(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】X線画像の画像コントラスト強調
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240226BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240226BHJP
【FI】
A61B6/00 350M
A61B6/00 331E
(21)【出願番号】P 2019571696
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2018067005
(87)【国際公開番号】W WO2019002230
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ホールナエール バート ピエール アントワーヌ ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】フローレント ラウル
(72)【発明者】
【氏名】レヴリエル クレーア
(72)【発明者】
【氏名】ジュベール ベルネルドゥス マリウス フーベルトゥス
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】櫃本 研太郎
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-64608(JP,A)
【文献】国際公開第2005/099566(WO,A1)
【文献】特開2004-283410(JP,A)
【文献】特開平6-130517(JP,A)
【文献】特開昭59-28144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイスであって、前記デバイスは、
入力ユニットと、
プロセッサと、
を含み、
前記入力ユニットは、
造影剤注入での血管構造の取得X線画像を提供し、前記造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われ、
前記現在の造影剤注入設定を提供し、
前記プロセッサは、
前記現在の造影剤注入設定に基づいて、前記血管構造の少なくとも主要血管の画像コントラストの予測を決定し、
前記画像コントラストの前記予測に基づいて、前記血管構造
の適応画像コントラスト強調を決定し、前記適応画像コントラスト強調は、前記取得X線画像の画像コントラストを強調するための前記取得X線画像への適応を規定し、
前記適応画像コントラスト強調を前記取得X線画像に適用して、コントラスト強調されたX線画像を生成する、デバイス。
【請求項2】
前記コントラスト強調されたX線画像を提供する出力ユニットを更に含み、前記出力ユニットはディスプレイである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイスと、
造影剤注入での血管構造の前記X線画像を取得する、X線撮像デバイスと、
前記現在の造影剤注入設定での前記造影剤注入を提供する、造影剤注入装置と、
を含む、X線撮像システム。
【請求項4】
前記造影剤注入装置は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する前記現在の造影剤注入設定で前記造影剤注入を行う、請求項3に記載のX線撮像システム。
【請求項5】
前記造影剤注入設定は、送達されたヨード濃縮物、注入タイミング、注入量、注入速度、ヨード濃縮物の粘度、及びリアルタイム圧力曲線からなる群から選択される造影剤注入パラメータを含む、請求項3に記載のX線撮像システム。
【請求項6】
X線撮像システムを制御するプロセッサに、
造影剤注入での血管構造の取得X線画像を提供するステップであって、前記造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われる、ステップと、
前記現在の造影剤注入設定を提供するステップと、
前記現在の造影剤注入設定に基づいて、前記血管構造の少なくとも主要血管の画像コントラストの予測を決定するステップと、
前記画像コントラストの前記予測に基づいて、前記血管構造
の適応画像コントラスト強調を決定するステップであって、前記適応画像コントラスト強調は、前記取得X線画像の画像コントラストを強調するための前記取得X線画像への適応を規定する、ステップと、
コントラスト強調されたX線画像を生成するために、前記適応画像コントラスト強調を、患者の前記血管構造の前記取得X線画像に適用するステップと、
を
実行させるためのプログラム。
【請求項7】
前記プロセッサに、造影剤注入での血管構造の前記X線画像を取得するステップを更に
実行させ、前記造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する前記現在の造影剤注入設定で行われる、請求項6に記載の
プログラム。
【請求項8】
前記プロセッサに、前記取得X線画像の現在のコントラストパラメータを決定するステップを更に
実行させ、
