えば、情報取得部321は、取得した衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを、ユーザ環境情報332として記憶部33に保存する。
【0037】
危険度判定部322は、記憶部33に保存されている環境温度情報331と、ユーザ環境情報332とに基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定する。
通信制御部323は、通信部31を制御する。例えば、通信制御部323は、通信部31を制御して、判定結果をユーザ端末21に送信させる。
【0038】
記憶部33は、環境温度情報331及びユーザ環境情報332を記憶する。環境温度情報331は、各環境温度センサ10によって測定された環境温度の情報を含む。環境温度情報331は、図4に示す環境温度テーブルとして記憶部33に記憶されてもよい。ユーザ環境情報332は、温湿度センサ20によって測定された衣服内部の温度及び湿度の情報を含む。ユーザ環境情報332は、図5に示すユーザ環境情報テーブルとして記憶部33に記憶されてもよい。記憶部33は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。
【0039】
図4は、本実施形態における環境温度テーブルの一具体例を示す図である。
環境温度テーブルは、センサID、場所、日時及び環境温度の各値が対応付けられた複数のレコードで構成される。例えば、環境温度テーブルは、環境温度センサ10の数分のレコードで構成される。センサIDは、環境温度センサ10を識別するための識別情報を表す。場所は、環境温度センサ10が設置されている位置を表す。例えば、場所は、緯度経度で表されてもよいし、所定の範囲で表されてもよい。日時は、環境温度センサ10によって環境温度が測定された日時を表す。環境温度は、環境温度センサ10によって測定されたWBGTを表す。
【0040】
図5は、本実施形態におけるユーザ環境情報テーブルの一具体例を示す図である。
ユーザ環境情報テーブルは、ユーザID、ユーザ端末情報、日時、温度及び衣服内湿度の各値が対応付けられた複数のレコードで構成される。例えば、ユーザ環境情報テーブルは、ユーザの数分のレコードで構成される。ユーザIDは、ユーザ端末21のユーザを識別するための識別情報を表す。ユーザ端末情報は、ユーザ端末21に関する情報を表す。例えば、ユーザ端末情報は、ユーザ端末21に割り当てられているアドレスの情報(IPアドレスやMACアドレス)や、ユーザ端末21の位置情報等である。日時は、温湿度センサ20によって衣服内部の温度及び湿度が測定された日時を表す。衣服内温度は、温湿度センサ20によって衣服内部の温度を表す。衣服内湿度は、温湿度センサ20によって衣服内部の湿度を表す。
【0041】
図6は、本実施形態における危険度判定システム100の処理の流れを示すシーケンス図である。
環境温度センサ10は、環境温度を測定する(ステップS101)。例えば、環境温度センサ10は、予め設定されたタイミングで環境温度を測定する。環境温度センサ10は、環境温度を測定する度に、測定した環境温度の情報を通信装置11に送信する(ステップS102)。なお、環境温度センサ10は、環境温度を測定した日時の情報を環境温度の情報に含めて通信装置11に送信する。通信装置11は、環境温度センサ10から送信された環境温度の情報を取得する(ステップS103)。通信装置11は、取得した環境温度の情報を、ネットワーク40を介して危険度判定装置30に送信する(ステップS104)。
【0042】
危険度判定装置30の通信部31は、通信装置11から送信された環境温度の情報を受信する。情報取得部321は、通信部31によって受信された環境温度の情報を取得する。情報取得部321は、取得した環境温度の情報を環境温度テーブルに記憶する。この際、情報取得部321は、環境温度の送信元である環境温度センサ10のセンサIDに対応するレコードが環境温度テーブルに存在する場合には、環境温度の情報を時系列順に環境温度テーブルに記憶する。一方で、情報取得部321は、環境温度の送信元である環境温度センサ10のセンサIDに対応するレコードが環境温度テーブルに存在しない場合には、新たにレコードを作成して環境温度の情報を環境温度テーブルに記憶する。この処理が繰り返し実行されることによって、環境温度テーブルには1つの環境温度センサ10から複数の環境温度の情報が登録される。また、環境温度センサ10が複数ある場合には、環境温度センサ10毎に測定された環境温度の情報が環境温度テーブルに登録される。
【0043】
温湿度センサ20は、衣服内部の温度及び湿度を測定する(ステップS105)。例えば、温湿度センサ20は、予め設定されたタイミングで衣服内部の温度及び湿度を測定する。温湿度センサ20は、衣服内部の温度及び湿度を測定する度に、測定した衣服内部の温度及び湿度の情報をユーザ端末21に送信する(ステップS106)。なお、温湿度センサ20は、衣服内部の温度及び湿度を測定した日時の情報を衣服内部の温度及び湿度の情報に含めてユーザ端末21に送信する。ユーザ端末21のセンサ情報取得部251は、ユーザ端末21から送信された衣服内部の温度及び湿度の情報を取得する(ステップS107)。また、位置情報取得部252は、ユーザ端末21の位置情報を取得する(ステップS108)。例えば、位置情報取得部252は、予め設定されたタイミングでユーザ端末21の位置情報を取得する。
