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特許7442448無線機能を伴うデバイスの生産試験のための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】無線機能を伴うデバイスの生産試験のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20240226BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20240226BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20240226BHJP
   H04B 17/15 20150101ALI20240226BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20240226BHJP
【FI】
G01R29/10 E
G01R29/08 A
G01R35/00 K
H04B17/15
H04B17/29
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020537755
(86)(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 SE2019050024
(87)【国際公開番号】W WO2019143280
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】1850051-2
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】201810157507.6
(32)【優先日】2018-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519315899
【氏名又は名称】ブルーテスト、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】BLUETEST AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、クバーンストランド
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス、フランセーン
(72)【発明者】
【氏名】エーリク、ルンディーン
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-101445(JP,A)
【文献】特開平11-038055(JP,A)
【文献】特表2014-522497(JP,A)
【文献】特表2010-503843(JP,A)
【文献】特表2016-528759(JP,A)
【文献】特開2000-180489(JP,A)
【文献】特表2003-529983(JP,A)
【文献】特開平07-038275(JP,A)
【文献】特開2012-202946(JP,A)
【文献】特開2012-021875(JP,A)
【文献】特開2009-063427(JP,A)
【文献】特表2016-511409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/10
G01R 29/08
G01R 35/00
H04B 17/15
H04B 17/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内の被試験デバイス(DUT)の生産試験のための方法であって、前記チャンバが内部キャビティを内側に画定し、前記内部キャビティは、前記DUTを取り囲むようになっているとともに、電磁反射材料の内側に面する表面を有する壁を含み、それにより、前記内部キャビティ内で幾つかの共振モードをサポートするものである、前記方法は、
前記内部キャビティ内の1つ又は幾つかの測定位置に前記DUTを配置するステップと、
前記DUTと前記内部キャビティ内に配置される少なくとも1つのチャンバアンテナとの間の無線周波数伝送を幾つかの異なる静的モード分布形態で順次に測定するステップと、
前記静的モード分布形態で測定される前記無線周波数伝送と、前記内部キャビティ内の同じ測定位置に同じ静的モード分布形態で配置される基準デバイスの測定から得られる基準値とを比較するステップと、
前記比較に基づいて前記DUTが許容可能であるか又は許容不可能であるかどうかを決定するステップと、
を含み、
前記方法が2つ以上のDUTを同時に生産試験するようになっており、
前記2つ以上のDUTから前記チャンバアンテナへの送信を試験するとき、前記2つ以上のDUTが異なる周波数で同時に送信する、方法。
【請求項2】
前記チャンバが少なくとも1つの可動モード撹拌器を備え、前記モード撹拌器を異なる位置へ移動することにより異なる静的モード分布形態が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャンバが2つ以上のチャンバアンテナを備え、異なるチャンバアンテナを使用することにより異なる静的モード分布形態が得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記チャンバが、可動DUTホルダを備え、それにより、複数の測定位置を規定し、異なる測定位置を使用することにより異なる静的モード分布形態が得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
順次に測定される前記静的モード分布形態の数が少なくとも5以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
