(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】汚泥処理装置および汚泥処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/06 20060101AFI20240226BHJP
B01F 27/2322 20220101ALI20240226BHJP
B01F 27/2323 20220101ALI20240226BHJP
【FI】
C02F11/06 B ZAB
C02F11/06 A
B01F27/2322
B01F27/2323
(21)【出願番号】P 2021036909
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋志
(72)【発明者】
【氏名】明田川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】勝又 典亮
(72)【発明者】
【氏名】大泉 雅伸
(72)【発明者】
【氏名】村橋 一毅
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-045891(JP,A)
【文献】実開昭48-088563(JP,U)
【文献】特開2010-178734(JP,A)
【文献】実開昭48-015454(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
B01F21/00-27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の汚泥を含む汚泥含有液を貯留する円筒状の反応槽と、
前記反応槽内に配置され、前記汚泥含有液に対してオゾンガスの気泡を注入するオゾン注入部と、
前記反応槽の上方から下方に延び、上端が第1の攪拌モータに取り付けられた第1の攪拌軸と、
前記第1の攪拌軸に取り付けられ、前記第1の攪拌モータにより回転し、前記汚泥含有液を第1の方向に流動させながら前記オゾンガスの気泡を浮上させる第1の攪拌羽根と、
第2の攪拌モータにより回転される第2の攪拌軸と、
前記第1の攪拌羽根よりも上方において前記第2の攪拌軸に取り付けられ、前記第2の攪拌モータにより回転して前記汚泥含有液を前記第1の方向とは逆方向に流動させる第2の攪拌羽根とを備
え、
前記第2の攪拌軸は、前記反応槽の側面に設けられた取付け位置から一部が前記反応槽の内部に挿入され、一方の端部が前記反応槽の外部で前記第2の攪拌モータに取り付けられて、前記一方の端部とは反対側の端部において軸方向が前記第1の方向と平行になる攪拌軸であり、
前記第2の攪拌羽根は、回転軸方向の流動を生成する攪拌羽根であり、前記反対側の端部に取り付けられて、前記第2の攪拌モータにより回転して前記第1の方向とは逆方向の流動を生成することを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
処理対象の汚泥を含む汚泥含有液を貯留する円筒状の反応槽と、
前記反応槽内に配置され、前記汚泥含有液に対してオゾンガスの気泡を注入するオゾン注入部と、
前記反応槽の上方から下方に延び、上端が第1の攪拌モータに取り付けられた第1の攪拌軸と、
前記第1の攪拌軸に取り付けられ、前記第1の攪拌モータにより回転し、前記汚泥含有液を第1の方向に流動させながら前記オゾンガスの気泡を浮上させる第1の攪拌羽根と、
第2の攪拌モータにより回転される第2の攪拌軸と、
前記第1の攪拌羽根よりも上方において前記第2の攪拌軸に取り付けられ、前記第2の攪拌モータにより回転して前記汚泥含有液を前記第1の方向とは逆方向に流動させる第2の攪拌羽根とを備え、
前記オゾン注入部は、前記第1の攪拌羽根の外周端の直下に設置されていることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項3】
前記第2の攪拌軸は、内径が前記第1の攪拌軸の外径よりも大きく軸方向の長さが前記第1の攪拌軸よりも短い中空の円筒状をなし、上端が第2の攪拌モータに取り付けられた攪拌軸であり、
前記第2の攪拌羽根は、前記第2の攪拌モータにより前記第1の攪拌羽根とは逆方向に回転する請求項
2に記載の汚泥処理装置。
【請求項4】
前記第2の攪拌羽根は、前記第2の攪拌軸の軸方向に沿って複数設けられている請求項
3に記載の汚泥処理装置。
【請求項5】
前記第2の攪拌羽根は、複数設けられている請求項
1に記載の汚泥処理装置。
【請求項6】
前記第2の攪拌羽根よりも上方において、第3の攪拌羽根が前記第1の攪拌軸に取り付けられている請求項
1または5に記載の汚泥処理装置。
【請求項7】
前記第1の攪拌羽根の下端と前記オゾン注入部の上端との間の距離が30cm以内である請求項1から6のいずれか1項に記載の汚泥処理装置。
【請求項8】
処理対象の汚泥を含む汚泥含有液を円筒状の反応槽に貯留する貯留工程と、
