(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】栽培施設
(51)【国際特許分類】
A01G 9/20 20060101AFI20240226BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240226BHJP
A01G 9/22 20060101ALI20240226BHJP
H02S 20/32 20140101ALI20240226BHJP
【FI】
A01G9/20 B
A01G7/00 601Z
A01G9/22
H02S20/32
(21)【出願番号】P 2020081561
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】514231295
【氏名又は名称】株式会社テヌート
(73)【特許権者】
【識別番号】513144453
【氏名又は名称】藤原 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慶太
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-198268(JP,A)
【文献】特開平8-196152(JP,A)
【文献】米国特許第8915015(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/20
A01G 7/00
A01G 9/22
H02S 20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を屋内に取り込む太陽光利用型の栽培施設において、
植物の栽培領域の上方に配設されたルーバー装置と、前記栽培領域の照度を測定する測定装置と、前記ルーバー装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記ルーバー装置は、一方向に沿って配列された複数の回動羽根部材を備え、
前記回動羽根部材は、前記制御装置により正逆回動制御可能な太陽光パネルを備え、前記太陽光パネルを回動して姿勢変更することにより、太陽光の遮光率を調節して前記栽培領域における照度を調節可能に設けられ、
さらに、前記複数の回動羽根部材は、前記太陽光パネルを同期して回動可能に構成され、かつ、前記太陽光パネルが所定の回動角度となったとき、前記回動羽根部材の互いの端同士が重なるよう構成され
、
前記制御装置は、前記栽培施設内の温度、湿度、二酸化炭素濃度のうち少なくとも1つを測定する測定装置から測定値に関する情報を取得するよう構成され、前記測定値が、所定の閾値を下回る場合、前記回動羽根部材の互いの端同士の隙間を狭めて通気性を低下させるよう姿勢制御することを特徴とする栽培施設。
【請求項2】
太陽光を屋内に取り込む太陽光利用型の栽培施設において、
植物の栽培領域の上方に配設されたルーバー装置と、前記栽培領域の照度を測定する測定装置と、前記ルーバー装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記ルーバー装置は、一方向に沿って配列された複数の回動羽根部材を備え、
前記回動羽根部材は、前記制御装置により正逆回動制御可能な太陽光パネルを備え、前記太陽光パネルを回動して姿勢変更することにより、太陽光の遮光率を調節して前記栽培領域における照度を調節可能に設けられ、
さらに、前記複数の回動羽根部材は、前記太陽光パネルを同期して回動可能に構成され、かつ、前記太陽光パネルが所定の回動角度となったとき、前記回動羽根部材の互いの端同士が重なるよう構成され、
前記回動羽根部材は、一端から他端に向かって上面が緩やかな曲率を有し、かつ、
前記回動羽根部材の両端
下部に、互いの端同士の隙間を塞ぐシール部が設けられたことを特徴とす
る栽培施設。
【請求項3】
太陽光を屋内に取り込む太陽光利用型の栽培施設において、
植物の栽培領域の上方に配設されたルーバー装置と、前記栽培領域の照度を測定する測定装置と、前記ルーバー装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記ルーバー装置は、一方向に沿って配列された複数の回動羽根部材を備え、
前記回動羽根部材は、前記制御装置により正逆回動制御可能な太陽光パネルを備え、前記太陽光パネルを回動して姿勢変更することにより、太陽光の遮光率を調節して前記栽培領域における照度を調節可能に設けられ、
さらに、前記複数の回動羽根部材は、前記太陽光パネルを同期して回動可能に構成され、かつ、前記太陽光パネルが所定の回動角度となったとき、前記回動羽根部材の互いの端同士が重なるよう構成され、
前記回動羽根部材は、複数の第1の回動羽根部材と、複数の第2の回動羽根部材とがそれぞれ太陽光パネルを同期して回動可能に構成され、
前記ルーバー装置は、一端側から前記第1の回動羽根部材と前記第2の回動羽根部材が交互に配列され、
前記制御装置は、前記太陽光パネルを同期して回動制御することにより栽培領域の照度を調節する照度調節制御において、
前記回動羽根部材の端同士が干渉して回動が妨げられる場合、前記第1の回動羽根部材と前記第2の回動羽根部材を別々に回動制御し、端同士の接触を回避する接触回避動作を行うよう制御することを特徴とす
