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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】成型用基材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20240226BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240226BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240226BHJP
   D04H 1/559 20120101ALI20240226BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20240226BHJP
【FI】
B32B5/26
B32B27/32 Z
B32B27/36
B32B27/32 E
D04H1/559
D04H1/4374
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020055751
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154554
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128510(JP,A)
【文献】特表2008-531361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D04H 1/559
D04H 1/4374
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一層の第一繊維層と一層の第二繊維層とを有する繊維基材層を備える、成型用基材であって、
前記第一繊維層は構成繊維として、レーヨン繊維と鞘部がポリプロピレン系樹脂であり芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維とを含んでおり、
前記第二繊維層の構成繊維に占める前記レーヨン繊維の割合は、前記第一繊維層の構成繊維に占める前記レーヨン繊維の割合よりも低いことを特徴とする、
成型用基材。
【請求項2】
更に、カバー層とポリプロピレン系樹脂接着層とを備える、請求項1に記載の成型用基材であって、
前記ポリプロピレン系樹脂接着層により、前記繊維基材層と前記カバー層とが接着一体化している、
請求項1に記載の成型用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーボディーシールド材などの車両用外装材を調製可能な、成型用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両下面の凹凸を減らして走行時の空気抵抗を抑制する、タイヤの飛び石から車両を保護する、ロードノイズを低減するなどの目的のため、車両下部に車両用外装材の一種であるアンダーボディーシールド材(以下、UBSと略すことがある)を設けることがある。
【0003】
このようなUBSなどの車両用外装材を調製可能な成型用基材として、本願出願人はこれまで特願2019-208366(特許文献1)へ記載したように、芯部がポリエステル系樹脂であり鞘部がポリプロピレン系樹脂である芯鞘型複合繊維を含む繊維基材層を備える、成型用基材を提案した。そして、このような構成を満足する繊維基材層を備えていることによって、繊維基材層とカバー層がポリプロピレン系樹脂層により接着一体化してなる成型用基材であっても、高温条件下において層間剥離を発生し難いなど耐熱性に優れる車両用外装材を提供できるものであった。
【0004】
なお、特許文献1には、車両用外装材に難燃性が求められる場合には、成型用基材の構成繊維として、レーヨン繊維などの再生繊維や難燃性の有機樹脂を含んでいる繊維などの難燃性繊維を採用するのが好ましいという知見を記載した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2018-219320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願出願人は特許文献1に記載した知見をもとに、難燃性が向上した車両用外装材を提供可能な成型用基材を提供するため、上述した芯鞘型複合繊維と難燃性繊維を混綿してなる繊維基材層を備える成型用基材を調製した。
このようにして調製した成型用基材は、難燃性繊維を含んでいない繊維基材層を備える成型用基材よりも、難燃性が向上しているものではあった。しかし、難燃性繊維として上述した芯鞘型複合繊維よりも親水性が高い難燃性繊維(例えば、レーヨン繊維)を採用した場合、繊維基材層が全体的に雨水などの水分を吸収し易くなる、および/または、当該水分を保持し易くなることで、当該成型用基材からなる車両用外装材の重量が保持している水分の分増す(以降、重量増と称することがある)結果、車両用外装材が車体から剥離し易くなる、および/または、車両用外装材に内部剥離が生じ易くなる恐れがあった。
一方、前述の問題を発生し難くするため、単純に、繊維基材層を調製する際に混綿する難燃性繊維の割合を低くすると、難燃性は低下するものであった。
【0007】
つまり、上述した芯鞘型複合繊維と難燃性繊維とを含んでいる繊維基材層を備えたこれまでの成型用基材において、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制はトレードオフの関係を有するものとなり、当該両課題を達成可能な成型用基材を提供することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は、
一層の第一繊維層と一層の第二繊維層とを有する繊維基材層を備える、成型用基材であって、
前記第一繊維層は構成繊維として、レーヨン繊維と鞘部がポリプロピレン系樹脂であり芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維とを含んでおり、
前記第二繊維層の構成繊維に占める前記レーヨン繊維の割合は、前記第一繊維層の構成繊維に占める前記レーヨン繊維の割合よりも低いことを特徴とする、
成型用基材。」
である。
そして、第二の発明は、
「更に、カバー層とポリプロピレン系樹脂接着層とを備える、請求項1に記載の成型用基材であって、
前記ポリプロピレン系樹脂接着層により、前記繊維基材層と前記カバー層とが接着一体化している、
請求項1に記載の成型用基材。」
である。
【発明の効果】
【0009】
本願出願人が検討を続けた結果、成型用基材を構成する繊維基材層として第一繊維層と第二繊維層とを有する繊維基材層を採用すること、そして、第一繊維層に主として成型用基材の難燃性を向上させる役割を担わせると共に、第二繊維層に主として成型用基材の重量増に伴い生じる剥離を抑制させる役割を担わせることによって、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制が効果的に発揮された成型用基材を提供できることを見出した。
【0010】
具体的には、第二繊維層の構成繊維に占める難燃性繊維の割合が、第一繊維層の構成繊維に占める当該難燃性繊維の割合よりも低いことによって、繊維基材層における水分の吸収し易さ、および/または、当該水分の保持し易さを効果的に低下して、成型用基材の重量増に伴い生じる剥離を効果的に抑制できること、そして、第一繊維層が第二繊維層と比較し多量の難燃性繊維を含んでいることによって成型用基材の難燃性を効果的に向上できることを見出した。
