(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】運動用の衣服の設計を支援する装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A41H 1/02 20060101AFI20240226BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20240226BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A41H1/02 Z
A61B5/107 300
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2020059027
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】相見 貴行
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207459(JP,A)
【文献】特開2018-187149(JP,A)
【文献】特開2018-47226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41H1/02
A61B5/107-5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服の設計を支援する装置であって、
身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位における、前記身体の運動中の複数の時刻での、複数の姿勢データを取得する姿勢取得部であって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得部と、
前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出部と、
前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得部と、
を備える、
装置。
【請求項2】
前記姿勢データは、前記身体の前記複数の特徴点に取り付けられた慣性センサで取得される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記平均関節角度算出部は、
前記複数の関節部の各々における複数の前記関節角度を示す複数の関節角度データを、前記複数の特徴点のうちの前記複数の関節部の各々を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて算出し、
前記複数の関節部の各々において、算出された前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出する、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記平均関節角度算出部は、
前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを、
運動中における重要な時間帯又は動作の激しい時間帯の時刻の関節角度データについて重み付けを大きくするように、前記複数の時刻の各々に応じて
前記重み付けの係数を乗じて重み付けし、
前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出する、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記平均関節角度算出部は、
前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データを算出すると共に、前記複数の関節角度データに対応した複数の分散を示す複数の分散データを算出し、
前記複数の時刻の各々に応じて、前記複数の分散データに基づいて、
運動中における前記平均関節角度データからの変動が大きい時間帯又は関節部の関節角度データについて重み付けを大きくするように、前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを重み付けし、
前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出し直す、
請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記身体形状取得部は、
前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が静的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記身体形状取得部は、
前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が動的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記身体は、運動中の動きに応じた複数のセグメントに区画されており、
前記複数の特徴点の各々は、前記複数のセグメントの各々における筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所に位置する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
衣服の設計を支援する方法であって、
身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位における、前記身体の運動中の複数の時刻での、複数の姿勢データを取得する姿勢取得ステップであって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得ステップと、
前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出ステップと、
前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得ステップと、
を備える、
方法。
【請求項10】
運動用の衣服の設計を支援する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位における、前記身体の運動中の複数の時刻での、複数の姿勢データを取得する姿勢取得ステップであって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得ステップと、
前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出ステップと、
前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得ステップと、
を備える、
方法、をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項11】
前記姿勢データは、前記身体の前記複数の特徴点に取り付けられた慣性センサで取得される、
方法、をコンピュータに実行させる請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記平均関節角度算出ステップは、
前記複数の関節部の各々における複数の前記関節角度を示す複数の関節角度データを、前記複数の特徴点のうちの前記複数の関節部の各々を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて算出するステップと、
前記複数の関節部の各々において、算出された前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出するステップと、
を含む、
方法、をコンピュータに実行させる請求項10又は11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記平均関節角度算出ステップは、
前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを、
運動中における重要な時間帯又は動作の激しい時間帯の時刻の関節角度データについて重み付けを大きくするように、前記複数の時刻の各々に応じて
前記重み付けの係数を乗じて重み付けするステップと、
前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出するステップと、
を含む、
方法、をコンピュータに実行させる請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記平均関節角度算出ステップは、
前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データを算出すると共に、前記複数の関節角度データに対応した複数の分散を示す複数の分散データを算出するステップと、
前記複数の時刻の各々に応じて、前記複数の分散データに基づいて、
運動中における前記平均関節角度データからの変動が大きい時間帯又は関節部の関節角度データについて重み付けを大きくするように、前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを重み付けするステップと、
前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出し直すステップと、
を含む、
方法、をコンピュータに実行させる請求項12に記載のプログラム。
【請求項15】
前記身体形状取得ステップは、
前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が静的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、
方法、をコンピュータに実行させる請求項10乃至14のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項16】
前記身体形状取得ステップは、
前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が動的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、
