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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】心臓の一回拍出量を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/029 20060101AFI20240226BHJP
【FI】
A61B5/029
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020560784
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019060845
(87)【国際公開番号】W WO2019211210
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】102018110394.8
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519408526
【氏名又は名称】フィリップス メディツィン システム ボブリンゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー ウーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】レグ ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シュトルツェ ベンジャミン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-318833(JP,A)
【文献】特開2010-246801(JP,A)
【文献】特表2013-519410(JP,A)
【文献】特表2007-512921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0188850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の一回拍出量(SV)を決定するためのプロセッサを有する患者モニタの作動方法であって、
a1)前記プロセッサが、測定された動脈圧波形の1つ又は複数の特性に基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を提供するステップ、
前記プロセッサが、前記個人の身体の除脂肪量及び脂肪量を通じた灌流を記述する少なくとも1つの灌流パラメータ(BioCal)を決定するステップ、及び/又は、前記プロセッサが、前記個人の心臓-肺相互作用を記述する流体反応性パラメータ(FRP_norm)に依拠して少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定するステップ、並びに、
前記プロセッサが、決定された前記灌流パラメータ(BioCal)及び/又は決定された前記流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)のうちの少なくとも1つに基づいて前記第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を調整するステップ、
又は
a2)前記プロセッサが、脈拍輪郭分析で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)を提供するステップ、
前記プロセッサが、前記個人の心臓-肺相互作用を記述する流体反応性パラメータ(FRP_norm)に依拠して少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定するステップ、及び、
前記プロセッサが、決定された前記流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)に基づいて、前記脈拍輪郭分析で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)を調整するステップと、
b)前記プロセッサが、調整された前記第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)又は調整された前記脈拍輪郭分析で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)として、第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)を提供するステップと、
を有する、患者モニタの作動方法。
【請求項2】
前記プロセッサが前記第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)又は前記脈拍輪郭分析で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)を提供するステップは、動脈圧波形の非侵襲的測定又は侵襲的測定に基づく、請求項1に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項3】
前記プロセッサが前記少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定するステップは、脈圧変動(PPV)、平均左心室吐出圧変動MEPV、一回拍出量変動(SVV)、収縮期圧変動(SPV)、左心室収縮期圧領域変動(SPAV)、フォトプレスチモグラフィ変動性指標(PVI)、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに基づく、請求項1又は2に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項4】
前記流体反応性パラメータ(FRP_norm)は、人工呼吸器を前記個人が着けた場合、流体反応性正規化関数(f_FRP_MV)を適用することによって決定されるか、又は、
前記流体反応性パラメータ(FRP_norm)は、人工呼吸器を前記個人が着けていない自発呼吸の場合、流体反応性正規化関数(f_FRP_SB)を適用することによって決定され、前記人工呼吸器を着けた場合と着けていない場合とでは、心臓-肺の相互作用が異なる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項5】
前記流体反応性パラメータ(FRP_norm)は、前記個人の呼吸系のコンプライアンス(Crs)を考慮することによって決定され、前記呼吸系のコンプライアンス(Crs)は、肺コンプライアンス(Cls)及び胸壁コンプライアンス(Ccw)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項6】
前記流体反応性パラメータ(FRP_norm)は、FRP正規化パラメータ(TVnorm)を用いることによって正規化され、前記FRP正規化パラメータ(TVnorm)は、除脂肪量(FFM)、予測体重(PBW)又は体重(W)に対して正規化される、請求項1から5のいずれか一項に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項7】
人工呼吸器を前記個人が着けた場合、前記流体反応性パラメータ(FRP_norm)は、胸壁コンプライアンス(Ccw)の増減方向及びレベルに応じて調整される、請求項5又は6に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項8】
人工呼吸器を前記個人が着けていない自発呼吸の場合、前記流体反応性パラメータ(FRP_norm)は、肺コンプライアンス(Cls)及び呼吸数(RR)の使用に応じて調整される、請求項5又は6に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項9】
前記プロセッサが前記除脂肪量及び脂肪量を通じた前記個人の前記灌流を記述する灌流パラメータ(BioCal)を決定するステップは、
前記プロセッサが、除脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数(PCSV_FFM_Cal)を決定するステップ、及び/又は、
前記プロセッサが、脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数(PCSV_AM_Cal)を決定するステップ、
を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記個人のデモグラフィックパラメータを決定するステップを更に有し、前記デモグラフィックパラメータは、
前記除脂肪量(FFM)と、
前記脂肪量(AM)と、
前記個人の身長(h)と、
前記個人の生物学的性別(男性/女性/トランスジェンダー)と、
前記個人の年齢(y)と、
を含む、請求項9に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項11】
前記除脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数(PCSV_FFM_Cal)は、除脂肪量灌流に関係する灌流係数B_FFMを用いることによって決定され、及び/又は前記脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数(PCSV_AM_Cal)は、脂肪量灌流に関係する灌流係数B_AMを用いることによって決定される、請求項9又は10に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項12】
前記除脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数(PCSV_FFM_Cal)及び/又は前記脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数(PCSV_AM_Cal)を決定するために、除脂肪量層厚(FFM/H)及び脂肪量層厚(AM/H)が考慮される、請求項9、10又は11のいずれか一項に記載の患者モニタの作動方法。
【請求項13】
個人の一回拍出量(SV)を決定するための患者モニタであって、前記患者モニタは、
a1)測定された動脈圧波形の1つ又は複数の特性に基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を提供すること、
前記個人の身体の除脂肪量及び脂肪量を通じた灌流を記述する少なくとも1つの灌流パラメータ(BioCal)を決定し、及び/又は、前記個人の心臓-肺相互作用を記述する流体反応性パラメータ(FRP_norm)に依拠して少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定すること、並びに、
決定された前記灌流パラメータ(BioCal)及び/又は決定された前記流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)の少なくとも1つに基づいて前記第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を調整すること、
又は、
a2)脈拍輪郭分析で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)を提供すること、
前記個人の心臓-肺相互作用を記述する流体反応性パラメータ(FRP_norm)に依拠して少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定すること、及び、
決定された前記流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)に基づいて、前記脈拍輪郭分析で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)を調整することと、
b)調整された前記第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)又は調整された前記脈拍輪郭分析で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)として、第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)を提供することとを実行する、
プロセッサを備える、
患者モニタ。
【請求項14】
前記患者モニタの前記プロセッサは更に、請求項2から12のいずれか一項に記載の方法のステップを実行する、請求項13に記載の患者モニタ。
【請求項15】
前記第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)を受信し、そこから前記第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)又は関連データを出力する医療デバイスを更に備える、請求項13又は14に記載の患者モニタ。
【請求項16】
個人の一回拍出量(SV)を決定するための装置であって、前記装置は、
動脈圧及び波形モニタであって、前記動脈圧及び波形モニタに接続された個人から取得された医療データに基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を提供する、動脈圧及び波形モニタと、
前記個人の灌流パラメータ(BioCal)及び/又は心臓-肺相互作用記述パラメータ(FRP_norm)を提供するパラメータユニットと、
前記灌流パラメータ(BioCal)に基づいて、及び/又は前記心臓-肺相互作用記述パラメータ(FRP_norm)に基づいて、前記第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を調整して、第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)を提供するコントローラと、
を備える、装置。
【請求項17】
前記第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)を受信し、そこから前記第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)又は関連データを出力する医療デバイスを更に備える、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の一回拍出量を決定するための方法に関する。更に、本発明は、心臓の一回拍出量を決定するための装置、及び方法を実行するためのコンピュータ可読媒体に関する。特に、本発明は、侵襲的又は非侵襲的動脈拍輪郭分析に基づく心臓の一回拍出量、いわゆる脈拍輪郭一回拍出量PCSVを決定するための方法、装置及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓が経時的にポンピングする血液量として定義される心拍出量は、集中治療室又は救急科において、特に手術中の患者の診断及び管理の双方に重要なパラメータである。心拍出量は、通常、リットル毎分単位で測定される。心拍出量COは、心臓一回拍出量と呼ばれる、心臓が拍出ごと又は心拍ごとにポンピングする血液量、及び心拍数HRと呼ばれ、脈拍数PRに対応する、所与の時間内の心拍回数に依拠する。