【0011】
その結果、例え繊維基材層を構成する繊維に占める芯鞘型複合繊維と難燃性繊維の割合を同一とした場合であっても、本願発明によって、芯鞘型複合繊維と難燃性繊維をただ混綿してなる繊維基材層を備える成型用基材では実現できなかった、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制という両課題を達成可能な成型用基材を提供できる。
【0012】
また、本発明に係る成形用基材を構成している繊維基材層は、芯部がポリエステル系樹脂であり鞘部がポリプロピレン系樹脂である芯鞘型複合繊維を備えている。そのため、繊維基材層とカバー層とが、ポリプロピレン系樹脂接着層により接着一体化されている成形用基材であっても、高温条件下において層間剥離を発生し難いなど、耐熱性に優れる車両用外装材を調製な成型用基材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る成型用基材を表した、模式断面図である。
図2】本発明に係る成型用基材の別の態様を表した、模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行った。また、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
そして、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0015】
本発明に係る成型用基材について、主として、本発明に係る成型用基材を表した模式断面図である図1、および、本発明に係る成型用基材の別の態様を表した模式断面図である図2を用いて説明する。
【0016】
図1に図示する本発明に係る成型用基材(10)は、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)を有する繊維基材層(3)を備えている。なお、図中では、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間は破線を用いて図示している。そして、図2に図示する本発明に係る成型用基材(100)は、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とを有する繊維基材層(3)を備えていると共に、ポリプロピレン系樹脂接着層(5)によって繊維基材層(3)の両主面上にカバー層(4)が接着一体化している。
【0017】
本発明でいう繊維層とは、例えば、繊維ウェブや不織布あるいは織物や編み物などの布帛からなる、繊維同士が絡み合い構成された繊維の層をいう。繊維層を含んでいることによって、柔軟性に富み金型などへ追従し易いため成形性に優れる成型用基材(10、100)を提供できる。より成形性に優れる成型用基材(10、100)を提供できるよう、成型用基材(10、100)を構成する繊維基材層(3)における第一繊維層(1)あるいは第二繊維層(2)のうち少なくとも一方の繊維層は、繊維同士がランダムに絡み合った繊維ウェブや不織布からなる層であるのが好ましく、成型用基材(10、100)を構成する繊維基材層(3)は繊維同士がランダムに絡み合った繊維ウェブや不織布からなる繊維層のみで構成されているのがより好ましい。
【0018】
また、繊維基材層(3)における第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の存在態様は適宜調整できる。第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とがただ重なり合ってなる繊維基材層(3)であってもよいが、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制が効果的に発揮された成型用基材(10、100)を提供し易くなる傾向があることから、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とが積層一体化してなる繊維基材層(3)であるのがより好ましい。
【0019】
ここでいう第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とが積層一体化しているとは、第一繊維層(1)の一方の主面と第二繊維層(2)の一方の主面が隣接し面すると共に、
・主面同士がバインダにより接着している態様、
・第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)が含む接着繊維により、層間が接着している態様、
・第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間を超え、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の構成繊維同士が絡合している態様、
などを指し、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)がただ重なり合っているだけの態様ではないことを意味する。
【0020】
特に、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制が効果的に発揮された成型用基材(10、100)をより提供し易くなる傾向があることから、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間を超え、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の構成繊維同士が絡合していることで、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とが積層一体化してなる繊維基材層(3)であるのがより好ましい。
【0021】
なお、成型用基材(10、100)の製造工程が判明している場合には、繊維基材層(3)を構成している第一繊維層(1)と第二繊維層(2)は、以下の方法で確認できる。
【0022】
(第一繊維層(1)および第二繊維層(2)の確認方法1)
成型用基材(10、100)の製造工程において、第一の布帛と第二の布帛をただ重なり合うように積層することで繊維基材層(3)が調製されている場合、あるいは、第一の布帛と第二の布帛を積層一体化させ繊維基材層(3)が調製されている場合には、成型用基材(10、100)が備えている繊維基材層(3)、は第一の布帛由来の第一繊維層(1)と第二の布帛由来の第二繊維層(2)を有するものである。
【0023】
なお、成型用基材(10、100)の製造工程が不明である場合には、繊維基材層(3)を構成している第一繊維層(1)と第二繊維層(2)は、以下の方法で確認できる。
【0024】
(第一繊維層(1)および第二繊維層(2)の確認方法2)
1.成型用基材(10、100)が備えている繊維基材層(3)から、繊維基材層(3)を構成している各繊維層を容易に分離して採取できる場合には、採取した各繊維層を以下の判断方法へ供する。
2.採取した繊維層のうち隣接する2層の繊維層における、当該2層の繊維層がなす層間側と反対側の各主面を構成する、繊維の種類とその質量比率を各々確認する。なお、確認には、FT-IRや元素分析やNMRなどの各種分析装置を用いる方法、電子顕微鏡などの分析装置を用いる方法、カヤステインなどの染料を用いて染色し分析する方法など周知の分析方法を採用できる。
3.構成繊維に占める難燃性繊維の割合が高い方の主面を有する繊維層を、仮の第一繊維層とする。
