(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】KDM4阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4433 20060101AFI20240226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61K31/4433
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2020503253
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(86)【国際出願番号】 US2018024624
(87)【国際公開番号】W WO2018183370
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519351037
【氏名又は名称】アルベルト-ルートヴィヒ-ユニバーシティー フライブルク
(73)【特許権者】
【識別番号】516114754
【氏名又は名称】セルジーン クオンティセル リサーチ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シューレ,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,エリック
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/200709(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/100818(WO,A1)
【文献】Breast Cancer: Basic and Clinical Research,2016年,Vol. 10,pp. 169-175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジンデメチラーゼ4(KDM4)活性に関連する癌(KDM4関連癌)を阻害するための薬剤の製造における、以下の構造の3-([[(4R)-7-[メチル[4-プロパン-2-イル)フェニル]アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である化合物、あるいはその立体異性体または薬学的に許容可能な塩の使用であって、
【化1】
ここで、前記KDM4関連癌
は、結腸癌、バーキットリンパ腫、
及び急性骨髄性白血病から選択される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、2017年3月30日出願の米国仮特許出願第62/478,785号、および2017年6月1日出願の米国仮特許出願62/513,875号の優先権の利益を主張し、これら双方の全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載される実施形態は、酵素リジンデメチラーゼ4(KDM4)の活性を阻害するための化合物と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌を処置するための化合物と方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本実施形態は、KDM4の酵素活性を阻害し、かつ癌を処置するための化合物と方法を提供する。より具体的には、本実施形態の態様は、KDM4(「KDM4(i)」)を阻害し、かつ特有の前臨床特性を示す、置換されたピリジン誘導体を提供する。少なくとも1つの実施形態は、KDM4A、4B、4C、および4Dのデメチラーゼ活性を特異的に遮断するが、KDMファミリーのそれは遮断しない、強力な汎KDM4(i)、つまり化合物Iを提供する。患者の腫瘍を再現する条件下でKDM4(i)の抗腫瘍特性が確認された。
【0005】
本実施形態の他の態様は、ネオアジュバント化学療法後に個々の患者の腫瘍から調製し、かつインビトロで増殖させた三種陰性乳癌幹細胞(BCSC)においてKDM4(i)をスクリーニングする方法を提供する。これらのBCSCの限界希釈の同所性の異種移植片は忠実に、患者のもとの腫瘍組織構造と遺伝子発現を再生成した。少なくとも1つの実施形態では、本明細書に記載されるKDM4(i)は、前記方法に従って調製されたBCSCの増殖、自己複製(sphere formation)、および異種移植腫瘍成長を遮断する。
【0006】
別の実施形態において、KDM4(i)化合物は、KDM4Aデメチラーゼ活性の阻害を介して耐治療性の三種陰性乳腺腫瘍細胞の駆動体である、EGFRの発現を停止させる。この活性は、三種陰性腫瘍からのBCSCの文脈に特に関連する。
【0007】
本実施形態は、治療用化合物の識別のための基礎としての特有のBCSC培養系を提供し、およびKDM4阻害が三種陰性乳癌を含む癌の処置のための治療戦略であることを実証する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。免疫無防備状態のマウスにおけるBCSC1細胞異種移植片の限界希釈アッセイに関する代表的な成長データを示す。
【
図1B】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。ヘマトキシリン-エオジン(H&E)、抗CK8、抗Ki67、抗E-カドヘリン、および抗ビメンチン着色を含む、BCSC1患者のもとの腫瘍とBCSC1異種移植片腫瘍の免疫組織学的解析を示す。目盛バー:100μm。
【
図1C】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。BCSC1患者のもとの腫瘍、BCSC1異種移植片腫瘍、および陽性対照サンプルの、抗ER、抗PR、およびHER2の免疫組織学的着色を示す。ER:エストロゲン受容体、PR:プロゲステロン受容体、HER2:ヒト表皮成長因子2、目盛バー:100μm。
【
図1D】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。クラスタ樹状図として示されたRNAマイクロアレイデータの教師なし学習階層クラスタ分析を提供する。サンプルは、患者のもとの腫瘍BCSC1、BCSC2、BCSC3、およびBCSC4;派生したBCSC1-4株;およびBCSC1-4株由来のBCSC1-4異種移植片腫瘍である。
【
図1E】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。3D(上パネル)と2D(下パネル)の条件で培養されたBCSC1細胞の細胞表現型を示す代表的な画像である。目盛バー、100μm。
【
図1F】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。メチルセルロースアッセイ(n=3)におけるBCSC1細胞の自己複製能(sphere-forming capacity)を実証する。一元配置分散分析を使用して比較を行った。データは平均値±s.e.mを表す。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図1G】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。FACS(n=3)によって分析されるように、BCSC1細胞における癌幹細胞マーカーの代表的な発現パターンを示す。
図1Gは、CD24およびCD44マーカーの発現を示す。
【
図1H】乳癌幹細胞(BCSC)、および細胞株とそれに由来する異種移植片の特性評価に関連するデータを示す。FACS(n=3)によって分析されるように、BCSC1細胞における癌幹細胞マーカーの代表的な発現パターンを示す。
図1Hは、CD49fおよびEpCAMマーカーの発現を示す。
【
図2A】KDM4阻害剤(「KDM4」(i))がBCSC1細胞の強力な阻害剤であることを実証する。抗KDM4A、抗KDM4B、抗KDM4C、抗KDM4D、および抗チューブリンのウェスタンブロットを示す。サンプルはHEK293Tからの溶解物である;KDM4A、KDM4B、KDM4C、またはKDM4Dを発現する発現プラスミドでトランスフェクトされたHEK293T、BCSC1、およびBCSC2細胞。
【
図2B】KDM4阻害剤(「KDM4」(i))がBCSC1細胞の強力な阻害剤であることを実証する。KDM4(i)、つまり化合物Iの特定の実施形態の式/構造を例示する。
【
図2C】KDM4阻害剤(「KDM4」(i))がBCSC1細胞の強力な阻害剤であることを実証する。化合物Iの欠如下および存在下で培養されたBCSC1細胞の代表的な細胞増殖アッセイを示す(n=3)。●:ビヒクル、■:10nMの化合物I、▲:50nMの化合物I、データは平均値±s.d.を表す。
【
図2D】KDM4阻害剤(「KDM4」(i))がBCSC1細胞の強力な阻害剤であることを実証する。BCSC1細胞に対するKDM4(i)の代表的な用量-応答曲線である(n=3)。データは平均値±s.d.を表す。
【
図2E】KDM4阻害剤(「KDM4」(i))がBCSC1細胞の強力な阻害剤であることを実証する。指示されたKDM4(i)濃度の欠如下および存在下でのアンカレッジインデペンデント成長アッセイでのBCSC1の3D自己複製能を示す(n=3)、0:ビヒクル、10:10nMの化合物I、50:50nMの化合物I。
【
図2F】KDM4阻害剤(「KDM4」(i))がBCSC1細胞の強力な阻害剤であることを実証する。MatrigelでのBCSC1細胞の1次(1°スフィア)および2次(2°スフィア)自己複製能を示す(n=3)、10:10nMの化合物I、50:50nMの化合物I、一元配置分散分析を使用して比較を行った;データは平均値±s.e.mを表す。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図3A】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。KDM4(i)での処置に際しBCSC1細胞において差次的に調節される遺伝子の数を示す円グラフである:KDM(i)暴露有り、または無しでのBCSC1細胞のトランスクリプトーム(580の遺伝子、p<1e-5):254のアップレギュレートされた遺伝子と326のダウンレギュレートされた遺伝子。
【
図3B】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。ChIP-seq分析によって判定されたBCSC1細胞におけるKDM4Aのゲノム分布を示す円グラフである:KDM4Aピーク(172,692のピーク):12.5%のプロモーター;40.5%の遺伝子間;41.0%のイントロン;3.3%のエクソン;および2.7%の3’UTR。
【
図3C】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。遺伝子の交差と数を示すベン図であり、ここでKDM4Aは、KDM4(i)での処置に際してBCSC1細胞において差次的に調節される遺伝子を有するプロモーター領域に存在する。超幾何学的試験は、重複の有意性を計算した(c;p<10
-50)。
【
図3D】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。KEGG経路分析(経路強化分析/共通経路)を例示する(
図3Cに示される、419の遺伝子のセットに関し強化された経路)。
【
図3E】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。mRNAレベル分析、より具体的にはKDM4(i)の欠如下(-)と存在下(+)で培養されたBCSC1細胞に見られたmRNAレベルを表すヒートマップを反映する。KDM4Aの37の直接標的遺伝子は、
図3Dに示されるすべての経路に共通の遺伝子サインを表す。
【
図3F】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。KDM4(i)の欠如下(黒色バー)と存在下(灰色バー)で培養されたBCSC1細胞から得られたサンプルにおける発現分析の棒グラフである(n=3)。データは平均値±s.d.を表す。***p<0.0001;**p<0.001、スチューデントの両側検定による。
【
図3G】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。KDM4(i)の欠如下(-)と存在下(+)でのBCSC1細胞の溶解から生成された抗EGFR、抗KDM4A、および抗チューブリンのウェスタンブロットの写真である。
【
図3H】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。shRNA対照(Ctrl)または抗KDM4A shRNAで処理したBCSC1細胞の溶解から生成された抗EGFR、抗KDM4A、および抗チューブリンのウェスタンブロットの写真である。
【
図3I】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。KDM4(i)の存在下(灰色)また欠如下(黒色)で培養されたBCSC1細胞における、KDM4AピークのまわりのH3K9me3 ChIPseqsに基づいたシーケンシング読み取り密度のメタ分析を示すグラフである。超幾何学的試験を、重複の有意性を計算するために行った;p<10
-50)。
【
図3J】KDM4(i)がEGFR調節を通じてBCSCを標的とすることができることを示す。KDM4(i)の欠如下(暗闇)または存在下(光)でのBCSC1細胞ChIP-Seq走路分析を示す。EGFRプロモーターにおけるH3K9me3走路の標準化されたレベル。
【
図4A】KDM4(i)がBCSC1細胞からの異種移植腫瘍成長を阻害することを示す。BCSC1異種移植片腫瘍を有するマウスは、ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで21日連続して処置された。21日間の処置後の個々の動物から単離された代表的な異種移植片BCSC1腫瘍の写真である。
【
図4B】KDM4(i)がBCSC1細胞からの異種移植腫瘍成長を阻害することを示す。BCSC1異種移植片腫瘍を有するマウスは、ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで21日連続して処置された。経時的な、mm
3単位で測定された腫瘍の成長を描くグラフである(n=11)(ビヒクル);(n=12)(KDM4(i)処置))。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図4C】KDM4(i)がBCSC1細胞からの異種移植腫瘍成長を阻害することを示す。BCSC1異種移植片腫瘍を有するマウスは、ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで21日連続して処置された。実験の終わりの腫瘍重量を示す(n=11(ビヒクル);n=12(KDM4(i)処置))。一元配置分散分析を通じた比較。データ=平均値±s.e.m。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図4D】KDM4(i)がBCSC1細胞からの異種移植腫瘍成長を阻害することを示す。BCSC1異種移植片腫瘍を有するマウスは、ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで21日連続して処置された。腫瘍の代表的な画像を示す;
【
図4E】KDM4(i)がBCSC1細胞からの異種移植腫瘍成長を阻害することを示す。BCSC1異種移植片腫瘍を有するマウスは、ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで21日連続して処置された。主要の体積の棒グラフであり、ここでデータは、処置の開始時(0日目)と21日間の処置後(21日目)に超音波像によって得られた(n=11(ビヒクル),n=12(KDM4(i)処置))。一元配置分散分析を使用して比較を行った。データは平均値±s.e.mを表す。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図4F】KDM4(i)がBCSC1細胞からの異種移植腫瘍成長を阻害することを示す。BCSC1異種移植片腫瘍を有するマウスは、ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで21日連続して処置された。BCSC1異種移植片の発現分析を示す棒グラフである。サンプルを、ビヒクル(-)またはKDM4i(+KDM4(i))で処置されたマウスのBCSC1異種移植片腫瘍から得た。エラーバー、s.d.;生体複製(n=3)。***p<0.0001;**p<0.001、スチューデントの両側検定による。
【
図5A】BCSC2細胞と異種移植がもとの腫瘍患者を再現することを実証する。免疫無防備状態のマウスモデルにおける、BCSC2異種移植片を使用したBCSC2細胞の限界希釈/BCSC2異種移植片形成アッセイに関する代表的な成長曲線を図示する。
【
図5B】BCSC2細胞と異種移植がもとの腫瘍患者を再現することを実証する。ヘマトキシリン-エオジン(H&E)、抗CK8、抗Ki67、抗E-カドヘリン、および抗ビメンチン免疫組織化学的染色の写真を示す。サンプルは、BCSC2患者のもとの腫瘍とBCSC2異種移植腫瘍である。
【
図5C】BCSC2細胞と異種移植がもとの腫瘍患者を再現することを実証する。BCSC2患者のもとの腫瘍とBCSC2異種移植片腫瘍の、抗ER、抗PR、およびHER2免疫組織化学的染色の写真を示す。ER:エストロゲン受容体;PR:プロゲステロン受容体;HER2:ヒト表皮成長因子2;目盛バー、100μm。
【
図5D】BCSC2細胞と異種移植がもとの腫瘍患者を再現することを実証する。3Dおよび2D条件で培養されたBCSC2細胞の代表的な写真を示す。
【
