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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240226BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240226BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240226BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L23/28 J
H01L21/56 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020021132
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021128966
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】咲間 光廣
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-005009(JP,A)
【文献】特開平04-277662(JP,A)
【文献】特開平02-023640(JP,A)
【文献】特開2011-129584(JP,A)
【文献】特開2009-158541(JP,A)
【文献】特開2014-078547(JP,A)
【文献】特開2001-127212(JP,A)
【文献】特開2010-050452(JP,A)
【文献】特開2009-241164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/28
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体素子と電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体素子と前記リードとを封止している封止樹脂と、を備え、
前記半導体素子は応力に対する感度の高い素子領域を有し、前記素子領域の上方に位置する前記封止樹脂の表面に凹部が設けられており、
前記凹部の平面投影領域が前記半導体素子の一部を囲むものであって前記感度の高い素子領域を選択的に囲んで設けられ、
前記ダイパッドの前記半導体素子を搭載する面の反対側の面は前記封止樹脂から露出していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記平面投影領域の周縁部が多角形を成し、そのすべての内角が鈍角であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記平面投影領域の周縁部が円もしくは楕円であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記平面投影領域が前記半導体素子の電極パッド形成領域を除き、その内側領域に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項5】
断面視的に、前記凹部は逆台形形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導体装置。
【請求項6】
前記凹部は曲面の一部であることを特徴とする請求項3または4記載の半導体装置。
【請求項7】
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体素子と電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体素子と前記リードとを封止している封止樹脂と、を備える半導体装置の製造方法であって、
前記ダイパッド上に前記半導体素子が搭載され、前記ダイパッドと離間して配置したリードを用意する工程と、
前記半導体素子が搭載された前記ダイパッドと前記リードを封止するための金型であって、凹部を形成するための凸部を有する金型を用意する工程と、
前記半導体素子が搭載された前記ダイパッドを封止するとともに前記ダイパッドの前記半導体素子を搭載する面の反対側の面は前記封止樹脂から露出させ、前記半導体素子の応力に対する感度の高い素子領域の上方に位置する前記封止樹脂の表面に、前記凸部と相対する凹部を形成し、前記凹部の平面投影領域が前記半導体素子の一部を囲むものであって前記感度の高い素子領域を選択的に囲んで設けられる工程と、からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記半導体装置の電気特性を検査する工程と、
前記検査する工程で得られた電気特性を補正する工程と、を備え、
前記補正する工程は、前記凹部の底面を除去することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記凹部の底面を除去する工程は、レーザー加工によって前記封止樹脂の一部を除去することを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記凹部の底面を除去する工程は、ルーター加工によって前記封止樹脂の一部を除去することを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型軽量化及び高機能化のニーズに伴い、電子機器に半導体装置を高密度に実装することが可能な表面実装型パッケージが多用されている。アナログICなどでは、近年、さらなる電気特性の高精度化が要求されている。しかし、パッケージング工程などの実装工程において、半導体素子に応力がかかることで電気特性の変動が生じて目標とする電気特性を得られないことがある。
