(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】データ管理システム,管理方法,管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240226BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2020016910
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】童子 淳
(72)【発明者】
【氏名】山田 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191351(JP,A)
【文献】特開2013-149119(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0131471(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の各ステップを実行するように構成された電子回路を備える管理システムに実行させる方法であって、
建築物を構成する建築部材について部材識別情報と部材形状情報を記録した設計データベースと、前記建築物の計測点の点座標を記録した計測データベースと、と情報の送受信を行って、
(A)前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから、形状を算出する形状算出部材を選択するステップと、
(B)前記設計データベースから前記形状算出部材の部材形状情報を取得するステップと、
(C)前記計測データベースに記録された前記計測点のなかから、判定対象とする対象点を選択するステップと、
(D)前記形状算出部材の前記部材形状情報を利用して前記対象点の点座標が前記形状算出部材のものであるかを判定するステップと、
(E)前記対象点が前記形状算出部材のものである場合に、前記対象点を、前記形状算出部材の部材識別情報と関連付けて、前記計測データベースに記録するステップと、
を有することを特徴とする管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管理方法において、前記(E)ステップで、前記計測データベースに、前記対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,前記形状算出部材の部材識別情報と,を関連付けた割付点群情報テーブルを作成する
ことを特徴とする管理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の管理方法において、前記(E)ステップの後に、
(F)前記設計データベースに記録された前記建築部材について全て確認したかを判定し、全てを確認していない場合は前記(A)ステップに戻り、別の建築部材を前記形状算出部材に選択するステップと、
を有することを特徴とする管理方法。
【請求項4】
請求項2を引用する請求項3に記載の管理方法において、前記(F)ステップの後に、
(G)前記対象点がどの建築部材とも対応しなかったかを判定し、対応しなかった場合は、該対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,座標が最も近かった前記形状算出部材の部材識別情報と,該対象点には対応付けする部材が無いという情報とを関連付けて、前記割付点群情報テーブルに記録するステップと、
を有することを特徴とする管理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の管理方法において、
前記(D)ステップにおいて、前記部材識別情報として、前記形状算出部材の部材頂点に関するデータを利用することを特徴とする管理方法。
【請求項6】
請求項1に記載の管理方法において、
前記(D)ステップにおいて、前記部材識別情報として、前記形状算出部材の部材径に関するデータを利用することを特徴とする管理方法。
【請求項7】
請求項2または4に記載の管理方法において、
(H)前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから、対比対象とする対象部材を選択するステップと、
(I)前記割付点群情報テーブルから前記対象部材と部材識別情報が等しい計測データを読み出すステップと、
を有することを特徴とする管理方法。
【請求項8】
請求項2を引用する請求項3に記載の管理方法において、前記(A)から(F)のステップを経た結果、前記対象点が複数の建築部材と対応して前記割付点群情報テーブルに記憶されることを特徴とする管理方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の管理方法を、コンピュータプログラムで記載し、コンピュータにその管理方法を実行させることを特徴とする管理プログラム。
【請求項10】
建築物を構成する建築部材について部材識別情報と部材形状情報を記録した設計データベースと、
前記建築物の計測点の点座標を記録した計測データベースと、
前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから選択した形状算出部材の前記部材形状情報を取得する部材形状情報取得部と、