順次に測定される前記静的モード分布形態の数が100未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記DUTと少なくとも1つのチャンバアンテナとの間の無線周波数伝送を測定する前記ステップは、前記DUTから前記チャンバアンテナへの無線周波数伝送における放射電力を測定するステップ、及び、前記チャンバアンテナから前記DUTへの無線周波数伝送における受信機感度を測定するステップのうちの少なくとも一方を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記静的モード分布形態で測定される無線周波数伝送と、前記内部キャビティ内の同じ測定位置に同じ前記静的モード分布形態で配置される基準デバイスの測定から得られる基準値とを比較する前記ステップは、前記DUT及び前記基準デバイスにおける測定値間の相関及びオフセットのうちの少なくとも一方の決定を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記DUTは、無線インタフェースを介して、前記チャンバのコントローラに接続される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
被試験デバイス(DUT)の生産試験のための装置において、
チャンバであって、該チャンバが内部キャビティを内側に画定し、前記内部キャビティが、前記DUTを1つ又は幾つかの測定位置に配置されるときに取り囲むようになっているとともに、電磁反射材料の内側に面する表面を有する壁を含み、それにより、前記内部キャビティ内で幾つかの共振モードをサポートするものである、チャンバと、
前記内部キャビティ内に配置される少なくとも1つのチャンバアンテナと、
前記DUTと前記チャンバアンテナとの間の伝送を測定するために前記DUT及び前記チャンバアンテナに接続される測定機器と、
コントローラであって、前記測定機器を用いて、前記DUTと前記内部キャビティ内に配置される少なくとも1つのチャンバアンテナとの間の無線周波数伝送を幾つかの異なる静的モード分布形態で順次に測定して、前記静的モード分布形態で測定される前記無線周波数伝送と、前記内部キャビティ内の同じ測定位置に同じ静的モード分布形態で配置される基準デバイスの測定から得られる基準値とを比較するとともに、前記比較に基づいて前記DUTが許容可能であるか又は許容不可能であるかどうかを決定するようになっているコントローラと、
を備え
前記装置が2つ以上のDUTを同時に生産試験するようになっており、
前記2つ以上のDUTから前記チャンバアンテナへの送信を試験するとき、前記2つ以上のDUTが異なる周波数で同時に送信す装置
【請求項11】
前記チャンバが幅、長さ、及び、高さを有し、それらのうちの少なくとも1つが、1メートル未満である、請求項10に記載の装置
【請求項12】
前記静的モード分布形態をもたらすためにモード撹拌器を更に備える、請求項10又は11に記載の装置
【請求項13】
スピーカ及びマイクロフォンを更に備え、それにより、前記DUTと前記コントローラとの間に音響インタフェースを与える、請求項10から12のいずれか一項に記載の装置
【請求項14】
前記チャンバの前記内部キャビティ内に配置される吸収体を更に備える、請求項10から13のいずれか一項に記載の装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産試験のために無線機能を有する被試験デバイス(DUT)の性能を測定するための改良された装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
残響室又はモード撹拌室は、近年、例えば様々な無線通信デバイスの無線性能を試験する際に有効なツールになってきた。そのようなチャンバは、今日、例えば製品開発中に測定のために頻繁に使用される。
【0003】
同一出願人による米国特許第7444264号明細書及び米国特許第7286961号明細書は、例えば、アンテナの放射効率と携帯電話などのモバイル端末及び無線端末の全放射電力(TRP)とを測定するために使用できるそのような残響室を開示する。米国特許第7444264号明細書及び米国特許第7286961号明細書に記載されるのと同じ測定セットアップは、アンテナダイバーシティの性能を決定するためにも使用された。そのような残響室は、端末がいずれのシステムのために設計されているかに応じて、マルチパスフェージング環境での送信性能を測定するために、及び/又は、ビットエラーレート(BER)又はフレームエラーレート(FER)による受信性能を測定するために使用され得る。
【0004】
残響室は、前述の先の発明を利用することにより、アンテナ、増幅器、信号処理アルゴリズム、及び、コーディングの送信性能及び受信性能を含め、送信及び受信の両方に関して、モバイル端末及び無線端末の完全な性能を特徴付けるために使用され得る。現在使用されている残響室は、周囲空間全体にわたって入ってくる波の到達角度の分布が均一な等方性マルチパス環境を与える。これは、フェージングを伴うマルチパスにおけるアンテナ及び無線端末のための良好な基準環境である。
【0005】
残響室は、しばしばMIMO(Multiple Input Multiple Output Technologies)として知られる通信における、及び、幾つかの周波数帯域を使用して同時に動作するデバイスにおけるマルチパス信号の伝播に依存するデバイスの試験に対して簡単な解決策を与える。
【0006】
残響室では、信号がアンテナにより閉じられたキャビティ内に注入される。キャビティは反射壁から構成される。信号は、多くの異なる軌跡を経て複数の反射後に被試験デバイスに到達する。これは、受信機でフェード信号をもたらす。モード撹拌プレート及び/又はターンテーブルを移動することにより、チャンバの幾何学的形態が変化し、それにより、信号が受けるフェージングが変化する。これにより、入射波組成が異なる多数のフェージング状態を形成して試験できる。
【0007】