る栽培施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培施設に関するものであり、特に、日射を屋内へ取り込む太陽光利用型の栽培施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、植物の生育において照度は重要な役割を果たし、日射を屋内へ取り込む太陽光利用型の栽培施設においては、屋内が植物の生育に適した照度となるように、日射を適宜遮って照度を調節する照度調節手段を備えたものが存在する。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、照度調節手段として、栽培施設屋内の上方に配設された巻取り式の遮光カーテンを備え、この遮光カーテンを電動式モータの駆動により開閉し、その開度を調節することによって、屋内の照度を調節可能な栽培施設が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、照度調節手段として、上記の遮光カーテンに代え、同期して回動する複数の細長い羽板(所謂、ルーバー)を設けた栽培施設が開示されている。この栽培施設は、太陽光の入射方向に対して羽板の角度を変更することで、日射をより細かく遮光し、より精緻な照度の調節が可能となっている。さらに、それぞれの羽板の遮光面には、太陽光パネルが設けられ、遮光と同時に発電が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-45317号公報
【文献】特開2019-198268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記特許文献1に記載の遮光カーテンは、照度調節手段として機能するとともに、閉状態としたときに栽培施設屋内の上方を覆い気流を遮断することで、栽培施設の保温機能や保湿機能を向上することができる。しかしながら、上記特許文献2に記載のルーバーは、羽板同士に隙間を設けた構造によって気流を遮断することができず、その結果、遮光カーテンと同様の保温機能や保湿機能を発揮することは難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、屋内の照度を精緻に調節可能としながら、屋内の保温機能や保湿機能を向上するようにした栽培施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、
太陽光を屋内に取り込む太陽光利用型の栽培施設において、
植物の栽培領域の上方に配設されたルーバー装置と、前記栽培領域の照度を測定する測定装置と、前記ルーバー装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記ルーバー装置は、一方向に沿って配列された複数の回動羽根部材を備え、
前記回動羽根部材は、前記制御装置により正逆回動制御可能な太陽光パネルを備え、前記太陽光パネルを回動して姿勢変更することにより、太陽光の遮光率を調節して前記栽培領域における照度を調節可能に設けられ、
さらに、前記複数の回動羽根部材は、前記太陽光パネルを同期して回動可能に構成され、かつ、前記太陽光パネルが所定の回動角度となったとき、前記回動羽根部材の互いの端同士が重なるよう構成されたことを特徴とする。
【0009】
上記第1の発明によれば、正逆回動制御可能な太陽光パネルにより屋内に取り込む日射を遮光して、屋内の照度をより精緻に調節可能としながら、同時に、太陽光パネルが所定の回動角度としたときに、回動羽根部材の端同士が重なることで、気流を遮断することが可能となり、その結果、栽培施設の保温機能や保湿機能を向上することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記回動羽根部材の両端に、互いの端同士の隙間を塞ぐシール部が設けられたことを特徴とする。
【0011】
上記第2の発明によれば、シール部が、回動羽根部材の端同士に生じる隙間をシールすることで、より良好に気流を遮断することができる。その結果、栽培施設の保温機能や保湿機能をさらに良好に向上することが可能となる。
【0012】
第3の発明は、上記第1の発明または上記第2の発明において、
前記回動羽根部材は、複数の第1の回動羽根部材と、複数の第2の回動羽根部材とがそれぞれ太陽光パネルを同期して回動可能に構成され、
前記ルーバー装置は、一端側から前記第1の回動羽根部材と前記第2の回動羽根部材が交互に配列され、
前記制御装置は、前記太陽光パネルを同期して回動制御することにより栽培領域の照度を調節する照度調節制御において、
前記回動羽根部材の端同士が干渉して回動が妨げられる場合、前記第1の回動羽根部材と前記第2の回動羽根部材を別々に回動制御し、端同士の接触を回避する接触回避動作を行うよう制御することを特徴とする。
【0013】
上記第3の発明によれば、照度調節制御において回動羽根部材の端同士の干渉を防止して、栽培領域の照度を良好に調節できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屋内の照度を精緻に調節可能としながら、屋内の保温機能や保湿機能を向上するようにした栽培施設を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る栽培施設の概略全体構成図である。
【
図2】
図2は、