前記現在のコントラストパラメータが所定の閾値を下回る場合、前記適応画像コントラスト強調が適用される、請求項6に記載の
プログラム。
【請求項9】
前記造影剤注入設定は、送達されたヨード濃縮物、注入タイミング、注入量、注入速度、ヨード濃縮物の粘度及び前記血管構造の少なくとも1つの血管のリアルタイム圧力曲線からなる群から選択される造影剤注入パラメータを含む、請求項6に記載の
プログラム。
【請求項10】
前記プロセッサに、造影剤注入設定で造影剤を注入するステップを更に
実行させる、請求項6に記載の
プログラム。
【請求項11】
前記血管構造は、現在の患者の現在の特定の血管構造に関連する適応血管構造を含む、請求項6に記載の
プログラム。
【請求項12】
X線撮像システムを制御するための命令を含むコンピュータプログラムを記憶する、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
造影剤注入での血管構造の取得X線画像を提供させ、前記造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われ、
前記現在の造影剤注入設定を提供させ、
前記現在の造影剤注入設定に基づいて、前記血管構造の少なくとも主要血管の画像コントラストの予測を決定させ、
前記画像コントラストの前記予測に基づいて、前記血管構造
の適応画像コントラスト強調を決定させ、前記適応画像コントラスト強調は、前記取得X線画像の画像コントラストを強調するための前記取得X線画像への適応を規定し、
コントラスト強調されたX線画像を生成するために、前記適応画像コントラスト強調を、患者の前記血管構造の前記取得X線画像に適用させる、
非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記プロセッサは更に、患者の特定の状態に適応する
前記現在の造影剤注入設定に基づいて、前記画像コントラストの前記予測を決定する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記患者の前記特定の状態は、前記患者の特定の血管構造、前記患者の解剖学的構造、前記患者の病気、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記画像コントラストの前記予測は、前記患者の特定の状態に適応する
前記現在の造影剤注入設定に基づいて決定される、請求項6に記載の
プログラム。
【請求項16】
前記患者の前記特定の状態は、前記患者の特定の血管構造、前記患者の解剖学的構造、前記患者の病気、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の
プログラム。
【請求項17】
前記画像コントラストの前記予測は、前記患者の特定の状態に適応する
前記現在の造影剤注入設定に基づいて決定される、請求項12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記患者の前記特定の状態は、前記患者の特定の血管構造、前記患者の解剖学的構造、前記患者の病気、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイス、上記デバイスを有するシステム、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調方法、上記デバイスを制御するためのコンピュータプログラム要素及びコンピュータプログラム要素を格納したコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像では、見る人のために画質を向上させるためにコントラスト強調(CE)が提供される。コントラスト強調は、周波数分解のフレームワークにおいて実現することができる。例えば画像は、例えばいわゆるラプラシアンピラミッドを使用して、特定数の周波数サブバンドに分解される。強調したい解剖学的又は介入の詳細は、これらの周波数サブバンドの幾つかにわたって広げられる。全体のスペクトルを再構成する前に、局所強度に依存するゲインがこれらのサブバンドのコンテンツに適用されて強調が行われる。米国特許第7821266B2号では、向上された画質、したがって、十分な信号対ノイズ比でより良い画像コントラストを実現するために、シミュレーション画像が計算され、オペレータがオンラインで撮像パラメータを仮想的に最適化して変更することができる。米国特許第9008759B2号では、患者内の流体の伝播を記述するモデルが提供され、注入手順のパラメータが決定されて、所望の強調レベルがもたらされる。しかし、コントラスト強調は依然として常に十分な結果をもたらすとは限らないことが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、各取得画像に向上されかつ安定したコントラスト強調を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様によれば、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイスが提供される。