【0003】
従来から、心拍出量、又は一回拍出量も、肺動脈熱希釈法を用いて測定される。肺動脈熱希釈法では、既知の温度の明確に定義された少量の冷液が右心房に注入され、右心室の通過後に肺動脈において、時間依存の血液温度進行が測定される。注入された液体の既知の量、比重量及び比熱容量、並びに血液の比重及び比熱容量を所与として、時間依存の血液温度進行により、スチュワート-ハミルトン方程式を用いた心拍出量の計算が可能になる。(平均)心臓一回拍出量は、心拍出量を心拍数で除算することによって計算される。しかしながら、高度に侵襲的な肺動脈熱希釈法を用いた一回拍出量の決定は、致命的な合併症に起因してリスクが高く、時間がかかり、手術室又は救急科においてむしろ高価で非実用的なものとなる。
【0004】
心拍出量COを個人間で比較可能にするために、COは通例、体表面積に対し正規化され、l/min/m2単位の心係数Clをもたらす。
【0005】
従来から、心拍出量COを定量化する複数の方法が存在する。大部分において侵襲性がより低く、非侵襲的に適用されるCO法は、いわゆる脈拍輪郭分析である。ここでは、動脈圧波形の特定の特性を用いて、脈拍輪郭一回拍出量PCSVを拍動ごとに推定する。更なる手法は、左心室による血液の吐出に対応する動脈圧波形の部分を識別し、そこからPCSVを推定することである。ここでは、PCSVを決定又は推定するためのアルゴリズムは、数あるパラメータの中でも、吐出段階における圧脈波領域(すなわち、収縮期圧領域)、動脈コンプライアンス、インピーダンス、及び全末梢血管抵抗を考慮に入れることができる。取得されたPCSV推定値は、血圧及び時間データのみに基づいているため、個人の患者、例えばサイズ及び条件に対し、ml血液単位の一回拍出量としてまだ関係付け又は較正されていない。
【0006】
上記で脈拍輪郭一回拍出量(PCSV)の決定について示したように、いかなる侵襲的な動作も行う必要がない。このため、任意の非侵襲的に測定された動脈拍輪郭関連データを用いることができる。緊急手術下であっても、非侵襲的脈拍輪郭は正常に決定され、血圧を決定するために圧力値及び圧力曲線が取得され、特に時間依存性の動脈圧データ又は非侵襲的組織圧脈拍波形が心臓一回拍出量を決定するのに用いられる。
【0007】
しかしながら、本発明は、より非侵襲的に測定された脈拍輪郭にも適用可能である。そのような場合であっても、一回拍出量を決定するための肺動脈熱希釈法と比較して、リスク、時間及びコストに関する改善が達成される。
【0008】
WO2009/014420A1は、動脈圧データの波形を用いて拍動間の一回拍出量を決定するための方法に関する。
【0009】
しかしながら、時間依存性の動脈圧データのみを用いて決定された(平均)心臓一回拍出量(以後、脈拍輪郭一回拍出量(PCSV))は、基準方法、例えば肺動脈及び経肺熱希釈法又は経食道心エコー検査によって決定された(平均)心臓一回拍出量(以後、SVref)と中程度にしか一致及び相関しないことがわかっている。PCSVは、SVref方法を用いて最初に又は繰り返し較正することができるが、これは熱希釈法を用いた侵襲的なものであり、常に高価で非常に時間がかかる。このため、そのように較正されたPCSVの適用は、集中治療室又は救急科における手術中は実用的でない。更に重要なことに、既存の方法のPCSVの変化は、SVrefの変化と比較した場合、大きなパーセンテージの誤差を伴って、不良な又は中程度の相関、一致及び合致を示し、そのようなPCSV方法がSVrefの変化を追跡することができないことの強力な証拠をもたらす。このため、患者の時間依存性の動脈圧データのみに基づく方法は、特に手術室又は救急科において信頼性がない。
【0010】
更に、患者の性別、年齢、身長、体重及び体表面積BSAを用いて脈拍輪郭一回拍出量PCSVを生物学的に較正又は設定することによるPCSVの任意の較正は十分でない。COをBSAに対し正規化する結果、特に、極度の肥満患者における心係数Cl(l/min/m2)において過大評価が得られる。更に、未較正のPCSV及び脈拍輪郭心拍出量(PCCO)の任意の従来の生物学的設定は、正常な除脂肪量/脂肪量比であるFFM/AM比を有する平均身体サイズから、非常に大きな肥満サイズのBSAへのBSAの外挿が、はるかに低いAM灌流を有する肥満者における大幅に低減したFFM/AM比を考慮に入れないことによって複雑となる。
【0011】
更に、既知のPCSV方法は、ゴールドスタンダードの基準方法と比較した場合、SVの変化を検出する感度が中程度~不良であり、結果として、不良な相関、臨床的に受容不可能なほど大きな一致限界、高いパーセンテージの誤差及び不完全な合致率が得られる。測定が侵襲的であるか又は非侵襲的であるかとは無関係に、高い正確度及び精度でPCSVを決定するために、大きな改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、心臓一回拍出量を高い信頼性で決定するための改善された方法を提供することである。特に、本発明の目的は、任意の脈拍輪郭分析に基づいて心臓一回拍出量の決定を改善するための方法を提供することである。更に、例えば、SVrefの変化と比較して、PCSVの真の変化をより良好に追跡するために、PCSVの動的感度を増大させることが目的である。また、本発明の目的は、心拍ごとにPCSVを計算する任意のPCSV決定を改善するための方法を提供し、PCSVの真の変化をより良好に追跡するためにPCSVの動的感度を増大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的は、独立請求項の主題により対処された。有利な実施形態は、従属請求項において開示される。
【0014】
このため、本発明は、更に重要なパラメータを用いることによって、従来の測定されたPCSVをより精密に「較正」及び/又は計算するという主要な着想に基づく。2つの異なる開始点が存在する。一方は、次元を有さず、個人に対し較正される必要がある未構成PCSV_uncalである。他方の開始点は、生物学的特性に関して個人に対し既に生物学的に較正された従来のPCSV_convであり、上記で説明したように、例えばBSAの使用によってml単位で提供されるが、リスクが高く時間がかかる侵襲的測定によって測定された基準PCSVと比較して、特にPCSVの高速変化に関し、依然として精度がより低い。
【0015】
本発明の1つの態様において、代謝的に最も活性の非常に灌流が良好な除脂肪量FFMと、代謝的に非常に活性が低く、灌流が僅かな脂肪量AMと通る血流を考慮することによって、任意の未較正の脈拍輪郭一回拍出量PCSVが改善される。任意の未較正PCSV(以下では第1のPCSV又はPCSV_uncal)の生物学的較正は、非脂肪量、すなわち除脂肪量FFMを通る部分と、脂肪量AMを通る部分とで血流を分離することによって達成することができる。このため、双方の血流部分は別個に計算され、加算されなくてはならない。
【0016】
更に、動脈系の硬さの増大又はコンプライアンスの減少、及び心臓性能の衰えに起因して、年齢と共に心拍出量COが減少し、デモグラフィックの性別に依拠して、男性の場合に通常より高く、この影響も、本発明による第2のPCSVを提供するために考慮される。
【0017】
本発明の別の態様において、任意の呼吸形態、例えば自発呼吸又は完全に制御された人工呼吸器によって誘発される心臓-肺相互作用を示す流体反応性パラメータFRPを用いて、第1のPCSVであるPCSV_uncal又は従来のPCSV_conv(個人から取得された医療データを用いて導出される)のいずれかが改善される。このため、第1の態様と異なり、FRPの適用が、次元を有しない未較正PCSV_uncalと、既に次元を有する従来のPCSV_convとの双方に対し可能である。なぜなら、PCSV_convは従来から個人の生物学的特性に対し較正されているためである。
【0018】
流体反応性である各所与の心臓は、血液量供給後の一回拍出量と比較して、血液量供給前により低い一回拍出量を有する。逆もまた同様に、流体反応性である所与の心臓は、血液量損失後の一回拍出量と比較して、血液量損失前により高い一回拍出量を有する。この挙動は、PCSV_uncal又はPCSV_convとしてのPCSVを改善するために用いられる。
【0019】
このため、PCSV計算を改善するための本発明の方法において流体反応性パラメータFRPが考慮され、それによって、基準方法を用いて測定される真の一回拍出量SVrefの変化を追跡するPCSVの感度を高める。
【0020】
FRPを考慮することにより、呼吸モードと独立した正確度の改善が可能になる。呼吸モードは、例えば制御された人工呼吸器であれ、任意の種類の圧支持人工呼吸、気道圧開放人工呼吸、若しくは規則的な自発呼吸であれ、又は任意の他の呼吸若しくは人工呼吸モードであれ、結果として心臓-肺の相互作用をもたらし、好ましくはFRPを高い信頼性で決定するのに十分長い既知の若しくは測定可能な規則的心臓-肺相互作用段階を伴う。このため、FRPを用いることによって、PCSVの精度を高めるために、個人の個々の健康状態が考慮される。
【0021】
本発明のために用いられる流体反応性パラメータFRPは、例えば、脈圧変動PPV、平均左心室吐出圧変動MEPV、一回拍出量変動SVV、収縮期圧変動SPV、収縮期圧領域変動SPAV、若しくはフォトプレスチモグラフィ変動性指標PVI、又は適切な感度及び特異性を有する任意の他の流体反応性パラメータ、又は例えばそれらの相対加重平均を有するいくつかのものとの組み合わせによって表すことができる。
【0022】
MEPVは、平均左心室吐出圧MEPの心臓-肺の相互作用によって生じる変動である。
【0023】
SPAVは、収縮期中の動脈圧曲線によって取り囲まれる領域である収縮期圧領域Asysの心臓-肺の相互作用によって生じる変動である。この領域は、収縮期の開始時点から、大動脈弁の閉鎖に対応する重複切痕の開始まで定義される。その基準線は、
- 先行する脈拍の拡張期動脈圧DAPのレベルにおける水平線として、又は、
- 先行する脈拍のDAPと、検討中の脈拍のDAPとの間の直線として、
定義される。
【0024】
本発明によれば、FRPがいくつかのパラメータの組み合わせである場合、これらは、加重平均を生成する前に構造的回帰分析の式を適用することによって比較可能な範囲に対し調整されなくてはならない。
【0025】
この目的は、個人の一回拍出量SVを決定するための方法であって、測定された動脈圧波形の1つ又は複数の特性に基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを提供するか、又は従来の方式で導出された脈拍輪郭一回拍出量PCSV_convを提供するステップと、個人の身体の除脂肪量及び脂肪量を通じた灌流を記述する少なくとも1つの灌流パラメータBioCalを決定するステップ、及び/又は個人の心臓-肺相互作用を記述する流体反応性パラメータFRP_normに依拠して少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定するステップと、灌流パラメータBioCal及び/又は流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)のうちの少なくとも1つに基づいて、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncal又は従来の方式で導出された脈拍輪郭一回拍出量PCSV_convを調整して、第2の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_impを提供するステップとを有する、方法によって解決される。
【0026】
このため、目的は、灌流パラメータBioCal又は流体反応性パラメータFRP_normを適用することによって解決することができる。或いは、目的は、BioCalパラメータ及びFRPパラメータFRP_normを適用することによって解決することができる。
【0027】
既に生物学的に較正された従来の方式でPCSV_convを導出するとき、目的は、FRPパラメータFRP_normを適用することのみによっても解決される。
【0028】
好ましくは、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを提供するステップは、動脈圧波形の非侵襲的測定又は侵襲的測定に基づく。ここで、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalは、次元を有しない動脈圧波形から導出された値である。
【0029】
好ましい実施形態において、最も高い正確度及び精度を達成するために、個人の一回拍出量SVを決定するための方法は、測定された動脈圧波形の1つ又は複数の特性に基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを提供するステップと、個人の身体の除脂肪量及び脂肪量を通じた灌流を記述する少なくとも1つの灌流パラメータBioCalを決定し、個人の心臓-肺相互作用を記述する流体反応性パラメータFRP_normに依拠して少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定するステップと、灌流パラメータBioCal及び流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)に基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを調整して、第2の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_impを提供するステップとを有する。
【0030】
好ましくは、少なくとも1つの流体反応性パラメータFRP_normを決定するステップは、動脈脈圧変動PPV、平均左心室吐出圧変動MEPV、一回拍出量変動SVV、動脈収縮期圧変動SPV、左心室収縮期圧領域変動SPAV、若しくはフォトプレスチモグラフィ変動性指標PVI、又は適切な感度及び特異性を有する任意の他の流体反応性パラメータ、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つに基づく。
【0031】
好ましくは、流体反応性パラメータFRP_normは、脈圧変動PPV及び収縮期圧変動SPVの加重平均値に基づいて、又はMEPV及びSPAVに基づいて決定される。最も好ましい解決策において、真のPCSV変化の最適な追跡のために、流体反応性パラメータFRP_normは、心臓-肺の相互作用に対する最も高い感度及び特異性を有するFRP、例えば脈圧変動PPV、平均左心室吐出圧変動MEPV、及び左心室収縮期圧領域変動SPAVの加重平均値に基づいて決定される。
【0032】