【0044】
通信制御部253は、通信部22を制御して、センサ情報取得部251によって取得された衣服内部の温度及び湿度の情報と、位置情報取得部252によって取得されたユーザ端末21の位置情報とを危険度判定装置30に送信させる。通信部22は、通信制御部253の制御に従って、衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを危険度判定装置30に送信する(ステップS109)。
【0045】
危険度判定装置30の通信部31は、ユーザ端末21から送信された衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを受信する。情報取得部321は、通信部31によって受信された衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを取得する。情報取得部321は、取得した衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とをユーザ環境情報テーブルに記憶する。この際、情報取得部321は、衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報との送信元であるユーザ端末21のユーザIDに対応するレコードがユーザ環境情報テーブルに存在する場合には、衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを時系列順にユーザ環境情報テーブルに記憶する。一方で、情報取得部321は、衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報との送信元であるユーザ端末21のユーザIDに対応するレコードがユーザ環境情報テーブルに存在しない場合には、新たにレコードを作成して衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とをユーザ環境情報テーブルに記憶する。この処理が繰り返し実行されることによって、ユーザ環境情報テーブルには1つのユーザ端末21から複数の衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とが登録される。また、ユーザ端末21が複数ある場合には、ユーザ端末21毎に送信された衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とがユーザ環境情報テーブルに登録される。
【0046】
危険度判定部322は、所定のタイミングで危険度判定処理を行う(ステップS110)。所定のタイミングは、予め設定されたタイミングであってもよいし、ユーザ端末21から衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とが受信されたタイミングであってもよいし、ユーザ端末21から実行指示が受信されたタイミングであってもよい。危険度判定処理は、熱ストレスによるユーザの危険度を判定する処理である。危険度判定処理の具体的な処理については後述する。危険度判定部322は、判定結果を通信制御部323に出力する。通信制御部323は、通信部31を制御して、危険度判定部322から出力された判定結果をユーザ端末21に送信させる。通信部31は、通信制御部323の制御に従って、判定結果をユーザ端末21に送信する(ステップS111)。
【0047】
ユーザ端末21の通信部22は、危険度判定装置30から送信された判定結果を受信する。通信制御部253は、通信部22によって受信された判定結果を記憶部26に記憶させる。表示制御部254は、表示部24を制御して、記憶部26に保存されている判定結果261のうち選択された判定結果を表示部24に表示させる。表示部24は、表示制御部254の制御に従って判定結果を表示する(ステップS112)。具体的には、表示部24は、判定結果に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を異なる態様で表示する。例えば、ユーザの危険度を点滅の色や速さの組み合わせで表示してもよい。ここで、一例をあげて説明する。熱ストレスの可能性が低いことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、青色を点滅させないで表示させる。一方、熱ストレスの可能性が高いことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、赤色を点滅させて表示させる。このように、表示部24は、表示制御部254の制御に従って、判定結果を異なる態様で表示する。
【0048】