図5E】BCSC2細胞と異種移植がもとの腫瘍患者を再現することを実証する。メチルセルロースアッセイにおけるBCSC2細胞の自己複製能を示す棒グラフである(n=3)。一元配置分散分析を通じた比較;データは平均値±s.e.m.を表す;*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図5F】BCSC2細胞と異種移植がもとの腫瘍患者を再現することを実証する。FACS(n=3)によって分析されたBCSC2細胞における、CSCマーカーCD24とCD44(
図5F)の代表的な発現パターンである。
【
図5G】BCSC2細胞と異種移植がもとの腫瘍患者を再現することを実証する。FACS(n=3)によって分析されたBCSC2細胞における、CD49fとEpCAM(
図5G)の代表的な発現パターンである。
【
図6A】KDM4(i)がBCSC2細胞の強力な阻害剤であることを示す。細胞増殖アッセイを反映したグラフであり、ここでBCSC2細胞は、10nm(■)または50nm(▲)のKDM4(i)の欠如下(●)または存在下で培養された。
【
図6B】KDM4(i)がBCSC2細胞の強力な阻害剤であることを示す。BCSC2細胞におけるKDM4(i)に関する代表的な用量-応答曲線を表すグラフである(n=3)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図6C】KDM4(i)がBCSC2細胞の強力な阻害剤であることを示す。KDM4(i)の欠如下(左のバー)、または10nM(中央のバー)または50nM(右のバー)のKDM4(i)存在下での、アンカレッジインデペンデントの成長アッセイにおけるBCSC2自己複製(sphere-formation)の棒グラフである。
【
図6D】KDM4(i)がBCSC2細胞の強力な阻害剤であることを示す。Matrigel中のBCSC2細胞の一次および二次自己複製能の棒グラフである。第1の週の間、細胞は、KDM4(i)の欠如下(-)および存在下(50nM)で培養された。一元配置分散分析を通じた比較。データは平均値±s.e.mを表す。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図6E】KDM4(i)がBCSC2細胞の強力な阻害剤であることを示す。FACSによって分析された、KDM4(i)の欠如下(ビヒクル)または存在下での、BCSC1細胞の代表的なアポトーシスアッセイのグラフである(n=3)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図6F】KDM4(i)がBCSC2細胞の強力な阻害剤であることを示す。FACSによって分析された、KDM4(i)の欠如下(ビヒクル)または存在下での、BCSC2細胞の代表的なアポトーシスアッセイのグラフである(n=3)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図7A】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。
図7Aは、BCSC1細胞とKDM4A位置のベン図であり、対照BCSC1細胞(Ctrl(172,639))と、KDM4A(KDM4A KD(3,215))に対してshRNAを発現するアデノウイルスに感染したBCSC1細胞における位置の数を示し、1110の位置の重複を示す。
【
図7B】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。BCSC細胞の増殖アッセイ、より具体的には、10μMのエルロチニブの欠如下(ビヒクル)と存在下でのBCSC1細胞の代表的な増殖のデータを示す(n=3)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図7C】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。BCSC細胞の増殖アッセイ、より具体的には、10μMのエルロチニブの欠如下(ビヒクル)と存在下でのBCSC2細胞の代表的な増殖のデータを示す(n=3)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図7D】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。BCSC1細胞でのエルロチニブ暴露の代表的な用量応答グラフである(n=3)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図7E】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。BCSC2細胞でのエルロチニブ暴露の代表的な用量応答グラフである(n=3)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図7F】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。エルロチニブの欠如下(左のバー)、および1μM(中央のバー)または10μM(右のバー)の存在下での、アンカレッジインデペンデント成長アッセイにおけるBCSC1の3D自己複製能を示す。一元配置分散分析を通じた比較;データ=平均値±s.e.m。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図7G】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。エルロチニブの欠如下(左のバー)、および1μM(中央のバー)または10μM(右のバー)の存在下での、アンカレッジインデペンデント成長アッセイにおけるBCSC2の3D自己複製能を示す。一元配置分散分析を通じた比較;データ=平均値±s.e.m。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図7H】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。サンプルを、KDM4(i)の欠如下と存在下で培養したBCSC2細胞からの溶解物である。
【
図7I】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。抗EGFR、抗KDM4A、および抗チューブリンのウェスタンブロットを示す。サンプルを、KDM4Aに対してshRNA対照(Ctrl)またはshRNAで処理した、BCSC2細胞からの溶解物である。
【
図7J】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。ChIP-seq分析によって判定されように、KDM4(i)の欠如下(H3K9me3ピーク:144,722のピーク)または存在下(H3K9me3ピーク:141,266のピーク)でのBCSC1細胞におけるH3K9me3のゲノムの分布を示す2つの円グラフである。ビヒクル:6.2%のプロモーター;47.3%の遺伝子間;41.2%のイントロン;2.8%のエクソン;2.4%の3’UTR;+KDM4(i):6.2%のプロモーター;47.7%の遺伝子間;40.7%のイントロン;2.9%のエクソン;2.4%の3’UTR。
【
図7K】KDM4(i)の実施形態がEGFR調節を介してBCSC2を標的とすることを実証する。KDM4(i)の欠如下または存在下で培養されたBCSC1細胞における、KDM4Aの数と交差およびH3K9me3の位置を示すベン図である。超幾何学的試験は、重複の有意性を計算するために行われた(i;p<10-
50)。
【
図8A】ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで、21日間連続して処置された、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスにおける異種移植片腫瘍成長を、KDM4(i)が阻害することを実証する。
図8Aは、21日間の処置後に個々の動物から単離された代表的な異種移植片BCSC2腫瘍の写真である。
【
図8B】ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで、21日間連続して処置された、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスにおける異種移植片腫瘍成長を、KDM4(i)が阻害することを実証する。腫瘍の成長を示すグラフである(mm
3で測定)(n=6)。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図8C】ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで、21日間連続して処置された、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスにおける異種移植片腫瘍成長を、KDM4(i)が阻害することを実証する。21日間の実験の終わりにおける腫瘍重量の棒グラフである(n=6)。一元配置分散分析を通じた比較;データは平均値±s.e.mを表す。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図8D】ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで、21日間連続して処置された、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスにおける異種移植片腫瘍成長を、KDM4(i)が阻害することを実証する。腫瘍の代表的な画像を示す。
【
図8E】ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで、21日間連続して処置された、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスにおける異種移植片腫瘍成長を、KDM4(i)が阻害することを実証する。処置の開始時(0日目)と21日間の処置後(21日目)の、超音波像によって得られた全ての腫瘍の体積定量化の棒グラフである(n=6)。一元配置分散分析を通じた比較;データは平均値±s.e.mを表す。*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001。
【
図8F】ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで、21日間連続して処置された、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスにおける異種移植片腫瘍成長を、KDM4(i)が阻害することを実証する。ビヒクルまたはKDM4(i)いずれかでの、21日間の連続したタイムスパンでの処置にわたる、BCSC1異種移植片腫瘍を有するマウスの体重を示す。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図8G】ビヒクルまたはKDM4(i)のいずれかで、21日間連続して処置された、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスにおける異種移植片腫瘍成長を、KDM4(i)が阻害することを実証する。ビヒクルまたはKDM4(i)いずれかでの、21日間の連続したタイムスパンでの処置にわたる、BCSC2異種移植片腫瘍を有するマウスの体重を示す。データは平均値±s.e.mを表す。
【
図9】KGM4の構造と機能に関する一連の例示を示す。(A)は4つのKDM4タンパク質の概略的な構造である。JmjNドメインは、JmjC触媒中心の活性に必要である。(B)は、デメチラーゼとしての、または酵素活性と無関係の、KDM4機能のモードを示す。(C)は、クレブス回路におけるSDHとFHとIDHを示す。コハク酸塩は、SDHまたはFH突然変異に際し蓄積し、他方で新形態IDH突然変異は2-ヒドロキシグルタラート生成をもたらす。この図は、Berry&Janknecht,KDM4/JMJD2 Histone Demethylases:Epigenetic Regulators in Cancer Cells,73(10)Cancer Res.2936(2013)から再作成されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特定された全ての特許および他の刊行物は、例えばそのような刊行物に記載される、本発明に関して使用され得る方法論を記載し開示する目的で、参照により明確に本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日よりも前に行われた開示のみが提供される。この点において、発明者が先の発明によって、またはそれ以外の理由で、そのような開示に先行することができないことを承認すると解釈されてはならない。これらの文書の日付に関するすべての陳述または内容に関する表示は、出願人に利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関する承認として構成されない。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明確に否定しない限り、単数形は複数の参照物を含み、および逆もまた然りである。本明細書の全体にわたって、他に明示のない限り、「含む(comprise)」、「含む(omprises)」、および「含むこと(comprising)」は、排他的というよりも包含的に使用され、その結果、明示された整数または整数のグループは、1つ以上の他の明示されていない整数または整数のグループを含み得る。用語「または」は、修正されない限り、例えば「いずれか」を包含する。範囲が、分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性のために本明細書で使用されるとき、範囲およびその中の具体的な実施形態のすべての組み合わせとサブの組み合わせが包含されるように意図される。実施例以外での、またはそうでなければ指示されている場合、本明細書で使用される成分または反応条件の量を表現するすべての数字は、用語「約」によりすべての実例において修飾されていると理解すべきである。数字または数的範囲を指す場合の用語「約」は、言及される数字または数的範囲が、実験による流動性の範囲内(または統計的な実験誤差内)の近似値であることを意味し、したがって数または数的範囲は、文脈から容易に認識されるように、述べられた数字または数的範囲の1%~15%の間で変動し得る。
【0011】
特に定義のない限り、本明細書に記載される処方に関して使用される学術用語と専門用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを記載するためのものであり、本発明の範囲を限定するようには意図されておらず、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0012】
本明細書に記載される実施形態は、被験体の疾患状態(例えば癌または腫瘍疾患)が、エピジェネティックスまたは被験体の後成的な状態に関係する時に特に示される治療を提供する。
【0013】
背景として、エピジェネティクスは、根底にあるDNA配列以外の機構によって引き起こされる遺伝子発現の遺伝性変化に関する研究である。後成的な調節において役割を果たす分子の機構は、DNAメチル化およびクロマチン/ヒストンの修飾を含む。真核生物のゲノムは、細胞の核内で高度に組織化される。ヒトゲノムの30億のヌクレオチドを細胞の核へとパッケージ化するために、多大なコンパクションが必要とされる。クロマチンは、DNAおよびクロモソームを構成するタンパク質の複合体である。ヒストンは、DNAが巻き付くスプールとして作用する、クロマチンの主要なタンパク質成分である。6つのクラスのヒストン(HI、H2A、H2B、H3、H4、およびH5)が存在し、2つのグループに体系化される:コアヒストン(H2A、H2B、H3、およびH4)とリンカーヒストン(HIとH5)。クロマチンの基本単位はヌクレオソームであり、これは、コアヒストンH2A、H2B、H3、およびH4の各々2つのコピーから成る、コアヒストンオクタマーに巻き付けられたDNAの約147の塩基対から成る。クロマチン構造の変化は、ヒストンタンパク質の共有結合修飾、および非ヒストンの結合タンパク質による影響を受ける。例えば、DNAメチル化、アセチル化、およびヌクレオソームヒストンタンパク質の他の翻訳後の修飾は、根本的なDNA配列を修正せずにクロマチン構成と遺伝子発現を修正する。したがって、一次遺伝子突然変異だけでなく、細胞の後成的な環境における変性は、腫瘍形成、進行、および処置に対する耐性に重要な役割を果たし、なぜなら特定遺伝子が発現するかどうか、いつ、またはどこで発現するかに、後成的な修飾が影響し得るからである。Chaidos et al.,6 Ther.Adv.Hematol.128(2015)。後成的な修飾は、様々な酵素ファミリーによって書かれ、消され、および読み取られる動的で可逆的なプロセスである。様々な部位でヒストンを修飾するいくつかのクラスの酵素が知られている。Arrowsmith et al.,11 Nature Rev.Drug Discov.384(2012)。さらに米国特許第9,255,097号を参照。
【0014】
ヒストン「デメチラーゼ」は、ポリペプチドから少なくとも1つのメチル基を取り除く酵素であり、および特定のデメチラーゼは、モノ-、ジ-、またはトリ-メチル化基質のいずれかを脱メチル化し得る。ヒストンデメチラーゼは、メチル化されたコアヒストン、モノヌクレオソーム、ジヌクレオゾーム、オリゴヌクレオゾーム、ペプチド、またはクロマチンを含む基質に作用することができる(例えば細胞ベースのアッセイにおいて)。リジン特異的なデメチラーゼの例として、補助因子としてフラビンを使用し、モノメチル化およびジメチル化H3K4またはH3K9の両方を脱メチル化するリジン特異的なデメチラーゼ1(LSD1またはKDM1);および~150アミノ酸長のJumonji C(JmjC)ドメインを特徴とするデメチラーゼのファミリー(例えばjumonjiドメインを含むヒストンデメチラーゼ1[JHDM1/KDM2A])があげられる。例えば、米国特許第9,255,097号;国際公開WO2015/200709号を参照.
