(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】アンローダ
(51)【国際特許分類】
B65G 67/60 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
B65G67/60 G
(21)【出願番号】P 2020048082
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】森 真史
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-020442(JP,A)
【文献】特開平08-290833(JP,A)
【文献】特開2019-131384(JP,A)
【文献】実開平04-014230(JP,U)
【文献】米国特許第05547327(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/00 - 67/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に積まれた対象物を前記船舶から荷揚げするアンローダであって、
前記対象物を前記船舶から荷揚げする荷役部と、
少なくとも水平方向に対する前記船舶の傾きを検出する船舶位置検出部と、
前記荷役部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記荷役部が、前記船舶に対して移動方向へ移動しながら前記対象物を荷揚げする時に、前記制御部は、前記船舶位置検出部の検出結果に基づいて、
前記船舶の傾きを抑制するように、前記移動方向のそれぞれの位置における前記荷役部の荷役高さを調整する、アンローダ。
【請求項2】
前記荷役部が、前記移動方向として前後方向に移動しながら前記対象物を荷揚げする時に、前記制御部は、前記前後方向の傾きに基づいて、前記前後方向のそれぞれの位置における前記荷役部の荷役高さを調整する、請求項1に記載のアンローダ。
【請求項3】
前記制御部は、前記船舶の後側における前記荷役部の荷役高さが、前記船舶の前側における前記荷役部の荷役高さよりも低くなるように、前記荷役部の荷役高さを調整する、請求項2に記載のアンローダ。
【請求項4】
前記移動方向において、前記船舶の一端側が他端側に比して沈んでいる場合、
前記制御部は、前記一端側における荷揚げ量が前記船舶の他端側の荷揚げ量よりも多くなるように、前記荷役部の荷役高さを調整する、請求項1~3の何れか一項に記載のアンローダ。
【請求項5】
前記制御部は、前記船舶位置検出部の検出結果に基づいて取得された前記傾きと、前記傾きに対して設定された基準値とを比較し、当該比較結果に基づいて前記荷役部の荷役高さを調整する、請求項1~4の何れか一項に記載のアンローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンローダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、船舶に積まれたバラ荷などの対象物を荷揚げするアンローダが記載されている。このアンローダは、荷揚げを行う掘削部を船舶の船倉内に挿入し、当該船倉内に積まれた対象物の表面に沿って掘削部を配置する。これにより、アンローダは、駆動するバケットで対象物を荷揚げする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなアンローダにおいては、掘削部を水平方向に沿った方向へ移動させることで、船倉の各位置における対象物を荷揚げする。ここで、例えば、外航船のように、複数のハッチを有する大型の船舶である場合、荷役に伴う船舶の傾きはほぼ生じないため、当該傾きを考慮して荷役を行うことの必要性は低い。しかし、例えば、内航船のような小型の船舶では、荷役態様によっては、船舶の傾きが大きくなってしまう場合がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、荷役時における船舶の傾きを抑制できるアンローダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアンローダは、船舶に積まれた対象物を船舶から荷揚げするアンローダであって、対象物を船舶から荷揚げする荷役部と、少なくとも水平方向に対する船舶の傾きを検出する船舶位置検出部と、船舶位置検出部の検出結果に基づいて荷役部の動作を制御する制御部と、を備え、荷役部が、船舶に対して移動方向へ移動しながら対象物を荷揚げする時に、制御部は、船舶位置検出部の検出結果に基づいて、移動方向のそれぞれの位置における荷役部の荷役高さを調整する。