4.仮の第一繊維層が、当該難燃性繊維よりも親水性が低い鞘部がポリプロピレン系樹脂であり芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維を含んでいる場合、当該仮の第一繊維層を第一繊維層とし、もう一方の繊維層を第二繊維層とする。
【0025】
(第一繊維層(1)および第二繊維層(2)の確認方法3)
1.成型用基材(10、100)が備えている繊維基材層(3)から、繊維基材層(3)を構成している各繊維層を容易に分離して採取できない場合には、成型用基材(10、100)が備えている繊維基材層(3)の両主面を構成する、繊維の種類とその質量比率を各々確認する。なお、確認には、上述した周知の分析方法を採用できる。
2.構成繊維に占める難燃性繊維の割合が高い方の主面を、仮の第一繊維層が備える主面であるとする。
4.仮の第一繊維層が備える主面が、当該難燃性繊維よりも親水性が低い鞘部がポリプロピレン系樹脂であり芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維を含んでいる場合、繊維基材層(3)は当該主面側に第一繊維層を備えており、もう一方の主面側に第二繊維層を備えているとする。
【0026】
第一繊維層(1)は構成繊維として、難燃性繊維を含んでいる。ここでいう難燃性繊維とは、融点を有していない樹脂(熱可塑性樹脂ではない樹脂)を含んでいる繊維、および/または、LOI値が22より高い樹脂を含んでいる繊維を指す。
【0027】
なお、融点とは、JIS K7121:1987に規定されている示差熱分析により求められ、示差熱分析曲線(DTA曲線)における融解温度のピークから算出される温度を指すものであり、当該融解温度のピークを有していない樹脂、および/または、融点を算出できない樹脂を「融点を有していない樹脂」とする。また、LOI値とは限界酸素指数のことであり、JIS K7201-1:1999、JIS K7201-2:2007、JIS K7201-3:2008に規定されている酸素指数の測定手順により求められる値を指すものであり、LOI値が高いほど難燃性に優れている繊維であることを意味する。
【0028】
第一繊維層(1)が上述のような難燃性繊維を含んでいることによって、高温雰囲気下にあっても難燃性繊維は繊維形状を維持できることで、難燃性に優れる成型用基材(10)を提供できる。当該効果がより効果的に発揮されるよう、融点を有していない樹脂のみで構成されている難燃性繊維である、および/または、LOI値が22より高い樹脂のみで構成されている難燃性繊維(より好ましくは、LOI値が25以上の樹脂のみで構成されている難燃性繊維)であるのが好ましい。
【0029】
このような難燃性繊維の具体例として、レーヨン繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は22以下であり通常17~19程度である)、ポリクラール繊維(融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常26程度である)、モダアクリル繊維(融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常28~33程度である)、芳香族ポリアミド系繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常25~32程度である)、ノボロイド繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常30~34程度である)、アクリル系耐炎化繊維(融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値は25以上であり通常42~52程度である)などを挙げることができる。これらの中でも、難燃性に優れる成型用基材(10)を実現できるという知見から、第一繊維層(1)はレーヨン繊維を含んでいるのが好ましく、第一繊維層(1)が含んでいる難燃性繊維はレーヨン繊維のみであるのがより好ましい。
【0030】
第一繊維層(1)に含まれている難燃性繊維の割合は適宜調整するが、第一繊維層(1)を構成する繊維の質量に占める難燃性繊維の質量の割合が高いほど、難燃性に優れた車両用外装材を提供できる傾向がある。そのため、当該割合は1質量%以上であるのが好ましく、3質量%以上であるのが好ましく、5質量%以上であるのが好ましく、8質量%以上であるのが好ましい。
【0031】
難燃性繊維の繊維長や繊度などの各種値は、本発明にかかる課題を解決できる車両用外装材を提供できるよう適宜調整する。繊度は1~100dtexであることができ、1.5~50dtexであることができ、2~30dtexであることができ、3~10dtexであることができる。また、繊維長は20~150mmであることができ、25~100mmであることができ、30~90mmであることができ、40~80mmであることができる。なお、繊維長が150mmよりも長く繊維長を特定するのが困難な連続長を有する繊維(メルトブロー不織布の構成繊維やスパンボンド不織布の構成繊維などを含む概念である)であってもよい。しかし、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間を超え構成繊維同士が絡合して積層一体化がなされ易いよう、難燃性繊維は所定長を有する繊維であるのが好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c 直接法(C法)に則って測定された繊維長をいう。
【0032】
第一繊維層(1)は難燃性繊維に加え、当該難燃性繊維よりも親水性が低い、鞘部がポリプロピレン系樹脂であり芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維を含んでいる。
【0033】
ここでいう親水性が低いとは、芯鞘型複合繊維において繊維断面部分を除く繊維表面を構成している樹脂が、第一繊維層(1)を構成する難燃性繊維における繊維断面部分を除く繊維表面を構成している樹脂よりも、水の接触角が低いことを意味する。
【0034】
なお、水の接触角とは、JIS R3257:1999に規定されている接触角の測定方法において、試験片である基盤ガラスの替わりに樹脂板を用いて算出される、当該樹脂板表面において4μlの水滴が形成する接触角を指すものである。つまり、芯鞘型複合繊維において繊維断面部分を除く繊維表面を構成している樹脂を用いて作成された樹脂板Aにおける水の接触角と、難燃性繊維において繊維断面部分を除く繊維表面を構成している樹脂を用いて作成された樹脂板Bにおける水の接触角とを比較し、樹脂版Aにおける水の接触角が樹脂版Bよりも高いことを意味する。
【0035】
本発明にかかる芯鞘型複合繊維の鞘部を構成する、ポリプロピレン系樹脂の種類は周知のものを採用でき、例えば、ポリプロピレン炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリプロピレンなどを採用できる。また、ポリプロピレン系樹脂の融点は80℃よりも高いことができ、90℃よりも高いことができ、100℃よりも高いことができる。特に、芯鞘型複合繊維の鞘部に含まれているポリプロピレン系樹脂と、詳細を後述するポリプロピレン系樹脂層(5)に含まれているポリプロピレン系樹脂が同じ樹脂である(例えば、共にポリプロピレンである)と、繊維基材層(3)とポリプロピレン系樹脂層(5)は強く接着一体化できることによって、高温条件下でも形状安定性に優れ、繊維基材層(3)とポリプロピレン系樹脂層(5)との間で層間剥離を発生し難く、曲げ時最大点荷重に優れるなど剛性に富むという、難燃性に優れた車両用外装材を提供でき好ましい。当該効果がより効果的に発揮されるよう、芯鞘型複合繊維において繊維断面部分を除く繊維表面は、ポリプロピレン系樹脂のみで構成されているのが好ましい。