しかしながら、生産試験のための従来の残響室の使用は、これまでのところうまくいっていない。携帯電話、ラップトップ、タブレットコンピュータなどの電子デバイスの生産では、非常に大量に生産されるため、各製品を生産試験するとともに、各デバイスが適切に機能して製造業者により規定される品質基準を満たすようにする必要がある。そのような測定を従来の残響室で行なうことができる場合でも、そのようなチャンバ内での各測定は煩雑で時間のかかるものであり、そのため、製品の全体的な生産時間及びコストが大幅に増大する。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0160717号明細書は、試験されるべき製品がコンベアによって連続的にチャンバ内に搬入されてチャンバ外へ搬出されるとともに幾つかのデバイスが同時に試験される残響室を使用することによってこれを解決しようとする試みを開示する。しかしながら、これにもかかわらず、試験手順は、依然として煩雑であり、時間及びコストがかかる
現在の生産試験では、被試験デバイスが代わりにシールドボックス内に配置される。シールドボックスは、一般に、それをほぼ無響性にするために、内部で内面がRF吸収材で覆われ、また、被試験デバイスに対して無線接続を行なうためにアンテナカプラが使用される。しかしながら、この方法がかなり高速で費用効率が高いにもかかわらず、シールドボックス内の幾何学的配置に対する高い感度に起因して試験の不確実性が高く、一般に、リンクの単一のサンプルしか取得されない。その結果、所定の品質基準を満たしていない許容できない製品が承認されるとともに、所定の品質基準を満たしている許容できる製品が承認されない可能性が比較的高くなる。
【0009】
したがって、適切な試験が提供され、費用効率が高く及び時間効率が良い態様で動作される、携帯電話、ラップトップ、タブレットなどのデバイスの生産試験のための改良された方法及び装置の必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7444264号明細書
【文献】米国特許第7286961号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0160717号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、現在知られているシステムの前述の欠点の全て又は少なくとも一部を軽減する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、添付の特許請求の範囲に規定される装置及び方法によって達成される。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、チャンバ内の被試験デバイス(DUT)の生産試験のための方法であって、チャンバが内部キャビティを内側に画定し、内部キャビティは、DUTを取り囲むようになっているとともに、電磁反射材料の内側に面する表面を有し、それにより、内部キャビティ内で幾つかの共振モードをサポートする壁を含み、方法は、
内部キャビティ内の1つ又は幾つかの測定位置にDUTを配置するステップと、
DUTと内部キャビティ内に配置される少なくとも1つのチャンバアンテナとの間の無線周波数伝送を幾つかの異なる静的モード分布形態で順次に測定するステップと、
前記所定のモード分布形態で測定される無線周波数伝送と、内部キャビティ内の同じ測定位置に同じ静的モード分布形態で配置される基準デバイスの測定から得られる基準値とを比較するステップと、
前記比較に基づいてDUTが許容可能であるか又は許容不可能であるかどうかを決定するステップと、
を含む方法が提供される。
【0014】
本発明は、本質的に残響室として機能するチャンバを提供するが、必ずしも等方性環境を提供するわけではない。
【0015】
本発明は、生産試験が特定の課題を提起するという認識に基づいており、従来の測定とは非常に異なる。生産試験に関し、放射電力及び受信機感度などの特定のパラメータの絶対値を知ることは殆ど重要ではないが、所定の品質基準を満たす公称で正しく機能するデバイスと、品質基準を満たさない異常で欠陥のあるデバイスとの間を区別することは重要である。新規な発明により、被試験デバイスに欠陥があるか又は性能が良くないかどうかを検出する機能を与えつつ、従来の残響室よりも大幅に小さい残響室を使用できる。具体的には、例えば出力電力又は受信機感度にずれを与えるなど、無線モジュールが異常であるかどうか、又は、アンテナモジュールが異常であり、それにより、誤ったアンテナパターンを与えるかどうかを決定できる。
【0016】
それぞれの測定ごとの静的モード分布形態の違いに起因して、DUTとチャンバアンテナ及びそれに接続される測定機器との間の結合は、これらの各測定で異なる。したがって、測定値は様々な異なる状態に関連する値を与える。
【0017】
更に、これらの測定値は、同じ位置で同じ静的モード分布形態で基準デバイスを測定することによって与えられる基準値と比較される。基準デバイスは、既に測定されてしまって品質基準を満たすと判断された製品であってもよい。したがって、基準デバイスは、定められた要件を満たすと判断された既知の性能を有する。基準デバイスは、「ゴールデンスタンダード」又は「ゴールデンデバイス」と称される場合がある。全てのDUTを測定する前又はDUTの測定後に基準測定を行なうことができる。また、多くのDUTの測定値を1つの同じ基準測定値と比較できるように、基準デバイスを測定して測定値を記憶することが、可能であり、通常は好ましい。したがって、基準デバイスに関する初期設定測定の後、新たなタイプの製品の測定を開始する際に、複数のDUTが測定されてゴールデンデバイスと比較されてもよい。必要に応じて、ゴールデンデバイスに関する測定を定期的などのある時間に繰り返して、システムを較正するとともに、セットアップが安定するようにすることができる。
【0018】
被試験製品が基準を満たすか否かの決定を行なうのに必要な位置及びモード分布状態よりも多くの位置及びモード分布状態でゴールデンデバイスを測定することもできる。これは、例えば、幾つかのDUTの測定を同時に可能にするために使用され得る。
【0019】