フルモールドタイプの半導体装置において、ダイパッドの上下の樹脂厚を同一とすることで、半導体装置の実装時の応力に起因する反りを低減することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-278024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フルモールドタイプの半導体装置では放熱性が十分でなく、半導体素子から発生する熱が蓄熱して半導体装置の電気特性を悪化させてしまうこともある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、ノンリードタイプの半導体装置であっても半導体素子への応力を低減することができる半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を用いた。
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体素子と電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体素子と前記リードとを封止している封止樹脂と、を備え、
前記半導体素子の応力に対する感度の高い素子領域を有し、前記素子領域の上方に位置する前記封止樹脂の表面に凹部が設けられていることを特徴とする半導体装置とする。
また、ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体素子と、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体素子と電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体素子と前記リードとを封止している封止樹脂と、を備える半導体装置の製造方法であって、
前記ダイパッド上に前記半導体素子が搭載され、前記ダイパッドと離間して配置したリードを用意する工程と、
前記半導体素子が搭載された前記ダイパッドと前記リードを封止するための金型であって、前記凹部を形成するための凸部を有する金型を用意する工程と、
前記半導体素子が搭載された前記ダイパッドを封止するとともに、前記半導体素子の応力に対する感度の高い素子領域の上方に位置する前記封止樹脂の表面に、前記凸部と相対する凹部を形成する工程と、からなることを特徴とする半導体装置の製造方法を用いる。
【発明の効果】
【0006】
上記手段を用いることで、半導体素子への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図2】本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図3】本発明の第3実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図4】本発明の第4実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図5】本発明の第5実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図6】本発明の第6実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図7】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
図8】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
図9】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
図10】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の半導体装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の構造図である。図1(a)の断面図に示すように、銅(Cu)合金などからなるダイパッド5上に半導体素子1が搭載されている。ダイパッド5の周囲にはダイパッド5と離間してリード4が設けられている。そして、半導体素子1の上面に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4の上面とが接続部材であるワイヤ3を介して電気的に接続されている。ワイヤ3の材料としては金(Au)や銅(Cu)が用いられる。なお、半導体素子1とリード4との電気的接続はワイヤ法に限られることなく、バンプを介したフリップチップボンディング法を用いても構わない。
【0009】
半導体素子1とダイパッド5とワイヤ3の周囲は封止樹脂2によって被覆されるが、ダイパッド5の半導体素子1搭載面の反対側の裏面は封止樹脂2から露出している。ダイパッド5の裏面はメッキ層12によって覆われて放熱性に優れる形状である。リード4の底面と外側面も封止樹脂2から露出し、リード4の底面の露出面もメッキ層12で覆われる構成である。リード4の外側面は封止樹脂の側面から突出せず、ノンリードタイプの半導体装置21となっている。なお、メッキ層12は、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)のいずれかの金属もしくは複数の金属の合金からなり、電解メッキ法または無電解メッキ法によって形成される。