【0015】
より具体的には、ヒトLSD1とそのパラログ、LSD2は、FAD依存性アミン酸化反応を介してモノメチル化およびジメチル化ヒストンH3リジン4(H3K4)とH3K9の両方を脱メチル化する。LSD1/2のFAD依存メカニズムとは異なり、Jumonji Cドメイン含有(JMJD)タンパク質は、ヒストンを脱メチル化するためにFe
2+、O
2、および2-オキソグルタラートを必要とするジオキシゲナーゼ反応メカニズムを通じて作用する。JMJDの触媒反応の工程は、リジンメチル基のヒドロキシル化であり、これは、リジンの窒素中心を自然に残し、かつホルムアルデヒドを放出するヒドロキシメチル部分への変換を行う。この反応は、原則として、JMJDタンパク質によるトリ-、ジ-、およびモノ-メチル化リジン残基の脱メチル化を可能にし、LSD1/2は、メチル化窒素上の自由電子対の必要ゆえに、トリメチル化されたリジン残基を攻撃することができない。JMJDタンパク質のほとんどは、H3K4、H3K9、H3K27、H3K36、またはH4K20を非メチル化するが、いくつかのJMJDタンパク質の酵素活性は不明のままであり、いくつかのJMJDデメチラーゼは、メチル・アルギニンデメチラーゼ活性を有する場合もあり、および他のいくつかのJMJDタンパク質は触媒活性が全くない場合もある。Berry&Janknecht,KDM4/JMJD2 Histone Demethylases:Epigenetic Regulators in Cancer Cells,73(10)Cancer Res.2936(2013)を参照;さらに
図9を参照。先に言及されたJHDM1/KDM2Aに加えて、JMJDタンパク質は、7つの亜科へと系統発生的にクラスタ化される約30のヒトメンバーを含む:JMJD2、JHDM1、JHDM2、JHDM3、JARID、PHF2/PHF8、UTX/UTY、およびJmjCドメインのみ。例えば、米国特許第9,447,046号を参照。
【0016】
最大のJMJD亜科の1つ、つまりJMJD2A-Eタンパク質ファミリーは、K(リジン)デメチラーゼ4に関してKDM4と優先的に呼ばれる。KDM4亜科はKDM4A、B、C、およびDを含む。KDM4は、基質として、トリメチル化H1.4K26だけでなくジメチル化およびトリメチル化H3K9とH3K36を認識することができる。Berry&Janknecht,2013。例えば、KDM4ファミリーの異所的発現は、トリメチル化およびジメチル化H3K9のレベルを劇的に低下させ、かつモノメチル化H3K9のレベルを高め、その後、それは異質染色質タンパク質1を非局在化させ、インビボで異質染色質の全体的なレベルを低下させた。重要なことには、KDM4デメチラーゼは、抑圧的なH3K9me3マークとH3K36me3マークの両方の脱メチル化を触媒し、後者は転写拡張に連結されている。Frank et al.,Therapeutic promise of cancer stem cell concept,120 J.Clin.Invest.41(2010)。
【0017】
本実施形態は、KDM4の酵素活性を阻害し、かつ有利に癌を処置するための、置換されたピリジン誘導体化合物の使用を提供する。特に、化合物Iとして本明細書に記載されるKDM4(i)の実施形態は、乳癌腫瘍、重要なことには三種陰性乳癌の腫瘍の阻害における著しい選択性と効果を発揮する。
【0018】
乳癌は世界的に、女性たちにとっての癌による死の主要原因である。Ferlay et al.,GLOBOCAN 2012 v1.0,Cancer Incidence&Mortality Worldwide:IARC Cancer Base No.11(2013)。癌の進行は、ヒストン・リジンデメチラーゼ4(KDM4)等の後成的なレギュレータの変調に関係している。Dave&Chang,Treatment resistance in stem cells&breast cancer,14 J.Mamm.Gland Biol.Neoplasia 79(2009);Frank et al.,Therapeutic promise of cancer stem cell concept,120 J.Clin.Invest.41(2010);Pattabiraman&Weinberg,Targeting Epithelial-to-MesenchymalTransition:Case for Differentiation-Based Therapy,Cold Spring Harbor Sympos.Quantitat.Biol.(2017);Sharma et al.,Induction of CXCR2 ligands,stem cell-like phenotype,&metastasis in chemotherapy-resistant breast cancer cells,372 Cancer Lett.192(2016)。
【0019】
乳癌治療中に、古典的処置は抵抗力のある癌幹細胞集団に対処できず、KDMタンパク質または機能の標的化が、処置のための可能性のある経路として明らかになっている。Zhang et al.,Cellular orig.&evol.breast cancer,Cold Spring Harbor Perspect.Med.(2017);Chu et al.,KDM4B as target for prostate cancer:structural analysis&selective inhibition by novel inhibitor,57 J.Med.Chem.5975(2014);Labbe et al.,Histone lysine demethylase(KDM)subfamily 4:structures,functions&therapeutic potential,6 Am.J.Transl.Res.1(2013);Qiu et al.,KDM4B&KDM4A promote endometrial cancer progression by regulating androgen receptor,c myc,&p27kip1,6 Oncotarget 31702(2015);Soini et al.,KDM4A,KDM4B&KDM4C in non-small cell lung cancer,8 Int’l J.Clin.Exper.Pathol.12922(2015)。
【0020】
本実施形態は、特有の前臨床特性を有するKDM4阻害剤を提供する。このKDM4(i)は、KDM4A、B、C、およびDのデメチラーゼ活性を特異的に遮断するが、KDMファミリーの他のメンバーのそれは遮断しない高度に強力な汎KDM4阻害剤である。KDM4(i)の抗腫瘍特性は、患者の腫瘍を再現する条件下で確認された。
【0021】
本実施形態の他の態様は、ネオアジュバント化学療法後に個々の患者の腫瘍から三種陰性乳癌幹細胞(BCSC)を単離し培養する方法を提供する。これらのBCSCの限界希釈の同所性の異種移植片は忠実に、患者のもとの腫瘍組織構造と遺伝子発現を再生成した。KDM4(i)は、BCSCの増殖、自己複製、および異種移植腫瘍成長を遮断する。重要なことに、KDM4(i)は、KDM4Aデメチラーゼ活性の阻害を介して耐治療性の三種陰性乳腺腫瘍細胞の駆動体である、EGFRの発現を停止させる。Hsu&Hung,Role of HER2,EGFR,&other receptor tyrosine kinases in breast cancer,35 Cancer Metast.Rev.575(2016)。本実施形態は、治療用化合物の識別のための基礎としての特有のBCSC培養系を提供し、およびKDM4阻害が三種陰性乳癌の処置のための新しい治療戦略であることを実証する。
【0022】
KDM4デメチラーゼの調節異常は、乳癌を含む様々な癌で記録されてきた。Berry&Janknecht,2013。KDM4が、特に悪性度の乳癌において、腫瘍細胞増殖を制御することが示されてきた。Ye et al.,Genetic alterations of KDM4 subfamily&therapeutic effect of novel demethylase inhibitor in breast cancer,5 Am.J.Cancer.Res.1519(2015)。治療抵抗と転移伝播は、乳癌処置中に直面する主問題である。乳癌幹細胞は、治療抵抗と転移伝播の両方の原因であることが示唆されてきた。Chu et al.,2014;Ansieau,EMT in breast cancer stem cell generation,338 Cancer Lett.63(2013)。しかしながら、これらの抵抗性の癌幹細胞(CSC)集団の特性評価は不十分であり、標的治療はいまだ特定されていない。KDM4デメチラーゼが癌の処置の有効な治療標的を提供し得るため、新規なKDM4阻害剤を特定するためにスクリーニングが開発された。癌幹細胞集団を模倣する条件下で阻害剤を確認するために、ネオアジュバント化学療法後に個々の患者の腫瘍からBCSCを濃縮するための、規定された無血清条件と低酸素環境を使用して、本明細書に記載されるように新たな3D培養法が開発された。
【0023】
以下の表1に示されるように、4つの異なるBCSC株(BCSC1、2、3、および4)の培養を設定した。全ての株は、三種陰性の原発性乳腺腫瘍から生じた:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびヒト表皮成長因子受容体2(HER2)陰性;これらの株から設定された全ての異種移植腫瘍は三種陰性であった。
【0024】
【0025】
表2に反映されるように、BCSC培養における癌幹細胞の予測度数は、1×105細胞において0.26~179の範囲で判定された(限界希釈細胞数移植による)。
【0026】
【0027】
限界希釈免疫無防備のNOD/スキッドマウスにおけるこれらの三種陰性BCSCの同所性の異種移植片は、形態学的かつ表現型の点で患者の原発腫瘍と緊密に一致する三種陰性腫瘍を産生した。表1と2;
図1C;
図5A。BCSC1とBCSC2の異種移植片腫瘍の増殖マーカーKi67の分析と同様に、乳房上皮マーカーのサイトケラチン8、Eカドヘリン、およびビメンチンの免疫組織化学法もまた、異種移植片腫瘍が親患者の腫瘍と類似するパターンを共有することを示した。
図1B;
図5B。実際は、親腫瘍と一致して、BCSC異種移植片はERとPRとHER2タンパク質発現に関して陰性であった。表1、
図1C;
図5C。
【0028】
付加的に、RNAマイクロアレイデータの教師なし学習階層クラスタリング分析は、腫瘍異種移植片が親腫瘍に近いプロフィールを共有することを示し、それぞれの分子の腫瘍サブタイプの保存を示した。
図1D。BCSC株は、ホスト腫瘍と異種移植とは別にクラスタリングされ、これらの細胞の特有の特性を規定した。しかしながら、それらは、3つの実体間の密接な相関を表すホスト腫瘍サブタイプ内でクラスタリングされた。
図1D。
【0029】
BCSCもまた、3Dおよび2D環境で培養され、それぞれスフェロイドおよび主として上皮クラスタとして成長した。
図1E;
図5D。アンカレッジインデペンデントの成長アッセイでのチャレンジ時に、BCSC1とBCSC2の細胞はそれぞれ11%と17%の自己複製能を実証した。
図1F;
図5E。上記のように単離され培養された未選別のBCSCは、CD24/CD44(
図1G;
図5I)およびCD49f/EpCAM(
図1H;
図5J)等の周知のCSCマーカーを様々な度合で発現した。まとめると、データは、この疾患を表すインビトロ細胞プラットフォームを提供するために、三種陰性乳腺腫瘍からのBCSCを患者の組織から直接単離して培養することができることを示す。これは、インビトロとインビボでの新規な癌標的戦略の特定と確認を可能にする。
【0030】
様々なKDM4ファミリーのメンバーのBCSC細胞における発現レベルは、ウェスタンブロット分析によって評価された。Metzger et al.,LSD1 demethylates repressive histone marks to promote androgenreceptor-dependent transcription,437 Nature 436(2005)。
図2Aで示されるように、KDM4Aは、BCSC1およびBCSC2細胞の両方において高レベルで発現された。これらの細胞はまた、KDM4B、KDM4C、およびKDM4Dの不均質な発現レベルを示した。これらの所見は、KDM4がBCSC集団の処置のための治療標的であることを示す。したがって、KDM4(i)を特徴づけるスクリーニングは、特に治療抵抗性のクローンBCSCを親腫瘍等の癌において、癌を処置するのに適した化合物を探究するために行われた。このスクリーニングは、
図2Bに示される特定のKDM4(i)の効果を確認した(化合物I)。重要なことに、このKDM4(i)は、KDM4A、4B、4C、および4D(IC
50<105nM)のデメチラーゼ活性を特異的に遮断したが、他のKDMのデメチラーゼ活性には影響しなかった。KDM4(i)が、KDM5Bのデメチラーゼ活性に対して弱い効果を示したことに留意されたい。表3は、KDMデメチラーゼに対する化合物Iの最大半量の阻害濃度(IC
50)を示す:
【0031】
【0032】
さらに、KDM4(i)は、三種陰性乳癌細胞を含むいくつかのタイプの癌細胞株:MDA-MB-231の増殖を強く阻害した。表4は、7日間の細胞MTSアッセイで示されるような、様々な癌細胞株における化合物Iの最大半量の有効濃度(EC50)を示す。
【0033】
【0034】
さらに、薬物動態研究は、化合物I等のKDM4(i)が、クリニックでの使用に適していることを実証する特性を有していることを示した。薬物動態データの例は表5に示される。
【0035】
【0036】
BCSC増殖に対するKDM4(i)の効果に関して、10nMのKDM4(i)(化合物I)と同等に低い濃度は、BCSC1とBCSC2の増殖を阻害、および50nMのKDM4(i)はBCSC1とBCSC2の生存を強く阻害した。
図2C、
図2D;
図6A、
図6B。この阻害効果は、KDM4(i)がBCSC1およびBCSC2細胞の両方の自己複製能を劇的に減らしたアンカレッジインデペンデントの自己複製能アッセイでもさらに明らかであった。
図2E;
図6C。さらに、MATRIGEL(登録商標)マトリックスでのKDM4(i)処置下で播種された時、BCSC1細胞の自己複製は第一世代スフィアで有意に縮小された。KDM4(i)処置下で一週間後に再播種された時、二次自己複製能は、阻害剤なしでさえも消失された。
図2F;
図6D。まとめると、KDM4(i)化合物Iは特有の前臨床徴候を示し、これは、BCSC駆動腫瘍の処置のためのその使用を支持する。
【0037】
KDM4(i)阻害の分子メカニズムが、KDM4(i)処置に際し差次的に調節された遺伝子を識別したトランスクリプトーム分析を使用してさらに探究された。より具体的には、KDM4(i)の存在下および欠如下で培養されたBCSC1細胞は、RNA-seqによって分析され、これは、KDM4(i)での処置に際して、合計580の遺伝子が差次的に調節されたことを示した。それらのうち254の遺伝子がアップレギュレートされ、および326の遺伝子がダウンレギュレートされた。
図3A。これらの遺伝子が直接のKDM4A標的であるかどうかは、抗KDM4A抗体を用いてBCSC1細胞におけるChIP-seqによって分析された。
図3Bに示される分析は172,692の高信頼度のKDM4Aピークを特定した。3215(1.8%)のKDM4A位置のみが、KDM4Aに対してsiRNAで処理されたBCSC2細胞において観察され、したがってKDM4A抗体の特異度が確認された。
図7A。この発見は、KDM4(i)トランスクリプトームとのKDM4Aシストローム(cistrome)交差の特性評価を促した。KDM4(i)での処置に際し差次的に調節された580の遺伝子のうち、KDM4Aは419の遺伝子(72%)のプロモーターに存在した。
図3C。これらの遺伝子のための経路分析は、上位スコアの経路のうち「EGF受容体シグナル経路」を明らかにした。
図3D。重要なことに、上位スコア経路は、KDM4(i)での処置に際し差次的に調節される37の直接KDM4A標的遺伝子の一般的な遺伝子シグネチャを共有する。
図3E。さらに、qRT PCR分析は、KDM4(i)遺伝子での処置がVCAN、PRR5、ATF4、EGR1、FST、RUNX1、および重要なことにはEGFR等の遺伝子の発現レベルを下げることを確証した。
図3F。
【0038】
EGFRは、三種陰性乳癌の不十分な臨床的結果に関係した新興の治療標的である。Hsu&Hung,2016。BCSC細胞の成長におけるEGFRシグナリングの重要性を解明するために、BCSC1およびBCSC2細胞を特定のEGFR阻害剤:エルロチニブで処置した。エルロチニブでの処置は、BCSC1およびBCSC2細胞の両方の増殖を遮断した。
図7B、
図7E。さらに、BCSC1およびBCSC2細胞の両方の3Dコロニー成形容量は、エルロチニブでの処置に際して劇的に低下した。
図7F、
図7G。ともにこれらのデータは、EGFRがBCSC細胞の成長を制御することを実証した。重要なことには、ウェスタンブロット分析によって示されるように、EGFRのタンパク質レベルは、KDM4(i)での処置に際してBCSC1およびBCSC2細胞の両方で劇的に低下した。
図3G;
図7I。EGFRが直接のKDM4A標的であるため、KDM4AのノックダウンがEGFRタンパク質レベルに影響を与えるかどうかが判定された。示されるように、KDM4Aのアデノウイルス媒介ノックダウンは、BCSC1およびBCSC2細胞の両方におけるEGFRのレベルの低下をもたらした。
図3H;
図7I。これらのデータは、BCSCにおいて、KDM4AのKDM4(i)阻害がEGFR発現を遮断することを示す。
【0039】
KDM4(i)によるKDM4Aの不活性化に際して、KDM4Aは抑圧的なH3K9me3マークのデメチラーゼであるため、H3K9me3における増加が観察され得る。抗H3K9me3抗体を使用するChIP-seqアッセイは、未処置細胞における141,722の高信頼度のH3K9me3ピークと、KDM4(i)で処置された細胞における144,266のピークを特定した。
図7J。KDM4(i)の存在下と欠如下におけるH3K9me3位置とのKDM4A位置の重複は、81,717の位置が共同占領されていたことを明らかにした。
図7K。KDM4Aピークに対するH3K9me3読み取りの全体的な増加が観察された。
図3I。同様に、EGFRプロモーターにおいて、KDM4Aピークに対する抑圧的なH3K9me3マークの増加が、KDM4(i)による不活性化の後に観察された。
図3J。これらのデータは、KDM4(i)処置に際し観察される転写抑制と相関する。