DUTに関する測定値とゴールデンスタンダードに関する対応する測定値との間で比較が行なわれる。試験されたDUTが許容可能であるか否かを決定するために差異が解析されてもよい。例えば、それぞれの測定値ごとの差異が、最大許容偏差を示す閾値に対して考慮されてもよい。これに加えて又は代えて、幾つか又は全ての測定ポイントにわたって生じるパターン又は傾向を考慮することができる。サンプルの特徴的なシーケンスから、例えばデバイスが欠陥のあるアンテナを有するかどうかを決定することができ、その場合、ゴールデンデバイスとの相関は低くなる。この場合、DUT測定値及びゴールデンデバイスに関する測定値が一緒に変化する傾向は比較的低い。或いは、無線に障害がある場合、シーケンスはゴールデンデバイスの場合と同じであるが、オフセットを伴う。この場合、DUT及びゴールデンデバイスの測定値の相関は変わらない場合があるが、変位の大きさは比較的高い。
【0020】
本発明は、既知の解決策よりも合格/不合格の決定において信頼性が高い生産におけるデバイスの生産試験を可能にする。また、デバイスに異常なアンテナパターンを生じさせる障害と、名目上のアンテナパターンを与えるが異常な出力電力又は受信感度を与える障害との間を区別することもできる。更に、新規な生産試験は、実施が比較的簡単で費用効率が高く、また、高速で且つ費用効率が高い方法で動作され得る。
【0021】
「被試験デバイス」という用語は、この出願との関連では、無線インタフェースを介して電磁信号を送信及び/又は受信できる任意のタイプのデバイスを示すために使用される。特に、被試験デバイスは、アンテナ、携帯電話、タブレット、及び、他の無線端末であってもよい。
【0022】
1つの実施形態によれば、前記所定のモード分配形態で測定される無線周波数伝送と、内部キャビティ内の同じ測定位置に同じ所定の静的モード分布形態で配置される基準デバイスの測定から得られる基準値とを比較するステップは、DUT及び基準デバイスにおける測定値間の相関及びオフセットのうちの少なくとも一方の決定を含む。
【0023】
本発明に係る試験用のチャンバは、等方性で均一な場分布をもたらす必要がないため、従来の残響室よりもはるかに小さくすることができる。それどころか、DUTは、特定の位置で特定の静的モード分布形態で測定されるとともに、それぞれの測定ごとに全く同じ条件下で測定される基準デバイスと比較されるため、実際にはそれぞれの測定ごとの条件が異なることが利点である。したがって、好ましい実施形態において、チャンバの幅、長さ、及び、高さのうちの少なくとも1つ、好ましくは全部が、1メートル未満、好ましくは75cm未満、最も好ましくは50cm未満である。例えば、チャンバは、標準の19インチラック内に、つまり、フロントモジュールが19インチ(48.3cm)の幅を有するモジュールを受けるように配置される、電子機器モジュールを実装するための標準化されたフレーム内又は筐体内に嵌合するのに十分小さく形成され得る。
【0024】
異なる静的モード分布形態が様々な方法で与えられてもよい。例えば、チャンバが少なくとも1つの可動モード撹拌器を備えてもよく、この場合、モード撹拌器を異なる位置へ移動することにより異なる静的モード分布形態を得ることができる。可動式モード撹拌器は、例えば、回転可能なシャフト等に回転可能に配置される反射性材料のプレートを備える回転可能なモード撹拌器であってもよい。更に、可動モード撹拌器は、直線方向に及び他のタイプの動作で移動できるプレートを備えてもよい。
【0025】
これに加えて又は代えて、チャンバが2つ以上のチャンバアンテナを備えてもよく、この場合、異なるチャンバアンテナを使用することにより異なる静的モード分布形態が得られる。したがって、複数のチャンバアンテナを使用することにより、チャンバアンテナを特定の順序で動作させることによって異なるモード分布形態が得られてもよい。
【0026】
これに加えて又は代えて、チャンバは、可動DUTホルダを備え、それにより、複数の測定位置を規定してもよく、この場合、異なる測定位置を使用することにより異なる静的モード分布形態が得られる。例えば、DUTは、回転可能なターンテーブル上に配置されてもよい。
【0027】
順次に測定される所定の静的モード分布形態の数は、測定の適切な信頼性を与える任意の数であってもよい。好ましい実施形態において、この数は、少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個、最も好ましくは少なくとも15個である。更に、順次に測定される所定の静的モード分布形態の数は、好ましくは、比較的低く保たれ、それにより、プロセスの速度及び費用効果が高められる。好ましくは、この数は、100未満、好ましくは75未満、最も好ましくは50未満である。
【0028】
一実施形態において、DUTと少なくとも1つのチャンバアンテナとの間の無線周波数伝送を測定するステップは、DUTからチャンバアンテナへの無線周波数伝送における放射電力を測定するステップ、及び、チャンバアンテナからDUTへの無線周波数伝送における受信機感度を測定するステップのうちの少なくとも一方を含む。受信機感度は、受信機がどのようにうまく機能するかの指標であり、受信機が特定の閾値ビットエラーレートで復調できる最も弱い信号のパワーとして規定される。放射電力は、アンテナが実際の無線機(又は送信機)に接続されるときにアンテナによって放射される電力の量の指標である。
【0029】
1つの実施形態において、DUTは、無線インタフェースを介して、好ましくは音響インタフェースを介して、チャンバのコントローラに接続される。
【0030】
