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特許7442344記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】記録装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/42 20060101AFI20240226BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240226BHJP
   B65H 29/20 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B41J11/42
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B65H29/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020038123
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021138060
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 大悟
(72)【発明者】
【氏名】山口 敏明
(72)【発明者】
【氏名】須藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】徳田 康平
(72)【発明者】
【氏名】島村 健史
(72)【発明者】
【氏名】張替 亮
(72)【発明者】
【氏名】村田 遼介
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-065083(JP,A)
【文献】特開2007-106041(JP,A)
【文献】特開2016-160063(JP,A)
【文献】特開2015-051798(JP,A)
【文献】特開2019-171800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
B41J 2/01
B65H 29/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに記録を行う記録手段と、
前記シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送方向で、前記シートの端を検知する検知手段と、
前記シートの排出完了前に前記搬送手段による搬送を一時的に停止し、前記シートを前記搬送手段に保持させる停止制御手段と、
前記搬送手段が前記シートを保持している場合に、前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定する判定手段と、
前記シートが排出方向に引かれたと前記判定手段が判定した場合に、前記搬送手段に前記シートの排出処理を行わせる排出制御手段と、を備え、
前記判定手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定し、
前記停止制御手段は、前記シートの後端が前記検知手段の検知位置を通過した後に該シートの搬送を一時的に停止する場合、前記シートの後端が前記検知位置よりも上流側に位置するように前記シートを逆搬送して停止する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
シートに記録を行う記録手段と、
前記シートを搬送する搬送手段と、
前記シートの排出完了前に前記搬送手段による搬送を一時的に停止し、前記シートを前記搬送手段に保持させる停止制御手段と、
前記搬送手段が前記シートを保持している場合に、前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定する判定手段と、
前記シートが排出方向に引かれたと前記判定手段が判定した場合に、前記搬送手段に前記シートの排出処理を行わせる排出制御手段と、を備え、
前記搬送手段は、前記シートを挟んで保持する第一の回転体及び第二の回転体を備え、
前記第一の回転体及び前記第二の回転体は、前記記録手段による記録位置よりも前記搬送手段の搬送方向で上流側に配置されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項に記載の記録装置であって、
記第一の回転体の回転量を検知する検知手段を備え、
前記判定手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項に記載の記録装置であって、
前記判定手段は、前記検知手段によって前記第一の回転体の排出方向の回転が検知された場合に、前記シートが排出方向に引かれたと判定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項に記載の記録装置であって、
