IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DICデコール株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-建築部材、框及び被覆シート。 図1
  • 特許-建築部材、框及び被覆シート。 図2
  • 特許-建築部材、框及び被覆シート。 図3
  • 特許-建築部材、框及び被覆シート。 図4
  • 特許-建築部材、框及び被覆シート。 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】建築部材、框及び被覆シート。
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/00 20060101AFI20240226BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20240226BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240226BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240226BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240226BHJP
   B27D 5/00 20060101ALI20240226BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20240226BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
E04F19/00 B
B32B27/10
B32B27/32 Z
B32B29/00
B32B7/022
B27D5/00
B27M3/00 N
E04F13/08 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019203959
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021075919
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】392036821
【氏名又は名称】DICデコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】濱野 強
(72)【発明者】
【氏名】久保 健俊
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕之
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-099402(JP,A)
【文献】特開2002-106161(JP,A)
【文献】特開平09-239941(JP,A)
【文献】特開2000-202810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 17/00-19/10
E04F 13/00-13/30
B32B 1/00-43/00
B27D 5/00
B27M 1/00- 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一の平面部、第二の平面部及び前記二つの平面部から形成される角部を有する部材と、前記角部を跨ぐ領域を被覆する被覆シートとからなり、
前記被覆シートのガーレー剛度が10mgf以上1000mgf以下、透湿度が200g/m2・24h以下であり、
温度25℃、相対湿度30%RH環境に静置し168時間後の外観においてシワ又はふくれが発生しないことを特徴とする建築部材。
【請求項2】
前記被覆シートの総厚みが300μm以下である請求項1に記載の建築部材。
【請求項3】
前記被覆シートが、第一の紙層、ポリエチレン系接着性樹脂層及び第二の紙層が順に積層された多層構成を有する請求項1又は2に記載の建築部材。
【請求項4】
前記被覆シートが、前記第一の紙層上にさらに加飾層を有する請求項3に記載の建築部材。
【請求項5】
前記被覆シートで被覆される部材が木質系部材である請求項1~4のいずれかに記載の建築部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の建築部材からなることを特徴とする框。
【請求項7】
少なくとも第一の平面部、第二の平面部及び前記二つの平面部から形成される角部を有する部材の前記角部を跨ぐ領域を被覆する被覆シートであって、
前記被覆シートのガーレー剛度が10mgf以上1000mgf以下、透湿度が200g/m2・24h以下であり、
温度25℃、相対湿度30%RH環境に静置し168時間後の外観においてシワ又はふくれが発生しないことを特徴とする被覆シート。
【請求項8】
総厚みが300μm以下である請求項7に記載の被覆シート。
【請求項9】
第一の紙層、ポリエチレン系接着性樹脂層及び第二の紙層が順に積層された多層構成を