前記形状算出部材の前記部材形状情報を利用して、前記計測データベースに記録された前記計測点のなかから選択した対象点の座標が前記形状算出部材のものであるかを判定する部材範囲内判定部と、
前記対象点を、前記形状算出部材の部材識別情報と関連付けて、前記計測データベースに記録する割付計測データ作成部と、
を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の管理システムにおいて、前記割付計測データ作成部は、前記計測データベースに、前記対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,前記形状算出部材の部材識別情報とを関連付けた割付点群情報テーブルを作成することを特徴とする管理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の管理システムにおいて、さらに、
前記設計データベースに記録された前記建築部材について全て確認し、前記対象点がどの建築部材とも対応しなかった場合に、該対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,座標が最も近かった前記形状算出部材の部材識別情報と,該対象点には対応付けする部材が無いという情報とを関連付けて、前記割付点群情報テーブルに記録する未割付計測データ作成部、
を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の管理システムにおいて、
前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから選択された対象部材について、前記割付点群情報テーブルから、前記対象部材と部材識別情報が等しい計測データを読み出す割付計測データ選択部、
を備えることを特徴とする管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の設計および施工に関するデータを管理するためのシステム,方法,およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築の分野では、BIM(Building Information Modeling)と呼ばれる3Dモデルの活用が進んでいる。BIMは、設計現場、すなわち、企画,意匠設計,設備設計,設計分析,実施設計,施工計画,および部品製作において活用が進んでいる。例えば特許文献1には、工場での部材製作の場面でBIMを活用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、施工現場では、BIMの活用が遅れており、設計現場において作成された設計BIMを基にして施工の各工程において施工図を作成し、施工の各工程でスキャナ等で計測データを取得して、設計と施工を管理している。従って、施工状況を確認する際に、設計データと計測データを対比するが、対比処理は、対象となる全ての図面データを読み出して行われるため、容量が重く、取り扱いが不便であった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、施工状況を確認する際のデータ処理の迅速化と業務の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の管理方法は、建築物を構成する建築部材について部材識別情報と部材形状情報を記録した設計データベースと、前記建築物の計測点の点座標を記録した計測データベースと、と情報の送受信を行って、(A)前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから、形状を算出する形状算出部材を選択するステップと、(B)前記設計データベースから前記形状算出部材の部材形状情報を取得するステップと、(C)前記計測データベースに記録された前記計測点のなかから、判定対象とする対象点を選択するステップと、(D)前記形状算出部材の前記部材形状情報を利用して前記対象点の点座標が前記形状算出部材のものであるかを判定するステップと、(E)前記対象点が前記形状算出部材のものである場合に、前記対象点を、前記形状算出部材の部材識別情報と関連付けて、前記計測データベースに記録するステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
上記態様において、前記(E)ステップで、前記計測データベースに、前記対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,前記形状算出部材の部材識別情報と,を関連付けた割付点群情報テーブルを作成するのも好ましい。
【0008】
上記態様において、前記(E)ステップの後に、(F)前記設計データベースに記録された前記建築部材について全て確認したかを判定し、全てを確認していない場合は前記(A)ステップに戻り、別の建築部材を前記形状算出部材に選択するステップと、を有するのも好ましい。
【0009】
上記態様において、前記(F)ステップの後に、(G)前記対象点がどの建築部材とも対応しなかったかを判定し、対応しなかった場合は、該対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,座標が最も近かった前記形状算出部材の部材識別情報と,該対象点には対応付けする部材が無いという情報とを関連付けて、前記割付点群情報テーブルに記録するステップと、を有するのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記(D)ステップにおいて、前記部材識別情報として、前記形状算出部材の部材頂点に関するデータを利用するのも好ましい。
