(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】有歯ケーブルおよび有歯ケーブル案内装置
(51)【国際特許分類】
F16C 1/26 20060101AFI20240226BHJP
F16H 19/04 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
F16C1/26 B
F16H19/04 B
(21)【出願番号】P 2020214212
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】三枝 修平
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳史
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0314656(US,A1)
【文献】特開平08-207590(JP,A)
【文献】実開昭58-182831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/26
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有歯ケーブルを案内する湾曲した案内経路を構成する、湾曲の径方向内側に設けられた内側壁部および湾曲の径方向外側に設けられた外側壁部を有し、前記外側壁部における前記有歯ケーブルに対向する面に凹部を有するガイド部材の前記内側壁部と前記外側壁部との間を、駆動源の駆動力によって案内されつつ移動し、前記駆動力を操作対象物へ伝達する有歯ケーブルであって、
前記有歯ケーブルは、ケーブル本体と、前記ケーブル本体の先端に設けられるキャップとを備え、
前記キャップは、略円錐状の先端部と、前記先端部の基端側に設けられる略円筒状の本体部とを備え、
前記有歯ケーブルは、前記ガイド部材の前記湾曲した案内経路内において前記キャップ側から前記ケーブル本体側へ向かう方向に移動する際に、前記キャップが前記外側壁部に摺接するように移動し、
前記有歯ケーブルは、前記キャップが前記凹部の縁部に摺接する際に、前記ケーブル本体における前記キャップ側の端部領域が前記ガイド部材の前記内側壁部に当接することにより、前記キャップの先端が前記外側壁部へ近づく向きに前記キャップが揺動する角度が抑制されるように構成される、有歯ケーブル。
【請求項2】
前記キャップの前記本体部は、前記キャップの前記先端部が前記凹部の縁部に摺接する際に、前記ケーブル本体における前記キャップ側の端部領域が前記ガイド部材の前記内側壁部に当接するような長さを有する、請求項1に記載の有歯ケーブル。
【請求項3】
前記キャップの前記本体部は、前記キャップの長手方向に沿って延びる筒状部と、前記筒状部の外周面において周方向に沿って設けられ、前記筒状部の径方向外側へ突出するリング状部とを有する、請求項1に記載の有歯ケーブル。
【請求項4】
有歯ケーブルを案内する湾曲した案内経路を構成する、湾曲の径方向内側に設けられた内側壁部および湾曲の径方向外側に設けられた外側壁部を有し、前記外側壁部における前記有歯ケーブルに対向する面に凹部を有するガイド部材の前記内側壁部と前記外側壁部との間を、駆動源の駆動力によって案内されつつ移動し、前記駆動力を操作対象物へ伝達する有歯ケーブルであって、
前記有歯ケーブルは、ケーブル本体と、前記ケーブル本体の先端に設けられるキャップとを備え、
前記キャップは、略円錐状の先端部と、前記先端部の基端側に設けられる略円筒状の本体部とを備え、
前記有歯ケーブルは、前記ガイド部材の前記湾曲した案内経路内において前記キャップ側から前記ケーブル本体側へ向かう方向に移動する際に、前記キャップが前記外側壁部に摺接するように移動し、
前記キャップの前記先端部の外周面は、径方向外側に膨らんだ湾曲形状を有し、
前記有歯ケーブルは、前記キャップの前記先端部が前記凹部の縁部に摺接することにより、前記キャップの先端が前記外側壁部へ近づく向きに前記キャップが揺動する速度が抑制される、有歯ケーブル。
【請求項5】
湾曲した案内経路を有するガイド部材と、前記ガイド部材により案内される請求項1~4のいずれか1項に記載の有歯ケーブルとを備える有歯ケーブル案内装置であって、
前記湾曲した案内経路は、湾曲の径方向内側に位置する内側壁部と、湾曲の径方向外側に位置する外側壁部とを有し、
前記外側壁部は、前記有歯ケーブルに対向する面に凹部を有している、有歯ケーブル案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有歯ケーブルおよび有歯ケーブル案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば車両のサンルーフ等の操作対象を操作するために、駆動源の駆動力を操作対象に伝達する駆動ケーブルが用いられている(たとえば、特許文献1を参照)。駆動ケーブルには、駆動源のギアと噛み合う歯を有する有歯ケーブルがある。有歯ケーブルの先端にはキャップが設けられている。このキャップは、円錐状の先端部と、この先端部の基端側に設けられた円筒状の本体部とを備えている。