有する請求項7又は8のいずれかに記載の被覆シート。
【請求項10】
前記第一の紙層上にさらに加飾層を有する請求項9に記載の被覆シート。
【請求項11】
前記部材が、木質系部材である請求項7~10のいずれかに記載の被覆シート。
【請求項12】
前記部材が框である請求項7~11のいずれかに記載の被覆シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆シートで被覆された際にもしわ等の外観不良を生じない建築部材及び框、当該建築部材に使用する被覆シートに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の壁面、建具、押入れ棚の框や上がり框、システムキッチンや据付家具等には、木質部材や樹脂部材等の芯材と、当該芯材を加飾するための表面部材とから構成された建築部材が使用されている。このような建築部材としては、例えば、表面部材として樹脂成型板を使用したものが開示されている(特許文献1参照)。樹脂成型板を使用した建築部材は、表面硬度を確保しやすく、表面平滑性も得やすいため各種用途で使用されている。しかし、当該構成の建築部材は、樹脂成型板自体が高価であると共に、樹脂成型板の加工には大掛かりな装置も必要となるため、より安価で製造工程の簡易な化粧シートを使用した建築部材も提案されている(特許文献2参照)。当該化粧シートを使用した建築部材は、化粧シートが樹脂成型板に比べて安価であり、また、芯材の形状に応じて特別な加工を施さなくても簡易に芯材表面を被覆できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-358873号公報
【文献】特開2016-05661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の化粧シートを使用した建築部材は、安価かつ製造工程も簡易であるが、建築部材は長期にわたって使用されることから、経年の温度変化や湿度変化等による芯材の膨張や収縮により、シートの浮きやシート表面のしわ等が発生し、外観不良が生じる場合があった。特に、2面以上の平面部と、当該平面部から構成される角部を有する部材において、当該角部を跨ぐ領域をシートで被覆した構成の建築部材においては、当該部材の膨張や収縮、さらには部材からの水蒸気や気泡の発生等による外観不良が顕著に生じる場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、安価かつ製造工程の簡易な被覆シートを使用しながらも、シートの浮きやしわ等による外観不良の生じにくい建築部材、框及びこれら建築部材に使用した際に外観不良の生じにくい被覆シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも第一の平面部、第二の平面部及び前記二つの平面部から形成される角部を有する部材と、前記角部を跨ぐ領域を被覆する被覆シートとからなり、前記被覆シートのガーレー剛度が10mgf以上、透湿度が200g/m・24h以下である建築部材により、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の建築部材は、安価かつ製造工程の簡易な被覆シートを使用しながらも、シートの浮きやしわ等による外観不良が生じにくいことから、各種建築部材に好適に適用できる。特に、部材の二面が視認されやすく、被覆シートのラッピングによる外観不良の生じやすい框として特に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の建築部材の被覆形態の一例を示す断面図である。
図2】本発明の建築部材の被覆形態の一例を示す断面図である。
図3】本発明の建築部材の被覆形態の一例を示す断面図である。
図4】本発明の建築部材の被覆形態の一例を示す断面図である。
図5】本発明の建築部材の被覆形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の建築部材は、少なくとも第一の平面部、第二の平面部及び前記二つの平面部から形成される角部を有する部材と、前記角部を跨ぐ領域を被覆する被覆シートとからなり、前記被覆シートのガーレー剛度が10mgf以上、透湿度が200g/m・24h以下の建築部材である。
【0010】
本発明に使用する被覆シートは、ガーレー剛度が10mgf以上であり、透湿度が200g/m・24h以下の被覆シートである。当該被覆シートを使用することで、経年の温湿度変化に対してもシートの浮きやしわの発生を好適に抑制でき、外観不良の生じない建築部材を得ることができる。
【0011】
被覆シートのガーレー剛度は10mgf以上、好ましくは20mgf以上、より好ましくは50mgf以上、さらに好ましくは100mgf以上とすることで、被覆シートで被覆する部材の膨張や収縮、水蒸気や気泡の発生等を生じた際にも、被覆シート表面の変形を生じにくくでき、シートの浮きやしわの発生を好適に抑制できる。ガーレー剛度の上限としては、角部を跨ぐ領域への良好な被覆性や加工性等の観点から、1000mgf以下であることが好ましく、500mgf以下であることがより好ましく、300mgf以下であることがさらに好ましい。