【0011】
上記態様において、前記(D)ステップにおいて、前記部材識別情報として、前記形状算出部材の部材径に関するデータを利用するのも好ましい。
【0012】
上記態様において、(H)前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから、対比対象とする対象部材を選択するステップと、(I)前記割付点群情報テーブルから前記対象部材と部材識別情報が等しい計測データを読み出すステップと、を有するのも好ましい。
【0013】
上記態様において、前記(A)から(F)のステップを経た結果、前記対象点が複数の建築部材と対応して前記割付点群情報テーブルに記憶されるのも好ましい。
【0014】
上記態様の管理方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にする管理プログラムも好ましい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明のある態様の管理システムは、建築物を構成する建築部材について部材識別情報と部材形状情報を記録した設計データベースと、前記建築物の計測点の点座標を記録した計測データベースと、前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから選択した形状算出部材の前記部材形状情報を取得する部材形状情報取得部と、前記形状算出部材の前記部材形状情報を利用して、前記計測データベースに記録された前記計測点のなかから選択した対象点の座標が前記形状算出部材のものであるかを判定する部材範囲内判定部と、前記対象点を、前記形状算出部材の部材識別情報と関連付けて、前記計測データベースに記録する割付計測データ作成部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記態様において、前記割付計測データ作成部は、前記計測データベースに、前記対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,前記形状算出部材の部材識別情報とを関連付けた割付点群情報テーブルを作成するのも好ましい。
【0017】
上記態様において、さらに、前記設計データベースに記録された前記建築部材について全て確認し、前記対象点がどの建築部材とも対応しなかった場合に、該対象点について、該対象点の識別情報と,該対象点の点座標と,座標が最も近かった前記形状算出部材の部材識別情報と,該対象点には対応付けする部材が無いという情報とを関連付けて、前記割付点群情報テーブルに記録する未割付計測データ作成部を備えるのも好ましい。
【0018】
上記態様において、前記設計データベースに記録された前記建築部材のなかから選択された対象部材について、前記割付点群情報テーブルから、前記対象部材と部材識別情報が等しい計測データを読み出す割付計測データ選択部を備えるのも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のデータ管理システム,管理方法,管理プログラムによれば、施工状況を確認する際のデータ処理の迅速化と業務の効率化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る管理システムの構成ブロック図である。
【
図2】同管理システムに係る設計データベースの一例を示す図である。
【
図3】同管理システムに係る計測データベースの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【
図5】同管理フローの部材形状情報の取得の例を示すフロー図である。
【
図6】同管理フローの部材範囲内判定の例を示すフロー図である。
【
図8】同管理フローの部材形状情報の取得の別の例を示すフロー図である。
【
図9】同管理フローの部材範囲内判定の別の例を示すフロー図である。
【
図11】本発明の第二の実施の形態に係る管理システムの構成ブロック図である。
【
図12】本発明の第二の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【
図14】本発明の第三の実施の形態に係る管理システムの構成ブロック図である。
【
図15】本発明の第二の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【
図16】従来の管理方法を示す管理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
<第一の実施形態>
(第一の実施形態に係る管理システムの構成)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る管理システム1の構成ブロック図である。管理システム1は、入出力装置2と、設計データベース3と、計測データベース4と、設計モデル作成部6と、計測データ作成部7と、計測データ座標取得部8と、部材形状情報取得部9と、部材範囲内判定部10と、割付計測データ作成部11と、を備える。
【0023】