有歯ケーブルを案内するガイド部材は、製造上の理由により、有歯ケーブルに対向する面に凹部を有する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有歯ケーブルの移動に伴ってキャップがガイド部材の凹部付近を通過する際に、キャップがガイド部材に衝突して叩き音が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、有歯ケーブルの先端に設けられたキャップがガイド部材に案内されて移動する際に、ガイド部材にキャップが衝突して叩き音が発生するのを抑制することができる有歯ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有歯ケーブルは、有歯ケーブルを案内する湾曲した案内経路を構成する、湾曲の径方向内側に設けられた内側壁部および湾曲の径方向外側に設けられた外側壁部を有し、前記外側壁部における前記有歯ケーブルに対向する面に凹部を有するガイド部材の前記内側壁部と前記外側壁部との間を、駆動源の駆動力によって案内されつつ移動し、前記駆動力を操作対象物へ伝達する有歯ケーブルであって、前記有歯ケーブルは、ケーブル本体と、前記ケーブル本体の先端に設けられるキャップとを備え、前記キャップは、略円錐状の先端部と、前記先端部の基端側に設けられる略円筒状の本体部とを備え、前記有歯ケーブルは、前記ガイド部材の前記湾曲した案内経路内において前記キャップ側から前記ケーブル本体側へ向かう方向に移動する際に、前記キャップが前記外側壁部に摺接するように移動し、前記有歯ケーブルは、前記キャップが前記凹部の縁部に摺接する際に、前記ケーブル本体における前記キャップ側の端部領域が前記ガイド部材の前記内側壁部に当接することにより、前記キャップの先端が前記外側壁部へ近づく向きに前記キャップが揺動する角度が抑制されるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有歯ケーブルの先端に設けられたキャップがガイド部材に案内されて移動する際に、ガイド部材にキャップが衝突して叩き音が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の有歯ケーブル案内装置の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)を示す図である。
【
図3】有歯ケーブル(第1例)がガイド部材の凹部付近を通過する際の挙動の一例を模式的に示す図である。
【
図4A】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した正面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した背面図である。
【
図4C】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した右側面図である。
【
図4D】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した左側面図である。
【
図4E】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した平面図である。
【
図4F】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した底面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)を示す図である。
【
図6】有歯ケーブル(第2例)がガイド部材の凹部付近を通過する際の挙動の一例を模式的に示す図である。
【
図7A】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した正面図である。
【
図7B】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した背面図である。
【
図7C】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した右側面図である。
【
図7D】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した左側面図である。
【
図7E】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した平面図である。
【
図7F】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した底面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)を示す図である。
【
図9】有歯ケーブル(第3例)がガイド部材の凹部付近を通過する際の挙動の一例を模式的に示す図である。
【
図10A】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した正面図である。
【
図10B】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した背面図である。
【
図10C】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した右側面図である。
【
図10D】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した左側面図である。
【
図10E】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した平面図である。
【
図10F】本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の有歯ケーブルおよび有歯ケーブル案内装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の有歯ケーブルおよび有歯ケーブル案内装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の有歯ケーブル案内装置の一例を模式的に示す図である。
図2は、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)を示す図である。
図3は、有歯ケーブル(第1例)がガイド部材の凹部付近を通過する際の挙動の一例を模式的に示す図である。なお、