デバイスは、入力ユニットと処理ユニットとを含む。入力ユニットは、造影剤が注入された状態の血管構造の取得X線画像を提供する。造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われる。入力ユニットは、一般的な血管構造を提供する。入力ユニットは、現在の造影剤注入設定を提供する。処理ユニットは、現在の造影剤注入設定に基づいて、一般的な血管構造の評価されたコントラストパラメータを決定する。処理ユニットは、評価されたコントラストパラメータに基づいて、一般的な血管構造の適応画像コントラスト強調を決定する。処理ユニットはまた、適応画像コントラスト強調を取得X線画像に適用して、コントラスト強調されたX線画像を生成する。
【0005】
一例では、現在の注入設定は処理ユニットに読み込まれる。
【0006】
一例では、一般的な血管構造は処理ユニットに読み込まれる。
【0007】
一例では、一般的な血管構造は、少なくとも画像がキャプチャされるべき標的血管構造について提供される。
【0008】
「取得」との用語はまた、キャプチャと呼ぶこともできる。
【0009】
「造影剤注入」との用語はまた、例えば造影剤の希釈物を物体に送るデバイスを用いた造影剤の送達又は供給と呼ぶこともできる。
【0010】
「一般的な血管構造」との用語はまた、人間の血管の理論モデルと呼ぶこともできる。
【0011】
「評価されたコントラストパラメータ」との用語はまた、血管構造内の造影剤の分布及び/又は濃度といったコントラストパラメータの推定又は予測と呼ぶこともできる。評価されたコントラストパラメータは、コントラスト強調されたX線画像における血管構造の少なくとも一部のコントラストの推定値を表し、また、現在の注入設定といった造影剤の特定の特性に依存する。
【0012】
適応画像コントラスト強調はまた、画質を向上させるための強調パラメータと呼ぶこともできる。適応画像コントラスト強調はまた、動的コントラスト強調又は予測動的コントラスト強調と呼ぶこともできる。
【0013】
一例では、処理ユニットはまた、評価されたコントラストパラメータが所定閾値を下回るか、等しいか又は上回るかを決定する。
【0014】
一例では、処理ユニットは、評価されたコントラストパラメータに基づいて、一般的な血管構造の適応画像コントラスト強調を決定するアルゴリズムを行う。
【0015】
一例では、適応画像コントラスト強調は、処理ユニット上で動作するコントラスト強調手順又はプログラムによって適用することができる。例えば特定の画像特徴のブースト又は調整を伴う画像処理アルゴリズムが提供されてよい。
【0016】
一例では、入力ユニット又は入力インターフェースは、現在の造影剤注入設定を読み込む。
【0017】
一例では、例えば患者に腎臓病があることにより、ヨード濃縮物の量を減少させることが好適である場合、対応する適応造影剤注入設定が適用される。一般的な血管構造のこの評価されたコントラストパラメータは、別の値を下回るか又は少なくとも当該別の値と異なると予測され、これは、評価されたコントラストパラメータの決定によって規定することができる。この情報に基づいて、血管ブースト又はコントラスト強調の前に、X線でキャプチャされる血管のコントラストを推測することができる。
【0018】
したがって、適応コントラスト強調は、現在の注入設定に基づいて画質を向上させるために情報に依存する。つまり、適応画像コントラスト強調は、画像の動的ブーストである。例えば適用されるコントラスト強調手順は、現在の注入設定によって決定されるが、これは患者の特性(例えば腎臓病)に依存する。
【0019】
上記腎臓病患者の例に関して、ヨード濃度を、腎臓病のない他の患者に比べて低くする必要がある。患者の血管のキャプチャされる画像のブーストは、この注入パラメータのこの適応を考慮することにより適応させることができる。
【0020】
一例では、評価されたコントラストパラメータに基づく一般的な血管構造の適応画像コントラスト強調は、強調アルゴリズムによって行われる。
【0021】
例えば血管構造の主要血管の評価されたコントラストパラメータを使用して、一般的な血管構造の現在のX線画像又はシミュレートされたX線画像といったX線画像の関連の周波数サブバンドのコンテンツに適用されるルックアップテーブル及びゲインがスケーリングされる。
【0022】
一例では、典型的な形状の典型的な患者について、典型的な(=高)ヨード濃度で得られた画像内の血管コントラストは、望ましいコントラスト若しくは基準コントラスト又はいわゆる閾値と仮定することができる。これはコントラスト強調パラメータの基準値を有してよい。
【0023】
他の状況では、例えば希釈されたヨード濃度の使用が原因で(例えば現在の造影剤濃度パラメータが基準値の半分)、X線画像における結果として得られる血管コントラストは低くなる。したがって、血管が見えにくくなったり、インターベンション医師や医師が絶対基準レベルを見逃したりする可能性がある。この例では、現在の造影剤注入設定に基づいて決定される画像コントラスト強調係数の値は、例えば2である。したがって、取得X線画像に適用される血管コントラスト強調は、2倍にブーストすることができる。