方法、をコンピュータに実行させる請求項10乃至14のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項17】
前記身体は、運動中の動きに応じた複数のセグメントに区画されており、
前記複数の特徴点の各々は、前記複数のセグメントの各々における筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所に位置する、
方法、をコンピュータに実行させる請求項10乃至16のいずれか一項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動用の衣服の設計を支援する装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツウエアのような運動用の衣服は、その着用者が運動中に動き易いように設計されることが求められる。ここで、衣服の設計は着用者の身体形状に基づいて行われるが、その身体形状は着用者の姿勢により様々に変化する。そのため、直立の姿勢の身体形状に適するように衣服を設計すると、運動中の様々な姿勢での身体形状には適さない、すなわち、身体を動かし難い衣服を設計してしまう可能性がある。したがって、スポーツウエアのような運動用の衣服は、運動中の様々な姿勢における身体形状に適するように設計される必要がある。
【0003】
運動中の姿勢での身体形状に適する衣服を設計する方法として、例えば、特許文献1に、運動中の身体形状の変化に対応した衣服の設計を支援する方法が開示されている。この方法は、取得ステップと、存在位置生成ステップと、合成位置生成ステップと、を備える。取得ステップは、運動中の身体の複数の姿勢の各々ごとに、身体の表面に設定された複数の特徴点とそれらの位置とを関連付ける複数の位置データを取得する。存在位置生成ステップは、複数の姿勢の各々ごとに、複数の位置データに基づいて、複数の特徴点のうちの一つの特徴点を対象特徴点とし、対象特徴点以外の二つの特徴点を二つの参照特徴点として、対象特徴点及び二つの参照特徴点が互いに周囲に位置するようにそれぞれ選択し、選択された対象特徴点及び二つの参照特徴点の位置データに基づいて、対象特徴点が二つの参照特徴点に対して相対的に存在可能な位置を算出して、対象特徴点と存在可能な位置とを関連付けた存在位置データを生成する。合成位置生成ステップは、複数の姿勢について生成された複数の存在位置データに基づいて、対象特徴点の平均の位置を合成位置として算出して、対象特徴点と合成位置とを関連付けた合成位置データを生成する。ただし、存在位置生成ステップは、複数の姿勢の各々ごとに、複数の特徴点の各々を、順次、対象特徴点として選択し、存在位置データを生成する。また、合成位置生成ステップは、複数の姿勢について順次生成された複数の存在位置データに基づいて、順次選択された対象特徴点について、合成位置データを生成する。それにより、生成された複数の特徴点における複数の合成位置データに基づいて、身体における複数の特徴点の位置が複数の合成位置となる身体形状を示す身体形状データが形成される。
【0004】
また、特許文献2には、骨格構造人体モデルの等価角軸変換データを用いた舞踏動作の特徴抽出が開示されている。この方法は、概略的には、一連の舞踏の動作から複数の姿勢を抽出し、それら抽出された複数の姿勢から、一連の舞踏の動作を代表する中間的姿勢を算出する方法である。ただし、等価角軸変換データは、磁気センサを用いたモーションキャプチャシステムで測定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】三浦武ら、「骨格構造人体モデルの等価角軸変換データを用いた舞踏動作の特徴抽出」、人文科学とコンピュータシンポジウム論文集2007,p.381-388,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法は、複数の姿勢の各々について取得される、身体の複数の特徴点における複数の位置データに基づいて、一つの身体形状のデータを形成している。ここで、スポーツの競技中に、スポーツウエアの着用者は、それら複数の姿勢以外にも様々な姿勢をとっている。それゆえ、特許文献1の方法において、競技中の姿勢の変化を計測し続けて得られる多数の姿勢について多数の位置データを取得できれば、競技中の身体の動作全体をより正確に身体形状のデータに反映できるので、形成される身体形状のデータの精度を向上できる。しかし、特許文献1の方法では、姿勢によっては、身体形状のデータの形成の途中で算出されるべき合成位置データが算出できない場合や、合成位置データで示される合成位置が身体の関節の構造上あり得ない位置となる場合が起こる可能性がある。それゆえ、特許文献1の方法では、身体形状のデータの形成には、ある程度の姿勢の取捨が必要となる。その結果、競技中の姿勢の変化を計測し続けて得られる多数の姿勢の全てを、身体形状のデータの形成に利用し難く、運動中の動作に対する適応性の高い衣服の設計に有効に利用し難い場合がある。
【0008】
本発明の目的は、運動中の動作に対する適応性の高い、すなわち、運動中の様々な姿勢における身体形状に適するような衣服の設計を支援することが可能な装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の装置は、衣服の設計を支援する装置であって、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位において、前記身体の運動中の複数の時刻における、複数の姿勢データを取得する姿勢取得部であって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得部と、前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出部と、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得部と、を備える、装置である。
【0010】
本発明の方法は、衣服の設計を支援する方法であって、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位において、前記身体の運動中の複数の時刻における、複数の姿勢データを取得する姿勢取得ステップであって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得ステップと、前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出ステップと、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得ステップと、
を備える、方法である。
【0011】
本発明のプログラムは、衣服の設計を支援する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位において、前記身体の運動中の複数の時刻における、複数の姿勢データを取得する姿勢取得ステップであって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得ステップと、前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出ステップと、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得ステップと、を備える、方法、をコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、運動中の動作に対する適応性の高い、すなわち、運動中の様々な姿勢における身体形状に適するような衣服の設計を支援することが可能な装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る装置の機能の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る装置のハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る慣性センサの配置例を説明する模式図である。
【
図4】実施形態に係る関節角度データの一例を説明する表である。
【
図5】実施形態に係る平均関節角度データに基づく中間的な姿勢の一例を説明する模式図である。
【
図6】実施形態に係る身体形状データの一例を説明する模式図である。
【
図7】実施形態に係る方法の一例を示すフロー図である。
【
図8】実施形態に係る方法のステップS2の一例を示すフロー図である。
【
図9】実施形態に係る方法のステップS2の他の例を示すフロー図である。
【
図10】実施形態に係る方法のステップS2の更に他の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の開示は、具体的には以下の態様に関する。
【0015】
[態様1]
衣服の設計を支援する装置であって、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位における、前記身体の運動中の複数の時刻での、複数の姿勢データを取得する姿勢取得部であって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得部と、前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出部と、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得部と、を備える、装置。
【0016】
運動中の身体には、時々刻々に様々な姿勢が生じ得る。そこで、本態様1に記載の装置は、運動中に継続的に複数の時刻において、身体の各特徴点の身体部位の複数の姿勢データを取得し、各特徴点の身体部位の複数の姿勢データから、運動中の各関節部の関節角度の平均関節角度データを算出し、各関節部の平均関節角度データから、運動中の多数の様々な姿勢の中間的(又は平均的)な姿勢を再現する。このような中間的な姿勢は、生じ得る様々な姿勢のうちの主要な部分を占めており、生じ得る様々な姿勢に連続的につながり、よって、生じ得る様々な姿勢に移行し易い、ということができる。したがって、そのような中間的な姿勢に基づいて、人の身体形状を再現し、その身体形状に基づいて衣服を設計することで、運動中の様々な姿勢における身体形状に適するように衣服を設計することが可能となる。
