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特許7442303易引裂き性包装材料およびその製造方法、包装用袋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】易引裂き性包装材料およびその製造方法、包装用袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240226BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/32 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019211799
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021080017
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 洋
(72)【発明者】
【氏名】村井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中野 辰朗
(72)【発明者】
【氏名】三谷 陽平
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123170(JP,A)
【文献】特開2019-131211(JP,A)
【文献】特開2019-123171(JP,A)
【文献】特開2016-107592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷加工が施された易裂性基材フィルム層、アンカーコート層、シーラント層を順に備える易引裂き性包装材料において、
前記易裂性基材フィルム層と前記アンカーコート層とが隣接、または、前記易引裂性基材フィルム層に設けられた印刷層と前記アンカーコート層とが隣接しており、
前記アンカーコート層が酸変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることを特徴とする易引裂き性包装材料。
【請求項2】
傷加工が施された易裂性基材フィルム層、アンカーコート層、接着性樹脂層、シーラント層を順に備える易引裂き性包装材料において、
前記易裂性基材フィルム層と前記アンカーコート層とが隣接、または、前記易引裂性基材フィルム層に設けられた印刷層と前記アンカーコート層とが隣接しており、
前記アンカーコート層が酸変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることを特徴とする易引裂き性包装材料。
【請求項3】
前記接着性樹脂層と前記シーラント層との間に、バリア層を備えることを特徴とする請求項2記載の易引裂き性包装材料。
【請求項4】
前記傷加工により、前記易裂性基材フィルム層に複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の易引裂き性包装材料。
【請求項5】
JIS K7128-1:1998のトラウザー引裂法に準拠し、試験速度200mm/minにて測定される包装材料の幅方向の引裂力をFTD(N)、長さ方向の引裂力をFMD(N)とするとき、以下の式(1)(2)(3)の全てを満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の易引裂き性包装材料。
式(1):FTD≦1.5
式(2):FMD≦1.5
式(3):|FTD-FMD|≦0.4
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の易引裂き性包装材料の製造方法において、
易裂性基材フィルム上に、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むアンカーコート剤を塗布・乾燥してアンカーコート層を形成し、該アンカーコート層上にシーラント層用熱可塑性樹脂又は接着性樹脂層用熱可塑性樹脂を溶融状態で押出す押出ラミネート工程を備えることを特徴とする易引裂き性包装材料の製造方法。
【請求項7】
前記アンカーコート剤が、酸変性ポリオレフィン系樹脂が水に分散した水性分散液であることを特徴とする請求項記載の易引裂き性包装材料の製造方法。
【請求項8】