記判定手段は、前記検知手段によって前記シートの端の通過が検知された場合に、前記シートが排出方向に引かれたと判定する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記停止制御手段により前記シートの搬送を一時的に停止した場合に、ユーザに、前記シートを排出方向に引くことを案内する報知手段を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記排出処理は、前記搬送手段による前記シートの搬送を再開する処理である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記排出処理は前記搬送手段による前記シートの保持を解除する処理である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項1に記載の記録装置であって、
前記搬送手段は、前記シートを挟んで保持する第一の回転体及び第二の回転体を備え、
前記第一の回転体及び前記第二の回転体は、前記記録手段による記録位置よりも前記搬送手段の搬送方向で下流側に配置されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
シートに記録を行う記録手段と、
前記シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送方向で、前記シートの端を検知する検知手段と、
を備えた記録装置の制御方法であって、
前記シートの排出完了前に前記搬送手段による搬送を一時的に停止し、前記シートを前記搬送手段に保持させる停止制御工程と、
前記搬送手段が前記シートを保持している場合に、前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程で前記シートが排出方向に引かれたと判定した場合に、前記搬送手段に前記シートの排出処理を行わせる排出制御工程と、を備え、
前記判定工程では、前記検知手段の検知結果に基づいて前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定し、
前記停止制御工程では、前記シートの後端が前記検知手段の検知位置を通過した後に該シートの搬送を一時的に停止する場合、前記シートの後端が前記検知位置よりも上流側に位置するように前記シートを逆搬送して停止する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
シートに記録を行う記録手段と、
前記シートを搬送する搬送手段と、
を備えた記録装置の制御方法であって、
前記搬送手段は、前記シートを挟んで保持する第一の回転体及び第二の回転体を備え、
前記第一の回転体及び前記第二の回転体は、前記記録手段による記録位置よりも前記搬送手段の搬送方向で上流側に配置され、
前記制御方法は、
前記シートの排出完了前に前記搬送手段による搬送を一時的に停止し、前記シートを前記搬送手段に保持させる停止制御工程と、
前記搬送手段が前記シートを保持している場合に、前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程で前記シートが排出方向に引かれたと判定した場合に、前記搬送手段に前記シートの排出処理を行わせる排出制御工程と、を備える、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータに請求項10又は請求項11に記載の制御方法の各工程を実行させるプログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項13】
コンピュータに請求項10又は請求項11に記載の制御方法の各工程を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置として、シートの給送から排出の過程でシートの記録を行う装置が知られている。特許文献1にはシートにインクを吐出して記録を行う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-114648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録済みのシートが排出される際、シートが記録装置から落下して記録面に傷がつく場合がある。シートの落下を防止する方策として、シートを完全に排出せずに、ローラ対でシートをニップしておき、操作パネルに対するユーザの操作に対応してシートの排出を完了する方法が考えられる。しかし、この方法ではユーザは排出されるシートを支えながら操作パネルを操作する必要があり、ユーザの負担が大きい。
【0005】
本発明は、排出されるシートの落下を防止し、かつ、ユーザの負担を軽減してシートを排出可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
シートに記録を行う記録手段と、
前記シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送方向で、前記シートの端を検知する検知手段と、
前記シートの排出完了前に前記搬送手段による搬送を一時的に停止し、前記シートを前記搬送手段に保持させる停止制御手段と、
前記搬送手段が前記シートを保持している場合に、前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定する判定手段と、
前記シートが排出方向に引かれたと前記判定手段が判定した場合に、前記搬送手段に前記シートの排出処理を行わせる排出制御手段と、を備え、
前記判定手段は、前記検知手段の検知結果に基づいて前記シートが排出方向に引かれたか否かを判定し、