図3F。要約すると、KDM4(i)でのBCSC処置は、KDM4Aデメチラーゼ活性の阻害により、EGFR、つまり耐治療性の三種陰性乳腺腫瘍細胞の主要な駆動体を標的とする。
【0040】
付加的に、BCSC1とBCSC2の腫瘍異種移植の成長に対するKDM4(i)の影響が、KDM4(i)での21日間の処置に続いて、出芽しかけた異種移植腫瘍を有する免疫無防備状態のNOD/SCIDマウスで試験された。KDM4(i)での処置は、BCSC1とBCSC2の異種移植片の両方の腫瘍成長と最終腫瘍重量に強い影響を与えた。
図4A-
図4E;
図8A-
図8E。重要なことには、KDM4(i)での処置は、マウスの総重量に決して影響を与えなかった。
図8F、
図8G。さらに、KDM4(i)の処置は、細胞培養で観察されるような類似の方法でKDM4A標的遺伝子の発現に影響を与えた。
図3F。
図4Fに示されるように、PRR5、ATF4、EGR1、FST、RUNX1、およびEGFRの発現は、KDM4(i)で処置されたマウスのBCSC1異種移植片腫瘍において影響を受けた。まとめると、KDM4(i)での処置は、BCSC異種移植片モデルにおける腫瘍成長を遮断した。
【0041】
要約すると、本実施形態は、ネオアジュバント化学療法後に個々の患者の腫瘍から単離されたBCSC株の単離と成長を可能にする新規な培養方法を確立する。限界希釈BCSC異種移植片は、親患者の腫瘍とBCSCを正確に再現し、BCSC異種移植片と親腫瘍は高度に類似するトランスクリプトームプロフィールを共有する。したがって、これらのモデルは新規な治療の特定と確認のための理想的なツールである。
【0042】
少なくとも1つの実施形態は、原発性乳癌幹細胞におけるKDM4阻害化合物のKDM4阻害活性をスクリーニングする方法を確立し、該方法は以下の工程を含む:(1)乳腺腫瘍材料を得る行程;(2)腫瘍材料を機械的に分離する行程;(3)少なくとも1つのDNAse、ディスパーゼ、またはサーモリシンで腫瘍材料を処理する行程;(4)緩衝液に腫瘍材料を希釈する工程;(5)腫瘍細胞を得るために分離され処理された腫瘍材料を引っ張る行程;(6)溶解緩衝液を用いて赤血球を随意に除去する行程;(7)細胞培養培地で腫瘍細胞を洗浄する工程;(8)1:1の比率の(a)液体培地と(b)固形マトリックスを含む幹細胞強化培地において洗浄された腫瘍細胞を培養する行程であって、ここで(a)は、乳房上皮の基本培地、無血清サプリメント、アンフォテリシン、ペニシリンストレプトマイシン、表皮成長因子、線維芽細胞成長因子、ヘパリン、ゲンタマイシン、およびRhoキナーゼ阻害剤を含む;(9)強化された細胞がスフィアとして増殖するまで、低酸素下で37℃で幹細胞強化培養をインキュベートする行程;(10)拡張された乳癌幹細胞を得るために、98:2の比率で(a)と(b)を含む拡張培地においてスフィアとして増殖した細胞の集団を拡張する工程;(11)KDM4阻害剤を含む幹細胞強化培地において拡張された乳癌幹細胞を再培養する工程であって、ここでKDM4阻害剤は、KDM阻害剤なしで再培養された乳癌幹細胞と比較して、乳癌幹細胞がスフィアとして増殖する能力を阻害する、工程。
【0043】
さらに、本実施形態は、新規な治療標的としてのKDM4ファミリーの追求を支持するだけでなく、EGFR経路を標的とすることによってインビトロとインビボでBCSCの増殖を遮断する特有の前臨床特性を有する少なくとも1つの新規なKDM4阻害剤を提供する。したがって、KDM4活性の調節は、特に耐化学療法性の乳癌等の癌の処置のための有望な治療戦略である。化合物I、3([(1R)-6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸は、4位置にカルボン酸および3位置に置換アミノ基を有する二置換のピリジン環ベアリングを含む置換されたピリジン誘導体化合物の具体例である。これと関連する置換されたピリジン誘導体は国際公開第WO2015/200709号に提供される。
【0044】
少なくとも1つの実施形態は、式Iの構造を有するKDM4(i)化合物を提供し、
【0045】
【化1】
ここで前記化合物は、その立体異性体および薬学的に許容可能な塩を含み、
XはOまたはCH
2であり、
R
6はN(R
1)(R
2)またはO(R
2)であり、
R
1はHまたはC
1-C
6アルキルであり、および
R
2は、随意に置換されたアリール、ヘテロアリール、シクリル、またはヘテロシクリルである。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、化合物はR立体異性体である。
【0047】
少なくとも1つの実施形態では、R1はメチルまたはエチルである。
【0048】
少なくとも1つの実施形態では、R2はピリジン等のヘテロアリールである。
【0049】
少なくとも1つの実施形態では、R2は、メチル、エチル、またはシクロプロピル等のアルキルで置換されたピリジン等の置換されたヘテロアリールである。
【0050】
少なくとも1つの実施形態では、R2はフェニル等のアリールを含む。
【0051】
少なくとも1つの実施形態では、R2は、フルオロまたはクロロ等のハロで置換された;または、メチル、プロパニル、またはシクロプロピル等のアルキルで置換された;またはフルオロおよびメチル等の、ハロとアルキルの両方で置換された;またはジメチルアミノ、アゼチジニル等のアミノまたはN含有基で置換された;またはエトキシ、シクロプロピルメトキシ、メトキシメチル、ジフルオロメトキシ、またはトリフルオロメトキシ等のアルコキシで置換された;またはオキサニル等のヘテロシクリルで置換された、フェニル等の置換されたアリールである。
【0052】
少なくとも1つの実施形態では、R2は、2,3ジヒドロ-1H-インデニル等のインダン部分である。
【0053】
少なくとも1つの実施形態では、XはCH2であり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2はフェニルまたはピリジニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[メチル(ピリジン-2-イル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0054】
少なくとも1つの実施形態では、XはCH2であり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2はメチルで置換されたフェニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[メチル(4メチルフェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0055】
少なくとも1つの実施形態では、XはCH2であり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2はジメチルアミノで置換されたフェニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[[4-(ジメチルアミノ)フェニル](メチル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0056】
少なくとも1つの実施形態では、XはCH2であり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は、メトキシメチル、エトキシ、またはジフルオロメトキシで置換されたフェニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[[4-(メトキシメチル)フェニル](メチル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[[4-(ジフルオロメトキシ)フェニル](メチル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[(4-エトキシフェニル)(メチル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0057】
少なくとも1つの実施形態では、XはCH2であり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2はメチルで置換されたピリジニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[メチル-[5メチルピリジン-2-イル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。他の特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[メチル[6-メチルピリジン-2-イル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0058】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はエチルであり、およびR2はフェニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[エチル(フェニル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0059】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は置換されたフェニルである。例えば、フェニルはクロロまたはフルオロで置換される。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[3-フルオロフェニル)(メチル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。他の特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[4-フルオロフェニル)(メチル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]-メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。他の特定の実施形態では、KDM4(i)は、3([[(4R)-7-[4-クロロフェニル)(メチル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノピリジン-4-カルボン酸である。
【0060】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は置換されたフェニルである。例えば、フェニルは、メチル、エチル、プロピル、またはシクロプロピルで置換される。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[メチル(4-メチルフェニル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[メチル(4-エチルフェニル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[メチル[4-プロパノ-2-イル)フェニル]アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0061】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1は、メチル、エチル、またはシクロプロピルで置換されたピリジニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[メチル(5-メチルピリジン-2-イル)アミノ]-2,3-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3([(4R)-7-[メチル(5メチルピリジン-2-イル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3([[(4R)-7-[(5-シクロプロピルピリジン-2イル)(メチル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。他の特定の実施形態では、KDM4(i)は、3([[(4R)-7-[(4-シクロプロピルフェニル)(メチル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0062】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は置換されたフェニルである。例えば、フェニルはトリフルオロフェニルで置換される。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-({[(1R)-6-{[4-(1H-イミダゾール-1-イル)フェニル](メチル)アミノ}-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0063】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は置換されたフェニルである。例えば、フェニルは、トリフルオロメトキシ、ジフルオロエトキシ、またはシクロプロピルメトキシで置換されたフェニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[[4(トリ-フルオロメトキシ)フェニル](メチル)アミノ3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3([[(4R)-7-[[4(ジフルオロメトキシ)フェニル](メチル)-アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-({[(1R)-6-{[4-(シクロ-プロピルメトキシ)フェニル](メチル)アミノ}-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0064】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は、アゼチジニル置換フェニル等の置換されたフェニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[[4-アゼチジン-1-イル)フェニル](メチル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0065】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は置換されたフェニルである。例えば、フェニルはオキサニルで置換される。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-({[(4R)-7-{メチル[4-(オキサン-4-イル)フェニル]アミノ}-3,4-ジヒドロ-2H1ベンゾピラン-4-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0066】
少なくとも1つの実施形態では、XはOであり、およびR6はN(R1)(R2)であり、ここでR1はメチルであり、およびR2は2,3-ジヒドロ-1H-インデニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(4R)-7-[2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル)(メチル)アミノ]-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0067】
少なくとも1つの実施形態では、XはCH2であり、およびR6はO(R2)であり、ここでR2は、フルオロとメチルで置換されたフェニルである。特定の実施形態では、KDM4(i)は、3-([[(1R)-6-[2-フルオロ-4-メチル-フェノキシ)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル]アミノ)ピリジン-4-カルボン酸である。
【0068】
置換されたピリジン誘導体化合物は、スキーム1-3で以下に記載される一般的な合成経路によって調製される。
【0069】
【0070】
上記のスキーム1を参照すると、化合物Aとアミン化合物Bが混合され、様々な条件下で処理されて化合物Cが形成される。例えば、化合物AとアミンBの混合物は、120℃~172℃の範囲の温度で、適切な溶媒中で、マイクロ波照射にさらされ得る。エステル化合物Eは、塩基の存在下で、HATU等のカップリング試薬を使用して、化合物CとアルコールDから調製され得る。
【0071】
【0072】
上記のスキーム2を参照すると、化合物Fとアルデヒド化合物Gが混合され、還元的アミノ化条件下で処理されて化合物Cが形成される。エステル化合物Eは、塩基の存在下で、HATU等のカップリング試薬を使用して、化合物CとアルコールDから調製され得る。
【0073】
【0074】
上記のスキーム3を参照すると、化合物Hとアミン化合物Bが混合され、様々な条件下で処理されて化合物Eが形成される。例えば、化合物HとアミンBの混合物は、100℃~120℃の範囲の温度で、適切な溶媒中で、マイクロ波照射下でBuchwald反応にさらされ得る。エステル化合物Eは、1Nの水性NaOH等の塩基条件を使用して、化合物Cを得るために加水分解され得る。
【0075】
本明細書に記載されるKGM4(i)化合物は、薬学的に許容可能な塩として生成され、または提供されてもよい。置換されたピリジン誘導体KGM4(i)化合物のいずれか1つの薬学的に許容可能な塩は、当技術分野で既知のもの等の、酸と塩基加算塩類等の薬学的に許容可能な塩を含む、あらゆる全ての薬学的に適切な塩形態を包含するように意図される。
【0076】
典型的には、化合物Iによって例示される置換されたピリジン誘導体化合物は実質的に純粋であり、約5%未満、または約1%未満、または約0.1%未満の、例えば合成工程の1つ以上で生成された未反応の中間体または合成副産物等の他の有機小分子を含有する。
【0077】
本明細書に記載されるKGM4(i)化合物は典型的に、1つ以上の不斉中心を含み、したがって、(R)または(S)として、絶対立体化学に関して定義されるエナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体を生じさせる。同様に、すべての起こり得る異性体、そのラセミ体や光学的に純粋な形態、およびすべての互変異性体もまた含まれるよう意図されている。用語「位置異性体」は、ベンゼン環のまわりのオルト-、メタ-、およびパラ-異性体等の、中心環のまわりの構造異性体を指す。「立体異性体」は、同じ結合によって結合された同じ原子から構成されるが、交換可能ではない異なる三次元構造を有する化合物を指す。立体異性体は、キラルHPLC等の当技術分野で既知の手段と方法によって分離することができる。従って、本明細書に提供されるKGM4(i)化合物は、様々な立体異性体とその混合物を包含し、および「エナンチオマー」を含み、これは、その分子構造が互いのスーパーインポーズできない鏡像である2つの立体異性体を指す。加えて「互変異性体」は、分子の1つの原子から同じ分子の別の原子へのプロトン移動が可能な分子を指す。本明細書に示されるKGM4(i)化合物は、特定の実施形態において、互変異性体として存在する。互変異性化が可能である状況では、互変異性体の化学平衡が存在し得るが、互変異性体の正確な比率は、物理的状態、温度、溶媒、およびpH等の因子に左右される。