入出力装置2は、少なくとも演算部、記録部、通信部、表示部、操作部を備える汎用パーソナルコンピュータやタブレット端末等であり、管理者からの操作が可能である。
【0024】
設計モデル作成部6,計測データ作成部7,計測データ座標取得部8,部材形状情報取得部9,部材範囲内判定部10,および割付計測データ作成部11の各機能部は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成される。各機能部は、入出力装置2内に、または他の外部ハードウェア/ソフトウェアのいずれかで、構成されてもよい。後者の場合、各機能部は、入出力装置2とネットワークを通じて情報の送受信を行える。
【0025】
設計データベース3および計測データベース4は、ネットワークを介して通信可能に構成されたサーバコンピュータに記憶されている。該サーバコンピュータは、関連する機能部と通信が可能であり、関連する機能部と情報の送受信を行える。
【0026】
設計データベース3には、管理対象となる建築物の設計BIMに基づく設計データ(建築物を構成する一つ一つの建築部材を3Dモデル形状で有したデータ。3Dモデルには面,線,点の形状も含まれる。以降、設計モデルとも称する)が記憶されている。
【0027】
設計データベース3は、
図2に示すように、各建築部材に関し、部材識別情報(以下、部材ID)と,部材座標と,部材形状とを関連付ける設計テーブル31を備える。
【0028】
このうち、部材形状には、部材形状情報をさらに細かく管理する下位テーブルを備える。部材形状情報としては、好ましくは、部材頂点に関するデータおよび/または部材径に関するデータを備える。一例として、部材頂点に関するデータとしては、部材頂点テーブル32と部材線分テーブル33の組み合わせを備える。部材径に関するデータとしては、部材中心テーブル34と部材径テーブル35の組み合わせを備える。
【0029】
部材頂点テーブル32には、各部材について、部材の頂点ごとに、部材頂点の識別情報(以下、部材頂点ID)と,部材IDと,部材頂点座標が関連付けて記憶されている。部材線分テーブル33には、各部材について、部材の線分ごとに、部材線分の識別情報(以下、部材線分ID)と,線分の始点にある部材頂点IDと,線分の終点にある部材頂点IDが関連付けて記憶されている。なお、頂点とは、角をなす二直線が交わる点である。線分とは、頂点と頂点を結ぶ線である。
【0030】
部材中心テーブル34には、各部材の天面と底面の中心点について、それぞれ、部材中心の識別情報(以下、部材中心ID)と,部材IDと,部材中心座標が関連付けて記憶されている。部材径テーブル35には、各部材について、部材の底面の径に関し、部材径の識別情報(以下、部材径ID)と,部材IDと,部材半径が関連付けて記憶されている。
【0031】
計測データベース4には、スキャナ等を利用して得られた上記建築物の計測データ(座標情報をレジストレーションした点群データ,点データ、計測地点の座標情報を保持する画面データ,建築部材の施工誤差に関するデータ)が記憶されている。計測データには、例えば日付,時刻,場所などにより、計測毎に、計測IDが付けられている。
図3に示すように、計測データベース4は、計測IDを管理する計測テーブル41を備える。また、計測データベース4は、計測ID毎に、その計測で取得された計測点に対し、計測点の識別情報(以下、計測点ID)と,計測IDと,点座標とを関連付けた計測点群情報テーブル42を備える。
【0032】
そして、計測データベース4は、さらに、計測点を部材単位で管理するための、割付点群情報テーブル43を備える。割付点群情報テーブル43には、計測点に対する新たな識別情報(以下、割付点ID)と,設計データベース3と対応付く部材IDと,点座標と,対応付けられた部材の有無と、が関連付けて記憶される。この割付点群情報テーブル43を作成するために、設計モデル作成部6,計測データ作成部7,計測データ座標取得部8,部材形状情報取得部9,部材範囲内判定部10,および割付計測データ作成部11が機能する。これらの機能部については、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0033】
(第一の実施形態に係る管理方法)
図4は本発明の第一の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図である。
【0034】
管理処理が開始されると、ステップS101で、設計モデル作成部6は、設計テーブル31を読み出し、建築部材について設計モデルを作成する。
【0035】
次に、ステップS102に移行して、計測データ作成部7は、スキャナ等から計測データを受け取り、計測テーブル41と計測点群情報テーブル42を作成する。
【0036】
次に、ステップS103に移行して、計測データ座標取得部8は、計測点群情報テーブル42から、全ての計測点の座標を取得する。
【0037】
次に、ステップS104に移行して、部材形状情報取得部9は、設計モデルを確認し、モデルを入出力装置2に表示するなどして、形状を算出する部材(形状算出部材)を一つ、管理者に選択させる。
【0038】
次に、ステップS105に移行して、部材形状情報取得部9は、設計データベース3から、形状算出部材の部材形状情報を取得する。
【0039】