前記反応槽内に貯留された汚泥含有液に対してオゾンガスの気泡を注入するオゾン注入工程と、
前記反応槽の上方から下方に延び、上端が第1の攪拌モータに取り付けられた第1の攪拌軸を回転させ、前記第1の攪拌軸に取り付けられた第1の攪拌羽根を回転させて、前記汚泥含有液を第1の方向に流動させながら前記オゾンガスの気泡を浮上させる気泡分散工程と、
前記第1の攪拌羽根よりも上方に設けられた第2の攪拌羽根を回転させ、前記汚泥含有液を前記第1の方向とは逆方向に流動させる気泡浮上抑制工程とを備え
、
前記気泡浮上抑制工程において、前記第1の方向と平行になる攪拌軸を回転軸として前記第2の攪拌羽根を回転させることにより、前記第1の方向とは逆方向の流動を生成することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項9】
処理対象の汚泥を含む汚泥含有液を円筒状の反応槽に貯留する貯留工程と、
前記反応槽内に貯留された汚泥含有液に対してオゾンガスの気泡を注入するオゾン注入工程と、
前記反応槽の上方から下方に延び、上端が第1の攪拌モータに取り付けられた第1の攪拌軸を回転させ、前記第1の攪拌軸に取り付けられた第1の攪拌羽根を回転させて、前記汚泥含有液を第1の方向に流動させながら前記オゾンガスの気泡を浮上させる気泡分散工程と、
前記第1の攪拌羽根よりも上方に設けられた第2の攪拌羽根を回転させ、前記汚泥含有液を前記第1の方向とは逆方向に流動させる気泡浮上抑制工程とを備え
、
前記オゾン注入工程において、前記第1の攪拌羽根の外周端の直下から前記オゾンガスの気泡を注入することを特徴とする汚泥処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、汚泥処理および処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理においては、下水に含まれる溶解性有機物を微生物によって分解させる方法(活性汚泥法)が利用されている。活性汚泥法において利用された微生物は、有機物分解によってエネルギーを得ることで増殖し、増殖した微生物の集まりは余剰汚泥と呼ばれる廃棄物となる。余剰汚泥を廃棄物として処理する際には多くのエネルギーおよびコストが発生するため、余剰汚泥はなるべく減量する必要がある。
余剰汚泥を減量する方法としては、余剰汚泥を濃縮して嫌気性消化槽に投入する汚泥処理法が利用されている。嫌気性消化槽では、余剰汚泥の分解によってメタンガスが発生する。そこで、余剰汚泥の分解率を向上させるとともにメタンガス発生量を増加させるため、処理対象の余剰汚泥の浮遊物濃度を2%から6%に濃縮してオゾンガスで可溶化した後に、可溶化された余剰汚泥を嫌気性消化槽へ投入する汚泥処理方法がある。
【0003】
オゾンガスとの接触により余剰汚泥を可溶化する装置としては、例えば特許文献1に記載の汚泥処理装置がある。特許文献1に記載の汚泥処理装置は、内部に貯留した汚泥にオゾンガスが吹き込まれる反応槽を複数有し、それぞれの反応槽内の汚泥を汚泥流路によって移動させることで汚泥とオゾンガスの接触時間を延ばすことにより全体として汚泥とオゾンの反応効率を高めるとともに、加圧手段によりそれぞれの反応槽の内部を加圧状態に維持しながら撹拌機により攪拌を行うことにより、それぞれの反応槽における汚泥とオゾンの反応効率も高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、汚泥とオゾンガスの接触時間を延ばすために反応槽を複数設けるため、装置全体が大型化してしまうという問題がある。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、装置全体の大型化を防ぎつつ、汚泥とオゾンガスの接触時間を確保して汚泥とオゾンの反応効率を高めることができる汚泥処理装置および汚泥処理方法得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される汚泥処理装置は、処理対象の汚泥を含む汚泥含有液を貯留する円筒状の反応槽と、反応槽内に配置され、汚泥含有液に対してオゾンガスの気泡を注入するオゾン注入部と、反応槽の上方から下方に延び、上端が第1の攪拌モータに取り付けられた第1の攪拌軸と、第1の攪拌軸に取り付けられ、第1の攪拌モータにより回転し、汚泥含有液を第1の方向に流動させながらオゾンガスの気泡を浮上させる第1の攪拌羽根と、第2の攪拌モータにより回転される第2の攪拌軸と、第1の攪拌羽根よりも上方において第2の攪拌軸に取り付けられ、第2の攪拌モータにより回転して汚泥含有液を第1の方向とは逆方向に流動させる第2の攪拌羽根とを備え、第2の攪拌軸は、反応槽の側面に設けられた取付け位置から一部が反応槽の内部に挿入され、一方の端部が反応槽の外部で第2の攪拌モータに取り付けられて、一方の端部とは反対側の端部において軸方向が第1の方向と平行になる攪拌軸であり、第2の攪拌羽根は、回転軸方向の流動を生成する攪拌羽根であり、反対側の端部に取り付けられて、第2の攪拌モータにより回転して第1の方向とは逆方向の流動を生成するものである。