好ましくは、流体反応性パラメータFRP_normは、人工呼吸器の場合、流体反応性正規化関数f_FRP_MVを適用することによって決定されるか、又は、流体反応性パラメータFRP_normは、自発呼吸の場合、流体反応性正規化関数f_FRP_SBを適用することによって決定され、それによって、例えば、一回換気量、肺コンプライアンス及び胸壁コンプライアンスのようなパラメータの品質劣化を生じる(contaminating)変化を無効にし、純粋な標準化された正規化流体反応性パラメータを取得する。
【0033】
好ましくは、流体反応性パラメータFRP_normは、個人の呼吸系のコンプライアンスCrsを考慮することによって決定され、呼吸系のコンプライアンスCrsは、肺コンプライアンスCls及び胸壁コンプライアンスCcwを含む。なぜなら、呼吸系の様々な構成要素が、胸郭内低血圧容量系IBCSに対し異なる影響を有するためである。
【0034】
好ましくは、一回換気量TVに対する標準化のために、流体反応性パラメータFRP_normは、FRP正規化パラメータTVnormを用いることによって正規化され、FRP正規化パラメータTVnormは、予測体重PBW又は体重Wに対しTV正規化されるが、好ましくは、除脂肪量FFMに対し正規化される。
【0035】
好ましくは、流体反応性パラメータFRP_normは、胸壁コンプライアンスCcwに関する所定の半定量的情報の使用によって人工呼吸器MVに対し調整される。
【0036】
好ましくは、流体反応性パラメータFRP_normは、自発呼吸SBについて、ほとんどの場合にSBでは知られていないTVnormの置き換えのための平均として、肺コンプライアンスCls及び呼吸数RRを使用することによって正規化される。
【0037】
好ましくは、個人の身体の除脂肪量及び/又は脂肪量を通じた異なる灌流を記述する灌流パラメータBioCalを決定するステップは、除脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数PCSV_FFM_Calを決定することと、脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数PCSV_AM_Calを決定することとのうちの少なくとも1つを含む。
【0038】
好ましくは、本方法は、個人のデモグラフィックパラメータを決定することを更に含み、これは、除脂肪量FFMを決定することと、個人の脂肪量AM、身長h、個人の生物学的性別、及び個人の年齢yを決定することとを含む。なぜなら、これらのパラメータは安静時SVの絶対レベルに対する最も大きな影響を有するためである。
【0039】
好ましくは、除脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数PCSV_FFM_Calは、代謝的に最も活性の高い除脂肪量を通じた灌流に関する灌流係数B_FFMを用いることによって決定される。代替的に又は更に、脂肪量脈拍輪郭一回拍出量較正係数PCSV_AM_Calは、代謝的に非常に活性が低い脂肪量を通じた灌流に関する灌流係数B_AMを用いることによって決定される。
【0040】
好ましくは、除脂肪量関連脈拍輪郭一回拍出量較正係数PCSV_FFM_Cal及び/又は脂肪量脈拍輪郭一回拍出量較正係数PCSV_AM_Calを決定するために、除脂肪量層厚及び/又は脂肪量層厚が考慮される。なぜなら、完全に麻酔がかかり、筋弛緩した患者において、FFMを通じた灌流はFFM及びAM層厚にも依拠し、AMを通じた灌流はAM層厚にも依拠するためである。
【0041】
好ましくは、動脈圧波形の1つ又は複数の特性を測定又は提供することは、動脈圧波形の一部を識別することを含む。
【0042】
目的は、個人の一回拍出量SVを決定するための装置によっても解決される。この装置は、動脈圧及び波形モニタであって、動脈圧及び波形モニタに接続された個人から取得された医療データに基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncal又は従来の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_convを提供する、動脈圧及び波形モニタと、個人の灌流パラメータBioCal及び/又は心臓-肺相互作用記述パラメータFRP_normを提供するパラメータユニットと、灌流パラメータBioCal及び/又は心臓-肺相互作用記述パラメータFRP_normに基づいて、第1のPCSV_uncal又は従来のPCSV_convを調整して、第2の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_impを提供するコントローラと、第2のPCSV_impを受信し、そこから第2のPCSV_imp又は関連データを出力する医療デバイスとを備える。
【0043】
本発明の上記の及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むとより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】灌流パラメータBioCalによって第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを改善し、第2の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_impを出力するための第1の方法のフローチャートを示す。
図1a】第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを決定するためのフローチャートを示す。
図1b】第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを決定するための動脈圧波形の一部を示す。
図2】第1の脈拍輪郭一回拍出量を改善するための第1の方法の一部として灌流パラメータBioCalを決定するためのフローチャートを示す。
図3】脂肪量の層厚AM/H及び除脂肪量の層厚FFM/Hに依拠した脂肪量AM及び除脂肪量FFMの灌流のためのモデルを示す。
図4】様々なレベルの筋緊張について、除脂肪量の灌流係数B_FFMと、除脂肪量の層厚FFM/Hとの間の関係の例を示す。
図5】様々なレベルの筋緊張について、低減関数AM_B_FFM_Redと、脂肪量の層厚AM/Hとの間の関係の例を示す。
図6】個人の様々な筋緊張度に依拠した、B_FFM及び低減関数AM_B_FFM_Redに対する半定量的効果を示す。
図7】脂肪量灌流係数B_AMと、脂肪量の層厚AM/Hとの間の関係の例を示す。
図8】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)によって脈拍輪郭一回拍出量PCSVを改善するための第2の方法のフローチャートを示す。
図9】FRパラメータFRPを決定するためのフローチャートを示す。
図10】第1の脈拍輪郭一回拍出量を改善するための第2の方法の一部として人工呼吸器MVにおいて適用される流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定するためのフローチャートを示す。
図11】肺及びPCSVに影響を及ぼす要素の概略図を示す。
図12】人工呼吸器MV中の心臓-肺の相互作用HLIに対する胸壁のコンプライアンスCcwの影響を示す。
図13】胸壁コンプライアンスのレベルに応じた、FFP正規化関数f_FRP_MVの調整の半定量的方向及び度合いを示す。
図14】第1の脈拍輪郭一回拍出量を改善するための第2の方法の一部としての、自発呼吸SBにおいて適用される流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定するためのフローチャートを示す。
図15】代表的な流体反応性パラメータFRPとしての脈圧変動PPV対呼吸数RRの関係、及びボランティアから取得された測定値のデータセットからの測定値対に基づく近似関数f_FRP(RR)を示す。
図16図15の近似関数f_FRP(RR)から導出された、大人の場合のFRP正規化関数f_FRP_SBを示す。
図17】一回換気量TVのレベルに依拠したFRP正規化関数f_FRP_SBの調整の半定量的方向及び度合いを示す。
図18】自発呼吸SB中の心臓-肺の相互作用HLIに対する肺系統のコンプライアンスClsの影響の概略図を示す。
図19】肺系統のコンプライアンスClsのレベルに依拠したFRP正規化関数f_FRP_SBの調整の半定量的方向及び度合いを示す。
図20】肺のコンプライアンスClsの、肺のデフォルトコンプライアンスCls0に対する関係、及び一回換気量TVに依拠したFRP正規化関数f_FRP_SB_RRの例を示す。
図21】患者から取得された測定値のデータセットからの測定値対に基づく当てはめ関数ln_fit_fctの結果として得られる流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)の形態の例を示す。
図22】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、従来の生物学的較正パラメータBSACalを用いることによってPCSV_uncalを提供するための、Wesselingアルゴリズムに基づいてPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_conv)を決定するための方法の結果対基準SVrefを示す回帰図を示す。
図23】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、従来の生物学的較正パラメータBSACalを用いることによってPCSV_uncalを提供するための、代替的なアルゴリズムに基づいてPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_conv)を決定するための方法の結果対基準SVrefを示す回帰図を示す。
図24】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、従来の生物学的較正パラメータBSACalを用いることによってPCSV_uncalを提供するための、Wesselingアルゴリズムに基づいて対応する初期PCSVに関係付けられたPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_conv)変化ΔPCSVを決定するための方法の結果、対、対応する初期SVrefに関係付けられたSVref変化ΔSVrefを示す回帰図を示す。
図25】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、生物学的較正BSACalを用いることによってPCSV_uncalを提供するための、代替的なアルゴリズムに基づいて対応する初期PCSVに関係付けられたPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_conv)変化ΔPCSVを決定するための方法の結果、対、対応する初期SVrefに関係付けられた基準SVref変化ΔSVrefを示す回帰図を示す。
図26】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、本発明の灌流パラメータBioCalを用いることによって第1のPCSV_uncalを提供するための、Wesselingアルゴリズムに基づいてPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)を決定するための本発明による方法の結果対基準SVrefを示す回帰図を示す。
図27】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、本発明の灌流パラメータBioCalを用いることによって第1のPCSV_uncalを提供するための、代替的なアルゴリズムに基づいてPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)を決定するための本発明による方法の結果対基準SVrefを示す回帰図を示す。
図28】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、灌流パラメータBioCalを用いることによってPCSV_uncalを提供するための、Wesselingアルゴリズムに基づいて対応する初期PCSVに関係付けられたPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)変化ΔPCSVを決定するための本発明による方法の結果、対、対応する初期SVrefに関係付けられたSVref変化ΔSVrefを示す回帰図を示す。
図29】流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することなく、灌流パラメータBioCalを用いることによってPCSV_uncalを提供するための、代替的なアルゴリズムに基づいて対応する初期PCSVに関係付けられたPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)変化ΔPCSVを決定するための本発明による方法の結果、対、対応する初期SVrefに関係付けられたSVref変化ΔSVrefを示す回帰図を示す。
図30】灌流パラメータBioCalを用い、流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することによって第1のPCSV_uncalを提供するための、Wesselingアルゴリズムに基づいてPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)を決定するための本発明による方法の結果対基準SVrefを示す回帰図を示す。
図31】本発明の灌流パラメータBioCalを用い、流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を提供することによって第1のPCSV_uncalを提供するための、代替的なアルゴリズムに基づいてPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)を決定するための本発明による方法の結果対基準SVrefを示す回帰図を示す。
図32】本発明の灌流パラメータBioCalを用い、流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することによってPCSV_uncalを提供するための、Wesselingアルゴリズムに基づいて対応する初期PCSVに関係付けられたPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)変化ΔPCSVを決定するための本発明による方法の結果、対、対応する初期SVrefに関係付けられたSVref変化ΔSVrefを示す回帰図を示す。
