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特許7442310学習済みモデル生成装置、故障予測装置、故障予測システム、故障予測プログラム、および学習済みモデル
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  • 特許-学習済みモデル生成装置、故障予測装置、故障予測システム、故障予測プログラム、および学習済みモデル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】学習済みモデル生成装置、故障予測装置、故障予測システム、故障予測プログラム、および学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240226BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20240226BHJP
【FI】
G06Q10/20
G07B15/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019223815
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021093019
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】片山 知也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 真至
(72)【発明者】
【氏名】松田 篤史
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195133(JP,A)
【文献】特開2018-147080(JP,A)
【文献】特開2006-135412(JP,A)
【文献】特開2018-045516(JP,A)
【文献】特開2011-113305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改札機の故障予測を行うために用いる学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成装置であって、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を受信すると共に、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を受信するモデル用データ取得部と、
前記モデル用稼働情報および前記モデル用環境情報を演算することにより、ICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む第1特徴量を生成する特徴量演算部と、
前記第1特徴量を入力データとし、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障予測情報を出力する第1学習済みモデルを生成するモデル生成部とを備える学習済みモデル生成装置。
【請求項2】
前記第1学習済みモデルを解析して、前記故障予測情報を出力するための影響度を考慮した所定の条件で前記第1特徴量の中から第2特徴量を抽出する特徴量抽出部を備え、
前記モデル生成部は、前記第2特徴量を入力データ、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されるとそれぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力する第2学習済みモデルを生成し、前記改札機の故障予測は前記第2学習済みモデルを用いて行われる請求項1に記載の学習済みモデル生成装置。
【請求項3】
学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測装置であって、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を演算することにより生成された第1特徴量を入力データとし、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障確率を含む故障予測情報を出力するように生成された前記学習済みモデルを取得するモデル取得部と、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信する予測用データ取得部と、
前記モデル取得部を介して取得された前記学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させる故障予測部とを備える故障予測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の前記学習済みモデル生成装置と、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信する予測用データ取得部と、
前記学習済みモデル生成装置で生成された前記第1学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させる故障予測部とを備える故障予測システム。
【請求項5】
請求項2に記載の前記学習済みモデル生成装置と、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信する予測用データ取得部と、
前記学習済みモデル生成装置で生成された前記第2学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させる故障予測部とを備える故障予測システム。
【請求項6】
学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測プログラムであって、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を演算することにより生成された第1特徴量を入力データとし、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障確率を含む故障予測情報を出力するように生成された前記学習済みモデルを取得するステップと、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信するステップと、
取得された前記学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させるステップとをコンピュータに実行させる故障予測プログラム。
【請求項7】
学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測プログラムであって、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を受信すると共に、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を受信するステップと、
前記モデル用稼働情報および前記モデル用環境情報を演算することにより、ICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む第1特徴量を生成するステップと、