【0012】
被覆シートの透湿度は200g/m・24h以下、好ましくは、50g/m・24h以下、より好ましくは30g/m・24h以下、さらに好ましくは20g/m・24h以下とすることで、湿熱環境変化に際しても、被覆シートで被覆する部材の水分量の急激な変動を好適に抑制でき、シートの浮きやしわの発生を好適に抑制できる。透湿度の下限は特に制限されず、実質的に透湿しないものであってもよい。
【0013】
本発明に使用する被覆シートの厚みが特に制限されないが、ガーレー剛度や透湿度を上記好適な範囲に調整しやすく、また、好適な被覆性や加工性を得やすいことから、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明に使用する被覆シートを構成する基材としては、例えば、薄葉紙、普通紙、強化紙、樹脂含浸紙等の紙系基材、ポリプロピレンシート等のポリオレフィン系樹脂シート、ポリエチレンテレフタレートシート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートシート(PETGシート)、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンシート、アクリルニトリルブタジエンスチレンシート等の樹脂系基材などを好適に使用できる。また、これら基材は接着剤や接着性樹脂層等を介して積層して使用してもよい。
【0015】
これらのなかでも、紙系基材をポリオレフィン系接着性樹脂層を介して積層した積層構成(第一の紙層/ポリオレフィン系接着性樹脂層/第二の紙層)、ポリオレフィン系樹脂の単層又は積層シート等が被覆する際に柔軟性が適度で被覆加工がし易いため好ましい。
【0016】
本発明に使用する被覆シートは、建築部材として好適な意匠性を付与するために、表層に加飾層を有することが好ましい。当該加飾層は上記基材上に直接印刷して設けても、別途加飾が施されたシートを上記基材上に積層して設けてもよい。
【0017】
また、加飾層を保護するために、加飾層上に表面保護層を設けることも好ましい。当該表面保護層としては、紫外線硬化性樹脂を塗布、硬化して得られるUVコート層や、透明樹脂シートをラミネートして得られるラミネート層等を好ましく使用できる。
【0018】
本発明の建築部材は、少なくとも第一の平面部、第二の平面部及び前記二つの平面部から形成される角部を有する部材と、前記角部を跨ぐ領域を被覆する被覆シートとを構成要件とする建築部材である。当該被覆シートで被覆される部材としては、例えば、壁面、建具、押入れ棚の框や上がり框、システムキッチンや据付家具等を構成する化粧部材中の板材や柱材等の芯材が例として挙げられる。
【0019】
被覆シートで被覆される部材は、木質系の部材であっても樹脂製の部材であってもよいが、木質系部材は湿熱環境の影響を受けやすく、膨張や収縮が生じやすいことから、本発明の構成による外観不良抑制効果を特に得やすくなる。
【0020】
なかでも、芯材表面積の50%以上が一枚の被覆シートで被覆される建築部材は、芯材の膨張や収縮、さらには芯材からの水蒸気や気泡の発生等による外観不良が生じやすく、特に木質系材料が積層されている構成であればさらに外観不良が生じやすく、積層の外面が中密度繊維板(MDF)であり、中央の積層部分がMDFとは異なる材料である木質単板、パーテクルボード等で構成されている場合はより外観不良が生じやすいことから、本発明の構成による外観不良抑制効果を特に得やすくなる。被覆面積が多いほど当該効果は顕著に得られやすくなることから、芯材表面積の60%以上が一枚の被覆シートで被覆される建築部材であることがより好ましく、80%以上が一枚の被覆シートで被覆される建築部材であることがさらに好ましい。
【0021】
このような建築部材としては、押入れ棚の框や上がり框等の框、据付家具等の柱などが例示でき、本発明の構成は、好適な外観が求められる框用途に特に好適に適用できる。框の好適な構成例としては、例えば、図1(a)に示したような第一の平面部、第二の平面部及び第3の平面部を有し、第一の平面部と第二の平面部とから形成される第一の角部及び第二の平面部と第三の平面部から構成される第二の角部を有する部材において、第一の平面部、第一の角部、第二の平面部、第二の角部、第三の平面部を一枚の被覆シートで被覆された構成が例示できる。当該構成における第一の平面部、第二の平面部及び第三の平面部とは、直方体形状の建築部材における長さ方向と高さ方向から形成される面のうちの一面を正面とした際の正面及び裏面が、第一の平面部及び第三の平面部であり、上面又は下面の一面(図1(a)では下面)が第二の平面部である。なお、当該構成において、左右側面は、被覆シートで被覆されていても被覆されていなくてもよいが、建築部材が框である場合には、被覆されていないことが好ましい。また、図1(a)の構成の変形例として、建築部材の上面に切り欠きが設けられた図1(b)の構成を好ましく例示できる。当該切り欠きが設けられた構成においては、長さ方向と高さ方向から形成される面のうち面積が大きくなる面を、第一の平面部とすればよい。
