(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】中空タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/76 20060101AFI20240226BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B29C49/76
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2020088527
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒木 秀樹
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-187901(JP,A)
【文献】特開平01-226555(JP,A)
【文献】特開2000-071321(JP,A)
【文献】国際公開第2010/016157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空タンクの製造方法であって、
前記中空タンクは、タンク本体と外筒と内筒とを有し、
前記外筒は、前記タンク本体からタンクの外側に向かって立設され、
前記内筒は、前記タンク本体からタンクの内側に向かって立設され、
前記外筒と前記内筒は1つの連続した筒状に設けられて、前記外筒と前記内筒を通じてタンク本体の内部空間と外部空間とが連通しており、
前記中空タンクの製造方法は、
前記タンク本体の外周面と前記外筒の外周面を形成可能なブロー成型用金型、および、前記外筒の内周面と前記内筒の内周面とを形成可能なマンドレルを準備する第1工程、
前記金型を型開きして、開いた金型の間にパリソンを押し出す第2工程、
前記金型を閉じて、前記パリソンを前記金型内に配置する第3工程、
第3工程の後に、
前記外筒が形成される金型の部位に前記マンドレルを挿入し、
前記マンドレルの挿入により、パリソンを金型内周面に押し付けて前記外筒を形成するとともに、
形成されつつあるタンク本体の内側に
、前記外筒が形成されるべき部位に存在していたパリソンの一部を押し込んで、前記内筒を前記マンドレルの
先端部の外周面に密着するように形成する第4工程、
パリソンの内側に空気を送り込んでパリソンを前記金型の内周面に密着させタンク本体をブロー成型する第5工程、
第5工程に引き続き、パリソンを冷却し、その後、前記金型を型開きして、前記タンク本体と前記外筒と前記内筒とを、一体成型された状態で取り出す第6工程、
を含む、
中空タンクの製造方法。
【請求項2】
第4工程において、前記内筒を、タンク本体内側の内筒端部が解放された形状に形成する
請求項1に記載の中空タンクの製造方法。
【請求項3】
さらに、第3工程と第4工程の間に、前記外筒を形成すべき部分のパリソンの余剰部分を金型の外側で除去する第7工程を含む、
請求項1に記載の中空タンクの製造方法。
【請求項4】
前記外筒の外周面には、前記金型により突起または突条が形成される、
請求項1に記載の中空タンクの製造方法。
【請求項5】
前記中空タンクは、自動車の内燃機関の水冷システムの冷却液を貯蔵するためのタンクであり、
前記内筒のタンク本体内側の端部が解放された穴の直径が、前記外筒の内周面の直径よりも小さくされる、
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の中空タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空タンクの製造方法に関する。特に、タンク内部に液体を貯蔵する中空タンクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンク内部に液体を貯蔵する中空タンクは、多彩な用途に使用されている。例えば、自動車等の内燃機関の冷却システムの冷却液を貯蔵するために、いわゆるリザーバタンクとして、中空のタンクが使用される。こうした中空タンクでは、通常、液体を注入するための注入口が設けられることが多いが、中空タンク内の液体が揺動すると、液体が注入口に達してしまい、注入口に設けられた空気穴からの液漏れ等の不具合を生ずるおそれがある。
【0003】
こうした液漏れ現象を抑制するために、中空タンク内部に液漏れ防止構造が設けられることがある。