前記第1特徴量を入力データとし、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障予測情報を出力する第1学習済みモデルを生成するステップと、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信するステップと、
前記第1学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させるステップとをコンピュータに実行させる故障予測プログラム。
【請求項8】
学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測プログラムであって、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を受信すると共に、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を受信するステップと、
前記モデル用稼働情報および前記モデル用環境情報を演算することにより、ICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む第1特徴量を生成するステップと、
前記第1特徴量を入力データとし、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障予測情報を出力する第1学習済みモデルを生成するステップと、
前記第1学習済みモデルを解析して、前記故障予測情報を出力するための影響度を考慮した所定の条件で前記第1特徴量の中から第2特徴量を抽出するステップと、
前記第2特徴量を入力データ、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されるとそれぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力する第2学習済みモデルを生成するステップと、
複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信するステップと、
前記第2学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させるステップとをコンピュータに実行させる故障予測プログラム。
【請求項9】
改札機から取得された予測用稼働情報および予測用環境情報に基づいて、前記改札機の故障予測情報を出力するように、コンピュータを機能させるための学習済みモデルであって、
ツリー構造に並んだ複数の分岐点からなる決定木で構成され、
前記予測用稼働情報は前記改札機において所定の期間で経時的に取得される稼働情報であり、前記予測用環境情報は前記改札機において所定の期間で経時的に取得される環境情報であり、
前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報が入力され、前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報からICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む複数の特徴量が算出され、それぞれの前記分岐点で対応する前記特徴量が演算されて前記特徴量に対応する評価値が算出されると共に、進行方向が決定されて次の前記分岐点に進行することを繰り返し、進行した前記分岐点で算出された前記評価値を合算することにより前記故障予測情報を算出して出力するように、コンピュータを機能させるための学習済みモデル。
【請求項10】
複数の前記決定木が組み合わされて構成される請求項9に記載の学習済みモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改札機の故障予測を行うために用いる学習済みモデルの生成装置、学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測装置、故障予測システム、故障予測プログラム、および学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、改札機の保守は、故障が発生する度に修理を行うと共に、1~6ヶ月毎に各改札機の保守点検を行っていた。また、できるだけ改札機の使用中に故障が発生することを防ぎ、効率的に保守点検を行うために、保守点検周期の見直しを随時行うこともあった。例えば、特許文献1に示されるように、継続的に改札機に設けられた各種センサの値等の稼働状況や故障の履歴を参照し、人為的に、各改札機の動作状況を判断して故障が発生しそうな改札機を抽出して、その改札機の保守点検の時期を早める等の保守点検周期の見直しを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-38747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した、従来の各種センサの値等から人為的に改札機の保守点検の時期を見直す方法では、1つの部品が単独で故障する場合には、各種センサの値等からあらかじめ改札機の故障を予測することができるが、現実的には、十分に改札機の故障時期を判断することは困難であった。例えば、改札機は、複数の部品の動作精度が低下することにより、複合的に改札機の動作精度が低下し、改札機の故障に至ることも多い。統計的な手法により各種センサの値を人為的に整理し、ある程度の複合的な故障を予測することができる場合もあるが、現実的には改札機が故障に至る要因は非常に多岐にわたり、このような複数の部品の動作により総合的に生じる改札機の故障を人為的に予測することは事実上不可能であった。
【0005】
本発明は、改札機の故障予測を精度良く行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る学習済みモデル生成装置は、改札機の故障予測を行うために用いる学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成装置であって、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を受信すると共に、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を受信するモデル用データ取得部と、前記モデル用稼働情報および前記モデル用環境情報を演算することにより、ICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む第1特徴量を生成する特徴量演算部と、前記第1特徴量を入力データとし、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障予測情報を出力する第1学習済みモデルを生成するモデル生成部とを備える。
【0007】