易引裂き性包装材料をロール状に巻き取った後に、巻き直し工程を備えないことを特徴とする請求項又は記載の易引裂き性包装材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかに記載の易引裂き性包装材料を製袋してなる包装用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易裂性基材フィルム層とシーラント層とを備える易引裂き性包装材料に関する。また、該包装材料の製造方法、該包装材料を用いた包装用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品や医薬品、化粧品、雑貨等の包装に用いられる袋にも、ユニバーサルデザインの考え方が取り入れられ、弱い力でも開封できる性能が求められている。特許文献1においては、易裂性基材フィルム層(貫通キズ加工を施した基材フィルム層)/接着性樹脂層/印刷インキ層/バリアコート剤層/接着剤層/シーラント層を形成してなる易引裂き性(易カット性)包装材料が提案されている。しかしながら後述する比較例にて示すように、傷加工を施した基材フィルムを採用し、これにシーラント層を積層して包装材料としたものであっても、十分な易引裂き性を備えないことがあった。
【0003】
また、貫通孔を有する基材フィルムと他のフィルムとをドライラミネートや押出ラミネート等によって積層した場合、基材フィルムに形成された貫通孔から接着剤やアンカーコート剤が反対面に染み出る、いわゆる「裏抜け」という現象が発生することがあった。裏抜けが発生した包装材料をロール状に巻き取って保管すると、裏抜けした接着剤やアンカーコート剤によって隣接する包装材料同士が接着し、使用時にロール状に巻き取られた包装材料をスムーズに繰り出せないことがあった。
特許文献2は、微細貫通孔が形成された基材フィルムを用いた易引裂き性(易引裂性)包装材料の製造方法に関する発明である。ロール状に巻き取ったフィルムロールを15℃以上35℃未満の温度で12時間以上エージングよりすることにより、易引裂き性包装材料が巻き締まることを防止し、裏抜けした接着剤やアンカーコート剤によって隣接する包装材料同士が接着することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-273610号公報
【文献】特開2019-131211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、易裂性基材フィルム層を備える易引裂き性包装材料において、フィルムの幅方向にも、長さ方向にも、優れた易引裂き性を示す包装材料の提供を課題とする。
併せて、基材フィルム層の反対面にアンカーコート剤が裏抜けした場合であっても、ロール状に巻き取って保管している間に、隣接する包装材料同士が接着してしまうことのない易引裂き性包装材料の提供を課題とする。
更に、当該包装材料の製造方法、当該包装材料を用いた包装用袋の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題を解決するための手段として、易裂性基材フィルム層、アンカーコート層、シーラント層を順に備える易引裂き性包装材料において、前記アンカーコート層が酸変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることを特徴とする易引裂き性包装材料が提供される。
また、易裂性基材フィルム層、アンカーコート層、接着性樹脂層、シーラント層を順に備える易引裂き性包装材料において、前記アンカーコート層が酸変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることを特徴とする易引裂き性包装材料が提供される。
更に、前記接着性樹脂層と前記シーラント層との間に、バリア層を備えることを特徴とする前記易引裂き性包装材料が提供される。
【0007】
更に、前記易裂性基材フィルム層が、傷加工が施された基材フィルム層であることを特徴とする前記易引裂き性包装材料が提供される。
更に、前記傷加工により、前記易裂性基材フィルム層に複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする易引裂き性包装材料が提供される。
更に、JIS K7128-1:1998のトラウザー引裂法に準拠し、試験速度200mm/minにて測定される包装材料の幅方向の引裂力をFTD(N)、長さ方向の引裂力をFMD(N)とするとき、以下の式(1)(2)(3)の全てを満たすことを特徴とする前記易引裂き性包装材料が提供される。
式(1):FTD≦1.5
式(2):FMD≦1.5
式(3):|FTD―FMD|≦0.4
【0008】
また、前記易引裂き性包装材料の製造方法において、易裂性基材フィルム上に、酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むアンカーコート剤を塗布・乾燥してアンカーコート層を形成し、該アンカーコート層上にシーラント層用熱可塑性樹脂又は接着性樹脂層用熱可塑性樹脂を溶融状態で押出す押出ラミネート工程を備えることを特徴とする易引裂き性包装材料の製造方法が提供される。
更に、前記アンカーコート剤が、酸変性ポリオレフィン系樹脂が水に分散した水性分散液であることを特徴とする前記易引裂き性包装材料の製造方法が提供される。