インタフェースは、測定データをDUTからコントローラに送信するために、いつ、どのように送信すべきかに関する命令をコントローラからDUTに送信するために使用されてもよい。インタフェースは、USBケーブル接続を介してもよい。更に、USBインタフェースに対するDUTの接続は、時間を要するとともに、接続も経時的に摩耗して劣化する場合があり、その結果、機能不良や測定エラーがもたらされる。したがって、非常に多くの製品が比較的短時間で試験される生産試験では、無線インタフェースが好ましい。無線インタフェースは、例えば、BluetoothやWifiなどの無線通信を使用してもよい。しかしながら、最も好ましくは、無線インタフェースは、測定されるべき無線周波数通信とは非常に異なる周波数及び/又は通信技術を使用し、それにより、測定が制御通信によって影響されることが回避される。例えば、無線インタフェースが音響インタフェースであってもよく、この場合、通信はデータ通信のために音声を使用してもよい。そのようなインタフェースの場合には、DUT上のスピーカ及びマイクロフォン(多くの場合、既に入手可能)と通信するために、チャンバ内にスピーカ及びマイクロフォンが設けられてもよい。音響リンクを介した通信を可能にするために、ソフトウェアプログラムをDUTにインストールして、音響送信用のデータを聞いて話し、復号して符号化し、試験に必要なDUTの制御を実行できるようにし得る。
【0031】
新規な生産試験は、2つ以上のDUTを同時に生産試験するようになっていてもよい。例えば、幾つかのDUTを試験チャンバ内の様々な測定位置に配置することができ、それらの測定位置は全て、基準デバイスでも測定されてしまっている。特に、2つ、3つ、4つ以上のDUTを共通のターンテーブル上に配置して、少なくとも一部のDUTが同じ測定位置で測定されるように測定間でターンテーブルを回転させることができる。1つの実施形態では、DUTが最初に位置される全ての位置で全てのDUTが測定されるようにターンテーブルが測定間で回転される。DUTからチャンバアンテナへの送信を試験する際には、全てのDUTを同時に測定できるように、DUTが異なる周波数で同時に送信してもよい。DUTに異なる周波数で送信させることにより、基地局エミュレータがそれらの周波数を分離することができる。受信試験では、複数のDUTが基地局エミュレータからの同じ送信を同時に聞くことができる。
【0032】
チャンバは、入射電磁放射線を反射する金属などの内向きに反射する材料の壁を有する。「壁」という用語は、本出願及び本明細書中に開示されるチャンバとの関連では、任意の方向の壁、すなわち、側壁、天井、及び、床を含む壁を表わすために使用される。
【0033】
しかしながら、全ての壁が必ずしも反射しているわけではない。更に、チャンバには、遅延拡散を低減してコヒーレンス帯域幅を増大させるために、1つ又は幾つかの吸収体が取り付けられてもよい。随意的な吸収体は、例えば円筒、シールド、立方体、円錐、ピラミッドなどの形態を成すチャンバ内に配置されるスタンドアロン物体として配置されてもよい。しかしながら、吸収体は、これに加えて又は代えて、チャンバの壁に設けられ、それにより、壁の内側に面する表面を少なくとも部分的に覆ってもよい。
【0034】
本発明の他の態様によれば、被試験デバイス(DUT)の生産試験のための試験装置が提供され、前記装置は、
チャンバであって、該チャンバが内部キャビティを内側に画定し、内部キャビティが、DUTを1つ又は幾つかの測定位置に配置されるときに取り囲むようになっているとともに、電磁反射材料の内側に面する表面を有し、それにより、内部キャビティ内で幾つかの共振モードをサポートする壁を含む、チャンバと、
内部キャビティ内に配置される少なくとも1つのチャンバアンテナと、
DUTとチャンバアンテナとの間の伝送を測定するためにDUT及びチャンバアンテナに接続される測定機器と、
コントローラであって、前記測定機器を用いて、DUTと内部キャビティ内に配置される少なくとも1つのチャンバアンテナとの間の無線周波数伝送を幾つかの異なる静的モード分布形態で順次に測定して、前記所定のモード分布形態で測定される無線周波数伝送と、内部キャビティ内の同じ測定位置に同じ静的モード分布形態で配置される基準デバイスの測定から得られる基準値とを比較するとともに、前記比較に基づいて前記DUTが許容可能であるか又は許容不可能であるかどうかを決定するようになっているコントローラと、
を備える。
【0035】
本発明のこの態様に関しては、本発明の前述の第1の態様と同様の利点及び好ましい特徴が存在する。
【0036】
異なる静的モード分布形態を与えるために、試験装置は、
-1つ以上の機械的に移動可能なモード撹拌器、
-2つ以上の独立に動作可能なチャンバアンテナ、及び、
-ターンテーブルなどの可動DUTホルダ、
のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を更に備えてもよい。
【0037】
試験装置は、スピーカ及びマイクロフォンを更に備え、それにより、DUTとコントローラとの間に音響インタフェースを与えてもよい。
【0038】
また、試験装置は、チャンバの内部キャビティ内に配置される吸収体を備えてもよい。
【0039】
本発明のこれら及び他の特徴並びに利点は、以下に記載される実施形態に関連して以下で更に明らかにされる。
【0040】
目的を実証するため、以下、添付図面に示される本発明の実施形態に関連して、本発明を更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施形態に係る試験装置の概略図である。
図2】測定チャンバの一実施形態をより詳細に示す、部分分解斜視図である。
図3】測定チャンバの他の実施形態の上から見た概略図である。
図4a】異なる静的モード分配形態を示す概略図である。
図4b】異なる静的モード分配形態を示す概略図である。
図5a】測定された参照サンプルと共に測定されたDUTサンプルを示す図である。
図5b】測定された参照サンプルと共に測定されたDUTサンプルを示す図である。
図5c】測定された参照サンプルと共に測定されたDUTサンプルを示す図である。
図6】測定装置の他の実施形態の概略図である。