【0078】
本明細書に記載されるKGM4(i)は、「プロドラッグ」として生成され、得られ、または調剤されてもよい。プロドラッグは、投与時に不活性である場合もあるが、生理的条件下で、または加水分解(すなわちインビボ)によって、生物学的に活性な化合物へと変換される化合物であり;したがってプロドラッグは、生物学的に活性な化合物の薬学的に許容可能な前駆体である。プロドラッグ化合物は、被験体において溶解度、組織適合性、または遅延放出という利点を提供し得る。プロドラッグはさらに、そのようなプロドラッグが被験体に投与された時に、インビボで活性化合物を放出する共有結合された担体の使用を参照する。活性化合物のプロドラッグは、型通りの操作またはインビボのいずれかで親活性化合物へと修飾が開裂されるような方法で、活性化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製され得る。例えば、プロドラッグは化合物を含み、ここでヒドロキシ、アミノ、またはメルカプトの基は、活性化合物のプロドラッグが哺乳動物の被験体に投与された時に開裂して、それぞれ遊離ヒドロキシ、遊離アミノ、または遊離メルカプトの基を形成する任意の基に結合される。プロドラッグの例として、活性化合物におけるアルコールまたはアミン官能基の酢酸塩、ギ酸塩、および安息香酸塩の誘導体があげられる。例えば、Bundgard,DESIGN OF PRODRUGS,at 79,21 24(Elsevier,Amsterdam,1985);Higuchi et al.,Pro drugs as Novel Delivery Systems,14 A.C.S.Symposium Series;BIOREVERSIBLE CARRIERS IN DRUG DESIGN(Edward B.Roche(Ed.)Am.Pharm.Assoc.&Pergamon Press,1987)を参照。
【0079】
したがって、本明細書で使用されるように、KGM4(i)、KGM4(i)化合物、または化合物I等への言及は、その言及内に、それらの薬学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物、N-酸化物、立体異性体、互変異性体、またはプロドラッグを含む。
【0080】
特定の実施形態では、置換されたピリジン誘導体KGM4(i)化合物は、純粋な化合物として投与され得る。他の実施形態では、かつ一般的には、KGM4(i)化合物は、例えば、選択される投与経路と標準的な薬務に基づいて選択される、薬学的に許容可能な担体(本明細書で、薬学的に適切な(または許容可能な)賦形剤、生理学的に適切な(または許容可能な)賦形剤、または生理学的に適切な(または許容可能な)担体とも呼ばれる)と組み合わされる。例えば、REMINGTON:SCIENCE&PRACTICE OF PHARMACY 21st Ed(Gennaro(Ed.)Mack Pub.Co.,Easton,PA,2005)を参照。
【0081】
したがって本明細書には、1つ以上の薬学的に許容可能な担体とともに、少なくとも1つの置換されたピリジン誘導体KGM4(i)化合物、またはその立体異性体、薬学的に許容可能な塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、あるいはN-オキシドを含む医薬組成物が提供される。担体(または賦形剤)は、組成物の他の成分と適合性があり、レシピエントである被験体に有害でない場合に、許容可能または適切である。一実施形態は、化合物Iを含む医薬組成物を提供する。
【0082】
「薬剤」、「治療薬」、「薬学的に活性」、「薬学的」、「薬物」、「薬剤」、「活性薬剤」、「活性薬」「有効成分」等への言及は、一般的な意味で、例えば薬物、生物製剤、診断薬(例えば、染料または造影剤)、または治療あるいは予防(例えばワクチン)または研究用に使用される他の物質を含む、医療技術と科学技術において有用な物質を指す。薬剤の例として、小分子、化学療法剤、造影剤、麻酔薬、干渉RNA、遺伝子ベクター、生物製剤、免疫抗原、抗原、インターフェロン、ポリクローナル抗体調合剤、モノクローナル抗体、インスリン、またはこれらの任意の組み合わせがあげられる。留意されるように、医薬組成物または医薬製剤は、1つ以上の活性治療薬、または活性薬剤と診断薬の組み合わせ等含み、典型的にはさらに適切な賦形剤を含み得る。
【0083】
さらに、本明細書に開示される医薬組成物は、その意図した投与経路と適合するように調剤され得る。投与経路の例として、非経口、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(例えば吸入剤)、経皮投与(すなわち局所用)、経粘膜投与、および直腸投与があげられる。非経口、皮内、または皮下の適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の構成要素を含むことができる:注射用蒸留水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等の無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラオキシ安息香酸エステル類等の抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸等の緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張度の調整用薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または基剤を用いて調節することができる。非経口調合剤は、ガラスまたはプラスチックで作られたアンプル、使い捨て注射器、または多人数用バイアルに入れることができる。
【0084】
注射可能な使用に適した医薬組成物は、無菌注射剤溶液または分散液の即席の調製のための、無菌溶液注射剤(水溶性)または分散液と無菌粉末を含む。静脈内投与については、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.,US)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、かつ容易に注射可能な程度に流体であるべきである。それは製造と保管の条件下で安定していなければならず、かつ細菌および真菌等の微生物の汚染作用に対し保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合物を含有している溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用、分散の場合に必要とされる粒径の維持、および界面活性薬剤の使用によって維持され得る。微生物の作用に対する予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノル、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトール、組成物中の塩化ナトリウム等のポリアルコールを含むのが望ましいだろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらされ得る。
【0085】
無菌注射剤溶液は、必要に応じて、上記に列挙された成分の1つ、またはそれらの組み合わせを用いて、適切な溶媒に必要な量の活性化合物を組み込み、次に濾過滅菌を行うことによって調製され得る。一般的には、分散液は、上記に列挙されたものから基本的な分散媒と必要な他の成分を含む無菌ビヒクルへと活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射剤溶液の調製のための無菌粉末剤の場合、調製の方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、それは、以前に滅菌濾過された溶液から有効成分と任意の更なる望ましい成分の粉末剤をもたらす。
【0086】
吸入による投与では、化合物は、適切な推進薬、例えば二酸化炭素等のガス、または噴霧器を含む、圧力を加えられた容器またはディスペンサーからのエアゾールスプレーの形態で送達される。
【0087】
全身投与はまた、経粘膜または経皮的な手法により行うことができる。経粘膜投与または経皮投与のために、浸透される障壁に対して適切な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で一般的に知られており、例えば経粘膜投与のための洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻内噴霧または坐剤の使用により行うことができる。経皮投与のために、活性化合物は、当技術分野で一般的に知られている軟膏剤、軟膏、ゲル剤、またはクリーム剤へと調剤される。化合物はまた、直腸送達のための坐剤(例えばカカオ脂および他のグリセリド等の従来の坐剤基剤と共に)または停留浣腸剤の形態で調製することができる。
【0088】
この点に関し、KDM4(i)化合物Iは、本明細書に記載される実施例において経口投与により効果的に投与された。経口組成物は、一般的には不活性な希釈剤または食用の担体を含む。それらはゼラチンカプセルでカプセル化され、または錠剤へと圧縮することができる。経口治療の投与の目的で、活性化合物は賦形剤を組み込まれ、および錠剤、トローチ、またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、うがい薬として使用するために流体担体を使用して調製することができ、ここで流体担体中の化合物は、経口的に投与され、ひゅいっと吐き出され、または呑み込まれる。薬学的に適合する結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ等は、類似の性質の以下の成分または化合物のいずれかを含むことができる:結晶セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチン等の結合剤;デンプンまたはラクトース等の賦形剤;アルギン酸、PRIMOJEL(登録商標)(ナトリウムデンプングリコラート、DFEファーマ)、またはコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミトステアリン酸グリセリル、またはベヘン酸グリセリル等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の滑剤;スクロースまたはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、あるいはオレンジ香味料等の香料添加剤。したがって、医薬組成物の例は、例えば、ハードゼラチンまたはソフトゼラチン、メチルセルロース、または消化管内で容易に溶解される他の適切な物質で作られた錠剤、丸剤、サシェ剤、またはカプセル剤を含む適切な経口剤形で製剤され得る。いくつかの実施形態では、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等を含む適切な無毒の固体担体が使用される。例えば、Remington,2005を参照。
【0089】
例えば、錠剤は、48重量%の化合物I、45重量%の微結晶性セルロース、5重量%の低置換されたヒドロキシプロピルセルロース、および2重量%のステアリン酸マグネシウムを混合することによって調製することができる。直接圧縮によって錠剤を調製することができる。圧縮錠剤のこの例の総重量を250-500mgに維持する。経口量は典型的に、1日当たり1~4回、またはそれ以上で、約1.0mg~約1000mgの範囲であり得る。
【0090】
一実施形態において、KDM4(i)化合物は、植込剤とマイクロカプセル化された送達システムを含む、徐放性/制御放出製剤等の、化合物が身体から急速に排出されるのを防ぐ担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等の、生分解性の生物学的適合性のあるポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製のための方法が当業者に明白になるだろう。例えば活性成分は、コロイド状の薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンにおいて、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース、またはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル等の、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセルに封じ込めることができる。
【0091】
徐放性製剤が調製可能であり、および徐放性製剤の好適例として、抗体を含む固形の疎水性ポリマーの半透性マトリックスがあげられ、マトリックスは造形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル)またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチルL-グルタミン酸塩の共重合体、非分解性のエチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)等の分解性の乳酸グリコール酸共重合体(乳酸グリコール酸共重合体とリュープロレリン酢酸からなる注射可能なミクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸があげられる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸グリコール酸等のポリマーは、100日間にわたる分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い期間、タンパク質を放出する。そのような物質もまた、市販で入手可能である(例えばAlza Corp.;Nova Pharm.,Inc.)。リポソーム懸濁液(モノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容可能な担体として使用することができる。これらの調製は、当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0092】
経口または非経口の組成物は、投与の容易さと用量の均一性のために、単位用量形態で製剤されてもよい。本明細書で使用される単位用量形態は、処置される被験体のための単位用量に適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体に関連する望ましい治療効果をもたらすように計算された活性化合物の予め決められた量を含有している。本明細書に開示される単位用量形態に関する仕様は、活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療効果、および個体の処置のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の制限によって決定され、それらに直接依存する。
【0093】
医薬組成物または単位用量は、投与の指示書と共に容器、パック、またはディスペンサーに含まれ得る。
【0094】
製剤はまた、処置されている特定の徴候に必要であれば複数の活性化合物、好ましくは、互いに有害に影響し合わない相補的な活性を有するものを含むことができる。代替的または付加的に、組成物は、その機能を高める薬剤、例えば免疫賦活性薬剤、化学療法剤、サイトカイン、抗体、または成長阻害剤等を含むことができる。そのような分子は、意図した目的に有効な量の組み合わせで適切に存在する。
【0095】
「医薬製剤」、「製剤」、または「医薬組成物」は、少なくとも1つの活性薬剤を含み、かつ少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝液、安定剤、または当業者に周知の他の物質をさらに含み得る薬物製品を指す。例えば、典型的な注射可能な医薬製剤は、発熱物質を含まず、かつ適切なpHと等張性と安定性を有する、非経口的に許容可能な水溶液を含む。医薬組成物は、例えばヒトの患者または被験体等の、様々な種において診断、治療、または研究に有用であり得る。少なくとも1つの実施形態では、医薬組成物は、テモゾロミド、タンパク質結合ヨウ素パクリタキセル、またはロミデプシン等の、ブロモドメイン阻害剤と化学療法剤を含む。例えば、ブロモドメイン阻害剤は、4[2(シクロプロピルメチルアミノ)-5-メチルスルホニルフェニル]-2-メチルイソキノリン-1-オンであってもよい。本明細書に記載される薬剤と組成物は、一般に認められた文献に記載されるような1つ以上の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を使用して、任意の従来方式によって調剤することができる。例えば、REMINGTON:SCIENCE&PRACTICE OF PHARMACY,22nd Ed.(Lloyd(Ed.),Pharmaceutical Press,London,UK,2012)を参照。そのような製剤は、被験体への適切な投与のための形態を提供できるように、適切な量の担体と共に、好ましくは精製された形態で、本明細書に記載される治療上有効な量の活性薬剤を含む。
【0096】
医薬製剤は、治療上有効な量の少なくとも1つの活性薬剤を含むことができる。そのような有効な量は、投与される剤形の効果、または1つ以上の薬剤が使用される場合、薬剤と1つ以上の追加の活性薬剤の組み合わせ効果に部分的に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。治療上有効な量の活性薬剤はまた、個体における望ましい反応、例えば少なくとも1つの症状パラメータの改善を引き出すために、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重等の因子、および薬剤(および1つ以上の追加の活性薬剤)の性能に応じて変動し得る。例えば、治療上有効な量の剤形は、特定の障害を阻害する(重症度を低減する、または発生を消去する)、または予防する、あるいは当技術分野で既知の、または本明細書に記載される特定の障害の症状のいずれか1つを低減することができる。治療上有効な量はまた、治療上有効な効果が活性薬剤または剤形の有毒または有害な効果を上回る量であってもよい。