更に、易引裂き性包装材料をロール状に巻き取った後に、巻き直し工程を備えないことを特徴とする前記易引裂き性包装材料の製造方法が提供される。
併せて、前記易引裂き性包装材料を製袋してなる包装用袋が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、フィルムの幅方向にも、長さ方向にも、易引裂き性を示す包装材料を得ることができる。
また、本発明の易引裂き性包装材料は、傷加工部分から基材フィルム層の反対面にアンカーコート剤が裏抜けした場合であっても、包装材料をロール状に巻き取って保管している間に、裏抜けしたアンカーコート剤により隣接する包装材料同士が接着することがない。よって、ロール状に巻きとられた包装材料を、使用に際してスムーズに繰り出すことができる。
本発明の易引裂き性包装材料からなる包装用袋は所望の方向に簡単に引き裂いて開くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の易引裂き性包装材料の一実施形態を示す模式的断面図である。
図2】本発明の易引裂き性包装材料の別の実施形態を示す模式的断面図である。
図3】本発明の易引裂き性包装材料の別の実施形態を示す模式的断面図である。
図4】本発明の易引裂き性包装材料の製造方法の一例を示す説明図である。
図5】本発明の易引裂き性包装材料の製造方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において種々の実施形態をとることができる。
[易引裂き性包装材料]
本発明の易引裂き性包装材料は、幅方向の引裂力の値FTDと長さ方向の引裂力の値FMDがいずれも1.5N以下であることが望ましく、特に1.2N以下、更には1.0Nを下回っていることが好ましい。該値が1.5Nを超えると、力の弱い人が簡単に引き裂くことが難しくなる。また、FTDの値とFMDの値が似通っていると、包装材料を好きな方向に簡単に引き裂くことができる。よって、FTDとFMDの差の絶対値(=|FTD―FMD|)は小さいことが好ましく、0.4N以下、特に0.3N以下、更には0.1N以下であることが望ましい。
【0012】
本発明の易引裂き性包装材料は、少なくとも、易裂性基材フィルム層、アンカーコート層、シーラント層を順に備え、必要に応じ、接着性樹脂層やバリア層等を備える。
以下は、本発明の易引裂き性包装材料の層構成の一例である。
1)基材フィルム層/アンカーコート層/シーラント層
2)基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/シーラント層
3)基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層/アンカーコート層/シーラント層
4)基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層/アンカーコート層/接着性樹脂層/シーラント層
5)基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層/接着剤層/シーラント層
【0013】
[易裂性基材フィルム層]
本発明に用いられる基材フィルム層は、得られる包装材料に易引裂き性を付与する為に易裂性を備える。易裂性基材フィルムの引裂力は、易裂性の観点から、JIS K7128-1:1998のトラウザー引裂法に準拠し、試験速度200mm/minにて測定される値が1.5N以下であることが好ましく、1.0N以下であることが特に好ましく、0.8N以下であることが特に好ましい。また基材フィルムのハンドリング性を考慮すると、0.01N以上であることが好ましく、0.05N以上であることが好ましく、0.1N以上であることが特に好ましい。
【0014】
基材フィルムに易裂性を付与する方法は、特に限定されないが、例えば脂肪族ポリエステルや環状ポリオレフィン等の易裂性を奏し易い樹脂をフィルム状に製膜し、これを一軸あるいは二軸延伸する方法を例示することができる。
また、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等や、これらのフィルムを一軸又は二軸に延伸した延伸フィルム等に、傷加工を施す方法を例示することができる。
易裂性基材フィルム層の厚さは特に限定されないが、例えば10~100μmである。基材フィルムの厚さは10~60μmが好ましく、10~40μmがより好ましい。
【0015】
基材フィルム層に傷加工を施す場合、傷の大きさや密度は、得られる包装材料に易引裂き性を付与することができれば、特に限定されるものではなく、例えばフィルム全面に平均開口径0.1~100μm程度の貫通孔を1×10~3×10個/cm形成すればよい。平均開口径は0.5~50μmであることが好ましく、0.5~20μmであることがより好ましい。平均分布密度は、5×10~1×10個/cmであることが好ましく、1×10~5×10個/cmであることがより好ましい。