図7】本発明の一実施形態に係る被試験デバイスの生産試験のための方法の概略フローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の詳細な説明では、本発明の好ましい実施形態が記載される。しかしながら、他に特に何も示唆されなければ、異なる実施形態の特徴が、実施形態間で交換可能であるとともに、異なる方法で組み合わされてもよいことが理解されるべきである。以下の説明では、本発明のより完全な理解を与えるために多くの具体的な詳細が記載されるが、当業者に明らかなように、本発明はこれらの特定の詳細を伴わずに実施されてもよい。他の例では、本発明を分かり難くしないように、良く知られた構成又は機能が詳細に記載されない。
【0043】
図1は、アンテナ、モバイル端末、又は、無線端末などの、具体的にはマルチパス環境で使用されるようになっているアンテナ及び端末のための被試験デバイス(DUT)3の生産試験のための試験装置1の実施形態を示す。測定装置はチャンバ2を備える。チャンバ2は、内部キャビティ4を画定/形成するとともに、マルチパス環境をシミュレートするために少なくとも幾つかが電磁反射材料の内側に面する表面を有する一組の壁内でDUT3を取り囲むように配置される。壁には、例えば、それらの内面に金属箔又は金属プレートを設けることができる。
【0044】
チャンバ2は、任意のサイズ及び形状を有することができる。しかしながら、好ましくは、チャンバ2は、長方形又は立方体の形状を成し、持ち運びできるように寸法付けられる。例えば、チャンバ2は、0.1m~1mの空間を有する内部キャビティ4を画定/形成するように配置され得る。特に、チャンバの幅は、標準的な19インチラックに適合するように約19インチ(48.3cm)であることが好ましい。実現が容易な他の形状は、平坦な床及び天井を伴うとともに円、楕円、又は、多角形を形成する水平断面を伴う垂直壁である。
【0045】
更に、キャビティ4内に配置された少なくとも1つ、好ましくは幾つかのチャンバアンテナ5が設けられる。第1のチャンバアンテナ5は、ホーンアンテナ、電気モノポールアンテナ、ヘリカルアンテナ、マイクロストリップアンテナ、電気モノポールアンテナなどを備えることができる。
【0046】
チャンバアンテナ5は、測定機器11及びコントローラ12を備える制御システム10に接続される。
【0047】
チャンバアンテナとDUTとの間に直接的な見通しが存在してもよいが、直接的な見通しを妨げるためにシールドなど(図示せず)を設けることも実現可能である。
【0048】
測定中、測定機器10は、DUT3の性能を測定して最終的に特徴付けることができるようにチャンバアンテナ5とDUT3との間の送信を測定するべくDUT3及びチャンバアンテナ5に接続される。測定機器10は、ネットワークアナライザ又はスペクトルアナライザであってもよい。測定装置1は、例えばコントローラ12に組み込まれる解析手段を更に含んでもよい。コントローラは、例えば、測定機器10に接続されるラップトップ又はPCなどのコンピューティングデバイスであってもよい。コントローラ及び測定機器を含む制御システムは、集中型で一体型の制御器として単一ユニット内に配置されてもよいが、分散システムとして互いに接続される幾つかの個別ユニット内に配置されてもよい。
【0049】
更に、試験装置1は、側壁の内面上に又はスタンドアロン構成要素として配置される1つ又は幾つかの吸収体7を備えてもよい。
【0050】
チャンバ2によって形成されるキャビティ4内には、モード撹拌器8として機能する少なくとも1つの可動物体を設けることができる。チャンバ2内のモード分布を得るために使用されるそのような可動物体は、それ自体当技術分野において知られており、同一出願人による国際公開第2012/171562号パンフレットに記載され、その文献は参照により本願に組み入れられ、また、可動物体は様々な形態を成してよい。例えば、可動物体は、図1に示されるように、回転軸の周りで回転可能な物体を備えてもよい。他の可能性は、プレートなどの長尺物体を使用することであり、長尺物体は、例えば、サーボモータ又はステップモータなどの駆動手段によって回転されるネジと、長尺の細い物体が締結されるこのネジ上のナットとによって移動できる。しかしながら、長尺物体を移動するために他の手段を使用することもできる。長くて細い物体は金属シートの形状を成してもよいが、該物体は多くの他の形状を有することもでき、例えばこの物体に不規則な形状を与えることが有利である。モータ81がモード撹拌器8を動かすために設けられてもよく、モータは制御システム10に接続されてもよい。モード撹拌器を動かすことにより、チャンバ内で異なるモード分布形態が起こる。
【0051】
試験装置は、これに加えて又は代えて、測定中にDUT3が位置される回転可能なプラットフォーム又はターンテーブルなどのDUT用の可動ホルダ9を備えてもよい。また、可動ホルダはモータ91によって動作されてもよく、モータ91は制御システムに接続されてもよい。可動ホルダ9を動かすことにより、チャンバ内のモード分布が変化し、更に、チャンバ内のモード分布が不均一である場合、DUTにより受けられるモード分布は、DUTの他の位置への移動に起因して変化する。
【0052】
少なくとも2つの移動物体を使用する際には、それらの移動物体を同時に又は連続して移動させることができる。
【0053】
可動物体は、機能的にフィールド撹拌器又はモード撹拌器と称される場合があり、回転、並進、回動などによって連続的にチャンバの長さ及び/又は幅全体にわたって移動されるように動作可能であることが好ましい。このようにして、チャンバの内部構造内の連続的な変動がもたらされる。変動は、フィールド撹拌器が走査するにつれてチャンバ内で電磁波の複数の変化する反射を引き起こす。これらの変化する反射波は、互いに異なって干渉し、様々な励起を伴うモードを形成する。
【0054】
チャンバ内のモード分布は、一度に1つのチャンバアンテナのみを使用するなど、チャンバアンテナの制御された動作によって、或いは、チャンバアンテナの様々な組み合わせを使用することによって変更することもできる。
【0055】
また、キャビティ内にビデオカメラ(図示せず)が配置されてもよい。ビデオカメラは、試験中にチャンバの内部からチャンバの外部へとビデオ情報を転送することができる。ビデオ情報が制御システムに転送されてもよく、また、ビデオ情報が測定データに関連付けられてもよい。