【0017】
[態様2]
前記姿勢データは、前記身体の前記複数の特徴点に取り付けられた慣性センサで取得される、態様1に記載の装置。
慣性センサは、高速に多数(例示:200個/秒)の姿勢データを検出でき、測定値を無線で送信できるので、低速で少数の姿勢データを検出し、有線で送信する磁気センサの場合と比較して有利である。そこで、本態様2に記載の装置は、運動中の姿勢データを、身体の複数の特徴点に取り付けられた慣性センサから取得している。すなわち、身体の運動を邪魔することなく取得された多数の姿勢データを用いている。それにより、現実の運動中の多数の様々な姿勢に対応した姿勢データをより正確に取得できる。したがって、運動中の中間的な姿勢をより正確に算出できる。そして、そのような中間的な姿勢に基づいて、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0018】
[態様3]
前記平均関節角度算出部は、前記複数の関節部の各々における複数の前記関節角度を示す複数の関節角度データを、前記複数の特徴点のうちの前記複数の関節部の各々を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて算出し、前記複数の関節部の各々において、算出された前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出する、態様1又は2に記載の装置。
本態様3に記載の装置は、各関節部を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における複数の姿勢データから複数の関節角度データを算出し、その複数の関節角度データから各関節部の平均関節角度データを算出する。それにより、運動中の多数の様々な姿勢の中間的(又は平均的)な姿勢をより的確に再現でき、運動中の様々な姿勢における身体形状により適するように衣服を設計することが可能となる。
【0019】
[態様4]
前記平均関節角度算出部は、前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを、前記複数の時刻の各々に応じて重み付けし、前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出する、態様3に記載の装置。
本態様4に記載の装置は、複数の関節部における複数の関節角度データを、複数の時刻の各々に応じて重み付けし、重み付けされた複数の関節角度データに基づいて、平均関節角度データを算出している。例えば、運動中における重要な時間帯や、動作の激しい時間帯について、関節角度データの重み付けを大きくし得る。それにより、運動中の中間的な姿勢をより適切に算出できる。そして、そのような中間的な姿勢に基づいて、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0020】
[態様5]
前記平均関節角度算出部は、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データを算出すると共に、前記複数の関節角度データに対応した複数の分散を示す複数の分散データを算出し、前記複数の時刻の各々に応じて、前記複数の分散データに基づいて、前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを重み付けし、前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出し直す、態様3に記載の装置。
本態様5に記載の装置では、複数の関節部における複数の関節角度データを、複数の時刻の各々に応じて、かつ、複数の分散データ、すなわち、平均関節角度データからの変動の大きさに基づいて重み付けしている。例えば、運動中における平均関節角度データからの変動が大きい時間帯や関節部について、重み付けを大きくする。それにより、運動中の動作の激しさに対応した中間的な姿勢をより適切に算出できる。そして、そのような中間的な姿勢に基づいて、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0021】
[態様6]
前記身体形状取得部は、前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が静的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、態様1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
本態様6に記載の装置は、運動中の身体における複数の関節部の各々における関節角度が上記の平均値となるように、身体の姿勢を人が静的に再現したときの、複数の表面点の位置から、運動中の身体の中間的な姿勢における身体形状を示す身体形状データを算出している。したがって、衣服を着用する人が疑似的に動いているときの身体形状を示す身体形状データを得ることができる。そして、その身体形状に基づいて衣服を設計することで、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0022】
[態様7]
前記身体形状取得部は、前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が動的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、態様1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
本態様7に記載の装置は、運動中の身体における複数の関節部の各々における関節角度が上記の平均値となるように、身体の姿勢を人が動的に再現したときの、複数の表面点の位置から、運動中の身体の中間的な姿勢における身体形状を示す身体形状データを算出している。したがって、衣服を着用する人が動いているときの身体形状を示す身体形状データを得ることができる。そして、その身体形状に基づいて衣服を設計することで、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0023】
[態様8]
前記身体は、運動中の動きに応じた複数のセグメントに区画されており、前記複数の特徴点の各々は、前記複数のセグメントの各々における筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所に位置する、態様1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
本態様8に記載の装置はでは、各特徴点が、各セグメントにおける筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所に位置している。それにより、運動中の身体に生じる様々な姿勢の変化を的確に把握でき、様々な姿勢の中間的な姿勢を的確に算出できる。
【0024】
[態様9]
衣服の設計を支援する方法であって、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位における、前記身体の運動中の複数の時刻での、複数の姿勢データを取得する姿勢取得ステップであって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得ステップと、前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出ステップと、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得ステップと、を備える、方法。
本態様9に記載の方法は、態様1に記載の装置の動作で実現される方法と同様の方法であるため、態様1の場合と同様の効果を奏することができる。
【0025】
[態様10]
衣服の設計を支援する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位における、前記身体の運動中の複数の時刻での、複数の姿勢データを取得する姿勢取得ステップであって、前記姿勢データは、前記特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付ける、姿勢取得ステップと、前記複数の特徴点の各々の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて、前記身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データを算出する平均関節角度算出ステップと、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データに基づいて、前記複数の関節部の各々の前記関節角度が前記平均値となるように、前記運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、前記人の身体形状を示す身体形状データを取得する身体形状取得ステップと、を備える、方法、をコンピュータに実行させるプログラム。
本態様10に記載のプログラムは、態様1に記載の装置の動作で実現される方法と同様の方法を実行するため、態様1の場合と同様の効果を奏することができる。
【0026】
[態様11]
前記姿勢データは、前記身体の前記複数の特徴点に取り付けられた慣性センサで取得される、方法、をコンピュータに実行させる態様10に記載のプログラム。
[態様12]
前記平均関節角度算出ステップは、前記複数の関節部の各々における複数の前記関節角度を示す複数の関節角度データを、前記複数の特徴点のうちの前記複数の関節部の各々を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における前記複数の姿勢データに基づいて算出するステップと、前記複数の関節部の各々において、算出された前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出するステップと、を含む、方法、をコンピュータに実行させる態様10又は11に記載のプログラム。
[態様13]
