(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】水田作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 5/04 20060101AFI20240226BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20240226BHJP
F02B 65/00 20060101ALI20240226BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
B60K5/04 C
A01C11/02 311T
F02B65/00 B
F02B77/00 D
(21)【出願番号】P 2020213821
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】土岡 秀史
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013759(JP,A)
【文献】特開平10-306862(JP,A)
【文献】実開昭53-084834(JP,U)
【文献】特開2005-263046(JP,A)
【文献】特開2011-102051(JP,A)
【文献】特開2013-203086(JP,A)
【文献】特開2004-001746(JP,A)
【文献】特開昭63-270232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
F02B 65/00,77/00
A01C 11/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイールを有するエンジンと、
機体の前部に設けられ前記エンジンを支持するエンジン支持フレームと、を備え、
前記エンジン支持フレームに、前記フライホイールとの干渉を防止するための切欠部が形成され、
前記エンジンからの回転動力が入力される駆動プーリと、前記駆動プーリからの回転動力が入力される従動プーリと、前記駆動プーリと前記従動プーリとに亘って巻回されたプーリベルトと、前記エンジン支持フレームに回動可能に支持されたテンションアームに支持され前記プーリベルトに張力を付与するテンションプーリとを有し、
側面視において、前記テンションアームが前記エンジン支持フレームにおける前記フライホイールと重複しない箇所に支持され
、且つ、前記テンションアームの一部が前記フライホイールと重複する水田作業車。
【請求項2】
前記駆動プーリが、前記フライホイールに当該フライホイールと一体回転するように固定されている請求項
1に記載の水田作業車。
【請求項3】
前記切欠部は、前記フライホイールの下部輪郭に沿った形状に形成されている請求項1
又は2に記載の水田作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前部に設けられたエンジン支持フレームに、フライホイールを有するエンジンが支持されている水田作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1による水田作業車では、エンジンが、クランク軸が機体横断方向に延びる姿勢でエンジン支持フレーム(エンジン搭載フレーム)に支持されている。エンジンの走行機体左横側の部位に駆動プーリ(出力プーリ)が装備されている。駆動プーリは、走行機体横幅方向に延びる軸心周りで回転するエンジン出力軸に固定されている。駆動プーリからの回転動力は伝動ベルトを介して従動プーリに伝達され、さらに静油圧式の無段変速装置を含む変速伝動装置に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの仕様が変更されると、エンジンの形状も変わってくる。これに伴って、エンジン出力軸の位置、フライホイールの位置、さらには、エンジン出力軸と駆動プーリとの取り付け位置も変わる。その際、フライホイールの位置がエンジン支持フレームの方にずれると、エンジン支持フレームと干渉する。この干渉を避けるために、エンジン出力軸の位置を上方に移動させると、フライホイールも上方に移動し、フライホイールがボンネットと干渉する可能性がある。フライホイールがボンネットと干渉する場合は、ボンネットの形状を変更させる必要がある。
本発明の目的は、エンジン仕様が変更されても、フライホイールなどのエンジン周辺部材の位置変更ができるだけ回避される水田作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による水田作業車は、フライホイールを有するエンジンと、機体の前部に設けられ前記エンジンを支持するエンジン支持フレームとを備え、前記エンジン支持フレームに、前記フライホイールとの干渉を防止するための切欠部が形成され、前記エンジンからの回転動力が入力される駆動プーリと、前記駆動プーリからの回転動力が入力される従動プーリと、前記駆動プーリと前記従動プーリとに亘って巻回されたプーリベルトと、前記エンジン支持フレームに回動可能に支持されたテンションアームに支持され前記プーリベルトに張力を付与するテンションプーリとを有し、側面視において、前記テンションアームが前記エンジン支持フレームにおける前記フライホイールと重複しない箇所に支持され、且つ、前記テンションアームの一部が前記フライホイールと重複する。