【0022】
図1(a)、(b)の構成の変形例として、図2図5の構成例を好ましく例示できる。図2(a)、(b)の構成例は、芯材の全周を一枚の被覆シートで被覆した構成である。図3(a)、(b)の構成例は、第一の平面部と第二の平面部から形成される角部及び第二の平面部と第三の平面部から形成される角部を、面取りされた角部とした構成である。当該構成例のように、本発明における各角部は面取りされた角部であってよい。図4の構成例は、上面部の全面ではなく、一部が被覆され、一部が被覆されていない構成の例である。当該構成例のように、平面部や、平面に切り欠きを設けて形成された各面部の被覆形態は、その全面が被覆されている被覆形態であっても、一部が被覆されていない被覆形態であってもよい。図5の構成例は、上面部に凸状の突出部が生じるよう切り欠きが設けられた構成例である。これら構成例においても、上記と同様に、左右側面部は、被覆シートで被覆されていても被覆されていなくてもよい。
【0023】
芯材を被覆シートで被覆する際には、接着剤により簡易に被覆できる。当該接着剤としては、ウレタン系、ウレタン系反応型ホットメルト型、ゴム系、酢酸ビニル系エマルジョン、α-オレフィン系エマルジョン、ビニル共重合樹脂エマルジョン、アクリル系エマルジョン、エチレン化酢ビ系エマルジョン、水性ビニルウレタン系エマルジョンがある。
【実施例
【0024】
(実施例1)
強化紙(坪量30g/m、以下、強化紙(1)と称する。)2枚をウレタン系接着剤で積層し、白色抽象柄を付与した被覆シート(1)を形成した。得られた被覆シート(1)をカッティングし、平行合板(LVL)の表裏面に5.5mm厚の中密度繊維板(MDF)を積層した木質部材(高さ60mm×長さ250mm×厚さ24mmの直方体形状)のを、水性ビニルウレタン系エマルジョン接着剤を用いて被覆シート(1)で被覆して框部材(1)を形成した。なお、当該構成は、図1(a)に相当する構成である。
【0025】
(実施例2)
強化紙(1)2枚を、接着性ポリエチレン樹脂を介して積層し、白色抽象柄を付与した被覆シート(2)を形成した。被覆シート(1)にかえて、被覆シート(2)を使用した以外は実施例1と同様にして框部材(2)を形成した。
【0026】
(実施例3)
オレフィンシート積層して0.12μm厚のオレフィンダブリングシートを形成し、白色木目柄を付与して被覆シート(3)を形成した。被覆シート(1)にかえて、被覆シート(3)を使用した以外は実施例1と同様にして框部材(3)を形成した。
【0027】
(実施例4)
被覆シート(1)にかえて、0.1μm厚の白色OPPシートを被覆シート(4)として使用した以外は実施例1と同様にして框部材(4)を形成した。
【0028】
(比較例1)
強化紙(1)に白色抽象柄を付与した被覆シート(H1)を形成した。被覆シート(1)にかえて、被覆シート(H1)を使用した以外は実施例1と同様にして框部材(H1)を形成した。
(比較例2)
被覆シート(1)にかえて、0.03μm厚の透明CPPシートを被覆シート(H2)として使用した以外は実施例1と同様にして框部材(H2)を形成した。
【0029】
上記実施例及び比較例の被覆シート及び框部材について以下の評価を行った。得られた結果は下表のとおりである。
【0030】
<透湿度>
各種シートを3cm×3cmに切り出した試料を用い、透湿面積が4cmであること以外はJIS Z 0208(防湿包装材料の透湿度測定方法(カップ法))に準じた方法で、該規格の条件Bに相当する40℃、相対湿度90%の条件下で、水蒸気透過率の測定を行った。
【0031】
<ガーレー剛度>
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.40に準じてガーレー剛度を測定した。
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.40に準じてガーレー式柔軟度試験機(株式会社大栄科学精器製作所製「ガーレー剛軟度試験機」Japan Tappi No.40)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の条件で測定し、8回の測定値の平均をガーレー剛度とした。
【0032】
<外観評価>
実施例及び比較例にて形成した框部材を、温度25℃、相対湿度30%RH環境に静置し、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後、168時間後の外観を確認した。評価基準は下記のとおりである。
5 異常なし
4 直視で木口表面が小さく面あれしていることを確認できる
3 直視で木口表面がやや大きく面あれしていることを確認できる
2 直視で木口表面が大きく面あれしていることを確認できる
1 シワ又はふくれが発生している
【0033】
【表1】
【符号の説明】
【0034】
1 部材
2 被覆シート
図1
図2
図3
図4
図5