【0010】
半導体装置21を構成する半導体素子1の表面の一部には、応力に対する感度が高い素子領域1aがあり、その上方に位置する封止樹脂2の表面には凹部61が設けられている。凹部61は応力に対する感度が高い素子領域1aの上方に選択的に設けられ、半導体素子1の全領域と重なるようには設けられていない。ここで、凹部61の断面は逆台形形状をなしており、該逆台形の上底が下底より長く、該逆台形の脚部はテーパー状になっている。また、上底と下底と半導体素子1の上表面とが平行になっている。
【0011】
図1(b)は半導体装置の上面から透視した平面図である。矩形形状の封止樹脂2の中央領域にダイパッド5が配置されている。封止樹脂2の一方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置され、一方の辺と対向する他方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置されている。そして、互いの辺(側面)に沿って配置されたリード4はダイパッド5を挟んで向かい合っている。ダイパッド5上には半導体素子1が搭載され、半導体素子1の外周に配置された電極パッド6とリード4がワイヤ3を介して電気的に接続されている。半導体素子1には応力に対する感度が高い素子領域1aとこれに対し相対的に応力に対する感度が低い素子領域1bがある。
【0012】
高温の成形用金型に注入された溶融状の樹脂が硬化する時、及び常温に戻る時の樹脂の収縮によって、シリコンからなる半導体素子1に圧縮、せん断等の応力が加わると、シリコン単結晶にピエゾ効果が生じ、半導体素子の表面に形成された半導体集積回路素子の電気特性が変動することがあるが、該半導体集積回路素子の中でもピエゾ効果の影響で電気特性が変動しやすい素子が応力に対する感度が高い素子に相当する。例えば、カレントミラー回路は、対を形成するPチャネルMOSトランジスタ間で同一な電流が流れることを利用して、2つの電流経路の電流が等しくなるように働くことを利用した回路であるが、この回路に応力がかかると2つの電流経路の電流がずれてしまう。このような対を成すトランジスタはその特性が大きく違わないことが必要であり、上述の応力に対する感度が高い素子領域1aに形成されることが望ましい。
【0013】
凹部61を半導体素子1上に平面投影した領域は応力に対する感度が高い素子領域1aを含んで周囲を囲うように形成され、その周縁部の形状は円形である。凹部61は二重の同心円で図示されており、外側の円形は凹部61の最上部、内側の円形は凹部61の底面における輪郭を投影している。そして、この内側の円形の凹部61の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。半導体素子1の外周領域には電極パッド6が配置されているが、凹部61の平面投影領域は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないことが望ましい。図1(a)に図示したように、ワイヤ3はループ状に形成され、そのループ高さは半導体素子1の上面よりも高いため、凹部61が電極パッド6の配置領域と重畳し、かつ凹部61が深くなると、ワイヤ3が凹部61から露出して信頼性を低下させる懸念が生じる。よって、凹部61の平面投影領域は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないことが望ましい。したがって、凹部61の平面投影領域と応力に対する感度が高い素子領域1aの余裕を考慮すれば、応力に対する感度が高い素子領域1aを半導体素子1の中央付近に設けることがより望ましい。
【0014】
応力に対する感度が高い素子領域1aの上方に位置する封止樹脂2の表面に凹部61を設けることで、応力に対する感度が高い素子領域1aの上方の封止樹脂2の厚さが薄くなり、そのため、この素子領域1aにかかる応力が低減することができる。その結果、この素子領域1aに形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを低減できる。このように、上記構造とすることで半導体素子1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置21を実現できる。
以上では、封止樹脂2の2つの側面のそれぞれにリード4を設けたDFN(Dual Flat Non-leaded)パッケージの例で説明したが、本技術は封止樹脂2の4つの側面のそれぞれにリード4を設けたQFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージにも適用可能である。
【0015】