【0036】
また、本発明にかかる芯鞘型複合繊維の芯部を構成する、ポリエステル系樹脂の種類は周知のものを採用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂などを採用できる。ポリエステル系樹脂の融点は80℃よりも高いことができ、90℃よりも高いことができ、100℃よりも高いことができる。なお、本発明に係る芯鞘型複合繊維の芯部を構成するポリエステル系樹脂の融点は、鞘部を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも高い。
【0037】
芯鞘型複合繊維の繊維断面における、芯部と鞘部の面積比率は適宜調整できるが、1:9~9:1であることができ、2:8~8:2であることができ、3:7~7:3であることができ、4:6~6:4であることができる。
【0038】
芯鞘型複合繊維の繊維長や繊度などの各種値は、本発明にかかる課題を解決できる成型用基材(10、100)を提供できるよう適宜調整する。繊度は1~100dtexであることができ、1.5~50dtexであることができ、2~30dtexであることができ、3~10dtexであることができる。また、繊維長は20~150mmであることができ、25~100mmであることができ、30~90mmであることができ、40~80mmであることができる。なお、繊維長が150mmよりも長く繊維長を特定するのが困難な連続長を有する繊維(メルトブロー不織布の構成繊維やスパンボンド不織布の構成繊維などを含む概念である)であってもよい。しかし、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間を超え構成繊維同士が絡合して積層一体化がなされ易いよう、芯鞘型複合繊維は所定長を有する繊維であるのが好ましい。
【0039】
なお、当該芯鞘型複合繊維は顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。
【0040】
第一繊維層(1)が当該構成の芯鞘型複合繊維を含んでいることによって、曲げ時最大点荷重に優れるなど剛性に富み剥離の発生を防止できる車両用外装材を提供でき好ましい。
【0041】
第一繊維層(1)が構成繊維として含む難燃性繊維と芯鞘型複合繊維の質量比率は、適宜調整できるものであり、難燃性繊維:低親水性繊維=1質量%:99質量%~20質量%:80質量%であるのが好ましく、3質量%:97質量%~10質量%:90質量%であるのが好ましい。
【0042】
なお、本発明において、構成繊維に占める特定繊維の質量比率(単位:質量%)は、以下の計算式から算出できる。
X=100×B/A
X:構成繊維に占める特定繊維の質量比率(単位:質量%)
A:繊維層が含む構成繊維の総質量(単位:g/m
B:繊維層が含む特定繊維の質量(単位:g/m
【0043】
第二繊維層(2)の構成繊維に占める難燃性繊維の割合は、前記第一繊維層(1)の構成繊維に占める前記難燃性繊維の割合よりも低い。第二繊維層(2)が当該構成を満足するか否かは、上述した第一繊維層(1)および第二繊維層(2)の確認方法で挙げた確認方法を用いて判断できる。
【0044】
なお、構成繊維に難燃性繊維を含む第一の布帛と、構成繊維に前記難燃性繊維を含んでいない第二の布帛を用意し、第一の布帛と第二の布帛をただ重なり合うように積層する、あるいは、積層一体化することで繊維基材層(3)を調製することで、構成繊維に占める前記難燃性繊維の割合が第一繊維層(1)の構成繊維に占める難燃性繊維の割合よりも低い、第二繊維層(2)を備えた繊維基材層(3)を調製できる。
【0045】
なお、第二繊維層(2)は上述した難燃性繊維以外の構成繊維として、第一繊維層(1)に含まれている芯鞘型複合繊維を含んでいるのが好ましい。第一繊維層(1)と第二繊維層(2)が同一種類の繊維を含んでいることによって、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とをより効果的に積層一体化した繊維基材層(3)とすることができ、その結果、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制が効果的に発揮された成型用基材(10)をより提供し易くなる傾向があり好ましい。
【0046】
特に、芯鞘型複合繊維の鞘部に含まれているポリプロピレン系樹脂と、詳細を後述するポリプロピレン系樹脂層(5)に含まれているポリプロピレン系樹脂が同じ樹脂である(例えば、共にポリプロピレンである)と、繊維基材層(3)とポリプロピレン系樹脂層(5)は強く接着一体化できることによって、高温条件下でも形状安定性に優れ、繊維基材層(3)とポリプロピレン系樹脂層(5)との間で層間剥離を発生し難く、曲げ時最大点荷重に優れるなど剛性に富むという、難燃性に優れた車両用外装材を提供でき好ましい。当該効果がより効果的に発揮されるよう、芯鞘型複合繊維において繊維断面部分を除く繊維表面は、ポリプロピレン系樹脂のみで構成されているのが好ましい。
【0047】
第二繊維層(2)が芯鞘型複合繊維を含んでいる場合、当該芯鞘型複合繊維の繊維長や繊度などの各種値は、本発明にかかる課題を解決できる成型用基材(10,100)を提供できるよう適宜調整する。繊度は1~100dtexであることができ、1.5~50dtexであることができ、2~30dtexであることができ、3~10dtexであることができる。また、繊維長は20~150mmであることができ、25~100mmであることができ、30~90mmであることができ、40~80mmであることができる。なお、繊維長が150mmよりも長く繊維長を特定するのが困難な連続長を有する繊維(メルトブロー不織布の構成繊維やスパンボンド不織布の構成繊維などを含む概念である)であってもよい。しかし、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)の層間を超え構成繊維同士が絡合して積層一体化がなされ易いよう、芯鞘型複合繊維は所定長を有する繊維であるのが好ましい。
【0048】
第二繊維層(2)が当該構成の芯鞘型複合繊維を含んでいることによって、曲げ時最大点荷重に優れるなど剛性に富み剥離の発生を防止できる車両用外装材を提供でき好ましい。
【0049】
第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)は、難燃性繊維や芯鞘型複合繊維以外にも、一種類の有機樹脂から構成された他の有機繊維や、複数種類の有機樹脂から構成された他の有機繊維、ならびにガラス繊維などの無機繊維を含んでいてもよい。
【0050】
このような他の有機繊維としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機樹脂を用いて構成できる。
【0051】
なお、これらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0052】
また、これらの有機樹脂は、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、加熱を受け発泡する粒子、無機粒子、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0053】