次に、ステップS106に移行して、部材範囲内判定部10は、自動でまたは管理者に、計測点のなかから判定対象とする点(対象点)を一つ選択させ、対象点が形状算出部材のものであるか判定する。対象点が形状算出部材のものであればステップS107に移行し、対象点が形状算出部材のものでなければステップS108に移行する。
【0040】
なお、部材範囲内判定部10が自動で対象点を選択する場合は、予め定められたルールに従って重複の無いように選択する。一例として、
図3に示すように計測点IDが番号で識別されている場合は、計測点IDを降順に並べ、上から順に選択する。また、対象点が形状算出部材のものであるかの判定は、対象点の座標が完全に形状算出部材に内包されるものだけではなく、予め設定した許容誤差範囲以内に入る点は形状算出部材のものであると判定する。
【0041】
ステップS107に移行すると、割付計測データ作成部11は、対象点について、計測点IDに対し新たな割付点IDを付け、割付点IDと、対象点の座標を、形状算出部材の部材IDとともに割付点群情報テーブル43に格納し、かつ、対応付けする部材「あり」として、ステップS108に移る。
【0042】
ステップS108に移行すると、割付計測データ作成部11は、対象点について、設計モデルにあるすべての建築部材について確認したか判定する。まだ確認していない建築部材がある場合は、ステップS104に戻り、別の部材を形状算出部材に選択して、フローを繰り返す。すべての建築部材について確認した場合は、ステップS109に移行する。
【0043】
ステップS109に移行すると、割付計測データ作成部11は、計測データベース4にある全ての計測点について確認したか判定する。まだ確認していない点がある場合は、ステップS103に戻り、別の点を対象点に選択して、フローを繰り返す。すべての点について確認した場合は、フローを終了する。
【0044】
ここで、対象点が形状算出部材のものかどうかを判定する方法、すなわちステップS105~S106の詳細について例を挙げる。なお、以下に示すものは一例であり、他の部材形状情報が利用されることを妨げる趣旨ではない。
【0045】
(方法例1)
方法例1では、ステップS105の部材形状情報の取得は、形状算出部材の部材頂点に関するデータを利用して、
図5のフローで行われる。部材形状情報取得部9は、ステップS104で形状算出部材が選択されると、ステップS1051に移行し、部材頂点テーブル32を参照して、形状算出部材の部材IDを基に、形状算出部材の部材頂点IDおよび部材頂点座標を取得する。次に、ステップS1052に移行して、部材形状情報取得部9は、ステップS1051で取得した頂点について、部材線分テーブル33を参照し、部材頂点IDを基に、形状算出部材の頂点を結びつける部材線分IDを取得して、ステップS1051の頂点らの隣接関係を対応付ける。
【0046】
方法例1では、ステップS106の判定は
図6のフローで行われる。同処理フローの作業イメージを
図7に示す。ステップS106で対象点(b
0)が選択されると、ステップS1061に移行して、部材範囲内判定部10は、対象点(b
0)に最も近いベース頂点(a
0)を選択する。この時、「最も近い」は、三次元的な直線距離が最も近い部材頂点座標が選択される。
【0047】
次に、ステップS1062に移行して、部材範囲内判定部10は、部材線分テーブル33を読み出して、ベース頂点(a0)の部材頂点IDを基に、頂点(a0)と線分を共有する頂点,すなわち隣接頂点(a1),(a2),(a3)を選択する。
【0048】
次に、ステップS1063に移行して、部材範囲内判定部10は、対象点(b0)とベース頂点(a0)とを結ぶ一次線分(L0)を作成する。
【0049】
次に、ステップS1064に移行して、部材範囲内判定部10は、頂点(a0)と隣接頂点(a1),(a2),(a3)とを結ぶ二次線分(L1),(L2),(L3)を作成する。
【0050】
次に、ステップS1065に移行して、部材範囲内判定部10は、一次線分(L
0)を、二次線分(L
1),(L
2),(L
3)をそれぞれ単位ベクトルa1,a2,a3とする下記の数式1で表現する。但し、A1,A2,A3は実数の係数である。
【数1】
【0051】
次に、ステップS1066に移行して、部材範囲内判定部10は、下記のケースごとに、算出した距離を基に、対象点(b0)が形状算出部材に対し一定範囲内にあるか判断する。
(ケース1)A1~A3が全て正数の場合:点(b0)は形状算出部材の内部に存在するため、点(b0)は形状算出部材の点とする。
(ケース2)A1~A3が全て負数の場合:点(a0)と点(b0)の距離値が許容誤差範囲以内である場合、点(b0)は形状算出部材の点とする。
(ケース3)A1~A3のうち一つだけが正数の場合:係数が正である頂点を点(aN)とすると、点(a0)と点(aN)を頂点とする線との法線方向において許容誤差範囲以内である場合、点(b0)は形状算出部材の点とする。
(ケース4)A1~A3のうち二つが正数の場合:係数が正である頂点をそれぞれ点(aN),点(aМ)とすると、点(a0),点(aN),点(aМ)を頂点とする面との法線方向において許容誤差範囲以内である場合、点(b0)は形状算出部材の点とする。
【0052】
なお、許容誤差に関しては、例えば鉄骨の場合5cm、スラブの場合1cm、というように、部材毎に設定可能とするのが好ましい。また、許容誤差は、上記ケース3,4の判定に備えて三次元方向毎に設定可能とするのも好ましい。
【0053】
(方法例2)