このような構成により、改札機の故障に影響を及ぼす稼働情報および環境情報と、故障情報とにより、改札機の故障予測に用いる第1学習済みモデルを生成することができる。改札機は様々な部品から構成され、これらの部品の状態が複雑に組み合わされて改札機の故障に至る。これらの複雑な部品の状態を総合的に判断することは非常に困難であるところ、機械学習により多くの部品の状況と故障との関係を認識することができる。そのため、改札機が故障する予兆を人為的な判断を超えて認識することができ、人為的には判断が難しい状況でも、改札機が故障する予兆を発見することができる可能性が向上する。その結果、精度良く故障予測を行うことが可能な第1学習済みモデルを生成することができる。この第1学習済みモデルを用いて故障予測を行うことにより、精度良く改札機の故障予測を行うことができるようになる。
【0008】
また、前記第1学習済みモデルを解析して、前記故障予測情報を出力するための影響度を考慮した所定の条件で前記第1特徴量の中から第2特徴量を抽出する特徴量抽出部を備え、前記モデル生成部は、前記第2特徴量を入力データ、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されるとそれぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力する第2学習済みモデルを生成し、前記改札機の故障予測は前記第2学習済みモデルを用いて行われることが好ましい。
【0009】
このような構成により、故障予測に大きな影響を及ぼす第2特徴量を用いて第2学習済みモデルを生成することにより、故障予測精度のより高い第2学習済みモデルを生成することができる。この第2学習済みモデルを用いて故障予測を行うことにより、より精度良く改札機の故障予測を行うことができるようになる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る故障予測装置は、学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測装置であって、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を演算することにより生成された第1特徴量を入力データとし、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障確率を含む故障予測情報を出力するように生成された前記学習済みモデルを取得するモデル取得部と、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信する予測用データ取得部と、前記モデル取得部を介して取得された前記学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させる故障予測部とを備える。
【0011】
このような構成により、改札機の故障に影響を及ぼす稼働情報および環境情報と、故障情報とにより生成された改札機の故障予測に用いる学習済みモデルを取得し、この学習済みモデルを用いて故障予測を行うことができる。そのため、改札機が故障する予兆を人為的な判断を超えて認識することができ、人為的には判断が難しい状況でも、改札機が故障する予兆を発見することができる可能性が向上する。その結果、精度良く故障予測を行うことが可能な学習済みモデルを用いて故障予測を行うことができ、精度良く改札機の故障予測を行うことができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る故障予測システムは、前記学習済みモデル生成装置と、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信する予測用データ取得部と、前記学習済みモデル生成装置で生成された前記第1学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させる故障予測部とを備える。
【0013】
このような構成により、改札機の故障に影響を及ぼす稼働情報および環境情報と、故障情報とにより生成された改札機の故障予測に用いる第1学習済みモデルを取得し、この第1学習済みモデルを用いて故障予測を行うことができる。そのため、改札機が故障する予兆を人為的な判断を超えて認識することができ、人為的には判断が難しい状況でも、改札機が故障する予兆を発見することができる可能性が向上する。その結果、精度良く故障予測を行うことが可能な第1学習済みモデルを用いて故障予測を行うことができ、精度良く改札機の故障予測を行うことができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る故障予測システムは、前記学習済みモデル生成装置と、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信する予測用データ取得部と、前記学習済みモデル生成装置で生成された前記第2学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させる故障予測部とを備える。
【0015】
このような構成により、故障予測に大きな影響を及ぼす第2特徴量を用いて生成された第2学習済みモデルを取得することにより、より精度の高い第2学習済みモデルを用いて故障予測を行うことができ、より精度良く改札機の故障予測を行うことができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る故障予測プログラムは、学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測プログラムであって、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を演算することにより生成された第1特徴量を入力データとし、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障確率を含む故障予測情報を出力するように生成された前記学習済みモデルを取得するステップと、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信するステップと、取得された前記学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させるステップとをコンピュータに実行させる。
【0017】
このような構成により、改札機の故障に影響を及ぼす稼働情報および環境情報と、故障情報とにより生成された改札機の故障予測に用いる学習済みモデルを取得し、この学習済みモデルを用いて故障予測を行うことができる。そのため、改札機が故障する予兆を人為的な判断を超えて認識することができ、人為的には判断が難しい状況でも、改札機が故障する予兆を発見することができる可能性が向上する。その結果、精度良く故障予測を行うことが可能な学習済みモデルを用いて故障予測を行うことができ、精度良く改札機の故障予測を行うことができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る故障予測プログラムは、学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測プログラムであって、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を受信すると共に、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を受信するステップと、前記モデル用稼働情報および前記モデル用環境情報を演算することにより、ICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む第1特徴量を生成するステップと、前記第1特徴量を入力データとし、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障予測情報を出力する第1学習済みモデルを生成するステップと、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信するステップと、前記第1学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させるステップとをコンピュータに実行させる。