図2は、本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の構造図であって、凹部の各種形状を示した平面図である。図2(a)に示す半導体装置22では、凹部62の平面投影領域の周縁部が楕円である例を示し、この楕円に囲まれた領域の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。図2(b)に示す半導体装置23では、凹部63の平面投影領域の周縁部が多角形で、すべての内角が鈍角である例を示し、この多角形の周縁部の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。図2(c)に示す半導体装置24では、凹部64の平面投影領域の周縁部が角を丸くした四角形である例を示し、この角を丸くした四角形に囲まれた領域の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。以上のように、いずれの形状でも凹部62、63、64の周縁部の一部に鋭角な領域を有することのないようにしている。このような形状とすることで周縁部の一部に過剰な応力が掛からず、延いては、応力に対する感度が高い素子領域1aに過剰な応力がかかることを防止している。なお、本実施形態における断面形状は、図1(a)に図示したものと同様、逆台形形状である。
【0016】
図3は、本発明の第3実施形態にかかる半導体装置の構造図である。図1に示した第1実施形態の半導体装置21との違いは、凹部65の断面形状が相違するものである。第1実施形態と異なるリード構造のノンリードタイプの半導体装置を用いて以下説明する。
ダイパッド5上に半導体素子1が搭載され、ダイパッド5の周囲にはダイパッド5と離間してリード4が設けられている。半導体素子1上の電極パッド(図示せず)とリード4がワイヤ3を介して電気的に接続されている。リード4はインナーリード部4aとアウターリード部4bからなり、インナーリード部4aがアウターリード部4bよりも高くなるように折り曲げられている。そして、ダイパッド5上の半導体素子1、ワイヤ3、リード4は封止樹脂2によって封止されている。ダイパッド5の半導体素子1搭載面と反対側である裏面は封止樹脂2から露出し、その露出面はメッキ層12にて被覆されており、放熱性にすぐれている。ダイパッド5の上端部にはダイパッド5の厚みを薄くした肉薄部5aが設けられ、肉薄部5aの裏面には封止樹脂2が回り込んでダイパッド5が封止樹脂から抜けにくい構造となっている。
リード4のインナーリード部4aは封止樹脂2によって封止されているが、封止樹脂2の底面と同一平面となるダイパッド5の裏面およびアウターリード部4bの底面は封止樹脂2から露出し、メッキ層12で覆われている。
【0017】
第1実施形態では封止樹脂2に設けられた凹部61の底面が半導体素子1の上表面に対し平行であったのに対し、本実施形態では封止樹脂2に設けられた凹部65の内面を半球面としている。このような形状とすることで、封止樹脂2からの応力は球面状の内面で分散され、応力に対する感度が高い素子領域1aにかかる応力は小さなものとなる。そして、凹部65には図1(b)や図2(a)~(c)に図示した平面形状を適用することができる。この場合も凹部65の平面投影領域は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないように形成することが望ましい。これにより信頼性が高く、かつ、半導体素子1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置25とすることができる。本実施形態ではリード4をアップセットしたノンリードタイプの半導体装置にて説明したが、凹部65の内面を球面とすることは図1に図示した他のノンリードタイプの半導体装置にも適用可能である。
なお、図3では半球面を採用した例を図示しているが、この例に限らず、様々な曲率を有する凹状曲面を適用でき、図示した例よりも深さが浅い曲面を適用しても構わない。
【0018】
図4は、本発明の第4実施形態にかかる半導体装置の構造図である。図1に示した半導体装置21との違いは、応力に対する感度が高い素子領域1aが複数有する点である。図4(a)に示すように、半導体素子1の表面の一部には、応力に対する感度が高い素子領域1aが複数あり、その上方に位置する封止樹脂2の表面には凹部66を複数設けた半導体装置26とするのが良い。ただ、図4(b)に示すように、複数の応力に対する感度が高い素子領域1aが近接している場合は、一つの凹部67としても良い。凹部67には図1乃至図3で説明した平面形状や断面形状を適用できる。また、この場合も凹部67の平面投影領域は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないように形成することが望ましい。これにより信頼性が高く、かつ、半導体素子1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置27とすることができる。
【0019】
図5は、本発明の第5実施形態にかかる半導体装置の構造図である。半導体素子1の表面の電極パッド6を配置した領域を除く全ての領域が応力に対する感度が高い素子領域1aである場合は、図5に示すように、半導体素子1の素子領域を含んで周囲を囲うように凹部68を設ける。ただし、凹部68の平面投影領域は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないように形成することが望ましい。そして、角を丸くした四角形のように凹部68の周縁部の一部に鋭角な領域を有することの無い形状とするのが良い。上記構造とすることで信頼性が高く、かつ、半導体素子1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置28とすることができる。