また、当該傷加工は基材フィルム層全面に施されていても、易引裂き性が必要となる所定の箇所のみであってもよい。しかしながら基材フィルム層全面に傷加工が施されていると、製袋する袋のサイズ変更が容易である。また得られる袋が、どこからでも易引裂き性を備えるものとなる。
【0016】
基材フィルム層に施される傷加工は、貫通孔であっても、未貫通孔であってもよい。本発明の易引裂き性包装材料は、傷加工が貫通孔によるものであり、該貫通孔からアンカーコート剤が裏抜けした場合であっても、隣接する包装材料同士が接着することがない。これは本発明において用いられるアンカーコート剤が、高温環境下においてのみ接着性を発揮する為と推察される。貫通孔から染み出したアンカーコート剤は、ロール状に巻き取られる際には、既に常温に近い状態になっているため、接着力を失っているものと思われる。よって、本発明は傷加工により基材フィルム層に貫通孔が形成されている場合に、特に有効である。
【0017】
また、基材フィルム層には必要に応じ印刷層を設けることができる。この場合、意匠性の観点から、基材フィルム層の少なくとも一方の面には、傷が入っていないことが望ましい。換言すれば貫通孔を備えないことが望ましい。傷が入っていない面に印刷を施すことにより、印刷面の意匠性が担保される。
尚、印刷層が易引裂き性包装材料の最表面にあると、擦れて剥がれる恐れがある。よって、印刷層は基材フィルム層のアンカーコート層側に在ることが望ましい。詳しくは、基材フィルム層/印刷層/アンカーコート層の順に配されることが望ましい。また印刷層は、基材フィルム層だけでなく、その他の層に設けることもできる。
【0018】
[アンカーコート層]
アンカーコート層は、易裂性基材フィルム層と、該層に積層される層(シーラント層や接着性樹脂層等)との接着性を高める層である。本発明は当該アンカーコート層が酸変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とすることを特徴とする。
従来、アンカーコート剤としてはポリウレンタン系のものが多く採用されているが、該アンカーコート剤を用いると、得られる包装材料の易引裂き性が低下する(裂けにくくなる)傾向にある。これはポリウレタン系のアンカーコート剤は凝集力が強いため、包装材料を固くする傾向にある為と推察する。
【0019】
一方、酸変性ポリオレフィン系のアンカーコート剤は、被着体との界面における分子間力により接着性を高める為、包装材料を固くすることがなく、基材フィルム層のもつ易裂性を阻害しない。酸変性ポリオレフィン系のアンカーコート剤の中でも、入手のしやすさと接着性を考慮すると、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。また本発明によると、包装材料の引裂き性の異方性も低減することが確認できた。
アンカーコート層の厚さは、0.05~3μmが好ましく、特に0.1μm~1μm、更には0.2~0.7μmが好ましい。上記範囲よりも薄いとアンカーコート層が不均質になり易く、上記範囲よりも厚いとアンカーコート層内にピンホール・ボイド等が発生し易い。
【0020】
[シーラント層]
シーラント層は、易引裂き性包装材料をヒートシールして製袋する為に必要な層であり、包装材料において基材フィルム層と反対側の表面に位置する。
該シーラント層には、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等を、1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。シーラント層の厚さは、用途に合わせて適宜設計すれば良く、特に制限されるものではないが、例えば、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましく、10~50μmであることが特に好ましい。シーラント層が上記範囲より薄い場合は、得られる袋のヒートシール強度が不足する恐れがある。また、上記範囲より厚い場合は引裂き性が悪くなる恐れがある。尚、シーラント層は単層構成でもよいが、例えば密度の異なる複数のポリエチレン樹脂層を備える多層構成であってもよい。
【0021】
[バリア層]
易引裂き性包装材料に、水蒸気や酸素等に対するバリア性を付与したい場合は、上述したアンカーコート層とシーラント層との間に、更にバリア層を設けるとよい。
