(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】LED発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20240226BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240226BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240226BHJP
F21Y 105/10 20160101ALN20240226BHJP
【FI】
H01L33/48
F21S2/00 100
F21Y115:10
F21Y105:10
(21)【出願番号】P 2020084572
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100197996
【氏名又は名称】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】大森 祐治
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123465(JP,A)
【文献】特開2018-041843(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板と、前記実装基板の上面を占める円形の発光部と、前記発光部に実装された複数のLEDダイと、
前記円形の発光部を囲むダムと、を備えたLED発光装置において、
前記
複数のLEDダイは、直列接続して第1LED列及び第2LED列を構成し、
前記第1LED列はU字状に配列
され、配列途中に第1中継配線を含み、
前記第2LED列は、前記第1LED列からなるU字状の配列の内側の領域でU字状に配列
され、配列途中に第2中継配線を含み、
前記第1中継配線と前記第2中継配線は前記円形の発光部の周辺部に形成され、且つ前記ダムの下に配置されていることを特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
前記
複数のLEDダイを互いに接続する
第1のワイヤを備え、
前記
複数のLEDダイと前記
第1のワイヤは、一直線状に配列していることを特徴とする請求項1に記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記発光部の一方の周辺部にアノード配線とカソード配線を備え、
前記発光部の他方の周辺部に
前記第1中継配線と前記第2中継配線を備え、
前記第1LED列及び前記第2LED列の一方の端部を構成する前記
複数のLEDダイのアノードは、それぞれ前記アノード配線と接続し、
前記第1LED列及び前記第2LED列の他方の端部を構成する前記
複数のLEDダイのカソードは、それぞれ前記カソード配線と接続していることを特徴とする請求項1
又は2に記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記カソード配線は、前記アノード配線と並列配置された部分が分断形成され、それぞれを第2のワイヤで接続している請求項3に記載のLED発光装置。
【請求項5】
前記カソード配線及び前記第2のワイヤが前記ダムに覆われている請求項4に記載のLED発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形の発光部に多数のLEDダイを実装したLED発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導率が高く平板状の実装基板を備え、この実装基板の上面に円形の発光部が設けられたCOBタイプのLED発光装置が知られている。通常、この発光部では、多数のLEDダイが実装され、封止材がLEDダイ全体を一体的に被覆している。このとき、LEDダイは、複数の直列回路(以下「LED列」という。)を構成し、さらに、このLED列は、並列接続する。なお、「COB」とは、「Chip on Board」の略称である。
【0003】
例えば、特許文献1の
図3には、セラミックからなる実装基板に円形の発光部を備えたLED発光装置が示されている。発光部では、複数のLEDダイが直並列回路を構成している。そこで、特許文献1の
図3を、本願に添付した図面の
図3に引用し、
図3に示されたLED発光装置110(発光装置)について説明する。なお、()には、特許文献1における用語を示す。引用にあたり、符号を変更した。さらに、ダムを示す引き出し線と符号を追加した。
【0004】
図3は、従来例として示すLED発光装置110の内部構造を示す平面図である。
図3に示すように、LED発光装置110は、実装基板111(基板)上に円環状のダム115が形成されている。ダム115の内側の領域は発光部となり、この発光部に多数のLEDダイ112(LEDチップ)が実装されている。さらに、この発光部では、図示していない封止材(封止部材)が充填され、この封止材が全てのLEDダイ112を一体的に被覆している。また、実装基板111上には、電極116a及び電極116aに接続する配線116、並びに電極116b及び電極116bに接続する配線116が形成されている。電極116aに接続する配線116の一部分は、ダム115の一方の部分(図の左上隅側の部分)に覆われている。同様に、電極116bに接続する配線116の一部分は、ダム115の他方の部分(図の右下隅側の部分)に覆われている。
【0005】
また、