前記平均関節角度算出ステップは、前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを、前記複数の時刻の各々に応じて重み付けするステップと、前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出するステップと、を含む、方法、をコンピュータに実行させる態様12に記載のプログラム。
[態様14]
前記平均関節角度算出ステップは、前記複数の関節部の各々における前記平均関節角度データを算出すると共に、前記複数の関節角度データに対応した複数の分散を示す複数の分散データを算出するステップと、前記複数の時刻の各々に応じて、前記複数の分散データに基づいて、前記複数の関節部における前記複数の関節角度データを重み付けするステップと、前記重み付けされた前記複数の関節角度データに基づいて、前記平均関節角度データを算出し直すステップと、を含む、方法、をコンピュータに実行させる態様12に記載のプログラム。
[態様15]
前記身体形状取得ステップは、前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が静的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、方法、をコンピュータに実行させる態様10乃至14のいずれか一項に記載のプログラム。
[態様16]
前記身体形状取得ステップは、前記複数の関節部の各々での前記関節角度が前記平均値となるように、前記身体の姿勢を人が動的に再現したときの、前記身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された前記複数の表面点の位置に基づいて前記身体形状データを算出する、方法、をコンピュータに実行させる態様10乃至14のいずれか一項に記載のプログラム。
[態様17]
前記身体は、運動中の動きに応じた複数のセグメントに区画されており、前記複数の特徴点の各々は、前記複数のセグメントの各々における筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所に位置する、方法、をコンピュータに実行させる態様10乃至16のいずれか一項に記載のプログラム。
【0027】
本態様11乃至17に記載のプログラムは、それぞれ態様2乃至8に記載の装置の動作で実現される方法と同様の方法を実行するプログラムであるため、それぞれ態様2乃至8の場合と同様の効果を奏することができる。
【0028】
以下、実施形態に係る、衣服の設計を支援する装置、方法及びプログラム、すなわち運動中の様々な姿勢での身体形状に適する衣服の設計を支援する装置、方法及びプログラムについて、図面を参照して説明する。ただし、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜他の技術との組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本発明は、スポーツ競技のユニフォームのような運動専用の衣服の設計の支援だけでなく、動き易い衣服の設計の支援に対しても適用可能である。
【0029】
実施形態に係る装置1の構成例につて説明する。
図1は、実施形態に係る装置1の機能の構成の一例を示すブロック図である。装置1は、コンピュータに例示される情報処理装置であり、装置1にコンピュータプログラム(ソフトウェア)がインストールされ、そのコンピュータプログラムと装置1のハードウェア(
図2)とが協働することで、運動用の衣服の設計を支援するための複数の機能が実現される。なお、装置1は、ASP(Application Service Provider)型の方法、SaaS(Software as a Service)型の方法、シンクライアント(Thin client)型の方法、又は、それらと類似の方法で実現されてもよい。装置1は、その複数の機能として、姿勢取得部11と、平均関節角度算出部12と、身体形状取得部13と、を備えている。本実施形態では、装置1は、記憶部14を更に備えている。なお、平均関節角度算出部12は、関節角度算出部21と、平均値算出部22と、重み付け部23と、を含んでもよい。記憶部14は、装置1の動作に伴い、姿勢データ24、関節角度データ25、平均関節角度データ26、及び、身体形状データ27の少なくとも一つを格納する場合がある。これらの機能は後述される。
【0030】
図2は、実施形態に係る装置1のハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。装置1としては、例えば、スーパーコンピュータ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット型情報端末、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)、及び、コンピュータを搭載した電子装置が挙げられる。その電子装置としては、例えば、カーナビゲーション装置、自動車、ディスプレイ、及び、テレビジョン、が挙げられる。本実施形態では、パーソナルコンピュータである。
【0031】
本実施形態では、装置1は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、記憶装置34と、入力部35と、出力部36と、表示部37と、送受信部38と、メディアドライブ39と、を備えている。各構成の主な機能は次のとおりである。CPU31は、装置1にインストールされたコンピュータプログラム、例えばROM32に記憶された、又は、記憶装置34に記憶されRAM33にロードされたコンピュータプログラムを実行し、各種の機能を実現する。ROM32、RAM33及び記憶装置34は、CPU31が利用するコンピュータプログラム、データ及び生成したデータなどを不揮発的に又は揮発的に記憶する。メディアドライブ39は、コンピュータプログラムやデータが記憶された記憶媒体から、それらコンピュータプログラムやデータを装置1にインストールするときに用いられる。送受信部38は、有線又は無線により、通信回線網(図示されず)を介して、又は、介さずに接続された他のコンピュータやデータベース(例示:クラウドストレージ)のような外部機器からコンピュータプログラムやデータを装置1にダウンロード/インストールするとき、あるいは、装置1で生成されたデータを上記の外部機器にアップロードするときに用いられる。入力部35は、ユーザ操作により生成されるデータをCPU31に出力する。出力部36は、CPU31により生成されたデータをユーザ認識可能に出力する。表示部37は、CPU31により生成されたデータをユーザ視認可能に出力する。ROM32、RAM33及び記憶装置34の全部または一部はCPU31と一体であってもよい。
【0032】
記憶装置34としては、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)が挙げられる。メディアドライブ39としては、例えば、リムーバルな記憶媒体であるCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスクなどのドライブであるCDドライブ、DVDドライブ、Blu-ray(登録商標)ディスクドライブが挙げられる。入力部35としては、例えばキーボード、マウス、タッチパネル、音声認識装置が挙げられる。出力部36としては、例えばプリンタ、音声出力装置が挙げられる。表示部37としては、例えばディスプレイ、スクリーンが挙げられる。送受信部38が接続する通信回線網としては、例えばインターネット(Internet)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)が挙げられ、無線の接続としては、例えば無線LAN(Wi-Fi)、Bluetooth(登録商標)が挙げられる。
【0033】
装置1の姿勢取得部11は、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々の身体部位における、その身体部位の運動中の複数の時刻での姿勢を示す、複数の姿勢データ24を取得する。ただし、姿勢データ24は、各時刻における、各特徴点と、当該特徴点の身体部位の姿勢と、を関連付けている。本実施形態では、姿勢データ24は、記憶部14に格納される。
【0034】
ただし、特徴点の身体部位、すなわち特徴点が位置する身体部位としては、例えば、体幹上部、体幹中部、体幹下部、左上腕部、左前腕部、右上腕部、右前腕部、左大腿部、左下腿部、右大腿部、右下腿部、が挙げられる。特徴点としては、例えば、体幹上部では第1~2胸椎、体幹中部では第11~12胸椎、体幹下部では仙骨中央、左上腕部では左上腕背面(肘頭側)の遠位端、左前腕部では左前腕背面(手背側)の遠位端、右上腕部では右上腕背面(肘頭側)の遠位端、右前腕部では右前腕背面(手背側)の遠位端、左大腿部では左大腿前面の遠位端、左下腿部では左下腿前面の遠位端、右大腿部では右大腿前面の遠位端、右下腿部では右下腿前面の遠位端、がそれぞれ挙げられる。ただし、特徴点はこれらの位置に限定されるものではなく、身体の表面の任意の位置に設定可能であり、運動の種類や運動する人の特性や衣服の種類により変更可能である。特徴点は、例えば、身体に固定された局所座標系の座標で表現される。
【0035】
また、特徴点の身体部位の姿勢(orientation)は、三次元空間において、特徴点が位置する身体部位が回転運動によりどの向きを向いているかを示している。特徴点の身体部位の姿勢は、例えば、回転軸ベクトルと、その回転軸ベクトルの周りを回転した角度である回転角度と、の積で表現される。回転軸ベクトルをnA
→=(nxA、nyA、nzA)とし、回転角度をθとすると、特徴点の身体部位の姿勢は、nA
→・θ=(nxA・θ、nyA・θ、nzA・θ)のように表現される。ただし、本明細書において、記載の都合上、例えば「ベクトルn」について、通常の記載のほかに、「n→」のように記載する場合もある。
【0036】
ここで、運動中の複数の特徴点の身体部位における複数の姿勢データは事前に取得される。ただし、姿勢データの取得の方法としては特に制限はない。その方法としては、例えば、身体に装着されたマーカをトラッカーで検出するモーションキャプチャによる方法や、身体の3次元動画を解析する方法などが挙げられる。モーションキャプチャによる方法としては、例えば、回転運動を計測可能なセンサ(例示:慣性センサ)を用いるセンサ方式や、反射マーカ又はLEDのような発光マーカを用いる光学方式などが挙げられる。