図33】本発明の灌流パラメータBioCalを用い、流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を適用することによってPCSV_uncalを提供するための、代替的なアルゴリズムに基づいて対応する初期PCSVに関係付けられたPCSV(ここでは、PCSV=PCSV_imp)変化ΔPCSVを決定するための本発明による方法の結果、対、対応する初期SVrefに関係付けられたSVref変化ΔSVrefを示す回帰図を示す。
図34】各々が基準一回拍出量SVrefに関係付けられた、本発明及び従来のPCSVに従って決定される第2のPCSVの相対誤差を示す。
図35】本発明による装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、第1の実施形態による本発明の方法のための大まかな概略図を提供する。第1の実施形態において、任意の未較正脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalの灌流パラメータBioCalに基づく生物学的較正が、除脂肪量FFM及び脂肪量AMへの血流の分割を検討することによって行われる。
【0046】
図1に示すフローチャートによれば、ステップS100において、第1のPCSVとも呼ばれる未較正脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalが提供される。次のステップS200において、灌流パラメータBioCalが決定される。これについては、以下で更に詳細に説明される。灌流パラメータBioCalを決定した後、ステップS280において、この灌流パラメータBioCalは第1のPCSV_uncalに適用され、ステップS290において第2のPCSV_impが提供される。
【0047】
図1aは、第1のPCSV_uncalを提供するための例示的なフローチャートを提供する。ステップS70において、動脈圧波形の1つ又は複数の特性の決定又は測定が行われる。これは、侵襲的に又は非侵襲的に行うことができる。このため、そのような決定及び/又は測定の結果は、個人の血圧曲線のパラメータであり、これらのパラメータは、ステップS80において、そのような血圧曲線の一部を識別することを可能にする。このため、振幅、曲線によって取り囲まれた領域等のような値を検討して、ステップS85において第1のPCSV_uncalを決定し、ステップS90においてこれを出力することができる。PCSV_uncalを提供するための方法は、この技術分野において既知である。そのようなPCSV_uncalを提供するための既知の例は、Wesselingアルゴリズム(Chen他、Comput Cardiol.2009 Jan 1.The Effect of Signal Quality on Six Cardiac Output EstimatorにおけるWesselingアルゴリズム)である。しかしながら、他のアルゴリズムを用いてPCSV_uncalを提供することもできる。
【0048】
そのようなPCSV_uncalを提供するための例が図1bに示される。図1bは、例えば、高忠実度の振動測定による油圧式血圧測定用カフの使用によって、又は流体カラム及び圧力変換器を用いた直接血圧測定によって侵襲的に測定される血圧曲線の一部分を示す。単純な例示的方式において、第1のPCSV_uncalは、血圧、脈圧、斜線で示される収縮期圧領域Asys、並びに大動脈コンプライアンス及び動脈インピーダンス等の他のパラメータを用いることによって決定される。収縮期圧領域Asysは、収縮期(すなわち、左心室の吐出段階)中の動脈圧曲線によって取り囲まれた領域であり、収縮期の開始時から、収縮期動脈圧SAPと共にピークを迎え、大動脈弁の閉鎖に対応する重複切痕の開始までと定義される。その基準値は、
- (図1bにおけるような)先行する脈拍の拡張期動脈圧DAPのレベルにおける水平線として、又は、
- 先行する脈拍のDAPと、検討中の脈拍のDAPとの間の直線として、
定義される。
【0049】
平均左心室吐出圧MEPは、収縮期中の動脈圧曲線の平均値である。MEPは、図1bにおいて水平線として示される。
【0050】
上記で示したように、個人の一回拍出量は、除脂肪量FFM及び脂肪量AMで構成される体重W、身長H、年齢並びに性別のような個人のバイオメトリック/デモグラフィックパラメータに依拠する。
【0051】
このため、SVを決定するために集計式を用いるアルゴリズムにおける一回拍出量SVの第1の主要決定因子は、個人のバイオメトリック/デモグラフィックパラメータである。
【0052】
個人のSVの第2の主要決定因子は血行動態ステータスである。このため、測定された動脈圧脈拍波形の脈拍輪郭評価の結果として、動的入力パラメータが得られ、そこから未較正PCSV(PCSV_uncal)が計算される。
【0053】
本発明による第1の実施形態において、BioCalは、個人のバイオメトリック/デモグラフィック入力パラメータに従って、絶対PCSV値に対し任意の所与のPCSV_uncalをスケーリングするための較正関数を提供する。
【0054】
図2において、灌流パラメータBioCalを決定するための詳細なフローチャートが与えられる。本発明の第1の実施形態に示されるように、除脂肪量と脂肪量との分離が行われる。このため、ステップS205及びS255において、除脂肪量FFM及び脂肪量AMがそれぞれ決定される。
【0055】
除脂肪量FFM及び脂肪量AMの決定については、以下でより詳細に説明する。
【0056】
FFM(kg)及びAM(kg)は、式1に従って個人の体重W(kg)の2つの部分を表す。
(1)W(kg)=FFM(kg)+AM(kg)
【0057】
FFMは、大きな酸素消費を有する代謝的に高活性の身体の質量であり、したがって、SVのはるかに大きな部分を占める。AMは、低酸素消費の代謝的に非常に低活性の組織の質量であり、SVのはるかに小さな部分を占める。
【0058】
FFM(kg)及びAM(kg)の推定のために、Yu他、BMC Pharmacol Toxicol.2013 Oct 14.Lean body mass:the development and validation of prediction equations in healthy adultsにおけるYu、Heitmann及びJanmahasatianの式が用いられ、以下に平均化される。
(2)
女性の場合、FFM(kg)=(56.128kg+(1.3016+9270/(8780+244m2/kg・BMI(kg/m2)))・W(kg)-2.2268m2・BMI(kg/m2)-0.1134kg/y・age(y))/3
男性の場合、FFM(kg)=(66.068kg+(1.4138+9270/(6680+216m2/kg・BMI(kg/m2)))・W(kg)-2.2268m2・BMI(kg/m2)-0.1134kg/yage(y))/3
(3)AM(kg)=W(kg)-FFM(kg)
【0059】
式(2)は、FFMの予測の例であり、更に改善された予測式と置き換えることができる。
【0060】
青少年、小児及び幼児の場合、他の適切なFFM及びAM推定式が用いられ、平均化される。
【0061】
そのようなFFM及びAM推定が、正常なステータスにおける対応する状態に関係し、概して、1)FFMの含水量が一定であり、2)AMがほとんど又は全く水を含まないことを仮定する。このため、患者の臨床状態において適用されるとき、例えば全身性浮腫又は滲出によって変造される場合がある実際の重量ではなく、最新の既知の未発症体重のみがそのような式に入力される場合がある。
【0062】
FFM及びAMの決定に基づいて、一回拍出量SV(ml)と、FFM及びAMとの間の関係を以下に得ることができる。
(4)SV(ml)~B_FFM(ml/kg)・FFM(kg)+B_AM(ml/kg)・AM(kg)+...+B_Const(ml)
ここで、B_FFMは、FFM灌流に関係付けられた灌流係数であり、B_AMは、AM灌流に関係付けられた灌流係数であり、B_Constは、SVに対する他の影響を計上する。灌流係数B_FFM及びB_AMは、それぞれステップS215及びS265において決定される。
【0063】
Collis他、Circulation.2001 Feb 13;103(6).Relations of stroke volume and cardiac output to body composition:the strong heart study、及びCorden他、J Cardiovasc Magn Reson.2016 May 31;18(l):32.Relationship between body composition and left ventricular geometry using three dimensional cardiovascular magnetic resonanceにおいて、女性の場合と男性の場合とでB_FFM及びB_AMに違いがあることがわかっている。
【0064】
異なるが一定の灌流係数B_FFM及びB_AMを適用することは、FFMの質量あたりの血流FFM_perf(ml/min/0.1kg)及びAMの質量あたりの血流AM_perf(ml/min/0.1kg)における差を考慮するが、FFM及びAMの関係と独立したFFM及びAM部分の灌流挙動を仮定する。しかしながら、B_FFM及びB_AMは一定でない(図4及び図7)。
【0065】
AM(kg)と呼ばれる、AMを通じた血流AM_perf(ml/min/0.1kg)及び灌流係数B_AMは、体重におけるAMの占有率AM%=AM(kg)/W(kg)に大きく依拠し、灌流係数B_AMが個々に適合されなくてはならないことを示す。しかしながら、AM%に対する灌流係数B_AMの依存性は、AMの絶対レベルの情報を含まないため、B_AMの変動性を説明するのに十分ではない。
【0066】
このため、本発明によれば、個人の身長にわたるAM及びFFMの分布を用いて、灌流係数B_AM及びB_FFMに対する影響を決定する単純なモデルが提供される。
【0067】
単純化モデルにおいて、AM及びFFMは、図3に示すように2つの対応する層として表される。FFM層厚は、ステップS210において、FFM/Hによって推定される。ステップ260において、AM層厚はAM/Hによって推定される。
【0068】
FFM/H、AM/H及び他のバイオメトリック/デモグラフィックパラメータの正常値が以下の表に与えられる。
【0069】
【表1】
【0070】
図3に示すモデルは、これらの検討に基づき、灌流係数B_FFM及びB_AMの挙動を記述するために適切な灌流関数が開発された。
【0071】
図3において、白色部分は脂肪量AMであり、灰色部分は除脂肪量FFMである。図3に示すように、AM(白色)及びFFM(灰色)灌流は、層厚AM/H及びFFM/Hに依拠し、ここでH=身長である。斜線の密度は灌流レベルを示し、密な斜線=高灌流(図3の左側)、広い斜線=低灌流(図3の右側)である。薄いFFM層の場合に容易に認識することができるように、FFMを通じた灌流は、厚いFFM層の場合よりも高い。しかしまた、薄いAM層の場合のAM及びFFMを通じた灌流は、厚いAM層の場合よりも高い。
【0072】
筋緊張が低いか又はない患者、例えば、意識不明であるか又は麻酔をかけられた、神経筋遮断患者において、筋肉は、構造的支持機能が欠如している。したがって、FFM層の重量が灌流係数B_FFMに重力的に影響を及ぼす。なぜなら、この重量がFFMの大きな部分、すなわち、筋肉、腹腔内臓器等を圧迫するためである。このため、灌流係数B_FFMは、FFM/Hの層厚の増大と共に減少する。
【0073】
また、灌流係数B_FFMは、脂肪量AMの層厚AM/Hの増大と共に低減されることが認識された。
【0074】
筋緊張のない患者において、AM層厚は、AM層の増大と共に灌流係数B_FFMを重力的に低減させる。なぜなら、皮下脂肪層の増大は、FFMの大きな部分を更に圧迫するためである。
【0075】
更に、灌流係数B_AMは、脂肪組織における支持構造の欠如に起因して、AM/Hの増大と共に重力的に減少することがわかった。更に、灌流係数B_AMは、FFM/Hの層厚によって影響を受けない。
【0076】
このため、図4に示す関数B_FFM(FFM/H)は、FFM/Hの増大と共に減少し、好ましくは、非線形関数、例えば、逆正接関数、シグモイド関数又は対数関数であり、好ましくは以下によって記述される。
(5)B_FFM(FFM/H)(ml/kg)=a_FFM(ml/kg)・arctan[(FFM/H(kg/m)-b_FFM(kg/m))・c_FFM(m/kg)]+d_FFM(ml/kg)
ここで、a_FFM、b_FFM、c_FFM及びd_FFMは、個々のFFM関連較正係数及び定数であり、B_FFMは0.2...0.7ml/kgの範囲内にある。
【0077】
FFM/Hの増大と共に非線形に減少するB_FFMを示す、異なるレベルの筋緊張についてのB_FFMとFFM/Hとの間の関係を示すB_FFM(FFM/H)の例示的な経過が図4に示される。
【0078】
図2におけるフローチャートによれば、FFM及びAMの層厚は、それぞれステップS210及びS260において決定される必要がある。この決定は、図3に与えられるモデルを用いて行われる。これらの層厚FFM/H及びAM/Hに基づいて、それぞれの灌流係数B_FFM及びB_AMがそれぞれステップS215及びS265において決定される。
【0079】
次のステップS220において、灌流係数B_FFMは、低減関数AM_B_FFM_Red(AM/H)を適用することによって調整される。低減関数は減衰関数と置き換えることもできる。以下において、低減関数の適用のみが説明される。低減関数AM_B_FFM_Redは、灌流係数B_FFMに対するAMの厚みの影響を記述する。低減関数AM_B_FFM_Redは、AM/Hの増大と共に増大し、好ましくは、非線形関数、例えば、逆正接関数、シグモイド関数又は対数関数であり、筋緊張の異なるレベルについて図5に例示的に示される。
【0080】
低減関数AM_B_FFM_Redは、AM/Hの増大と共に増大し、好ましくは、式6に記述される非線形関数、例えば、逆正接関数、シグモイド関数又は対数関数である。
(6)AM_B_FFM_Red(AM/H)(ml/kg)=a_att(ml/kg)・arctan[(AM/H(kg/m)-b_att(kg/m))・c_att(m/kg)]+d_att(ml/kg)、
ここで、a_att、b_att、c_att及びd_attは、個々のAM関連較正係数及び定数であり、AM_B_FFM_Redは0...0.2ml/kgの範囲内にある。
【0081】
図2のステップS220に戻ると、補正された灌流係数、B_FFM_corrは、式7に記述される、予備B_FFM(FFM/H)及びAM_B_FFM_Red(AM/H)の差である。
(7)B_FFM_corr(FFM/H,AM/H)(ml/kg)=B_FFM(FFM/H)(ml/kg)-AM_B_FFM_Red(AM/H)(ml/kg)
【0082】
このため、意識レベル、麻酔レベル及び/又は筋弛緩レベルに依拠して、灌流係数B_FFM(FFM/H)及び低減関数AM_B_FFM_Red(AM/H)が適合されなくてはならないことがわかった。