図1の回動羽根部材の配列を説明する斜視図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、回動羽根部材の動作を説明する説明図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(e)は、
図1の回動羽根部材の接触(干渉)回避動作を説明する説明図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(e)は、
図1の回動羽根部材の接触(干渉)回避動作を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、太陽光パネルが略水平姿勢の状態における複数の回動羽根部材の概略右側面図である。
【
図8】
図8は、太陽が東側にあるときの太陽光パネルの動作を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、太陽が西側にあるときの太陽光パネルの動作を説明する説明図である。
【
図10】
図10は、基準照度及び実照度の関係を説明するための説明図である。
【
図11】
図11は、日周運動における太陽の軌道を簡略化した図である。
【
図12】
図12は、太陽光パネルが略水平姿勢の状態における複数の回動羽根部材の別の実施例を示す概略右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る栽培施設1の概略全体構成図である。
【0017】
<全体構成>
栽培施設1は、
図1に示されるように、栽培施設1の全体を覆うハウジングHと、その内部に、照度調節手段であるルーバー装置Aと、栽培施設1内の植物Gの栽培環境に関する情報Dtを測定する測定装置Dと、ルーバー装置Aの動作を制御する制御装置Cと、を備えている。ここで、栽培施設1のハウジングHは、光透過性のシート、板材等から構成された一般的なものであって、太陽光Lを屋内に取り込み可能となっている。また、栽培対象となる植物Gは、栽培施設1の屋内の栽培領域Grにおいて栽培されるものとする。
【0018】
ルーバー装置Aは、栽培領域Grの上方を覆うように、栽培施設1内の上部に配設され、遮光手段と発電手段を有する回動羽根部材a1を備えている。回動羽根部材a1は、モータMにより駆動され、太陽光Lの遮光量(あるいは、遮光率)を変更することで栽培施設1内の照度を調節する機能と、太陽光Lにより発電する機能を有する。このルーバー装置Aについて、詳細は後述する。
【0019】
測定装置Dは、植物Gを栽培する栽培領域Grにおける栽培環境、すなわち、温度や湿度、照度、二酸化炭素濃度等を測定可能な複数のセンサからなり、栽培施設1内の栽培領域Grに一または複数配設されている。測定装置Dは、これらの栽培環境に関する情報Dtを、後述する制御装置Cへ有線あるいは無線の通信手段を用いて送信可能となっている。
【0020】
制御装置Cは、ルーバー装置Aの動作を制御する情報処理手段C1と、各種情報を記憶可能な記憶手段C2を備え、測定装置Dから栽培環境に関する情報Dtを取得して記憶手段C2に記憶するとともに、情報処理手段C1によりルーバー装置AにモータMの駆動を制御する制御信号Csを送り、回動羽根部材a1の動作を制御する。この制御装置Cについて、詳細は後述する。
【0021】
<ルーバー装置の構成>
図1に示されるように、ルーバー装置Aは、遮光手段として、太陽光Lを遮光する複数の回動羽根部材a1を有しており、この回動羽根部材a1はルーバー装置Aの長さ方向(東西方向)に沿って複数配列されている。この複数の回動羽根部材a1は、発電手段として、細長い矩形板状の太陽光パネルPを備えている。この太陽光パネルPは、太陽光Lを受けて発電するとともに、照度調節のため太陽光Lを遮光する役割を有する。
【0022】
回動羽根部材a1は、駆動軸axに複数連結されており、制御装置Cにより制御されて正逆回転可能なモータMの駆動により駆動軸axが回転すると、その回転方向に応じて、回転軸a13を中心として、太陽光パネルPを正逆回動可能に構成されている。
【0023】
また、それぞれの第1の回動羽根部材a11はモータM1の駆動と連動し、それぞれの第2の回動羽根部材a12はモータM2の駆動と連動して動作するよう構成されている。具体的には、第1のモータM1が駆動すると、第1のモータM1に接続された駆動軸ax1が回転し、これにより、この駆動軸ax1と連結された複数の第1の回動羽根部材a11,a11,a11・・・が、複数の太陽光パネルP1,P1,P1・・・を同期して回動する。また、第2のモータM2が駆動すると、第2のモータM2に接続された駆動軸ax2が回転し、これにより、この駆動軸ax2と連結された複数の第2の回動羽根部材a12,a12,a12・・・が、複数の太陽光パネルP2,P2,P2・・・を同期して回動する。このようにして、第1の回動羽根部材a11と、第2の回動羽根部材a12は、それぞれ独立した動作が可能となっている。
【0024】
図2は、回動羽根部材a1の配列を説明する斜視図である。
図2に示されるように、第1の回動羽根部材a11と、第2の回動羽根部材a12は、一端側から交互に配列されている。さらに、回動羽根部材a1は、太陽光パネルPを略水平姿勢としたとき、隣り合う回動羽根部材a1の端同士が重なる間隔で配設されている。これにより、回動羽根部材a1の太陽光パネルP(P1,P2)をそれぞれ略水平姿勢としたときに、回動羽根部材a1の端同士が重なることで、気流を遮断することが可能となり、その結果、栽培施設1の保温機能や保湿機能を向上することができる。