例えば、特許文献1には、筒状の液漏れ防止部材が注入口の内側に延設一体化されたリザーバタンクが開示され、かかるリザーバタンクが、筒状の液漏れ防止部材をインサート部材とした、いわゆるインサートブロー成型により製造されることが開示されている。当該リザーバタンクによれば、液漏れのおそれが抑制され、リザーバタンクのスペース効率が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開番号WO2010/016157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のリザーバタンクは、いわゆるインサートブロー成型により製造されるものであったため、筒状の液漏れ防止部材を別途形成しておく必要がある。また、タンクのインサートブロー成型に際し、筒状の液漏れ防止部材を、都度、金型内部の所定の位置に配置する必要がある。したがって、特許文献1のリザーバタンクの製造は、煩雑でコストが高いものとならざるを得なかった。
【0006】
本発明の目的は、製造が効率的でありながら、液漏れ抑制効果を有する内筒がタンク本体内部に一体化された中空タンクを製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、中空タンクのタンク本体と外筒をブロー成型する際に、マンドレルの挿入を利用して内筒を形成するようにすると、上記課題が解決できることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、中空タンクの製造方法であって、前記中空タンクは、タンク本体と外筒と内筒とを有し、前記外筒は、前記タンク本体からタンクの外側に向かって立設され、前記内筒は、前記タンク本体からタンクの内側に向かって立設され、前記外筒と前記内筒は1つの連続した筒状に設けられて、前記外筒と前記内筒を通じてタンク本体の内部空間と外部空間とが連通しており、前記中空タンクの製造方法は、前記タンク本体の外周面と前記外筒の外周面を形成可能なブロー成型用金型、および、前記外筒の内周面と前記内筒の内周面とを形成可能なマンドレルを準備する第1工程、前記金型を型開きして、開いた金型の間にパリソンを押し出す第2工程、前記金型を閉じて、前記パリソンを前記金型内に配置する第3工程、第3工程の後に、前記外筒が形成される金型の部位に前記マンドレルを挿入し、前記マンドレルの挿入により、パリソンを金型内周面に押し付けて前記外筒を形成するとともに、形成されつつあるタンク本体の内側に、前記外筒が形成されるべき部位に存在していたパリソンの一部を押し込んで、前記内筒を前記マンドレルの先端部の外周面に密着するように形成する第4工程、パリソンの内側に空気を送り込んでパリソンを前記金型の内周面に密着させタンク本体をブロー成型する第5工程、第5工程に引き続き、パリソンを冷却し、その後、前記金型を型開きして、前記タンク本体と前記外筒と前記内筒とを、一体成型された状態で取り出す第6工程、を含む、中空タンクの製造方法である(第1発明)。
【0009】
第1発明において、好ましくは、第4工程において、前記内筒を、タンク本体内側の内筒端部が解放された形状に形成する(第2発明)。また、第1発明において、好ましくは、さらに、第3工程と第4工程の間に、前記外筒を形成すべき部分のパリソンの余剰部分を
金型の外側で除去する第7工程を含む(第3発明)。また、第1発明において、好ましくは、前記外筒の外周面には、前記金型により突起または突条が形成される(第4発明)。また、第1発明ないし第4発明のいずれかにおいて、好ましくは、前記中空タンクは、自動車の内燃機関の水冷システムの冷却液を貯蔵するためのタンクであり、前記内筒のタンク本体内側の端部が解放された穴の直径が、前記外筒の内周面の直径よりも小さくされる(第5発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の中空タンクの製造方法(第1発明)によれば、製造が効率的でありながら、液漏れ抑制効果を有する内筒がタンク本体内部に一体化された中空タンクを製造できるという効果が得られる。
【0011】
さらに、第2発明の製造方法によれば、内筒の端部を解放させる穴を追加工する必要がないので、製造の効率性がより高められる。また、第3発明の製造方法によれば、内筒端部の解放穴や内筒の形状をより正確なものとできる。また、第4発明の製造方法によれば、外筒の形状が正確になり、製造品質が高められる。また、第5発明の製造方法によれば、自動車の水冷システムの冷却液を貯蔵するタンクにおける液漏れの抑制効果がより高められ、さらに、中空タンクの内筒を長く形成しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の製造方法によって製造された中空タンクの使用形態および、中空タンクの形状を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の製造方法に使用されるブロー成型用金型を模式的に示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の製造方法に使用されるマンドレルの構造を示す一部断面図である。
【