【0008】
また、本願に開示される汚泥処理方法は、処理対象の汚泥を含む汚泥含有液を円筒状の反応槽に貯留する貯留工程と、反応槽内に貯留された汚泥含有液に対してオゾンガスの気泡を注入するオゾン注入工程と、反応槽の上方から下方に延び、上端が第1の攪拌モータに取り付けられた第1の攪拌軸を回転させ、第1の攪拌軸に取り付けられた第1の攪拌羽根を回転させて、汚泥含有液を第1の方向に流動させながらオゾンガスの気泡を浮上させる気泡分散工程と、第1の攪拌羽根よりも上方に設けられた第2の攪拌羽根を回転させ、汚泥含有液を第1の方向とは逆方向に流動させる気泡浮上抑制工程とを備え、気泡浮上抑制工程において、第1の方向と平行になる攪拌軸を回転軸として第2の攪拌羽根を回転させることにより、第1の方向とは逆方向の流動を生成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される汚泥処理装置および汚泥処理方法によれば、装置全体の大型化を防ぎつつ、汚泥とオゾンガスの接触時間を確保して汚泥とオゾンの反応効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における汚泥処理装置を示す概略構成図である。
【
図3】実施の形態1に係る撹拌羽根の動作について説明する図である。
【
図4】実施の形態1における汚泥処理装置の動作を示すフロー図である。
【
図5】実施の形態1に係るオゾン処理工程を示すフロー図である。
【
図6】実施の形態2における汚泥処理装置を示す概略構成図である。
【
図7】実施の形態2に係る撹拌羽根の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1を
図1から
図5に基づいて説明する。
図1は、実施の形態1における汚泥処理装置を示す概略構成図である。汚泥処理装置100は、内部が密閉された円筒状の反応槽1に処理対象の汚泥を含む下水汚泥2、すなわち汚泥含有液を貯留し、反応槽1の底部に配置されたオゾン注入部922から注入されるオゾンにより汚泥をオゾン処理するものである。反応槽1の頂部には、反応槽1の内部の密閉性を確保する上蓋3が取り付けられている。反応槽1内で処理される汚泥を含む下水汚泥2は、系外から供給される。上蓋3には、下水汚泥2を反応槽1内に投入するための投入口である下水汚泥投入部912が設けられている。下水汚泥投入部912は、系外からの下水汚泥2を反応槽1に輸送する下水汚泥供給配管911に接続されている。下水汚泥供給配管911は、系外から供給される下水汚泥2を濃縮する下水汚泥濃縮部90に接続されている。下水汚泥濃縮部90は、予め定められた浮遊物濃度になるように下水汚泥2を濃縮する。下水汚泥濃縮部90により濃縮された下水汚泥は、下水汚泥供給配管911に設けられた下水汚泥供給ポンプ91の駆動力により輸送され、下水汚泥投入部912を介して反応槽1内に投入される。なお、「予め定められた浮遊物濃度」としては、例えば2%から6%の範囲とすることが考えられる。下水汚泥濃縮部90は、重力濃縮装置、浮上分離装置、遠心分離装置などの濃縮装置で構成することができる。
【0012】
上蓋3には、排オゾンガスの流出口である排オゾン流出部942が設けられている。排オゾン流出部942は、系外につながる排オゾン配管941に接続されており、反応槽1内のオゾン処理において汚泥と反応しなかったオゾンガスは、排オゾン流出部942を介して反応槽1の外に排出される。
【0013】
上蓋3の中心には、中空円筒状の攪拌軸12Bが貫通し、反応槽1の上方から下方に延びている。攪拌軸12Bの内部には、攪拌軸12Bの内径よりも小さい外径を持つ攪拌軸12Aが設けられている。攪拌軸12Aおよび攪拌軸12Bは、回転軸が一致するよう同軸に配置されている。また、攪拌軸12Aの軸方向長さは攪拌軸12Bの軸方向長さよりも長く、攪拌軸12Aの下方は攪拌軸12Bに覆われず露出している。攪拌軸12A、12Bは、第1の攪拌軸、第2の攪拌軸にそれぞれ対応する。
【0014】
攪拌軸12Aの上端には、攪拌モータ11A、すなわち第1の攪拌モータが取り付けられ、攪拌軸12Aの下方には、攪拌軸12Aの径方向外向き(攪拌軸12Aの回転中心から反応槽1の外周に向かう方向)に伸びる攪拌羽根13A、すなわち第1の攪拌羽根が取り付けられている。攪拌モータ11Aは、攪拌軸12Aおよび攪拌羽根13Aを予め定められた回転方向および回転速度で回転させる。攪拌軸12Bの上端には、攪拌モータ11B、すなわち第2の攪拌モータが取り付けられ、攪拌軸12Bの下方には、攪拌軸12Bの径方向外向き(攪拌軸12Bの回転中心から反応槽1の外周に向かう方向)に伸びる攪拌羽根13B、すなわち第2の攪拌羽根が取り付けられている。攪拌モータ11Bは、攪拌軸12Bおよび攪拌羽根13Bを予め定められた回転方向および回転速度で回転させる。なお、攪拌羽根13Bは、攪拌羽根13Aよりも上方となる位置に取り付けられており、攪拌羽根13Aが反応槽1の下部、攪拌羽根13Bが反応槽1の概ね中央部から上部に配置されている。また、攪拌羽根13A、13Bは、それぞれ攪拌軸12A、12Bの回転軸について対称な構造となっている。