図3は、ガイド部材を長さ方向に沿って切断した状態で示すとともに、ガイド部材の内部において有歯ケーブルが移動する様子を実線および二点鎖線で示している。
図4Aは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した正面図である。
図4Bは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した背面図である。
図4Cは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した右側面図である。
図4Dは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した左側面図である。
図4Eは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した平面図である。
図4Fは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第1例)の特徴部分を実線で示した底面図である。
【0011】
図1に示されるように、有歯ケーブル案内装置1は、湾曲した案内経路を有するガイド部材5と、ガイド部材5により案内される有歯ケーブル2(
図2および
図3参照)とを備える。
【0012】
図1に示される本実施形態に係る有歯ケーブル案内装置1は、
図2および
図3に示される有歯ケーブル2を駆動源3の駆動力によって移動させ、当該駆動力を有歯ケーブル2を介して操作対象物4へ伝達する構成である。有歯ケーブル2は、駆動源3の駆動力を受けて移動する際に、ガイド部材5によって案内される。
【0013】
ガイド部材5は、所定の配索経路に沿って有歯ケーブル2を案内する。
図3に示されるように、有歯ケーブル2はガイド部材5の内部に摺動可能に収容される。本実施形態では、ガイド部材5は、有歯ケーブル2の長さ方向X1(
図2参照)の軸X(有歯ケーブル2の中心軸線X)に垂直な断面において有歯ケーブル2の外径よりも大きい内幅を有する略U字形状のガイド溝である。すなわち、ガイド部材5は、有歯ケーブル2の周方向の一部を覆う構成である。ガイド部材5は、長さ方向の全体にわたって延びる図示しない開口を有することにより、長さ方向に垂直な方向において、略U字形状の断面を有している。なお、
図3は、ガイド部材5の長さ方向に沿った断面をガイド部材の5の開口側から見て示している。開口の幅は、有歯ケーブル2の直径よりも小さい構成であることが好ましい。この構成により、開口からの有歯ケーブル2の脱落が防止される。
【0014】
本実施形態では、ガイド部材5は、有歯ケーブル2の取付対象(たとえば車両等)に、一部または全部が湾曲した経路で配索される。
図1に示される例では、ガイド部材5は、長さ方向において湾曲した案内経路50(以下、湾曲経路50とも称する)と、長さ方向において直線状に延びる案内経路51(以下、直線経路51とも称する)とを有する。湾曲経路50の曲率は、有歯ケーブル2の移動が阻害されずに、有歯ケーブル2がスムーズに移動できるような曲率であれば、特に限定はされない。また、ガイド部材5は、有歯ケーブル2を案内して、操作対象物4を所望の方向へ移動させることができるのであれば、直線経路51を有さずに、湾曲経路50のみを有する構成であってもよい。
【0015】
図3に示されるように、ガイド部材5は、有歯ケーブル2を案内する湾曲した案内経路50を構成する内側壁部501および外側壁部502を有する。内側壁部501は湾曲の径方向内側に設けられ、外側壁部502は湾曲の径方向外側に設けられる。内側壁部501と外側壁部502との間隔(内幅)は、有歯ケーブル2の移動が阻害されずに、有歯ケーブル2がスムーズに移動できるような間隔であれば、特に限定はされない。
【0016】
本実施形態では、ガイド部材5は合成樹脂により構成されている。詳細には、ガイド部材5は、たとえば、射出成型により構成されている。本実施形態では、
図3に示されるように、ガイド部材5は、外側壁部502における有歯ケーブル2に対向する面に凹部5020を有している。
図3に示される例では、凹部5020は、すり鉢状に窪んだ凹部であり、具体的には、略円錐台状に窪んだ凹部である。
図3に示される例では、凹部5020は、ガイド部材5の長さ方向に沿った底面5022と、底面5022に連続する斜面5023とを有する。また、
図3に示される例では、凹部5020の斜面5023は、内側に凸となるような曲面により構成されている。なお、凹部5020はすり鉢状以外の形状であってもよく、たとえば円筒状に窪んだ凹部であってもよい。外側壁部502が凹部5020を有する構成により、バリの発生が抑制されるように射出成型時の合成樹脂の流動が制御されるので、射出成型における型抜きの際にガイド部材5にバリが発生するのを抑制することができる。なお、ガイド部材5は、合成樹脂以外の材料、たとえば金属により構成されてもよい。
【0017】
なお、ガイド部材5は、略U字形状の断面を有する構成でなくてもよく、たとえば、有歯ケーブル2を収容可能な内径を有する管状部材であってもよい。すなわち、ガイド部材5は、有歯ケーブル2の全周を覆う構成であってもよい。有歯ケーブル2の中心軸線Xに垂直な方向における湾曲経路50の断面形状は、有歯ケーブル2の移動が阻害されずに、有歯ケーブル2がスムーズに移動できるような断面形状であれば、特に限定はされない。
【0018】
有歯ケーブル2は、ガイド部材5の内側壁部501と外側壁部502との間を、駆動源3の駆動力によって案内されつつ移動し、当該駆動力を操作対象物4へ伝達する。本実施形態では、ガイド部材5は湾曲経路50および直線経路51を有するので、有歯ケーブル2は、駆動源3の駆動力によって湾曲経路50および直線経路51を移動して、当該駆動力を操作対象物4へ伝達する。