【0037】
本実施形態では、センサ方式、特に慣性センサを用いる慣性センサ方式を採用している。慣性センサ方式では、身体の表面の複数の特徴点の各々に慣性センサが配置され、身体の運動に伴う各特徴点の身体部位の姿勢を示すデータが慣性センサから無線で時々刻々送信される。慣性センサから時々刻々送信される複数のデータ(以下、「送信データ」ともいう。)は、慣性センサ用の情報処理装置の記憶装置、あるいは他の情報処理装置の記憶装置、又はそれらの情報処理装置のメディアドライブ内の記憶媒体に記憶される。複数の送信データは、慣性センサ用の情報処理装置又は他の情報処理装置において、必要に応じて所定の変換方法でデータ変換されてもよい(例示:クォータニオン→等価角軸変換)。姿勢取得部11は、その複数の送信データを、その記憶装置から送受信部38を介して、又は、記憶媒体からメディアドライブ39を介して、記憶部14に姿勢データ24として格納する。なお、慣性センサから時々刻々送信される複数の送信データは、送受信部38を介して、直接、装置1の記憶部14に姿勢データ24として格納されてもよい。その場合、複数の送信データは、装置1において、必要に応じて所定の変換方法でデータ変換されてもよい。
【0038】
慣性センサは、例えば、一秒当たり200個の姿勢データを計測、送信できる。すなわち、慣性センサは、高速で多数の姿勢データを計測、送信できる。その場合、複数の時刻は、運動における計測開始から計測終了までの時間における0.005秒間隔の時刻となる。そのとき、運動における計測対象の時間が45分(2,700秒)であれば、複数の時刻は、0.005秒間隔の540,000個の時刻となり、540,000個の姿勢データが計測、送信される。なお、運動における計測対象の時間は、運動の全時間でもよいし(例示:サッカーの45分×2=90分)、運動の一部(例示:サッカーの前半又は後半の45分、前半又は後半の一部の30分、など)でもよい。
【0039】
図3は、実施形態に係る慣性センサの配置例を説明する模式図である。本実施形態では身体は、運動中の動きに応じた複数のセグメントに区画されている。一つのセグメントは、そのセグメントが全体として概ね同じ回転運動をすると見なすことができる部分である。言い換えると、セグメントは、関節部と関節部との間の部分である。複数のセグメントとしては、例えば、体幹上部、体幹中部、体幹下部、左上腕部、右上腕部、左前腕部、右前腕部、左大腿部、右大腿部、左下腿部及び右下腿部が挙げられる。なお、本実施形態では、頭部(首から上)、手部(手首から先)及び足部(足首から先)を覆う衣服を想定していないので、上記の複数のセグメントには、頭部、手部及び足部は含まれていない。ただし、セグメントの区画は、この例に限定されるものではなく、運動の種類や運動する人の特性や衣服の種類により変更可能である。
【0040】
複数の特徴点の各々は、複数のセグメントの各々における任意の箇所に位置し得る。すなわち、セグメントは、特徴点が配置される身体部位を表している。慣性センサは、各セグメントにおける任意の箇所に配置され得る。ここで、セグメントは、関節部と関節部との間の部分であるから、特徴点は、関節部を挟んで互いに隣り合う位置に設定され、設定された特徴点に慣性センサが配置される。本実施形態では、好ましい態様として、複数の特徴点の各々は、複数のセグメントの各々における筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所、よって慣性センサが取り付け場所からずれ難い箇所に位置する。したがって、慣性センサは、各セグメントにおける筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所、よって慣性センサがセグメント(又は身体部位)に対してずれ難い箇所に配置される。本実施形態では、体幹上部の特徴点51は第1~2胸椎の位置であり、その位置に慣性センサ61が配置される。体幹中部の特徴点52は第11~12胸椎の位置であり、その位置に慣性センサ62が配置される。体幹下部の特徴点53は仙骨中央の位置であり、その位置に慣性センサ63が配置される。左上腕部の特徴点54Lは左上腕背面(肘頭側)の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ64Lが配置される。右上腕部の特徴点54Rは右上腕背面(肘頭側)の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ64Rが配置される。左前腕部の特徴点55Lは左前腕背面(手背側)の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ65Lが配置される。右前腕部の特徴点55Rは右前腕背面(手背側)の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ65Rが配置される。左大腿部の特徴点56Lは左大腿前面の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ66Lが配置される。右大腿部の特徴点56Rは右大腿前面の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ66Rが配置される。左下腿部の特徴点57Lは左下腿前面の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ67Lが配置される。右下腿部の特徴点57Rは右下腿前面の遠位端の位置であり、その位置に慣性センサ67Rが配置される。上記の複数のセグメントの各々に、上記のような少なくとも一つの特徴点を設定し、慣性センサを配置して、姿勢データ24を取得することで、少ない区画数で身体の回転運動を的確に把握することができる。ただし、各セグメントにおける慣性センサの数や配置は、この例に限定されるものではない。
【0041】
装置1の平均関節角度算出部12は、複数の特徴点の身体部位での各々における複数の姿勢データ24に基づいて、身体の複数の関節部の各々における関節角度の運動中(運動における計測対象の全時間中)の平均値を示す平均関節角度データ26を算出する。平均関節角度データ26は、各関節部と、その関節部の関節角度の平均値とを関連付けている。平均関節角度データ26は、記憶部14に格納される。
【0042】
ただし、関節部としては、例えば、第5胸椎81、第3腰椎82、左肩関節83L、左肘関節84L、右肩関節83R、右肘関節84R、左股関節85L、左膝関節86L、右股関節85R、右膝関節86R、が挙げられる。なお、本実施形態では、関節部は、身体内の関節であるが、例えば、互いに隣り合う脊椎同士の接点のような骨と骨との連結部でもよい。また、関節部は、上記の種類や組み合わせに限定されるものではなく、運動の種類や運動する人の特性や衣服の種類により変更が可能である。関節部は、例えば、身体に固定された局所座標系の座標で表現される。
【0043】
また、関節角度は、関節部の姿勢であり、関節が回転運動によりどの向きにどの程度回転しているかを示している。関節角度は、例えば、回転軸ベクトルと、その回転軸ベクトルの周りを回転した角度である回転角度と、の積で表現される。回転軸ベクトルをnB
→=(nxB、nyB、nzB)とし、回転角度をφとすると、関節角度(姿勢)は、nB
→・φ=(nxB・φ、nyB・φ、nzB・φ)で表現される。関節角度は、特許文献2の論文のnφ(nxφ、nyφ、nzφ)に対応している。
【0044】
本実施形態では、姿勢データ24の取得の方法として、筋肉及び脂肪が相対的に少なくセンサがセグメント(又は身体部位)に対してずれ難い箇所に慣性センサを取り付ける方法を用いている。各セグメントには、一つの慣性センサが取り付けられている。そのとき、各関節部には隣り合う二つのセグメントが存在し、それらに取り付けられた慣性センサを用いて取得される姿勢データ24を、所定の変換方法により変換することにより、その関節部の関節角度データが算出される。以下、具体的に説明する。
なお、光学方式のモーションキャプチャを用いて姿勢データ24を取得する方法において、反射又は発光マーカを用いる場合には、各セグメント上の任意の三箇所以上の点にマーカが取り付けられる。各セグメントを剛体と見なすと、剛体上の三箇所の位置(座標)が分かれば剛体の姿勢が求まるからである。そして、それら三箇所のマーカの座標から各セグメントの姿勢、すなわち姿勢データ24を算出する。そして、関節部を挟んで隣り合うセグメント同士の姿勢データ24を、所定の変換方法により変換することにより、その関節部の関節角度データが算出される。
【0045】
本実施形態では、平均関節角度算出部12は、関節角度算出部21と平均値算出部22とを含んでいる。
【0046】
関節角度算出部21は、複数の時刻の各々において、複数の関節部の各々における複数の関節角度(関節角度データ25)を、複数の特徴点のうちの複数の関節部の各々を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における複数の姿勢データ24に基づいて算出する。関節角度データ25は、各時刻における、各関節部と、当該関節部の関節角度(姿勢)と、を関連付けている。関節部の関節角度データ25は、関節部の姿勢データということもできる。関節角度データ25は、記憶部14に格納される。
【0047】
本実施形態では、関節部を挟んで互いに隣り合う位置に特徴点が設定され、それら互いに隣り合う特徴点に慣性センサが配置されている。言い換えると、互いに隣り合う特徴点(慣性センサ)の間に、関節部が位置している。例えば、体幹上部の特徴点51(慣性センサ61)と体幹中部の特徴点52(慣性センサ62)との間に第5胸椎が位置している。体幹中部の特徴点52(慣性センサ62)と体幹下部の特徴点53(慣性センサ63)との間に第3腰椎が位置している。体幹上部の特徴点51(慣性センサ61)と左上腕部の特徴点54L(慣性センサ64L)との間に左肩関節が位置している。左上腕部の特徴点54L(慣性センサ64L)と左前腕部の特徴点55L(慣性センサ65L)との間に左肘関節が位置している。体幹上部の特徴点51(慣性センサ61)と右上腕部の特徴点54R(慣性センサ64R)との間に右肩関節が位置している。右上腕部の特徴点54R(慣性センサ64R)と右前腕部の特徴点55R(慣性センサ65R)との間に右肘関節が位置している。体幹下部の特徴点53(慣性センサ63)と左大腿部の特徴点56L(慣性センサ66L)との間に左股関節が位置している。左大腿部の特徴点56L(慣性センサ66L)と左下腿部の特徴点57L(慣性センサ67L)との間に左膝関節が位置している。体幹下部の特徴点53(慣性センサ63)と右大腿部の特徴点56R(慣性センサ66R)との間に右股関節が位置している。右大腿部の特徴点56R(慣性センサ66R)と右下腿部の特徴点57R(慣性センサ67R)との間に右膝関節が位置している。