【0097】
医薬組成物は、処置される疾病にとって適切な手法で投与される(以下参照)。適切な用量と投与の適切な持続時間および頻度は、被験体の状態、被験体の疾患のタイプと重症度、有効化合物の特定の形態、および投与の方法に基づいて決定され得る。一般に、適切な用量と処置レジメンは、治療的または予防的な恩恵をもたらすのに十分な量の活性組成物を提供する(例えば、より頻繁な完全寛解または部分寛解、あるいはより長い無病生存または全生存率、または症状の重症度の低下等の、臨床結果の改善、以下参照)。最適な容量は、一般的に、実験モデルまたは治験を使用して決定され、その後、被験体の体質量、体重、または血液量に合わせて調節される。
【0098】
したがって、少なくとも1つの置換されたピリジン誘導体KDM4(i)化合物を含む医薬組成物の用量は、疾患の段階、健康状態のステータス、年齢、および他の因子等の被験体(例えばヒト患者)の状態に応じて異なり得る。
【0099】
留意されるように、本明細書に開示されるKDM4(i)化合物は、併用療法、つまり癌の様々な形態、自己免疫疾患、および炎症性疾患等の病的状態または障害を処置するのに有用な他の薬剤、例えば治療薬と組み合わせて投与されてもよい。この文脈における用語「組み合わせて」は、薬剤が実質的に同時に、同時または連続的のいずれかで与えられることを意味する。連続的に与えられる場合、第2の化合物の投与開始時に、2つの化合物うちの第1のものは、好ましくは処置部位で、有効濃度で依然として検出可能である。
【0100】
例えば併用療法は、1つ以上の追加の治療薬、例えば1つ以上のサイトカイン、成長因子阻害剤、免疫抑制薬、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素抑制因子、または細胞毒性薬あるいは細胞静止薬と共に製剤された、または同時投与される、本明細書に開示される1つ以上の抗体を含むことができる。そのような併用療法は、より低い用量で投与される治療薬を有利に利用してもよく、したがって様々な単独療法に関係する可能性のある毒性または併発症を回避する。例えば、本明細書に開示される治療用のKDM4(i)化合物は、抗体と組み合わせて使用されてもよく、さらに炎症反応の異なる段階に介入する薬剤を含んでもよい。本明細書に記載される1つ以上のKDM4(i)化合物は、他の化学療法剤等の1つ以上の追加の薬剤、またはワクチン、抗毒素、サイトカイン、または成長因子アンタゴニスト等の生物製剤(例えば可溶性受容体、ペプチド阻害剤、小分子、リガンド融合);それらの抗体または抗原結合部分(例えば、腫瘍マーカー、サイトカイン、または成長因子あるいはそれらの受容体に結合する抗体);および抗炎症性サイトカインまたはそれらのアゴニストと共に製剤され、または同時投与されてもよい。
【0101】
少なくとも1つの実施形態では、KDM4(i)化合物は、少なくとも1つの追加の化学療法剤と共に製剤され、または同時投与され得る。化学療法剤は、ブロモドメイン阻害剤(例えば国際公開WO2015058160号;米国特許第20150111885号;米国特許第9,034,900号)、アルキル化剤、または分裂阻害剤であってもよい。
【0102】
したがって、活性薬剤(すなわちKDM4(i)化合物)は、単独療法として、または併用剤形の他の活性薬剤との併用療法として、追加の処置、例えば同じ、関連する、または追加の障害のための別の処置として、被験体に投与することができる。例えば、KDM4(i)化合物は、同じ製剤中で、または同時あるいは連続して投与される異なる製剤中で、ブロモドメイン阻害剤、ロミデプシン、テモゾロミド、タンパク質結合ヨウ素パクリタキセル等の化学療法剤と組み合わせることができる。付加的に、併用療法は、被験体(例えばヒト患者)に、被験体に治療効果を提供する1つ以上の薬剤(例えば抗生物質、抗凝固薬、抗高血圧薬、または抗炎症薬)を投与する工程を含むことができる。他の例では、併用療法は、KDM4(i)化合物と、三種陰性または難治性の乳癌等の癌を有する被験体に治療効果を提供する1つ以上の追加の薬剤を被験体に投与する工程を含むことができる。同様に、他の例では、併用療法は、KDM4(i)化合物、タンパク質結合ヨウ素パクリタキセル、またはKDM4(i)化合物とパクリタキセルを含む組み合わせ、および癌を有する被験体に治療効果を提供する1つ以上の追加の薬剤を、被験体に投与する工程を含むことができる。他の実施形態では、活性薬剤が最初に投与され、追加の活性薬剤が次に投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の活性薬剤は同時に投与されるが、例えば、KDM4(i)化合物とテモゾロミドの投与を含む、またはKDM4(i)化合物とパクリタキセルを含む、あるいはKDM4(i)化合物とロミデプシンを含む併用療法を提供する、異なる薬物送達デバイスまたは送達モードを使用する。少なくとも1つの実施形態では、KDM4(i)化合物は化合物Iである。
【0103】
KDM4(i)化合物の投与を含む治療により処置され得る癌として、細胞腫、肉腫、胚細胞腫瘍、リンパ腫または白血病、芽細胞腫、または他の癌があげられる。細胞腫として、腺上皮性腫瘍、移行上皮癌、腺様嚢胞癌、インスリノーマ、肝細胞癌、胆管癌、虫垂カルチノイド、形成性胃組織炎、喉頭癌、下咽頭癌、口腔癌、下咽頭癌、唾液腺癌、舌癌、胃癌、プロラクチノーマ、膨大細胞腫、肝細胞癌、腎実質癌、乳頭状腎癌、胆嚢癌、気管支癌、グラウィッツ腫瘍、原発不明細胞腫、多発性内分泌腺腫、類子宮内膜腺腫、皮膚付属器腫瘍、粘表皮癌、嚢胞腫、粘液嚢腺腫、嚢胞腺腫、腹膜偽性粘液腫、乳腺組織関連腫瘍、腺房細胞腫、複合上皮性腫瘍、ウォーシン腫瘍、胸腺腫、特殊性腺腫瘍、性器索間質腫瘍、固形陰唇癌、顆粒膜細胞腫、卵巣男性胚腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、グロムス腫瘍、傍神経節腫、クロム親和細胞腫、グロムス腫瘍、色素性母斑があげられる。肉腫として、アスキン腫瘍、ブドウ状肉腫、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、悪性血管内皮腫、悪性神経鞘腫、骨肉腫、軟部肉腫(胞巣状軟部肉腫、血管肉腫、葉状嚢肉腫、皮膚線維肉腫、類腱腫、線維形成性小細胞腫瘍、類上皮肉腫、骨外性軟骨肉腫、骨外性骨肉腫、血管外皮細胞腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、リンパ肉腫、肉腫悪性線維性組織球腫、神経線維肉腫、および滑膜肉腫を含む)があげられる。リンパ腫および白血病として、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症等)、脾辺縁帯リンパ腫、プラスマ細胞骨髄腫、形質細胞腫、単クローン性免疫グロブリン沈着症、H鎖病、麦芽リンパ腫と呼ばれる節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、菌状息肉腫、およびセザリー症候群、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫)、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ、T細胞性前リンパ球性白血病、T細胞性大顆粒リンパ球性白血病、悪性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫;原発性皮膚CD30陽性T細胞増殖性疾患、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫 、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、分類不能未分化大細胞リンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫(結節性硬化症、混合細胞型、リンパ球豊富型、リンパ球減少型、または非減少型、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫)、HIV関連のリンパ腫(例えば原発性滲出性リンパ腫)があげられる。胚細胞腫瘍として、限定されないが、胚細胞腫、未分化胚細胞腫、胚芽腫以外の胚細胞腫瘍、卵黄嚢腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍;性腺外胚細胞腫瘍、奇形腫、多胚腫、および性腺芽細胞腫があげられる。芽細胞腫は脳室上衣芽腫、鼻腔神経芽細胞腫、腎芽細胞腫を含む。
【0104】
KDM4(i)化合物の投与を含む治療で処置され得る他の癌として、非小細胞肺癌と小細胞肺癌(小細胞癌(燕麦細胞癌)、小細胞/大細胞癌、および混合型小細胞癌を含む)等の肺癌、肝臓癌、胃癌、膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、骨髄腫、副腎皮質癌;甲状腺癌(甲状腺髄様癌および甲状腺乳頭癌)、腎癌、子宮頸癌、子宮体癌、子宮内膜癌、絨毛癌、睾丸癌、尿路癌、黒色腫、基底細胞癌、奇形腫、脈絡膜悪性黒色腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、筋肉腫、および形質細胞腫、肛門癌;虫垂癌;非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍;膀胱癌;脳癌(脳幹神経膠腫、中枢神経系の非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍、中枢神経系胚芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽細胞腫、上衣腫、髄上皮腫、中分化型の松果体実質腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽腫を含む);乳癌;気管支腫瘍;原発部位不明癌;カルチノイド腫瘍;中枢神経系の非定型奇形腫様/横紋筋肉腫様腫瘍;中枢神経系胚芽腫;小児癌;内分泌膵島細胞腫;子宮内膜癌;肝臓外胆管癌;胆嚢癌;胃癌;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質細胞腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);妊娠性絨毛腫瘍;頭頸部癌;心臓癌;眼内黒色腫;島細胞腫;ランゲルハンス細胞組織球症;喉頭癌;口唇癌;肝臓癌;悪性線維性組織球腫の骨癌;髄様上皮腫;メルケル細胞癌;原発不明の転移性頸部扁平上皮癌;多発性内分泌腺腫症;多発性骨髄腫;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍;骨髄異形成症候群;骨髄増殖性腫瘍;鼻腔癌;鼻咽頭癌;口腔癌;口腔咽頭癌;骨肉腫;他の脳および脊髄の腫瘍;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;乳頭腫症;副鼻腔癌;副甲状腺癌;骨盤癌;陰茎癌;中分化型の松果体実質腫瘍;松果体芽腫;下垂体腫瘍;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;直腸癌;腎癌;呼吸器癌;小腸癌;頸部扁平上皮癌;テント上原始神経外胚葉腫瘍;胸腺癌;胸腺腫;甲状腺癌;移行上皮癌;腎盂および尿管の移行上皮癌;栄養膜腫瘍;尿管癌;尿道癌;子宮肉腫;膣癌;外陰癌があげられる。
【0105】
置換されたピリジン誘導体KDM4(i)化合物で処置され得る硬腫瘍に関連する癌の具体例として、乳癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、骨髄原発性肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、大腸癌、腎臓癌、膵癌(グルカゴノーマ、ガストリノーマ、膵臓神経内分泌腫瘍(VIP腺腫)等)、骨癌、卵巣癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、口腔癌、鼻腔癌、喉頭癌、有棘細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、子宮癌、精巣癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、脳腫瘍(膠芽腫、多形神経膠芽腫、星細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、および末梢神経外胚葉腫瘍等)、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、皮膚癌、黒色腫(悪性黒色腫、結節型黒色腫、異形成母斑、悪性黒子型黒色腫、表在拡大型黒色腫、および悪性末端性黒子性黒色腫)、神経芽腫、および網膜芽細胞腫があげられる。特に、KDM4(i)化合物は、EGFR経路に関連する癌を処置するのに有用であり得る。
【0106】
化学療法剤はしばしば、機能性、化学構造、および他の薬剤との関係を特徴とする。化学療法剤として例えば以下があげられる:アルキル化薬(例えばアザシチジン、ナイトロジェンマスタード:メクロレタミン、クロラムブチル、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、イホスファミド、ベンダムスチン(LEVACT(登録商標))、およびメルファラン;ニトロソウレア:ストレプトゾシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン、およびビスクロロエチルニトロソウレア(bischloroethylnitrosurea);スルホン酸アルキル:ブスルファン、トリアジン:ダカルバジン(DTIC)とテモゾロミド(TEMODA(登録商標));エチレンイミン:チオテパとアルトレタミン(ヘキサメチルメラミン);白金薬(シスプラチン、カルボプラチン、サトラプラチン(JM-216)、CI 973、およびオキサリプラチン等);代謝拮抗薬(例えば5-フルオロウラシル(5 FU)、6-メルカプトプリン(6 MP)、カペシタビン(XELODA(登録商標))、シタラビン(ARA-C(登録商標))、アザシチジン、デシタビン(DACOGEN(登録商標)、5-アザ-2’-デオキシ-シチジン、シチジン類似体、および低メチル化剤)、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、ヒドロキシ尿素、メトトレキセート、およびペメトレキセド(ALIMTA(登録商標));アントラサイクリン;(例えばダウノルビシン(ダウノマイシン、rubidomycinまたはcerubidine)、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、エピルビシン、イダルビシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン;マイトマイシンC、およびミトキサントロン(トポイソメラーゼII阻害剤としても作用する))、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばトポイソメラーゼI阻害剤:トポテカン、イリノテカン(CPT 11);トポイソメラーゼII阻害剤:エトポシド(VP-16)、カンプトテシン、テニポシド、およびミトキサントロン);分裂阻害剤(例えばタキサン:パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、およびドセタセル(TAXOTERE(登録商標)));エポチロン:イクサベピロン(IXEMPRA(登録商標));ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、およびビノレルビン(NAVELBINE(登録商標))等のビンカアルカロイド:エストラムスチン(EMCYT(登録商標));6-メルカプトプリン、5-フルオロウラシル、シタラビン、クロファラビン、およびゲムシタビン等のプリンまたはピリミジンのアンタゴニスト;細胞成熟化剤(例えば三酸化ヒ素とトレチノイン);DNA修複酵素抑制因子(例えばポドフィロトキシン、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、およびテニポシド);細胞生存を防ぐ酵素(例えばアスパラギナーゼとペグアスパラガーゼ);コルチコステロイド(例えばプレドニゾン、メチルプレドニゾロン(SOLUMEDROL(登録商標))、およびデキサメタゾン(DECADRON(登録商標)));HDAC阻害剤(例えばロミデプシン(ISTODAX(登録商標))、ボリノスタット(ZOLINZA(登録商標)));Lアスパラギナーゼ(ELSPA(登録商標))、2デオキシ-D-グルコース、プロカルバジン(MATULANE(登録商標))とボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))等の他の代謝拮抗薬;他の細胞毒性薬(例えばエストラムスチンリン酸、プレドニマスチン、およびプロカルバジン);ホルモン(例えばタモキシフェン、リュープロレリン、フルタミド、およびメゲストロール;ホルモンアゴニストまたはアンタゴニスト、部分アゴニスト、または部分アンタゴニスト);モノクローナル抗体(例えばジェムツツマブオゾガミシン(MYLOTARG(登録商標))、イノツズマブ オゾガマイシン(CMC-544)、アレムツズマブ、リツキシマブ、およびイットリウム90イブリツモマブチウクセタン);免疫調節薬(例えばサリドマイドとレナリドミド);Bcr Ablキナーゼ阻害剤等のキナーゼ阻害剤(例えばAP23464、AZD0530、CGP76030、PD180970、SKI-606、イマチニブ、ダサチニブ(BMS354825)、ニロチニブ(AMN107)、およびVX680/MK 0467(オローラキナーゼ阻害剤))。
【0107】
BET阻害剤治療と併用され得る追加の抗癌療法として、外科手術、放射線療法(例えばガンマ線、中性子ビーム放射線療法、電子ビーム放射線療法、プロトン療法、近接照射療法、および全身性放射性同位体)、内分泌療法、生物学的応答修飾物質(例えばインターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子)、温熱療法と寒冷療法、および有害効果を低減するための薬剤(例えば抗催吐薬)があげられる。
【0108】