【0083】
図6は、B_FFM及び低減関数AM_B_FFM_Redに対する半定量的影響を示す。これは、個人の様々な筋緊張度に依拠する。筋緊張がない状態(例えば、完全に麻酔がかかり、筋弛緩した患者)において、B_FFM及びAM_B_FFM_Redに対するFFM及びAM層厚の影響は、図4及び図5に示すように最も顕著である。通常の安静時の筋緊張において、上述した影響は最も顕著でなく、筋緊張低減状態(例えば、意識のない患者)において、影響は中程度に顕著である。
【0084】
しかし、関数B_AM(AM/H)も、AM/Hの増大と共に減少し、好ましくは、非線形関数、例えば、逆正接関数、シグモイド関数又は対数関数である。これは、式8によって与えられる。
(8)B_AM(AM/H)(ml/kg)=a_AM(ml/kg)・arctan[(AM/H(kg/m)-b_AM(kg/m))・c_AM(m/kg)]+d_AM(ml/kg)
ここで、a_AM、b_AM、c_AM及びd_AMは、個々のAM関連較正係数及び定数であり、B_AMは0...0.4ml/kgの範囲内にある。
【0085】
脂肪量AMの灌流係数B_AMが、AMの層厚AM/Hの増大と共に減少することを示す、B_AM(AM/H)の例示的な経過が図7に与えられる。
【0086】
代替的に、灌流係数B_AM(AM/H)は、AM/Hの増大と共に減少するAM灌流を記述する類似の挙動を有する関数と置き換えることができる。灌流係数B_FFM(FFM/H)は、FFM/Hの増大と共に減少し、更にAM/Hの増大と共に減少するFFM灌流を記述する類似の挙動を有する関数と置き換えることができる。
【0087】
更に代替的に、AM/Hは、AMと体表面積との比AM/BSA又はAM/H2と置き換えられ、FFM/Hは、FFMと体表面積との比FFM/BSA又はFFM/H2と置き換えられる。
【0088】
集中治療室に搬送された未特定の又は未知の救急患者について起こる場合があるように、未発症体重及び/又は年齢が未知であることに起因して、FFM及びAMの区別が可能でない場合、この関係の近似は、W/H、W/BSA、W/H2、PBW/H、PBW/BSA又はPBW/H2により達成され、PBWは、個人の予測体重である。
【0089】
図2のステップS225及びS275に戻ると、個人の静的脈拍輪郭一回拍出量、除脂肪量FFM及び脂肪量AMに関係付けられたPCSV較正係数は、それぞれ灌流係数B_FFM_corr及びB_AM_corrの使用によって決定される。
(9)PCSV_FFM_Cal(ml)=B_FFM_corr(ml/kg)・FFM(kg)、
(10)PCSV_AM_Cal(ml)=B_AM(ml/kg)・AM(kg)
【0090】
個人の第2のPCSV_impを得るために、第1のPCSV_uncalは、個人の静的脈拍輪郭一回拍出量、PCSV較正係数PCSV_FFM_Cal、PCSV_AM_Calを用いることによって較正される。
(11)PCSV(ml)=PCSV_uncal・(PCSV_FFM_Cal(ml)+PCSV_AM_Cal(ml))・P_Cal
ここで、PCSV_uncal及びP_Calは次元を有しない。
【0091】
更に、図2のステップS230に示すように、追加の静的なデモグラフィック較正係数P_Calが適用される。
【0092】
第1のPCSV_uncalは、心前負荷(すなわち、胸郭内血液量)及び性能(すなわち、収縮性)、大動脈コンプライアンス、動脈インピーダンス及び圧力(すなわち、心後負荷)等の動的影響に依拠した個人の実際の血行動態状態を反映する。
【0093】
P_Calは、SVのレベルに影響を与える、FFM及びAMに加えて個人のバイオメトリック/デモグラフィック特性に依拠する較正係数である。
【0094】
静的なバイオメトリック/デモグラフィック較正係数P_Calは、例えば、式12に示すような様々なバイオメトリック/デモグラフィックパラメータの和又は積とすることができる。
(12)P_Cal=H(m)・coeff_H(l/m)+age(yrs)・coeff_age(l/yrs)+const_gender
ここで、coeff_Hは、個人の身長を指し、coeff_ageは個人の年齢(動脈系のコンプライアンス)を指し、const_genderは次元を有さず、個人の生物学的性別を指す。
【0095】
トランスジェンダーの場合、個人の体格に関する半定量的入力情報が必要である。この評価は、例えば、範囲0.0~1.0内の値とすることができ、例えば0.7であり、ここで、
【数1】
及び
【数2】
である。
【0096】
静的なバイオメトリック/デモグラフィック較正係数P_Calは、入力データH、年齢及び性別によって考慮されていないPCSVレベルに影響を与える追加のパラメータを指す次元を有しない追加の定数によって精緻化することができる。
(13)P_Cal=H(m)・coeff_H(l/m)+age(yrs)・coeff_age(l/yrs)+const_gender+const_BC
【0097】
PCSV計算は、上述したPCSV較正手順において検討されていない、PCSVに影響を与える追加のパラメータを指す追加の補正定数const_BCによって更に精緻化することもできる。
【0098】
このため、PCSV_FFM_Cal及びPCSV_AM_Cal並びにデモグラフィック較正係数P_Calに基づいて、ステップS240において灌流パラメータBioCalが決定され、これが第1のPCSV_uncalに適用される。
【0099】
このとき、第2のPCSV_impは以下となる。
(14)PCSV_imp(ml)=PCSV_uncal・[(PCSV_FFM_Cal(ml)+PCSV_AM_Cal(ml)+const_corr(ml))・P_Cal]
BioCal(ml)=(PCSV_FFM_Cal(ml)+PCSV_AM_Cal(ml)+const_corr(ml))・P_Cal
PCSV_imp(ml)=PCSV_uncal・BioCal(ml)
【0100】
較正定数PCSV_FFM_Cal、PCSV_AM_Cal及びP_Calをもたらす静的入力パラメータの関数の係数及び定数は、評価母集団において決定される。
【0101】
この評価母集団において、式(14)に関するこれらの係数及び定数は、(14)から計算されたPCSVの回帰及び相関分析の相関係数、傾き及び切片、対、経肺動脈熱希釈により測定された同時のゴールドスタンダードの一回拍出量SVrefを(手動で、及びMicrosoft Excelソルバを適用することによって)最適化することによって得られた。
【0102】
図8において、本発明の第2の実施形態を記述するフローチャートが提供される。本発明の第2の実施形態において、流体反応性パラメータFRPが脈拍輪郭一回拍出量の変化をより良好に追跡するのに用いられる。このため、心臓が前負荷量変化に反応する場合に脈拍輪郭一回拍出量アルゴリズムの感度を改善する、一回拍出量における流体反応性FRの影響を反映するPCSV改善関数が開発される。
【0103】
図8は、流体反応性パラメータ、特に、正規化された流体反応性パラメータFRP_norm、及びこの流体反応性パラメータFRP_normに基づいて導出された流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を用いることによって、ステップS390において第2のPCSV_impを提供するための一般的な手順を示す。第2のPCSV_impは、本発明の方法又は装置に基づいて改善されたPCSVである。
【0104】
図1図7に関して説明した本発明の第1の実施形態における第1のステップS100に類似した第1のステップS100において、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalが提供される。この手順は、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalに適用することもできるし、異なる方法を用いることによって取得することができる従来のPCSV結果PCSV_convに適用することもできる。PCSV_uncalは、血圧から導出されたデータに基づいた、次元を有しない(単位のない)値である一方で、従来の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)は、ml単位で測定され、個人から取得された医療データに基づいて、その個人から取得された医療データを考慮に含める。
【0105】
第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを提供するために、侵襲的及び/又は非侵襲的測定を用いることによって取得され得る動脈圧波形を提供することのみが必要とされるか、又は第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalは、非侵襲的組織圧脈拍波形、及び動脈圧波形の再構築に基づいて取得することができる。この動脈圧波形に基づいて、例えば、図1bに関して説明された方法によって、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalが導出される。しかしながら、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalを提供するためのいくつかの他の方法が可能である。本発明の場合、第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalがどのように取得されるかは重要でない。上記で説明したように、本発明の本質は、従来の取得される第1の脈拍輪郭一回拍出量PCSV_uncalの精度を改善する方法を提供することである。
【0106】
上記で説明したように、心臓-肺の相互作用HLIは、区別される必要がある異なる状況の間に生じる。なぜなら、HLIに影響を与えるパラメータはこれらの状況において異なるためである。HLIは、自発呼吸SB及び人工呼吸器MVの間に生じる。MVは、完全に制御された人工呼吸器CMV又は自発呼吸補助ASB、及びSBとCMVとの間の任意の他の人工呼吸形態に分離することができる。
【0107】
第1に、人工呼吸器中の流体反応性パラメータが論考される。MVにおいて、外部ポンプ(すなわち、人工呼吸器装置)が空気又は任意の他の換気ガス混合物を呼吸の軌道内に押し入れ、これにより肺を陽圧で膨張させる。肺の膨張により、胸郭の拡大及び横隔膜の尾側移動が生じる。同時に、MV吸気において、拡大する肺は、主に大静脈、右心房、右心室、肺循環及び左心房から構成される胸郭内低血圧容量系IBCSを圧迫する。この圧迫により、右心室前負荷及び一回拍出量の静脈灌流の低減が生じ、これは、肺及び左心を通過した後、再び大動脈及び動脈系において、減少した一回拍出量、又はこれに対応して減少した収縮期圧及び脈圧として検出される。
【0108】
MVにおけるHLIをどのように利用することができるかを理解するために、肺を、IBCSの相対的充満及び心臓前負荷の適切性の推定のための試験ツールであると仮定することが役立つ。相対的充満は、半定量的な段階的情報、例えば、心血管充満が適切であるか、過度に多いか、又は過度に少ないか、又は非常に過度に少ないかのみが取得されることを意味する。それによって、流体反応性パラメータFRPは、通例、吸気及び呼気で構成される換気サイクルの少なくとも1つの呼吸にわたるパーセンテージ変動として計算される。
【0109】
異なるFRP、例えば脈圧変動PPV、平均左心室吐出圧変動MEPV、一回拍出量変動SVV、収縮期圧変動SPV、収縮期圧領域変動SPAV又は任意の他の適切なFPRを単独で又は組み合わせて用いることができる。後者の場合、例えば、組み合わされたFRPを生成する前に、回帰分析式を適用する、例えば加重平均を計算することによって、異なるFRPを、比較可能なレベル及び範囲に調整することが必要である。
【0110】
SPVの値範囲をPPVに当てはめるように均一にする関数について示される例は、以下である。
(15)PPV*(%)=coeff・SPV(%)+const
これに対し、coeff及びconstは、回帰分析から導出され、次元を有しない。PPV及びPPV*は、加重平均として組み合わされFRPにされる。
(16)FRP(%)=(PPV(%)+w・PPV*(%))/(1+w)
ここで、wは次元のない重み付け係数である。
【0111】
MEPVの値範囲をPPVに当てはめるように均一にする関数について示される例は、以下である。
(17)PPV1*(%)=coeff_MEPV・MEPV(%)+const_MEPV
ここで、coeff_MEPV、const_MEPVは、回帰分析から導出され、次元を有しない。
【0112】
SPAVの値範囲をPPVに当てはめるように均一にする関数について示される例は、以下である。
(18)PPV2*(%)=coeff_SPAV・SPAV(%)+const_SPAV
ここで、coeff_SPAV、const_SPAVは、回帰分析から導出され、次元を有しない。
【0113】
PPV、PPV1*及びPPV2*は、加重平均として組み合わされFRPにされる。
(19)FRP(%)=(PPV(%)+w1・PPV1*(%)+w2*PPV2*(%))/(1+w1+w2)
ここで、w1及びw2は次元のない重み付け係数である。
【0114】
FRPの絶対レベルは、血行動態充満ステータスのみでなく、肺であるFR試験ツールの有効性、並びに試験が行われる力及び条件にも依拠する。
【0115】
例えばMVにおける変化していないIBCSを所与として、より大きな一回換気量の結果としてより高いFRP値が得られるのと比較して、より小さな一回換気量の結果としてより低いFRP値が得られる。一回換気量が変化するときに観測可能なFRPの変化は、IBCSにおける経壁圧を低減し、これによりその容積を低下させる胸郭内圧力ITPの付随変化によって直接引き起こされる。
【0116】
このため、FRPの正規化が行われ、それによって、一回換気量における変化のようなIBCSの充満ステータス以外のパラメータの変化を無効にする。
【0117】
式(16)又は式(19)において導出されたFRPの値は、%単位で与えられる組み合わされたFRPと呼ばれる。これは、図9のステップS308における出力であり、これについては後に詳細に説明される。この組み合わされたFRP値は、正規化される必要があり、正規化されたFRPであるFRP_normをもたらす。ここで、MVとSBとは区別されなくてはならない。これについては以下において説明される。
【0118】
MV及びSBについて正規化された流体反応性パラメータFRP_normを得ると、この正規化されたFRP_normを用いて、ステップS300において流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)が生成又は決定される。このため、最初に、流体反応性パラメータFRP_normが決定されなくてはならない。
【0119】
MVにおいて、流体反応性パラメータFRP_normは、式20に基づいて計算される。
(20)FRP_norm(%)=FRP(%)・f_FRP_MV
【0120】