【0015】
攪拌軸12Aは攪拌軸12Bの中空部分に配置されており、攪拌軸12Aと攪拌軸12Bは互いに干渉せずに回転可能であるため、攪拌羽根13Aの回転と攪拌羽根13Bの回転は、それぞれ個別に制御可能となっている。
【0016】
図1において、攪拌羽根13Aおよび攪拌羽根13Bは、攪拌軸12Aおよび攪拌軸12Bにそれぞれ1枚ずつ取り付けられているが、攪拌羽根13Aおよび攪拌羽根13Bは、攪拌軸12Aおよび攪拌軸12Bの軸方向に沿ってそれぞれ複数取り付けてもよい。攪拌羽根13A、13Bに用いられる羽根形状としては、特に限定されるものではなく、パドル型、プロペラ型、タービン型、錨型、リボン型などを利用することができる。
【0017】
なお上述の通り、攪拌軸12Bは回転するため、上蓋3との接触部分は摺動可能となっている。上蓋3と攪拌軸12Bの接触部分はシール構造となっており、攪拌軸12Bが回転しても、反応槽1の密閉性を維持できるようになっている。
【0018】
また、攪拌軸12Bには、反応槽1に貯留した下水汚泥2の液面よりも高い位置に消泡羽根14が設置されている。消泡羽根14は、攪拌軸12Bとともに回転して、下水汚泥2の液面に発生するオゾンガスの気泡を破泡して消泡する。
【0019】
オゾン注入部922は、内部と外部が複数の微細孔(図示省略)によって連通する散気機構であり、オゾン発生器92に接続されたオゾン供給配管921と接続されている。オゾン発生器92は、例えば無声放電方式によりオゾンガスを発生させるものである。オゾン発生器92により発生したオゾンガスは、オゾン供給配管921を介してオゾン注入部922に供給される。オゾン注入部922に供給されたオゾンガスは、オゾン注入部922の表面から微細な気泡として放出され、下水汚泥2に注入される。オゾン注入部922の微細孔の直径は、例えば10μmから1mmとすればよい。
【0020】
また、反応槽1の底部には、汚泥引抜ポンプ93に接続された汚泥引抜配管931が接続されている。汚泥引抜ポンプ93を駆動させることにより、反応槽1内の下水汚泥2を適宜排出可能となっている。
【0021】
攪拌羽根13Aとオゾン注入部922の位置関係について説明する。
図2は、
図1におけるS部(反応槽1の下部)の拡大図である。
図2に示すように、攪拌羽根13Aはオゾン注入部922よりも上方に配置されており、攪拌羽根13Aの下面13Aaとオゾン注入部922の上面922aのとの間は、予め定められた距離X離れている。詳細は後述するが、攪拌羽根13Aは、その回転により周囲の下水汚泥2を流動させることで、オゾン注入部922からオゾンガスの気泡を剥ぎ取る機能を有する。浮遊物濃度が2%から6%となるように濃縮された下水汚泥2の場合、オゾン注入部922付近の下水汚泥2は、オゾン注入部922と攪拌羽根13Aとの間の距離が小さいほど攪拌羽根13Aの回転の影響を強く受け、オゾン注入部922と攪拌羽根13Aとの間の距離が近いほど、オゾン注入部922の表面における下水汚泥2の流速を小さな動力で得ることができる。このことから、距離Xは、30cm以下とすることが望ましい。これにより、攪拌に伴うコストを下げ、効率よく攪拌を行うことができる。なお、反応槽1の横断面積の大きさに応じて距離Xを調整してもよい。
【0022】
また、オゾン注入部922は、攪拌羽根13Aの直下に配置することが好ましい。すなわち、
図2に示すように、攪拌羽根13Aの外周端13Abから鉛直下向きに伸ばした直線Lがオゾン注入部922を交差するように攪拌羽根13Aとオゾン注入部922を配置することが好ましい。オゾン注入部922を攪拌羽根13Aの直下に配置することで、オゾン注入部922付近の下水汚泥2を効率よく攪拌することができる。
【0023】
攪拌羽根13A、13Bの回転について説明する。
図3は、実施の形態1に係る撹拌羽根の動作について説明する図である。上述したように、攪拌羽根13Aの回転と攪拌羽根13Bの回転はそれぞれ個別に制御可能となっているため、攪拌軸12Aおよび攪拌羽根13Aの回転方向と攪拌軸12Bおよび攪拌羽根13Bの回転方向とを逆向きとしている。