図4】第1実施形態の製造方法に含まれる工程の一部を示す図である。
【
図5】第1実施形態の製造方法に含まれる工程の一部を示す図である。
【
図6】第1実施形態の製造方法に含まれる工程の一部を示す図である。
【
図7】第1実施形態の製造方法に含まれる工程の一部を示す図である。
【
図8】第1実施形態の製造方法に含まれる工程の一部を示す図である。
【
図9】第1実施形態の製造方法に含まれる工程の一部を示す図である。
【
図10】他の実施形態の製造方法に使用されるマンドレルの形状、および成形される中空タンクの形状を模式的に示す断面図である。
【
図11】さらに他の実施形態の製造方法に使用されるマンドレルの形状、および成形される中空タンクの形状を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、リザーバタンクとして使用される中空タンクおよびその製造方法を例として、発明の実施形態について説明する。このリザーバタンクは、例えば、自動車の内燃機関の水冷システムに接続されて、水冷システムにおける予備的な冷却液を貯蔵する用途に使用される。しかしながら、発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。すなわち、中空タンクの具体的な用途は別の用途であってもよい。
【0014】
図1には、後述する第1実施形態の製造方法により製造された中空タンクが、自動車の内燃機関の水冷システムに接続されて、内部に冷却液Lを貯蔵している様子が示されている。中空タンク(リザーバタンク)1には、キャップ2が取り付けられて、キャップ2を貫通するようにチューブ3が取り付けられている。チューブ3は水冷システム(図示せず)に接続されていて、チューブ3によって、タンク内部の冷却液(典型的にはクーラント)Lが、中空タンク1の内部と冷却システムとの間を通流可能になっている。
【0015】
キャップ2は、中空タンク1の外筒12に設けられたねじ部121に螺合するように、タンク1に取り付けられている。キャップ2には、タンクの内部空間INと外部空間EXの間での空気の通流を可能とする空気穴21が設けられている。空気穴21はタンクの外筒12に設けられていてもよい。なお、
図1に示したようなキャップ2やチューブ3等の具体的構成は、他の構成であってもよく、その材質等も特に限定されない。
【0016】
中空タンク1は、タンク本体11と外筒12と内筒13とを有する。タンク1に取り付けステーやボス、グロメットなどが設けられていてもよい。タンク本体11は中空に形成されていて、タンク壁の一部にタンク内外を貫通する穴が設けられている。この穴の部分に、外筒12および内筒13が一体化されている。
【0017】
外筒12は、タンク本体11からタンクの外側に向かって立設され、すなわち、タンク壁からタンクの外側に向かうように設けられている。外筒12は、典型的には円筒状に設けられる。外筒は円錐面状や角筒状に設けられてもよい。
内筒13は、タンク本体11からタンクの内側に向かって立設され、すなわち、タンク壁からタンクの内側に向かうように設けられている。内筒13は、円筒状に設けられてもよい。内筒13は、本実施形態のように円錐面状に設けられていてもよく、あるいは角錘面状や角筒状に設けられてもよい。
【0018】
外筒12と内筒13は1つの連続した筒状となるように設けられている。外筒12と内筒13の間に径方向の段差が生じていてもよい。そして、外筒12と内筒13を通じてタンク本体の内部空間INと外部空間EXとが連通している。すなわち、外筒12のタンク外側の端部12aは、解放されている一方で、外筒12のタンク内側の端部12bは、タンク本体11のタンク壁の貫通穴の周囲に接続されている。また、内筒13のタンク外側の端部13bは、タンク本体11のタンク壁の貫通穴の周囲に接続されている一方で、内筒13のタンク内側の端部13aは、解放されて穴状になっている。
【0019】
本実施形態のように、外筒12の内周面と内筒13の内周面とが滑らかにつながるように、外筒12と内筒13が設けられることが好ましい。この場合、あたかも一本の筒がタンク壁を貫通したように、外筒12と内筒13とがタンク本体11に一体化される。
【0020】
本実施形態のように、中空タンクがリザーバタンクである場合には、外筒12と内筒13を通じて、冷却液Lをタンク本体11の内部に注入することができる。タンク本体11は、必要に応じて、他の管路や接続部を有していてもよい。
【0021】
必須ではないが、内筒13のタンク内側の端部13aが解放されて穴状になっている部分の穴の直径d1(
図9参照)が、外筒の内周面の直径d2(
図9参照)よりも小さくされていることが好ましい。
【0022】