SBにおいて、式21が用いられる。
(21)FRP_norm(%)=FRP(%)・f_FRP_SB
【0121】
f_FRP_MV及びf_FRP_SBは、以下で説明される正規化関数を表す。
【0122】
式(20)及び式(21)において、FRPは、図9のステップS308における組み合わされた流体反応性パラメータ出力であるか、又はステップS304における単一の流体反応性パラメータ出力である。このFRPの決定は、以下で図9に基づいて説明されることになる。
【0123】
ステップS302において、少なくとも1つのFRPが決定される。以下の血圧関連データは、少なくとも1つのFRP:脈圧変動(PPV)、平均左心室吐出圧変動(MEPV)、一回拍出量変動(SVV)、収縮期圧変動(SPV)、収縮期圧領域変動(SPAV)、フォトプレスチモグラフィ変動性指標(PVI)、又は適切な感度及び特異性を有する任意のFRPを決定するために用いることができる。
【0124】
上述したFRPのうちの1つのみが決定される場合、ステップS303において、ステップS304において(%)単位での単一のFRPを出力することを決める。少なくとも2つのFRPが決定される場合、ステップ305において、それらのうちの1つがガイドFRPとして選択される。少なくとも2つのFRPのうちの他のものが調整されなくてはならないため、ステップS306において他のFRPの調整が行われる。このため、少なくとも1つの他のFRPが、ガイドFRPの比較可能なレベル及び/又は範囲まで調整される。回帰分析を用いることによって調整が行われ、ここで、式15、式17及び式18に示すように、係数及び定数を用いて、異なるFRPのレベルをガイドFRPに対し調整する。
【0125】
ステップS306において少なくとも1つの他のFRPをガイドFRPに対し調整した後、ステップS307において、組み合わされたFRPが生成される。組み合わされたFRPの次元は%である。図8のステップS300において、単一の又は組み合わされたFRPがFRP_normの決定のために用いられる。上記で示したように、図10のステップS316において、組み合わされた又は単一のFRPは、FRP正規化関数によって正規化される。
【0126】
以下において、単一の又は組み合わされたFRPの正規化が人工呼吸器について説明される。これについては、上述した式17を参照されたい。このため、FRPを正規化してFRP_normを導出するために、正規化関数f_FRP_MVが展開される。
【0127】
最初に、正規化の必要性が説明される。肺をIBCSの充満ステータスのための試験ツールとみなすとき、呼吸系の様々な構成要素がIBCSに対し異なる影響を有するため、標準化が必要である。このため、呼吸系全体及びその構成要素が検討される必要があり、その各々は、個人の健康な状態と疾患状態とで著しく変化する。
【0128】
1つの重要な要素は、呼吸系のコンプライアンスCrsである。呼吸系全体の静的コンプライアンスCrsは、肺コンプライアンスCls自体及び胸壁コンプライアンスCcwを含む。
【0129】
Grinnan他2005[2]によれば、式(22)を所与として、以下の関係が適用可能である。
(22)Crs(ml/cmH2O)=Ccw(ml/cmH2O)・Cls(ml/cmH2O)/(Ccw(ml/cmH2O)+Cls(ml/cmH2O))
【0130】
正常な成人の肺のCrsは、70~100ml/cmH2Oであり、急性の重度なARDS(成人呼吸窮迫症候群)及び慢性肺線維症では、更には25ml/cmH2Oまで減少する場合がある。
【0131】
Ccwは、胸壁、すなわち、1つの実体とみなされる胸郭及び横隔膜のコンプライアンスを表す。Ccwは、例えば、腹腔内圧の上昇及びそれにより硬くなった横隔膜に起因した腹部を発端とした敗血症において減少する場合があり、同じことは、例えば、ベヒテレフ病における、胸郭を硬化させる任意の疾患で発生する。逆もまた同様に、Ccwは、手術中の開腹に起因して増大する場合がある。低減したCcwは、肺の同じ膨張レベルを達成するのにより高い機械的吸気圧を必要とし、このため、正常なCcwを有する胸壁と比較して、より高いレベルにITPを増大させる。逆もまた同様に、これはCcwの増大を有する胸壁にも当てはまる。
【0132】
例示の目的で、共にIBCSに影響を与える肺及び胸壁を含む呼吸系を示す図11及び図12を参照されたい。
【0133】
手術室における通常の臨床業務において、人工呼吸器装置は、所与の状況に対する目標一回換気量、ピーク吸気圧制限、終末呼気陽圧及び換気速度を有するCMVに設定される。通例、例えば標準化された一回換気量を用いて標準化された試験手順を行うことは実際的でないか又は更には不可能である。このため、個人間で比較可能な正規化されたFRP_normを取得するために、結果として得られるFRP値は、IBCSのレベルとは別に、FRPに影響を与えるパラメータを補償/除去することによって正規化される必要がある。
【0134】
機械的に人工呼吸された個人において、FRPの変化は、人工呼吸器によって適用されるそれぞれの一回換気量TVによって生じる胸郭内圧力変化であるITP変化によって誘発される。IBCSが一定の場合、より大きなTVの結果として大きなFRP値が得られるのに対し、より小さなTVの結果としてより小さなFRP値が得られる。
【0135】
正常なCcwを有する正常な胸郭を有する他の点では完全に同一の患者と比較した、低いCcwを有する硬い胸郭を有する患者における同じTVを用いると、結果として、ITPのより高い変化及びFRPのより高い値が得られる。
【0136】
このため、FRPは一回換気量TVに基づいて正規化され、TVも個人間で比較可能になるように正規化されなくてはならない。
【0137】
通常の臨床業務において、TVは、NIH-NHLBI ARDSネットワークによって定義されるような予測体重PBWに正規化され、PBWは、式(23)及び(24)に従って計算する。
(23)男性、PBW(kg)=50kg+2.3kg/in(height(in)-60in);
(24)女性、PBW(kg)=45.5kg+2.3kg/in(height(in)-60in)
【0138】
この正規化は、性別及び48インチ~84インチ(123cm~213cm)に制限された身長のみを考慮に入れるが、体重及び年齢を考慮に入れず、したがって非常に大まかである。式(23)及び(24)のみに基づくPBWに対するTVの正規化は、幼児及び子供におけるPBWの推定のためのアルゴリズムを提供していない。更に、身長とPBWとの間の線形関係を仮定するが、これはほとんどのバイオメトリック関係にとってかなり一般的でない。
【0139】
このため、TVを身体の代謝的に最も活性の高い区画に関係付けることが提案される。この区画は、非脂肪又は除脂肪体重FFMとして知られる。FFMは、酸素取り込み量、心拍出量、左心室質量、及び肺機能の変数、例えば、総肺容量TLCと最も相関する。TLCは、最大肺容量と密に関係付けられる。
【0140】
kg単位でのFFMの予測推定が第1の実施形態において式(2)及び式(3)で上記に説明され、ここでも適用される。他の適切なアルゴリズムを用いるFFMの推定も、子供及び幼児に適用される。
【0141】
要約すると、単一の又は組み合わされたFRPを正規化するために用いられるFRP正規化関数が以下に基づいて計算される。
(25)f_FRP_MV=TVnorm0(ml/kg)/TVnorm(ml/kg)
【0142】
このため、FRP正規化関数は、例えば成人において8ml/kgFFMのデフォルト値TVnorm0に対するTVnormの関係を用いて正規化されるのに対し、TVnormは、以下の式に基づいてTV及びFFMに基づいて計算される。
(26)TVnorm(ml/kg)=TV(ml)/FFM(kg)
【0143】
正規化された一回換気量TVnormが図10におけるステップS310において提供される。TVは人工呼吸のために用いられる人工呼吸器から読み出される。TVnorm=TVnorm0である場合、FRP_normはFRPに等しい。ステップS312において、FRP正規化関数は、正規化されたTVnormに基づいて決定される。
【0144】
追加の係数coeff_MV及び定数const_MVを用いたFRP正規化関数の正規化の精緻化は、式25に与えられるように可能である。
(27)f_FRP_MV=TVnorm0(ml/kg)/TVnorm(ml/kg)・coeff_MV+const_MV
例えば、ここで、PPV及びSPVが組み合わされたFRPとして用いられるとき、成人において、TVnorm0=6..12ml/kgFFM、coeff_MV=0.5..2、及びconst_MV=-1..1である。
【0145】
TVnormに対するFRPの正規化は、既に、Clsの様々な条件を補償する。なぜなら、ITPに対する定数TVnormを有するMVの影響は、任意のClsについて同じであるためである。
【0146】
上記で説明したように、呼吸系は胸壁を更に含む。このため、ステップS314において行われるように、胸壁コンプライアンスCcwの様々な条件にf_FRP_MVを適応させることが必要とされる。ここで、Ccwが正常であるか、増大しているか又は減少しているか、及びCcwがどの程度増大又は減少しているかの情報を与える入力データが必要とされる。程度の好ましい等級は以下の通りである。
(a)中程度の増大(↑)
(b)正常(-)
(c)中程度の減少(↓)
(d)大きな減少(↓↓)
(e)非常に大きな減少(↓↓↓)
ただし、これらに限定されない。
【0147】
Ccwの増大は、例えば、腹部が開かれた状況(中程度の増大)又は胸部が開かれた状況(より大きな~大きな増大)において観測される場合がある。しかしながら、後者の条件は、等級付けが難しい。なぜなら、胸部が部分的に開かれるか、又は完全に開かれるかで条件が大きく異なり、双方の肺が大気圧に自由に露出される場合、最も大きな等級となるためである。このため、そのような状況の等級付けは、実用上の問題に起因して考慮に入れられない。
【0148】
MVにおけるHLIに対するCcwの影響を示す図12が更に参照される。ここで、高/低HLIが、垂直方向の点線間の大きな/小さな距離として表示される。
【0149】
このため、FRP正規化関数f_FRP_MVは、Ccwの方向及びレベルに応じて調整される。図13に概略的に示されるように、増大したCcwは、f_FRP_MVがより高いレベルに調整されることを必要とし、逆もまた同様である。調整のレベルは、定量的ステップにおいて行うことができ、個人の胸壁の健康状態及び物理的特性に基づいて医師又は医療スタッフによって入力される。
【0150】
異なるTVnorm及びCcwについてFRPを保証する全ての上述した標準化方法は、陽圧人工呼吸の任意のモードにおいて一般的に機能する。
【0151】
ステップS314において、FRP正規化関数f_FRP_MVを相応して調整することによって胸壁のコンプライアンスCcwの様々な条件を検討した後、ステップS316においてFRP正規化関数f_FRP_MVが単一の又は組み合わされたFRPに適用され、正規化されたFRP_normが達成される。
【0152】
ステップS318において、正規化されたFRP_normを用いて、流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を展開する。これは、線形若しくは非線形関数であるか、又はこれらの組み合わせであり、小さなFRP_norm値においてPCSV値を増大させ、大きなFRP_norm値においてPCSV値を減少させる。例示的なf(FRP_norm)が図21に示される。
【0153】
流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)の可能な線形形態は以下の通りである。
(28)f(FRP_norm)=a・FRP_norm(%)+d
ここで、a及びdは次元を有さず、a<0である。
【0154】
流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)の可能な基本的非線形形態は以下の通りである。
(29)f(FRP_norm)=a・ln(FRP_norm(%))+d
ここで、a及びdは次元を有さず、a<0であり、好ましくは追加の調整係数によって以下に精緻化することができる。
(30)f(FRP_norm)=a・ln(FRP_norm(%)・b-c)+d
ここで、a<0であり、次元調整係数a、b、c及びdは、臨床研究に基づいて導出される。
【0155】
ステップS320において、最終的な流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)が出力され、図8のステップS350において、流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)に基づいて第1のPCSV_uncalを改善するために用いられる。ステップS390において、第2のPCSV_impが、例えば医療デバイス330のディスプレイ上に出力されるか、又は医療デバイス330に接続されるか若しくは含まれる自動供給装置若しくは注入ポンプを制御するために用いられる。
【0156】
第2のPCSV_impを計算するための基礎を成す式29は以下の通りである。
(31)PCSV_imp(ml)=PCSV(ml)・f(FRP_norm)
【0157】
以下において、自発呼吸SBにおけるHLI機構、及び自発呼吸における流体反応性パラメータの正規化について、図14図20を参照して説明する。
【0158】
自発呼吸において、吸気は、肋間呼吸筋及び横隔膜が収縮し、胸郭の容量を増大させ、これにより負の胸郭内圧ITP及び肺内の負圧を引き起こすことに起因して生じる。これにより、空気又は任意の他の換気ガス混合物が肺内に流れる。なぜなら、個人の周囲の大気圧が肺の気流内の圧力よりも高いためである。同時に、吸気時の負のITPに起因して、胸郭外区画からIBCS(例えば、大静脈、右心房)への静脈血流が増大し、これにより、右心室前負荷が増大し、このため右心室一回拍出量が増大する。
【0159】
増大した右心室一回拍出量は、拍動ごとに肺を通って進み、左心室拡張末期容積及び一回拍出量を増大させる。増大した左心室一回拍出量は、例えば収縮期圧及び脈圧における付随する上昇によって大動脈及び動脈系において検出される。正常な呼気において、このHLI機構は逆になり、呼吸筋及び横隔膜が弛緩し、正常な呼吸において、胸郭の容積は、吸気筋の弛緩時の弾性反跳に主に起因して受動的に減少する。ITP及びその後の遠位気道圧が正になり、これによって、より低い大気圧に向けた呼気が生じる。強制された呼気において、他の内肋間筋及び腹筋が収縮し、実質的により高い正のITPが生じる。
【0160】
正常な呼気及び強制された呼気の双方がITPの増大を引き起こし、IBCSの圧迫は、静脈還流、右心室前負荷及び一回拍出量の低減を引き起こし、これも、例えば収縮期圧及び脈圧の減少によって大動脈及び動脈系において検出される。
【0161】
これらの全ての条件が流体反応性パラメータに影響を与えるため、正規化が必要とされる。
【0162】