図3では、上方から見たときの攪拌羽根13Aの回転方向を反時計回り、攪拌羽根13Bの回転方向を反時計回りとしたときの例を示している。攪拌羽根13A、13Bの周囲の下水汚泥2は、それぞれ攪拌羽根13A、13Bの回転に合わせて流動する。また、攪拌羽根13Bは攪拌羽根13Aよりも上方に取り付けられており、攪拌羽根13Aは反応槽1下方の下水汚泥2を流動させ、攪拌羽根13Bは反応槽1上方の下水汚泥2を流動させることから、反応槽1下部の下水汚泥2は反時計回り(第1の方向に相当)に、反応槽1中央部から上部の下水汚泥2は時計回りに流動することとなる。下水汚泥2には粘度があり、下水汚泥2の流動は反応槽1の高さ方向に沿って連続的に変化することから、攪拌羽根13Aと攪拌羽根13Bの間には、下水汚泥2の水平方向の流動が無い領域が存在する。
【0024】
次に、動作について説明する。
図4は、実施の形態1における汚泥処理装置の動作、すなわち汚泥処理方法を示すフロー図であり、
図5は、実施の形態1に係るオゾン処理工程を示すフロー図である。まず、下水処理によって発生した下水汚泥2を下水汚泥濃縮部90に投入し、予め定められた浮遊物濃度になるように下水汚泥2を濃縮する(ステップST001、濃縮工程)。なお、濃縮を行わなくても下水汚泥2の浮遊物濃度が予め定められた範囲内にある場合は、濃縮工程を省略することができる。
【0025】
次に、下水汚泥供給ポンプ91を駆動して、濃縮された下水汚泥2を下水汚泥濃縮部90から吸引し、下水汚泥供給配管911、および下水汚泥投入部912を通して反応槽1の反応槽1の内部に投入する。反応槽1に投入された下水汚泥2は反応槽1の内部に貯留され、下水汚泥2の投入量に応じて下水汚泥2の液面が上昇する。反応槽1において予め設定した高さ(設定高さ)に下水汚泥2の液面が到達したら下水汚泥供給ポンプ91を停止し、下水汚泥2の投入を止める(ステップST002、貯留工程)。下水汚泥2の液面が設定高さに到達したか否かは、例えば反応槽1の設定高さに印を付けておき、その印の高さまで下水汚泥2の液面が上昇したことを作業者が確認することにより判断することができる。下水汚泥2の液面高さの判定には、作業者により直接確認する以外にも、カメラによる観察、または液面高さを測定するセンサを用いて行うこともできる。作業者は、上記カメラの映像、またはセンサの数値に基づき判定を行う。また、下水汚泥供給ポンプ91の動作を停止する信号を送る制御装置(図示省略)を設け、この制御装置に下水汚泥2の液面高さを制御させてもよい。すなわち、上記のようにカメラを用いるなどして、液面高さが設定高さに到達したことを検知した後、検知信号を上記制御装置に送る。制御装置は、この検知信号に基づいて停止信号を下水汚泥供給ポンプ91に送信し、下水汚泥供給ポンプ91を停止させる。これにより、反応槽1に貯留する下水汚泥2の液面高さを設定高さに制御することができる。
【0026】
反応槽1に下水汚泥2を貯留した後、下水汚泥2をオゾン処理するオゾン処理工程を開始する(ステップST003)。オゾン処理工程では、まず、オゾン発生器92でオゾンガスを生成し、オゾン供給配管921を通してオゾン注入部922にオゾンガスを流す。上述したように、オゾン注入部922の内部と外部は複数の微細孔によって連通しているため、この微細孔を介し、反応槽1内に貯留された下水汚泥2に微細なオゾンガスの気泡が注入される(ステップST0031、オゾン注入工程)。一般的に、液体中に注入されるオゾンガスが浮上するか否かは、その液体の粘度によって変わる。その液体の粘度が水の粘度(20℃で1mPa・s)に近く、直径が10μmからから1mmの微細孔を通してオゾンガスの気泡を発生させる場合、オゾンガスの気泡の直径が微細孔の直径と同程度かやや大きい程度(数十μmから数mm)になると、オゾンガスの気泡は浮力によって微細孔から分離し、液体中を浮上する。
【0027】
これに対し、下水汚泥2のように浮遊物を含み粘度が大きくなる場合、粘度による浮上の阻害が大きいため、微細孔から発生したオゾンガスの気泡がすぐには浮上しない。オゾンガスは連続的に供給され、また気泡の合一も起こるので、微細孔に付着したままのオゾンガスの気泡は時間の経過とともに大きくなっていく。ただし、気泡の体積の増加は浮力も増加させるので、オゾンガスの気泡が一定の大きさに達したとき、粘度による阻害では浮力を抑えられなくなる。この場合、オゾンガスの気泡は微細孔から分離して浮上する。濃縮された下水汚泥2の場合、粘度が1Pa・sから6Pa・sとなる。この場合、下水汚泥2を浮上するオゾンガスの気泡の直径は、数cmから10cmとなる。この大きさの気泡の浮力は大きく、浮上速度も大きくなるため、下水汚泥2中を短時間で浮上してしまい、下水汚泥2中の汚泥とオゾンガスの気泡との接触時間が短くなる。この場合は、オゾンガスと下水汚泥2の反応効率が低下してしまう。
【0028】