上述のように第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)を構成する繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0054】
第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)は、例えば、繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0055】
更に、構成繊維を絡合および/または一体化させることで不織布とすることができる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0056】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0057】
第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)の構成繊維同士を接着するため、バインダを用いても良い。使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(アクリル酸エステル樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体樹脂など)、ポリウレタン樹脂などを使用できる。
【0058】
バインダがアクリル系樹脂を含有していると、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる成型用基材(10、100)を提供でき好ましい。また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。特に、難燃剤を含んでいることによって、より難燃性に優れる成型用基材(10、100)を提供でき好ましい。
【0059】
成型用基材(10、100)がバインダを含んでいる場合、その目付は適宜選択するが、バインダ量が多いほど主面が平滑な成型用基材(10、100)を提供し易いことから、バインダの目付は、0.5g/m以上であるのが好ましい。一方、バインダ量が過剰に多い場合には、成形性が劣る成型用基材(10、100)となるおそれがあることから、バインダの目付は、30g/m以下であるのが好ましく、20g/m以下であるのが好ましい。
【0060】
また、上述の繊維を織るあるいは編むことで調製した織物や編物を用いて、第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)を調製できる。なお、織物や編物など布帛を上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供し、第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)を調製しても良い。
【0061】
第一繊維層(1)および/または第二繊維層(2)の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。各繊維層の厚さは、0.5~5mmであることができ、1~3mmであることができ、1.1~2.5mmであることができる。また、各繊維層の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~450g/mであることができる。なお、本発明において厚さとは主面と垂直方向へ20g/cm圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0062】
本発明の別の態様では、第一繊維層(1)と第二繊維層(2)とを有する繊維基材層(3)を備えていると共に、繊維基材層(3)とカバー層(4)とが、ポリプロピレン系樹脂接着層(5)により接着一体化されている、成型用基材(100)であることができる。
【0063】
カバー層(4)の種類は成型用基材(100)に求められる物性によって適宜選択できるが、例えば、布帛、多孔フィルムあるいは無孔フィルム、多孔発泡体あるいは無孔発泡体などであることができる。カバー層(4)の目付や厚さならびに空隙率などの各種構成は、求められる物性によって適宜選択できる。
【0064】
本発明の成型用基材(100)において、ポリプロピレン系樹脂層(5)は繊維基材層(3)とカバー層(4)の界面に存在し、繊維基材層(3)とカバー層(4)の各主面同士を接着一体化する役割を担う。なお、図2では繊維基材層(3)の両主面上に、ポリプロピレン系樹脂層(5)とカバー層(4)が存在している態様を図示しているが、繊維基材層(3)のいずれか一方の主面上に、ポリプロピレン系樹脂層(5)とカバー層(4)が存在している態様であってもよい。
【0065】
本発明でいう「界面」とは、繊維基材層(3)とカバー層(4)の各主面同士が近接して向かい合うその主面同士の隙間を含む概念であり、各主面に沿って当該隙間にポリプロピレン系樹脂がフィルム状に存在することでポリプロピレン系樹脂層(5)が形成されている。上述した隙間から繊維基材層(3)やカバー層(4)の内部空隙中に伸び存在するポリプロピレン系樹脂もまた、ポリプロピレン系樹脂層(5)を構成するものである。
ポリプロピレン系樹脂層(5)は、周知のポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリプロピレンなど)を一種類、あるいは、周知のポリプロピレン系樹脂を複数混合してなる樹脂で構成できる。ポリプロピレン系樹脂は熱可塑性樹脂であり、加熱時に流動して繊維基材層(3)やカバー層(4)の内部空隙中へ浸透し易いことで、接着時にくさびの役割も担い両層を強固に接着して、剥離強度や曲げ時最大点荷重に優れるなど剛性を向上できる。
【0066】
また、ポリプロピレン系樹脂の融点は80℃よりも高いことで、自動車素材の分野で要求される耐熱性(例えば、80℃雰囲気下において両層を接着している成分の溶融に起因した層間剥離が発生しない)を満足した成型体を提供できる。
【0067】
なお、ポリプロピレン系樹脂の融点は、求められる用途により適宜選択できるが、80℃より高く、90℃以上であるのが好ましく、100℃よりも高いのが好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRは適宜調整できるが、繊維基材層(1)やカバー層(3)の内部空隙中にポリプロピレン系樹脂が伸び存在できるよう、JIS K6921-2に準じて測定した値が20[g/10分]以上(230[℃]、2.16[Kg]:以下、測定条件の併記を省略する)の流動性に富むポリプロピレン系樹脂を採用するのが好ましい。一方、ポリプロピレン系樹脂のMFRが高すぎる場合には、通気性が過剰に高い成型用基材(10)となり、調製した車両用外装材の吸音性能が逆に低下する恐れがある。そのため、ポリプロピレン系樹脂のMFRは40[g/10分]以下とするのが好ましい。
【0068】
また、ポリプロピレン系樹脂は、例えば、難燃剤、酸化防止剤(フェノール系の酸化防止剤、リン系の酸化防止剤、リンとフェノールの複合系の酸化防止剤など)、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。特に、酸化防止剤が配合されたポリプロピレン系樹脂を含有するポリプロピレン系樹脂層(5)であることによって、より好ましくは酸化防止剤が配合されたポリプロピレン系樹脂のみで構成されたポリプロピレン系樹脂層(5)であることによって、耐熱性により優れた成型用基材(100)を提供でき好ましい。ポリプロピレン系樹脂の質量に占める添加剤の固形分質量の百分率は、適宜調整できる。一例として、ポリプロピレン系樹脂の質量に占める酸化防止剤の固形分質量の百分率は、0.1%~5%であることができ、0.5%~4%であることができ、1%~3%であることができる。