前記停止制御手段は、前記シートの後端が前記検知手段の検知位置を通過した後に該シートの搬送を一時的に停止する場合、前記シートの後端が前記検知位置よりも上流側に位置するように前記シートを逆搬送して停止する、
ことを特徴とする記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排出されるシートの落下を防止し、かつ、ユーザの負担を軽減してシートを排出可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
図2図1の記録装置の内部構造の説明図である。
図3図1の記録装置の制御部のブロック図である。
図4】(A)及び(B)は制御部の処理例を示すフローチャートである。
図5】(A)乃至(C)は図1の記録装置の動作説明図である。
図6】(A)乃至(C)は図1の記録装置の動作説明図である。
図7】制御部の別の処理例を示すフローチャートである。
図8】(A)乃至(C)は別の動作説明図である。
図9】(A)及び(B)は別の動作説明図である。
図10】(A)乃至(C)は別の動作説明図である。
図11】(A)乃至(C)は別の動作説明図である。
図12】(A)及び(B)は別の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第1実施形態>
<記録装置の概要>
図1は本実施形態における記録装置1の外観図であり、上部のカバーを取り外した状態の斜視図である。図2は記録装置1の内部構造を示す模式図である。図中、Xは記録装置1の幅方向(左右方向)を示し、Yは記録装置1の奥行き方向(前後方向)を示し、Zは上下方向を示す。本実施形態では、記録ヘッドを搭載したキャリッジが走査することで記録するシリアル型のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。
【0011】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では記録対象である「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、シート状の布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0012】
記録装置1は、ロールシート100からシートSを引き出して画像を記録可能な装置である。シートSは連続した一枚のシートであり、ロールシート100は、筒状の芯材にシートSがロール状に巻かれたものである。ロールシート100はシートSのうち、特にロール状の部分を指す。
【0013】
記録装置1の奥側(後ろ側)にはスプール軸101を回転中心としてロールシート100を回転可能に支持するロール支持ユニット2が設けられている。ロール支持ユニット2には、カットシートCSが積載される給送トレイ3が選択的に装着可能となっている。ユーザは給送トレイ3をロール支持ユニット2に装着することで、カットシートCSに対する記録を行うこともできる。
【0014】
記録装置1の手前側(前側)には排出トレイTが備えられている。ロール支持ユニット2に支持されたロールシート100又は給送トレイ3に積載されたカットシートCSには、排出トレイTへ搬送される過程で画像の記録が行われる。
【0015】
記録装置1の上面にはユーザが様々な設定やコマンドを入力したり、情報を確認したりするための操作パネル15が設けられている。
【0016】
記録装置1は、ロールシート100を回転させる駆動ユニット4と、シートS又はカットシートCSを搬送する搬送ユニット5とを備える。駆動ユニット4は、駆動源であるロールシートモータ4aと、ロールシートモータ4aの駆動力をスプール軸101のスプールギヤに伝達する歯車機構等の伝達機構4bとを備える。ロールシートモータ4aの回転により、ロールシート100のシートSを搬送ユニット5へ送り出すことができる。
【0017】
記録装置1は、搬送ユニット5は、搬送方向上流側の給送機構50と下流側の搬送機構53とを備える。給送機構50は、給送ローラ51と分離ローラ52とを含む。給送ローラ51及び分離ローラ52はいずれもX方向の軸周りに回転自在に設けられた回転体である。分離ローラ52は給送ローラ51に圧接しており、給送ローラ51の回転に従動して回転する。分離ローラ52は一定の負荷が作用しないと従動して回転せず、これによりカットシートCSの重送を防止する。
【0018】
給送機構50は、駆動源である給送モータ50aと、給送モータ50aの駆動力を給送ローラ51に伝達する歯車機構等の伝達機構50bとを備える。給送モータ50aの駆動により、給送ローラ51が回転し、給送ローラ51と分離ローラ52とによりロールシート100から送り出されるシートS又は給送トレイ3上のカットシートCSは挟持されて下流側へ搬送される。
【0019】
搬送機構53は、搬送ローラ54とピンチローラ55とを含む。搬送ローラ54及びピンチローラ55はいずれもX方向の軸周りに回転自在に設けられた回転体である。ピンチローラ55は搬送ローラ54に圧接しており、搬送ローラ54の回転に従動して回転する。搬送ローラ54とピンチローラ55は、搬送方向(Y方向)で記録ヘッド7の記録位置よりも上流側に位置している。
【0020】