熱ストレスの危険度が3段階以上で判定される場合、すなわち熱ストレスの可能性が「高い(要注意)」、「低い」、「限りなく低い」のように3段階以上で判定される場合、表示部24は以下のように表示してもよい。熱ストレスの可能性が限りなく低いことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、青色を点滅させないで表示させる。熱ストレスの可能性が低いことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、黄色を第1の速度で点滅させて表示させる。熱ストレスの可能性が高い(要注意)ことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、赤色を第2の速度で点滅させて表示させる。なお、点滅速度の関係は、第1の速度<第2の速度で表される。すなわち、熱ストレスの可能性が高い(要注意)場合には、最も早く点滅が繰り返される。このように、表示部24は、表示制御部254の制御に従って、判定結果を異なる態様で表示する。なお、危険度の判定結果の表示方法は、これに限定されない。危険度の判定結果をユーザに通知することができればどのよう表示方法であってもよい。例えば、表示部24は、危険度の判定結果を、文字で表示してもよいし、アイコンの大きさや形で表示してもよい。表示制御部254は、判定結果に応じて、同じの色を点滅の速度を変えて表示させてもよい。例えば、熱ストレスの可能性が限りなく低いことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、青色を第1の速度で点滅させて表示させる。熱ストレスの可能性が低いことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、青色を第2の速度で点滅させて表示させる。熱ストレスの可能性が高い(要注意)ことを判定結果が示している場合、表示制御部254は表示部24を制御して、青色を第3の速度で点滅させて表示させる。なお、点滅速度の関係は、第1の速度<第2の速度<第3の速度で表される。
【0049】
図7は、本実施形態における危険度判定装置30による危険度判定処理の流れを示すフローチャートである。なお、図7では、ユーザ端末21から衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とが受信されたタイミングで実行される場合を例に説明する。
危険度判定部322は、記憶部33に記憶されている各種情報を読み出す(ステップS201)。具体的には、危険度判定部322は、記憶部33に記憶されている複数の衣服内部の温度及び湿度の情報と、ユーザ端末21の位置情報とを記憶部33から読み出す。次に、危険度判定部322は、読み出したユーザ端末21の位置情報のうち最新の位置情報に基づいて、ユーザ端末21の最も近くであって、最新の環境温度の情報を環境温度テーブルから読み出す。危険度判定部322は、読み出した環境温度と、第1の温度とを比較して、環境温度が、第1の温度以上であるか否かを判定する(ステップS202)。第1の温度は、環境温度に基づいて熱ストレスによるユーザの危険度を判定するための基準となる温度である。第1の温度は、例えば28度である。環境温度が第1の温度以上(第1の温度≦環境温度)である場合(ステップS202-YES)、危険度判定部322は熱ストレスによるユーザの危険性ありと判定する(ステップS203)。この場合、危険度判定部322は、環境温度に応じて、熱ストレスによるユーザの危険度を複数段階(熱ストレスの可能性がより高い、高い)で判定してもよい。
【0050】
一方、環境温度が第1の温度未満(第1の温度>環境温度)である場合(ステップS202-NO)、危険度判定部322は読み出した複数の衣服内部の温度を用いて一次判定を行う(ステップS204)。その後、危険度判定部322は、衣服内部の湿度を用いて二次判定を行う(ステップS205)。この二次判定の結果が表示部24に表示される。危険度判定部322は、二次判定の結果を3段階以上で判定してもよい。以下、一次判定及び二次判定の処理について具体的に説明する。なお、以下の説明では、環境温度をW、衣服内部の温度をT、衣服内部の湿度をHと記載する場合もある。危険度判定部322は、一次判定を実行する場合に以下の2つのパターンのいずれかの条件に基づいて判定する。
条件1:第1の温度>環境温度の場合で、かつ、衣服内部の温度Tが一定の場合
条件2:第1の温度>環境温度の場合でかつ、環境温度Wが一定の場合
なお、条件1及び2における一定は、所定の期間の間、値が同じ又は略同じであることを意味する。すなわち、条件1及び2における一定は、所定の期間の間、値が必ずしも同じである必要はなく、許容できる範囲の増減は含むことを意味する。
【0051】
まず条件1の場合の処理について説明する。
危険度判定部322は、時刻t0→t1についてΔt=T-Wの値が増加する場合には、熱ストレスの可能性は限りなく低いと一次判定する。このように、Δtが増加するのは環境温度Wの値が小さくなる時である。すなわち、環境温度の値が低くなるため、熱ストレスのリスクが低くなるためである。
一方で、危険度判定部322は、時刻t0→t1についてΔt=T-Wの値が減少する場合には、熱ストレスの可能性は低いと一次判定する。これは、Δtが減少しても環境温度Wが第1の温度以下のため、熱ストレスの可能性は低いと想定されるためである。
【0052】
危険度判定部322は、条件1における一次判定の結果と、衣服内湿度とに基づいて二次判定を行う。具体的には、危険度判定部322は、条件1における一次判定の結果を踏まえて、衣服内部の湿度Hについて、第1の湿度(例えば、60%)≦Hの場合、人は不快と感じるため、熱ストレスの可能性が高い(要注意)と判定する。