【0025】
図3は、ルーバー装置Aの回動羽根部材a1の概略右側面図である。
回動羽根部材a1は、支持フレームh1に横架され、栽培施設1内の上部に架け渡された横桟h2に支持固定された座板a15上に、太陽光パネルPを支持する支柱a16と、支柱a16に回動軸a13を中心として回動自在に取付けられ、上面に太陽光パネルPが組み付けられた架台a17と、架台a17の両端に取り付けられたシール部a18と、太陽光パネルPの発電を蓄電する蓄電池a19と、駆動軸axの回転運動を太陽光パネルPの回動運動に変換する回動機構a20が設けられている。
【0026】
回動機構a20は、駆動軸ax上に設けられたウォーム歯車a21と噛合する駆動ギアa22が内蔵されており、駆動軸axが回転すると、この駆動ギアa22が回転し、その結果、この駆動ギアa22と同軸上に連結された巻取軸a23が架台a17に取り付けられた巻取ワイヤーa14を巻き取ることで、太陽光パネルPを回動することが可能となっている。なお、
図3中の矢印は、一例として、太陽光パネルPを正転方向(反時計回り)に回動するときの各部材の動きを示している。
【0027】
図4(a)及び
図4(b)は、回動羽根部材a1の動作を説明する説明図である。
上記構成によって、各回動羽根部材a1に配設された太陽光パネルPは、駆動軸axの回転方向に応じて、水平姿勢を基準として、
図4(a)に示されるように、紙面手前側(西側)から見て正転方向(反時計回り)に回動角度α(0≦α≦90°)、
図4(b)に示されるように、逆転方向(時計回り)に回動角度β(0≦β≦90°)の範囲(回動角度幅)で回動し、太陽光パネルPの仰角方向Fを東から西へと約180°の範囲で変更することが可能となっている。なお、仰角方向Fとは、太陽光パネルPの遮光面から垂直に延びる方向を指す。なお、後述する制御装置Cは、モータMの制御量により、上記の回動角度α,βの値を判断可能となっている。
【0028】
なお、上記構成により、回動羽根部材a1の太陽光パネルPを回動制御することで、ルーバー装置Aは、栽培施設1内の照度の調節に加え、回動羽根部材a1同士の隙間間隔の調節により、栽培施設1内の温度や湿度を調節することが可能となっている。すなわち、回動羽根部材a1同士の隙間を拡げて通気性を向上させることで、栽培施設1内の温度や湿度を低下させることができ、回動羽根部材a1同士の隙間を狭め通気性を低下させ、あるいは塞いで気流を遮断することで、栽培施設1内の温度や湿度を上昇させることができる。
【0029】
また、架台a17の両端には、下方に突出するようにして、表面の断面形状が略U字状に形成されたシール部a18が設けられている。このシール部a18は、可撓性を有するゴム等の弾性部材で形成されている。これにより、それぞれの太陽光パネルPを回動して略水平姿勢としたときに、シール部a18が、回動羽根部材a1同士の重なり部分において、回動羽根部材a1の端同士に生じる隙間をシールすることで、より良好に気流を遮断することができる。その結果、栽培施設1の保温機能や保湿機能をさらに良好に向上することが可能となっている。また、シール部a18が、可撓性を有する弾性部材で形成されたことにより、押圧力により弾性変形して隙間を好適に塞ぎ、その結果、気流を良好に遮断できる。
【0030】
なお、蓄電池a19に蓄電された電力は、図示しないコネクタにより取り出すことができ、各機構に供給可能となっている。これにより、利便性を向上し、栽培施設1全体のエネルギー効率を向上できる。
【0031】
<制御装置の構成>
制御装置Cは、
図1に示されるように、CPU、ROM、RAM等の情報処理手段C1と、半導体メモリーやHDD等の記憶手段C2を備えた情報処理装置であり、記憶手段に格納されたプログラムやデータを情報処理手段により処理して各種の機能を実現する。なお、制御装置Cは図示しない計時部により、現在時刻を示す時刻情報を取得可能となっている。また、図示しない通信手段により、測定装置Dtから栽培環境に関する情報Dtを取得し、また、ルーバー装置Aに制御信号Csを送信可能となっている。
【0032】
記憶手段C2には、情報処理手段C1が、太陽光パネルPを回動制御して後述の照度調節制御を行うために必要な情報が記憶されている。例えば、栽培施設1の緯度・経度を含む位置情報、日の出、日の入り時刻を含む日時情報、太陽方位情報を示す天文データ、栽培対象となる植物の生育に望ましい基準の照度を示す基準照度などの各種情報が記憶されている。また、測定装置Dから取得した栽培施設1内の植物Gの栽培環境に関する情報が適宜記憶されている。
【0033】
このように構成された制御装置Cは、測定装置Dによって測定された栽培環境に関する情報Dtと、記憶手段に格納された各種データに基づいて、栽培施設1の栽培環境に応じてモータMに制御信号Csを出力し、太陽光パネルPを回動制御してその姿勢を適宜変更することで、栽培領域Grにおいて、植物Gの生育に適した栽培環境が実現されるように構成されている。
【0034】
<接触(干渉)回避動作>