バリア層としては、例えば、アルミニウム箔等の金属箔、熱可塑性樹脂フィルム上に酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物蒸着層を設けた金属酸化物蒸着フィルム、熱可塑性樹脂フィルム上にアルミニウム等の金属蒸着層を設けた金属蒸着フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のガスバリア性樹脂からなるフィルム、熱可塑性樹脂フィルム上にポリ塩化ビニリデン等を塗工したガスバリア性フィルム等、従来公知のものを特に限定なく採用することができる。バリア層の厚さは用途に合わせて適宜決定すれば良く、例えば、5~100μmである。バリア層の厚さは5~60μmが好ましく、5~30μmがより好ましい。尚、バリア層は、上述した金属箔やフィルムを単独で用いてもよいが、積層して用いてもよい。
【0022】
[接着性樹脂層]
接着性樹脂層は、基材フィルム層とバリア層や、バリア層とシーラント層等を適宜接着する為の樹脂層で、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂等を、1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、接着性樹脂層は、300℃を超える高温で被着体上に押出されることが望ましい。300℃を超えることで樹脂表面が活性化し、被着体との接着強度が高まる。
【0023】
[易引裂き性包装材料の製造方法]
次に、本発明の易引裂き性包装材料の製造方法について説明する。
図4は、基材フィルム41上にシーラント層用の熱可塑性樹脂43を押し出す、いわゆる「シングルラミネート法」による易引裂き性包装材料40の製造方法を示す説明図である。図4におけるMR1は易裂性基材フィルム41がロール状に巻き取られたもので、必要に応じ印刷が施されている。MR2は本発明の易引裂き性包装材料(基材フィルム層/アンカーコート層/シーラント層)がロール状に巻き取られたものである。
【0024】
図4の製造方法では、初めに、フィルムロールMR1から基材フィルム41を繰り出し、その表面に酸変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とするアンカーコート剤42を塗布する。これを乾燥炉DRに導き、例えば80~120℃でアンカーコート剤を乾燥し、基材フィルム41上にアンカーコート層を形成する。
次いで、該フィルム(基材フィルム層/アンカーコート層)を貼合ロールLRに供給し、押出機ERから押出されたシーラント層用の熱可塑性樹脂43と積層する。シーラント層用の熱可塑性樹脂43は、押出機から押し出された直後は溶融状態であるが、貼合ロールLRにて冷却固化されシーラント層となる。
【0025】
図5は、基材フィルム51とシーラントフィルム53の間に溶融状態の接着性樹脂層用の熱可塑性樹脂54を押出す、いわゆる「サンドラミネート法」による易引裂き性包装材料50の製造方法を示す説明図である。図5におけるMR2は本発明の易引裂き性包装材料(基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/シーラント層)がロール状に巻き取られたものであり、MR3は既に製膜されたシーラントフィルム53がロール状に巻き取られたものである。
【0026】
図5の製造方法では、図4と同様にして、基材フィルム層/アンカーコート層の積層フィルムを製造し、これを貼合ロールLRに供給する。この際に、シーラントフィルム53も貼合ロールLRに供給し、積層フィルムのアンカーコート層とシーラントフィルム53の間に、接着性樹脂層用の熱可塑性樹脂54を溶融状態で押し出す。溶融状態の接着性樹脂層用の熱可塑性樹脂54は貼合ロールLRにて冷却されて、接着性樹脂層となり、本発明の易引裂き性包装材料50が完成する。
【0027】
また図4に示すシングルラミネート法や図5に示すサンドラミネート法、更にはドライラミネート法を適宜組み合わせて、本発明の易引裂き性包装材料を製造することもできる。
例えば、基材フィルムとバリア層用フィルムをサンドラミネート法にて貼り合わせ、「基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層」の積層フィルムを製造した後、シングルラミネート法を用いて、該積層フィルムのバリア層上にアンカーコート剤を塗布し、シーラント層用熱可塑性樹脂を押出し、「基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層/アンカーコート層/シーラント層」を順に備える易引裂き性包装材料を製造することができる。シール強度を高める等の目的で、バリア層よりも内側(シーラント層側)の膜厚を大きくしたい場合は、サンドラミネート法にて、「基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層」の積層フィルムを製造した後、再度サンドラミネート法を用いて、「基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層/アンカーコート層/接着性樹脂層/シーラント層」を順に備える易引裂き性包装材料を得ることができる。更に、サンドラミネート法にて、「基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層」の積層フィルムを製造した後、ドライラミネート法を用いて「基材フィルム層/アンカーコート層/接着性樹脂層/バリア層/接着剤層/シーラント層」の易引裂き性包装材料を得ることもできる。但し、ドライラミネート法に用いられる接着剤は硬く、包装材料の易引裂き性を阻害する恐れがある。