【0024】
この結果、X線画像に向上されかつ安定したコントラスト強調が適用され、例えば病変を含む解剖学的構造の不透明化及び輪郭描写が最適化される。
【0025】
一例によれば、デバイスは更に出力ユニットを含む。出力ユニットは、動的にコントラスト強調されたX線画像を提供する。出力ユニットは、例えばディスプレイユニット又はモニタである。
【0026】
出力ユニットは、グラフィカルユーザ出力インターフェースといった出力インターフェースと呼ぶこともできる。一例では、出力ユニットは、キャプチャされる画像に適応画像強調を適用した後に修正された画像データを送信する。
【0027】
第2の態様によれば、X線撮像システムが提供される。X線撮像システムは、X線撮像デバイスと、造影剤注入装置と、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイスとを含む。X線撮像デバイスは、造影剤が注入された状態の血管構造のX線画像を取得する。造影剤注入装置は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で造影剤注入を行う。
【0028】
一例では、造影剤注入装置はまた、注入器又は造影剤注入器と呼ぶこともできる。
【0029】
一例では、造影剤注入装置は、現在の造影剤注入設定を変更及び/又は適応させる。造影剤注入装置は、入力インターフェースを介して現在の造影剤注入設定を処理ユニットに送信する。一例では、データ送信は、処理ユニットへの無線接続であっても、例えばケーブル接続を介する他のタイプのデータ送信であってもよい。
【0030】
一例によれば、造影剤注入設定は、送達されたヨード濃縮物、注入タイミング、注入量、注入速度、ヨード濃縮物の粘度及び注入リアルタイム圧力曲線の群のうちの少なくとも1つの造影剤注入パラメータを含む。
【0031】
「リアルタイム圧力曲線」との用語は、注入されたヨードのリアルタイム濃度、即ち、濃縮物が注入される際の圧力に関する。
【0032】
第3の態様によれば、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調方法が提供される。方法は、以下のステップを含む。
a)第1のステップでは、造影剤が注入された状態の血管構造の取得X線画像が提供される。造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われる。
bl)次のステップでは、一般的な血管構造が提供される。
b2)更に次のステップでは、現在の注入設定が提供される。
c)別の次のステップでは、現在の造影剤注入設定に基づいて、一般的な血管構造の少なくとも一部の評価されたコントラストパラメータが決定される。
d)次のステップでは、評価されたコントラストパラメータに基づいて、一般的な血管構造の適応画像コントラスト強調が決定される。
e)更なる次のステップでは、適応画像コントラスト強調が、患者の血管構造の取得X線画像に適用されて、コントラスト強調されたX線画像が生成される。
【0033】
一例では、ステップd)において、コントラストパラメータの評価は、少なくとも患者の血管構造の画像がキャプチャされる標的血管構造に対して行われる。
【0034】
一例では、ステップa)~e)は異なる順序で配置される。例えばステップa)の前にステップbl)及び/又はb2)を行ってよい。
【0035】
一態様によれば、取得X線画像の状況に応じてコントラストブースト又はコントラスト強調を適応させることにより、取得X線画像の画質が向上される。したがって、コントラスト強調は動的に行われる。例えば太った患者の画像をキャプチャする場合、適応コントラスト強調パラメータは、痩せた患者よりも高いレベルに適応される。
【0036】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の例示的な実施形態を、次の図面を参照して以下に説明する。
【0038】
【
図1】
図1は、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイスの一例を示す。
【
図2】
図2は、上記デバイスを有するX線撮像システムの一例を示す。
【
図3】
図3は、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイス10を示す。デバイス10は、入力ユニット12と処理ユニット14とを含む。入力ユニット12は、(
図2に示すように)造影剤が注入された状態の血管構造の取得X線画像を提供する。造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われる。入力ユニット12は、一般的な血管構造を提供する。入力ユニット12はまた、現在の造影剤注入設定も提供する。処理ユニット14は、現在の造影剤注入設定に基づいて、一般的な血管構造の評価されたコントラストパラメータを決定する。処理ユニット14はまた、評価されたコントラストパラメータに基づいて、一般的な血管構造に対する適応画像コントラスト強調を決定する。処理ユニット14は更に、適応画像コントラスト強調を取得X線画像に適用して、コントラスト強調されたX線画像を生成する。