【0019】
このような構成により、改札機の故障に影響を及ぼす稼働情報および環境情報と、故障情報とにより、改札機の故障予測に用いる第1学習済みモデルを生成することができる。そのため、改札機が故障する予兆を人為的な判断を超えて認識することができ、人為的には判断が難しい状況でも、改札機が故障する予兆を発見することができる可能性が向上する。その結果、精度良く故障予測を行うことが可能な第1学習済みモデルを生成することができる。この第1学習済みモデルを用いて故障予測を行うことにより、精度良く改札機の故障予測を行うことができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態に係る故障予測プログラムは、学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行う故障予測プログラムであって、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を受信すると共に、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を受信するステップと、前記モデル用稼働情報および前記モデル用環境情報を演算することにより、ICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む第1特徴量を生成するステップと、前記第1特徴量を入力データとし、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障予測情報を出力する第1学習済みモデルを生成するステップと、前記第1学習済みモデルを解析して、前記故障予測情報を出力するための影響度を考慮した所定の条件で前記第1特徴量の中から第2特徴量を抽出するステップと、前記第2特徴量を入力データ、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されるとそれぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力する第2学習済みモデルを生成するステップと、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第二期間で経時的に取得される、前記稼働情報である予測用稼働情報および前記環境情報である予測用環境情報を受信するステップと、前記第2学習済みモデルに前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報を入力して、それぞれの前記改札機の前記故障予測情報を出力させるステップとをコンピュータに実行させる。
【0021】
このような構成により、故障予測に大きな影響を及ぼす第2特徴量を用いて第2学習済みモデルを生成することにより、故障予測精度のより高い第2学習済みモデルを生成することができる。この第2学習済みモデルを用いて故障予測を行うことにより、より精度良く改札機の故障予測を行うことができるようになる。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係る学習済みモデルは、改札機から取得された予測用稼働情報および予測用環境情報に基づいて、前記改札機の故障予測情報を出力するように、コンピュータを機能させるための学習済みモデルであって、ツリー構造に並んだ複数の分岐点からなる決定木で構成され、前記予測用稼働情報は前記改札機において所定の期間で経時的に取得される稼働情報であり、前記予測用環境情報は前記改札機において所定の期間で経時的に取得される環境情報であり、前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報が入力され、前記予測用稼働情報および前記予測用環境情報からICカード利用率及び所定の期間における普通券がつまった回数の微分値を含む複数の特徴量が算出され、それぞれの前記分岐点で対応する前記特徴量が演算されて前記特徴量に対応する評価値が算出されると共に、進行方向が決定されて次の前記分岐点に進行することを繰り返し、進行した前記分岐点で算出された前記評価値を合算することにより前記故障予測情報を算出して出力するように、コンピュータを機能させる。
【0023】
このような構成により、学習済みモデルは、改札機の故障に影響を及ぼす稼働情報および環境情報を用いて改札機の故障予測を行うことができる。そのため、改札機が故障する予兆を人為的な判断を超えて認識することができ、人為的には判断が難しい状況でも、改札機が故障する予兆を発見することができる可能性が向上する。その結果、精度良く故障予測を行うことが可能となる。
【0024】
また、複数の前記決定木が組み合わされて構成されても良い。
【0025】
このような構成により、複雑に関連し合った改札機の状況に応じた学習済みモデルを生成することができ、より精度良く故障予測を行うことが可能となる。
【0026】
また、前記故障予測情報は、それぞれの前記改札機が故障すると予測される時期を含んでも良い。
【0027】
このような構成により、改札機が故障すると予想される期間を精度良く把握することができ、適切な時期に改札機の保守・点検を行うことができる。
【0028】
また、複数の前記第1学習済みモデルが生成され、それぞれの前記第1学習済みモデルが出力する前記故障予測情報は、異なる期間の間に前記改札機が故障する確率を示しても良い。
【0029】
このような構成により、複数の学習済みモデルを用いて、改札機が故障するまでの期間が異なる複数の故障予測情報を出力することができる。そのため、改札機が故障すると予想される期間をより精度良く把握することができ、より適切な時期に改札機の保守・点検を行うことができる。
【0030】
また、複数の前記第2学習済みモデルが生成され、それぞれの前記第2学習済みモデルが出力する前記故障予測情報は、異なる期間の間に前記改札機が故障する確率を示しても良い。
【0031】
このような構成により、複数の学習済みモデルを用いて、改札機が故障するまでの期間が異なる複数の故障予測情報を出力することができる。そのため、改札機が故障すると予想される期間をより精度良く把握することができ、より適切な時期に改札機の保守・点検を行うことができる。
【0032】
また、前記故障予測情報は、故障すると予測される前記改札機の部位を含んでも良い。
【0033】
このような構成により、故障すると予測される改札機の部位を優先的に点検することにより、改札機の保守・点検を効率的に行うことができる。
【0034】
また、それぞれの前記改札機の保守計画を生成すると共に、前記故障予測情報に基づいてそれぞれの前記保守計画を変更する保守計画部を備えても良い。