また、必須ではないが、外筒12の外周面には、突起または突条が形成されていることが好ましい。本実施形態では、らせん状の突条としてねじ部121が形成されている。突条はらせん状であってもよいし、リング状であってもよい。また、周方向に連続した突条であってもよいが、周方向に断続的に設けられた突起の列であってもよい。
【0023】
中空タンク1は、ブロー成型可能な熱可塑性合成樹脂により形成されている。ブロー成型可能な熱可塑性合成樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などが例示される。ブロー成型可能であれば、発泡樹脂により中空タンク1を形成してもよい。
【0024】
上記中空タンク1の製造方法について説明する。中空タンク1はブロー成型を利用して製造される。以下、中空タンク1を製造する一連の工程について順次説明する。
【0025】
(第1工程)
ブロー成型に使用するブロー成型用金型とマンドレルを準備する。
図2に示すように、タンク本体11の外周面と外筒12(およびねじ部121)の外周面を形成可能なキャビティを有するブロー成型用金型D1、D2を準備する。
図2には、左右方向に型開き、型閉じ動作可能な金型D1,D2を金型が開いた状態で示している。なお、金型の具体的な開閉機構や冷却回路、パリソンの食い切り部などの詳細形状は、
図2では省略しているが、これらは公知の金型技術によればよい。
【0026】
マンドレルM1の外周面が、外筒12の内周面と内筒13の内周面とを形成可能なように、マンドレルM1を準備する。マンドレルM1は、金型D1,D2を型閉じした際に、外筒が形成される部位に対して進退可能となるように、金型D1,D2に対し上下方向に可動的に設けられる。
図2では、マンドレルM1の支持構造や可動構造、アクチュエータなどの詳細構造は省略しているが、これらは公知の金型技術によればよい。
【0027】
図3にマンドレルM1の先端部の構造の例を一部断面図で示す。マンドレルM1は円柱状に形成されている。本実施形態のように、マンドレルM1の先端部(MS1)が円錐状に形成されていると、形成される内筒の端部の穴の径を小さくすることができ、好ましい。マンドレルの形状は、後述するような他の形状であってもよい。好ましくは、本実施形態のように、空気を吹き込み可能な噴射孔APが、マンドレルM1の内部に設けられていてもよい。噴射孔APにより、ブロー成型の際の空気をマンドレルM1の先端から吹き込むようにすることができる。また、マンドレルM1に必要に応じ冷却回路を設けてもよい。
【0028】
(第2工程)
準備した金型D1、D2をブロー成型機に設置し、
図4に示すように、金型D1、D2を型開きして、開いた金型の間に、原材料の熱可塑性樹脂を加熱したパリソンPを半溶融状態で押し出す。パリソンPは、円筒状であってもよいし、対向する2枚のシート状に押し出されるものであってもよい。押し出されるパリソンPの下部をピンチして閉じておくと、プリブロー等が行いやすく、好ましい。
【0029】
(第3工程)
第2工程に引き続き、
図5に示すように、金型D1、D2を閉じて、パリソンPを金型D1,D2のキャビティ内に配置する。この段階でプリブローをかけることが好ましい。金型D1,D2に設けられた食い切り部により、パリソンPの一部を挟み込むようにしてもよい。必須ではないが、金型D1,D2が外筒12を形成する部分に食い切り部を設けてパリソンPを挟み込むことが好ましい。
図5においては、図の紙面手前側と紙面奥側の位置で、外筒12を形成する部分の金型が食い切り部となってパリソンPを挟み込んでいる。
【0030】
(第4工程)
第3工程の後に、マンドレルM1を挿入し、内筒13をマンドレルM1の外周に形成する第4工程を行う。
図6に示すように、所定の位置に配置したマンドレルM1を、外筒12が形成される金型の部位に挿入する。この時、マンドレルM1の外周面と、金型D1,D2の外筒形成部の内周面D12、D22との間に、パリソンPが挟み込まれるように、マンドレルM1が挿入される。
マンドレルM1の挿入により、パリソンPは金型の外筒形成部の内周面D12、D22に押し付けられて、外筒12が形成される。
【0031】
また、マンドレルM1の挿入に伴い、
図7に示すように、外筒12が形成されるべき部位に存在していたパリソンPの一部PXが、形成されつつあるタンク本体11の内側に、押し込まれる。さらにマンドレルM1が挿入されると、押し込まれたパリソンの一部PXは、マンドレルM1に引っ張られて円筒状や円錐面状に変形し、内筒13がマンドレルM1の外周に形成される。典型的にはマンドレルM1の先端部MS1の外周面に内筒13が密着するように、内筒13が形成される。(
図8)
【0032】
必須ではないが、第4工程において、内筒13のタンク本体11内側の内筒端部13aが解放され、端部に穴が開いた形状で内筒13が形成されるように、マンドレルM1の挿入が行われる。必須ではないが、このような内筒の形成がなされるよう、以下のようにマンドレルの挿入が行われることが好ましい。