人工呼吸中の状況に類似して、肺は、健常な肺及び疾患状態の肺における異なる静的肺コンプライアンスClsを考慮に入れることなくそれ自体を試験ツールとして標準化することができない。
【0163】
低減したClsを有する硬い肺(線維症等)は、正常なClsを有する肺と比較して、同じ膨張レベルを達成するために、より負のITPを必要とする。自発吸気中のより負のITPにより、より高い静脈還流、より高い一回拍出量、及び最終的により大きなFRP値が生じる。
【0164】
MVにおける条件と異なり、ITPに対する、したがってFRPに対するCcwの影響は無視できる=SBにおいて適用されないとみなすことができる。
【0165】
通例、ITP変化も、一回換気量も、患者又は個人にストレスを引き起こすことなくSBにおいて測定することができない。しかしながら、一回換気量により誘発されたFRP変化も正規化される必要があり、静的肺コンプライアンスが考慮に入れられる必要がある。同じレベルの物理的活性及び環境条件において肺胞換気量は経時的に一定のままである。RRの任意の増大の結果として一回換気量が低下し、呼吸数RRの減少の結果として一回換気量が高くなる。この場合、呼吸数RR又は対応する変数がFRP正規化のために用いられる。なぜなら、これはTVに関係付けられ、したがってFRPに関係付けられるためである。自発呼吸する成人個人のRRは、正常条件及び最も病的な条件下で6..40/minの範囲で変動する。IBCSが一定の場合、より大きなRRの結果としてより低いTVが得られ、このためより小さなFRP値が得られるのに対し、より低いRRの結果としてより大きなTVが得られ、このためより大きなFRP値が得られる。
【0166】
SB中、単一の又は組み合わされたFRPを正規化するための正規化関数f_FRP_SBは、FRPのRR依存性及びCls依存性をなくす任意の線形又は非線形関数である。所与のRR及び肺コンプライアンスClsにおける個人の任意の測定されたFRP値(その例が上記で与えられる)が、正規化関数f_FRP_SBを適用することによってRR及びClsに対し正規化される。
【0167】
このため、一回換気量TVが利用可能であるか否かに依拠して(利用可能であるのは稀なケースである)、FRP正規化関数f_FRP_SBを決定するための様々な方式を用いることができる。FRP正規化関数f_FRP_SBは、上記で式18に示したような正規化されたFRP_normを達成するために、単一の又は組み合わされたFRPに適用される。図14を参照すると、ステップS410において、一回換気量TVが利用可能であるか否かがチェックされる。一回換気量TVが利用可能でない場合、ステップS420において、近似関数f_FRP(RR)に基づいてFRP正規化関数f_FRP_SBが決定される。TVがFRP正規化関数において利用可能である場合、ステップS430において、f_FRP_SBは、一回換気量に基づいて決定される。
【0168】
最初に、RRに基づくFRP正規化関数f_FRP_SB_RRの決定が詳細に説明される。
【0169】
FRP正規化関数f_FRP_SB_RRの基本形態は以下のように表すことができる。
(32)f_FRP_SB_RR=RR(l/min)/RR0(l/min)
【0170】
f_FRP_SB_RRは、RRが例えば12/minのデフォルト値RR0よりも大きい場合、FRP値を増大させ、RRがRR0よりも小さい場合、FRPを減少させなくてはならない。
【0171】
f_FRP_SB_RRのRR依存性は、健常な正常血液量の個人の同時RR測定を用いたFRP測定の統計的分析から取得することができる。
【0172】
F_FRP_SB_RRは以下の形態をとることができる。
(33)f_FRP_SB_RR=fFRP(RR0)/f_FRP(RR)
ここで、f_FRP(RR)は呼吸数補正関数であり、好ましくは指数関数であり、好ましくは以下の形態をとる。
例えば、a=5...20%、b=0.02...0.10minの成人について、
(34)f_FRP(RR)=a・exp(-b(min)・RR(l/min))
【0173】
呼吸数補正関数f_FRP(RR)の例が図15に提供され、RRが増大するにつれ、PPVが減少することを示す。
【0174】
図15は、メトロノームの拍に従って毎分6回~30回(合計n=170の測定値)呼吸するように要求された20人の成人の健常な正常血液量の(=正常循環血液量の)ボランティアにおける調査結果を示す。非侵襲的PPVがFRPとして測定された。四角はPPVの平均(±標準偏差)を表す。示される曲線は、これらのデータ点に基づく指数近似関数f_FRP(RR)である。
【0175】
更に、図15は、デフォルト値TVnorm0と比較して、関数f_FRP(RR)がTVnormの増大と共に増大し、TVnormの減少と共に減少することを示す。
【0176】
図16は、式(33)及び式(34)を用いて、デフォルト肺コンプライアンスCls0において図15のf_FRP(RR)(図16の一点短鎖線)から導出された成人の場合のFRP正規化関数f_FRP_SB_RR(実線)の例を示す。
【0177】
FRP正規化関数f_FRP_SB_RRは、FRPをRR0=12/minにおける値、ここではFRP_norm=7.61%に固定することによって、FRPに対するRRの影響をなくす。RR0におけるf_FRP_SB_RRの値は1であり、このため、RR=RR0におけるFRP値は未変更のままである。f_FRP_SB_RRとの乗算により、RR0よりも小さいRR値において測定されたFRPは減少し、RR0よりも大きなRR値において測定されたFRPは増大する。
【0178】
いくつかの病的条件により、TVの増大又は減少が引き起こされることに留意されたい。TVの増大により、呼吸により誘発されたITP変化の増大が生じる。その後、患者の未変化血液量においてFRPが増大する。この病的に随伴したFRPの増大は補正されなくてはならない。
【0179】
FRP補正を更に改善するために、TVが減少又は増大するか、及びどのレベルまで減少又は増大するかの推定を与える入力データが必要とされる。
【0180】
医師又は医療スタッフによって入力される必要があるTVの好ましい定量化レベルは以下の通りである。
(a)中程度の減少(↓)
(b)正常(-)
(c)中程度の増大(↑)
(d)大きな増大(↑↑)
(e)非常に大きな増大(↑↑↑)
ただし、これらに限定されない。
【0181】
入力値に基づいて、FRP正規化関数f_FRP_SB_RRが、TVの方向及びレベルに応じて調整される。増大したTVは、f_FRP_SB_RRがより低いレベルに調整されることを必要とするのに対し、減少した一回換気量は、f_FRP_SB_RRをより高いレベルに調整することを必要とする。これらのレベルの例示のために、図17を参照されたい。
【0182】
ここで、一回換気量TVが利用可能である場合のFRP正規化関数のステップS430における決定が説明される。
【0183】
TVが利用可能である場合、FRPは正規化することができ、ここで、TVnormは、関数f_FRP_SB_TVの適用によってMVと同様にしてFFMに対し正規化される。
(35)FRP_norm(%)=FRP(%)・f_FRP_SB_TV
【0184】
FRPは、例えば成人の場合8ml/kgFFMのデフォルト値TVnorm0に対するTVnormの関係を用いて正規化することができる。
(36)f_FRP_SB_TV=TVnorm0(ml/kg)/TVnorm(ml/kg)
【0185】
好ましくは、追加の次元のない係数coeff_MV及び次元のない定数const_MVを用いた正規化アルゴリズムの正規化が可能である。
(37)f_FRP_SB_TV=TVnorm0(ml/kg)/TVnorm(ml/kg)・coeff_SB_TV+const_SB_TV
【0186】
更に、RR(f_FRP_SB_RR)に依存することができるか又はTVnorm(f_FRP_SB_TV)に依存することができるFRP正規化関数f_FRP_SBの、静的肺コンプライアンスClsの異なる条件に対する適合は、Clsが正常であるか否か、又はClsが増大しているか否か及びどの程度増大しているかの情報を与える入力データを更に必要とする。これはステップS440において行われる。
【0187】
医師又は医療スタッフによって入力される、入力データの度合いの好ましい等級付けは以下の通りである。
(a)正常(-)
(b)中程度の減少(↓)
(c)大きな減少(↓↓)
(d)非常に大きな減少(↓↓↓)
ただし、これらに限定されない。
【0188】
更に、SB中のHLIに対するClsの影響の異なる状況を示す図18及び図19を参照されたい。より低いClsはより暗い肺として表示され、高い/低いHLIは、垂直方向の点線間の大きな/小さな距離として表示される。このため、左側に示される肺は正常なClsを有するのに対し、右側に示される肺は大幅に低減したClsを有する。
【0189】
FRP正規化関数f_FRP_SBは、Clsの方向及びレベルに依拠して調整される必要がある。このため、減少したClsは、f_FRP_SBがより低いレベルに調整されることを必要とする。大幅に低減したClsは、f_FRP_SBを大幅に低下させることを必要とする。
【0190】
式(33)及び式(34)を用いたCls=Cls0及びCls/Cls0=0.5におけるFRP正規化関数f_FRP_SB_RRの例を示す図20を更に参照されたい。RR0におけるf_FRP_SB_RRの値は、関係Cls/Cls0に等しい。
【0191】
FRP正規化関数f_FRP_SBを調整した後、ステップS450において、調整されたf_FRP_SBが単一の又は組み合わされたFRPに適用される。ここで、SBのための正規化されたFRP_normが達成される。
【0192】
MVと同様に、ステップS460において調整係数a、b、c及びdがFRP_normに適用され、最終的にFRP関数f(FRP_norm)が受信される。ステップS470において、このFRP関数f(FRP_norm)が出力され、式29において定義されるように、PCSV_uncalに適用されて、最終的にPCSV_impが得られる。これはここでも以下のように提供される。
(29)PCSV_imp(ml)=PCSV(ml)・f(FRP_norm)
【0193】
第2の実施形態を要約すると、流体反応性の個人の心臓の一回拍出量は、血行動態充満状態に依拠する。より大きなFRPによって示されるより低い充満状態の結果として、より低い一回拍出量が得られ、逆もまた同様である。したがって、PCSV計算は、実際のFRP値を考慮に入れることによって改善される。IBCSのレベルは別として、このPCSVの改善に影響を与えるパラメータを補償/除去するために、本発明は、MVにおけるTVnorm及びCcw、又はSBにおけるRR、TVnorm及びClsを用いて正規化された、正規化FRP_normを用いることを提案する。
【0194】
以下の図21図34において、高リスク手術中の患者における非侵襲的高分解能振動測定のデータ及び同時非侵襲測定のデータが示される。
【0195】
図21を参照すると、FRP_normからのSVtd_FFM_norm(ml/kgFFM)の依存性に対する対数当てはめ関数ln_fit_fctから結果として得られるf(FRP_norm)の可能な形態の例が示される。ここで、SVtd_FFM_normは、FFMに対し正規化されたSVtdのFFM部分である。
【0196】
対数当てはめ関数ln_fit_fctは、FRP_norm変化>5%を有する22人の成人患者のデータの統計的解析に基づく。
【0197】
f(FRP_norm)は、FRP_normのデフォルト値におけるln_fit_fctの値に対する正規化によってln_fit_fctから導出される(ここで、FRP_norm0=13.2%において1.2ml/kgFFM)。
【0198】
更に、f(FRP_norm)と所与のPCSVとの任意の乗算により、FRP_norm<FRP_norm0においてPCSVが増大し、FRP_norm>FRP_norm0においてPCSVが減少する。このため、これは正規化されたFRP値に基づく増幅関数又は減衰関数である。
【0199】
それにも関わらず、本発明の方法は、PCSVの導出された値の高い精度をもたらし、結果として、手術中の医師又は医療スタッフのより信頼性の高い診断、及びより良好でおそらく人命救助となる反応が得られる。
【0200】
図22図30において、データ値が、正確度の違いを示すために、従来の方式及び/又は本発明の方法による測定及び決定に基づく、異なる回帰図が示される。
【0201】
図22図33において、37人の患者における経肺熱希釈法測定からの生物学的に較正された非侵襲的PCSV計算対同時に行われた対応するSVrefの例を示す異なる回帰図が示される。PCSV値は、正確度の違いを示すために、従来の方式及び/又は本発明の方法による測定及び決定に基づく。ここで、SDは標準偏差を表し、rはピアソン相関係数を表し、CRは一致率を表し、PEはパーセンテージ誤差を表し、ptsは患者を表し、nは測定数を表す。
【0202】
図22は、PCSV_uncalを提供するための従来のアルゴリズム(Chen他、Comput Cardiol.2009 Jan 1.The Effect of Signal Quality on Six Cardiac Output EstimatorsにおけるWesselingアルゴリズム)に基づいてPCSVを決定するための方法の結果を示す回帰図を示す。Wesselingアルゴリズムは、次元を有しないPCSV_uncalを提供するためのアルゴリズムであり、このため、個人の生物学的特性に基づいて個人に対し較正される必要がある。PCSV_uncaliの従来の生物学的較正は、上記のBSAに基づいて行われる。更に、FRPに基づくPCSV調整が適用されない。PCSV対SVrefの低い正確度及び精度は、図22において、高いSD値及びPE値、並びに低い相関係数によって示されて認識可能である。
【0203】
図23は、PCSV_uncalを提供するための代替的なアルゴリズムに基づいてPCSVを決定するための方法の結果を示す回帰図を示す。ここでも、BSAに基づく従来の生物学的較正パラメータBSACalが適用され、FRPに基づくPCSV調整は適用されなかった。このため、図23において、PCSV_uncalを導出するためのアルゴリズムのみが異なる。図1bを参照して上記で説明したように、一般的に、PCSV_uncalは次元を有さず、侵襲的に又は非侵襲的に取得することができる任意の動脈圧波形から導出される。このように導出されたパラメータに基づいて、個人の血圧曲線が識別され、PCSV_uncalを形成するためにいくつかの異なるパラメータが考慮される。図22と比較して、代替的なPCSV_uncalアルゴリズムは、従来のアルゴリズムよりも高い正確度及び精度をもたらすことを観察することができる。これは、異なるアルゴリズムを用いて、開始値PCSV_uncalを導出することができることを示し、これは本発明に必要とされる。
【0204】
図24及び図25は共に、PCSVの変化ΔPCSV対基準熱希釈法SVrefの変化ΔSVrefを示す回帰図(4象限プロット)であり、共に、図22及び図23におけるものと同じPCSV_uncalアルゴリズムに基づいて、対応する初期PCSV値及び初期SVref値に関係付けられている。