【0035】
このような構成により、改札機の保守・点検を、より適切かつ効率的に行うことができ、動作中に改札機が故障することを抑制することができる。
【0036】
さらに、本発明の一実施形態に係る学習済みモデル生成プログラムは、学習済みモデルを用いて改札機の故障予測を行うために用いる学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成プログラムであって、複数の前記改札機のそれぞれにおいて所定の第一期間で経時的に取得される、前記改札機の稼働情報であるモデル用稼働情報および前記改札機の環境情報であるモデル用環境情報を受信すると共に、前記第一期間にそれぞれの前記改札機に故障が生じた場合の故障情報を受信するステップと、前記モデル用稼働情報および前記モデル用環境情報を演算することにより第1特徴量を生成するステップと、前記第1特徴量を入力データとし、前記故障情報を教師データとする機械学習により、前記稼働情報および前記環境情報が入力されると、それぞれの前記改札機の故障予測情報を出力する第1学習済みモデルを生成するステップとをコンピュータに実行させる。
【0037】
このような構成により、改札機の故障に影響を及ぼす稼働情報および環境情報と、故障情報とにより、改札機の故障予測に用いる第1学習済みモデルを生成することができる。改札機は様々な部品から構成され、これらの部品の状態が複雑に組み合わされて改札機の故障に至る。これらの複雑な部品の状態を総合的に判断することは非常に困難であるところ、機械学習により多くの部品の状況と故障との関係を認識することができる。そのため、改札機が故障する予兆を人為的な判断を超えて認識することにより、精度の高い故障予測を行うことが可能な第1学習済みモデルを生成することができる。この第1学習済みモデルを用いて故障予測を行うことにより、精度良く改札機の故障予測を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】改札機の故障予測システムの構成を例示する概略図である。
図2】改札機の故障予測システムが実施する処理の流れの概略を示す図である。
図3】学習済みモデル生成装置および故障予測実行部の構成を例示する図である。
図4】学習済みモデル生成が行われる処理の流れの概略を示す図である。
図5】特徴量の構成を説明する図である。
図6】オンコールデータの構成を説明する図である。
図7】故障予測が行われる処理の流れの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
まず、図1を参照して、改札機1と、改札機1の保守・修理について説明する。
【0040】
改札機1は、鉄道の駅等に設置され、駅構内への入退場の管理を行う。改札機1は、切符に記録された情報を読み取り、情報に応じて入退場の適否を判断し、駅構内への入退場の管理を行う。切符として、普通券や定期券、SFカード(Stored Fare Card)、ICカード等が用いられる。改札機1は、投入口(図示せず)、読取部(図示せず)、アンテナ部(図示せず)、解析部(図示せず)、動作制御部(図示せず)、貯留部(図示せず)、搬送部(図示せず)、排出口(図示せず)等を備える。投入口は、普通券や定期券、SFカード等が投入される。読取部は、磁気等により記録された情報を読み取る。アンテナ部は、ICカード等と情報のやり取りを行う。解析部は、読取部やアンテナ部で取得した情報を解析する。動作制御部は、解析部の解析結果に応じて必要な動作を制御する。貯留部は、退場時等において管理が終了した普通券等を貯留する。搬送部は、投入口から投入された普通券等を、読取部を介して排出口や貯留部まで搬送する。排出口は、入場時等において、その後の退場時等に必要となる普通券等を排出する。また、投入口や読取部等の改札機1を構成する各部位には、これらの稼働情報6(図1参照)を取得する稼働センサ(図示せず)が設けられる。また、改札機1は、その内部または周辺に、温度や湿度、照度、気圧、天候等の環境情報7(図1参照)を取得する環境センサ(図示せず)を備える。
【0041】
改札機1が故障すると、駅員等がメンテナンス会社等に故障を連絡するオンコールが行われる。オンコールでは、故障した改札機1を識別する情報と故障の状況とが連絡される。オンコールを受けたメンテナンス会社等の担当者は、該当する改札機1に赴き、修理を行う。また、それぞれの改札機1は、稼働中に故障することを抑制するために、保守計画に基づいて定期的に保守点検が行われる。
【0042】
次に、図1図2を用いて、改札機の故障予測システムの全体構成の概略について説明する。
【0043】
1または複数の改札機1は、インターネット回線2に接続される。また、インターネット回線2には、学習済みモデル生成装置3と、故障予測実行部4と、サーバ5とが接続される。
【0044】
サーバ5は、それぞれの改札機1から、インターネット回線2を介して稼働情報6および環境情報7を経時的に取得し、記憶する。さらに、サーバ5は、それぞれの改札機1において行われたオンコールのオンコールデータ8を、インターネット回線2を介して経時的に取得し、記憶する。具体的には、オンコールデータ8は、改札機1から直接サーバ5に送信されても良いが、一旦コールセンターに集約され、コールセンターからサーバ5や学習済みモデル生成装置に送信されても良い。
【0045】
学習済みモデル生成装置3は、まず、サーバ5からインターネット回線2を介して、所定の期間(第一期間に相当)の間に取得された、それぞれの改札機1に対応する、稼働情報6,環境情報7およびオンコールデータ8を取得する(図2のステップ#1)。
【0046】
次に、学習済みモデル生成装置3は、稼働情報6をモデル用稼働情報20(図3参照)、環境情報7をモデル用環境情報21(図3参照)として、改札機1ごとに、モデル用稼働情報20およびモデル用環境情報21を演算して、学習済みモデルを生成するための特徴量(第1特徴量に相当)を算出する(図2のステップ#2)。また、学習済みモデル生成装置3は、改札機1ごとに、オンコールデータ8から故障情報を抽出する。なお、以下の説明では、抽出された故障情報を単にオンコールデータ8とも称す(図2のステップ#3)。
【0047】
次に、学習済みモデル生成装置3は、算出された特徴量を機械学習用の入力データとし、抽出した故障情報を教師データとして、同一の改札機1に対応する特徴量と故障情報とを関連付けてAI(人工知能)9により機械学習を行い、予測用の稼働情報6(予測用稼働情報に相当)および予測用の環境情報7(予測用環境情報に相当)を入力することにより、改札機1の故障予測情報を出力する学習済みモデル10を生成する(図2のステップ#4)。ここで、AI9は、インターネット回線2上に設けられても良いし、学習済みモデル生成装置3内に設けられても良い。なお、学習済みモデル生成装置3の具体的な構成については、後に詳述する。
【0048】
その後、サーバ5は、それぞれの改札機1から、インターネット回線2を介して、故障予測を行うために用いる、稼働情報6および環境情報7を取得し、記憶する(図2のステップ#5)。
【0049】