【0019】
駆動源3は、有歯ケーブル2を駆動するものである。駆動源3は、有歯ケーブル2と噛み合って、有歯ケーブル2を長さ方向X1に沿って移動するように駆動する。本実施形態では、駆動源3は、電動モータ31と、電動モータ31の駆動力を有歯ケーブル2に伝達する歯車機構とを有する。歯車機構は、有歯ケーブル2の歯条(後述の凸部C1)と噛み合う歯車32を含む。なお、駆動源3は、電動モータ31に代えて、他の種類の原動機を有する構成であってもよい。
【0020】
操作対象物4は、有歯ケーブル2と接続される。操作対象物4は、有歯ケーブル2が長さ方向X1に沿って移動することにより操作される。操作対象物4は、有歯ケーブル2によって操作可能なものであれば、特に限定されないが、たとえば車両のサンルーフや窓ガラス等の開閉体とすることができる。本実施形態では、操作対象物4は、車両のサンルーフであり、車両の天井に設けられた左右一対の図示しないガイドレール上に摺動可能に設けられている。操作対象物4は、有歯ケーブル2の一方の端部に直接的または間接的に接続されている。本実施形態では、駆動源3の駆動力によって歯車32が回転し、歯車32の歯と噛み合った有歯ケーブル2がガイド部材5に案内されながら、ガイド部材5の長さ方向に沿って移動する。有歯ケーブル2の移動に伴い、操作対象物4が操作される。
【0021】
図2に示されるように、有歯ケーブル2は、ケーブル本体21と、ケーブル本体21の先端に設けられるキャップ22とを備える。有歯ケーブル2は、ガイド部材5の案内経路(湾曲経路50および直線経路51)内を移動する。
図3に示されるように、有歯ケーブル2は、ガイド部材5の案内経路(具体的には湾曲経路50)内においてキャップ22側からケーブル本体21側へ向かう方向D1に移動する際に、キャップ22が外側壁部502に摺接するように移動する。
【0022】
ケーブル本体21は、可撓性を有し、湾曲経路50に沿って湾曲して案内される。ケーブル本体21は、外力が加わらない状態では、部分的には略直線状に延びた状態にある。したがって、有歯ケーブル2は、湾曲経路50内においては、湾曲経路50の長さ方向における有歯ケーブル2の存在領域の中央部または中央部付近の内側壁部501に当接し、有歯ケーブル2の先端に近づくにつれて、内側壁部501よりも曲率が小さい外側壁部502に沿おうとする(以下、有歯ケーブル2において、湾曲経路50における上述の中央部または中央部付近の内側壁部501と当接する部分を中央当接部とも称する)。すなわち、有歯ケーブル2は、湾曲経路50内においては、中央当接部に対して有歯ケーブル2の先端に近い程、内側壁部501よりも曲率が小さい外側壁部502に沿おうとする(外側壁部502に近づこうとする)傾向が強い。また、ケーブル本体21は、可撓性を有するが、一定程度の短い長さの部分では、長さ方向X1に垂直な方向に加わる外力による曲げに対して抵抗性を示す。当該外力は、たとえば、ケーブル本体21における後述の端部領域214が内側壁部501に当接したときに、内側壁部501が端部領域214に対して加える後述の力F1である。また、当該短い長さは、たとえば、後述の端部領域214からキャップ22までの距離である。
【0023】
本実施形態では、
図2に示されるように、ケーブル本体21は、コアケーブル210と、コアケーブル210の外周に螺旋状に巻き付けられたコイル部211とを備えている。ケーブル本体21は、螺旋状に巻き付けられたコイル部211によって形成される凸部C1と、有歯ケーブル2の長さ方向X1に隣接する一対の凸部C1の間に形成される凹部C2とを有している。有歯ケーブル2は、ケーブル本体21の凹部C2に歯車32の歯が噛み合うことにより、有歯ケーブル2を長さ方向X1に駆動して、駆動源3の駆動力を操作対象物4に伝達する。ケーブル本体21の構造は、可撓性を有し、歯車32と噛み合う凸部および凹部を有する構成であれば、特に限定はされない。ケーブル本体21は、本実施形態では、凸部C1および凹部C2を樹脂により連続して被覆する被覆層212と、被覆層212の上に、凹部C2に沿って螺旋状に巻き付けられ、被覆層212に融着されたモール213とを備えている。モール213は、
図2に示されるように、芯糸2131と、芯糸2131から放射状に延びる複数のパイル2132とを備えている。操作対象物4は、ケーブル本体21の一方の端部に直接的または間接的に接続されている。
【0024】
本実施形態では、キャップ22は、ケーブル本体21の端部に設けられている。詳細には、キャップ22は、ケーブル本体21の一方の端部には設けられておらず、ケーブル本体21の他方の端部に設けられている。有歯ケーブル2がキャップ22を備えることにより、有歯ケーブル2の先端がガイド部材5の内面に引っ掛かりにくくなるため、有歯ケーブル2は、ガイド部材5の内部をスムーズに移動しやすくなる。
【0025】
キャップ22は、
図2に示されるように、略円錐状の先端部221と、先端部221の基端側に設けられる略円筒状の本体部222とを備える。キャップ22は、ガイド部材5に対して摺接する部分であり、一定程度以上の剛性、およびガイド部材5に対する一定程度以下の摩擦係数(動摩擦係数および静止摩擦係数)を有する材料により構成され、たとえばポリアセタール樹脂(POM)などの合成樹脂により構成され得る。なお、キャップ22は、一定程度以上の剛性、およびガイド部材5に対する一定程度以下の摩擦係数を有する材料であれば、金属など他の種類の材料によって構成されてもよい。
【0026】
本明細書において、略円錐状の先端部221における「略円錐状」は、円錐状の他に、円錐台状の意味を含む。本実施形態では、