方法例2では、ステップS105の部材形状情報の取得は、形状算出部材の部材径に関するデータを利用して、
図8のフローで行われる。部材形状情報取得部9は、ステップS104で形状算出部材が選択されると、ステップS1501に移行し、部材中心テーブル34を参照して、形状算出部材の天面と底面の部材中心座標を取得する。次に、ステップS1502に移行して、部材径テーブル35を参照して、形状算出部材の部材IDを基に、形状算出部材の部材半径を取得する。
【0054】
方法例2では、ステップS106の判定は
図9のフローで行われる。同処理フローの作業イメージを
図10に示す。ステップS106で対象点(b
0)が選択されると、ステップS1601に移行して、部材範囲内判定部10は、形状算出部材の部材IDを基に、形状算出部材の天面と底面の部材中心(c
0)(c
1)の座標を取得する。
【0055】
次に、ステップS1602に移行して、部材範囲内判定部10は、部材中心(c0)(c1)を結ぶ第一線分(M0)を作成する。
【0056】
次に、ステップS1603に移行して、部材範囲内判定部10は、対象点(b0)を通り線分(M0)と直交する第二線分(M1)を作成する。
【0057】
次に、ステップS1604に移行して、部材範囲内判定部10は、線分(M0)と線分(M1)の交点(c2)を作成する。
【0058】
次に、ステップS1605に移行して、部材範囲内判定部10は、下記のケースごとに、交点(c2)の位置と算出した距離を基に、対象点(b0)が形状算出部材に対し一定範囲内にあるか判断する。
(ケース1)交点(c2)が線分(M0)の上にある場合、|b0-c2|から部材半径を減算した長さが許容誤差範囲以内である場合、点(b0)は形状算出部材の点とする。
(ケース2)交点(c2)が線分(M0)の上になく、かつ|b0-c2|の長さが部材半径以下であり、|c0-c2|の長さが許容誤差範囲以内である場合、点(b0)は形状算出部材の点とする。
(ケース3)交点(c2)が線分(M0)の上になく、かつ|b0-c2|の長さが部材半径超である場合、線分(M1)上で交点(c2)から部材半径分対象点(b0)側へ移動した点(c3)を作成し、線分b0-c3と線分c0-c2を直角に挟む直角三角形における斜辺(M2)の長さを求め、斜辺(M2)の長さが許容誤差範囲以内である場合、点(b0)は形状算出部材の点とする。
【0059】
なお、方法例2においても、許容誤差に関しては、部材毎に設定可能とするのが好ましい。また、許容誤差は、上記ケース3の判定に備えて三次元方向毎に設定可能とするのも好ましい。
【0060】
以上、本形態の管理方法および管理システムによれば、計測単位(日付,時刻,場所などによる計測ID)でしか分けられていない計測データを、割付点群情報テーブル34を作成することによって、設計データの各部材と対応させて分割管理することができる。
【0061】
また、管理方法において、ステップS104からステップS108のフローを組むことで、
図3の割付点群情報テーブル例の「割付点ID:4」に見られるように、一つの計測点が複数の建築部材に割り当てられることも含まれる。このような重複的な割付けを許すことで、各部材について計測データに基づき一からモデル形状を作る際に、より形状精度の高い計測モデルを作成することができる。
【0062】
また、割付点群情報テーブル34によって、単一の部材にのみ対応した点か、複数の部材と対応する点なのかを識別管理することができるので、各部材の計測モデルについて精度の高い検証が可能となる。例えば、「スラブ」の平坦性を確認したい場合に、「スラブ」にのみ対応している点群を選択することで、他の部材の情報を排除した正確な検証が可能となる。
【0063】
<第二の実施形態>
本形態による管理システムおよび管理方法は、第一の実施形態に追加的に適用されるものである。本形態による管理システムおよび管理方法は、S108の判定の結果、対応付けする部材が無かった計測データについて情報管理するものである。
【0064】
(第二の実施形態に係る管理システムの構成)
図11は、本発明の第二の実施の形態に係る管理システム1’の構成ブロック図である。第一の実施形態と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を割愛する。管理システム1’は、第一の実施形態に未割付計測データ作成部12が追加されたものである。
【0065】
未割付計測データ作成部12も、他の機能部と同様、電子回路により構成される。未割付計測データ作成部12については、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0066】
(第二の実施形態に係る管理方法)
図12は本発明の第二の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図、
図13は同管理フローの作業イメージ図である。第一の実施形態と同一の方法については、同一のステップ番号を用いて説明を割愛する。
【0067】
本形態による管理処理では、第一の実施形態のステップS101~S108の処理が行われ、ステップS108で全ての設計モデルを確認し終えた後、フローを終了せずにステップS201に移行する。
【0068】
ステップS201に移行すると、未割付計測データ作成部12は、対象点がどの建築部材とも対応しなかったか確認する。対応しなかった場合(YES)、ステップS202に移行し、対応するものがある場合、ステップS109に移行する。