【0028】
本発明に用いられるアンカーコート剤は、溶融樹脂と接するなどして、溶融状態になることにより強接着性を発揮するもので、反応系のアンカーコート剤ではない。よって、ラミネート後にエージング処理する必要がない。
【0029】
[アンカーコート剤の分散]
本発明で用いられるアンカーコート剤は、予め水に分散させて、酸変性ポリオレフィン系樹脂が分散した水性分散液の状態にしておくことが好ましい。アンカーコート剤に該水性分散液を用いることにより、包装用袋とした際の、耐内容物性が向上して、内容物による層間接着強度の低下を防ぎ、層間剥離を低減して、落袋強度の低下を防ぐことが出来る。また分散に際し、乳化剤を含まないことが好ましい。乳化剤などの不揮発性分がアンカーコート層に残存すると、接着性低下の原因となる恐れがある。
【0030】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、前記水性分散液中で、微粒子状態で分散している。該微粒子の数平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、1μm以下であることがより好ましい。また、重量平均粒子径も、1μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、1μm以下であることがより好ましい。上記範囲よりも小さいと水性分散液を作製することが困難になって工程が複雑化する為にコストが上昇してしまう傾向にあり、上記範囲よりも大きいと、アンカーコート層が不均質になり易く、接着性を低下させる恐れがある。水性分散液を用いることによって、積層体製造時の有害な有機溶剤の排出量を低減することができるので、環境に対する悪影響を少なくすることもできる。
【0031】
該水性分散液中の酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有率は、1~60質量%が好ましく、3~55質量%がより好ましく、5~50質量%がさらに好ましく、10~45質量%が特に好ましい。含有率を上記範囲にすることで、良好な成膜性を得られる。
また、前記水性分散液は、不揮発性水性化助剤を実質的に含んでいないことが好ましい。これにより、アンカーコート層の可塑化を防止し、アンカーコート層と被着体界面の接着強度を高めることが出来て、耐内容物性が向上する。また水性分散液の主たる溶剤は水であるが、水溶性のアルコール類やエーテル類等を含有してもよく、樹脂成分に可塑剤等として添加されていた少量の有機溶剤成分を含んでいてもよい。
更に、揮発性の水性化助剤ならば少量を含有してもよく、例えば、アンモニアや揮発性の有機アミン化合物のような塩基性化合物を含むことで、分散した酸変性ポリオレフィン系樹脂の微粒子の凝集を防止して、安定性を付与できる。
【実施例
【0032】
各実施例、比較例の包装材料は、以下の方法で評価した。
[引裂力]
各易引裂き性包装材料から試験片を作成し、JIS K7128-1:1998のトラウザー引裂法に準拠し、試験速度200mm/minにて測定する。尚、FTDを測定する際は、測定方向がフィルムの幅方向(フィルムの搬送方向に対し直角となる方向)となるように試験片を作成し、FMDを測定する際は、測定方向がフィルムの長さ方向(フィルムの搬送方向)となるように試験片を作成して測定する。
【0033】
[突刺強さ]
実施例1、2、比較例1、2の易引裂き性包装材料から試験片を作成し、JIS Z1707:1997に記載の7.4突刺し強さ試験にて測定する。尚、突刺し強さが3Nを超えていれば、包装材料として使用することができる。
【0034】
[ヒートシール強度]
実施例1、2、比較例1、2の易引裂き性包装材料から試験片を作成し、JIS Z1707:1997に記載の7.5ヒートシール強さ試験にて測定する。試験速度は300mm/minにて行う。 尚、ヒートシール強度が15Nを超えていれば、包装材料として使用することができる。
【0035】
[実施例1]