【0007】
本発明に係るアンローダは、船舶位置検出部によって、少なくとも水平方向に対する船舶の傾きを検出できる。そのため、制御部は、船舶位置検出部の検出結果、すなわち船舶の傾きに基づいて荷役部の動作を制御することができる。ここで、荷役部が、船舶に対して移動方向へ移動しながら対象物を荷揚げする時に、制御部は、船舶位置検出部の検出結果に基づいて、移動方向のそれぞれの位置における荷役部の荷役高さを調整する。このように、荷役部の荷役高さ調整がなされることで、移動方向におけるそれぞれの位置での荷揚げ量が調整される。従って、荷役部は、船舶の傾きを抑制するように、荷揚げを行うことができる。以上により、荷役時における船舶の傾きを抑制できる。
【0008】
荷役部が、移動方向として前後方向に移動しながら対象物を荷揚げする時に、制御部は、前後方向の傾きに基づいて、前後方向のそれぞれの位置における荷役部の荷役高さを調整してよい。船舶は、後側の方が前側より重い傾向にあるため、荷役時には、前後方向における船舶の傾きが大きくなり易い。従って、制御部は、荷役部が前後方向に移動するときに、前後方向の傾きに基づいて荷役部の荷役高さ調整を行うことで、前後方向の船舶の傾きを抑制できる。
【0009】
制御部は、船舶の後側における荷役部の荷役高さが、船舶の前側における荷役部の荷役高さよりも低くなるように、荷役部の荷役高さを調整してよい。船舶は、後側が重いことで沈み込みやすい。従って、荷役高さを後側において低くし、荷揚げ量を多くして軽くすることで、船舶の前後方向における傾きを抑制できる。
【0010】
移動方向において、船舶の一端側が他端側に比して沈んでいる場合、制御部は、一端側における荷揚げ量が船舶の他端側の荷揚げ量よりも多くなるように、荷役部の荷役高さを調整してよい。この場合、荷役部が一端側の荷揚げ量を多くすることで、沈んでいた一端側を軽くすることができる。これにより、船舶における一端側の沈み込みを低減し、傾きを抑制することができる。
【0011】
制御部は、船舶位置検出部の検出結果に基づいて取得された傾きと、傾きに対して設定された基準値とを比較し、当該比較結果に基づいて荷役部の荷役高さを調整してよい。これにより、荷役部は、基準値よりも傾きが大きい場合などに、当該基準値との差を解消するように、荷揚げ量を調整することができる。これにより、制御部は、実際の船舶の傾きをフィードバックして、荷役部の荷役高さ調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷役時における船舶の傾きを抑制できるアンローダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るアンローダを示す概略図である。
【
図2】制御部を有する制御システムのブロック構成図である。
【
図3】アンローダの荷役部の基本動作を示す概略図である。
【
図5】制御部による制御内容を示すフローチャートである。
【
図6】比較例に係るアンローダの荷役部の動作の内容を示す模式図である。
【
図7】荷役部とバラ荷との位置関係を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るアンローダを示す概略図である。
【0015】
本実施形態においては、アンローダ1として、バケットエレベータ式の船舶用連続アンローダ(CSU)が例示されている。アンローダ1は、船舶100の船倉103から対象物であるバラ荷M(例えば、石炭や鉱石等)を連続的に陸揚げする装置である。アンローダ1は、ガーダ2と、旋回フレーム3と、ブーム4と、バケットエレベータ6と、荷役部7と、制御部20を有する制御システム50と、を備える。
【0016】
ガーダ2は、岸壁101と平行に敷設された2本のレールにより、当該岸壁101に沿って走行可能な装置である。ガーダ2は、岸壁101の上面に設置可能な本体部である。旋回フレーム3は、ガーダ2の上部において旋回可能に支持される。旋回フレーム3は、ブーム4を起伏可能に支持する。ブーム4は、旋回フレーム3から海側へ向かって横方向に延びる。ブーム4は、海側の先端部にてバケットエレベータ6を支持する。
【0017】