【0205】
図24は、PCSV_uncalを導出するための従来のアルゴリズムに基づくΔPCSV値及びΔSVref値の回帰図を示す。更に、BSACalが適用されるが、FRPは考慮されない。
【0206】
図25は、PCSV_uncalを導出するための代替的なアルゴリズムに基づいたΔPCSV値及びΔSVref値の回帰図を示す。更に、BSACalが適用されるが、FRPは考慮されない。図24と比較して、PCSV_uncalを導出するための代替的なアルゴリズムを適用することにより、既にΔPCSV対ΔSVrefの正確度及び精度が改善されており、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数及びCRによって示される。
【0207】
図26は、PCSV_uncalを提供するために従来のWesselingアルゴリズムに基づいてPCSVを決定するための方法の結果を示す回帰図を示す。PCSV_uncalの生物学的較正は、本発明の灌流パラメータBioCalに基づいて行われる。ここでも、FRPに基づくPCSV調整は適用されない。PCSV対SVrefの正確度及び精度は、図22と比較して大幅に改善され、これはより低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数によって示される。図22図26で適用される唯一の変更、すなわち、BSACalではなく灌流パラメータBioCalの適用により、PCSVの決定が改善する。
【0208】
図27は、PCSV_uncalを提供するための代替的なアルゴリズムに基づいてPCSVを決定するための方法の結果を示す回帰図を示す。PCSV_uncalの生物学的較正は、本発明の灌流パラメータBioCalに基づいて行われる。ここでもまた、FRPに基づくPCSV調整は適用されない。PCSV対SVrefの正確度及び精度は、図23及び図26と比較して大幅に改善され、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数によって示される。図23図27で適用される唯一の変更、すなわち、BSACalではなく灌流パラメータBioCalの適用により、PCSVの決定が改善する。
【0209】
図28及び図29は共に、PCSVの変化ΔPCSV対基準熱希釈法SVrefの変化ΔSVrefを示す回帰図(4象限プロット)であり、共に、図26及び図27におけるものと同じPCSV_uncalアルゴリズムに基づいて、対応する初期PCSV値及び初期SVref値に関係付けられている。
【0210】
図28は、PCSV_uncalを導出するための従来のアルゴリズムに基づくΔPCSV値及びΔSVref値の回帰図を示す。更に、本発明の灌流パラメータBioCalが適用されるが、FRPは考慮されない。図24と比較して、ΔPCSV対ΔSVrefの正確度及び精度が大幅に改善されており、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数及びCRによって示される。図24図28で適用される唯一の変更、すなわち、BSACalではなく本発明の灌流パラメータBioCalの適用により、PCSVの真の変化を追跡する能力が既に改善している。
【0211】
図29は、PCSV_uncalを導出するための代替的なアルゴリズムに基づくΔPCSV値及びΔSVref値の回帰図を示す。更に、BSACalが適用される一方で、FRPは考慮されない。ΔPCSV対ΔSVrefの正確度及び精度は、図25と比較して大幅に改善され、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数及びCRによって示される。図25図29で適用される唯一の変更、すなわち、BSACalではなく本発明の灌流パラメータBioCalの適用により、PCSVの真の変化を追跡する能力が既に改善している。
【0212】
図30図33は、FRP_normを考慮に入れることによる、真のPCSV変化を追跡するための脈拍輪郭アルゴリズムの感度に対するFRP関数f(FRP_norm)の影響を示す。
【0213】
図30は、PCSV_uncalを提供するための従来のWesselingアルゴリズムに基づいてPCSVを決定するための方法の結果を示す回帰図を示す。PCSV_uncalの生物学的較正は、本発明の灌流パラメータBioCalに基づいて行われる。更に、真の変化をより良好に追跡するためのf(FRP_norm)に基づくPCSV調整が適用された。PCSV対SVrefの正確度及び精度が図26と比較して僅かに改善され、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数によって示される。図26図30で適用される唯一の変更、すなわち、f(FRP_norm)の適用により、PCSVの決定が更に改善する。
【0214】
図31は、PCSV_uncalを提供するための代替的なアルゴリズムに基づいてPCSVを決定するための方法の結果を示す回帰図を示す。PCSV_uncalの生物学的較正は、本発明の灌流パラメータBioCalに基づいて行われる。更に、PCSVの真の変化をより良好に追跡するためのf(FRP_norm)に基づくPCSV調整が適用された。PCSV対SVrefの正確度及び精度が図27と比較して僅かに改善され、図30と比較して大幅に改善され、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数によって示される。図27図31で適用される唯一の変更、すなわち、f(FRP_norm)の適用により、PCSVの決定が更に改善し、図22図23図26図27図30と比較して最も良好な正確度及び精度がもたらされる。
【0215】
図32及び図33は共に、PCSVの変化ΔPCSV対基準熱希釈法SVrefの変化ΔSVrefを示す回帰図(4象限プロット)であり、共に、図30及び図31におけるものと同じPCSV_uncalアルゴリズムに基づいて、対応する初期PCSV値及び初期SVref値に関係付けられている。
【0216】
図32は、PCSV_uncalを導出するための従来のアルゴリズム(Wesseling)に基づくΔPCSV値及びΔSVref値の回帰図を示す。更に、灌流パラメータBioCalが適用される。真の変化をより良好に追跡するために、f(FRP_norm)に基づくPCSV調整が適用された。図28と比較して、ΔPCSV対ΔSVrefの正確度及び精度が大幅に改善されており、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数及びCRによって示される。図28図32で適用される唯一の変更、すなわち、f(FRP_norm)の適用により、PCSVの真の変化を追跡する能力が更に改善する。
【0217】
図33は、PCSV_uncalを導出するための代替的なアルゴリズムに基づくΔPCSV値及びΔSVref値の回帰図を示す。更に、本発明の灌流パラメータBioCalが適用された。真の変化をより良好に追跡するためのf(FRP_norm)に基づくPCSV調整が適用された。ΔPCSV対ΔSVrefの正確度及び精度が図29及び図32と比較して僅かに改善され、これは、より低いSD値及びPE値、並びにより高い相関係数及びCRによって示される。図29図33で適用される唯一の変更、すなわち、f(FRP_norm)の適用により、PCSVの真の変化を追跡する能力が更に改善し、図24図25図28図29図32と比較して最も良好な正確度及び精度がもたらされる。
【0218】
このため、図31及び図33に示す結果を任意の比較可能な他の回帰図と比較するとき、本発明の灌流パラメータBioCalの適用及び個人の心臓-肺相互作用を記述する本発明のf(FRP_norm)の適用により、個人の診断及び管理の基礎として用いられる第2のPCSV_impの精度が劇的に改善されることが明らかである。
【0219】
図34は、各々が基準一回拍出量SVrefに関連する、本発明に従って決定された第2のPCSV_imp及び従来のPCSV_convの相対的誤差を示す。4つの異なる例示的な患者の測定が示される。BioCal及びf(FRP_norm)を適用してPCSV_uncalを導出するための代替的なアルゴリズムを用いて、本発明に基づいて決定されるPCSV_impの相対誤差が(PCSV_imp-SVref)/SVrefとして計算されるのに対し、BioCal及びf(FRP_norm)を適用することなくPCSV_uncalを導出するための代替的なアルゴリズムに基づいて決定されるPCSV_convのための相対誤差が(PCSV_conv-SVref)/SVrefとして計算される。容易に認識することができるように、本発明によるPCSV_impのための破線は、最新技術のPCSVのための点線よりも0%線に近い。これは、4人全員の異なる患者について当てはまる。
【0220】
図35は、本発明の実施形態による概略的な装置を示す。装置は、実質的に、動脈圧及び波形測定並びに血圧及び波形処理デバイス、すなわち動脈圧及び波形モニタの機能を実行する患者モニタ310と、導出又は処理されたPCSV_uncalを調整するためのコントローラ320と、医療デバイス330とを備える。更に、灌流パラメータBioCal及び/又はFRP_normパラメータを提供するパラメータユニット340が存在する。このパラメータユニット340は、コントローラ320内に一体化することができるか、又は単一のユニットとして実現することができる。患者350は動脈圧及び波形モニタ310に接続される。図35に示されるユニット、すなわちコントローラ320及びパラメータユニット340は、患者モニタ310等の単一のデバイスの機能部分として実施され得ることが当業者に理解されよう。
【0221】
単純な形態において、血圧測定用カフ又は非侵襲的血圧測定装置(図示せず)は、患者350に接続されて、侵襲的又は非侵襲的に測定された血圧に基づいて、患者の複数の動脈圧及び対応する波形を提供する。
【0222】
図1bに示すように、測定された血圧及び結果として得られた波形に基づいて、脈圧波の所定の部分が患者モニタ310によって抽出される。図1bに示される血圧曲線は、図35には示されていない血圧測定用カフ又は侵襲的血圧測定装置の使用によって測定される血圧波形から抽出される。血圧波形は、患者モニタ310(モニタの対応するプロセッサ)によって受信され、フィルタリング、較正又は線形化によって、図1bに示される血圧曲線を抽出するように処理することができる。この抽出された血圧曲線に基づいて、領域Asysが決定され、これは収縮期圧領域Asysと呼ばれる。領域Asysは、収縮期中、血圧曲線によって取り囲まれる。この領域Asysは、灌流パラメータに基づいて、及び/又は流体反応性パラメータFRP_normに基づいて第1のPCSV_uncalを調整するための本発明の機能ユニット(又は装置)によって実行される本発明の方法を用いることによって改善される第1のPCSV_uncalのための値として用いられる。
【0223】
第2のPCSV_impは、コントローラ320によって出力され、医療デバイス330に提供される。医療デバイス330は、その最も単純な形態において、ml及び/又はml/kgFFM及び/又はml/m2BSA単位で第2のPCSV_impを示すディスプレイ(例えば、ディスプレイ)とすることができる。
【0224】
更に進化した実施形態において、第2のPCSV_impを、自動流体供給装置及び/又は注入ポンプを制御するために用いることが可能である。自動流体供給装置及び/又は注入ポンプは医療デバイス330に含まれるか又は結合される場合があり、ここでは詳細に示されない。
【0225】
第2のPCSV_impに基づいて例えば注入ポンプを制御することによって、集中治療室内にいる場合がある患者をより高い信頼性で処置することができる。
【0226】
更に、第2のPCSV_impは、医師又は医療スタッフによって、患者のより正確な診断及び治療管理を提供するために用いられる。
【0227】
灌流のためのパラメータBioCal又は流体反応性のためのパラメータFRP_normは、予め取得された(そして例えば医療データベースに記憶された)、又は上記でより詳細に説明された、第1のPCSV_uncalの調整プロセス中に取得される、患者350の特性の測定値に基づいて導出される。
【0228】
したがって、患者モニタは、以下の機能を実行するように構成されたプロセッサを含めることによって個人350の一回拍出量(SV)を決定することを可能にすることができる。
(1)測定された動脈圧波形の受信した1つ又は複数の特性に基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を提供するか、又は従来の方式で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)を提供する。
これは、血圧測定用カフ又は侵襲的血圧測定装置から圧力波形を受信し、上述した分析を行うことによって達成することができる。
(2)個人の身体の除脂肪量及び脂肪量を通じた灌流を記述する少なくとも1つの灌流パラメータ(BioCal)を決定し、かつ/又は、
- 個人の心臓-肺相互作用を記述する流体反応性パラメータ(FRP_norm)に依拠して少なくとも1つの流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)を決定する。
【0229】
この段階において、この分析に必要とされる適切な患者医療データは、患者モニタ(例えばパラメータユニット340を介してそのプロセッサ)によって医療データベースから索出され、かつ/又は第1のPCSV_uncalを調整するプロセス中に医師によって手動で入力される。
(3)灌流パラメータ(BioCal)及び/又は流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)の少なくとも1つに基づいて第1の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_uncal)を調整する、又は、
- 流体反応性パラメータ関数f(FRP_norm)に基づいて、従来の方式で導出された脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_conv)を調整して、第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)を提供する。
【0230】
この第2の脈拍輪郭一回拍出量(PCSV_imp)は、患者モニタのディスプレイ上に表示することができ、PCSV_impは、患者に治療を提供/制御するように構成された他の医療デバイスに更に入力することができる。
【0231】
患者モニタのプロセッサは、図1図2図8図9図10及び図14に示される上記のフローチャートのステップのうちの任意のものを実行するように構成することができる。
図1
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35