図3に示すように、発光部に含まれる60個のLEDダイ112は、12個ずつ直列接続して5本のLED列を構成し、さらにこのLED列が並列接続している。すなわち、各LED列の一方の端部のLEDダイ112は、電極116aに接続する配線116と接続し、他方の端部のLEDダイは、電極116bに接続する配線116と接続している。なお、図の上側と下側のLED列は、9個のLEDダイ112からなる部分LED列と3個のLEDダイからなる部分LEDに分解され、これらを中継配線で接続することにより、12個のLEDダイからなるLED列を構成している。
【0006】
なお、
図3に示されたLED発光装置110は、ダム115から封止材が染み出すことがないように、Rで示す領域にバッファ層114を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
円形の発光部を均一に発光させるには、発光部においてLEDダイを均等に配置するこ
とが望まれる。つまり、発光領域の中心線(
図3ではIV-IV線が相当する。)から離れるにしたがって、中心線と平行な配列に含まれるLEDダイの数が減少すると良い。しかしながら、LED発光装置110では、中心線に沿うLEDダイ112の配列と、これに隣接する2本のLEDダイ112の配列は、共に12個のLEDダイ112を含んでいる。すなわち、LED発光装置110は、中心線近傍でLEDダイ112の実装密度が高くなり強く発光する。このため、LED発光装置110は、均一な発光を達成できないという課題を有する。
【0009】
また、一般に、LED発光装置は、使用できる電源の電圧に合わせ、LED列に含まれるLEDダイの直列段数を調整する。前述のように、LED発光装置110では、直列段数が12段である。しかしながら、LED列の直列段数を維持したままLED列の数を減らして発光部を小型化しようとした場合、LED発光装置110には、中心線近傍でLEDダイ112が密集するか又は実装不能となる、という課題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、円形の発光部に多数のLEDダイが実装されたLED発光装置において、適正な直列段数を維持しながら均一な発光が得られるLED発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のLED発光装置は、実装基板と、前記実装基板の上面を占める円形の発光部と、前記発光部に実装された複数のLEDダイとを備えたLED発光装置において、前記LEDダイは、直列接続して第1LED列及び第2LED列を構成し、前記第1LED列は、U字状に配列し、前記第2LED列は、前記第1LED列からなるU字状の配列の内側の領域でU字状に配列していることを特徴とする。
【0012】
U字状に配列する第1LED列には、発光部の中心線に近い配列と、中心線から遠い配列が含まれる。同様に、U字状に配列する第2LED列には、発光部の中心線に近い配列と、中心線から遠い配列が含まれる。円形の発光領域において、第1LED列と第2LED列の直列段数を等しくし、第1LED列を構成する配列の内側の領域に第2LED列を構成する配列を配するとき、第1LED列を構成する中心線に近い側の配列、第2LED列を構成する中心線に近い側の配列、第2LED列を構成する中心線から遠い側の配列、第1LED列を構成する中心線から遠い側の配列、のそれぞれに含まれるLEDダイの数は、この順番で減少する。
【0013】
前記LEDダイ同士を接続するワイヤを備え、前記LEDダイと前記ワイヤは、一直線状に配列していても良い。
【0014】
前記第1LED列は、配列中に中継配線が含まれていても良い。
【0015】
前記発光部を囲むダムを備え、前記中継配線は、少なくとも一部分が前記ダムで覆われていても良い。
【0016】
前記発光部の一方の周辺部にアノード配線とカソード配線を備え、前記発光部の他方の周辺部に中継配線を備え、前記第1LED列及び前記第2LED列の一方の端部を構成する前記LEDダイのアノードは、それぞれ前記アノード配線と接続し、前記第1LED列及び前記第2LED列の他方の端部を構成する前記LEDダイのカソードは、それぞれ前記カソード配線と接続していても良い。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のLED発光装置は、円形の発光部において、第1LED列から
なるU字状の配列の内側で第2LED列がU字状に配列しているため、適正な直列段数を維持しながら均一に発光することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態として示すLED発光装置の斜視図である。
【
図3】従来例として示すLED発光装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1及び
図2を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。説明のため部材の縮尺は適宜変更している。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態として示すLED発光装置10の斜視図である。
図20に示すように、LED発光装置10は、実装基板11と、実装基板11の上面を占める円形の発光部12と、発光部12を囲むダム15とを備えている。実装基板11は、略正方形であり、対向する2つの角部に切り欠き11aが設けられ、他の対抗する2つの角部に電源電極16a、16bが形成されている。ダム15で囲まれた発光部12には、封止材12aが充填されている。
【0021】
実装基板11は、ベース材がアルミナからなる白色のセラミクスであり、上面に、Cu上にNi、Auを積層し、パターニングされた電源電極16a、16b等の金属膜を備えている。封止材12aは、YAGなどの蛍光体を含有したシリコーン樹脂である。ダム15は、酸化チタンの微粒子を混練した白色のシリコーン樹脂からなり、太さが0.7~1.3mm、高さが0.5~0.8mmである。