本明細書での化学療法剤への言及は、化学療法剤またはその誘導体に適用され、したがって本発明は、これらの実施形態(薬剤;薬剤または誘導体)のいずれかを熟考し、かつ包含する。化学療法剤または他の化学部分の「誘導体」または「類似体」は、限定されないが、化学療法剤または部分に構造上類似している、または化学療法剤または部分と同じ一般的な化学的クラスにある化合物を含む。いくつかの実施形態において、化学療法剤または部分の誘導体または類似体は、化学療法剤または部分の類似する化学物質または物理的性質(例えば機能性を含む)を保持する。
【0109】
KDM4(i)化合物を含む医薬組成物の投与は、事前の、または現在行われている治療と置き換えられてもよく、またはそれを増大させてもよい。例えば、1つの医薬製剤での処置に際し、追加の活性薬剤の投与は停止され、または縮小され、例えばより低い濃度で、またはより長い投与間隔で投与され得る。いくつかの実施形態では、事前治療の適用を維持することができる。いくつかの実施形態では、事前治療は、活性薬剤のレベルが治療効果を提供するのに十分なレベルに達するまで維持される。したがって、2つの治療は併用して、連続して、または同時に施すことができる。さらに、追加の活性薬剤と組み合わせたKDM4(i)の投与は、相乗的な治療結果を提供し得る。提供される併用療法は、直ちに行われてもよく、または間隔を置いて複数回行われてもよい。正確な用量と処置の持続時間は、処置されている患者の年齢、体重、および症状により変動する場合もあり、および既知の試験プロトコルを経験的に使用して、または、インビボまたはインビトロ試験あるいは診断データからの外挿法によって、経験的に決定されてもよいことが理解される。任意の特定の個体のために、特定の用量レジメンが個体の必要と、製剤の投与を行うまたは監督する人物の職業上の判断に従って、経時的に調節されるべきであることがさらに理解される。
【0110】
本明細書で使用される用語「被験体」または「患者」は、乳癌、特に三種陰性乳癌等の癌の診断、予後、または治療に関連する、任意の被験体、特に哺乳動物の被験体を指す。用語「被験体」または「患者」は、文脈が示すように、ヒトまたはヒト以外の動物を含み得る。
【0111】
本明細書で使用されるように、「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」、「軽減する(palliating)」、「寛解する(ameliorating)」または「の処置(treatment of)」は区別なく使用され、概して治療効果または予防効果、例えば疾患の可能性を減らすこと、疾患の発症を減らすこと、または疾患の重症度を低減することを指す。例えば、処置は、さらなる腫瘍成長または悪性を防ぐための、または疾患の症状、徴候または原因を少なくとも部分的に治療または緩和するための、被験体への投与時の治療の性能を指すことができる。これらの用語は、限定されないが、治療効果または予防効果を含む、有益または望ましい結果を得るためのアプローチを指す。
【0112】
「治療効果」は、処置されている基礎疾患の根絶または寛解を一般的に意味する。治療効果はまた、患者が依然として基礎疾患を罹っているにもかかわらず改善が観察されるように、基礎疾患に関連する生理的な症状の1つ以上の根絶または寛解により達成され得る。したがって、治療効果は必ずしも特定の癌に対する治療法ではなく、むしろ最も典型的には緩和;生存の増加;腫瘍の除去;癌に関係した症状の低減;癌の発症に起因する二次疾患、障害、または疾病の予防または緩和;または転移の予防を含む結果を包含する。予防効果に関して、疾患の診断が行われなくとも、組成物は、特定の疾患の進行のリスクにある患者に、または疾患の生理学的症状の1つ以上を報告する患者に投与され得る。
【0113】
したがって、本明細書で使用される「治療薬」は、望ましい、通常は有益な効果をもたらすために被験体に投与される任意の治療的な活性物質を指す。用語「治療薬」は、例えば、一般に小分子薬と呼ばれる古典的な低分子治療薬;および限定されないが、抗体またはその機能的に活性な部分、ペプチド、脂質、タンパク薬物、タンパク質複合体薬、融合タンパク質、酵素、核酸、リボザイム、遺伝物質、ウイルス、細菌、真核細胞、およびワクチンを含む生物製剤を含む。治療薬はまた、プロドラッグであり得る。治療薬はまた、放射性同位体であり得る。治療薬は、光または超音波エネルギー等のエネルギー形態によって活性化される、または全身あるいは局所に投与可能な他の循環分子によって活性化される薬剤であり得る。加えて、治療薬は薬学的に調剤することができる。
【実施例】
【0114】
実施例1:乳癌幹細胞株
【0115】
患者の乳癌腫瘍材料は、患者の同意を得てUniversity Medical Centre Freiburgの病理学部から得られた(Ethics vote 307/13)。全ての原発腫瘍は、組織採取前に化学療法を受けており、かつ三種陰性として分類された被験体からものであった。全ての外科手術は、University Medical Centre FreiburgのDepartment of Obstetrics and Gynecologyによって実施された。移植とパラフィン包埋のための腫瘍組織標本は、Comprehensive Cancer Centre Freiburgの腫瘍バンクから、病理学者を通じて同時に得られた。本明細書に記載された試験への包含前に全ての患者から書面でのインフォームドコンセントを得た。
【0116】
原発性乳癌幹細胞(BCSC)株を、37℃で1時間、6U DNAse I(MACHERY-NAGEL GmbH&Co.KG,Duren,DE)と1mgのLIBERASE(商標)(Roche Diagnostics GmbH,Mannheim,DE)を補足した5mLのダルベッコPBS緩衝液(DPBS)(GIBCO(登録商標) media,Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,Mass.,US)中で、腫瘍材料の機械的分離と酵素消化によって単離した。その後、消化培養液を10mlのDPBSで希釈し、細胞ストレーナ(40μm,Becton Dickenson,Carlsbad,Cal.,US)で濾過し、残った組織群を2mLのシリンジからピストンで強く打った。5分間の200gでの遠心分離に続いて、上清を捨て、細胞ペレットをMEBM培地(GIBCO)で一回洗浄した。ペレットに赤血球を見ることができた場合、1mLのACK溶解バッファー(GIBCO)を細胞ペレットに加えた。室温で1分間インキュベートした後、最大6mLのMEBMを加え、調製物を5分間、200gで遠心分離機にかけた。上清を捨てた後、ペレットを1mLのMEBMに再懸濁し、40μmのストレーナによって濾過した。5分間の200gでの遠心分離に続いて、上清を捨て、残りの細胞ペレットを乳房幹細胞(MSC、以下参照)培地に採取した。細胞をNeubauerチャンバで数え(血球計)、次に、氷のように冷たいMSC培地とMATRIGEL(登録商標)マトリックス(CORNING、#354230)の1:1の混合物において、ウェルごとに2×104細胞で、24ウェルの低接着プレート(CORNING(登録商標),Corning,N.Y.,US)に平板培養した。30分間の37℃でのMATRIGELの凝固の後、各ウェルに500μLのMSC培地を付けた。細胞を低酸素条件(3%のO2、5%のCO2、92%のN2)下で、37℃で培養した。細胞が3Dで安定して増殖した場合、それらを細胞拡張のために2D培養で培養した。
【0117】
本明細書に記載されるMSC(乳房幹細胞)培地の主成分は、B27(登録商標)無血清細胞培養サプリメント(GIBCO、#17504-044)、アムホテリシンB(SIGMA-ALDRICH、#A2942)、およびペニシリンストレプトマイシン(GIBCO、#15140122)を補足した乳房上皮基本培地(GIBCO、#31331-028)である。この培地をさらに、表皮成長因子(f.c.20ng/mL,#AF 100-15,PeproTech,Rocky Hill,N.J.,US)、ヘパリン(f.c.4μg/mL,Sigma-Aldrich #H3149)、線維芽細胞成長因子(f.c.20ng/ml,PeproTech #AF-100-18B)、ゲンタマイシン(f.c.35μg/ml,GIBCO #15750-045)、およびRhoキナーゼ阻害剤(f.c.500nM,CALBIOCHEM(登録商標)#555550,Merck KGaA,Darmstadt,DE)で補足して、MSC培地を完成させた。
【0118】
3D環境でスフィアとしてBCSCを培養するために、24ウェルの低接着プレートのウェルごとに2×104細胞を、MATRIGEL:MSC培地の1:1混合物100μLに播種した。30分間の37℃でのMATRIGELの凝固の後、皿に500μLのMSC培地を付けた。細胞を上記の低酸素条件下で成長させた。1mLのMSC培地を2日後に加えた。残ったMATRIGEL分解のためのCORNING Dispaseとスフィア分離のためのACCUTASE(登録商標)細胞分離溶液(Innovative Cell Technologies,Inc.,San Diego,Cal.,US)を使用して、細胞を週1回、分離させた。細胞を、Neubauerチャンバにより数えた。
【0119】
2D環境でBCSCを拡張するために、10cmの培養皿につき4×105細胞を、2%のMATRIGEL(氷のように冷たい)を含む2mLのMSC培地に播種した。30分間の37℃でのMATRIGELの凝固の後、皿に8mLのMSC培地を付けた。細胞を上記の低酸素条件下で成長させた。培地を3日後に変えた。分離のためにACCUTASEを使用して週1回、細胞を分離させ、再播種前に数えた。
【0120】
高力価のアデノウイルス調製物を、Vector BioLabs(Malvern,Pa.,US)から得た。アデノウイルス粒子を、(MSC培地において)BCSC1細胞に関して300の感染多重度(MOI)、およびBCSC2細胞に関して150のMOIに加えた。
【0121】
実施例2:インビボアッセイ
【0122】
メチルセルロースでの癌幹細胞スフェロイドアッセイでは、細胞をACCUTASE溶液によって分離させて数えた。3×103の単一のBCSC1と1×103の単一のBCSC2細胞を、1%のメチルセルロース(Sigma-Aldrich,#M0512)を含む無血清MSC培地において、96ウェルの超低接着プレート(CORNING、#3474)の個々のウェルへと播種した。7日後に、4つの細胞より大きな全てのスフィアを、自己複製能に関して数え、および50μmの直径を超えるスフィアを、KDM4(i)処置細胞と対照細胞の両方に関して数えた。
【0123】
MATRIGEL(登録商標)マトリックスでの癌幹細胞スフェロイドアッセイでは、細胞をACCUTASE溶液によって分離させて数えた。三つ組の1×103と4×104の単一のBCSC1と単一のBCSC2細胞を、MSC培地において、96ウェルの超低接着プレートの個々のウェルへと、50%のMATRIGELで播種した。KDM4(i)の濃度は図で示される通りである。7日後に、50μm直径を超えるスフィアを、1×103の細胞を有するウェルにおいて、KDM4(i)処置細胞と対照細胞の両方に関して数えた。4×104の細胞を有するウェルを記載されるように分離して数えた;これらの4×104の細胞から、1×103の単一のBCSC1と単一のBCSC2細胞を、本明細書に記載されるように三つ組で播種して、阻害剤なしの二次自己複製を評価した。
【0124】
用量応答アッセイについては、細胞をACCUTASE溶液分離によって分離し、数えた。黒色の384ウェルプレート(Greiner Bio-One,Monroe,N.C.,US)のウェルを、2%のMATRIGEL(354230、Corning)を含む10μLのMSC培地でコーティングした。MATRIGELを凝固するための30分間の37℃でのインキュベーション後、1×103の単細胞を40μLの培地に384ウェルごとに播種した。正常な培養条件下で24時間後、KDM4(i)阻害剤(化合物I、Celgene Quanticel Research,Inc.)を50μLで各ウェルに加えて、最終指示濃度にした。正常な培養条件下での96時間のインキュベーションに続いて、細胞をPBSで1回洗浄し、20℃で少なくとも15分間、氷のように冷たいメタノールを用いて固定した。PBSでのさらなる洗浄工程後、細胞をDAPI(Sigma-Aldrich)で染色し、ScanR顕微鏡ベースの画像化プラットフォーム(Olympus Deutschland GmbH,Hamburg,DE)で読み出した。ウェルごとの全DAPI細胞核数を判定した。
【0125】
細胞増殖アッセイについては、安定したNLS-mCherry蛍光シグナル(核限局化ペプチド)でタグ付けされたBCSCをこのアッセイに使用した。細胞をACCUTASE分離によって分離して数えた。黒色の384ウェルプレート(Greiner)の各ウェルを、2%のMATRIGELを含む10μLのMSC培地でコーティングした。MATRIGELを凝固するための30分間の37℃でのインキュベーション後、1×103の単細胞/ウェルを40μLの培地に播種した。24時間の正常な培養の後、最終指示濃度になるまでKDM4(i)を50μLで各ウェルに加えた。その後で、ScanR顕微鏡ベースの画像化プラットフォーム(Olympus)を用いて第1の読み出しを開始し、60%の湿度と5%のCO2下で各ウェルの9つのセクターにおけるmCherry-蛍光細胞核を評価した。この読み出しを、7日間、24時間ごとに繰り返した。ScanRソフトウェア(Olympus)を用いて分析を行った。
【0126】
マイクロアレイ分析については、全RNAを、メーカーの説明書に従ってGeneMATRIX Universal RNA Purification Kit(Roboklon GmbH,Berlin,DE)を使用し、患者の物質、異種移植、および細胞から単離した。単離したRNAを、メーカーによって記載されるようにAMBION(商標)WT Expressionキット(Thermo-Fisher)で処理し、標準的なプロトコルに従ってILLUMINA(登録商標)HT 12v.4Expression Bead Chips(Illumina,Inc.,San Diego,Cal.US)にハイブリダイズさせた。発現データを処理し、R/Bioconductor Beadarrayパッケージ(PMID:17586828)v2.22を使用して四分位点を標準化した。Dunning et al.,Beadarray:R classes&methods for Illumina bead-based data,23 Bioinformatics 2183(2007)を参照。BioconductorパッケージilluminaHumanv4.db(v1.26)によりEntrezIDへとマッピングされたプローブセットのみを、さらなる下流の分析のために考慮した。同じEntrezIDと一致する多数のプローブセットの場合は、全てのサンプルにわたってそれぞれの最も高い四分位範囲を有するプローブセットを選択した。樹状図(図を参照)は、サンプル間のユークリッド距離に基づいた完全連結階層クラスタリングを表す。
【0127】
クロマチン免疫沈降(ChIP)KDM4(i)アッセイを、記載されるように実質的に行なった。Metzger et al.,LSD1 demethylates repressive histone marks to promote androgen receptor-dependent transcription,437 Nature 436(2005)。BCSC1細胞を、5×10-10MのKDM4(i)の欠如下または存在下で18時間、培養した。採収の3日前に、メーカーの説明書に従って、KDM4Aに対するshRNAまたはスクランブルしたshRNA(Ad-GFP-U6-hKDM4AshRNAおよびAd-U6-RNAi-GFP、Vector Biolabs)のいずれかを発現するアデノウイルスに細胞を感染させた。特定の抗体、抗KDM4A(Schuele Lab.#5766,lot 5766)、抗H3K9me3(#C15410056,lot A1675-001P,Diagenode)を用いて、GammaBind(商標)G Sepharose(商標)(GE Healthcare)において免疫沈降を行った。ライブラリを、標準的な方法に従い免疫沈殿DNAから調製した。ChIP-seqライブラリを、HiSeq2000(Illumina)を使用して配列決定し、Bowtie2ソフトウェアを使用してhg19参照ゲノムにマッピングした(例えば、Johns Hopkins Univ.,Baltimore,Md.,US)。Langmead et al.,Ultrafast&memory-efficient alignment of short DNA sequences to the human genome,10 Genome Biol.R25(2009)。入力を対照として使用し、ピーク発見アルゴリズムMACS 1.41を使用してデータをさらに分析した(Model-based Analysis of ChIP-Seq)(例えば、Nat’l Center Biotechnol.Info.,U.S.Nat’l Library Med.)。Zhang et al.,Model-based analysis of ChIP-Seq(MACS),9 Genome Biol.(2008)。1%を超えるFDRを有する全てのピークを、さらなる分析から除外した。独自にマッピングされた読み取りを使用して、ゲノム全体に渡る強度プロフィールを生成し、これをIntegrative Genomics Viewer(IGV)ゲノムブラウザ(例えば Broad Inst.,Cambridge,Mass.US)を使用して視覚化した。Thorvaldsdottir et al.,Integrative Genomics Viewer(IGV):high-performance genomics data visualization and exploration,14 Brief Bioinform.178(2013)。HOMERソフトウェア(例えばUniv.Calif.San Diego)を、ピークに注釈をつけるために、異なるピークファイル間の重複を算出するために、およびモチーフ検索のために使用した。Heinz et al.,Simple combinations of lineage-determining transcription factors prime cis-regulatory elements required for macrophage and B cell identities,38 Mol.Cell 576(2010)。ゲノム特徴(プロモーター、エクソン、イントロン、3’UTR、および遺伝子間領域)を、Reference Sequence(RefSeq)データベース(例えば、Nat’l Center for Biotechnol.Info.,U.S.Nat’l Library Med.)とHOMERソフトウェアを使用して定義し、計算した。
