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  • 特許-複数の孔の位置および半径の検出方法 図1
  • 特許-複数の孔の位置および半径の検出方法 図2
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  • 特許-複数の孔の位置および半径の検出方法 図4
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  • 特許-複数の孔の位置および半径の検出方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】複数の孔の位置および半径の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240226BHJP
   G01B 11/12 20060101ALI20240226BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20240226BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240226BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
G01B11/00 C
G01B11/12 Z
G06T7/62
G06T7/70 A
E04G23/02 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021121402
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017271
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】山口 治
(72)【発明者】
【氏名】川澄 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-010392(JP,A)
【文献】特開2011-257151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 7/62
G06T 7/70
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔装置を用いてコンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径の検出方法であって、
削孔を施した前記壁面の3次元点群データを取得し、
前記3次元点群データに基づいて前記壁面よりも所定寸法奥まった点である奥行き点を抽出し、
前記壁面の水平方向および鉛直方向において前記奥行き点の集合で形成されるグループ点群を複数取得し、
それぞれの前記グループ点群について、当該グループ点群が円を形成するものとして当該円の中心座標および半径を算出する、
ことを特徴とする複数の孔の位置および半径の検出方法。
【請求項2】
前記奥行き点は、前記壁面に削孔したときの孔周縁部の欠損深さよりも奥まった寸法の点である、
ことを特徴とする請求項1記載の複数の孔の位置および半径の検出方法。
【請求項3】
前記グループ点群は、
任意の1点の前記奥行き点である基準奥行き点と、前記基準奥行き点から所定範囲内にある前記奥行き点との集合により形成される、
ことを特徴とする請求項1または2記載の複数の孔の位置および半径の検出方法。
【請求項4】
前記3次元点群データは、
3次元データ取得手段が搭載された無人航空機を前記壁面に沿って飛行させながら、前記無人航空機の位置とそのときのデータにより取得する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の複数の孔の位置および半径の検出方法。
【請求項5】
前記3次元点群データは、
3次元データ取得手段が搭載された走行装置を前記壁面に沿って走行させながら、前記走行装置の位置とそのときのデータにより取得する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の複数の孔の位置および半径の検出方法。
【請求項6】
前記3次元点群データは、
3次元データ取得手段により異なる位置から断続的に壁面についてのデータを得て、当該データを得た位置とそのときのデータにより取得する、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の複数の孔の位置および半径の検出方法。
【請求項7】
3次元データ取得手段は、3Dスキャナまたは3Dカメラである、
ことを特徴とする請求項4~6の何れか一項に記載の複数の孔の位置および半径の検出方法。
【請求項8】
前記円の中心座標および半径は、
最小二乗法、ハフ変換またはRANSACにより算出される、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の複数の孔の位置および半径の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の孔の位置および半径の検出方法であって、特に、削孔装置を用いてコンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上、地中、半地下などで地盤に接するコンクリート製の構造物や、鉄道や道路等に近接する地上に構築されたコンクリート製の構造物などのような既設コンクリート構造物の補強(耐震補強)工法の一つに、あと施工せん断補強工法がある。