【0069】
ポリプロピレン系樹脂層(5)の分布態様や質量は、層間剥離が発生し難い成型用基材(100)を提供できるよう適宜調整できる。ポリプロピレン系樹脂層(5)は通気性を有する層(例えば、多孔フィルム状の層)であっても、通気性を有していない層であってもよいが、柔軟であり金型への追従性に富むことで成型性に優れる成型用基材(100)を提供できるよう、ポリプロピレン系樹脂層(5)は通気性を有する層であるのが好ましい。
【0070】
このとき、繊維基材層(3)とカバー層(4)が面している主面の面積に占める、ポリプロピレン系樹脂層(5)が存在する部分の面積の百分率は、適宜調整するが、60%よりも高いのが好ましく、65%以上であるのが好ましく、70%以上であるのが好ましく、75%以上であるのが好ましく、80%以上であるのが好ましく、85%以上であるのが好ましく、90%以上であるのが好ましく、95%以上であるのが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂層(5)は、繊維基材層(3)あるいはカバー層(4)の主面に50~80(μm)の幅を以て層間に分布し存在しているなど、特定範囲の幅を有し均一的に分布し存在しているのが好ましい。このような態様のポリプロピレン系樹脂層(5)であることによって、繊維基材層(3)とカバー層(4)の両層が効果的に接着一体化されたものとなり、剥離強度や曲げ時最大点荷重に優れるなど剛性が効率よく向上された成型用基材(100)を提供でき好ましい。
【0071】
なお、ポリプロピレン系樹脂層(5)の分布態様は、成型用基材(100)から繊維基材層(3)あるいはカバー層(4)を剥離してポリプロピレン系樹脂層(5)が露出する主面を観察することで、あるいは、成型用基材(100)の断面を観察することで(また、当該主面や断面を撮影した顕微鏡写真を確認することで)判断できる。なお、観察を容易にするため、カヤステイン染色などを用いた染色を行ってもよい。
【0072】
ポリプロピレン系樹脂層(5)を構成するポリプロピレン系樹脂の質量は、本発明の課題を達成できるよう適宜調整するが、9~180g/mであることができ、18~135g/mであることができ、27~90g/mであることができる。
【0073】
なお、上述した態様のポリプロピレン系樹脂層(5)を備えた成形用基材(100)は、後述する成型用基材(100)の製造方法によって調製できる。その結果、高温条件下でもより形状安定性に優れ、繊維基材層(3)とポリプロピレン系樹脂層(5)との間で剥離強度や曲げ時最大点荷重に優れるなど剛性に富む耐熱性に優れた車両用外装材を提供できる。
【0074】
成型用基材(10、100)は、その露出する主面にプリント層や、プリント層上に更にトップコート層を備えていても良い。プリント層とは成型用基材(10、100)の少なくとも一方の主面上に存在し、主として成型用基材(10、100)の意匠性および/または触感を向上させる役割を担う樹脂の層を指す。プリント層は樹脂以外にも、上述した添加剤を含有していてもよい。なお、成型用基材(10、100)は一種類のプリントのみを有するものであっても、プリントを構成する樹脂の種類や顔料の種類あるいは有無など配合が異なる複数種類のプリントを有するものであってもよい。その存在態様も適宜調整でき、主面全面に存在する態様や、部分的に存在して柄を形成している態様であることができる。
【0075】
また、トップコート層とは成型用基材(10、100)の少なくとも一方の主面上に存在し、主として成型用基材(10、100)の主面を保護する役割を担う樹脂の層を指す。トップコート層は樹脂以外にも、上述した添加剤を含有していてもよい。なお、成型用基材(10、100)は一種類のトップコートのみを有するものであっても、トップコートを構成する樹脂の種類など配合が異なる複数種類のトップコートを有するものであってもよい。その存在態様も適宜調整でき、主面全面に存在する態様や、部分的に存在している態様であることができる。
【0076】
プリントならびにトップコート層を構成する樹脂の種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用できる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型へ追従し、成形性に優れる成型用基材を提供できることから、アクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0077】
成型用基材(10、100)の厚さは適宜選択するが、20mm以下であることができ、10mm以下であることができ、5mm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、0.5mm以上であるのが現実的である。成型用基材(10)の目付は適宜選択するが、1500g/m以下であることができ、1000g/m以下であることができる。一方、目付の下限値は適宜調整するが、10g/m以上であるのが現実的であり、50g/m以上であるのが好ましく、100g/m以上であるのが好ましい。
【0078】
本発明の成型用基材(10、100)は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの部材を備えていてもよい。
【0079】
本発明に係る成型用基材(10、100)を調製する方法は適宜選択できるが、例えば、
(i)難燃性繊維と、前記難燃性繊維よりも親水性が低い鞘部がポリプロピレン系樹脂であり芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維を含む第一の布帛を用意する工程、
(ii)第一の布帛の構成繊維に占める難燃性繊維の割合よりも、低い割合で前記難燃性繊維を含む第二の布帛を用意する工程、
(iii)第一の布帛の一方の主面上に第二の布帛を積層し、露出する第二の布帛側の主面からもう一方の主面へ対し繊維絡合手段を施すことで、第一の布帛と第二の布帛における隣接する主面間の構成繊維同士を絡合することで、積層一体化して不織布を調製する工程、
を備えた成型用基材(10、100)の製造方法であることができる。
このような工程を経て調製された成型用基材(10、100)は、第一の布帛由来の第一繊維層(1)と第二の布帛由来の第二繊維層(2)とが、層間を超え構成繊維同士が絡合して積層一体化した構造を有する不織布である繊維基材層(3)を備えている。
【0080】
工程(i)および工程(ii)について説明する。
布帛として、例えば、繊維ウエブや不織布、あるいは、織物や編み物などを用意する。なお、布帛における構成繊維の繊度や繊維長、厚さや目付は上述した数値のものを採用できる。
【0081】
工程(iii)について説明する。
繊維絡合手段の種類は適宜選択できるが、ニードルや水流による繊維絡合手段を採用できる。特に、厚手の第一繊維層(1)を備えることでより難燃性に優れた成型用基材(10)を容易に提供できることから、ニードルパンチ処理により繊維絡合するのが好ましい。
【0082】
上述の製造工程を経て調製された繊維基材層(3)は、そのまま成型用基材(10)とすることができるが、Tダイなどから押し出した溶融したポリプロピレン系樹脂を繊維基材層(3)とカバー層(4)の間に流し込み、溶融したポリプロピレン系樹脂由来のポリプロピレン系樹脂接着層(5)により繊維基材層(3)の一方の主面にカバー層(4)を接着一体化して、成型用基材(100)を調製してもよい。