次に、故障予測実行部4は、インターネット回線2を介して、サーバ5に記憶された稼働情報6および環境情報7を取得する。そして、故障予測実行部4は、改札機1ごとに、所定の期間(第二期間)に継続的に取得された稼働情報6を予測用稼働情報とし、所定の期間(第二期間)に継続的に取得された環境情報7を予測用環境情報として、予測用稼働情報および予測用環境情報を学習済みモデル10に入力して、改札機1ごとの故障予測情報11を出力する(図2のステップ#6)。なお、故障予測実行部4の具体的な構成については、後に詳述する。
【0050】
さらに、インターネット回線2に接続される保守計画部12が設けられても良い。保守計画部12は、各改札機1の保守計画を策定すると共に、故障予測情報11に基づいて、故障する可能性の高い改札機1の保守の優先度を必要に応じて高めるように、保守計画を変更する(図2のステップ#7)。なお、保守計画部12の具体的な構成については、後に詳述する。
【0051】
このように、本実施形態では、各改札機1の稼働情報6および環境情報7を所定の期間収集し、これらを演算して、故障の予測に適した情報を算出して入力データとし、入力データに、実際に発生したオンコールデータ8をラベル付して教師データとして機械学習された学習済みモデル10を用いて故障予測が行われる。そのため、大量の情報を総合的に判断して故障予測を行うことができ、改札機1の故障予測を精度良く行うことができる。特に、改札機1の故障の要因は非常に多く、かつ、互いに複合的に作用しているため、人為的に改札機1から取得した情報から故障を判断することは困難であったところ、機械学習を用いて学習済みモデル10を生成するため、より多くの情報を複合的に判断して故障予測を行うことができる。また、人為的に必要な情報を選択し、それらの相関関係から故障を予測することをプログラムを用いて行うことも不可能ではないが、必要な情報を選択し、それらの相関関係を導くことは結局人為的に行わざるを得ず、改札機1の複雑さを考慮すると現実的ではない。そのため、そのようなプログラムを用いた場合に比べ、上記のように学習済みモデル10を生成して故障予測を行うことにより、より容易かつ精度の高い故障予測を行うことが可能となる。また、改札機1において、気圧・湿度といった気象状況等の環境によって故障に及ぼす影響が変化する。例えば、環境によって切符のつまりやすさが変わったり、電子機器の動作精度に与える影響が変わったりする。そのため、環境情報を入力データに含めて機械学習することにより、稼働情報と環境情報との複雑な相互作用を考慮した学習済みモデル10を生成することができる。そして、精度の高い故障予測に基づいて保守計画を見直すことができるため、実動作中の改札機1が故障する可能性を低減することができる。
【0052】
〔学習済みモデル生成装置〕
次に、学習済みモデル生成装置3の具体的な構成例について、図1,2を参照しながら図3図6を用いて説明する。
【0053】
学習済みモデル生成装置3は、データ通信部13、モデル用データ取得部14、記憶部15、生成制御部16、モデル生成部17、特徴量演算部18、特徴量抽出部19を備える。
【0054】
データ通信部13は、インターネット回線2を介して、改札機1やAI9等との間でデータの送受信を行う。モデル用データ取得部14は、データ通信部13で受信した改札機1のモデル用稼働情報20およびモデル用環境情報21とオンコールデータ8とを取得し、記憶部15に記憶させる(図4のステップ#1)。モデル用稼働情報20およびモデル用環境情報21は、改札機1から取得される稼働情報6と環境情報7とを所定の期間(第一期間)にわたり経時的に収集した情報である。所定の期間は任意に設定できるが、例えば1ヶ月間とすることができ、故障予測を行う月の前月の1ヶ月間でも良いし、直前の1ヶ月間でも良い。モデル用稼働情報20およびモデル用環境情報21は、各改札機1から取得され、改札機1にひも付けられた情報であり、例えば、合計で2000個の情報(特徴量)からなる。また、記憶部15は、モデル用稼働情報20およびモデル用環境情報21、オンコールデータ8の他にも、後述の学習用入力データ22や、第1学習済みモデル23、第2学習済みモデル24等の各種データを記憶する。生成制御部16はCPUやGPU等のプロセッサを備え、モデル生成部17や特徴量演算部18等の学習済みモデル生成装置3の動作を制御する。
【0055】
特徴量演算部18は、生成制御部16の制御に基づいて、モデル用稼働情報20およびモデル用環境情報21のうちの少なくともモデル用稼働情報20の一部を演算して第1特徴量25を算出する(図4のステップ#2)。例えば、図5に示すように、第1特徴量25は、稼働情報6のうちのICカード、普通券、定期券、SFカードのそれぞれの使用回数から、1日当たりのICカードの利用率が算出される。さらに、第1特徴量25として、ICカードの利用率の3日間の合計や平均値、7日間の合計や平均値が算出されても良い。他にも、所定の期間における普通券がつまった回数の微分値等が第1特徴量25として算出される。このように、第1特徴量25は、モデル用稼働情報20およびモデル用環境情報21に、演算された項目およびその値が加えられて構成される。その結果、第1特徴量25は、例えば、合計で20000個の情報(特徴量)からなる。第1特徴量25は、改札機1の故障に影響を及ぼす可能性のある情報であり、これらの情報を多く生成し、複合的に判断することにより、改札機1の故障を精度良く予測できるようになる。
【0056】
モデル生成部17はCPUやGPU等のプロセッサを備え、生成制御部16の制御に基づいて、入力データが第1特徴量25で、教師データがオンコールデータ8(故障情報)である学習用入力データ22をAI9に入力して機械学習させ、第1学習済みモデル23を生成する(図4のステップ#3)。オンコールデータ8は、改札機1が故障した際に行われるオンコールの情報と、オンコールに伴って行われる修理の結果を含む情報であり、オンコール毎に蓄積される。そのため、オンコールデータ8は種々の情報を含み、図6に示すように、オンコールデータ8から抽出される故障情報は、少なくとも、対象となる改札機1を識別するIDと、オンコールが行われたコール日時と、オンコール内容と、修理の結果判明した故障部位と、故障要因とを含んで構成される。
【0057】
特徴量抽出部19は、生成制御部16の制御に基づいて、第1特徴量25を第1学習済みモデル23に入力して解析し、各特徴量の故障予測への影響度を求める。そして、特徴量抽出部19は、生成制御部16の制御に基づいて、20000個の特徴量から故障予測への影響度が大きいものから順に、例えば100個抽出し、この抽出された100個の特徴量を第2特徴量26とする(図4のステップ#4)。
【0058】
そして、モデル生成部17は、生成制御部16の制御に基づいて、入力データが第2特徴量26で、教師データがオンコールデータ8である学習用入力データ27をAI9に入力して機械学習させ、第2学習済みモデル24を生成する(図4のステップ#5)。
【0059】
なお、第1学習済みモデル23および第2学習済みモデル24は、所定の予測期間、例えは7日以内に、改札機1が故障するか否かの故障予測を行うために用いられるモデルである。また、第1学習済みモデル23および第2学習済みモデル24は、例えば、決定木である。このような決定木構造の第1学習済みモデル23および第2学習済みモデル24は、決定木の各分岐点で所定の特徴量(第1特徴量25または第2特徴量26)の評価を行い、分岐点毎に、評価結果に応じた評価値(故障確率)が付与されていく構造である。そして、決定木の分岐に沿って評価値が合算されて故障予測情報が求められる。なお、第1学習済みモデル23および第2学習済みモデル24は、複数の決定木が関連して設けられる、XGBoostやRandom Forest、LightGBM、CatBoost、AdaBoost等のアンサンブルモデルであっても良い。