実施の形態1では、反応槽1に下水汚泥2を貯留した後、上記のオゾン注入工程に加えて、攪拌モータ11A、11Bを駆動させて攪拌羽根13Aと攪拌羽根13Bを互いに逆方向に回転させる。攪拌羽根13Aの回転により、反応槽1の下部で一方向に回転する下水汚泥2の流動が生じる。これにより、オゾン注入部922の付近の下水汚泥2も流動する。この場合、微細孔を通して注入されたオゾンガスが気泡を形成する際、下水汚泥2の粘度に抗して浮上できる程度にまでオゾンガスの気泡が大型化する前に気泡が微細孔から剥ぎ取られ、下水汚泥2にオゾンガスの気泡が分散して注入されることとなる(ステップST0032、気泡分散工程)。このように、攪拌羽根13Aは気泡分散用の攪拌羽根として機能している。
【0029】
微細孔の近傍を流れる下水汚泥2の流速が大きいほどオゾン注入部922の表面における剪断力が大きくなり、より短時間でオゾンガスの気泡が剥ぎ取られることとなるため、下水汚泥2に注入されるオゾンガスの気泡の直径もより小さくなる。下水汚泥2の流速は攪拌羽根13Aの回転速度が大きいほど大きくなるため、攪拌羽根13Aの回転速度を制御することで下水汚泥2の流速を調整することができる。すなわち、攪拌羽根13Aの回転速度を介して、下水汚泥2内を浮上するオゾンガスの気泡の大きさを調整することができる。
【0030】
下水汚泥2に分散して注入されたオゾンガスの気泡は、攪拌羽根13Aの回転に伴う下水汚泥2の流動に乗り、らせん状に回転しながら浮上することとなる。微細孔から剥ぎ取られたオゾンガスの気泡の直径が小さいほどオゾンガスの気泡の浮上速度が遅くなりオゾンガスの気泡と汚泥の接触時間が増えるため、下水汚泥2とオゾンガスの反応効率が高くなる。また、体積が同じであるならば、1つの大きな気泡よりも微細化された複数の気泡の方が表面積の合計が大きい。このため、下水汚泥2との接触面積が増えて反応効率が大きくなっている。
【0031】
攪拌羽根13Bの回転により、反応槽1の中央部より上では、反応槽1の下部の下水汚泥2とは逆方向に回転する流動が生じる。上述したように、下水汚泥2の流動は、下水汚泥2の粘度により反応槽1の高さ方向に沿って連続的に変化することから、互いに逆方向に回転している攪拌羽根13Aと攪拌羽根13Bとの間には、それぞれの回転の影響が相殺され、下水汚泥2の水平方向の流動がゼロとなる領域が存在する。下水汚泥2内を浮上するオゾンガスの気泡は、上述したようにらせん状に回転しながら浮上するため、下水汚泥2の水平方向の流動がゼロとなる領域では、浮上速度が遅くなる。このような理由により、攪拌羽根13Bを攪拌羽根13Aとは逆方向に回転させることでオゾンガスの気泡の浮上が抑制される(ステップST0033、気泡浮上抑制工程)。このことから、攪拌羽根13Bは気泡浮上抑制用の攪拌羽根として機能している。
【0032】
浮上速度が遅くなる領域を通過したオゾンガスの気泡は、攪拌羽根13Bの回転により、反応槽1の下部における下水汚泥2の流動とは逆方向でらせん状に回転しながら浮上する。
図3で示した例に基づいて説明すると、オゾンガスの気泡は、まず、反時計回りでらせん状に回転しながら、反応槽1の下部から浮上ずる。次に、下水汚泥2の水平方向の流動がゼロとなる領域では回転することなく浮上速度を遅くして浮上し、反応槽1の中央部から上部では、時計回りでらせん状に回転しながら浮上する。
【0033】
下水汚泥2内を浮上する間、オゾンガスの気泡は下水汚泥2に含まれる汚泥と接触し、汚泥と気泡内のオゾンが反応することでオゾンが消費される。汚泥と反応せずに下水汚泥2の液面に達したオゾンガスの気泡は、排オゾンガスとして排オゾン流出部942を通って反応槽1から流出し、排オゾン配管941を通って系外に排出される。
【0034】
下水汚泥2に含まれる汚泥とオゾンガスが反応すると、汚泥が可溶化するとともに発泡が起き、この発泡によって生じた泡は下水汚泥2の液面に蓄積される。下水汚泥2の液面に蓄積された泡は、消泡羽根14の回転により破泡され消泡する。
【0035】
反応槽1から流出する排オゾンガスは、オゾンガスの気泡として下水汚泥2中を浮上している間に汚泥と反応せずに消費されなかったオゾンからなる。このため、オゾン注入部922を通して下水汚泥2に注入されたオゾンガスのオゾン濃度と排オゾン流出部942を通って反応槽1から流出する排オゾンガスのオゾン濃度とを比較すると、下水汚泥2中で汚泥と反応して消費された分だけ、排オゾンガスのオゾン濃度の方が低くなる。このことを利用し、オゾン注入部922を通して注入したオゾンガスのオゾン濃度と排オゾン流出部942から流出する排オゾンガスのオゾン濃度との差、および注入したオゾンガスの流量から、反応槽1内で汚泥との反応によって消費されたオゾンの量を求めることができる。オゾン処理工程の開始後、消費されたオゾンの量が設定値に達したかを適宜判定し(ステップST0034)、オゾン消費量が上記設定値に達していたらオゾン発生器92を停止し、下水汚泥2へのオゾンガスの供給を停止して(ステップST0035)、オゾン処理工程を終了する。
【0036】
オゾン消費量が上記設定値に達していない場合、オゾン注入工程、気泡分散工程、および気泡浮上抑制工程を継続する。
【0037】