搬送機構53は、駆動源である搬送モータ53aと、搬送モータ53aの駆動力を搬送ローラ54に伝達する歯車機構等の伝達機構53bとを備える。搬送モータ53aの駆動により、搬送ローラ54が回転し、搬送ローラ54とピンチローラ55とによりシートS又はカットシートCSは挟持されてプラテン11上に搬送される。搬送ローラ54の回転量はセンサ14で検知される。センサ14の検知結果により、シートS又はカットシートCSの搬送量を特定でき、シートS又はカットシートCSの搬送位置を特定できる。センサ14は例えばロータリエンコーダである。
【0021】
給送ローラ51と搬送ローラ54との間には、下側のガイド部材6aと上側のガイドローラ6bが設けられており、これらはシートS又はカットシートCSの搬送経路を画定する。センサ13はシートS又はカットシートCSの搬送方向の先端又は後端を検知するセンサであり、その検知位置13aは搬送ローラ54と給送ローラ51の間に設定されている。
【0022】
センサ13は、シートS又はカットシートCSの端が検知位置13aを通過する前後で出力が変化するセンサであり、例えば光学式センサや、反射型PIセンサ、フラグ式PIセンサを使用することができる。光学式センサは、例えば、発光素子と受光素子とを備える。発光素子はシートS又はカットシートCSに光を照射し、受光素子がその反射光を受光する。検知位置13aは搬送ローラ54とピンチローラ55とのニップ部の上流側でニップ部に隣接して設定されている。
【0023】
プラテン11は、シートS又はカットシートCSを下側から支持し、記録ヘッド7とシートS又はカットシートCSとの隙間を保証する。記録ヘッド7はキャリッジに搭載され、プラテン11と対向して配置されている。キャリッジ8は、X方向に延在する走査ガイドとしてのキャリッジシャフト10に沿ってX方向(主走査方向)に往復移動可能に支持されている。キャリッジ8は、キャリッジモータ16(図3)を駆動源とした駆動機構により往復移動される。
【0024】
記録ヘッド7には、インクを吐出する吐出口(ノズル)が設けられている。インクはキャリッジ8に搭載されたインク貯留部9から記録ヘッド7に供給される。キャリッジ8が移動している間に記録ヘッド7からインクがシートS又はカットシートCS上に吐出される。記録ヘッド7の吐出動作とキャリッジ8の一走査によって1ライン分の画像を記録することができる。このような画像の記録と、搬送ローラ54によるシートS又はカットシートCSの間欠的なY方向(副走査方向)の搬送とを交互に繰り返すことで、シートS又はカットシートCS上に、頁単位の画像を記録することができる。
【0025】
Y方向で記録ヘッド7及びプラテン11よりも下流側にはカッタ12が配置されている。カッタ12はシートSをX方向に切断する。これによりロールシート100から、画像が記録されたカットシートを得られる。
【0026】
<制御装置>
図3を参照して記録装置1の制御部20について説明する。制御部20は、ホスト装置200から画像データとその記録指示を受信し、記録動作を実行する。制御部20は、処理部、記憶部、インタフェース部を備え、記録装置1の全体を制御する。処理部はCPUに代表されるプロセッサであり、記憶部に記憶されたプログラムを実行する。記憶部はRAMやROM等の記憶デバイスであり、プログラムやデータを記憶する。
【0027】
制御部20は操作パネル15の表示制御や、操作パネル15に対する入力操作の検知及びその受付処理を行う。制御部20はまた、センサ群SRの検知結果に基づいて搬送モータ53a、キャリッジモータ16、記録ヘッド7、カッタ12、給送モータ50a及びロールシートモータ4a等を制御する。センサ群SRには、センサ13及びセンサ14が含まれる。
【0028】
<制御例>
制御部20による記録装置1の制御例について説明する。ここではカットシートCSに対する画像の記録に関する一連の制御について説明する。図4(A)は制御部20による制御例を示すフローチャートである。また、図5(A)~図5(C)は記録装置1の動作説明図である。
【0029】
ホスト装置200から記録開始指示を受信すると、S1で給送制御を実行する。ここでは図5(A)に示すように、給送ローラ51を回転して給送トレイ3上のカットシートCSを装置内に給送する。カットシートCSの先端がセンサ13で検知された後、所定量、カットシートCSを搬送するとその先端が搬送ローラ54とピンチローラ55とのニップ部に当接する。
【0030】
次に図4(A)のS2で記録制御を実行する。ここでは搬送ローラ54を回転してカットシートCSをプラテン11上に搬送する。そして、図5(B)に示すように、記録ヘッド7のインク吐出動作及びキャリッジの移動動作による1ライン分の画像の記録と、搬送ローラ54の回転によるカットシートCSの間欠的な搬送とを交互に繰り返すことで、カットシートCS上に画像が記録される。
【0031】
画像の記録が終了すると、図4(A)のS3で排出制御を実行する。ここでは図5(C)に示すように搬送ローラ54を回転して記録済みのカットシートCSを排出トレイTに排出する動作を行う。
【0032】
<排出制御>
図4(A)のS3における排出制御の詳細について説明する。カットシートCSの排出の際、カットシートCSは排出トレイTに落下するか、または、排出トレイTからこぼれて落下する場合がある。光沢紙のように傷つきやすいシートの場合、カットシートCSの落下によりカットシートCSに傷がつく場合がある。
【0033】