後述する制御装置Cの照度調節制御において、複数の回動羽根部材a1,a1,a1・・・は、通常時、各太陽光パネルP,P,P・・・の仰角方向Fが適宜の一方向を向くように全体が同期して回動制御される。しかしながら、複数の回動羽根部材a1,a1,a1・・・は、それぞれの回動羽根部材a1の端同士が重なるよう構成されているため、そのまま全体を同期して回動すると、回動羽根部材a1の太陽光パネルPが略水平姿勢となったときに、端同士が接触(干渉)して回動が妨げられる。したがって、そのような場合に、制御装置Cは、回動羽根部材a1端同士の接触(干渉)を回避するため、第1の回動羽根部材a11と第2の回動羽根部材a12を同期させずに別々に回動制御し、以下に詳述する接触(干渉)回避動作を行うよう制御する。
【0035】
図5(a)のように、回動羽根部材a1を、太陽光パネルPの回動角度α>0°の状態から、逆転方向(時計回り)に回動制御するとき、太陽光パネルPが略水平姿勢となると、回動羽根部材a1の端同士が接触する。したがって、制御装置Cは、太陽光パネルPが略水平姿勢の状態からさらに回動羽根部材a1を逆転方向(時計回り)に回動制御するとき、以下の手順による制御を行う。
【0036】
図5(b)~
図5(d)は、回動羽根部材a1を、太陽光パネルPが略水平姿勢の状態からさらに目標の回動角度β2となるまで、逆転方向(時計回り)に回動制御する場合の接触(干渉)回避動作に係る制御例である。
【0037】
図5(b)に示されるように、第1の回動羽根部材a11の太陽光パネルP1を、正転方向(反時計回り)に回動制御し、回動角度α1とする。これにより、第1の回動羽根部材a11を、第2の回動羽根部材a12と接触しない位置に退避させる。なお、
図5(b)に示す例では、回動角度α1を約90°としているが、第1の回動羽根部材a11が、第2の回動羽根部材a12と接触しない範囲であれば、約90°以下でもよい。
【0038】
次に、
図5(c)に示されるように、第2の回動羽根部材a12の太陽光パネルP2を、逆転方向(時計回り)に回動制御し、回動角度β1とする。これにより、第2の回動羽根部材a12の太陽光パネルP2を、第1の回動羽根部材a11との接触が生じる略水平姿勢の状態を乗り越えさせ、さらに、第1の回動羽根部材a11と接触しない位置に退避させる。なお、
図5(c)に示す例では、回動角度β1を約90°としているが、第2の回動羽根部材a12が、第1の回動羽根部材a11と接触しない範囲であれば、約90°以下でもよい。
【0039】
続いて、
図5(d)に示されるように、第1の回動羽根部材a11の太陽光パネルP1を、逆転方向(時計回り)に回動制御し、目標の回動角度β2とする。その後、
図5(e)に示されるように、第2の回動羽根部材a12の太陽光パネルP2を、正転方向(反時計回り)に回動制御し、目標の回動角度β2とする。このようにして、全ての回動羽根部材a1の太陽光パネルPの回動角度を目標の回動角度β2とすることができる。
【0040】
また、
図6(a)のように、回動羽根部材a1を、太陽光パネルPの回動角度β>0°の状態から、正転方向(反時計回り)に回動制御する場合に関しても、太陽光パネルPが略水平姿勢となると、回動羽根部材a1の端同士が接触する。したがって、制御装置Cは、以下の手順による接触回避動作に係る制御を行う。
【0041】
図6(b)~
図6(d)は、回動羽根部材a1の太陽光パネルPを、太陽光パネルPが略水平姿勢の状態からさらに目標の回動角度α2´となるまで、正転方向(反時計回り)に回動制御する場合の接触(干渉)回避動作に係る制御例である。
【0042】
図6(b)に示されるように、第1の回動羽根部材a11の太陽光パネルP1を、逆転方向(時計回り)に回動制御し、回動角度β1´とする。これにより、第1の回動羽根部材a11を、第2の回動羽根部材a12と接触しない位置に退避させる。なお、
図6(b)に示す例では、回動角度β1´を約90°としているが、第1の回動羽根部材a11が、第2の回動羽根部材a12と接触しない範囲であれば、約90°以下でもよい。
【0043】
次に、
図6(c)に示されるように、第2の回動羽根部材a12の太陽光パネルP2を、正転方向(反時計回り)に回動制御し、回動角度α1´とする。これにより、第2の回動羽根部材a12の太陽光パネルP2を、第1の回動羽根部材a11との接触が生じる略水平姿勢の状態を乗り越えさせ、さらに、第1の回動羽根部材a11と接触しない位置に退避させる。なお、
図6(c)に示す例では、回動角度α1´を約90°としているが、第2の回動羽根部材a12が、第1の回動羽根部材a11と接触しない範囲であれば、約90°以下でもよい。
【0044】
続いて、
図6(d)に示されるように、第1の回動羽根部材a11の太陽光パネルP1を、正転方向(反時計回り)に回動制御し、目標の回動角度α2´とする。その後、
図6(e)に示されるように、第2の回動羽根部材a12の太陽光パネルP2を、逆転方向(時計回り)に回動制御し、目標の回動角度α2´とする。このようにして、全ての回動羽根部材a1の太陽光パネルPの回動角度を目標の回動角度α2´とすることができる。
【0045】
<照度調節制御>
制御装置Cは、太陽光パネルPの姿勢制御パターンを複数有し、その姿勢制御パターンを用いて、回動羽根部材a1の回動制御を行う。本実施形態においては、以下の4つの姿勢制御パターンを備えている。なお、各姿勢制御パターンは、制御装置Cの記憶手段C2に予め記憶されており、制御装置Cは、姿勢制御パターンを決定する際、太陽SNの方向及び太陽光Lの入射方向を、記憶手段C2に記憶された太陽方位情報を示す天文データを参照して判断可能となっている。
【0046】