オゾン処理工程の終了後、汚泥引抜ポンプ93を動作させて汚泥引抜配管931を通して反応槽1からオゾンガスによって処理された下水汚泥2を引き抜く(ステップST004、汚泥引き抜き工程)。反応槽1からオゾンガスによって処理された下水汚泥2が汚泥引抜ポンプ93によって引き抜かれた後、攪拌モータ11A、11Bを停止して攪拌羽根13A、13Bの回転を止める。その後、再び反応槽1に下水汚泥2を貯留してオゾン処理を繰り返す。これまでは、反応槽1に下水汚泥2を貯留してオゾンガスを注入する方法を説明してきたが、反応槽1への下水汚泥2の投入と反応槽1から下水汚泥2の引抜を連続的に行いながらオゾンガスを注入してオゾン処理を行うこともできる。
【0038】
上述のように、下水汚泥2に注入されたオゾンガスの気泡は、浮力と、攪拌羽根13A、13Bによってそれぞれ形成された下水汚泥2の流動によって浮上する。それぞれ個別に制御され、互いに回転方向が逆向きである攪拌羽根13A、13Bによって下水汚泥2が攪拌されると、下水汚泥2の流れが反転する領域でオゾンガスの気泡の浮上が抑制される。このため、下水汚泥2に注入されたオゾンガスの気泡が下水汚泥2の中で滞留する時間が長くなり、オゾンガスと下水汚泥2の反応効率がさらに向上する。
【0039】
実施の形態1によれば、装置全体の大型化を防ぎつつ、汚泥とオゾンガスの接触時間を確保して汚泥とオゾンの反応効率を高めることができる。より具体的には、下水汚泥を貯留する反応槽内に配置され、オゾン注入部の微細孔からオゾンガスの気泡を剥ぎ取ることでオゾンガスの気泡を下水汚泥中に分散注入させる気泡分散用の攪拌羽根と、気泡分散用の攪拌羽根よりも上方に取り付けられ、気泡分散用の攪拌羽根とは逆方向に下水汚泥を流動させることでオゾンガスの気泡の浮上を抑制する気泡浮上抑制用の攪拌羽根を設けた。気泡分散用の攪拌羽根により、オゾンガスの気泡が大型化して浮上速度が速くなることが抑制され、下水汚泥内にオゾンガスが滞留する時間が長くなるため、オゾンガスと下水汚泥の反応効率が向上している。さらに、互いに異なる高さに取り付けられた気泡分散用の攪拌羽根と気泡浮上抑制用の攪拌羽根が逆方向に回転することで、下水汚泥の水平方向の流動がゼロとなり、オゾンガスの気泡の浮上速度が遅くなる領域を形成している。これにより、オゾンガスの気泡が下水汚泥の中で滞留する時間がさらに長くなり、オゾンガスと下水汚泥の反応効率がさらに向上している。上記の効果は、反応槽内に設けられた気泡分散用の攪拌羽根および気泡浮上抑制用の攪拌羽根によって実現されているため、装置全体が大型化することは無い。また、特許文献1に記載の技術のような、反応槽内部の加圧状態を維持するための加圧構造も不要である。
【0040】
実施の形態2.
次に、実施の形態2を
図6および
図7に基づいて説明する。なお、
図1から
図5と同一または相当部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
図6は、実施の形態2における汚泥処理装置を示す概略構成図である。汚泥処理装置200は、実施の形態1の汚泥処理装置100と同様に、内部が密閉された円筒状の反応槽1に下水汚泥2を貯留し、反応槽1の底部に配置されたオゾン注入部922から注入されるオゾンにより汚泥をオゾン処理するものである。反応槽1の頂部に取り付けられた上蓋3の中央には、攪拌軸22Aが貫通し、反応槽1の上方から下方に延びている。また、上蓋3には、実施の形態1と同様に、下水汚泥投入部912および排オゾン流出部942が設けられている。
【0041】
攪拌軸22A、すなわち第1の攪拌軸の上端には、攪拌モータ21A、すなわち第1の攪拌モータが取り付けられ、攪拌軸22Aの下方には、攪拌軸22Aの径方向(攪拌軸22Aの回転中心から外周に向かう方向)に伸びる攪拌羽根23C、すなわち第3の攪拌羽根、および攪拌羽根23A、すなわち第1の攪拌羽根が取り付けられている。攪拌羽根23Cの取付け位置は、攪拌羽根23Aの取付け位置よりも上方にある。攪拌モータ21Aは、攪拌軸22A、攪拌羽根23A、および攪拌羽根23Cを予め定められた回転方向および回転速度で回転させる。
【0042】
反応槽1の中央部の側面には、図示省略している2つの貫通孔が設けられ、この貫通孔を介して、それぞれ水平方向に延びる攪拌軸22B1、22B2、すなわち第2の攪拌軸が設けられている。攪拌軸22B1、22B2は、反応槽1の側面の取り付けられた保持部材251、252により保持されている。保持部材251、252は、反応槽1内に貯留された下水汚泥2が漏出しないようにシール構造を有している。攪拌軸22B1、22B2は、反応槽1の側面の取付け位置から、一部のみが反応槽1の内部に挿入されている。なお、攪拌軸22B1、22B2の取付け位置の高さは、攪拌羽根23Aよりも高く、攪拌羽根23Cよりも低い。
【0043】