【0083】
あるいは、カバー層(4)および/または繊維基材層(3)の主面上へTダイなどから溶融したポリプロピレン系樹脂を押し出し、その後、放冷することで、溶融したポリプロピレン系樹脂由来のポリプロピレン系樹脂接着層(5)を備えるカバー層(4)および/または繊維基材層(3)を調製する。そして、ポリプロピレン系樹脂接着層(5)を間に介し、カバー層(4)と繊維基材層(3)とを積層し、加熱によりポリプロピレン系樹脂を溶融させることで、溶融したポリプロピレン系樹脂由来のポリプロピレン系樹脂接着層(5)により繊維基材層(3)の一方の主面にカバー層(4)を接着一体化して、成型用基材(100)を調製してもよい。
【0084】
あるいは、繊維基材層(3)とカバー層(4)の間に未延伸のポリプロピレン系樹脂フィルムや布帛を挿入し、加熱によりポリプロピレン系樹脂を溶融させることで、溶融したポリプロピレン系樹脂由来のポリプロピレン系樹脂接着層(5)により繊維基材層(3)の一方の主面にカバー層(4)を接着一体化して、成型用基材(100)を調製してもよい。
【0085】
更に、プリントを構成可能なプリント液やトップコートを構成可能なトップコート液を用意し、成型用基材(10、100)の主面へ付与してなる成型用基材(10、100)を調製してもよい。なお、プリント液やトップコート液の組成、プリント液やトップコート液の付与方法、プリント液やトップコート液に含まれている分散媒あるいは溶媒の除去方法は、周知の方法から適宜選択し採用できる。
【0086】
また、成型用基材(10、100)は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの部材を備えていてもよい。これらの部材は成型用基材(10、100)における、プリントやトップコートが存在する主面とは異なる主面側に積層して備えていてもよい。
【0087】
更に、本発明の成型用基材(10、100)をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするために加圧処理する工程へ供してもよい。また、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いた後に加熱成形するなどの、各種二次加工工程へ供してもよい。
【実施例
【0088】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
(繊維の用意)
難燃性繊維としてレーヨン繊維(繊度:3d(換算すると約3.3dtex)、繊維長:51mm、融点を有していない樹脂のみで構成されており、LOI値:17~19)を用意した。以降、レーヨン繊維と称することがある。
また、レーヨン繊維よりも親水性が低い芯鞘型複合繊維(繊度:4d(換算すると約4.4dtex)、繊維長:51mm、芯部:ポリエチレンテレフタレート、鞘部:ポリプロピレン、融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値:22以下)を用意した。以降、芯鞘型複合繊維と称することがある。
そして、ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度:6dtex、繊維長:51mm、融点を有する樹脂のみで構成されており、LOI値:22以下)を用意した。以降、PET単繊維と称することがある。
【0090】
(ポリプロピレン系樹脂接着層を備えるカバー層の用意)
ポリエステル樹脂のスパンボンド不織布(目付:90g/m)を用意し、その一方の主面上にTダイから溶融したポリプロピレン(融点:160℃)を押し出すことで、当該スパンボンド不織布の一方の主面上に未延伸ポリプロピレンフィルム層(目付:36g/m)を形成した。
【0091】
(比較例1)
PET単繊維50.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブ(目付:450g/m)を2枚調製した。そして、繊維ウェブを2枚積層した状態で、露出している一方の主面からもう一方の主面へ向かい、ニードルパンチ処理を施すことで、繊維ウェブ同士が積層一体化してなるニードルパンチ不織布(目付:900g/m)を調製した。
加熱温度200℃に調整した熱風加熱装置へ供した後のニードルパンチ不織布における両主面の各々に、間に未延伸ポリプロピレンフィルム層を介して、スパンボンド不織布を積層した。このようにして調製した積層物を、加熱温度200℃に調整した熱ロール間へ供し、更にその後、加熱温度210℃に調整した遠赤炉へ供した。最後に、クリアランスを5mmに調整した冷却プレス装置へ供することで、未延伸ポリプロピレンフィルム層由来のポリプロピレンによりニードルパンチ不織布とスパンボンド不織布が接着一体化してなる、成型用基材(目付:1152g/m、厚さ:5mm)を調製した。
【0092】
(比較例2)
PET単繊維47.5質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%ならびにレーヨン繊維2.5質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブ(目付:450g/m)を2枚調製した。そして、繊維ウェブを2枚積層した状態で、ニードルパンチ処理を施すことで、繊維ウェブ同士が積層一体化してなるニードルパンチ不織布(目付:900g/m)を調製した。
このようにして調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、未延伸ポリプロピレンフィルム層由来のポリプロピレンによりニードルパンチ不織布とスパンボンド不織布が接着一体化してなる、成型用基材(目付:1152g/m、厚さ:5mm)を調製した。
【0093】
(比較例3)
PET単繊維45.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%ならびにレーヨン繊維5.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブ(目付:450g/m)を2枚調製した。そして、繊維ウェブを2枚積層した状態で、露出している一方の主面からもう一方の主面へ向かい、ニードルパンチ処理を施すことで、繊維ウェブ同士が積層一体化してなるニードルパンチ不織布(目付:900g/m)を調製した。
このようにして調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、未延伸ポリプロピレンフィルム層由来のポリプロピレンによりニードルパンチ不織布とスパンボンド不織布が接着一体化してなる、成型用基材(目付:1152g/m、厚さ:5mm)を調製した。
【0094】
(実施例1)
PET単繊維50.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブA(目付:450g/m)を1枚調製した。次いで、PET単繊維45.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%ならびにレーヨン繊維5.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブB(目付:450g/m)を1枚調製した。そして、繊維ウェブAならびに繊維ウェブBを積層した状態で、ニードルパンチ処理を施すことで、繊維ウェブAならびに繊維ウェブBが積層一体化してなるニードルパンチ不織布(目付:900g/m)を調製した。