【0006】
エンジンの仕様変更等により、フライホイールが、エンジン支持フレームと干渉するような場合でも、この構成では、エンジン支持フレームのフライホイールと干渉する部分は切欠部となっているので、エンジン出力軸を上方に移動させるような不都合は、回避される。また、エンジン支持フレームの切欠部により、フライホイールの配置自由度が大きくなり、ボンネットの形状を変更するといった不都合も回避できる。さらには、駆動プーリの位置が機体横断方向で変わることで、従動プーリの機体横断方向の位置も変わり、その結果、変速伝動装置の入力軸の長さや位置を変更しなければならない不都合も、回避できる。
【0007】
また、この構成では、テンションアームがエンジン支持フレームにおける前記フライホイールと重複しない箇所、つまり切欠部を避けた位置に支持されることでテンションアームは確実にエンジン支持フレームに取り付けられる。さらには、テンションアームの一部がフライホイールと側面視で重複するように配置されていることから、テンションアームは単純な形状でも、確実に伝動ベルトにテンションを与えることができる。
【0008】
さらに、好適な実施形態では、駆動プーリが、前記フライホイールに当該フライホイールと一体回転するように固定されている。これにより、駆動プーリを支持する専用のブラケット等が不要となり、コスト的及びスペース的に有利となる。さらに、好適な実施形態では、前記切欠部は、前記フライホイールの下部輪郭に沿った形状に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】フライホイールと駆動プーリとテンションユニットとの配置を示す側面図である。
【
図4】フライホイールと駆動プーリとテンションユニットとの配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明に係る水田作業車の実施の形態を説明する。本発明の実施例に係る水田作業車を乗用型田植機に適用した場合について説明する。
図1は、乗用型田植機の全体を示す側面図である。
図1に示すFを走行機体の「前」、Bを走行機体の「後」、水平面におけるこの前と後とに沿った方向である機体前後方向に垂直な方向を機体横断方向と定義する。
【0011】
図1に示すように、乗用型田植機は、左右一対の前車輪1及び左右一対の後車輪2が装備された走行機体を備えている。走行機体の前部にボンネット11で覆われた原動部3が設けられている。原動部3には、エンジン4が配置されている。エンジン4が出力する駆動力がミッションケース5に収容されている変速伝動装置18に入力され、この変速伝動装置18から前輪駆動ケース6及び後輪駆動ケース7に収納された車輪駆動機構に伝達されることで、左右の前車輪1及び左右の後車輪2が駆動される。走行機体には、運転部8が設けられている。運転部8には、運転座席9及びステアリングホイール10が装備されている。走行機体は、運転部8に搭乗して操縦するように乗用型に構成されている。
【0012】
走行機体の後部にリンク機構12を介して苗植付装置13が連結されている。リンク機構12に昇降シリンダ12aが装備されている。昇降シリンダ12aを伸縮操作することで、リンク機構12を走行機体に対して上下に揺動操作でき、苗植付装置13を下降作業姿勢と上昇非作業姿勢とにわたって昇降操作できる。苗植付装置13は、下降作業姿勢に操作されると、接地フロート14が圃場面に接地した状態になり、走行機体の機体横断方向に並ぶ複数の苗植付機構15による苗植付けが可能になる。苗植付装置13は、上昇非作業姿勢に操作されると、接地フロート14が圃場面から高く上昇した状態となる。
【0013】
苗植付装置13を下降作業姿勢にした状態で走行機体を走行させることで、苗植付装置13がエンジン4からの駆動力によって駆動され、複数の苗植付機構15の夫々が苗載台16から苗を取出し、取出した苗を圃場に植付けていく。
【0014】
次に、原動部3について説明する。
図2に示すように、原動部3に配置されたエンジン4は、ディーゼルエンジンであるが、エンジン4は、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンなど、その他の種類であってもよい。
【0015】
エンジン4は、クランク軸が機体横断方向に延びる状態の搭載姿勢でエンジン支持フレーム20に支持されている。エンジン4からの回転動力は、ベルト伝動機構40を介して変速伝動装置18に伝達される。ベルト伝動機構40は、駆動プーリ41と従動プーリ42とプーリベルト43とからなる。ベルト伝動機構40に代えて、チェーン伝動機構やその他の伝動機構が採用されてもよい。
【0016】