【0003】
あと施工せん断補強工法とは、既設のコンクリート製の構造物の壁面を削孔し、その孔内に定着材(モルタル)を充填注入した後、あと施工せん断補強鉄筋(以下、「せん断補強鉄筋」という。)を挿入して硬化させることにより、せん断補強鉄筋と構造物とを一体化させることで当該構造物のせん断耐力を向上させる工法である。
【0004】
このようなあと施工せん断補強工法においては、せん断補強筋を挿入するための削孔数が極めて多くなる(数千あるいはそれ以上となる)ため、削孔出来形(削孔位置)の計測の効率化が求められている。
【0005】
ここで、特許文献1(特開2002-288678号公報)には、削孔された壁面を撮影して、孔と壁面との明度差から孔位置を求める技術が開示されている。また、特許文献2(特開2014-163898号公報)には、削孔した壁面をレーザ光で走査して得られた表面形状から孔位置を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-288678号公報
【文献】特開2014-163898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、コンクリートが濡れていて黒っぽく変色していたり、孔が地下にあったりすると、撮影時において孔と壁面との明度差が不明確になり、確実に削孔位置を特定することが困難になる。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、削孔開始時において削孔装置の振動などにより先端が細かくぶれたり孔周縁部のコンクリートが欠損するために、実際の孔径(内部の孔径)よりも大きな孔径に検出されてしまう。
【0009】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、コンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径を正確に検出することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、削孔装置を用いてコンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径の検出方法であって、削孔を施した前記壁面の3次元点群データを取得し、前記3次元点群データに基づいて前記壁面よりも所定寸法奥まった点である奥行き点を抽出し、前記壁面の水平方向および鉛直方向において前記奥行き点の集合で形成されるグループ点群を複数取得し、それぞれの前記グループ点群について、当該グループ点群が円を形成するものとして当該円の中心座標および半径を算出する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、上記請求項1に記載の発明において、前記奥行き点は、前記壁面に削孔したときの孔周縁部の欠損深さよりも奥まった寸法の点である、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、上記請求項1または2に記載の発明において、前記グループ点群は、任意の1点の前記奥行き点である基準奥行き点と、前記基準奥行き点から所定範囲内にある前記奥行き点との集合により形成される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記3次元点群データは、3次元データ取得手段が搭載された無人航空機を前記壁面に沿って飛行させながら、前記無人航空機の位置とそのときのデータにより取得する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記3次元点群データは、3次元データ取得手段が搭載された走行装置を前記壁面に沿って走行させながら、前記走行装置の位置とそのときのデータにより取得する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記3次元点群データは、3次元データ取得手段により異なる位置から断続的に壁面についてのデータを得て、当該データを得た位置とそのときのデータにより取得する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、上記請求項4~6の何れか一項に記載の発明において、3次元データ取得手段は、3Dスキャナまたは3Dカメラである、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明である複数の孔の位置および半径の検出方法は、上記請求項1~7の何れか一項に記載の発明において、前記円の中心座標および半径は、最小二乗法、ハフ変換またはRANSACにより算出される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、削孔を施した壁面の3次元点群データを取得し、3次元点群データに基づいて壁面よりも所定寸法奥まった奥行き点を抽出し、壁面の水平方向および鉛直方向において奥行き点の集合で形成されるグループ点群を複数取得し、それぞれのグループ点群について、当該グループ点群が円を形成するものとしてその中心座標および半径を算出するようにしているので、コンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径を正確に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る既設のコンクリート製の構造物に削孔された孔にせん断補強鉄筋を挿入して耐震補強されたコンクリート製の構造物の一部を示す説明図である。
