(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】周面発光型導光棒
(51)【国際特許分類】
F21V 8/00 20060101AFI20240226BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240226BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20240226BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240226BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20240226BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240226BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20240226BHJP
F21Y 103/00 20160101ALN20240226BHJP
【FI】
F21V8/00 282
G02B6/02 391
G02B6/036
F21V8/00 241
F21V8/00 260
F21S2/00 230
G02B6/00 326
F21Y115:10
F21Y101:00 100
F21Y103:00
(21)【出願番号】P 2020014438
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100168239
【氏名又は名称】岡倉 誠
(72)【発明者】
【氏名】笛吹 祐登
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-121834(JP,A)
【文献】特開2013-57924(JP,A)
【文献】特開2010-33043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 8/00
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂を主材とする中心側のコア層と;このコア層よりも屈折率が低い樹脂を主材とする外周側のクラッド層と;を含んで構成される一方、
前記クラッド層の材料に、屈折率が異なるフッ素系樹脂を2種類以上混合したポリマーアロイが使用されて、クラッド層が顔料を含まない状態で白濁していることを特徴とする周面発光型導光棒。
【請求項2】
透明樹脂を主材とする中心側のコア層と;このコア層よりも屈折率が低い樹脂を主材とする外周側のクラッド層と;を含んで構成される一方、
前記クラッド層の材料に、屈折率が異なる樹脂を混合したポリマーアロイが使用されて、クラッド層が顔料を含まない状態で白濁しており、更に前記コア層とクラッド層の間に中間層が形成されると共に、中間層にコア層よりも屈折率が低い単一ポリマーが使用されていることを特徴とする周面発光型導光棒。
【請求項3】
前記クラッド層のポリマーアロイ、及び前記中間層の単一ポリマーの双方に共通する材料としてポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が使用されていることを特徴とする
請求項2記載の周面発光型導光棒。
【請求項4】
前記クラッド層のポリマーアロイの材料として、屈折率1.30~1.38のフッ素系樹脂が低屈折率ポリマーとして使用されると共に、この低屈折率ポリマーよりも屈折率が高い高屈折率ポリマーとして屈折率1.36~1.44のフッ素系樹脂が使用されていることを特徴とする
請求項1~3の何れか一つに記載の周面発光型導光棒。
【請求項5】
前記クラッド層のポリマーアロイの低屈折率ポリマーとして少なくとも、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が使用されていることを特徴とする
請求項1~4の何れか一つに記載の周面発光型導光棒。
【請求項6】
前記クラッド層のポリマーアロイの高屈折率ポリマーとして少なくとも、ポリフッ化ビニリデン、またはテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体が使用されていることを特徴とする
請求項1~5の何れか一つに記載の周面発光型導光棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周面発光型導光棒の改良、詳しくは、発光性能及び発光バランスに優れた周面発光型導光棒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、線状発光体の利用したイルミネーション等の光装飾具や警告具が開発されているが、可撓性の乏しいガラス管から成るネオンライトは、それ自体を湾曲させて固定対象の湾曲面に沿わせたり、文字や図形、模様を表現したりすることが難しいだけでなく、ガラス管の破損等も起き易かったため、使い勝手が悪かった。
【0003】
そのため、従来においては、端面から光を入射して線状発光体として利用できるコア層とクラッド層を備えたプラスチック製の周面発光型導光棒も開発されているが(特許文献1~3参照)、従来の周面発光型導光棒は、発光性能を上げるためにクラッド層に光散乱剤として白色顔料(酸化チタン等)を添加する必要があった。
【0004】
しかしながら、上記白色顔料をクラッド層に添加する方法では、光源に近い部位の発光輝度が大きくなり過ぎて輝度減衰率が大きくなるなど、添加量による発光バランスの調整が難しいだけでなく、周面発光型導光棒を押出成形する際に、ダイの吐出ノズルに顔料の塊がメヤニとなって生じ、これが成形品に混入する問題も起き易かった。
【0005】