バケットエレベータ6は、ブーム4の先端部から下方へ向かって延びる。バケットエレベータ6は、荷役部7で荷揚げされたバラ荷Mを上方へ向けて搬送する。バケットエレベータ6は、バランシングレバー12及びカウンタウエイト13によって、ブーム4の起伏角度に関係なく鉛直を保持するようになっている。
【0018】
なお、アンローダ1は、ブーム4の起伏角度を調整するためのシリンダ15を備えている。このシリンダ15を伸ばすとブーム4は上向きとなってバケットエレベータ6が上昇し、シリンダ15を縮めるとブーム4は下向きとなってバケットエレベータ6が下降するようになっている。
【0019】
荷役部7は、バラ荷Mを船舶100から荷揚げする。荷役部7は、バケットエレベータの下部に設けられている。本実施形態において、荷役部7は、側面掘削方式の掻き取り装置によって構成される。従って、荷役部7は、船倉103内のバラ荷Mを連続的に掘削し掻き取ると共に、掻き取ったバラ荷Mを上方に搬送して、バラ荷Mを荷揚げする。
【0020】
バケットエレベータ6は、エレベータシャフトを構成するエレベータ本体16と、エレベータ本体16に対して周回運動するチェーンバケット17とを備えている。チェーンバケット17は、無端状に連結された一対のローラチェーンであるチェーン(無端チェーン)に対して、複数のバケットを設けることによって構成される。チェーンバケット17は、エレベータ本体16及び荷役部7に対し、所定の軌跡で周回移動する。これにより、チェーンバケット17は、バケットエレベータ6の最上部と荷役部7との間を移動周回しながら循環する。
【0021】
チェーンバケット17は、船倉103内で掘削したバラ荷Mをバケット内に収容した状態で、エレベータ本体16に沿って上昇する。エレベータ本体16の上部には、回転フィーダ18が設けられる。回転フィーダ18は、チェーンバケット17から搬出されるバラ荷Mをブーム4側に搬送する。ブーム4には、バケットエレベータ6によって荷揚げされたバラ荷Mを搬送する搬送部19Aが配置されている。この搬送部19Aは、回転フィーダ18から乗り換えたバラ荷Mを落下させて、機内の搬送部19Bへ供給する。
【0022】
次に、
図2を参照して、制御部20を有する制御システム50の構成について説明する。
図2は、制御部20を有する制御システム50のブロック構成図である。
図2に示すように、制御システム50は、アンローダ1の動作を制御するためのシステムである。制御システム50は、測定部51(船舶位置検出部)と、駆動部52と、制御部20と、を備える。
【0023】
測定部51は、荷役部7の制御に必要となる船舶100の位置、及び荷役部7の位置を検出するために必要な情報を測定によって取得する機器である。測定部51は、水平方向及び上下方向における船舶100及び荷役部7の位置を検出するために必要な情報を取得する。また、測定部51は、水平方向に対する船舶100の傾きを検出するための情報を取得する。水平方向に対する船舶100の傾きは、船舶100の前後方向(船首/船尾方向)の傾き、及び幅方向(海/陸方向)の傾きを含んでいる。また、測定部51は、船舶100を上方から見たときの岸壁101に対する回転方向の傾きを検出するための情報も取得する。なお、測定部51の測定方法は特に限定されず、例えば、距離検出器、GPS、3DLidar等の公知の方法を採用してよい。測定部51は、測定結果を制御部20の位置検出処理部22へ送信する。これにより、位置検出処理部22は、当該測定結果を用いて演算処理を行い、荷役部7及び船舶100の水平方向及び上下方向における位置、及び船舶100の傾きを検出する。なお、位置検出処理部22は、測定部51の測定方法に応じた演算処理を行う。測定部51及び位置検出処理部22によって、少なくとも水平方向に対する船舶100の傾きを検出する船舶位置検出部60が構成される。
【0024】
駆動部52は、アンローダ1が荷役動作を行うために各構成要素に対して駆動力を付与する。駆動部52は、ガーダ2、旋回フレーム3、ブーム4、バケットエレベータ6、及び荷役部7に対してそれぞれ設けられた駆動機構によって構成される。駆動部52は、制御部20からの制御信号に基づいて、所定のタイミングで各構成要素に駆動力を付与する。
【0025】
制御部20は、アンローダ1全体を制御する装置である。制御部20は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェース等を備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。制御部20では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部20は、複数のコンピュータまたはPLC(Programmable Logic Controller)から構成されていてもよい。制御部20は、運転制御部21と、位置検出処理部22(船舶位置検出部)と、演算部23と、記憶部24と、を備える。