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに印刷を行い、微細な貫通孔を複数設け、傷加工が施された易裂性基材フィルムとした。またアンカーコート剤として酸変性ポリオレフィン系アンカーコート剤であるユニチカ株式会社製、アロベース(登録商標)SB5230を、接着性樹脂層用の熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを、バリア層として7μmのアルミニウム箔を、シーラント層用の熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを用いた。
初めに、サンドラミネート法にて易裂性基材フィルム層(12μm)/アンカーコート層(0.5μm)/接着性樹脂層(15μm)/バリア層(7μm)の積層フィルムを製造し、次いでシングルラミネート法にて該積層フィルムにアンカーコート層とシーラント層を設け、基材フィルム層(12μm)/アンカーコート層(0.5μm)/接着性樹脂層(15μm)/バリア層(7μm)/アンカーコート層(0.5μm)/シーラント層(30μm)の易引裂き性包装材料を製造した。
尚、バリア層と接するアンカーコート剤もユニチカ株式会社製、アロベース(登録商標)SB5230を用いた。
【0036】
[実施例2]
実施例1と同様にして、サンドラミネート法にて基材フィルム層(12μm)/アンカーコート層(0.5μm)/接着性樹脂層(15μm)/バリア層(7μm)の積層フィルムを製造した。次いで、再度サンドラミネート法を用いて、該積層フィルムにアンカーコート層と接着性樹脂層とシーラント層を設け、基材フィルム層(12μm)/アンカーコート層(0.5μm)/接着性樹脂層(15μm)/バリア層(7μm)/アンカーコート層(0.5μm)/接着性樹脂層(15μm)/シーラント層(20μm)の構成の易引裂き性包装材料を製造した。
尚、バリア層と接するアンカーコート剤もユニチカ株式会社製、アロベース(登録商標)SB5230を用い、シーラント層と接する接着性樹脂層用の熱可塑性樹脂としても低密度ポリエチレンを採用し、シーラント層として低密度ポリエチレン系樹脂からなる厚さ20μmのシーラントフィルムを採用した。
【0037】
[比較例1、比較例2]
アンカーコート剤としてポリウレタン系のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の包装材料を製造した。また、アンカーコート剤としてポリウレタン系のものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2の包装材料を製造した。
【0038】
尚、実施例1、2の包装材料も、比較例1、2の包装材料も、共にアンカーコート剤の裏抜け現象が見られたが、実施例1、2の包装材料においては、ロール状に巻き取って保管しても隣接する包装材料同士の接着は見られなかった。一方、比較例1、2の包装材料は、ロール状に巻き取って保管している間に、裏抜けしたアンカーコート剤により隣接する包装材料同士の接着が見られたので、直ぐに巻き直しの作業を行った。
【0039】
【表1】
【0040】
各包装材料は、突刺強さもヒートシール強度も良好であり、包装材料として使用することができる。しかしながら、比較例1の包装材料は長さ方向の引裂き力と幅方向の引裂力が大きく相違する。また比較例2の包装材料は、幅方向にも長さ方向にも引裂力が大きかった。よって、比較例の包装材料は易引裂き性が不十分である。
一方、実施例1、実施例2の包装材料は、幅方向にも長さ方向にも引裂力が小さかった。また幅方向と長さ方向の引裂き強度がおおむね一致していた。よって比較的簡単に所望の方向に引裂くことができる。
【0041】
[実施例3、実施例4]
易裂性基材フィルムとして、東洋紡株式会社製、ティアファイン(登録商標)TF110(手切れ性ポリエステルフィルム)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の包装材料を製造した。また、易裂性基材フィルムとして、東洋紡株式会社製、ティアファイン(登録商標)TF110(手切れ性ポリエステルフィルム)を用いた以外は、実施例2と同様にして、実施例4の包装材料を製造した。
【0042】
【表2】
【0043】
易裂性基材フィルムとして、傷加工が施されていない易裂性基材フィルム(ティアファイン(登録商標)TF110)を用いた場合も、本発明を用いると、フィルムの幅方向にも、長さ方向にも、易引裂き性を示す包装材料を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10、20、30、40、50 易引裂き性包装材料
11、21、31 易裂性基材フィルム層
12、22、26、32、36 アンカーコート層
13、23、33 シーラント層
24、34、37 接着性樹脂層
25、35 バリア層
41、51 易裂性基材フィルム
42、52 アンカーコート剤
43 シーラント層用熱可塑性樹脂
53 シーラントフィルム
54 接着性樹脂層用熱可塑性樹脂


図1
図2
図3
図4
図5