【0056】
更に、好ましくは、ビデオカメラから受信されるビデオ情報を再生できるディスプレイがキャビティの外側に配置されて設けられる。例えば、ディスプレイは、チャンバの外壁に及び/又はスタンドアロン測定機器11又はPCなどのコントローラ12に装着されてもよい。
【0057】
測定チャンバ及び該測定チャンバが動作され得る方法に関するより一般的な詳細及び例は、米国特許第7444264号明細書及び米国特許第7286961号明細書から入手可能であり、これにより、前記特許のいずれも参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる。
【0058】
試験中、DUTは、DUTを適切な試験モードに設定するべく制御されるために、試験されるべき無線チャネルを切り換えるために、DUTがどんな電力レベルを受信するのか及び他のタスクを報告するために、通信リンクを必要とする場合がある。DUTと制御システムとの間の通信は、例えばUSBインタフェースにより接続されるケーブルを介して行なわれてもよい。更に、好ましくは、無線リンクにより、例えば音響リンクを介して、通信が行なわれてもよい。この目的のため、DUTからの音響信号を受信するため及びDUTによって受信されるべき音声信号を送出するためにそれぞれ、マイクロフォン61及びスピーカ62がキャビティ内に設けられてもよい。制御システム及びDUTにはいずれも、音響伝送のためのデータを復号して符号化するため、及び、そのようなデータに基づいて試験にとって必要なDUTの制御を実行するべく、ソフトウェアプログラムが設けられることが好ましい。
【0059】
図2には、チャンバの他の実施形態がより詳細に示される。ここで、チャンバは、チャンバリアフレーム部分22とチャンバフロントフレーム部分24とから形成される。これらの部分はチャンバのフレームを形成する。フレーム部分は、前部及び後部に側壁を更に含む。側蓋23(1つのみが示される)が、フレームに接続されるとともに、前部と後部との間で延びる側方を覆う。また、後蓋21及び上蓋21も、フレームに接続されるとともに、チャンバの上端及び下端を覆うように設けられる。アクセス開口が前側に設けられる。例示的な例では、アクセス開口が取り外し可能なドア25によって覆われる。ここで、ドアは、ネジ27及びボルト28によって前部に接続される。EMIガスケット26が開口の縁の周りに更に配置されてもよい。
【0060】
取り外し可能なドアを使用する代わりに、開閉のために回動され得るヒンジドアを使用することもできる。ドアを省くこともでき、例えば、導波路の形態で開口を設けて、外部への放射線を遮断することもできる。そのような導波路開口配置は、例えば、米国特許出願公開第2002/0160717号明細書に開示されたタイプのものであってもよく、前記文献は、参照によりその全体が本願に組み入れられる。
【0061】
図2の例示的な例において、測定されるべきDUTは、静的な回転不能なDUTホルダ9’上に配置される。このDUTホルダは、例えば、DUT3を受けるための凹部を伴う固定具の形態を成してもよく、低誘電材料から形成されるのが好ましい。しかしながら、前述のように、ターンテーブルなどの回転可能なDUTホルダを使用することもできる。更にまた、測定チャンバ内へのDUTの自動挿入及び除去のために、コンベアなどを使用することができる。そのような自動化された手順は、例えば、米国特許出願公開第2002/0160717号明細書に開示されているのと同じ方法で成されてもよい。
【0062】
更に別の方法として、図3に示されるように、DUTホルダを引き出しに設けることもできる。ここで、DUTをDUTホルダにおける指定された位置に配置するために引き出しが測定チャンバから引き出され、その後、測定及び試験のために引き出しを元の測定チャンバに押し込んでもよい。引き出しは、この実施形態では、1つ以上のDUTを受け入れるように配置されるDUTホルダ9’’を備えてもよい。
【0063】
幾つかのDUTを同時に測定することもできる。この目的のため、DUTホルダは、幾つかのDUTを同時に保持するように配置されてもよい。その後、DUTは、試験手順の全体にわたって静止状態に維持されて、常に同じ測定位置であるが、異なる測定位置にあるDUTと共に測定されてもよい。しかしながら、測定間でDUTを移動させて、2つ以上の異なる測定位置で各DUTを測定することもできる。
【0064】
図2の例示的な例では、複数のチャンバアンテナ5が後壁及び上蓋の両方に設けられる。この例では、9個のアンテナが後壁に設けられるとともに、9個のアンテナが天井に設けられる。
【0065】
しかしながら、これは単なる一例であり、任意の数のアンテナが使用されてもよい。
【0066】
更に、図2のチャンバは、回転可能なモード撹拌器を備える。ここで、モード撹拌器は2つのモード撹拌プレート82、83を備え、これらのモード撹拌プレートは、互いに接続されるとともに、モード撹拌器の回転のための軸を形成するシャフト84に取り付けられる。シャフトは、アクスルカップリング85を介して上蓋21の上に配置されるステッピングモータなどのモータ81に接続される。
【0067】
図6は、ここでは制御システムを更に詳細に示す、試験装置の一実施形態の更なる例を例示する。ここで、制御システムは、測定コンピュータの形態を成す測定機器11と、撹拌器制御コンピュータの形態を成すコントローラ12とを備える。測定コンピュータ及び撹拌器制御コンピュータは、例えば光ファイバを介して互いに接続される。撹拌器制御コンピュータは、モード撹拌器8を動かすためのモータ81を備えるモータボックスに更に接続される。撹拌器制御コンピュータはスイッチマトリクス13に更に接続されてもよい。スイッチマトリクスは基地局エミュレータ14に更に接続される。
【0068】