制御装置Cは、状況に応じて、各姿勢制御パターンを切換えることにより照度調節制御を行う。ここで、照度調節制御とは、制御装置Cが、ルーバー装置Aを制御して、栽培施設1内の栽培領域Grにおける照度を調節する制御をいう。
【0047】
図7は、太陽光パネルPが略水平姿勢の状態における複数の回動羽根部材の概略右側面図である。
第1の姿勢制御パターンとして、水平姿勢制御Paは、
図7に示されるように、全ての回動羽根部材a1の太陽光パネルPが略水平姿勢となるように制御する。これにより、回動羽根部材a1の端同士が重なり合うことで、気流を遮断し、栽培施設1の保温機能や保湿機能を向上できる。また、同時に日射も遮断されるため、栽培施設1の栽培領域Gr内の照度を最小化することができる。
【0048】
第2の姿勢制御パターンとして、最大遮光姿勢制御Pbは、太陽光パネルPの仰角方向Fを太陽SNの位置と常時連係させ、
図8及び
図9中に示されるように、全ての回動羽根部材a1の太陽光パネルPの仰角方向Fが太陽SNを向くように制御する。このとき、太陽光パネルPの遮光面は、太陽光Lの入射方向と垂直となる。なお、
図8及び
図9においては、説明の便宜上、一つの簡略化された太陽光パネルPが図示されており、また、
図8においては、太陽SNが栽培施設1の東側にある場合が図示されており、
図9においては太陽SNが栽培施設1の西側にある場合が図示されている。
【0049】
第3の姿勢制御パターンとして、最小遮光姿勢制御Pcは、太陽光パネルPの仰角方向Fを太陽SNの位置と常時連係させ、
図8及び
図9中に示されるように、太陽光パネルPの仰角方向Fが太陽光Lの入射方向に対して垂直となるように制御する。このとき、太陽光パネルPの遮光面は、太陽光Lの入射方向と平行となる。これにより、一つの回動羽根部材a1当たりの遮光量を最小化し、栽培施設1内の栽培領域Grにおける照度を最大化することができる。
【0050】
図8は、太陽が東側にあるときの太陽光パネルPの動作を説明する説明図であり、
図9は、太陽が西側にあるときの太陽光パネルPの動作を説明する説明図である。
第4の姿勢制御パターンとして、遮光量調節姿勢制御Pdは、太陽光パネルPの仰角方向Fを太陽SNの位置と常時連係させ、
図8及び
図9中に示されるように、太陽光パネルPの仰角方向Fが太陽光の入射方向に対して垂直となった状態(最小遮光姿勢制御Pcの状態)から、日陰面積Sを増加させる方向へ調節角度θCO(0°<θCO<90°)だけ太陽光パネルPを、正転方向(反時計回り)または逆転方向(時計回り)に回動した姿勢となるように太陽光パネルPの向きを制御する。なお、日陰面積Sとは、太陽光パネルPの遮光によって、栽培領域Grの地表に生成される日陰の面積をいう。
【0051】
ここで、太陽光パネルPの各姿勢における回動羽根部材a1の遮光率は、最大遮光姿勢制御Pb時における太陽光パネルPの遮光率を100%とし、最大遮光姿勢制御Pb時の日陰面積Smaxと、各姿勢における日陰面積S(Sx)との面積比で計算することができる。すなわち、太陽光パネルPの各姿勢における遮光率Rは、以下の式で求めることができる。
遮光率R(%)=(日陰面積Sx/最大日陰面積Smax)×100
なお、最小遮光姿勢制御Pcのとき、日陰面積S(Smin)は最小となり、このときの遮光率R(Rmin)は、例えば、約10%である。
【0052】
より詳細には、
図8に示されるように太陽SNが東側にあるとき、日陰面積Sを増加させる調節角度θCOの方向は、逆転方向(時計回り)であり、
図9に示されるように太陽SNが西側にあるときは、正転方向(反時計回り)である。これにより、この調節角度θCOの大きさを制御することによって、一つの回動羽根部材a1当たりの遮光量(遮光率)を調節することができ、その結果、ルーバー装置Aの遮光量(遮光率)を調節して、栽培施設1内の栽培領域Grにおける照度を調節することができる。
【0053】
次に、調節角度θCOの決定方法について説明する。
制御装置Cは、記憶手段に記憶された基準照度W1と、測定装置Dによって測定された実照度W2を比較することによりθCOを決定する。ここで、基準照度W1は、栽培対象となる植物Gの生育に適した照度の基準値が時系列で記録されたものである。この基準照度W1に関する情報は、予め制御装置Cの記憶手段C2に記憶されており、ユーザーが、予め任意の値を設定可能となっている。また、実照度W2は、所定の時間間隔で、測定装置Dによって測定された栽培施設1内の照度の実測値であり、実照度W2に関する情報は、測定装置Dによって測定された照度を制御装置Cが取得すると、制御装置Cの記憶手段C2に都度記憶される。
【0054】
図10は、基準照度及び実照度の関係を説明するための説明図である。
図10には、一例として、横軸を時刻とし、縦軸を照度(W/m
2)とし、栽培対象となる植物Gの基準照度W1と実照度W2を実線でそれぞれ示したグラフが示されている。制御装置Cは、記憶手段C2に予め記憶された基準照度W1と、測定装置Dによって測定された実照度W2との大小を比較することで、植物Gの生育に適した照度の過不足が判断可能となっている。例えば、
図10の例では、時刻6時~時刻14時の間、基準照度W1が実照度W2を上回っており、植物Gの育成に適した照度が不足している状況と判断できる。また、時刻14時~時刻19時の間は、基準照度W1が実照度W2を下回っており、実照度W2が、植物Gの育成に適した照度を越えている状況と判断できる。
【0055】