【0060】
このように、稼働情報6および環境情報7から、改札機1の故障に影響を及ぼす可能性のある特徴量を選定し、これらを故障への影響度が明確となるように演算して特徴量を追加して第1特徴量25を生成する。そして、故障への影響が大きいと推測されるこれらの第1特徴量25を入力データとして第1学習済みモデル23を生成する。そのため、各特徴量の相互作用が適格に反映された故障予測を行うことができ、改札機1の故障予測を精度良く行うことができる。
【0061】
さらに、第1学習済みモデル23を用いて第1特徴量25を解析し、故障への影響度が大きい特徴量を抽出して第2特徴量26とし、これらの第2特徴量26を入力データとして第2学習済みモデル24を生成する。その結果、故障予測精度がより高い第2学習済みモデル24を用いて故障予測を行うことができ、改札機1の故障予測をより精度良く行うことができる。
【0062】
〔故障予測実行部〕
次に、故障予測実行部4の具体的な構成例について、図1,2を参照しながら図3図7を用いて説明する。
【0063】
故障予測実行部4は、データ通信部28、モデル取得部29、予測用データ取得部30、記憶部31、予測制御部32、故障予測部33を備える。
【0064】
データ通信部28は、インターネット回線2を介して、改札機1や学習済みモデル生成装置3等との間でデータの送受信を行う。モデル取得部29は、データ通信部13を介して、学習済みモデル生成装置3から、故障予測に用いる学習済みモデルである、第1学習済みモデル23または第2学習済みモデル24を取得し、記憶部31に記憶させる(図7のステップ#1)。予測用データ取得部30は、データ通信部13で受信した改札機1の予測用稼働情報34および予測用環境情報35を取得し、記憶部31に記憶させる(図7のステップ#2)。予測用稼働情報34および予測用環境情報35は、改札機1から取得される稼働情報6と環境情報7とを所定の期間(第二期間)にわたり経時的に収集した情報である。所定の期間は任意に設定できるが、例えば、故障予測を行う前日である。予測制御部32はCPU等のプロセッサを備え、故障予測部33等の動作を制御する。
【0065】
故障予測部33は、予測制御部32の制御に基づいて、予測用稼働情報34および予測用環境情報35を学習済みモデルに入力して故障予測を行い(図7のステップ#3)、故障予測情報36を記憶部31に格納した後出力する(図7のステップ#4)。学習済みモデルは、本実施形態では第2学習済みモデル24であるが、第1学習済みモデル23を用いることも可能である。
【0066】
故障予測情報36は、予測期間内に、改札機1のそれぞれが故障する確率を示すものである。予測期間が7日である場合、7日以内に改札機1が故障する確率が、それぞれの改札機1ごとに0以上1以下の値で示される。この値は、1に近づくほど故障する確率が高くなることを示す。故障予測情報36は、第2学習済みモデル24が決定木で構成される場合、予測用稼働情報34および予測用環境情報35から第2特徴量26を算出し、各分岐点で第2特徴量26の評価を行い、分岐点を通過する毎に評価値を足し合わせていくことにより導出される。
【0067】
なお、第2学習済みモデル24を用いて行った故障予測を以下のような条件で検証した。第一期間を4ヶ月、第1特徴量25を19303個として第2学習済みモデル24を生成し、その後1ヶ月間故障予測を行った。その結果、モデル精度はAUC(Area under an ROC curve):75.31%、Precision(空振りしない率):10%、Recall(見逃ししない率):70%となった。このことから、本実施形態によると、従来の人為的な判断に基づく保守計画を行った場合に比べて精度良く故障を予測でき、本実施形態の故障予測を行った場合に改札機1が実動作中に故障する確率は、従来に比べて飛躍的に低減することがうかがわれる。
【0068】
さらに、故障予測情報36として、各改札機1において、故障することが予測される故障部位がその故障確率と共に出力されても良い。例えば、各改札機1において、故障する確率の高い上位3か所の部位が出力される。
【0069】
故障予測において、各第2特徴量26の評価値が算出される。各改札機1の部位ごとの故障確率は、各第2特徴量26の評価値のうちの、各部位の故障に影響があるとあらかじめ定められた第2特徴量26の評価値を足し合わせることにより求めることができる。故障予測情報36として、改札機1ごとに、故障する確率が高い部位が、故障する確率と共に出力される。
【0070】
このように、故障に影響が大きいと推測される特徴量(第1特徴量25,第2特徴量26)を用いて機械学習された学習済みモデル(第1学習済みモデル23,第2学習済みモデル24)を用いて故障予測を行うため、改札機1の故障予測を精度良く行うことができる。特に、故障予測への影響の大きさを考慮して抽出された第2特徴量26を用いて機械学習された第2学習済みモデル24を用いて故障予測を行うことにより、改札機1の故障予測をより精度良く行うことができる。その結果、故障予測情報36に基づいて、故障する確率の高い改札機1に対して保守すべき期限が明確となり、保守計画の周期・時期を見直して、より適切に保守・点検を行うことが可能となる。
【0071】
また、改札機1ごとに故障する確率の高い部位を出力することにより、重点的に保守・点検するべき部位が明確となり、効率的に保守・点検を行うことが可能になる。
【0072】
〔保守計画〕
故障予測実行部4は、さらに保守計画部37を備えても良い。保守計画部37は、まず、各改札機1に対して定期的に保守・点検を行う保守計画を定める。その上で、保守計画部37は、上記故障予測情報36に基づいて、各改札機1に対して、故障することが予想される期限内に保守・点検が行われるように、保守計画を変更する。
【0073】
保守計画部37は図示しない表示装置と接続される構成であっても良い。保守計画部37は、表示装置に保守計画や故障予測情報36を表示する。保守の担当者・管理者等は、表示装置に表示された保守計画や故障予測情報36を参照しながら、保守計画をさらに見直すこともできる。
【0074】
このように、故障予測情報36に基づいて保守計画を変更することにより、効率的に保守・点検を行いながら、故障前に改札機1の保守・点検を行い、動作中の改札機1が故障することを抑制することができる。
【0075】
なお、保守計画部37は、故障予測実行部4が備える構成に限らず、任意の箇所に設けられても良い。例えば、保守計画部37は、図1に示す保守計画部12のように、インターネット回線2に接続される構成としても良い。
【0076】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、学習済みモデル生成装置3および故障予測実行部4の構成は、上述の機能ブロックに分割する場合に限らず、学習済みモデル生成装置3および故障予測実行部4の機能を実現できれば、機能ブロックの構成は任意である。例えば、生成制御部16、モデル生成部17、特徴量演算部18、特徴量抽出部19の機能ブロックは、このような構成に限らず、互いの機能の一部または全部を統合した機能ブロックにより構成されても良いし、それぞれの機能ブロックをさらに細分化した機能ブロックから構成されても良い。また、上記実施形態において、学習済みモデル生成装置3および故障予測実行部4の機能の一部または全部は統合された構成であっても良い。