【0026】
運転制御部21は、駆動部52に制御信号を送信し、アンローダ1に荷役動作を行わせる。運転制御部21は、演算部23による演算結果を取得し、荷役部7が演算結果に従った動作を行うように、制御信号を送信する。位置検出処理部22は、上述の通り、荷役部7及び船舶100の水平方向及び上下方向における位置、及び船舶100の傾きを検出するための演算処理を行う。演算部23は、荷役部7による荷役動作に必要な各種演算処理を行う。演算部23は、船舶位置検出部60によって検出された情報に基づいて、荷役部7がどのような動作を行えばよいかを演算する。演算処理の詳細な内容については、アンローダ1の動作の説明と共に後述する。記憶部24には、予め船の形状などに関する情報が登録される。また、記憶部24は、荷役を行った際、前後方向のそれぞれの位置における荷役部7の高さ位置を記憶する。
【0027】
次に、アンローダ1の動作について説明する。まず、
図3を参照して、アンローダ1の荷役部7の基本動作について説明する。
図3(a)に示すように荷役部7の移動方向のうち前後方向を「D1」とし、幅方向を「D2」とする。
図3(a)の軌跡TR1~TR4は、荷役時における荷役部7の移動の軌跡を示している。
図3(a)に示すように、荷役部7は、船倉103内を四方の辺部に沿って周回するように移動しながら、バラ荷Mの荷揚げを行う。荷役部7は、幅方向D2における海側の位置にて、前後方向D1に沿って前側から後側へ向かう軌跡TR1を描くように移動する。荷役部7は、前後方向D1における後側の位置にて、幅方向D2に沿って海側から陸側へ向かう軌跡TR2を描くように移動する。荷役部7は、幅方向D2における陸側の位置にて、前後方向D1に沿って後側から前側へ向かう軌跡TR3を描くように移動する。荷役部7は、前後方向D1における前側の位置にて、幅方向D2に沿って陸側から海側へ向かう軌跡TR4を描くように移動する。
【0028】
また、荷役部7は、一層目のバラ荷Mを荷役した後、
図3(b)に示すように、一段下がって、次の層のバラ荷Mを荷役する。荷役部7は、当該動作を繰り返すことで、徐々に船倉103内のバラ荷Mの界面が低下してゆくように、荷役を行う。なお、バラ荷Mの界面は、記憶部24に保管されている、前後方向のそれぞれの位置における前回の荷役部7の高さ位置から推定することができる。
【0029】
次に、制御部20による荷役部7の制御内容について詳細に説明する。制御部20は、船舶位置検出部60の検出結果に基づいて荷役部7の動作を制御する。また、荷役部7が、船舶100に対して移動方向(前後方向D1又は幅方向D2)へ移動しながらバラ荷Mを荷揚げする時に、制御部20は、船舶位置検出部60の検出結果に基づいて、移動方向のそれぞれの位置における荷役部7の荷役高さを調整する。なお、荷役部7の荷役高さとは、バラ荷Mの界面に対する荷役部7の深さ方向における入り込む量を意味する。
【0030】
まず、前後方向D1の船舶100の傾きを抑制するための制御内容について説明する。当該説明では、
図4を参照して説明を行う場合がある。
図4は、本実施形態に係るアンローダ1の荷役部7の動作の内容を示す模式図である。なお、
図4では、特徴部の理解を容易とするために、荷役部7の動作を簡略化しているものとする。すなわち、
図3に示すように一回の周回動作で一層目のバラ荷Mの荷揚げが完了するものとは異なり、
図4(a)の動作で一層目のバラ荷Mの荷揚げがなされ、
図4(b)の動作で二層目のバラ荷Mの荷揚げが行われているものとする。
【0031】
制御部20は、船舶100の後側における荷役部7の荷役高さが、船舶100の前側における荷役部7の荷役高さよりも低くなるように、荷役部7の荷役高さを調整する。具体的には、
図4(a)に示すように、荷役部7が前側から後側へ向かって移動する場合、制御部20は、後側へ向かうに従って、荷役部7の位置が低くなるように、傾斜した軌跡を描くように制御する。この場合、船舶100の後側にて荷役部7が低い位置に配置されるため、その分、多くのバラ荷Mを荷揚げすることができる。従って、船舶100の後側における荷揚げ量が船舶100の前側における荷揚げ量よりも多くなる。
【0032】
また、