なお、制御装置Cは、複数の測定装置Dが栽培領域Grに配設されている場合、複数の測定装置Dから栽培環境に関する情報をそれぞれ取得し、その平均値を算出し、上述の実照度W2には、この平均値を用いることにより、栽培領域Gr全体の栽培環境を判断可能となっている。
【0056】
制御装置Cは、遮光量調節姿勢制御Pdに切り換わると、調節角度θCOを初期値(例えば、30°)に設定して、太陽光パネルPの向きを制御する(ステップS1)。次に、記憶手段に記憶された基準照度W1と最新の実照度W2を比較し、基準照度W1<実照度W2の場合、調節角度θCOを所定量(例えば、5°)増加させ、基準照度W1>実照度W2の場合、調節角度θCOを所定量(例えば、5°)減少させ、基準照度W1=実照度W2の場合、調節角度θCOは変更しない(ステップS2)。制御装置Cは、上記ステップS1の後、所定の時間間隔で、ステップS2を繰り返すことで、遮光量調節姿勢制御Pd実行中において、実照度W2が基準照度W1に近づくように調節角度θCOを適切な値に補正しながら、照度を調節することができる。
【0057】
ここで、制御装置Cは、上記ステップS2の繰り返し制御による調節角度θCOの補正の結果、調節角度θCO≦0°となると、実照度W2が基準照度W1に満たない状況が連続していると判断されるため、基準照度W1<実照度W2となるまで、最小遮光姿勢制御Pcを行う。その後、基準照度W1<実照度W2となると、ステップS1に戻り、調節角度θCOを初期値に戻して、遮光量調節姿勢制御Pdを行う。
【0058】
また、制御装置Cは、上記ステップS2の繰り返し制御による調節角度θCOの補正の結果、調節角度θCOが、所定の閾値(例えば、60°)以上になると、実照度W2が基準照度W1を超えている状況が連続していると判断されるため、基準照度W1>実照度W2となるまで、最大遮光姿勢制御Pbを行う。その後、基準照度W1>実照度W2となると、ステップS1に戻り、調節角度θCOを初期値に戻して、遮光量調節姿勢制御Pdを行う。
【0059】
上記の制御を繰り返すことで、実照度W2が植物Gの育成に適した照度より不足している場合(
図10の例では、時刻6時~時刻14時の間)は、回動羽根部材a1による遮光量(あるいは、遮光率R)を徐々に減少させて、栽培領域Grの照度を上昇させ、また、実照度W2が植物Gの育成に適した照度を越えている場合(
図10の例では、時刻14時~時刻19時の間)は、回動羽根部材a1による遮光量(あるいは、遮光率R)を徐々に増加させて、栽培領域Grの照度を低下させる。これにより、遮光量調節姿勢制御Pdにおいては、太陽光を利用して、植物Gの育成に適した照度が実現されるように、回動羽根部材a1が回動制御される。その結果、屋内へ取り込む日射を適宜遮光し、屋内の照度の精緻な調節が可能となっている。
【0060】
次に、太陽SNの日周運動と、上記に説明した制御装置Cの照度調節制御及び接触回避動作の関係について説明する。
図11は、説明のため、1日の日周運動における太陽SNの軌道を簡略化した図である。以下の説明においては、
図11に示されるように、太陽SNの南中方向をDSとし、太陽の午前~正午における地平線からの角度をθAMとし、正午~午前における地平線からの角度をθPMとする。また、位置(A)は日の出(時刻:T0)、位置(B)は午前(時刻:T1)、位置(C)は正午(南中時)(時刻:T2)、位置(D)は午後(時刻:T3)、位置(E)は日の入り(時刻:T4)における太陽SNの位置を示している。
【0061】
夜間においては、制御装置Cは、水平姿勢制御Paを行う。これにより、外気の気温低下の影響を受けて、屋内の気温が低下しやすい状況下で、栽培施設1の保温機能や保湿機能を発揮できる。
【0062】
太陽SNが位置(A)のとき、日の出時刻T0となると、制御装置Cは、水平姿勢制御Paから遮光量調節姿勢制御Pdに切換える。これにより、夜間における、栽培施設1の保温機能や保湿機能を向上させた水平姿勢制御Paの状態から、日中における、栽培領域Grを植物の生育に適した日照度に調節するための遮光量調節姿勢制御Pdに移行する。
【0063】
太陽SNが位置(B)のとき、午前の時刻T1において、制御装置Cは、遮光量調節姿勢制御Pdを行う(
図8参照)。これにより、栽培領域Grを植物の生育に適した日照度に調節できる。
【0064】
太陽SNが位置(C)のとき、正午の時刻T2となると、制御装置Cは、
図5(b)~
図5(e)に示される手順によって、回動羽根部材a1の接触回避動作を行うよう制御する。これは、正午(南中時)を境として、太陽光Lの入射方向が東側から西側に入れ替わるため、太陽光パネルPを回動制御する必要があるためである。これにより、正午(南中時)の前後において遮光量調節姿勢制御Pdを好適に継続できる。
【0065】
太陽SNが位置(D)のとき、午前の時刻T3において、制御装置Cは、遮光量調節姿勢制御Pdを継続する(
図9参照)。その後、太陽SNが位置(D)のとき、日の入り時刻T4となると、制御装置Cは、水平姿勢制御Paに切換える。これにより、夜間においては、ルーバー装置Aが気流を遮断し、栽培施設1の保温機能や保湿機能を向上させることができる。
【0066】
また、制御装置Cは、水平姿勢制御Paに切換える際、同時に、
図6(b)~
図6(e)に示される手順によって、回動羽根部材a1の接触回避動作を行うよう制御する。これは、翌日の日の出時刻T0において、遮光量調節姿勢制御Pdに切換える際、太陽光Lの入射方向が西側から東側に入れ替わっているためである。これにより、円滑に遮光量調節姿勢制御Pdを開始できる。