【0048】
関節角度算出部21は、関節部とその関節部を挟んで互いに隣り合う特徴点との位置関係に基づいて、その関節部を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位の姿勢を変換することにより、その関節部の関節角度(関節角度データ25)を算出する。例えば、関節角度算出部21は、関節部とその関節部を挟んで互いに隣り合う特徴点の位置関係に基づいて、その関節部を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位の姿勢の間の差異を計算することで、その関節部の関節角度を算出する。言い換えると、ある時刻における、ある一つの関節部での関節角度データ25は、その時刻における、その関節部を挟んで互いに隣り合う特徴点のうちの一方の姿勢データ24と、他方の姿勢データ24と、の差異により算出する。ここで、差異を計算するとは、関節部を挟んで隣り合う特徴点の身体部位の姿勢(姿勢データ24)同士の座標変換計算により、一方の特徴点の身体部位の姿勢を基準とした他方の特徴点の身体部位の相対姿勢として、その関節部の関節角度(関節角度データ25)を算出することをいう。
【0049】
例えば、ある時刻における、関節角度データ25は、以下のように求められる。第5胸椎の関節角度データ25は、その第5胸椎を挟んで隣り合う体幹上部の特徴点51の姿勢データ24と、体幹中部の特徴点52の姿勢データ24と、の差異により算出する。第3腰椎の関節角度データ25は、その第3腰椎を挟んで隣り合う体幹中部の特徴点52の姿勢データ24と、体幹下部の特徴点53の姿勢データ24と、の差異により算出する。左肩関節の関節角度データ25は、その左肩関節を挟んで隣り合う体幹上部の特徴点51の姿勢データ24と、左上腕部の特徴点54Lの姿勢データ24と、の差異により算出する。左肘関節の関節角度データ25は、その左肘関節を挟んで隣り合う左上腕部の特徴点54Lの姿勢データ24と、左前腕部の特徴点55Lの姿勢データ24と、の差異により算出する。右肩関節の関節角度データ25は、その右肩関節を挟んで隣り合う体幹上部の特徴点51の姿勢データ24と、右上腕部の特徴点54Rの姿勢データ24と、の差異により算出する。右肘関節の関節角度データ25は、その右肘関節を挟んで隣り合う右上腕部の特徴点54Rの姿勢データ24と、右前腕部の特徴点55Rの姿勢データ24と、の差異により算出する。左股関節の関節角度データ25は、その左股関節を挟んで隣り合う体幹下部の特徴点53の姿勢データ24と、左大腿部の特徴点56Lの姿勢データ24と、の差異により算出する。左膝関節の関節角度データ25は、その左膝関節を挟んで隣り合う左大腿部の特徴点56Lの姿勢データ24と、左下腿部の特徴点57Lの姿勢データ24と、の差異により算出する。右股関節の関節角度データ25は、その右股関節を挟んで隣り合う体幹下部の特徴点53の姿勢データ24と、右大腿部の特徴点56Rの姿勢データ24と、の差異により算出する。右膝関節の関節角度データ25は、その右膝関節を挟んで隣り合う右大腿部の特徴点56Rの姿勢データ24と、右下腿部の特徴点57Rの姿勢データ24と、の差異により算出する。
【0050】
図4は、実施形態に係る関節角度データの一例を説明する表である。ここで、関節部をJで表現し、第5胸椎、第3腰椎、左肩関節、左肘関節、右肩関節、右肘関節、左股関節、左膝関節、右股関節及び右膝関節をそれぞれJ
1、J
2、…、J
10とする。また、関節部Jの関節角度データをP
Jで表現し、第5胸椎、第3腰椎、左肩関節、左肘関節、右肩関節、右肘関節、左股関節、左膝関節、右股関節及び右膝関節の関節角度データをそれぞれP
J1、P
J2、…、P
J10とし、関節角度データP
J1、P
J2、…、P
J10の変数(n
xB・φ、n
yB・φ、n
zB・φ)を、それぞれ(u
1、u
2、u
3)、(u
4、u
5、u
6)、…、(u
28、u
29、u
30)とする。
【0051】
この表は、運動する一人の対象者が行った一連の運動に関し、運動中の連続する複数の時刻の各々(t1、t2、…、tN)における、複数の関節部の各々(J1、J2、…、J10)での関節角度データ(PJ1、PJ2、…、PJ10)が示されている。例えば、時刻t1において、関節部の第5胸椎J1での関節角度データPJ1として、(u1、u2、u3)=(c11、c12、c13)が示されている。また、例えば、時刻t2において、関節部の第3腰椎J2での関節角度データPJ2として、(u4、u5、u6)=(c24、c25、c26)が示されている。また、例えば、時刻tNにおいて、関節部の右膝関節J10での関節角度データPJ10として、(u28、u29、u30)=(cN28、cN29、cN30)が示されている。なお、表に示されるc11~c1
30、c21~c2
30、…、cN1~cN
30、は、測定値又は測定値から算出された計算値である。また、Nの一例として、例えば540,000が挙げられる。
【0052】
平均値算出部22は、複数の関節部の各々において、算出された複数の関節角度(関節角度データ25)に基づいて、平均関節角度データ26を算出する。平均関節角度データ26は、上記のように、各関節部と、その関節部の関節角度の平均値とを関連付けている。
【0053】
本実施形態では、平均値算出部22は、計算の容易化のために、各時刻における、複数の関節部の関節角度データ25を、一まとめにして身体全体(全関節部)の関節角度データとして取り扱う。本実施形態では、関節部は10個であり、各関節部の関節角度データは3次元ベクトルなので変数が3個である。よって、各時刻における身体全体(全関節部)の関節角度データは、下記の数1に示すベクトルu
→のようなデータとなり、変数は30個になる。
【数1】
例えば、時刻tの関節角度データであるベクトルu
→をu
→(t)とすると、時刻t
1の関節角度データであるu
→(t
1)は、下記の数2に示すようになる。
【数2】
【0054】
平均値算出部22は、
図4に示すような、対象者の一連の運動に関して得られた、複数の時刻の各々における、複数の関節部の各々での関節角度データ25に基づいて、運動における計測対象の全時間(全時刻)における各関節部の中間的又は平均的な関節角度(姿勢)を示す平均関節角度データ26を算出する。その平均関節角度データ26、すなわち、上記数1に示すベクトルu
→の計測対象の全時間(全時刻t
1~t
Nまで)の平均(平均ベクトル)は、下記の数3及び数4に示すように算出される。
【数3】
ここで、数3の各変数は、下記の数4に示すとおりである。
【数4】
ただし、u
j(i)は、時刻t
i(i=1~N)におけるベクトルu
→の第j番目(j=1~30)の変数を示す。
【0055】
なお、j=1~3は第5胸椎J1に対応する。j=4~6は第3腰椎J2に対応する。j=7~9は左肩関節J3に対応する。j=10~12は左肘関節J4に対応する。j=13~15は右肩関節J5に対応する。j=16~18は右肘関節J6に対応する。j=19~21は左股関節J7に対応する。j=22~24は左膝関節J8に対応する。j=25~27は右股関節J9に対応する。j=28~30は右膝関節J10に対応する。
【0056】
数3及び数4により得られるベクトルu→の平均(平均ベクトル)は、運動中の各時刻における全関節部の関節角度(姿勢)を示すベクトルu→に関して、運動全体(全時刻)における全関節部の中間的又は平均的な関節角度(姿勢)を示している。すなわち、ベクトルu→の平均(平均ベクトル)が、平均関節角度データ26である。
【0057】
図5は、実施形態に係る平均関節角度データに基づく中間的な姿勢の一例を説明する模式図である。この図は、各関節部の関節角度を、算出された平均関節角度データ26としたときの身体全体の姿勢を表現している。ただし、便宜上、各セグメントは、対象者の体形に対応した所定の大きさの直方体で表現されており、例えば、左右の大腿部のセグメントは、200mm×200mm×600mmの直方体で表現されている。
【0058】
続いて、装置1の身体形状取得部13は、複数の関節部の各々における平均関節角度データ26に基づいて、複数の関節部の各々の関節角度が平均値となるように、運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、人の身体形状を示す身体形状データ27を取得する。本実施形態では、運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された複数の表面点の位置に基づいて身体形状データ27を算出する。身体形状データ27は、身体の形状を三次元で示しており、身体における複数の表面点の各々と、それら複数の表面点の各々の位置とを関連付けている。身体形状データ27は、記憶部14に格納される。
【0059】
ただし、表面点とは、衣服の設計のときに必要な身体の表面の点状の領域である。言い換えると、身体の表面に位置し、人に依らずに特定し得る点状の領域であって、その点状の領域が複数、集まることで身体形状を表現し得る領域である。本実施形態では、骨特徴点(身体の表面から骨の特定の位置が把握できる部分)や、筋肉の収縮・弛緩、軟組織の動揺などの影響を受ける部分である。骨特徴点としては、例えば、仙骨、第7頸椎、胸骨、肩峰、上腕骨外上顆、上腕骨内上顆、尺骨茎状突起、橈骨茎状突起、上前腸骨棘、大転子、大腿骨外顆、大腿骨内顆、腓骨外踝、脛骨内踝、が挙げられる。関節の中心としては、例えば、肩関節中心、股関節中心、肘関節中心、膝関節中心、手関節中心、足関節中心が挙げられる。肘関節中心は、上腕骨外上顆と上腕骨内上顆との中点である。膝関節中心は、大腿骨外顆と大腿骨内顆との中点である。足関節中心は、腓骨外踝と脛骨内踝との中点である。手関節中心は、尺骨茎状突起と橈骨茎状突起との中点である。筋肉の収縮・弛緩、軟組織の動揺などの影響を受ける部分としては、上腕部、前腕部、大腿部、下腿部、体幹下部、体幹中部、及び体幹上部、が挙げられる。