エンジン支持フレーム20は、機体前後方向に延びる左右一対の板状のメインフレーム21と、走行機体の横幅方向に延びるフロントクロスフレーム22と、機体横断方向に延びるフロント連結ビーム23とを備えている。フロントクロスフレーム22は、板金部材によって構成され、左右のメインフレーム21のそれぞれの前部を連結する。フロント連結ビーム23は、左右のメインフレーム21の前端部を連結する。
【0017】
エンジン4は、エンジン支持ユニット28を介してエンジン支持フレーム20に支持されている。エンジン支持ユニット28は緩衝材28aを有する。
【0018】
図3に示されているように、プーリベルト43の下側ベルト部分を押し上げて、プーリベルト43にテンションを与えるベルトテンション機構50が配置されている。ベルトテンション機構50は、テンションプーリ51と、テンションアーム52と、付勢機構53とからなる。テンションアーム52は、その基端部を機体横断方向に貫通している揺動軸52a周りに揺動する。揺動軸52aは、メインフレーム21に、回動可能に支持されている。テンションアーム52の自由端部にはテンションプーリ51が回転可能に取り付けられている。付勢機構53は、コイルバネを有し、テンションプーリ51をプーリベルト43の下側ベルト部分に押し付けるように、テンションアーム52の揺動を付勢する。
【0019】
図4に示されているように、エンジン4の機体横断方向で左横側の部位に、機体横断方向に延びるエンジン出力軸4aが配置されている。エンジン出力軸4aの先端部には、略円盤状のフライホイール30が、エンジン出力軸4aと同軸心で固定されている。さらに、フライホイール30の外側の側面に、ベルト伝動機構40の入力プーリとして機能する駆動プーリ41がフライホイール30と同軸心でボルト連結されている。これにより、駆動プーリ41は、フライホイール30と一体回転する。
【0020】
図3に示されているように、エンジン支持フレーム20のメインフレーム21の上縁の一部は、フライホイール30との干渉を避けるために、切欠部21aが形成されている。
切欠部21aは、フライホイール30の下部輪郭に沿って、下部輪郭からわずかに隙間をあけるように形成されている。
【0021】
ベルトテンション機構50の揺動軸52aは、切欠部21aに近接して、かつ、側面視で(
図3参照)、フライホイール30と重複しないように配置されている。テンションアーム52は、その一部が側面視で(
図3参照)メインフレーム21と切欠部21aとフライホイール30と重複するように延びている。
【0022】
変速伝動装置18は、エンジン4の後方で、ミッションケース5に収納支持されている。変速伝動装置18の走行機体左横側の部位に、変速伝動装置18の入力プーリとして機能する従動プーリ42が配置されている。この実施形態では、変速伝動装置18は、静油圧式の無段変速装置を備えている。無段変速装置は、静油圧式に限らず、コーン式の無段変速装置であってもよい。また、変速伝動装置18は、無段変速装置に限らず、ギヤ式の有段変速装置によって構成してもよい。
【0023】
図示は省略されているが、この乗用型田植機のその他の特徴を、以下に列挙する。
(1)エンジン4のエキゾーストマニフォールドの出口部を、機体横断方向に開口させて、同所から排気管が横方向に延びるように配置される。これにより、排気管の機体前後方向の構成がコンパクトになる。
(2)ボンネット11の外側から内側に向かって、バーリング形状の穴を設け、この部分をエアクリーナの吸気経路として利用する。これにより、エアクリーナの吸気経路のための専用部材が不要となる。
(3)燃料タンクからエンジン4までの燃料供給経路が、機体側面視で、極大値となるような部分を形成しないように形成される。これによりエアかみが防止される。
(4)燃料ポンプの下端位置が、機体側面視で、メインフレーム21の下端より上方となるように、配置される。これにより、機体の最低地上高さが確保しやすくなる。
【0024】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、フライホイール30をエンジン4の機体横断方向で左側に配置した例を示したが、フライホイール30をエンジン4の機体横断方向で右側に配置して、左側のメインフレーム21に切欠部21aを形成してもよい。
(2)上述した実施形態では、駆動プーリ41はフライホイール30にボルト連結されていたが、他の連結手段で連結されてもよいし、フライホイール30と駆動プーリ41とが一体構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、田植機に限らず、播種機など、各種の水田作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0026】
4 :エンジン
4a :エンジン出力軸
20 :エンジン支持フレーム
21 :メインフレーム
21a :切欠部
30 :フライホイール
40 :ベルト伝動機構
41 :駆動プーリ
42 :従動プーリ
43 :プーリベルト
50 :ベルトテンション機構
51 :テンションプーリ
52 :テンションアーム
52a :揺動軸
53 :付勢機構