図2に示されるように、先端部221は円錐台状に形成されている。なお、先端部221は円錐状に形成されていてもよい。また、略円錐状の先端部221は、先端224が丸面等により面取りされた構成であってもよい。また、先端部221と本体部222との境界部223は、丸面等により面取りされた構成であってもよい。本実施形態では、先端部221と本体部222との境界部223は、丸面により面取りされている。なお、先端部221と本体部222との境界部223は、面取りされない構成であってもよい。
【0027】
図3に示されるように、有歯ケーブル2は、キャップ22の先端部221がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に摺接する際に、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接することにより、キャップ22の先端224が外側壁部502へ近づく向きにキャップ22が揺動する角度θが抑制されるように構成される。
【0028】
揺動する角度θ(以下、揺動角度θとも称する)を抑制するために、
図3に示される例では、本体部222は、キャップ22の先端部221がガイド部材5の凹部5020の縁部5021(
図3に示される例では方向D1における後側の縁部5021)に摺接する際に、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接するような長さを有する。詳細には、有歯ケーブル2の長さ方向X1における、本体部222の長さLは、ガイド部材5の凹部5020の幅W1より長い。
図3に示される例では、本体部222の長さLは、底面5022および斜面5023を含む凹部5020の幅W1より長い。
【0029】
端部領域214は、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部または当該端部に近い領域を意味する。
図3に示される例では、端部領域214は、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部に近い領域である。詳細には、端部領域214は、内側壁部501に当接することにより、キャップ22の揺動角度θを抑制する力F1(キャップ22の揺動方向とは反対方向の力)を内側壁部501から受け得る領域である。仮に、ケーブル本体21におけるキャップ22から遠い領域が内側壁部501に当接しても、ケーブル本体21は可撓性を有しているため、当該領域は、キャップ22の揺動角度θを抑制する力F1を内側壁部501から受けることができない。
【0030】
図3に示される例では、有歯ケーブル2が実線の位置から破線の位置へ移動することにより、キャップ221が揺動(
図3においては、反時計回りに回転)する。これは、上述のように、有歯ケーブル2が、湾曲経路50内において、湾曲経路50の長さ方向における有歯ケーブル2の存在領域の中央部または中央部付近の内側壁部501に当接し、内側壁部501と当接する部分(上記中央当接部)から有歯ケーブル2の先端に近づくにつれて、内側壁部501よりも曲率が小さい外側壁部502に沿おうとする(外側壁部502に近づこうとする)傾向が強いためである。その揺動の際、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接することにより、キャップ22の揺動、すなわち揺動角度θの増大が抑制される。詳細には、ケーブル本体21における端部領域214が内側壁部501に当接すると、端部領域214は、キャップ22の揺動角度θを抑制する力F1(キャップ22の揺動方向とは反対方向の力)を内側壁部501から受ける。したがって、キャップ22の揺動角度θの増大を抑制することができる。なお、
図3においてキャップ22が二点鎖線で示す状態から方向D1へ移動しても、ケーブル本体21の端部領域214は、キャップ22の揺動角度θを抑制する力F1を受けているため、キャップ22の揺動角度θの増大は抑制され続ける。
【0031】
本実施形態によれば、キャップ22の先端部221がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に摺接する際に、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接するので、キャップ22の先端224が外側壁部502へ近づく向きにキャップ22が揺動する角度θの増大が抑制される。従来は、キャップの先端部がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に摺接する際に、ケーブル本体におけるキャップ側の端部領域がガイド部材5の内側壁部501に当接しない構成であったので、キャップの先端が外側壁部502へ近づく向きにキャップが大きく揺動し(揺動角度θが大きい)、これにより、キャップの先端部がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に強く衝突して叩き00が発生する問題が生じていた。これに対し、本実施形態によれば、上述のように、キャップ22の先端部221がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に摺接する際に、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接することで、キャップ22はガイド部材5の内側壁部501から、キャップ22の先端224が外側壁部502へ近づく向きに揺動しようとする向きの回転力とは反対向きの力F1を受けるので、キャップ22の先端224がガイド部材5の外側壁部502へ近づく向きにキャップ22が揺動する角度θの増大が抑制される。したがって、キャップ22の揺動角度θが従来と比べて小さくなるため、キャップ22の先端部221がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に衝突しにくくなり、また衝突したとしても衝突の程度が弱くなるので、叩き音の発生を抑制することができる。