一方、上記メヤニの発生を防止しつつ輝度を上げる手法として、クラッド層に白色顔料を添加せず、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)の結晶化度の高い乳白グレードを使用することで、結晶部による光散乱効果を利用する方法が考えられるが、結晶部による散乱効果は白色顔料に及ばず、本来の光装飾具や警告具としての用途に適しない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-131530号公報
【文献】特開2009-276651号公報
【文献】特開2013-57924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、発光性能に優れるだけでなく、発光バランスの調整も容易に行え、更に押出成形する際に品質を低下させるメヤニの問題も生じ難い周面発光型導光棒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、透明樹脂を主材とする中心側のコア層1と;このコア層1よりも屈折率が低い樹脂を主材とする外周側のクラッド層2と;を含んで周面発光型導光棒を構成する一方、前記クラッド層2の材料に、屈折率が異なる樹脂を混合したポリマーアロイを使用して、顔料を含まない状態でクラッド層2を白濁させた点に特徴がある。
【0010】
また本発明では、上記クラッド層2の材料に屈折率が異なるフッ素系樹脂を2種類以上混合したポリマーアロイを使用することにより、フッ素系樹脂の特性(耐薬品性、耐候性、防汚性等)に優れたクラッド層2を形成することができる。
【0011】
また本発明では、上記クラッド層2のポリマーアロイの材料として、屈折率1.30~1.38のフッ素系樹脂を低屈折率ポリマーとして使用すると共に、この低屈折率ポリマーよりも屈折率が高い高屈折率ポリマーとして屈折率1.36~1.44のフッ素系樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0012】
また上記クラッド層2のポリマーアロイの低屈折率ポリマーに関しては、少なくともテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)を好適に使用できる。
【0013】
また上記クラッド層2のポリマーアロイの高屈折率ポリマーに関しては、少なくともポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)を好適に使用できる。
【0014】
また本発明では、上記コア層1とクラッド層2の間に中間層3を形成すると共に、中間層3にコア層1よりも屈折率が低い単一ポリマーを使用することで、導光性能を維持しつつ発光性能を高めることができる。
【0015】
また本発明では、上記クラッド層2のポリマーアロイ、及び中間層3の単一ポリマーの双方に共通する材料として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)の何れかを好適に使用できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の周面発光型導光棒は、クラッド層の主材料に、屈折率の異なる樹脂を組み合わせたポリマーアロイを使用することでクラッド層を白濁させているため、白色顔料(光散乱剤)を添加しなくてもクラッド層で光を散乱させて発光性能及び発光バランスを高めることができる。また光散乱剤の添加量の微妙な調整等も不要であるため、発光バランスの調整も容易となる。
【0017】
また本発明の周面発光型導光棒は白色顔料が添加されておらず、ポリマーアロイの材料自体の特性を利用して白濁させているため、周面発光型導光棒を押出成形する際にダイの吐出ノズルに顔料の塊がメヤニとなって生じるようなこともなく、製造時のメヤニ混入による不良品の発生や成形品の品質低下も起き難い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態の導光棒を表す全体斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態の導光棒を表す断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態の導光棒を表す断面図である。
【
図4】効果の実証試験における導光棒の輝度減衰特性を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
『第一実施形態』
次に、本発明の第一実施形態について
図1及び
図2に基づいて説明する。なお図中、符号1で指示するものは、コア層であり、符号2で指示するものは、クラッド層である。また符号Bで指示するものは、導光棒である。
【0020】
「周面発光型導光棒の構成」
[1]周面発光型導光棒の基本構成について
本実施形態においては、周面発光型の導光棒Bを、
図1に示すように透明樹脂を主材とするコア層1の周囲にコア層1よりも屈折率が小さい樹脂を主材とするクラッド層2を形成して構成している。またクラッド層2の材料に屈折率が異なる樹脂を混合したポリマーアロイを使用することで、顔料を含まない状態でもクラッド層2が白濁した状態となっている。
【0021】
上記の構成を採用することにより、導光棒Bの端部に光源装置から光を入射した際、入射された光が導光棒Bのクラッド層2内で散乱することで導光棒Bの発光輝度を高めることができ、光散乱剤(白色顔料)が添加された導光棒のように発光させることができる。またクラッド層2を顔料無添加とすることで、成形時の不具合(例えば、メヤニの問題等)を防止できる。
【0022】
[2]コア層について
[2-1]コア層の材料