モード撹拌器の位置、DUTの測定位置、及び/又はチャンバアンテナの動作を変えることにより、例えば、異なるチャンバアンテナ又はチャンバアンテナの異なる組み合わせでキャビティを励起することにより、チャンバ内のモード分布形態が変化する。これが図4a及び図4bに概略的に示されており、この場合、図4aは、第1のモード分布形態における1つの測定位置でのDUTの測定を示し、図4bは、同じ位置であるが第2の異なるモード分布形態を伴う同じDUTの測定を示す。DUTと試験機器との間の結合は、これらの状態のそれぞれにおいて異なる。
【0069】
図7には、本発明の一実施形態に係る被試験デバイスの生産試験のための方法の概略フローチャート図が示される。この方法は、ステップS1として、事前に承認されて所定の品質基準を満たすことが分かっているゴールデンデバイスである基準DUTの測定を含む。基準DUTは、複数の異なる静的モード分布形態で測定され、場合によっては多くの異なる測定位置でも測定される。それぞれのモード分布形態ごとの測定データは、モード撹拌器の位置、デバイスの測定位置、チャンバアンテナの動作などのそれぞれの測定ごとの正確な状況に関する情報と共に記憶される。
【0070】
その後、ステップS2において、ゴールデンデバイスが測定された測定位置で測定チャンバ内にDUTが配置される。その後、出力電力及び/又は受信機感度が、この位置にあるDUTに関してこのモード分布形態により測定される(ステップS4)。その後、ステップS5では、更なる測定サンプルが必要とされるかどうかが決定される。これは、得られるべき所定数のサンプルと比較されるべく例えばカウンタによって決定される。必要とされるサンプルの数は例えば16~48の範囲であってもよい。より多くのサンプルが必要とされる場合には、ステップS6において、例えばDUTを移動させる、モード撹拌器を動かす、チャンバアンテナの動作を変更するなどして、モード分布形態が変更されて、継続的な測定のために方法がステップS4に戻る。
【0071】
これにより、信号の一連のサンプルが、各サンプルにおいて異なるモード形態により測定される。各モード形態は、被試験デバイス上の入射波面の異なるシナリオを表わす。
【0072】
これ以上のサンプルが必要ない場合には、プロセスがステップS7に移行し、このステップS7では、それぞれのサンプルごとに測定されたデータがゴールデンデバイスの測定時に得られた基準データと比較される。ここで、各測定データは、全く同じ状況にわたって、つまり、同じモード分布形態により同じ測定位置でゴールデンデバイスを測定する際に得られる基準データと比較される。
【0073】
この比較に基づいて、DUTが許容できるかどうかどうか、すなわち、DUTが合格であるか又はそうでないか、つまり不合格かどうかが決定される。これは、例えば全ての測定サンプルなどでゴールデンデバイスからの許容最大偏差を決めることによって決定される。しかしながら、好ましくは、決定は、DUTにおけるサンプルに関する測定データのプロットとゴールデンデバイスにおける対応する測定データに関するプロットとの間のオフセット及び/又は相関を見ることによって行なわれる。閾値は、試験されたDUTが許容可能か否かを決定する際に使用されるべきオフセット及び相関のいずれか一方又は両方に関して決定されてもよい。
【0074】
オフセット及び相関における違いの例が図5a~図5cに示される。図5a~図5cは、測定された送信電力(dB)を1,2等の番号が付された各サンプルに関して示す。1つの曲線は、測定されたDUTに関する測定値を示し、また、1つの曲線は、ゴールデンデバイスを測定することにより得られる較正測定値を示す。
【0075】
図5aでは、較正測定値とDUT測定値との間に強い相関があり、曲線間にオフセットはない。これは、試験されたDUTが良好であって所定の品質基準を満たすことを示す。
【0076】
図5bでは、曲線間に強い相関もあるが、曲線は互いにオフセットしている。これは、試験されたDUTの無線通信が欠陥であり、試験されたDUTが所定の品質基準を満たしていないという表示である。
【0077】
図5cでは、曲線間の相関が低く、試験されたDUTが欠陥のあるアンテナを有することを示している。この場合も、試験されたDUTは所定の品質基準を満たしていない。
【0078】
図7のプロセスに戻ると、その後、ステップS9において、より多くのDUTが試験されるべきかどうかが決定され、そうであれば、プロセスがステップS3に戻り、新たなDUTが測定チャンバ内に配置される。
【0079】
多くのDUTが試験されるべき場合には、最初から、すなわち、ステップS2からプロセスを再起動することによりシステムを時々較正してゴールデンデバイスを再び測定する必要があるかもしれない。したがって、プロセスが再起動され、セットアップが安定しているようにするべく、規則的な間隔で、ゴールデンデバイスが再び測定される。
【0080】
以上、特定の実施形態に関連して本発明を説明してきた。更に、試験装置及び方法の幾つかの変形が実現可能である。例えば、前述の様々な特徴が様々な態様で組み合わされてもよい。そのような及び他の明白な変更は、本発明が添付の特許請求の範囲により規定されるように本発明の範囲内にあると見なされなければならない。前述の実施形態が本発明の例示であって本発明を限定するものではなく、また、当業者は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの別の実施形態を設計できることに留意すべきである。特許請求の範囲において、括弧内にある任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「備える(comprising)」という語は、特許請求の範囲に挙げられる要素又はステップ以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素に先行する単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数のそのような要素の存在を排除しない。更に、単一のユニットが特許請求の範囲に挙げられた幾つかの手段の機能を果たしてもよい。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6
図7