【0069】
ステップS202に移行すると、未割付計測データ作成部12は、
図13に示すように、対象点について、計測点IDに対し新たな割付点IDを付け、割付点IDと、対象点の座標を、座標が最も近かった形状算出部材の部材IDとともに割付点群情報テーブル43に格納し、かつ、対応付けする部材「なし」として、ステップS109に続ける。
【0070】
以上、本形態の管理方法および管理システムによれば、設計データのどの部材とも対応せず割り当てられなかった点を、どの部材とも対応しないという情報と、どの部材の近辺に存在する点かという情報とともにデータ管理することができる。「対応付けなし」として分類された計測データについては、割付点群情報テーブル43から容易に検索することが可能であり、このような設計モデルに記載のない部材,例えば電球や机などのデータの利用については、管理者が個々に判断し管理することができる。
【0071】
<第三の実施形態>
本形態による管理システムおよび管理方法は、第一または第二の実施形態で作成された割付点群情報テーブル43のデータを活用し、計測データの利用の効率化を図るものである。
【0072】
(第三の実施形態に係る管理システムの構成)
図14は、本発明の第三の実施の形態に係る管理システム1”の構成ブロック図である。管理システム1”は、第一または第二の実施形態に追加的に適用されるものである。本形態では、第一の実施形態に適応した例を示す。前述までの実施形態と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0073】
管理システム1”は、入出力装置2と、設計データベース3と、計測データベース4と、設計モデル作成部6と、計測データ作成部7と、計測データ座標取得部8と、部材形状情報取得部9と、部材範囲内判定部10と、割付計測データ作成部11と、対象部材選択部14と、割付計測データ選択部15と、を備える。
【0074】
対象部材選択部14と割付計測データ選択部15も、他の機能部と同様、電子回路により構成される。各機能部ついては、次に記載する本形態に係る管理方法において説明する。
【0075】
(第三の実施形態に係る管理方法)
図15は本発明の第三の実施形態に係る管理方法を示す管理フロー図であり、
図16は対比のための従来の管理方法を示す管理フロー図である。
図17は本実施形態に係る管理フローの作業イメージ図であり、
図18は対比のための従来の管理方法に係る管理フローの作業イメージ図である。
【0076】
最初に、
図16と
図18を用いて従来の管理フローについて説明する。設計データベースにある、ある建築部材の施工状況を確認したい時、従来では、
図16に示すように、管理者は、まずステップS3001で、設計データベースから、対比対象の建築部材(以降、対象部材とよぶ)を選択する。次に、管理者は、ステップS3002に移行して、計測データベースから「計測点群情報テーブル42」に相当するものから計測データを読み出し、対象部材を計測したと思われる計測IDを選択し、計測IDに紐づく計測データを全て読み込む(
図18)。その後、ステップS3003において、対象部材に対応する点群について、データの選択・確認の作業が可能となる。
【0077】
これに対し、
図15と
図17を用いて、第三の実施形態に係る管理フローについて説明する。ある建築部材の施工状況を確認したい時、本形態では、
図15に示すように、まずステップS301で、対象部材選択部14が、設計データベース3を参照して、設計モデルを入出力装置2に表示するなどして、管理者に対象部材を選択させる。次に、ステップS302に移行して、割付計測データ選択部15が、計測データベース4の「割付点群情報テーブル43」を読み出し、対象部材と部材IDが等しい計測データを選択する。次に、ステップS303に移行して、割付計測データ選択部15は、対象部材の計測データのみを入出力装置2の表示部などに表示して、データ確認可能とする。
【0078】
以上、従来では、対象部材について設計データと計測データを対比するためには、対象となる全ての図面データが読み出されるため、容量が重く、取り扱いが不便であった。これに対し、本形態の管理方法および管理システムによれば、計測データを設計データの各部材に対応させて割り当てた割付点群情報テーブル43を作成・保有しているので、対象部材の計測データの読み出しは瞬時に終了する。このため、施工状況を確認する際のデータ処理が大幅に迅速化され、業務を効率化することができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施の形態および変形例を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1,1’, 1’’… 管理システム
2 入出力装置
3 設計データベース
31 設計テーブル
32 部材頂点テーブル
33 部材線分テーブル
34 部材中心テーブル
35 部材径テーブル
4 計測データベース
41 計測テーブル
42 計測点群情報テーブル
43 割付点群情報テーブル
6 設計モデル作成部
7 計測データ作成部
8 計測データ座標取得部
9 部材形状情報取得部
10 部材範囲内判定部
11 割付計測データ作成部
12 未割付計測データ作成部
14 対象部材選択部
15 割付計測データ選択部