このようにして調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、未延伸ポリプロピレンフィルム層由来のポリプロピレンによりニードルパンチ不織布とスパンボンド不織布が接着一体化してなる、成型用基材(目付:1152g/m、厚さ:5mm)を調製した。
【0095】
上述のようにして調製した各成型用基材の物性を、表1および表2にまとめた。なお、表中の「燃焼速度」と「難燃性の評価」の欄、および、「蒸留水へ浸漬した際の吸水率」と「吸水性の評価」の欄には、以下の測定を用いて評価した結果を記載した。
【0096】
(難燃性の評価方法)
測定対象である成型用基材から採取した試験片を、FMVSS No.302燃焼性試験へ供することで、その燃焼速度を計った。本試験では、第一繊維層側が、炎側に面するようにして試験片を設置し燃焼速度(単位:mm/min)を計った。なお、燃焼速度の値が小さいほど、難燃性に優れることを意味する。
そして、燃焼速度が30mm/min以下であった成型用基材については、難燃性に優れる成型用基材であると評価して表中に「〇」を記載した。一方、燃焼速度が30mm/minよりも大きい成型用基材については、難燃性に劣る成型用基材であると評価して表中に「×」を記載した。
【0097】
(吸水性の評価方法)
測定対象である成型用基材から採取した試験片(長辺:75mm、短辺:25mm)を、105~110℃雰囲気下に曝し予備乾燥した。加熱した試験片をデシケータ内に収め放冷した後、その質量W0を量った。
そして、質量W0を計った試験片を20℃の蒸留水中に2時間浸漬した後、蒸留水中から試験片を取り出し、乾布を用いて試験片の表面に付着している余分な蒸留水を拭き取り、蒸留水を含んだ試験片の質量W2を量った。
また、質量W0を計った試験片を20℃の蒸留水中に24時間浸漬した後、蒸留水中から試験片を取り出し、乾布を用いて試験片の表面に付着している余分な蒸留水を拭き取り、蒸留水を含んだ試験片の質量W24を量った。
測定された質量W0と質量W2ならびに質量W24の値を以下の数式へ代入し、蒸留水へ2時間浸漬した際の吸水率(単位:質量%)と、蒸留水へ24時間浸漬した際の吸水率(単位:質量%)を各々算出した。なお、吸水率の値が小さいほど、重量増し難いことを意味する。
蒸留水へ2時間浸漬した際の吸水率(単位:質量%)=100×(質量W2-質量W0)/質量W0
蒸留水へ24時間浸漬した際の吸水率(単位:質量%)=100×(質量W24-質量W0)/質量W0
そして、蒸留水へ2時間浸漬した際の吸水率が10質量%以下であると共に、蒸留水へ24時間浸漬した際の吸水率が25質量%以下である成型用基材については、重量増し難い成型用基材であると評価して表中に「〇」を記載した。一方、蒸留水へ2時間浸漬した際の吸水率が10質量%より大きいと共に、蒸留水へ24時間浸漬した際の吸水率が25質量%より大きい成型用基材については、重量増し易い成型用基材であると評価して表中に「×」を記載した。









【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
従来技術に係る成型用基材を意味する比較例では、繊維基材層を構成する繊維に占める難燃性繊維の割合を増減しても、難燃性に優れていると共に重量増し難い成型用基材を実現できなかった。
【0101】
それに対し、実施例1の成型用基材は、難燃性に優れていると共に重量増し難い成型用基材であった。また、比較例2と実施例1を比較した結果から、繊維基材層を構成する繊維に占める芯鞘型複合繊維と難燃性繊維の割合を同一とした場合であっても、本願発明に係る繊維基材層を備える成型用基材であることによって、芯鞘型複合繊維と難燃性繊維をただ混綿してなる繊維基材層を備える成型用基材では実現できなかった、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制という両課題を達成可能な成型用基材を提供できた。
【0102】
以上から、本発明によって、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制という両課題を達成可能な成型用基材を提供できることが判明した。
【0103】
(実施例2)
PET単繊維50.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブA(目付:450g/m)を1枚調製した。次いで、PET単繊維47.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%ならびにレーヨン繊維3.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブC(目付:450g/m)を1枚調製した。そして、繊維ウェブAならびに繊維ウェブCを積層した状態で、ニードルパンチ処理を施すことで、繊維ウェブAならびに繊維ウェブCが積層一体化してなるニードルパンチ不織布(目付:900g/m)を調製した。
このようにして調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、未延伸ポリプロピレンフィルム層由来のポリプロピレンによりニードルパンチ不織布とスパンボンド不織布が接着一体化してなる、成型用基材(目付:1152g/m、厚さ:5mm)を調製した。
【0104】
(実施例3)
PET単繊維50.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブA(目付:450g/m)を1枚調製した。次いで、PET単繊維42.0質量%と芯鞘型複合繊維50.0質量%ならびにレーヨン繊維8.0質量%を混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブD(目付:450g/m)を1枚調製した。そして、繊維ウェブAならびに繊維ウェブDを積層した状態で、ニードルパンチ処理を施すことで、繊維ウェブAならびに繊維ウェブDが積層一体化してなるニードルパンチ不織布(目付:900g/m)を調製した。
このようにして調製したニードルパンチ不織布を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、未延伸ポリプロピレンフィルム層由来のポリプロピレンによりニードルパンチ不織布とスパンボンド不織布が接着一体化してなる、成型用基材(目付:1152g/m、厚さ:5mm)を調製した。
【0105】
上述のようにして製造した各成型用基材の物性を、表3および表4にまとめた。なお、表3および表4には実施例1の結果も併せて記載した。































【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
実施例1~3の成型用基材はいずれも、難燃性に優れていると共に重量増し難い成型用基材であった。そのため本発明によって、難燃性の向上と重量増に伴い生じる剥離の抑制という両課題を達成可能な成型用基材を提供できた。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の成型用基材によって、車両用外装材を調製できる。また、本発明にかかる成型用基材によって、エンジンカバー、天井材、ドア材、トリム材といった車両用内装材を調製することもできる。
【符号の説明】
【0110】
10、100・・・成型用基材
1・・・第一繊維層
2・・・第二繊維層
3・・・繊維基材層
4・・・カバー層
5・・・ポリプロピレン系樹脂接着層
図1
図2