そこで、本実施形態ではカットシートCSの排出完了前に搬送ユニット5による搬送を一時的に停止し、カットシートCSを搬送ローラ54とピンチローラ55とのニップ部により保持する。そして、ユーザがカットシートCSを引っ張ったことを検知し、これを検知して排出を完了させる。これによりユーザは、カットシートCSを摘まんだ状態で、排出完了を指示することができ、排出されるシートの落下を防止し、かつ、ユーザの負担を軽減してシートを排出可能な技術を提供することができる。
【0034】
図4(B)はS3の排出制御の内容を示すフローチャートであり、図6(A)から図6(C)は記録装置1の動作説明図である。図4(B)のS11では記録済みのカットシートCSを所定位置まで搬送し、そこで搬送モータ53aの駆動を停止して搬送を一時的に停止する停止制御を行う。図6(A)はカットシートCSの搬送を一時的に停止した状態を示す。カットシートCSはその搬送方向で後端が、搬送ローラ54とピンチローラ55のニップ部よりも上流側に位置する位置で停止され、搬送ローラ54とピンチローラ55のニップ部によって保持される。これによりカットシートCSが落下することを防止する。
【0035】
図4(B)のS12では、ユーザに、カットシートCSを排出方向に引くことを案内する報知を行う。報知は例えば操作パネル15に案内表示を行うか、音声出力により行う。案内表示の場合、例えば、”シートを引っ張ると排出が完了します”といったメッセージを表示する。
【0036】
図4(B)のS13では、センサ14の検知結果に基づいてユーザによりカットシートCSが排出方向に引かれたか否かを判定する。具体的には、搬送ローラ54が回転したか否かを判定する。回転したと判定した場合はS14へ進み、回転していないと判定した場合はS13の判定を繰り返す。図6(B)はユーザがカットシートCSを引っ張った状態を示している。カットシートCSは搬送ローラ54とピンチローラ55のニップ部に挟持されているので、カットシートCSが引っ張られると搬送ローラ54が排出方向に回転する。センサ14の検知結果を監視してこの回転が検知された場合にユーザがカットシートCSを引いたと判定することができる。
【0037】
図4(B)のS14では排出処理を行う。この排出処理はカットシートCSの排出を完了する排出完了処理である。本実施形態の場合、搬送モータ53aの駆動を再開し、図6(C)に示すように搬送ローラ54の回転によってカットシートCSを下流側へ搬送する。以上により排出制御が終了する。カットシートCSはユーザに保持されているので、その落下を回避できる。
【0038】
<第二実施形態>
第一実施形態では、ユーザがカットシートCSを排出方向に引いたか否かを判定するために、センサ14の検知結果を監視した。しかし、これに代えてセンサ13の検知結果を監視し、判定を行ってもよい。すなわち、ユーザがカットシートCSを排出方向に引くとカットシートCSの後端がセンサ13の検知位置13aを通過する。この通過を契機として排出完了処理を行う。
【0039】
図7は本実施形態における排出制御の処理例を示すフローチャートであり、図4(B)の処理に代わる処理である。図8(A)~図8(C)、図9(A)及び図9(B)は本実施形態における記録装置1の動作説明図である。
【0040】
図7のS21では記録済みのカットシートCSの後端がセンサ13の検知位置13aを通過しているか否かを判定する。カットシートCSの後端側の余白量によって、記録終了時におけるカットシートCSの後端の位置は異なる。S21ではこの判定を行うものである。カットシートCSの後端が検知位置13aを通過していない場合はS22へ進み、通過している場合はS23へ進む。
【0041】
S22ではカットシートCSを所定位置まで搬送し、そこで搬送モータ53aの駆動を停止して搬送を一時的に停止する。図8(A)はカットシートCSの搬送を一時的に停止した状態を示す。カットシートCSはその搬送方向で後端が、センサ13の検知位置13aよりも上流側に位置する位置で停止され、搬送ローラ54とピンチローラ55のニップ部によって保持される。これによりカットシートCSが落下することを防止する。
【0042】
図7のS2ではカットシートCSの後端が検知位置13aよりも上流側に位置するようにカットシートCSを上流側へ逆搬送して停止する。図9(A)及び図9(B)はこの動作例を示している。図9(A)は記録終了時のカットシートCSの位置の例を示しており、カットシートCSの後端がセンサ13の検知位置13aを通過している例を示している。このままではカットシートCSがユーザに引っ張られてもセンサ13で検知できない。したがって、搬送モータ53aを逆転駆動して図9(B)に示すように搬送ローラ54を逆転させ、カットシートCSを上流側に戻す。これにより、カットシートCSの後端をセンサ13の検知位置13aよりも上流側に位置させることができる。
【0043】
図7のS24では報知処理を行う。図4(B)のS12と同じ処理である。S25では、センサ13の検知結果に基づいてユーザによりカットシートCSが排出方向に引かれたか否かを判定する。具体的には、センサ13がカットシートCSの後端の通過を検知したか否かを判定する。通過したと判定した場合はS26へ進み、通過していないと判定した場合はS25の判定を繰り返す。図8(B)はユーザがカットシートCSを引っ張った状態を示している。カットシートCSが排出方向に移動すると、その後端がセンサ13の検知位置13aを通過し、センサ13の検知結果に表れる。センサ13の検知結果を監視してこの通過が検知された場合にユーザがカットシートCSを引いたと判定することができる。