【0022】
図2は、LED発光装置10の内部構造を示す平面図である。なお、
図2では、内部構造を分かりやすくするため、
図1に示した封止材12a、ダム15を取り除いて描いている(図中、ダム15が占める領域を点線で示した。)。また、発光部12の中心線(AA´線)を書き加えている。
【0023】
図2に示すように、実装基板11の上面には、パターニングされた金属膜として、電源電極16a、16bに加え、アノード配線17a、カソード配線17b、中継配線17c、17d、17e、17fが形成されている。アノード配線17aは、電源電極16aに接続するとともに、発光部の一方の周辺部(図の上側)に形成された部分がダム15に覆われている。カソード配線17bは、電源電極16bに接続するとともに、アノード配線17aのダム15に覆われている部分と並列配置されている部分と、ダム15に沿って電極16bの近傍まで延長された部分を有している。なお、カソード配線17bのこれらの部分はダム15に覆われている。また、カソード配線17bのアノード配線17aと並列配置された部分は、4つに分断され、それぞれワイヤ14で接続している。中継配線17c~17fは、発光部12の他方の周辺部(図の下側)に形成されている。なお、中継配線17fは、ダム15下の金属膜の分布を均一化するため一方の周辺部(図の上側)まで延長されている。
【0024】
発光部12には、48個のLEDダイ13が実装されている。LEDダイ13は、平面サイズが0.6mm×0.6mm、厚さが数100μm、表面に発光層を備える青色発光ダイオードである。発光部12において、LEDダイ13は、発光部12の中心線AA´と平行に8列で直線的に配列している。すなわち、中心線AA´から数えて1番目の配列21、2番目の配列22、3番目の配列23、及び4番目の配列24は、それぞれ8個、7個、5個、及び4個のLEDダイ13で構成されている。なお、発光部12では、中心
線AA´に対し、LEDダイ13の配置及びLEDダイ13同士の接続が対象であり、回路も等しいので、特に断らない限り、
図2の左半分だけで説明を進める。また、各LEDダイ13は、図の左右に2分する中心線(図示せず)上にアノードとカソードを備えており、各配列21~24においてLEDダイ13同士がワイヤ14で直列接続されている。この結果、各配列21~24において、LEDダイ13とワイヤ14は、一直線状に配列している。
【0025】
図2の左半分の領域において、配列21と配列24が1LED列31を構成する。同様に、配列22と配列23が第2LED列32を構成する。第1LED列31及び第2LED列32では、それぞれ12個のLEDダイ13が直列接続している。第1LED列31は、配列21と配列24を中継配線17cで接続することによりU字状の配列を構成する。同様に、第2LED列32は、配列22と配列23を中継配線17dで接続することよりU字状の配列を構成する。第2LED列32は、第1LED列31からなるU字状の配列の内側の領域に配置されている。
【0026】
第1LED列31では、配列21の上端部のLEDダイ13のカソード及び配列24の上端部のLEDダイ13のアノードが、ワイヤ14によりそれぞれカソード配線17b及びアノード配線17aと接続している。同様に、第2LED列32では、配列22の上端部のLEDダイ13のカソード及び配列23の上端部のLEDダイ13のアノードが、ワイヤ14によりそれぞれカソード配線17b及びアノード配線17aと接続している。すなわち、第1LED列31と第2LED列32は、並列接続している。なお、電源電極16a及び電源電極16bは、それぞれ+側電極及び-側電極となる。
【0027】
以上のように、第1LED列31と第2LED列32は、円形の発光部12において、それぞれの直列段数が等しく、中心線AA´から離れるにしたがって、配列21~24に含まるLEDダイ13の個数が減少する。この結果、発光部12において、LEDダイ13が均等に配置され、発光が均一化する。すなわち、LED発光装置10は、円形の発光部12に多数のLEDダイ13を実装しながら、適正な直列段数を維持しながら均一な発光を得ることが可能となる。
【0028】
なお、LED発光装置10では、各配列21~24においてLEDダイ13とワイヤ14が一直線状に配列していた。本発明のLED発光装置では、必ずしもLEDダイ又はワイヤを一直線状に配列する必要はない。つまり、多少斜行する部分があっても良い。しかしながら、LED発光装置10のように、LEDダイ13とワイヤ14とを一直線状に配列することで、ダイボンディングやワイヤボンディングの条件が簡単化し製造しやすくなるのに加え、ワイヤ14の断線が減り信頼性が向上する。
【0029】
また、LED発光装置10では、第1LED列31及び第2LED列32に中継配線17c、17dが含まれていた。本発明のLED発光装置では、必ずしも中継配線を使用しなくても良い。例えば、第1LED列及び第2LED列は、部分的な配列同士(例えば、
図2の配列22と配列23同士)を中継配線の代わりにワイヤで接続しても良い。しかしながら、LED発光装置10のように中継配線17c~17fを使用すると、ワイヤ14を短くでき、製造しやすくなる上、信頼性が向上する。また、中継配線17c~17fをダム15の下に配することは、発光部12に暗部を作らないようにでき、発光の均一性及び効率向上に寄与する。
【符号の説明】
【0030】
10…LED発光装置、
11…実装基板、
11a…切り欠き、
12…発光部、
12a…封止材、
13…LEDダイ、
14…ワイヤ、
15…ダム、
16a、16b…電源電極、
17a…アノード配線、
17b…カソード配線、
17c…中継配線、
17e~17f…中継配線、
21~24…配列、
31…第1LED列、
32…第2LED列。