図2】構造物の壁面に削孔された複数の孔の一例を示す図である。
図3】既設のコンクリート製の構造物に削孔された孔の一例を示す断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るコンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径の検出方法を示すフローチャートである。
図5】取得された奥行き点のデータを抜き出した画像を示す図である。
図6】グループ点群の取得方法を示すフローチャートである。
図7】グループ点群の取得における範囲の設定を示す説明図である。
図8図5に示した画像データを読み込み、各孔ごとに取得したグループ点群、および最小二乗法により近似した円とその中心座標の値を示す図である。
図9図8の各円の中心座標および半径の値を示す図である。
図10】削孔した孔に対応した円の半径および中心座標を示す図である。
図11】削孔した孔に対応した円について、隣り合う円における中心座標間の距離を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
本実施の形態における複数の孔の位置および半径の検出方法は、既設コンクリート構造物の補強(耐震補強)工法の一つであるあと施工せん断補強工法において削孔された複数の孔の位置および半径を検出して、削孔出来形(削孔位置)を計測するためのものである。
【0022】
ここで、あと施工せん断補強工法とは、例えば図1に示すような地盤Gに接する既設のコンクリート製の構造物Sや、鉄道や道路等の建造物に近接する地上に構築された既設のコンクリート製の構造物Sなどの壁面を削孔装置(図示せず)を用いて削孔し、開けた孔Hの内部にあと施工せん断補強鉄筋(以下、「せん断補強鉄筋」という。)Rを挿入した後、定着材(モルタル)Mを充填注入して硬化させ、せん断補強鉄筋Rと構造物Sとを一体化させることで当該構造物Sのせん断耐力を向上させる工法である。
【0023】
なお、せん断補強鉄筋Rとしては、例えば、一般的に使用される鉄筋R1の片側をネジ切り、斜め切断加工し、先端部に定着体として六角ナットR2を装着したものなどが適用される。
【0024】
構造物Sの壁面に削孔された複数の孔の一例を図2に示す。本実施の形態においては、直径40mmの孔を水平方向および鉛直方向に510mm間隔(孔中心間隔)で削孔した場合を示している。なお、削孔深さは500mmである。但し、本発明において、孔径や孔間隔、削孔深さはこれらの値に限定されるものではなく、構造物Sの状態などに応じて必要な値に設定される。
【0025】
さて、構造物Sの壁面にこれら複数の孔を削孔したならば、定着材の注入に先立って、削孔出来形の計測、すなわち、削孔された複数の孔の位置および半径の検出が行われ、適正な位置に適正な大きさの孔が削孔されているかの確認がなされる。
【0026】
ここで、前述のように、削孔された壁面を撮影して、孔と壁面との明度差から孔位置を求める技術では、撮影時において孔と壁面との明度差が不明確になると、確実に削孔位置を特定することが困難になる。
【0027】
また、削孔した壁面をレーザ光で走査して得られた表面形状から孔位置を求める技術では、削孔開始時において削孔装置の先端がぶれたり孔Hの周縁部のコンクリートが欠損する(図3参照)ために、実際の孔径(内部の孔径)よりも大きな孔径に検出されてしまう。
【0028】
そこで、本実施の形態では、これらの問題点を踏まえ、図4に示す方法によりコンクリート製の構造物Sの壁面に削孔した複数の孔Hの位置および半径を検出するようにした。ここで、図4は本発明の一実施の形態に係るコンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径の検出方法を示すフローチャートである。
【0029】
図4において、先ず、削孔した構造物Sの壁面の3次元点群データを取得する(ステップS1)。具体的には、3次元データ取得手段である3Dスキャナ(立体物の形状を3D(Three-Dimensions:3次元)データ化するスキャナ)を使用し、削孔された壁面の3D点群データを取得する。なお、本実施の形態においては、壁面の水平方向をx軸(水平軸座標)、鉛直方向をy軸(鉛直軸座標)、孔の奥行き方向をz軸(xy平面に対する垂直軸座標:孔の奥行き方向がマイナス)と設定している。
【0030】
ここで、3次元点群データの取得方法の一例としては、例えば、3Dスキャナが搭載されたドローンと呼ばれる無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を使用して壁面に沿って飛行させながら、無人航空機の位置とそのときのデータにより取得する方法、3Dスキャナが搭載された走行装置を壁面に沿って走行させながら、走行装置の位置とそのときのデータにより取得する方法、3Dスキャナにより異なる位置から断続的に壁面についてのデータを得て、データを得た位置とそのときのデータにより取得する方法、などがある。なお、走行装置を用いる場合、3Dスキャナが搭載された走行装置は、壁面と平行に敷設したレール上を走行可能な構造にしたり、ホイールを設置して壁面と平行に自走可能な構造にすることなどが考えられる。