上記導光棒Bのコア層1の材料に関しては、透明樹脂(エラストマーを含む)であればよく、具体的にはアクリル系エラストマー、硬質のアクリル系樹脂や硬質アクリル系樹脂にアクリル系エラストマーを混合したポリマーアロイ、またはアクリル系以外のポリオレフィン系エラストマー(TPO)や、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリカーボネート樹脂(PC)などを使用することもできる。本実施形態では軟質アクリルエラストマーを使用している。またコア層1の材料としては、押出成形が可能な熱可塑性樹脂が好ましいが、熱硬化性樹脂を採用することもできる。
【0023】
また上記コア層1の材料に使用するアクリル系エラストマーに関しては、熱可塑性エラストマーであるメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体(MMA-BAブロック共重合体)、またはアクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体の1種または複数種を好適に使用することができる。
【0024】
一方、上記コア層1に硬質アクリル系樹脂を使用する場合には、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸イソブチルまたはポリメタクリル酸t-ブチルの1種または複数種を好適に使用できる。なお本明細書中においては、ガラス転移温度(Tg)が常温(25℃)以上のアクリル系樹脂を「硬質アクリル系樹脂」とする。
【0025】
[2-2]コア層の形状
また上記コア層1の形状に関しては、本実施形態では
図2に示すように断面形状が円形状の棒体としているが、コア層1の断面形状に関しては、かまぼこ型の半楕円形状や楕円形状や半円形状、多角形状等を採用することもできる。
【0026】
[3]クラッド層について
[3-1]クラッド層の材料
一方、上記導光棒Bのクラッド層2の材料として使用するポリマーアロイに関しては、本実施形態では、屈折率1.34のテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の低屈折ポリマーと屈折率1.40~1.42のポリフッ化ビニリデン(PVDF)の高屈折率ポリマーのポリマーアロイを使用しているが、低屈折ポリマーとしては、屈折率1.34のテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等を使用することもでき、また高屈折率ポリマーとしては、屈折率1.40のテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等を使用することもできる。
【0027】
また本実施形態のようにクラッド層2に屈折率が異なるフッ素系樹脂を混合したポリマーアロイを使用する場合には、低屈折率ポリマーとして屈折率1.30~1.38のフッ素系樹脂(FEPやPFA等)を好適に使用することができ、また低屈折率ポリマーよりも屈折率が高い高屈折率ポリマーとしては、屈折率1.36~1.44のフッ素系樹脂(PVDFやETFE等)を好適に使用することができる。
【0028】
また上記ポリマーアロイの混合比率に関しては、本実施形態では低屈折率ポリマーであるテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を70%、高屈折ポリマーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を30%としているが、高屈折率ポリマーと低屈折率ポリマーの混合比率については使用する材料に応じて適宜変更することができる。
【0029】
また本実施形態では、フッ素系樹脂の特性を損なわずにクラッド層2を白濁させるために屈折率が異なるフッ素系樹脂を混合したポリマーアロイを使用しているが、導光棒Bに求められる特性に応じてフッ素系樹脂とフッ素系以外の樹脂、またはフッ素系以外の樹脂同士を組み合わせたポリマーアロイを使用することもできる。またクラッド層2の材料には3種以上の樹脂を混合したポリマーアロイを使用することもできる。
【0030】
[3-2]クラッド層の形状
また上記クラッド層2の形状に関しては、本実施形態では断面円形のコア層1の外周全体に一定の厚みで形成しているが、クラッド層2の厚みは適宜変更することができる。なお上記クラッド層2の厚みに関しては、導光棒Bの曲げ強度や導光性能、発光性能の観点から0.05mm~1.0mmの範囲内の大きさとすることが好ましい。
【0031】
[4]顔料の添加について
また本実施形態では、導光棒Bを顔料無添加で構成しているが、クラッド層2以外のコア層1の材料に顔料を添加することもできる。例えば、上記コア層1に対しブルーイング剤(青色顔料や紫色顔料)を添加して導光棒Bの発光色の黄変を抑制することもできる。
【0032】
[5]光源装置について
また上記導光棒に光を入射するための光源装置としては、LED光源を好適に使用できるが、イルミネーション等の用途に応じて単色発光型のものだけでなく複数色発光型のものを使用することもでき、光源装置を導光棒Bの一端だけでなく両端に装着することもできる。また光源装置にLED光源以外のハロゲンランプ等を使用することもできる。
【0033】
『第二実施形態』
次に、本発明の第二実施形態について
図3に基づいて説明する。なお図中、符号3で指示するものは、中間層である。本実施形態では、
図3に示すようにコア層1とクラッド層2の間に透明な中間層3を形成し、この中間層3の材料にコア層1よりも屈折率が小さい単一ポリマーを使用することによって導光棒Bの輝度減衰率を抑えると共に、発光色を光散乱剤(白色顔料)が添加された導光棒に近付けることができる。その他の構成については、第一実施形態と同様である。
【0034】
[1]中間層について
[1-1]中間層の材料
上記導光棒Bの中間層3の単一ポリマーの材料に関しては、本実施形態では、クラッド層2と接着するためにクラッド層2のポリマーアロイの材料の一つであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を使用しているが、コア層1よりも屈折率が低い材料であれば、その他のフッ素系樹脂やフッ素系以外の樹脂を使用することもできる。