【0060】
表面点の位置は、表面点の身体の表面の位置であり、例えば、空間に固定されたグローバル座標系の座標で表現することができる。本実施形態では、例えば、空間に固定されたグローバル座標系を(x、y、z)座標系としたとき、各表面点の位置を(x1、y1、z1)、…のように表現することができる。ただし、座標系の取り方は上記の例に限定されず、他の座標系を用いることができる。また、必要に応じて身体に固定された局所座標系を用いることができ、局所座標系とグローバル座標系とは相互に変換可能である。したがって、この場合、身体形状データ27は、身体における複数の表面点の各々と、それら複数の表面点の各々の座標とを関連付けている。
【0061】
ここで、運動中の中間的又は平均的な姿勢を人が再現する方法としては、静的な方法と動的な方法とがある。静的な方法としては、例えば、人が静止した状態で、各関節部が平均関節角度データ26における当該関節部の関節角度(姿勢)になるようにする方法が挙げられる。その場合、各関節部が平均関節角度データにおける当該関節部の関節角度(姿勢)になった静止状態の身体形状が身体形状データ27として取得される。一方、動的な方法としては、例えば、人が動いている状態で、その動きの途中で、各関節部が平均関節角度データにおける当該関節部の関節角度(姿勢)になるようにする方法が挙げられる。その場合、各関節部が平均関節角度データにおける当該関節部の関節角度(姿勢)になった瞬間の身体形状が身体形状データ27として取得される。
【0062】
運動中の中間的又は平均的な姿勢を人が動的に再現したときの、身体の複数の表面点の位置を示す身体形状データ27の取得の方法には特に制限はない。その方法としては、例えば、公知の光学式、磁気式、機械式などのモーションキャプチャの方法や、運動体の3次元動画を解析する方法などが挙げられる。モーションキャプチャ等の方法により取得された身体形状データ27は、モーションキャプチャ等の方法に用いられる情報処理装置の記憶装置、あるいは他の情報処理装置の記憶装置、又はそれらの情報処理装置のメディアドライブ内の記憶媒体に記憶される。身体形状取得部13は、その記憶装置から送受信部38を介して、又は記憶媒体からメディアドライブ39を介して記憶部14に身体形状データ27として格納する。なお、モーションキャプチャ等の方法により取得された身体形状データ27は、直接、装置1(の記憶部14)に格納されてもよい。
【0063】
図6は、実施形態に係る身体形状データの一例を説明する模式図である。この図は、各関節部の関節角度が、算出された平均関節角度データ26となるように、人が静的又は動的に再現したときの、人の身体形状を示している。言い換えると、
図5の身体全体の姿勢を、人が再現したときの、身体形状データ27を示している。この例では、衣服で覆われない頭部、左右の手、及び左右の足は表現されない。このような身体の形状を三次元で示す身体形状データ27に基づいて、公知の方法により衣服を設計することができる。
【0064】
なお、装置1は、身体の形状を三次元で示す身体形状データ27に基づいて、公知の方法により、衣服を設計して、又は、設計する設計者を支援して、衣服設計データを生成してもよい。更に、生成された衣服設計データに基づいて、公知の方法により衣服を製造する製造装置を制御してもよい。
【0065】
ただし、平均関節角度データ26を算出する方法は、上記の例に限定されず、他の例を用いてもよい。平均関節角度データ26を算出する方法の他の例としては、以下に示す例が挙げられる。
【0066】
平均関節角度算出部12は、重み付け部23を更に含んでいる。
重み付け部23は、複数の関節部における複数の関節角度データ25を、複数の時刻の各々に応じて重み付けする。重み付けされた関節角度データ25は、各時刻における、各関節部と、当該関節部の重み付けされた関節角度と、を関連付けている。そして、平均値算出部22が、重み付けされた複数の関節角度データ25に基づいて、平均関節角度データを算出する。
【0067】
例えば、運動における計測対象の全時間(全時刻)のうち、特定の時間帯が他の時間帯と比べて、重要な場合や、動作が激しい場合などには、その時間帯のデータの比率を他の時間帯のデータの比率と比べて高くして(高くなるように重み付けして)、平均関節角度の計算を行う。
【0068】
具体的には、以下のとおりである。重み付け部23は、下記の数5に示すように、関節角度データ25の各変数u
j(i)に、所定の重み付け係数w(i)を乗ずる。それにより、重み付けされた関節角度又は姿勢を示す関節角度データ25(u
j(i)・w(i))を生成する。
【数5】
ただし、w(i)は、0≦w(i)≦1、かつ、下記の数6の範囲で重み付け係数として与えられる任意の実数である。
【数6】
そして、重み付けされた関節角度データ25を用いて、数4と同様に考えて、下記の数7により平均関節角度データ26を算出する。
【数7】
このように、各時刻の関節角度データ25に重み付け係数w(i)を設定することで、任意の時刻に重みを持たせることができる。
【0069】
また、平均関節角度データ26を算出する方法の更に他の例としては、以下に示す例が挙げられる。
【0070】
平均値算出部22は、複数の関節部の各々における平均関節角度データ26を算出すると共に、複数の関節角度データ25に対応した複数の分散を示す複数の分散データ28を算出する。次いで、重み付け部23は、複数の時刻の各々に応じて、複数の分散データ28に基づいて、複数の関節部における複数の関節角度データ25を重み付けする。そして、平均値算出部22は、重み付けされた前記複数の関節角度データ25に基づいて、平均関節角度データ26を算出し直す。
【0071】
具体的には、以下のとおりである。平均値算出部22は、まず、複数の時刻ti(i=1~N)を任意のq個の区間に区切る。例えば、複数の時刻ti(i=1~540,000)の複数の時刻を、[135,000 135,000 135,000 135,000]のように、互いに等しい複数の区間(この場合、135,000個の時刻ずつ4つの区間)に区切ってもよい。あるいは、例えば、その複数の時刻を、[100,000 170,000 100,000 170,000]のように、必ずしも互いに等しくない複数の区間に区切ってもよい。すなわち、区間の個数q、複数の時刻tiを区切る位置、各区間に含まれる時刻tiの数は任意である。ただし、複数の時刻tiは、予めq個の区間に区切られていてもよい。
【0072】
平均値算出部22は、
図4に示すような、対象者の一連の運動に関して得られた、複数の時刻の各々における、複数の関節部の各々での関節角度データ25に基づいて、運動における計測対象のq個の区間の各々における各関節部の中間的又は平均的な関節角度(姿勢)を示すq個の平均関節角度データ26を算出する。その平均関節角度データ26、すなわち、上記数1に示すベクトルu
→の計測対象のq個の区間のうちの区間d(1≦d≦q)の平均(平均ベクトル)は、下記の数8及び数9に示すように算出される。
【数8】
ここで、数8の各変数は、下記の数9に示すとおりである。ただし、変数に添えられた<d>は区間dの変数であることを示す。他の変数においても同様である。
【数9】
ただし、d1は、複数の時刻t
i(i=1~N)における、区間dの開始の時刻t
d1の位置である。dNは、複数の時刻t
i(i=1~N)における、区間dの終了の時刻t
dNの位置である。m<d>は区間d内に存在する時刻t
iの総数である。
【0073】
平均値算出部22は、更に、複数の関節角度データ25に関して、関節角度の平均値に対する分散を示す分散データ28を算出する。平均値に対する変数のばらつき度合いを示す分散は、数10に示す分散共分散行列で与えられる。
【数10】
数10は、本実施形態では30行30列の正方行列であり、対称行列でもある。ただし、数10における各変数は、下記の数11、数12に示すとおりである。
【数11】
【数12】
ここで、数11のs
j
2<d>は、ベクトルu
→の第j番目の変数に関する区間dにおける分散を示している。分散データ28は、少なくとも、区間dと、ベクトルu
→の変数の番号jと、分散s
j
2<d>とを関連付けている。分散データ28は、記憶部14に格納される。
【0074】
このように、区間dごとにsj
2<d>を計算することで、その区間dにおける動作の分散を算出できる。このsj
2<d>は、区間dにおける動作の多様さを関節部ごと、及び、関節部の自由度(三つの変数)ごとに表すものである。
【0075】
重み付け部23は、分散データ28に基づいて、区間dごとの分散の比w
j<d>を算出する。分散の比w
j<d>は、下記の数13に示すとおりである。
【数13】
【0076】
次いで、重み付け部23は、ベクトルu
→の第j番目の変数の時刻t
i(区間d内)における重み付け係数W
j(i)を下記の数14のように設定する。
【数14】
【0077】
次いで、重み付け部23は、数14の重み付け係数Wj(i)を、数5の重み付け係数w(i)と置き換える。そして、重み付けされた関節角度又は姿勢を示す関節角度データ25(uj(i)・Wj(i))を生成する。これによって、各関節部・関節部の自由度(j)の各々において、複数の区間dのうち、動作の小さい区間dの重みは小さく、動作の大きい区間dの重みは大きくすることができる。
【0078】
その後、平均値算出部22は、重み付けされた関節角度データ25を用いて、数7により平均関節角度データ26を算出し直す。
【0079】
次に、実施形態に係る装置1の動作(実施形態に係る方法・プログラム)を説明する。
図7は、実施形態に係る装置1の動作(実施形態に係る方法・プログラム)を示すフロー図である。運動用の衣服の設計を支援する方法は、姿勢取得ステップS1と、平均関節角度算出ステップS2と、身体形状取得ステップS3と、を備える。
【0080】
事前に、運動における計測対象の全時間(全時刻)において、計測対象者における複数の特徴点の各々の身体部位での姿勢、すなわち複数の姿勢データ24が計測される。本実施形態では、複数の特徴点の各々の身体部位での複数の姿勢データ24は、計測対象者の身体における複数の特徴点の各々に慣性センサを配置して行われるモーションキャプチャの方法により計測される(