【0033】
例えば、マンドレルM1の先端部MS1を円錐面状に形成しておき、この円錐部MS1により、外筒12が形成されるべき部位に存在していたパリソンPをかき分けるようにマンドレルM1を進行させ、マンドレルM1の先端がパリソンPの内部空間に達するようにすることが好ましい。あるいは、マンドレルM1の先端から空気を噴射できる噴射孔APを設けておき、マンドレルM1の挿入に際し、噴射孔APから空気を噴射させて、マンドレルの前方のパリソンを押し広げながらマンドレルM1を前進させて、マンドレルM1の先端がパリソンPの内部空間に達するようにしてもよい。あるいは、パリソンの肉厚調整などにより、マンドレルM1の挿入によってタンク本体11の内側へと押し込まれるパリソンの一部PXの量を調整し、このパリソンの一部PXの量を少なめにすることにより、マンドレルM1の先端部で、パリソンPが破れて、マンドレルM1の先端部が露出し、形成される内筒13の端部13aに解放された穴が設けられるようにすることもできる。これら手段は、単独で、もしくは組み合わせて利用できる。
【0034】
なお、第4工程において、内筒13のタンク本体11内側の内筒端部13aが閉じた形状で内筒13が形成されるように、マンドレルM1の挿入が行われてもよい。この場合は、ブロー成型の後の工程において、内筒の端部13aの部分にホールソーなどによって穴を追加工すればよい。マンドレルM1の挿入に際し、マンドレルM1で押し込まれるパリソンの量が多くなるようにしたり、挿入部のパリソンをしっかり閉じてからマンドレルを挿入したりすれば、内筒端部を閉じた状態に内筒13が形成できる。この場合、内筒13がタンク内部に張り出す高さを高くしやすくなり、液漏れ抑制の観点から好ましい。
【0035】
必須ではないが、中空タンク1の外筒12の外周面に突起または突条(121)が形成される場合には、第4工程において、ブロー成形金型D1、D2により突起または突条が形成されることが好ましい。この場合、ブロー成型金型が外筒外周面を形成する部分D12、D22に、上記突起または突条に対応する凹凸が形成されることになる。そのため、
図6ないし
図8に示すように、マンドレルM1が挿入されるにしたがって、パリソンPが、金型の凹凸に入り込んで、突起や突条(121)が形成される。すると、形成されつつある外筒12と金型D1,D2がかみ合うようになるので、マンドレルM1を押し込んでも、外筒12を形成しつつあるパリソンが内側に引き込まれにくくなる。したがって、外筒の形状がより正確になり、製造品質が高められる。
【0036】
(第7工程)
必須ではないが、上記した第3工程と第4工程の間に、外筒を形成すべき部分のパリソンの余剰部分を金型の外側で除去する工程(第7工程)を含ませることが好ましい。すなわち、
図6に示したように、型締めした金型D1,D2の外筒を形成する部分D12,D22から、金型の上側に飛び出しているパリソンPを、所定の位置(
図6では2点鎖線Cで示す)でカットして、上部の余分なパリソンを除去することが好ましい。
【0037】
金型の外側でパリソンの余剰部分を除去すると、外筒を形成すべき部分のパリソンを押し広げるようにしてマンドレルM1を挿入しやすくなる。したがって、形成される内筒13の端部13aがより確実に解放されるようになる。
(第5工程)
【0038】
第4工程と並行して、あるいは、第4工程の後に、パリソンPの内側に空気を送り込んでパリソンを金型D1,D2の内周面に密着させタンク本体11をブロー成型する第5工程を行う。本実施形態のように、マンドレルM1が空気の噴射孔APを備える場合には、マンドレルM1の先端部がパリソンの内側に達した後に、噴射孔APを利用して空気を送り込んでもよい。なお、空気の送り込みは、通常のブロー成型のように、別途用意した空気針をパリソンに貫通させて行ってもよい。
【0039】
(第6工程)
第5工程に引き続き、パリソンを冷却し、その後、金型D1,D2を型開きして、タンク本体11と外筒12と内筒13とを、一体成型された状態で取り出す、第6工程を行う。パリソンの冷却は、金型D1,D2やマンドレルM1とパリソンPの接触による冷却や、パリソン内部への冷却流体の送り込みなどにより行うことができる。金型やマンドレルを水冷することが好ましい。パリソンが冷えて形状が維持できるようになってから、金型D1,D2を型開きして、タンク本体11と外筒12と内筒13とを、一体成型された状態で取り出す。
【0040】
金型から取り出された成型体に対し、必要に応じて、バリや不要な部分をカットし、穴あけ等を行って、中空タンク1が得られる。
図9には、金型D1,D2、マンドレルM1を開いて後退させた状態として、一体に成型されたタンク本体11と外筒12と内筒13を取り出し、バリ等の余分な部分Bを取り除いた状態を模式的に示している。