図4(b)に示すように、荷役部7が後側から前側へ向かって移動する場合、制御部20は、前側へ向かうに従って、荷役部7の位置が高くなるように、傾斜した軌跡を描くように制御する。この場合も、荷役部7は、船舶100の後側における荷揚げ量を前側における荷揚げ量よりも多くできる。あるいは、荷役部7は、前側における荷揚げ量が多くなりすぎないようにできる。例えば、前側における荷揚げ量を多くしすぎた結果、後側が相対的に重くなり、船舶100が後側に傾く可能性がある。これに対し、荷役部7は、前側の荷揚げ量を少なく抑えることで、当該傾きを抑制できる。
【0033】
荷役部7が、移動方向として前後方向D1に移動しながらバラ荷Mを荷揚げする時に、制御部20は、前後方向D1の傾きに基づいて、前後方向D1のそれぞれの位置における荷役部7の荷役高さを調整する。このとき、演算部23は、荷役部7が移動方向への移動を開始する前に、少なくとも水平方向に対する船舶100の傾きを考慮して、荷役部7が高さ方向においてどのような軌跡を描くべきかを演算する。また、前後方向D1において、船舶の後端側(一端側)が前端側(他端側)に比して沈んでいる場合、制御部20は、後端側における荷揚げ量が船舶100の前端側の荷揚げ量よりも多くなるように、荷役部7の荷役高さを調整する。
【0034】
例えば、
図4(a)に示すように、荷揚げ開始時において、演算部23は、船舶100の傾きを考慮して、軌跡ST,L1,L2のうち、どの軌跡を作用するべきかを演算する。例えば、船舶100が傾いておらず、後端側が沈み込んでいない場合、演算部23は、初期設定に係る荷役部7の軌跡としての軌跡STを採用する。これに対し、船舶100が後側に傾くことで後端側が沈み込んでいるような場合(例えば、
図6(b)のような船舶100の状態)、演算部23は、後端側における荷揚げ量を多くできるように、軌跡STよりも傾斜が大きい軌跡L1を採用してよい。また、船舶100が前側に傾いているような場合、演算部23は、後端側における荷揚げ量を抑制するように、軌跡STよりも傾斜が小さい軌跡L2を採用してよい。
【0035】
また、例えば、
図4(b)に示すように、後側のバラ荷Mを少なくした状態において、演算部23は、船舶100の傾きを考慮して、荷役部7の移動開始時における、当該荷役部7の荷役高さをどのように設定するかを演算する。例えば、船舶100が後側へ傾いていない場合(または傾き量が許容範囲である場合)、演算部23は、実線で示される荷役部7の高さ位置を採用する。一方、船舶100が後側へ傾いて後端側が沈み込んでいる場合、演算部23は、二点鎖線で示されるように、低い荷役部7の高さ位置を採用する。これにより、後端側の荷揚げ量を多くすることで、船舶100の傾きを低減できる。
【0036】
また、制御部20は、船舶位置検出部60の検出結果に基づいて取得された前後方向D1の傾きと、傾きに対して設定された基準値とを比較し、当該比較結果に基づいて荷役部7の荷役高さを調整する。このような基準値として、例えば、荷役開始時(
図4(a)に示す状態)の前後方向の傾きの値を採用してよい。このとき、荷役開始時に、記憶部24は基準値を記憶する。例えば、
図4(b)に示す状況において、演算部23は、現時点における船舶100の傾きと基準値との差を演算し、許容範囲を超えて後端側が沈みすぎていると判断した場合、実線で示す荷役部7の荷役高さから、二点鎖線で示す荷役部7の荷役高さに変更するように、フィードバック制御を行う。なお、基準値としてどのような傾きを採用するかは特に限定されない。例えば、基準値として、0°(全く傾きがない状態)を採用してもよく、一層前の荷役時における傾きを採用してもよい。
【0037】
次に、幅方向D2の船舶100の傾きを抑制するための制御内容について説明する。荷役部7が、移動方向として幅方向D2に移動しながらバラ荷Mを荷揚げする時に、制御部20は、幅方向D2の傾きに基づいて、幅方向D2のそれぞれの位置における荷役部7の荷役高さを調整する。また、幅方向D2において、船舶100の海側及び陸側の何れか一端側が他端側に比して沈んでいる場合、制御部20は、一端側における荷揚げ量が船舶の他端側の荷揚げ量よりも多くなるように、荷役部7の荷役高さを調整してよい。また、制御部20は、船舶位置検出部60の検出結果に基づいて取得された幅方向D2の傾きと、傾きに対して設定された基準値とを比較し、当該比較結果に基づいて荷役部7の荷役高さを調整する。
【0038】