一方で、危険度判定部322は、条件1における一次判定の結果を踏まえて、衣服内部の湿度Hについて、H≦第1の湿度(例えば、60%)の場合、人は快適と感じるため、熱ストレスの可能性は低いと判定する。
【0053】
次に条件2の場合の処理について説明する。
危険度判定部322は、時刻t0→t1についてΔt=T-Wの値が増加する場合には、熱ストレスの可能性は高いと一次判定する。このように、Δtが増加するのは衣服内部の温度Tの値が大きくなる時である。これは、本来一定であるはずの衣服内部の温度が上昇傾向にあるため、熱ストレスの可能性が高くなることが想定されるためである。
一方で、危険度判定部322は、時刻t0→t1についてΔt=T-Wの値が減少する場合には、熱ストレスの可能性は低いと一次判定する。これは、Δtが減少する=衣服内部の温度Tの値が上昇しているわけではないため、熱ストレスの可能性は低いと想定されるためである。
【0054】
危険度判定部322は、条件2における一次判定の結果と、衣服内部の湿度とに基づいて二次判定を行う。具体的には、危険度判定部322は、条件2における一次判定の結果を踏まえて、衣服内部の湿度Hについて、第1の湿度(例えば、60%)≦Hの場合、人は不快と感じるため、熱ストレスの可能性が高い(要注意)と判定する。
一方で、危険度判定部322は、条件2における一次判定の結果のうちΔt=T-Wの値が減少する場合については、衣服部の湿度Hについて、H≦第1の湿度(例えば、60%)の場合、人は快適と感じるため、熱ストレスの可能性は低いと判定する。なお、Δt=T-Wの値が増加する場合には、快適で合っても衣服内部の温度Tの値が上昇しているため、何らかの体調不良を起こしている可能性があるので要注意である。
【0055】
以上のように構成された危険度判定システム100によれば、熱中症を始めとする熱ストレスによるユーザの危険度を簡便に判定することが可能となる。具体的には、危険度判定装置30は、ユーザがいる環境の温度である環境温度の情報の他に、ユーザの衣服内部の温度及び湿度の情報を加味して、熱ストレスによるユーザの危険度を判定している。環境温度の情報、ユーザの衣服内部の温度及び湿度の情報は、センサにより取得できる。このような判定を行うことによって、環境温度が低い場合であっても、衣服内部の温度及び湿度が高いような人の熱ストレスによるユーザの危険度も判定することができる。すなわち、WBGTの情報のみでは熱ストレスの可能性が高い人であるか否かを判定することができない人物においても、熱ストレスによるユーザの危険度を判定することができる。そのため、熱中症を始めとする熱ストレスによるユーザの危険度を簡便に判定することが可能となる。
【0056】
(変形例)
危険度判定部322は、環境温度、衣服内部の温度及び湿度に加えて、ユーザの体調に関する情報を加味して、熱ストレスによるユーザの危険度を判定してもよい。ユーザの体調に関する情報は、ユーザの体調に影響を与えうる事項に関する情報であり、例えば食事の有無、睡眠の質、風邪や下痢等の健康状態、水分摂取の有無、衣服の種類(Tシャツ、パーカー等)、衣服の素材(綿、ポリエステル等)、着衣枚数等である。このように構成される場合、危険度判定装置30の情報取得部321は、ユーザの体調に関する情報をユーザ端末21から取得する。情報取得部321は、取得したユーザの体調に関する情報をユーザ環境情報テーブルに記憶する。ユーザ端末21は、ユーザが操作部23を介してユーザ端末21に入力したユーザの体調に関する情報を危険度判定装置30に送信する。
【0057】
危険度判定部322は、環境温度、衣服内部の温度及び湿度に加えて、ユーザの生体情報を加味して、熱ストレスによるユーザの危険度を判定してもよい。ユーザの生体情報は、ユーザの生体に関する情報であり、例えばユーザの心拍数、体温、音声の出力レベル、血圧、脈拍等である。このように構成される場合、危険度判定装置30の情報取得部321は、ユーザの生体情報をユーザ端末21から取得する。情報取得部321は、取得した生体情報をユーザ環境情報テーブルに記憶する。ユーザ端末21のセンサ情報取得部251は、ユーザが身に付ける生体センサから生体情報を取得し、取得した生体情報を、通信部22を介して危険度判定装置30に送信する。
【0058】
上述した実施形態におけるユーザ端末21及び危険度判定装置30をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0059】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10…環境温度センサ, 11…通信装置, 20…温湿度センサ, 21…ユーザ端末, 22…通信部, 23…操作部, 24…表示部, 25…制御部, 26…記憶部, 30…危険度判定装置, 31…通信部, 32…制御部, 33…記憶部, 251…センサ情報取得部, 252…位置情報取得部, 253…通信制御部, 254…表示制御部, 321…情報取得部, 322…危険度判定部, 323…通信制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7