【0040】
一例では、(
図2に示すように)出力ユニットが設けられる。出力ユニットは、コントラスト強調されたX線画像を提供する。一例では、出力ユニットは、コントラスト強調されたX線画像を表示するディスプレイユニットである。
【0041】
図2は、X線撮像システム20を示す。X線撮像システム20は、X線撮像デバイス22と、造影剤注入装置24と、上述したような及び以下で説明するような血管構造のX線画像の画像コントラスト強調のためのデバイス10の例のうちの1つとを含む。X線撮像デバイスは、造影剤28が注入された状態の血管構造のX線画像を取得する。造影剤注入装置は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で造影剤28の注入を行う。
【0042】
一例では、造影剤注入装置24は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で造影剤28の注入を行う。一例では、現在の造影剤注入設定はデバイス10に送信される(接続線によって示す)。
【0043】
一例では、取得X線画像は、接続線32で示すように、デバイス10に送信される。
【0044】
図2は更に、X線画像の取得中にテーブル36上に横たわる患者34を示す。
【0045】
一例では、X線画像の取得は、造影剤希釈剤の注入と並行して行われる。
【0046】
一例では、現在の造影剤注入設定は、X線画像の取得と並行してデバイスに送信される。
【0047】
別の例では、現在の、即ち、適用された造影剤注入設定は、X線画像の取得後に送信される。
【0048】
一例では、造影剤注入装置24は可動である。
【0049】
一例では、造影剤注入設定は、送達されたヨード濃縮物、注入タイミング、注入量、注入速度、ヨード濃縮物の粘度及びリアルタイム圧力曲線の群のうちの少なくとも1つの造影剤注入パラメータを含む。
【0050】
図3は、血管構造のX線画像の画像コントラスト強調方法300を示す。方法は次のステップを含む。ステップa)とも呼ぶ第1のステップ302において、造影剤が注入された状態の血管構造の取得X線画像が提供される。造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われる。ステップb1)とも呼ぶ次のステップ304において、一般的な血管構造が提供される。ステップb2)とも呼ぶ更なる次のステップ306において、現在の注入設定が提供される。ステップc)とも呼ぶ次のステップ308において、現在の造影剤注入設定に基づいて、一般的な血管構造の評価されたコントラストパラメータが決定される。ステップd)とも呼ぶ更に次のステップ310において、評価されたコントラストパラメータに基づいて、一般的な血管構造の適応画像コントラスト強調が決定される。ステップe)とも呼ぶ次のステップ312において、適応画像コントラスト強調が患者の血管構造の取得X線画像に適用されて、コントラスト強調されたX線画像が生成される。
【0051】
一例では、ステップ302について、造影剤が注入された状態の血管構造のX線画像を取得するステップが提供されるが、造影剤注入は、少なくとも1つの造影剤注入パラメータを有する現在の造影剤注入設定で行われる。つまり、X線画像は、現在の注入設定の送信と少なくともほぼ並行して取得される。
【0052】
一例では、造影剤注入設定は、送達されたヨード濃縮物、注入タイミング、注入量、注入速度、ヨード濃縮物の粘度及び血管構造の少なくとも1つの血管のリアルタイム圧力曲線の群のうちの少なくとも1つの造影剤注入パラメータを含む。
【0053】
図示されていない例では、ステップa)の間に、造影剤注入設定で造影剤を注入するステップが更に提供される。更なる図示されていない例では、ステップb1)において、現在の患者の現在の特定の血管構造に関連する適応血管構造が提供される。患者の特定の血管構造を提供することにより、評価されたコントラストパラメータをより正確に決定することができる。一例では、特定の血管構造は、以前の測定、例えば他の撮像手順から得ることができる。
【0054】
更なる図示されていない例では、コントラストパラメータが所定閾値を下回る場合、適応画像コントラスト強調が決定され適用される。コントラストパラメータが所定閾値を超える場合、適応画像コントラスト強調は適用されない。
【0055】
一例では、閾値は、以前の測定又は調査により推定又は定義することができる。
【0056】
図4は、方法400の別の例示的な実施形態を示す。ステップ402において、標的血管構造の血管モデルといった一般的な血管構造が提供される。一例では、特定の血管モデルを改良として作成することができる。改良には、患者モデルが含まれてよい。
【0057】
ステップ404において、注入された造影剤の特性、即ち、希釈、量、速度、リアルタイム圧力曲線、粘度、造影剤の種類、マルチヘッド注入器設定又はマルチシリンジ選択といった1つ以上の造影剤注入パラメータのいわゆる現在の設定がデバイスに送信される。