【0044】
図7のS26では排出処理を行う。図4(B)のS14と同じ処理である。本実施形態の場合、搬送モータ53aの駆動を再開し、図8(C)に示すように搬送ローラ54の回転によってカットシートCSを下流側へ搬送する。以上により排出制御が終了する。カットシートCSはユーザに保持されているので、その落下を回避できる。
【0045】
<第三実施形態>
第一実施形態の排出処理(S14)及び第二実施形態の排出処理(S26)では、いずれも、搬送モータ53aの駆動を再開し、搬送ローラ54の回転によってカットシートCSを下流側へ搬送した。しかし、これらの排出処理は搬送ローラ54とピンチローラ55とのニップ部によるカットシートCSの保持を解除するだけでもよい。
【0046】
図10(A)は本実施形態における記録装置1の内部構造を部分的に示す図である。図示の例ではピンチローラ55がアクチュエータ55aによって、搬送ローラ54に対して接離可能に設けられている。アクチュエータ55aは例えばプルソレノイドであり、その非駆動時にはリターンスプリング等の弾性部材の付勢によってピンチローラ55は搬送ローラ54に圧接する。アクチュエータ55aの駆動時には、ピンチローラ55を変位して搬送ローラ54から離間させる。通常はピンチローラ55は搬送ローラ54に圧接する。
【0047】
図10(B)及び図10(C)は本実施形態において、ユーザがカットシートCSを排出方向に引いたと判定した場合の動作例を示している。図10(B)の段階でユーザがカットシートCSを排出方向に引いたと判定され、図10(C)では排出完了処理として、アクチュエータ55aを駆動し、ピンチローラ55を搬送ローラ54から離間させた状態を示す。ユーザがカットシートCSをそのまま引き出すことができ、排出制御が終了する。
【0048】
<第四実施形態>
搬送ユニット5が排出ローラを備え、排出制御の際、排出ローラにおいてカットシートCSを保持してもよい。図11(A)は本実施形態における記録装置1の内部構造を部分的に示す図である。
【0049】
搬送ユニット5は、排出ローラ56と押さえ拍車57とを含む。排出ローラ56及び押さえ拍車57はいずれもX方向の軸周りに回転自在に設けられた回転体である。押さえ拍車57は排出ローラ56に圧接しており、排出ローラ56の回転に従動して回転する。排出ローラ56と押さえ拍車57は、搬送方向(Y方向)で記録ヘッド7の記録位置よりも下流側でカッタ12よりも上流側に位置している。
【0050】
排出ローラ56の駆動源は、搬送機構53の駆動源を共用して搬送モータ53aを用いている。しかし、独自の駆動源を有していてもよい。伝達機構53bに代わる伝達機構53’は搬送モータ53aの駆動力を搬送ローラ54と排出ローラ56とに伝達し、これらのローラは同期的に回転する。
【0051】
図11(B)は排出制御においてカットシートCSを排出ローラ56と押さえ拍車57とのニップ部で保持した状態を示している。図11(C)は本実施形態において、ユーザがカットシートCSを排出方向に引いたと判定した場合の動作例を示している。図11(C)の段階で、第一実施形態と同様、センサ14の検知結果からユーザがカットシートCSを排出方向に引いたと判定される。その後、搬送モータ53aを駆動してカットシートCSを搬送して排出を完了することができる。
【0052】
この例では搬送ローラ54の回転量を検知するセンサ14の検知結果に基づいてユーザがカットシートCSを排出方向に引いたか否かを判定したが、排出ローラ56の回転量を検知するセンサを設け、そのセンサの検知結果に基づいて判定してもよい。
【0053】
また、本実施形態と第二実施形態、第三実施形態の組み合わせも可能である。第二実施形態と組み合わせる場合は、センサ13に相当するセンサを排出ローラ5の上流側に設ければよい。図12(a)及び図12(b)はその一例として検知位置17aを有するセンサ17が例示されている。また、第三実施形態と組み合わせる場合は押さえ拍車57をアクチュエータによって変位可能とすればよい。
【0054】
<第五実施形態>
第一~第四実施形態では、カットシートCSを対象としたが、ロールシート100のシートSも対象とすることができる。シートSはカッタ12によって切断する必要がある。この場合、ユーザがシートSを排出方向に引いたと判定された後、シートSを所定量搬送して切断位置の位置合わせを行ってカッタ12による切断を行えばよい。或いは、図11(A)~図11(C)のように排出ローラ56と押さえ拍車57でシートSを保持する構成の場合、排出ローラ56と押さえ拍車57をカッタ12の下流側に配置する。そして、カッタ12でシートSを切断した状態で、排出ローラ56と押さえ拍車57によりシートSを保持してもよい。
【0055】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0056】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0057】
1 記録装置、7 記録ヘッド、5 搬送ユニット、20 制御部
図1
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