【0041】
上記中空タンクやその製造方法の作用と効果について説明する。
上記中空タンク1は、タンク本体11の内側に向かって内筒13が突出するように一体に形成されているので、タンク内の冷却液Lが揺動した際の液漏れが抑制される。すなわち、液体の揺動によって、液体がタンク壁11に沿って注入口(外筒12)に達しようとしても、内側に突出する内筒13が防波堤のようになって、冷却液Lが注入口に達することが抑制される。
【0042】
また、上記中空タンクの製造方法によれば、内側に突出する内筒13を備える中空タンクを、ブロー成型法を利用して、効率的に製造することができる。従来のブロー成型法でこのような中空タンクを製造しようとすると、内筒の部分を射出成型等によりあらかじめ別部材として製造しておいたうえで、それをインサート部材として、インサートブロー成型して一体化する必要があった。一方、上記実施形態の中空タンクの製造方法では、インサート部材を別途製造したり、ブロー成型行程中に所定の位置にインサート部材を配置する必要がなく、効率的である。
【0043】
特に、第4工程において、内筒13を、タンク本体内側の内筒端部13aが解放された形状に形成すると、一連のブロー成型行程の後に、内筒端部13aに穴を追加工する必要がなくなって、中空タンクの製造が特に効率的になる。
【0044】
また、さらに、第3工程と第4工程の間に、外筒12を形成すべき部分のパリソンの余剰部分を金型D1,D2の外側で除去する第7工程を含むようにすれば、マンドレルM1によって、タンク本体11の内側に押し込まれる樹脂の量をより正確に制御できるようになって、内筒端部13aの解放穴の大きさや、内筒13の長さや形状をより正確なものとでき、製造される中空タンク1の品質が高められうる。
【0045】
また、マンドレルM1の挿入に際し、外筒12の外周面には、金型D1,D2により突起または突条(121)が形成されるようにされていれば、第4工程において外筒が形成される部分で、パリソンPと金型D1,D2とがしっかりかみ合う状態でマンドレルM1が挿入されることになるので、マンドレルM1に引っ張られて、外筒12を形成すべきパリソンが内側に引き込まれにくくなる。したがって、外筒の形状がより正確になり、中空タンク1の製造品質がより高められる。
【0046】
また、内筒13のタンク本体内側の端部13aが解放された穴の直径d1が、外筒の内周面の直径d2よりも小さくされることにより、液漏れの抑制効果がより高められる、また、マンドレルM1の挿入によりパリソンを引き延ばして内筒13を形成していく過程で、内筒先端部13aが解放された穴が小さくされていれば、当該部分のパリソンの先端部がマンドレルM1の先端に引っかかるようになるので、中空タンクの内筒13を長く形成しやすくなる。
【0047】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0048】
マンドレルの先端部の形状および形成される内筒の形状のバリエーションを
図10および
図11に示す。
図10の第2実施形態では、マンドレルM2は、大径部M21と小径部M22とがテーパ部M23で接続された、段付きシャフトのような形状となっている。このマンドレルM2が挿入されると、大径部M21により外筒12の内周面が形成されるとともに、テーパ部M23の外周に内筒13が形成される。小径部M22が設けられていることにより、マンドレルM2の挿入の際に、マンドレルの小径部M22がパリソンの隙間に入り込むように進行するので、内筒13の先端部をより確実に解放することができる。
【0049】
図11の第3実施形態では、マンドレルM3は、円柱状である。若干の抜きテーパがマンドレルM3に与えられていてもよい。このマンドレルM3が挿入されると、内筒13と外筒12とを、実質的に連続した1つの円筒のように形成することができる。
【0050】
中空タンクの具体的用途などは限定されない。タンクは液体を貯蔵するものであってもよいが、気体を貯蔵するタンクであってもよい。また、中空タンクが液体のリザーバタンクとして使用される場合であっても、リザーバタンクが組み込まれる具体的システムや用途は特に限定されず、内燃機関の冷却液のリザーバタンクのほか、ブレーキ液やオイルなどのリザーバタンクなどとしても使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上記中空タンクは、例えば、自動車の内燃機関の冷却液のリザーバタンクに使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0052】
1 中空タンク
11 タンク本体
12 外筒
13 内筒
D1,D2 ブロー成型用金型
M1 マンドレル
P パリソン