【0058】
ステップ402及び404から、ステップ406におけるブーストの前に、血管モデルのコントラストを推定又は評価することができる。ステップ408において、ステップ406での推定に基づいて、評価に従って画像コントラスト強調を決定することができ、その後、取得X線画像に適用することができる。
【0059】
つまり、例えばX線画像の動的コントラスト強調が提供され、これにより、コントラストは、血管構造の少なくとも主要血管のコントラストの予測を使用して動的に適応される。予測は、現在の造影剤注入設定に従って造影剤が注入された場合に、これらの血管の一般的なモデルのX線画像において得られるコントラストの評価に基づいている。造影剤は、希釈又は非希釈造影剤であってよい。
【0060】
本発明の別の例示的実施形態では、適切なシステム上で、前述の実施形態の1つによる方法の方法ステップを実行するように適応されることを特徴とするコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0061】
したがって、コンピュータプログラム要素は、コンピュータユニットに記憶されていてもよい。当該コンピュータユニットも、本発明の一実施形態の一部であってよい。当該コンピュータユニットは、上記方法のステップを行うか又はステップの実行を誘導する。更に、コンピュータユニットは、上記装置のコンポーネントを動作させる。コンピュータユニットは、自動的に動作するか及び/又はユーザの命令を実行する。コンピュータプログラムが、データプロセッサの作業メモリにロードされてよい。したがって、データプロセッサは、本発明の方法を実行する能力を備えている。
【0062】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、アップデートによって、既存のプログラムを、本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムとの両方を対象とする。
【0063】
更に、コンピュータプログラム要素は、上記方法の例示的な実施形態の手順を満たす全ての必要なステップを提供することができる。
【0064】
本発明の更なる例示的な実施形態によれば、CD-ROMといったコンピュータ可読媒体が提示される。コンピュータ可読媒体に、コンピュータプログラム要素が記憶され、コンピュータプログラム要素は上記セクションに説明されている。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体といった適切な媒体上に記憶される及び/又は分散配置されるが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介した形態といった他の形態で分配されてもよい。
【0065】
しかし、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブといったネットワークを介して提示され、当該ネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードされてもよい。本発明の更なる例示的な実施形態によれば、ダウンロード用にコンピュータプログラム要素を利用可能にする媒体が提供され、当該コンピュータプログラム要素は、本発明の上記実施形態のうちの1つによる方法を行うように構成される。
【0066】
なお、本発明の実施形態は、様々な主題を参照して説明されている。具体的には、方法タイプのクレームを参照して説明される実施形態もあれば、デバイスタイプのクレームを参照して説明される実施形態もある。しかし、当業者であれば、上記及び下記の説明から、特に明記されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、様々な主題に関連する特徴の任意の組み合わせも、本願によって開示されていると見なされると理解できるであろう。しかし、全ての特徴は、特徴の単なる足し合わせ以上の相乗効果を提供する限り、組み合わされることが可能である。
【0067】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示され、説明されたが、当該例示及び説明は、例示的に見なされるべきであり、限定的に見なされるべきではない。本発明は、開示される実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形態様は、図面、開示内容及び従属請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、実施される。
【0068】
請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、単数形も、複数形を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に引用される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。