幅方向D2における傾きを抑制する場合、海側の荷揚げ量と陸側の荷揚げ量との間でバランスを取ることが好ましい。ただし、海側の端部が沈むよりも陸側の端部が沈むほうが、係留ロープに係る力が抑えられるため、好ましい。従って、荷役部7は、まずは海側の辺部に沿って荷役を行い(
図3(a)の軌跡TR1)、次に、陸側の辺部に沿って荷役を行う(
図3(a)の軌跡TR2)。制御部20は、陸側の辺部に沿った荷役が終了した時には、海側の辺部に沿った荷役を開始するときと、同じ荷役高さになるように制御してよい。次に、制御部20は、海側の辺部に沿った荷役を行う前に、荷役部7の荷役高さを下げるが、当該下げる量を、幅方向D2における傾きの基準値との比較結果による、フィードバック制御で決定する。
【0039】
なお、船舶100を上方からみた時の回転方向における傾きについては、バラ荷Mの取り方による影響を受けないため、回転方向の傾きを軽減するための制御は行われなくてよい。このとき、制御部20は、回転方向に傾いた状態に応じて、軌跡TR1~TR4を傾けて制御を行う。
【0040】
図5を参照して、制御部20による制御内容について説明する。
図5は、制御部20による制御内容を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、荷役部7が、
図3(a)の軌跡TR1に沿った移動を開始しようとする所から始まる。
【0041】
図5に示すように、まず、制御部20の位置検出処理部22は、少なくとも船舶100の前後方向D1における傾きを検出する(ステップS10)。次に、演算部23は、ステップS10で検出された傾きに基づいて、前後方向D1のそれぞれの位置において、荷役部7をどのような荷役高さとなるように制御するかを演算する(ステップS20)。次に、運転制御部21は、ステップS20で演算された制御内容を実行するように、駆動部52へ制御信号を送信することで、荷役部7の移動及び荷揚げを実行する(ステップS30)。
【0042】
次に、制御部20は、船倉103内のバラ荷Mの荷揚げが全ての層について終了したか否かを判定する(ステップS40)。ここでは、軌跡TR1(
図3(a)参照)での一層目の荷役が完了しただけであるため、制御部20は、荷揚げが完了していないと判定する。制御部20は、軌跡TR1から軌跡TR2に沿った荷役を行えるように、荷役部7の方向転換の準備を行う(ステップS50)。以降の処理では、軌跡TR2~TR4について同様のステップS10~S50の処理が繰り返される。複数の層についての荷揚げが完了して、船倉103内のバラ荷Mの荷揚げが終了したら、制御部20は、ステップS40において、荷揚げが終了したと判定し、
図5に示す処理を終了する。
【0043】
次に、本実施形態に係るアンローダ1の作用・効果について説明する。
【0044】
本実施形態に係るアンローダ1は、船舶位置検出部60によって、少なくとも水平方向に対する船舶100の傾きを検出できる。そのため、制御部20は、船舶位置検出部60の検出結果、すなわち船舶100の傾きに基づいて荷役部7の動作を制御することができる。ここで、荷役部7が、船舶100に対して移動方向へ移動しながらバラ荷Mを荷揚げする時に、制御部20は、船舶位置検出部60の検出結果に基づいて、移動方向のそれぞれの位置における荷役部7の荷役高さを調整する。このように、荷役部7の荷役高さ調整がなされることで、移動方向におけるそれぞれの位置での荷揚げ量が調整される。従って、荷役部7は、船舶100の傾きを抑制するように、荷揚げを行うことができる。以上により、荷役時における船舶100の傾きを抑制できる。
【0045】
荷役部7が、移動方向として前後方向に移動しながらバラ荷Mを荷揚げする時に、制御部20は、前後方向D1の傾きに基づいて、前後方向D1のそれぞれの位置における荷役部7の荷役高さを調整してよい。船舶100は、後側の方が前側より重い傾向にあるため、荷役時には、前後方向D1における船舶100の傾きが大きくなり易い。従って、制御部20は、荷役部7が前後方向D1に移動するときに、前後方向D1の傾きに基づいて荷役部7の荷役高さ調整を行うことで、前後方向D1の船舶100の傾きを抑制できる。
【0046】
制御部20は、船舶100の後側における荷役部7の荷役高さが、船舶100の前側における荷役部7の荷役高さよりも低くなるように、荷役部7の荷役高さを調整してよい。船舶100は、後側が重いことで沈み込みやすい。従って、荷役高さを後側において低くし、荷揚げ量を多くして軽くすることで、船舶100の前後方向D1における傾きを抑制できる。
【0047】