【0035】
また中間層3とクラッド層2との接着性を高めるために、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)や、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)をクラッド層2のポリマーアロイと中間層3の単一ポリマーの双方に共通する材料として使用することもできる。
【0036】
[1-2]中間層の形状
また上記中間層3の形状に関しては、本実施形態では断面円形のコア層1とクラッド層2の間に一定の厚みで形成しているが、中間層3の厚みに関しては、クラッド層2と同様に適宜変更することができ、また導光棒Bの曲げ強度や導光性能、発光性能の観点から0.05mm~1.0mmの範囲内の大きさとすることが好ましい。
【0037】
[2]顔料の添加について
また本実施形態では、導光棒Bを顔料無添加で構成しているが、クラッド層2以外のコア層1または中間層3の材料に顔料を添加することもでき、例えば、上記中間層3に対しブルーイング剤(青色顔料や紫色顔料)を添加して導光棒Bの発光色の黄変を抑制することもできる。
【実施例】
【0038】
[効果の実証試験]
次に本発明の効果の実証試験について説明する。まず本試験では、第二実施形態に係る三層構造の導光棒、及び第二実施形態のクラッド層とは材料が異なる三層構造の導光棒(下記実施例1及び比較例1~2)を作製し、これらの各導光棒について、輝度減衰特性および色度変化の評価を行った。以下に実施例1及び比較例1~2の各サンプルの製造条件、並びに各試験の方法及び結果について説明する。
【0039】
「実施例1」
この実施例1では、直径3.5mm(コア層:直径3.1mm、中間層:厚み0.1mm、クラッド層:厚み0.1mm)の丸棒状の周面発光型導光棒を共押出成形により作製した。またコア層の主材料には、軟質アクリルエラストマーを使用し、中間層には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の透明グレードを使用し、クラッド層の主材料には、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を70%、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の透明グレードを30%の比率で混合したポリマーアロイを使用した。なおポリフッ化ビニリデン(PVDF)の透明グレードとは、ポリマーアロイの効果を見るために結晶部での散乱効果を抑えられる低結晶性のものをいう。
【0040】
「比較例1」
この比較例1では、上記実施例1と同様、直径3.5mm(コア層:直径3.1mm、中間層:厚み0.1mm、クラッド層:厚み0.1mm)の丸棒状の周面発光型導光棒を共押出成形により作製した。またコア層の主材料には、軟質アクリルエラストマーを使用し、中間層には、フッ素系樹脂であるテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)を使用し、クラッド層の主材料には、フッ素系樹脂であるテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)を使用した。またクラッド層には、光散乱剤(白色顔料)である酸化チタンをクラッド層の主材料100重量部に対し0.065重量部添加した。
【0041】
「比較例2」
この比較例2では、上記実施例1と同様、直径3.5mm(コア層:直径3.1mm、中間層:厚み0.1mm、クラッド層:厚み0.1mm)の丸棒状の周面発光型導光棒を共押出成形により作製した。またコア層の主材料には、軟質アクリルエラストマーを使用し、中間層には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の透明グレードを使用し、クラッド層の主材料には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の顔料を含まない乳白グレードを使用した。製造条件をまとめた表1を以下に示す。
【表1】
【0042】
<輝度減衰特性の評価>
上記実施例1及び比較例1~2の導光棒について、寸法を長さ1000mm、直径3.5mmとして、光源からの距離が100~900mmの部位の発光輝度を100mm間隔で測定した。なお本試験では、発光輝度の測定を、導光棒の被測定部位から垂直方向に600mm離れた位置に分光放射輝度計(CS-2000コニカミノルタ製)を配置して行った。また光源には、駆動電流300mA、のものを使用し、導光棒端部の入光量28lm(ルーメン)とした。測定条件をまとめた表2を以下に示す。
【表2】
【0043】
そして、測定結果をグラフ化した
図4を見ても分かるように、実施例1の導光棒の輝度は、比較例2の輝度より高いことが確認できた。またこれにより実施例1の導光棒は発光バランスに優れていることが確認できた。下記表3に発光輝度の詳細なデータを示す(輝度の単位はcd/m
2)。
【表3】
【0044】
<光源から近距離の輝度と成形性の評価>
次に上記実施例1及び比較例1~2の光源から近距離(100mm~400mm)の輝度と成形性の評価を行った。下記表4に輝度と成形性の評価を示す。比較例1は、光源から近距離の輝度が高いものの、押出成形する際にダイの吐出ノズルに顔料の塊がメヤニとなって生じていた。また比較例2は、顔料を使用していないためメヤニの発生は無かったが、光源から近距離の輝度が低く、光装飾具や警告具としての用途に利用するには光源の輝度を上げなければならず、消費電力の面で問題があった。一方、実施例1においては、比較例2と同様に顔料を使用していないためメヤニの発生が生じず、更に光源から近距離の輝度についても比較例2の輝度より高いことが確認できた。
【表4】
【符号の説明】
【0045】
1 コア層
2 クラッド層
3 中間層
B 導光棒