【0032】
より詳細には、
図3に示される例では、キャップ22の本体部222を上述のような特定の長さとする構成、すなわち、有歯ケーブル2の長さ方向X1における、本体部222の長さLを、ガイド部材5の凹部5020の幅W1より長くする構成により、本体部222の長さが特定の長さよりも短い場合と比べて、キャップ22の先端224が外側壁部502へ近づく向きに揺動する角度θが小さい状態で、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接する。したがって、キャップ22の本体部222を特定の長さとする簡単な構成で叩き音の発生を抑制することができる。
【0033】
次に、有歯ケーブル案内装置1の動作について、
図1~
図3を参照しつつ説明する。ここでは、有歯ケーブル案内装置1によって、操作対象物4の一例である車両のサンルーフの開閉動作を行う場合について説明する。
【0034】
図1は、操作対象物4が閉じている状態を示しているものとする。また、
図1に示される例では、
図1において歯車32の上側で歯車32の歯と噛み合う有歯ケーブル2(以下、上側ケーブル2とも称する)と、
図1において歯車32の下側で歯車32の歯と噛み合う有歯ケーブル2(以下、下側ケーブル2とも称する)とが設けられている。上側ケーブル2の一方の端部は、
図1において操作対象物4の左側部分に接続されている。また、下側ケーブル2の一方の端部は、
図1において操作対象物4の右側部分に接続されている。本実施形態では、キャップ22は、上側ケーブル2の一方の端部および下側ケーブル2の一方の端部には設けられていない。上側ケーブル2の他方の端部は自由端である。キャップ22は、上側ケーブル2の他方の端部に設けられている。操作対象物4が閉じている状態では、上側ケーブル2の他方の端部は、ガイド部材5における操作対象物4とは反対側の端部52と、端部52から近い側の湾曲経路50との間に位置している。下側ケーブル2の他方の端部についても、上側ケーブル2と同様である。
【0035】
そして、電動モータ31の駆動により、歯車32が
図1における反時計回り方向に回転すると、下側ケーブル2は、ガイド部材5の内部において、ガイド部材5の端部52から離れる方向へ移動する。これにより、下側ケーブル2の他方の端部は、湾曲経路50の内部を方向D1へ移動する(
図3参照)。上側ケーブル2についても同様である。一方、電動モータ31の駆動により、歯車32が
図1における時計回り方向に回転すると、下側ケーブル2は、ガイド部材5の内部において、ガイド部材5の端部52へ近づく方向へ移動する。これにより、下側ケーブル2の他方の端部は、湾曲経路50の内部を方向D1とは反対方向へ移動する。上側ケーブル2についても同様である。
【0036】
図3に示されるように、下側ケーブル2の他方の端部に設けられたキャップ22は、方向D1へ移動することにより、ガイド部材5の凹部5020付近を通過する。詳細には、上述のように、キャップ22の先端部221がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に摺接する際に、ケーブル本体21におけるキャップ22側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接することで、キャップ22の揺動角度θの増大が抑制される。したがって、キャップ22の先端部221がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に衝突しにくくなり、また衝突したとしても衝突の程度が弱くなるので、叩き音の発生を抑制することができる。上側ケーブル2についても同様である。これにより、叩き音の発生を抑制しながら、操作対象物4を開くことができる。なお、上側ケーブル2および下側ケーブル2が方向D1とは反対方向へ移動する際には、上述のような叩き音は、上側ケーブル2および下側ケーブル2が方向D1へ移動するときと比べて生じにくい。
【0037】
なお、上記実施形態の変形例として、
図5および
図6に示されるように、上記実施形態から形状が変更されたキャップ22Aを備える構成であってもよい。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)を示す図である。
図6は、有歯ケーブル(第2例)がガイド部材の凹部付近を通過する際の挙動の一例を模式的に示す図である。
図7Aは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した正面図である。
図7Bは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した背面図である。
図7Cは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した右側面図である。
図7Dは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した左側面図である。
図7Eは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した平面図である。
図7Fは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第2例)の特徴部分を実線で示した底面図である。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、上述した実施形態と共通する構成についての説明は省略する。
【0039】
本変形例では、
図5および