【0020】
図6は、本発明の第6実施形態にかかる半導体装置の構造図である。第1実施形態との違いはワイヤボンディング法に代えてフリップチップボンディング法を用いた点である。
【0021】
第1実施形態では、半導体素子1の素子面がリード4と反対方向に向く構造であったのに対し、本実施形態では、図6(a)の断面図に示すように、金属材料からなる放熱板13の下面に固着した半導体素子1の素子面がリード4に向く構造としている。したがって、放熱板13はダイパッドとしての機能も有する。半導体素子1の素子面にはバンプ電極11が設けられ、このバンプ電極11を介して半導体素子1の素子面とリード4が向い合って電気的に接続している。バンプ電極11は錫(Sn)や金(Au)などの金属材料からなる。
【0022】
放熱板13とリード4は半導体素子1を上下に挟む構造で、半導体素子1と放熱板13とリード4は封止樹脂2によって被覆される。ただし、放熱板13の裏面、すなわち、本図における放熱板13の上面に相当する面は封止樹脂2から露出し、メッキ層12で覆われている。また、リード4の底面と外側面も封止樹脂2から露出し、リード4の底面の露出面もメッキ層12で覆われる構成である。リード4の外側面は封止樹脂の側面から突出しないノンリードタイプの半導体装置29となっている。
【0023】
半導体素子1の表面の一部には、応力に対する感度が高い素子領域1aがあり、その下方に位置する封止樹脂2の表面には凹部69が設けられている。凹部69は応力に対する感度が高い素子領域1aの下方に選択的に設けられ、半導体素子1の全領域と重なるように設けられていない。ここで、凹部69の断面は台形形状をなしており、該台形の上底が下底より短く、該台形の脚部は下底に向かって広がるようにテーパー状になっている。また、上底と下底と半導体素子1の上表面とが平行になっている。
【0024】
図6(b)は半導体装置29の底面側からの平面図である。メッキ層12は図示していない。矩形形状の封止樹脂2の中央領域に銅材からなる放熱板13が配置されている。封止樹脂2の一方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置され、一方の辺と対向する他方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置されている。そして、互いの辺(側面)に沿って配置されたリード4は放熱板13を中心にして向かい合っている。放熱板13には半導体素子1が固着され、半導体素子1の外周に配置されたバンプ電極11とリード4が重なって電気的に接続されている。半導体素子1には応力に対する感度が高い素子領域1aとこれに対し相対的に応力に対する感度が低い素子領域1bがある。例えば、カレントミラー回路は、対を形成するPチャネルMOSトランジスタ間で同一な電流が流れることを利用して、2つの電流経路の電流が等しくなるように働くことを利用した回路であるが、この回路に応力がかかると2つの電流経路の電流がずれてしまう。このような対を成すトランジスタはその特性が大きく違わないことが必要であり、上述の応力に対する感度が高い素子領域1aに形成されることが望ましい。
【0025】
凹部69を半導体素子1上に平面投影した領域は応力に対する感度が高い素子領域1aを含んで周囲を囲うように形成され、その周縁部の形状は円形である。そして、この円形に囲まれた領域の中央付近に応力に対する感度が高い素子領域1aが設けられている。半導体素子1の外周領域にはバンプ電極11が配置されているが、リード4とバンプ電極11が重畳していることから凹部69の平面投影領域はバンプ電極11が配置されている領域と重畳しない。
【0026】
応力に対する感度が高い素子領域1aの下方に位置する封止樹脂2の表面に凹部69を設けることで、応力に対する感度が高い素子領域1aの上方の封止樹脂2の厚さが薄くなり、そのため、この素子領域1aにかかる応力が低減することができる。その結果、この素子領域1aに形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを低減できる。このように、上記構造とすることで半導体素子1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置29を実現できる。
以上では、封止樹脂2の2つの側面のそれぞれにリード4を設けたDFN(Dual Flat Non-leaded)パッケージの例で説明したが、本技術は封止樹脂2の4つの側面のそれぞれにリード4を設けたQFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージにも適用可能である。また、凹部69には図1乃至図3で説明した平面形状や断面形状を適用することも可能である。
【0027】
図7は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。まず、図7(a)に示すように、ダイパッド5とダイパッド5の周囲に離間して複数のリード4を配置したリードフレーム7を用意する。リードフレーム7は矩形状のダイパッド5およびダイパッド5から離間して配置された複数のリード4を1つのユニット7aとして、そのユニット7aを複数有する形状である。破線で囲むように図示するユニット7aはフレーム枠7bに囲まれており、リード4はフレーム枠7bに接続され、ダイパッド5は吊りリード7cを介してフレーム枠7bに接続されている。なお、リードフレーム7は主に銅材からなるものである。図7(b)は図7(a)に示されるA-A線に沿った断面図である。この段階で隣接するユニット7aどうしのリード4はフレーム枠7bを介して繋がっている。