【0128】
細胞周期進行、およびアポトーシスまたはネクローシスに対するKDM4阻害の効果を検討するために、BCSC株1および2を、異なる時点(24時間、48時間、72時間、および96時間)で、50nMのKDM4(i)で処理した。薬物曝露に続いて、4×105の細胞を収集し、メーカーの説明書に従い、PI/リボヌクレアーゼ溶液(Cell Signaling Technol.#4087)を使用して、50μLのプロピジウムヨウ化物(PI)で染色した。BD LSR FortessaおよびBD FACS Diva Software(Becton Dickinson)を使用して細胞を分析した。subG1 G0/G1、S、およびG2/M相の細胞のパーセンテージを、FlowJoソフトウェアv6を使用して、1×105の未ゲート(ungated)細胞から判定した。
【0129】
設定された癌幹細胞マーカーの発現を分析するために、細胞を分離し、上記のように数えた。1×105の細胞をFACS緩衝液(PBS+1%のBSA)で洗浄し、暗闇で、室温で20分間染色し、次に抗体をFACS緩衝液に希釈した:抗CD24(eBioscience、46-0247;1:100)、抗CD44(eBioscience、12-0441-81;1:1000)、抗EpCAM(eBioscience、660 50-9326;1:100)、および抗CD49f(eBioscience、46-0495;1:200)。BD LSR FortessaおよびBD FACS Diva Software(Becton Dickinson)を使用して細胞を分析した。
【0130】
メーカーの説明書に従ってFITC Annexin V Apoptosis Detection Kit I(BD Bioscience)を使用し、アポトーシスを検出した。要するに、細胞を0.05%のトリプシンEDTA溶液で収集し、洗浄し、結合緩衝液中で1mlにつき1×106細胞に希釈した。100μLの結合緩衝液中で細胞に5μLのFITC結合抗体溶液と5μLのPIを加えることにより、暗闇で、室温で15分間、染色を行なった。その後、400μLの結合緩衝液を加え、細胞を、BD LSR FortessaとBD FACS Diva Software(Becton Dickinson)を使用して分析した。合計1×105細胞を数えた。FlowJoソフトウェアv6を用いて分析を行った。
【0131】
実施例3:同所性のBC異種移植片を有するNOD/SCIDマウスにおけるインビボ腫瘍形成性アッセイ
【0132】
全てのマウスの取り扱いと実験は、ドイツの動物福祉規則に従って行い、地方自治体による承認を受けた(動物プロトコルG13/114)。
【0133】
NOD/SCIDの雌(4-5週齢)に、イソフルラン吸入器を使用して麻酔をかけた。毛を剃って殺菌した腹部上での小さな矢状縫合切開(1.0cm以下)により、両側の乳腺#4へのアクセスが可能になった。腫瘍細胞を各々1×106の放射線照射された繊維芽細胞(新生児のヒト包皮繊維芽細胞(NuFF)、p11、GlobalStem、GSC-3002)と混合し、Matrigel:MSC培地の1:1混合物に懸濁した。各移植片の体積は、腺につき40μLであり、規定数のBCSCと1×106の繊維芽細胞を含んでいた。細い針を用いて1mLのシリンジを使用し、移植片を動物の両側の#4腺の乳房脂肪パッドに注入した。各移植片を、腺のリンパ節から遠位に配置した。外科的切開を、5/0糸(Ethicon、Z995)で縫合することにより封印した。動物の体重と腫瘍成長に関して、動物を週2回モニタリングし、キャリパーによって判定した。腫瘍容積を式:4/3×π×r3を使用して計算した。
【0134】
超音波測定を使用して腫瘍サイズをモニタリングし、40MHz(VisualSonics,Toronto,Canada)で、小動物用高解像度超音波システム(Vevo3100)とトランスデューサー(MX550D)を使用して集めた。3D腫瘍モデリングのために、トランスデューサーを、0.076mmのステップサイズで腫瘍に沿って自動的に移動させた。代表的な画像は、処置の始めと終わりに、Vevo LAB v.1.7.1で視覚化される質的な腫瘍差を示した。
【0135】
インビボ処置のために、透明な溶液が生成されるまで、音波処理(diagenode bioruptor)を用いて、処置の直前にKDM4(i)を50%のポリエチレングリコール(SIGMA)と50%のDPBS(pH=9、Gibco)から成るビヒクルに溶解した。腫瘍の直径が2mmの触知可能サイズに達すると、マウスを異なる群に無作為に割り当てた(n=8、各群)。阻害剤を、10mg/kgで経口摂食によりNOD/スキッドマウスに毎日投与した。対照動物はビヒクルのみを受け取った。動物を、体重と腫瘍成長に関して週2回モニタリングし、キャリパーによって判定した。
【0136】
免疫組織化学に関して、組織標本を直ちにホルマリン固定した(10%)。ホルマリン固定とパラフィン包埋の後、2μmの厚形材を切除してカバースリップ上に載せた。全てのカバースリップを乾燥チャンバで、58℃で2日間保管し、その後、キシレンを使用して脱パラフィン化し、エタノールで水和した。ヒト腫瘍組織および対応する移植腫瘍組織を、エストロゲン受容体タンパク質(モノクローナルウサギ抗ヒトエストロゲン受容体α、クローンEP1、コードIR084)、プロゲステロン受容体タンパク質(モノクローナルマウス抗ヒトプロゲステロン受容体、クローンPgR636、コードIR068)、HER2(ポリクローナルウサギ抗ヒトc-erbB-2オンコプロテイン、コードA0485)、Ki-67(モノクローナルマウス抗ヒトKi-67抗原、MIB-1、コードIR626)、ビメンチン(モノクローナルマウス抗ビメンチン、クローンV9、コードIR630)、E-カドヘリン(モノクローナルマウス抗ヒトE-カドヘリン、クローンNCH-38、コードIR059)、およびサイトケラチン8/18(モノクローナルウサギ抗ヒトサイトケラチン8/18、クローンEP17/EP30、コードIR094)用の抗体を使用して染色した。(宿主依存)ホースラディッシュベースのペルオキシダーゼ検出のために、ENVISION(登録商標)Flex Peroxidase-Blocking Reagent(DAKO,SM801)、ENVISION(登録商標)Flex+Rabbit(LINKER)(DAKO,K8019)またはENVISION(登録商標)Flex+Mouse(LINKER)(DAKO,K8021)、およびENVISION(登録商標)Flex/HRP(DAKO,SM802)を使用した。逆染色を、カバーガラスを加える前にヘマラムを用いて行なった。内部陽性対照として、患者由来の生理乳腺を、ER、PR、Ki-67(核染色)、サイトケラチン8/18、およびE-カドヘリン(細胞質膜の染色)のために使用した。乳腺を囲む筋上皮性層を、ビメンチンに関する内部対照として使用した。HER2については、HER2陽性の乳癌患者からの組織標本を(Ref20によるスコア3)、外部陽性対照として、すべてのHER2染色セッションのために運んだ。三種陰性乳癌は、ER、PR、およびHER2陰性(スコア<2)乳癌として定義された。Goldhirsch et al.,Personalizing the treatment of women with early breast cancer:highlights of the St Gallen Int’Expert Consensus on Primary Therapy of Early Breast Cancer 2013,24 Ann.Oncol.2206(2013)。
【0137】
記載されるようにRNAが単離された。Metzger et al.,Assembly of methylated KDM1A and CHD1 drives androgen receptor-dependent transcription and translocation,23 Nat.Str’l Mol.Biol.132(2016)。Abgene SYBR Green PCRキット(Invitrogen)を使用した定量的RT-PCRを、標準化のためのHPRTとHPRTのためのプライマー配列を使用し、サプライヤーのプロトコルに従って使用した。Id.VCAN、PRR5、ATF4、EGR1、FST、EGFR、RUNX1に関するプライマーは以下の表に示される。
【0138】
【0139】
RNAシーケンシング(RNA-seq)のための採取前に、BCSC1細胞を、指示されるように5×10-10MのKDM4(i)の欠如下または存在下で18時間で培養した。DKFZのシーケンシングコア施設において、生の配列ファイル(.fastqファイル)を生成するために、RNAサンプルを標準的なイルミナプロトコルによって配列決定した。これらの読み取りを、TopHatバージョン2を使用して、ヒトゲノムのhg19構造へと並べた。並べた読み取りを、Homerソフトウェアを用いて数え(RNA分析)、およびDEGをEdgeRとDESeqバージョン1.8.3を使用して識別した。データはGSEの下に寄託される。
【0140】
実施例4:置換されたピリミジン誘導体の化学合成
【0141】
別段の定めのない限り、商用サプライヤーから受け取った試薬と溶媒を使用した。無水溶媒および炉乾燥したガラス製品を、湿気および/または酸素に敏感な合成変換に使用した。収率は最適化されなかった。反応時間はおおよそであり、最適化されなかった。他に特に明記のない限り、カラムクロマトグラフイーおよび薄層クロマトグラフィー(TLC)をシリカゲル上で実行した。スペクトルはppm(δ)で与えられ、結合定数(J)はヘルツ(Hertz)で報告されている。プロトンスペクトルについては、溶媒ピークを基準ピークとして使用した。3-({[6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸(化合物I)の化学合成は、例えば、米国特許第9,447,046号に記載される方法に基づいて行うことができる。手短かに言えば、化合物Iは以下の調製にしたがって調製可能である:調製物1a:6-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン
【0142】
【0143】
水(10mL)中のNaNO2(2.35g、34mmol)の溶液を、0℃で25%のHBr(16mL)中の6-アミノ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン(5.0g、31mmol)の溶液に滴加した。次にその懸濁液を、0℃で48%のHBr(30mL)中のCuBr(8.9g、62mmol)の撹拌混合物に移した。結果として生じた混合物を室温に暖め、1時間撹拌した。混合物をEtOAcで抽出し、乾燥させ(Na2SO4)、そして濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(0%-60%のEtOAc/Hex)によって精製し、黄色の油として5.6g(80%)の表題化合物を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3):δ 2.10-2.16(2H,m),2.64(2H,t,J=6.4Hz),2.94(2H,t,J=6.0Hz),7.42(1H,s),7.44(1H,s),7.87(1H,d,J=8.9Hz)。[M+H]C10H9BrOに関して計算:225,227;Found:225,227。
【0144】
調製物1b:6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン
【0145】
【0146】
トルエン(20mL)中の6-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン(2.0g、8.9mmol)の溶液に、N-メチルアニリン(960mg、8.9mmol)、Cs2CO3(4.4g、13.4mmol)、BINAP(310mg、0.5mmol)、およびPd(OAc)2(110mg、0.5mmol)を加えた。混合物を、N2下で100℃で一晩撹拌した。混合物を濾過して濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(30%-80%のEtOAc/Hex)によって精製して、薄茶色の油として1.52g(68%)の表題化合物を得た。[M+H]C17H17NOに関して計算:252;Found:252。
【0147】
調製物1c:5-(アミノメチル)-N-メチル-N-フェニル-7,8-テトラヒドロナフタレン-2-アミン塩酸塩
【0148】
【0149】
トルエン(20mL)中の調製物1b(1.52g、6.0mmol)およびZnI2(150mg)の溶液に、室温でTMSCN(1.2g、12mmol)を加えた。混合物を60℃で2時間加熱し、次に室温まで冷まし、THF(20mL)を加えて希釈した。LAHの溶液(5mL、THF中に2.4M、12mmol)を室温でゆっくりと加え、溶液を0.5時間撹拌した。EtOAc(10mL)を加えて、次に水(1mL)と水性の1MのNaOH(1mL)を加えて、反応物をクエンチした。溶液を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、白色固形物として1.52g(89%)の粗製物1-(アミノメチル)-6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレン-1-オールを得た。
【0150】
メタノール(20mL)中のこの中間体(1.52g、5.4mmol)の溶液に、乾燥したHClガスを入れて2分間、泡立たせ、その間、冷まして≦30°でrxn温度を維持した。次に混合物を室温で1時間撹拌した。メタノールを減圧下で蒸発させて、HCl塩として1.4gの表題化合物(98%)を得た。[M+H]C18H20N2に関して計算:265;found 265。
【0151】
調製物1d:5-(アミノメチル)-N-メチル-N-フェニル-5,6,7,8テトラヒドロナフタレン2-アミン
【0152】
【0153】
MeOH(30mL)中の調製物1c(1.4g、5.3mmol)の溶液と濃縮HCl(3滴)に、N2下で、室温で10%のPd/C(200mg)を加えた。懸濁液を50psiで、水素下で16時間、室温で撹拌した。反応混合物をセライトにより濾過し、飽和Na2CO3でpHを約8-9に調節し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して、黄色の油として830mg(59%)の表題化合物を得た。[M+H]C18H22N2に関して計算:267;Found:267。
【0154】
調製物1e:メチル3-[({6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル}メチル)アミノ]ピリジン-4-カルボン酸塩
【0155】
【0156】
DMA(12mL)中の調製物1d(500mg、1.88mmol)の溶液に、メチル3-フルオロイソニコチナート(300mg、1.93mmol)を加えた。反応混合物をマイクロ波で1時間、170℃で撹拌し、次に水に注いで、EtOAcで抽出した。有機物をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(20%-80%のEtOAc/Hex)によって精製して、黄色の油として200mg(26%)の表題化合物を得た。[M+H]C25H27N3O2に関して計算:402;Found:402。
【0157】
調製物1f:メチル3-({[(1S)-6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸塩
【0158】
【化10】
および調製物2f:メチル3-({[(1R)-6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸塩
【0159】
【0160】
調製物1e(200mg)を、キラルHPLC(カラム:Chiralcel IA、250mm*4.6mm 5μm;移動相:Hex:EtOH=85:15;F:1.0mL/分;W:230nm;T=30℃)によって分離し、黄色の油としてそれぞれ95mg(47%)の調製物1f(6.54分)および92mg(46%)の調製物2f(7.91分)を得た。
【0161】
調製物1g:3-({[(1S)-6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸
【0162】
【0163】
THF(6mL)とH2O(2mL)中の調製物1f(95mg、0.24mmol)の溶液に、室温でLiOH.H2O(31mg、0.72mmol)を加え、反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を濃縮してTHFを除去し、残留物を水で希釈し、1.0Nの水性HCl溶液で約3-4のpHへと酸性化した。沈殿物を濾過によって回収し、EtOAc/エーテルで洗浄した。固形物を真空下で乾燥させ、黄色固形物として52mg(56%)の表題化合物を得た。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ 1.64-1.67(1H,m),1.77-1.84(3H,m),2.65-2.68(2H,d,J=5.6Hz),3.04-3.07(1H,m),3.21(3H,s),3.41-3.47(1H,m),3.56-3.60(1H,m),6.78-6.92(5H,m),7.21-7.25(3H,m),7.55(1H,d,J=5.2Hz),7.82(1H,d,J=5.2Hz),8.36(1H,s)。[M+H]C24H25N3O2に関して計算:388;Found:388。
【0164】
調製物2g:3-([(1R)-6-[メチル(フェニル)アミノ]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル]メチル}アミノ)ピリジン-4-カルボン酸(化合物I)
【0165】
【0166】
表題化合物を、調製物1gのための手順に従って、調製物2fから53%の収率で調製した。1H NMR(400MHz、DMSO-d6):δ 1.64-1.68(1H,m),1.77-1.84(3H,m),2.65-2.68(2H,d,J=5.6Hz),3.04-3.07(1H,m),3.21(3H,s),3.41-3.47(1H,m),3.56-3.60(1H,m),6.78-6.92(5H,m),7.21-7.25(3H,m),7.56(1H,d,J=4.8Hz),7.82(1H,d,J=5.2Hz),8.36(1H,s)。[M+H]C24H25N3O2に関して計算:388;Found:388。