図6に示されるように、キャップ22Aの本体部222Aは、キャップ22Aの長手方向に沿って延びる筒状部225と、筒状部225の外周面において周方向に沿って設けられ、筒状部225の径方向外側へ突出するリング状部226とを有する。
【0040】
筒状部225は、キャップ22Aの先端部221の基端側に設けられる略円筒状の部分である。
【0041】
リング状部226は、本体部222Aの径を部分的に増大させる部分である。本体部222Aの径を部分的に増大させることにより、キャップにリング状部を設けない場合と比べて、キャップ22Aおよびケーブル本体21の位置がガイド部材5の内側壁部501に近くなる。なお、キャップ22Aおよびケーブル本体21の位置をガイド部材5の内側壁部501により近づけるためには、リング状部226の外径は大きい方が好ましい。リング状部226の外径は、ガイド部材5の内部における有歯ケーブル2Aの移動が阻害されずに、有歯ケーブル2Aがスムーズに移動できるような範囲で大きくすることが可能である。
【0042】
本実施形態では、リング状部226は、有歯ケーブル2Aの長さ方向X1に沿って2つ設けられている。なお、リング状部226の数は、ガイド部材5の内部における有歯ケーブル2Aの移動が阻害されずに、有歯ケーブル2Aがスムーズに移動できるような数であれば、特に限定はされない。
【0043】
リング状部226を複数設ける場合、先端部221に最も近い側のリング状部226(以下、先端側リング状部226とも称する)と、ケーブル本体21に最も近い側のリング状部226(以下、ケーブル側リング状部226とも称する)との間隔(たとえば、
図5に示されるように、先端側リング状部226における先端部221側の端部と、ケーブル側リング状部226におけるケーブル本体21側の端部との距離d1)は、キャップ22Aがガイド部材5の凹部5020を通過する際において、長さ方向X1におけるケーブル側リング状部226の一部が凹部5020の底面5022を超えた時点で、長さ方向X1における先端側リング状部226の少なくとも一部が凹部5020の底面5022の外側に位置する(先端側リング状部226が未だ凹部5020に全く入っていないか、または入っていても完全には入っていない)ような間隔であることが好ましい。このような間隔とすることにより、揺動角度θが大きくなって先端部221が凹部5020の縁部5021に衝突する可能性を低減することができる。
【0044】
図6に示される例では、先端側リング状部226における先端部221側の端部と、ケーブル側リング状部226におけるケーブル本体21側の端部との間隔d1(
図5参照)は、キャップ22Aがガイド部材5の凹部5020を通過する際において、有歯ケーブル2Aの長さ方向X1におけるケーブル側リング状部226の一部が凹部5020の底面5022を超えた時点で、長さ方向X1における先端側リング状部226の一部または全部が凹部5020の底面5022の外側に位置する(先端側リング状部226が、凹部5020における方向D1とは反対側の斜面5023上または当該斜面5023より方向D1とは反対側の壁面上にある)ような間隔となっている。なお、
図6は、長さ方向X1におけるケーブル側リング状部226の全体が凹部5020を超えた時点で、長さ方向X1における先端側リング状部226の全体が凹部5020内に宙に浮いた状態を示している。詳細には、
図6に示される例では、先端側リング状部226における先端部221側の端部と、ケーブル側リング状部226におけるケーブル本体21側の端部との距離d1は、凹部5020における底面5022の幅W2より大きい構成である。このような構成に加えて、先端側リング状部226におけるケーブル本体21側の端部と、ケーブル側リング状部226における先端部221側の端部との距離d2(
図5参照)は、凹部5020における底面5022の幅W2より大きい構成であってもよい。
【0045】
なお、先端側リング状部226における先端部221側の端部と、ケーブル側リング状部226におけるケーブル本体21側の端部との間隔d1(
図5参照)は、キャップ22Aがガイド部材5の凹部5020を通過する際において、有歯ケーブル2Aの長さ方向X1におけるケーブル側リング状部226の一部が凹部5020を超えた時点で、長さ方向X1における先端側リング状部226の一部または全部が凹部5020の外側に位置する(先端側リング状部226が、凹部5020における方向D1とは反対側の斜面5023上または当該斜面5023よりも方向D1とは反対側の壁面上にある)ような間隔であってもよい。詳細には、たとえば、先端側リング状部226における先端部221側の端部と、ケーブル側リング状部226におけるケーブル本体21側の端部との距離d1は、凹部5020の幅W1より大きい構成であってもよい。また、先端側リング状部226におけるケーブル本体21側の端部と、ケーブル側リング状部226における先端部221側の端部との距離d2は、凹部5020の幅W1より大きい構成であってもよい。
【0046】
また、リング状部226を有歯ケーブル2Aの長さ方向X1に沿って切断したときの断面形状は、ガイド部材5との接触面積を小さくして摺動抵抗を小さくできるような形状であることが好ましく、たとえば、
図6に示されるように、筒状部225から断面円弧状に突出するような形状であることが好ましい。
【0047】