【0067】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0068】
図12は、太陽光パネルPが略水平姿勢の状態における複数の回動羽根部材a1の別の実施例を示す概略右側面図である。
図12に示されるように、回動羽根部材a1´の太陽光パネルP´に緩やかな曲率を持たせてもよい。これにより、太陽光パネルP´の遮光面の面積を増加させて、発電量を増加できるとともに、シール部a18が隣の回動羽根部材a1´の上端で係止されて、より隙間が生じにくい構造とすることができる。さらに、回動羽根部材a1´の両端を折り曲げて上方へと突出させた返し部を設けてもよい。これにより、太陽光パネルP´によってより遮光しやすく発電しやすい構造とすることができる。
【0069】
また、上記実施形態において、測定装置Dが測定した照度に基づいて、回動羽根部材a1の太陽光パネルPを回動制御する構成を示したが、これに限らず、日射量に基づいて太陽光パネルPを回動制御してもよい。また、基準照度W1と実照度W2の大小比較により、照度の過不足を判断して、太陽光パネルPを回動制御する構成を示したが、これらを積算した値である積算基準照度W1´と積算実照度W2の大小を比較して、照度の過不足判断し、太陽光パネルPを回動制御するよう構成してもよい。日射量についても同様である。
【0070】
また、上記実施形態において、測定装置Dが測定した照度に基づいて、回動羽根部材a1の太陽光パネルPを回動制御する構成を示したが、これに限らず、測定装置Dが測定した温度、湿度、二酸化炭素濃度等に基づいて回動羽根部材a1の太陽光パネルPを回動制御するよう構成できる。この場合、温度、湿度、二酸化炭素濃度等について、
図10で示した基準照度W1に代わり、基準とする値を時系列で記憶部C2に記憶させておき、測定装置Dが測定した実際の温度、湿度、二酸化炭素濃度等の測定値と大小を比較して、回動羽根部材a1の太陽光パネルPを回動制御するよう構成できる。
【0071】
例えば、太陽光パネルPの回動制御により、回動羽根部材a1同士の隙間が大きいほど、ルーバー装置Aの通気性は上昇し、回動羽根部材a1同士の隙間が小さいほど、ルーバー装置Aの通気性は低下するため、記憶部C2に記憶された基準とする値>測定装置Dが測定した実際の温度、湿度、二酸化炭素濃度等の測定値のとき、栽培領域Grの温度、湿度、二酸化炭素濃度等を上昇させるため、回動羽根部材a1同士の隙間を狭めて通気性を低下させ、また、記憶部C2に記憶された基準とする値<測定装置Dが測定した実際の温度、湿度、二酸化炭素濃度等の測定値のとき、栽培領域Grの温度、湿度、二酸化炭素濃度等を低下させるため、回動羽根部材a1同士の隙間を狭めて通気性を上昇させるよう構成できる。
【0072】
また、このとき、栽培領域Grの温度、湿度、二酸化炭素濃度等を低下させる際に、栽培領域Grの下方から上方へと送風可能なファンを設けて、送風するよう構成してもよい。また、栽培領域Grの温度、湿度、二酸化炭素濃度等を上昇させる際に、これらの数値を上昇させる各種機器を設けて(例えば、二酸化炭素供給装置など)、これらの数値の上昇を促進させてもよい。
【0073】
また、制御装置Cは、遮光量調節姿勢制御Pd中に、温度、湿度、二酸化炭素濃度等の測定値が所定の閾値を越えたら、栽培領域Gr内の温度、湿度、二酸化炭素濃度等の数値を低下させ植物Gの生育に適した栽培環境とするために、温度、湿度、二酸化炭素濃度等の測定値が所定の閾値を下回るまで、最大遮光姿勢制御Pbに切換えて、栽培施設1の通気性を向上させるよう構成してもよい。このように、温度、湿度、二酸化炭素濃度等の値を、ルーバー装置Aの制御により調節することで、栽培施設1全体のランニングコストを抑えたり、植物Gの生育速度をコントロールして出荷時期を調節することができる。
【0074】
また、栽培領域Grを複数の区画に区切り、区画ごとにルーバー装置A及び測定装置Dを配設して、制御装置Cを、区画ごとに細かく照度等を制御するよう構成してもよい。
【0075】
また、シール部a18の形状は、表面の断面形状が略U字状の構成を示したが、これに限られず、気流を良好に遮断するために、表面の断面形状が矩形状、あるいは、ひだ状、へら状など、種々の形状を採用することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、栽培施設1がハウジングHを備えている例について説明した。しかしながら、栽培施設1に関し、ハウジングHは必須の構成ではなく、例えば、露地栽培のように、栽培領域Grが外部から遮断されていない場合についても、本発明に係るルーバー装置Aを適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 栽培施設
A ルーバー装置
a1 回動羽根部材
a11 第1の回動羽根部材
a12 第2の回動羽根部材
a13 回転軸
a14 巻取ワイヤー
a15 座板
a16 支柱
a17 架台
a18 シール部
a19 蓄電池
a20 回動機構
a21 ウォーム歯車
a22 駆動ギア
a23 巻取軸
ax 駆動軸
C 制御装置
C1 情報処理手段
C2 記憶手段
D 測定装置
G 植物
Gr 栽培領域
H ハウジング
h1 支持フレーム
h2 横桟
L 太陽光
M モータ
P 太陽光パネル
SN 太陽