【0077】
(2)上記各実施形態において、学習済みモデル生成装置3は単独で、学習済みモデルを生成して完結し、故障予測実行部4に学習済みモデルを送信しない構成であっても良い。逆に、故障予測実行部4は、学習済みモデル生成装置3で生成された学習済みモデルを用いず、別途生成された学習済みモデルを用いて故障予測を行っても良い。
【0078】
(3)上記各実施形態において、学習済みモデル生成装置3が実現する学習済みモデル生成方法および故障予測実行部4が実現する故障予測方法の一部または全部は、上記装置構成に限らず、任意の構成で実現することができる。また、学習済みモデル生成装置3が実現する学習済みモデル生成方法および故障予測実行部4が実現する故障予測方法の一部または全部は、プログラムにより実現されても良い。プログラムは記憶部15や記憶部31等の任意の記録装置に記憶され、生成制御部16が備えるCPUやGPU等の任意のプロセッサ(コンピュータに相当)がこのプログラムを実行する。
【0079】
(4)上記各実施形態において、オンコールデータ8は、オンコールの情報のみを含み、修理の結果を含まない構成としても良い。この場合、オンコールデータ8(故障情報)は、対象となる改札機1を識別するIDと、オンコールが行われたコール日時と、オンコール内容から構成される。なお、オンコール内容は、オンコールが行われたか否かを示す情報のみであっても良く、この場合のオンコールデータ8(故障情報)は、対象となる改札機1を識別するIDと、オンコールが行われたコール日時と、オンコールの有無から構成されることとなる。
【0080】
(5)上記各実施形態において、学習済みモデル生成装置3は、特徴量抽出部19を備えず、第2特徴量26および第2学習済みモデル24を生成しない構成としても良い。この場合、学習済みモデル生成装置3は、第1特徴量25および第1学習済みモデル23のみを生成する。
【0081】
(6)上記各実施形態において、予測期間が7日である場合のみの故障予測を行う構成に限らず、異なる複数の予測期間の間に故障する確率をそれぞれ出力する故障予測を行っても良い。例えば、予測期間として、1ヶ月、14日、7日、3日を設定し、故障予測として、各改札機1が、1ヶ月以内に故障する確率、14日以内に故障する確率、7日以内に故障する確率、3日以内に故障する確率を出力する。この場合、第1学習済みモデル23および第2学習済みモデル24は、1ヶ月以内に故障する確率を求めるための学習済みモデル、14日以内に故障する確率を求めるための学習済みモデル、7日以内に故障する確率を求めるための学習済みモデル、3日以内に故障する確率を求めるための学習済みモデルの4種類が生成される。そして、故障予測実行部4は、4種類の第1学習済みモデル23または4種類の第2学習済みモデル24を用いて故障予測を行い、4種類の故障予測情報36を出力する。
【0082】
これにより、複数の期間の間に故障する確率が示され、保守・点検を行うべきタイミングをより的確に把握することができる。これに伴い、保守計画の変更もより的確に行うことができる。
【0083】
(7)上記各実施形態において、第1学習済みモデル23および第2学習済みモデル24は、故障予測の実施に伴って更新されても良い。所定の期間に行われた故障予測にて使用された、予測用稼働情報34および予測用環境情報35を、第1学習済みモデル23または第2学習済みモデル24に入力して機械学習させることにより、第1学習済みモデル23または第2学習済みモデル24が更新される。この際、これらの予測用稼働情報34および予測用環境情報35を用いて故障予測された結果と、保守・修理を行った結果が教師データに加えられても良い。
【0084】
このように、故障予測に伴って学習済みモデルを更新することにより、学習済みモデルの精度が向上し、より精度の高い故障予測を行うことが可能となる。
【0085】
(8)上記各実施形態において、改札機1は環境センサを備えない構成とすることもできる。この場合、稼働情報6とオンコールデータ8(故障情報)から学習済みモデル10が生成され、故障予測の際には、稼働情報6が学習済みモデル10に入力される。さらに、その他の情報が学習済みモデル10の生成に用いられても良く、稼働情報6、環境情報7、その他の情報のうちのいずれかの情報が組み合わされて学習済みモデル10の生成に用いられても良い。
【0086】
環境情報7は故障予測に大きな影響を及ぼさない場合がある。このような場合、環境センサを備えない構成とすることで、改札機1をより簡易な構成とすることができる。
【0087】
(9)改札機1、学習済みモデル生成装置3、故障予測実行部4、保守計画部12は、インターネット回線2に接続される構成に限らず、互いに任意の構成でデータの受け渡しが可能な構成であれば良い。例えば、これらの機器は、機器間の少なくとも一部が、インターネット回線2以外のイントラネット等のネットワーク回線に接続されても良く、LAN等の専用回線で送受信可能な構成でも良く、記憶媒体を介してデータの受け渡しを行う構成であっても良い。
【0088】
(10)学習済みモデル10の生成に用いられる故障情報は、オンコールデータ8から抽出されても良いが、オンコールデータ8以外から入手されても良い。例えば、改札機1の管理者が判断して故障情報を作成し、インターネット回線2等を介して学習済みモデル生成装置3に入力しても良いし、改札機1が自身で故障を判断し、故障情報を生成して、インターネット回線2等を介して学習済みモデル生成装置3に入力しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、鉄道の駅やその他の交通機関の駅に設置される改札機に限らず、テーマパーク等の各種施設に設置される改札機における、学習済みモデル生成装置、故障予測装置、故障予測システム、故障予測プログラム、および学習済みモデルに適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 改札機
2 インターネット回線
3 学習済みモデル生成装置
4 故障予測実行部
5 サーバ
6 稼働情報
7 環境情報
8 オンコールデータ
9 AI
10 学習済みモデル
11 故障予測情報
12 保守計画部
13 データ通信部
14 モデル用データ取得部
15 記憶部
16 生成制御部
17 モデル生成部
18 特徴量演算部
19 特徴量抽出部
20 モデル用稼働情報
21 モデル用環境情報
22 学習用入力データ
23 第1学習済みモデル(学習済みモデル)
24 第2学習済みモデル(学習済みモデル)
25 第1特徴量(特徴量)
26 第2特徴量(特徴量)
27 学習用入力データ
28 データ通信部
29 モデル取得部
30 予測用データ取得部
31 記憶部
32 予測制御部
33 故障予測部
34 予測用稼働情報
35 予測用環境情報
36 故障予測情報
37 保守計画部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7