次いで、図7(c)に示すように、ダイパッド5上に半導体素子1を搭載し、半導体素子1上に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4とをワイヤ3を介して電気的に接続する。
【0028】
図8は、図7に続く、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。図8(a)に示すように、半導体素子1を搭載したリードフレーム7を封止するための金型8を用意する。金型8は上金型8aと下金型8bとから構成され、それらの間にキャビティ9を有する。そして、上金型8aからキャビティ9に向かって突出するように凸部10が設けられている。凸部10は半導体素子1の表面の一部の応力に対する感度が高い素子領域1aの上方に位置している。ここに図示した凸部10の断面形状は台形である。
【0029】
図1(a)および図1(b)に示した凹部61を得るためには、凸部10を円錐台形状とする必要がある。また、図2(a)に図示した凹部62を得るためには楕円錐台形状の凸部10、図2(b)に図示した凹部63を得るためには角錐台形状の凸部10とする必要がある。
【0030】
図8(b)に示すように、上金型8aと下金型8bの間に設けられたキャビティ9に封止樹脂2を流入させ、半導体素子1とダイパッド5とワイヤ3とリード4を封止樹脂2にて封止する。このとき、半導体素子1の表面の一部には、応力に対する感度が高い素子領域1aがあり、その上方に位置する封止樹脂2の表面に凹部61が形成されるが、封止時にこの凹部61は上金型8aの凸部10と相対して形成されるものである。
【0031】
図8(c)に示すように、封止体15を金型8から取り出し、ダイパッド5の裏面およびリード4の底面にメッキ層12を形成する。その後、回転ブレード14を用いてフレーム枠7bに沿って封止体15を切断する。このとき、回転ブレード14の幅をフレーム枠7bの幅よりも大きくすることでフレーム枠7bを完全に除去することができる。なお、回転ブレード14による切断方向は封止体15底面から上方向、上面から下方向のいずれでも構わない。
【0032】
切断後、図9に示すような個々に分離された半導体装置21が得られる。図9(a)は断面図、図9(b)は平面図であり、複数の半導体装置21の集合体として図示している。なお、上記では金型の一つのキャビティから複数の半導体装置を得る方法について述べたが、一つのキャビティから一つ半導体装置を得るという封止方法を採用することも可能である。
【0033】
次に、得られた半導体装置21の電気特性検査を実施する。そして、半導体装置21に組み込まれている半導体素子1の組立前のプロービングテストで得られた電気特性と比較して特性変動量を確認する。この特性変動量が検査基準内であれば、これ以降の工程を実施しなくてもよい。検査基準を超える特性変動量であれば、以降の工程を追加して電気特性の補正を行う。
【0034】
図10に示すように、電気特性の補正は、凹部61の底面の封止樹脂2の一部を所定量除去して、凹部61の深さをさらに深くすることにて行う。凹部61の底面の除去すべき所定量は、以前のサンプルでの事前評価によって予め決定しておいた電気特性の補正量と除去量との関係式から求めることができる。凹部61の底面の封止樹脂2の除去にはレーザー加工や機械的なルーター加工が用いられ、加工前の凹部61の実線で図示する底面が加工後の凹部61aの破線で図示する底面のように深くなる。このとき、封止樹脂2の除去量は凹部61の底面全面において一様であることが望ましい。
【0035】
封止樹脂2の一部を除去した後、再度電気特性検査を実施し、プロービングテストで得られた電気特性と比較して特性変動量を確認する。この特性変動量が検査基準内であれば、これ以降の工程を実施しなくてもよい。検査基準を超える特性変動量であれば、上記の電気特性の補正の工程を追加で行い、特性変動量が検査基準内に収まるまで行う。仮に、特性変動量が補正不可であると判断すれば該半導体装置21を不良として適切に処置する。以上の追加工程によって得られた半導体装置21は、半導体素子1単体の電気特性からのズレが極めて小さく、要求性能を十分に満たす半導体装置21である。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体素子
1a 応力に対する感度が高い素子領域
1b 応力に対する感度が低い素子領域
2 封止樹脂
3 ワイヤ
4 リード
4a インナーリード部
4b アウターリード部
5 ダイパッド
5a 肉薄部
6 電極パッド
7 リードフレーム
7a ユニット
7b フレーム枠
7c 吊りリード
8 金型
8a 上金型
8b 下金型
9 キャビティ
10 凸部
11 バンプ電極
12 メッキ層
13 放熱板
14 回転ブレード
15 封止体
21、22、23、24,25、26、27、28、29 半導体装置
61、62、63、64、65、66、67、68、69 凹部
61a 加工後の凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10