図3参照)。計測対象の全時間(全時刻)に亘って、慣性センサを用いて計測された複数の特徴点の身体部位での複数の姿勢データ24は、モーションキャプチャ用の情報処理装置の記憶装置に記憶される。ただし、本実施形態では、姿勢データ24の取得の方法として、各セグメントにおける筋肉及び脂肪が相対的に少なくセンサがセグメント(又は身体部位)からずれ難い箇所に特徴点を設定し、そこに慣性センサを取り付ける方法を用いている。
【0081】
図7において、姿勢取得ステップS1では、姿勢取得部11が、身体の表面に設定された複数の特徴点の各々において、身体の運動中の複数の時刻における、複数の姿勢データ24を取得する。姿勢データ24は、記憶部14に格納される。
【0082】
次に、平均関節角度算出ステップS2では、平均関節角度算出部12が、複数の特徴点の各々の身体部位における複数の姿勢データ24に基づいて、身体の複数の関節部の各々における関節角度の前記運動中の平均値を示す平均関節角度データ26を算出する。
【0083】
ここで、
図8は、実施形態に係る方法における平均関節角度算出ステップS2の一例を示すフロー図である。本実施形態では、平均関節角度算出ステップS2は、関節角度算出ステップS11と平均値算出ステップS12とを含んでいる。
【0084】
関節角度算出ステップS11では、関節角度算出部21が、複数の関節部の各々における複数の関節角度データ25を、複数の特徴点のうちの複数の関節部の各々を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における複数の姿勢データ24に基づき算出する。そして、平均値算出ステップS12では、平均値算出部22が、複数の関節部の各々において、算出された複数の関節角度データ25に基づいて、平均関節角度データ26を算出する。
【0085】
次に、
図7において、身体形状取得ステップS3では、身体形状取得部13が、複数の関節部の各々における平均関節角度データ26に基づいて、複数の関節部の各々の関節角度が平均値(平均関節角度データ26)となるように、運動中の中間的な姿勢を人が再現したときの、人の身体形状を示す身体形状データ27を取得する。
【0086】
その際、本実施形態では、身体形状取得部13が、複数の関節部の各々での関節角度が平均値となるように、身体の姿勢を人が静的又は動的に再現したときの、身体の表面における複数の表面点の位置を取得して、取得された複数の表面点の位置に基づいて身体形状データ27を算出する。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る装置1は動作し、方法・プログラムが実行される。
【0088】
ただし、平均関節角度算出ステップS2は、上記の例に限定されるものではない。
図9は、実施形態に係る方法における平均関節角度算出ステップS2の他の例を示すフロー図である。本実施形態では、平均関節角度算出ステップS2は、関節角度算出ステップS11と、重み付けステップとS13と平均値算出ステップS14とを含んでいる。
【0089】
関節角度算出ステップS11は、上記のとおり、関節角度算出部21が、複数の関節部の各々における複数の関節角度データ25を算出する。重み付けステップS13では、重み付け部23が、複数の関節部における複数の関節角度データ25を、複数の時刻の各々に応じて重み付けする(例示:重み付け係数をかける)。そして、平均値算出ステップS14では、平均値算出部22が、重み付けされた複数の関節角度データ25に基づいて、平均関節角度データ26を算出する。
【0090】
ただし、平均関節角度算出ステップS2は、上記の例に限定されるものではない。
図10は、実施形態に係る方法における平均関節角度算出ステップS2の更に他の例を示すフロー図である。本実施形態では、平均関節角度算出ステップS2は、関節角度算出ステップS11と、平均値算出ステップS15と、重み付けステップS16と、平均値再算出ステップS17と、を含んでいる。
【0091】
関節角度算出ステップS11は、上記のとおり、関節角度算出部21が、複数の関節部の各々における複数の関節角度データ25を算出する。平均値算出ステップS15は、平均値算出部22が、複数の関節部の各々における平均関節角度データ26を算出すると共に、複数の関節角度データ25に対応した複数の分散を示す複数の分散データ28を算出する。重み付けステップS16は、重み付け部23が、複数の時刻の各々に応じて、複数の分散データ28に基づいて、複数の関節部における複数の関節角度データ25を重み付けする。平均値再算出ステップS17は、平均値算出部22が、重み付けされた複数の関節角度データ25に基づいて、平均関節角度データ26を算出し直す。
【0092】
なお、本実施形態において、次に、装置1は、身体の形状を三次元で示す身体形状データ27に基づいて、公知の方法により、衣服を設計して、又は、設計する設計者を支援して、衣服設計データを生成する衣服設計ステップを実行してもよい。その場合、衣服設計データは、記憶部14に格納される。更に、装置1は、生成された衣服設計データに基づいて、公知の方法により衣服を製造する製造装置の制御を実行してもよい。
【0093】
運動中の身体には、時々刻々に様々な姿勢が生じ得る。そこで、本装置・方法・プログラムは、運動中に継続的に複数の時刻において、身体の各特徴点の身体部位における複数の姿勢データを取得し、各特徴点の身体部位での複数の姿勢データから、運動中の各関節部の関節角度の平均関節角度データを算出し、各関節部の平均関節角度データから、運動中の多数の様々な姿勢の中間的(又は平均的)な姿勢を再現する。このような中間的な姿勢は、生じ得る様々な姿勢のうちの主要な部分を占めており、生じ得る様々な姿勢に連続的につながり、よって、生じ得る様々な姿勢に移行し易い、ということができる。したがって、そのような中間的な姿勢に基づいて、人の身体形状を再現し、その身体形状に基づいて衣服を設計することで、運動中の様々な姿勢における身体形状に適するように衣服を設計することが可能となる。
【0094】
慣性センサは、高速に多数(例示:200個/秒)の姿勢を検出でき、測定値を有線ではなく無線で送信できる。そこで、本装置・方法・プログラムの好ましい態様では、運動中の姿勢データを、身体の複数の特徴点に取り付けられた慣性センサから取得している。すなわち、身体の運動を邪魔することなく取得された多数の姿勢データを用いている。それにより、現実の運動中の多数の様々な姿勢に対応した姿勢データをより正確に取得できる。したがって、運動中の中間的な姿勢をより正確に算出できる。そして、そのような中間的な姿勢に基づいて、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0095】
また、本装置・方法・プログラムの好ましい態様では、各関節部を挟んで互いに隣り合う特徴点の身体部位における複数の姿勢データから複数の関節角度データを算出し、その複数の関節角度データから各関節部の平均関節角度データを算出する。それにより、運動中の多数の様々な姿勢の中間的(又は平均的)な姿勢をより的確に再現でき、運動中の様々な姿勢における身体形状により適するように衣服を設計することが可能となる。
【0096】
また、本装置・方法・プログラムの別の態様では、複数の関節部における複数の関節角度データを、複数の時刻の各々に応じて重み付けし、重み付けされた複数の関節角度データに基づいて、平均関節角度データを算出している。例えば、運動中における重要な時間帯や、動作の激しい時間帯について、関節角度データの重み付けを大きくし得る。それにより、運動中の中間的な姿勢をより適切に算出できる。そして、そのような中間的な姿勢に基づいて、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0097】
また、本装置・方法・プログラムの別の態様では、複数の関節部における複数の関節角度データを、複数の時刻の各々に応じて、かつ、複数の分散データ、すなわち、平均関節角度データからの変動の大きさに基づいて重み付けしている。例えば、運動中における平均関節角度データからの変動が大きい時間帯や関節部について、重み付けを大きくする。それにより、運動中の動作の激しさに対応した中間的な姿勢をより適切に算出できる。そして、そのような中間的な姿勢に基づいて、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0098】
また、本装置・方法・プログラムの好ましい態様では、運動中の身体における複数の関節部の各々における関節角度が上記の平均値となるように、身体の姿勢を人が静的に再現したときの、複数の表面点の位置から、運動中の身体の中間的な姿勢における身体形状を示す身体形状データを算出している。したがって、衣服を着用する人が疑似的に動いているときの身体形状を示す身体形状データを得ることができる。そして、その身体形状に基づいて衣服を設計することで、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0099】
また、本装置・方法・プログラムの別の態様では、運動中の身体における複数の関節部の各々における関節角度が上記の平均値となるように、身体の姿勢を人が動的に再現したときの、複数の表面点の位置から、運動中の身体の中間的な姿勢における身体形状を示す身体形状データを算出している。したがって、衣服を着用する人が動いているときの身体形状を示す身体形状データを得ることができる。そして、その身体形状に基づいて衣服を設計することで、運動中の身体形状の変化により適応した衣服を設計することが可能となる。
【0100】
また、本装置・方法・プログラムの好ましい態様では、各特徴点が、各セグメントにおける筋肉及び脂肪の相対的に少ない箇所に位置している。それゆえ、運動中の身体に生じる様々な姿勢の変化を的確に把握でき、様々な姿勢の中間的な姿勢を的確に算出できる。
【0101】
本発明の装置・方法・プログラムは、上述した実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱せず、技術的矛盾の生じない範囲内で、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 装置
11 姿勢取得部
12 平均関節角度算出部
13 身体形状取得部