移動方向において、船舶100の一端側が他端側に比して沈んでいる場合、制御部20は、一端側における荷揚げ量が船舶100の他端側の荷揚げ量よりも多くなるように、荷役部7の荷役高さを調整してよい。この場合、荷役部7が一端側の荷揚げ量を多くすることで、沈んでいた一端側を軽くすることができる。これにより、船舶100における一端側の沈み込みを低減し、傾きを抑制することができる。
【0048】
制御部20は、船舶位置検出部60の検出結果に基づいて取得された傾きと、傾きに対して設定された基準値とを比較し、当該比較結果に基づいて荷役部7の荷役高さを調整してよい。これにより、荷役部7は、基準値よりも傾きが大きい場合などに、当該基準値との差を解消するように、荷揚げ量を調整することができる。これにより、制御部20は、実際の船舶100の傾きをフィードバックして、荷役部7の荷役高さ調整を行うことができる。
【0049】
次に、
図4及び
図6,7を参照して、本実施形態に係るアンローダ1と、比較例に係るアンローダとの比較を行う。
図6は、比較例に係るアンローダの荷役部7の動作の内容を示す模式図である。
図7は、荷役部7とバラ荷Mとの位置関係を示す拡大図である。なお、
図7では、理解を促進するため、バラ荷Mの界面の傾きを強調して示している。比較例に係るアンローダは、荷役部7の荷役高さの調整を行うことなく、荷役高さを一定にして荷役を行う。従って、
図6(a)に示すように、荷役部7は、荷役高さを変えずに前後方向D1へ移動しながら荷揚げする。このような動作により、荷役部7は、最初の一層目では、前側と後側とで同じ荷揚げ量にてバラ荷Mを荷揚げできたものとする(
図7(a)参照)。船舶100自体は後側の方が重いため、船倉103内のバラ荷Mの重量が全体的に減少すると、後側の重みの影響が大きくなる。そのため、船舶100は後側がやや沈み込むことになる。これにより、
図7(b)に示すように、バラ荷Mもやや後側に沈むように傾く。そして、
図7(c)に示すように、荷役部7が、二層目も一定の荷役高さで移動を行うと、やや沈み込んだ後側の箇所では、前側よりも荷揚げ量が自然に少なくなる。例えば、
図7(c)の実線で示す荷役部7のバラ荷Mに対する深さは、前側の二点鎖線で示す荷役部7のバラ荷Mに対する深さよりも浅く、荷揚げ量が少ないことが分かる。すると、後側のバラ荷Mの方が重くなることで、船舶100は、後側に更に沈み込む。このような動作を繰り返すと、船舶100の後側への傾きは更に大きくなる。
【0050】
それに対し、本実施形態に係るアンローダ1では、
図4(a)に示すように、制御部20が船舶100の傾きに基づいて、荷役部7の荷役高さ調整をしている。従って、
図4(b)に示すように、後側のバラ荷Mを大きく減らすことができるため、船舶100の後側への沈み込みを抑制できている。このように傾きが小さい状態で、制御部20は、後側の荷揚げ量が多くなるように荷役部7の荷役高さ調整による荷役を繰り返す。これにより、
図4(c)に示すように、後側からバラ荷Mを少なくして、船舶100の前側と後側とでバランスをとりながらバラ荷Mの荷揚げを行うことができる。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
例えば、
図4では、荷役部7は、直線的に荷役高さが変化するように移動していた。これに代えて、曲がるような軌跡を描くように荷役高さを調整してもよい。
【0053】
また、制御部20は、必ずしも前側よりも後側の方が荷役高さが低くなるように、荷役部7を制御しなくともよい。例えば、状況によっては、荷役高さが一定となるように制御されてもよい。
【0054】
船舶100の上側から見たときの荷役部7の軌跡は、
図3(a)に示すようなものに限定されず、逆方向に周回するような軌跡が採用されてもよい。また、周回を開始するスタート位置も軌跡TR1に限定されず、軌跡TR2~TR4の何れから開始してもよい。また、
図3(a)に示すような周回による軌跡である必要はなく、蛇行するような軌跡が描かれてもよい。
【0055】
なお、バラ荷Mの界面に対する荷役部7の深さ方向における入り込む量を荷役高さとして説明したが、これに限られない。例えば、絶対座標系の中における荷役部の鉛直方向の高さを荷役高さとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…アンローダ、7…荷役部、20…制御部、22…位置検出処理部(船舶位置検出部)、51…測定部(船舶位置検出部)、60…船舶位置検出部、M…バラ荷(対象物)。