本変形例によれば、キャップにリング状部を設けない場合と比べて、キャップ22Aおよびケーブル本体21の位置がガイド部材5の内側壁部501に近くなるので、キャップ22Aの先端224が外側壁部502へ近づく向きに揺動する向きの角度(揺動角度)θが小さい状態で、ケーブル本体21におけるキャップ22A側の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接する。ケーブル本体21の端部領域214がガイド部材5の内側壁部501に当接することで、キャップ22Aはガイド部材5の内側壁部501から、キャップ22Aの先端224が外側壁部502へ近づく向きに揺動しようとする向きの回転力とは反対向きの力F2を受けるので、キャップ22Aの先端224がガイド部材5の外側壁部502へ近づく向きにキャップ22Aが揺動する角度θの増大が抑制される。したがって、キャップ22Aにリング状部226を設けるという簡単な構成で叩き音の発生を抑制することができる。なお、キャップ22Aの本体部222A全体の径を大きくすることも考えられるが、このように本体部222A全体の径を大きくする場合と比べて、本変形例では、本体部222Aとガイド部材5との接触面積を小さくして、摺動抵抗を少なくし、有歯ケーブル2Aをガイド部材5の内部でスムーズに移動させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態のさらなる変形例として、
図8および
図9に示されるように、上記実施形態から形状が変更されたキャップ22Bを備える構成であってもよい。
【0049】
図8は、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)を示す図である。
図9は、有歯ケーブル(第3例)がガイド部材の凹部付近を通過する際の挙動の一例を模式的に示す図である。
図10Aは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した正面図である。
図10Bは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した背面図である。
図10Cは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した右側面図である。
図10Dは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した左側面図である。
図10Eは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した平面図である。
図10Fは、本発明の一実施形態の有歯ケーブル(第3例)の特徴部分を実線で示した底面図である。なお、以下では、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、上述した実施形態と共通する構成についての説明は省略する。
【0050】
本変形例では、
図8および
図9に示されるように、キャップ22Bの先端部221Bの外周面は、径方向外側に膨らんだ湾曲形状を有する。有歯ケーブル2Bは、キャップ22Bの先端部221Bがガイド部材5の凹部5020の縁部2051に摺接することにより、キャップ22Bの先端224が外側壁部502へ近づく向きにキャップ22Bが揺動する速度が抑制される。
【0051】
キャップ22Bの先端部221Bの外周面の曲率、具体的には、キャップ22Bの先端部221Bを有歯ケーブル2Bの長さ方向X1に沿って切断した状態における外周面の曲率は、キャップ22Bの揺動速度を抑制できる曲率であれば、特に限定はされない。また、有歯ケーブル2Bの長さ方向X1におけるキャップ22Bの先端部221Bの長さは、外周面の曲率を考慮しつつ、上述したキャップ22Bの揺動速度を抑制できる長さであれば、特に限定はされない。また、本体部222Bの長さは、
図2に示す本体部222より短くてもよい。
【0052】
本変形例では、キャップ22Bの先端部221Bの外周面が径方向外側に膨らんだ湾曲形状を有するので、有歯ケーブル2Bは、キャップ22Bの先端部221Bがガイド部材5の凹部5020の縁部5021に摺接するときに、キャップ22Bの先端224が外側壁部502へ近づく向きにキャップ22Bが揺動する速度が抑制され、キャップ22Bが凹部5020に落ち込む速度が抑制される。従来は、キャップの先端部の外周面が径方向外側に膨らんでいない形状であったので、キャップの先端が外側壁部502へ近づく向きにキャップが揺動する速度が大きく、これにより、キャップの先端部がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に強く衝突して叩き音が発生する問題が生じていた。これに対し、本変形例によれば、上述のように、キャップ22Bの先端部221Bの外周面が径方向外側に膨らんだ湾曲形状を有し、このような湾曲形状の外周面がガイド部材5の凹部5020の縁部5021に摺接するので、キャップ22Bの先端224が外側壁部502へ近づく向きに揺動する速度およびキャップ22Bが凹部5020に落ち込む速度が従来と比べて小さくなり、叩き音の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 有歯ケーブル案内装置
2、2A、2B 有歯ケーブル
21 ケーブル本体
210 コアケーブル
211 コイル部
212 被覆層
213 モール
2131 芯糸
2132 パイル
214 ケーブル本体におけるキャップ側の端部領域
22、22A、22B キャップ
221、221B 先端部
222、222A、222B 本体部
223 先端部と本体部との境界部
224 キャップの先端
225 筒状部
226 リング状部
3 駆動源
31 電動モータ
32 歯車
4 操作対象物
5 ガイド部材
50 湾曲した案内経路(湾曲経路)
501 内側壁部
502 外側壁部
5020 ガイド部材の凹部
5021 ガイド部材の凹部における縁部
5022 凹部の底面
5023 凹部の斜面
51 直線状に延びる案内経路(直線経路)
52 ガイド部材の端部
C1 ケーブル本体の凸部
C2 ケーブル本体の凹部
L 本体部の長さ
X 有歯ケーブルの中心軸線
X1 有歯ケーブルの長さ方向
W1 凹部の幅
W2 凹部における底面の幅