攪拌軸22B1、22B2は、反応槽1の外側に位置する端部に攪拌モータ21B1、21B2、すなわち第2の攪拌モータがそれぞれ取り付けられている。また攪拌軸22B1、22B2は、反応槽1の内側に位置する端部に攪拌羽根23B1、23B2、すなわち第2の攪拌羽根がそれぞれ取り付けられている。攪拌モータ21B1は、攪拌軸22B1および攪拌羽根23B1を予め定められた回転方向および回転速度で回転させる。。攪拌モータ21B2は、攪拌軸22B2および攪拌羽根23B2を予め定められた回転方向および回転速度で回転させる。なお、攪拌羽根23B1、23B2は、回転によって回転軸方向に下水汚泥2を流動させるものであればよい。
【0044】
攪拌羽根23B1、23B2の詳細な位置と、攪拌羽根23A、23B1、23B2、23Cの回転について説明する。
図7は、実施の形態2に係る撹拌羽根の動作について説明する図である。まず、攪拌羽根23A、23Cは、攪拌モータ21Aにより同じ方向に回転する。
図7では、上方から見たときに反時計周りに回転するとしている。攪拌羽根23A、23Cの周囲の下水汚泥2も、反時計回り(第1の方向に相当)に流動することとなる。攪拌羽根23Aは反応槽1の下部において下水汚泥2を流動させ、オゾン注入部922からオゾンガスの気泡を剥ぎ取るので、気泡分散用の攪拌羽根として機能する。
【0045】
攪拌羽根23B1、23B2は、水平方向について、攪拌羽根23A、23Cの回転による下水汚泥2の流動とは逆向きに下水汚泥2を流動させる。このために、攪拌軸22B1、22B2の内側の端部、すなわち、攪拌羽根23B1、23B2の取付け位置において、攪拌軸22B1、22B2は、攪拌羽根23A、23Cの回転によって生じる下水汚泥2の流動の方向と平行となっており、攪拌羽根23B1、23B2は、上記下水汚泥2の流動の方向とは対向して取り付けられている。
【0046】
攪拌羽根23B1、23B2は、上述したように回転軸方向に下水汚泥2を流動させるので、攪拌羽根23B1、23B2は、その回転により、反時計回りとは逆方向に下水汚泥2を流動させることとなる。攪拌羽根23B1、23B2の回転により反時計回りとは逆方向の流動を局所的に生じさせることで、攪拌羽根23A、23Cの回転による下水汚泥2の流動はかき乱される。下水汚泥2の粘度により、下水汚泥2の流動は連続的に変化することから、攪拌羽根23B1、23B2の回転による局所的な逆方向の流動は、実施の形態1の場合と同様に、水平方向の流動がない領域が形成される。この領域ではオゾンガスの気泡の浮上が妨げられ、浮上速度が遅くなる。すなわち、攪拌羽根23B1、23B2は気泡浮上抑制用の攪拌羽根として機能する。
【0047】
なお、実施の形態2では気泡浮上抑制用の攪拌羽根として、攪拌羽根23B1、23B2の2つの攪拌羽根を設けているが、気泡浮上抑制用の攪拌羽根の個数はこれに限られるものではない。また実施の形態2では、攪拌羽根23B1、23B2の取付け位置について、反応槽1の周方向位置を変え、高さ方向位置は同じとしているが、攪拌羽根23B1、23B2は、攪拌羽根23Aの回転によって生じる下水汚泥2の流動とは逆向きの流動を局所的に生じさせればよい。このため、攪拌羽根23B1、23B2は、高さを変えて取り付けてもよい。
【0048】
それぞれの汚泥処理装置200のそれぞれの攪拌羽根は、下方から、攪拌羽根23A、攪拌羽根23B1および攪拌羽根23B2、攪拌羽根23Cの順に配置されている。オゾン注入部922から下水汚泥2に注入されるオゾンガスの気泡は、まず、反応槽1の下部おいて攪拌羽根23Aの回転に伴う下水汚泥2の流動により剥ぎ取られ、反時計周りにらせん状に回転しながら浮上する。次に、反応槽1の中央部において、攪拌羽根23B1、23B2の回転によって浮上速度が遅くなり、ゆっくりと浮上する。反応槽1の上部では、攪拌羽根23Cの回転に伴う下水汚泥2の流動により、反時計周りにらせん状に回転しながら浮上する。その他については実施の形態1と同様なので、その説明を省略する。
【0049】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。より具体的には、実施の形態1と同様に気泡分散用の攪拌羽根を設けてオゾンガスと下水汚泥の反応効率が向上させている。また、気泡分散用の攪拌羽根の回転によって生じた下水汚泥の流動とは逆方向に下水汚泥を流動させる気泡浮上抑制用の攪拌羽根を反応槽の高さ方向中央部に設け、オゾンガスの気泡の浮上速度が遅くなる領域を形成している。これにより、オゾンガスと下水汚泥の反応効率がさらに向上している。
【0050】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0051】
1 反応槽、2 下水汚泥、11A、11B、21A、21B1、21B2 攪拌モータ、12A、12B、22A、22B1、22B2 攪拌軸、13A、13B、23A、23B1、23B2、23C 攪拌羽根、100、200 汚泥処理装置、922 オゾン注入部