【0031】
このようにして削孔した構造物Sの壁面の3次元点群データを取得したならば、当該3次元点群データに基づいて壁面から10mm奥まった点(奥行き点:z軸の点)を抽出する(ステップS2)。奥行き点を抽出するのは、前述のように、削孔された孔の周縁部が欠損している場合(図3参照)、壁の表面のデータを抽出したならば、欠損した孔形状(つまり、本来の形状ではない孔)が抽出されてしまうことになるが、欠損していない点(奥行き点)を抽出すれば、孔本来の形状が抽出できるからである。
【0032】
なお、本実施の形態では、壁面から10mm奥まった点を奥行き点と設定しているが、奥行き点は壁面から10mm奥まった点である必要はなく、孔周縁部の欠損深さよりも奥まった寸法の点であれば自由に設定することができる。但し、奥行き点は、孔周縁部の欠損深さよりも奥まっているとの条件を満たしている限り、できるだけ壁面に近い点であるのが望ましい。これは、奥行き点が深すぎると、孔の内周面が切り立っているために、孔によっては3Dスキャナのレーザ光が奥行き点に届かなくなって3次元点群データが極端に少なくなるからである。
【0033】
取得された奥行き点のデータを抜き出した画像を図5に示す。削孔された孔の内周面(本実施の形態では、壁面から10mm奥まった位置の内周面)に設定された奥行き点に3Dスキャナからのレーザ光を走査しながら照射するために、レーザ光の照射角は孔の軸方向に対して傾斜することになる。そのため、レーザ光が照射される奥行き点は孔の内周面の全周ではなく一部になるため、図示するように、取得された画像は円弧状になっている。
【0034】
なお、本実施の形態では、このようなレーザ光切断方式の3Dスキャナ(対象物をレーザ光でスキャンし、その反射光をCCDで受光し、三角測距の原理によって対象物との距離を得ることで3次元形状を取得するスキャナ)が用いられているが、例えば、格子パターンを投影してカメラで読み取る格子パターン投影カメラ方式の3Dスキャナなど、他種の3Dスキャナを用いてもよい。
【0035】
さらに、本実施の形態においては、3次元データ取得手段として3Dスキャナを用いて削孔した構造物Sの壁面の3次元点群データを取得しているが、3次元データ取得手段として3Dカメラを用いて前述の3次元点群データを取得するようにしてもよい。
【0036】
さて、奥行き点を抽出したならば、壁面の水平方向および鉛直方向において奥行き点の集合で形成されるグループ点群を複数取得する(ステップS3)。すなわち、抽出した奥行き点について、各点の座標(x,y)に対して設定した範囲内の奥行き点の点群を探索し、それらの点群を一つの集合で形成されるグループ点群として孔ごとに取得する。
【0037】
ここで、グループ点群の取得について、図6および図7を用いて説明する。図6はグループ点群の取得方法を示すフローチャート、図7はグループ点群の取得における範囲の設定を示す説明図である。
【0038】
図6において、先ず、基準となる奥行き点(基準奥行き点P1:図7)を決定する(ステップS3-1)。図7に示すように、基準奥行き点P1は抽出された奥行き点の内の任意の1点の奥行き点である。
【0039】
基準奥行き点P1を決定したならば、当該基準奥行き点P1から±50mmの範囲内にある奥行き点を探索する(ステップS3-2)。図7において、基準奥行き点P1は円周上の1点であり、前述のように、本実施の形態の孔の直径は40mmであるから、10mmの誤差を含んで±50mmの範囲と設定した。すなわち、図7におけるLx、Lyはそれぞれ50mmである。これにより、基準奥行き点P1を中心にx軸方向およびy軸方向に±50mmの範囲内(図7の外側の破線で囲まれた範囲内)にある奥行き点が探索される。なお、当該範囲内にある奥行き点の探索は、ソフトウェアにより自動的に行うようにするのが望ましい。
【0040】
そして、前述の範囲内にある奥行き点を探索したならば、基準奥行き点と探索した奥行き点との集合で形成された点(つまり、図7に示す点)がグループ点群として取得される(ステップS3-3)。
【0041】
さて、このようにしてグループ点群が取得されたならば、図4に戻って、各グループ点群について、当該グループ点群が円を形成するものとして、最小二乗法により当該円の中心座標および半径を算出する(ステップS4)。すなわち、取得したグループ点群について円を次式のように表し、最小二乗法(データ点と関数の誤差の二乗和を最小にする関数の係数を求めるアルゴリズム)により円の中心座標、半径を算出する。
【0042】
(x-a)+(y-b)=r
【0043】
ここで、xは円周の任意の点のx軸座標値、yは円周の任意の点のy軸座標値、aは円の中心のx軸座標値、bは円の中心のy軸座標値、rは円の半径である。
【0044】
図5に示した画像データを読み込み、各孔ごとに取得したグループ点群、および最小二乗法により近似した円とその中心座標の値を図8に示す。また、図8の各円の中心座標および半径の値を図9に示す。
【0045】
図8において、符号1~4が円番号を示している。また、円番号とは別に、当該円番号に対応した削孔番号c,a,d,bを付している。これらの削孔番号c,a,d,bにおいて、太線がグループ点群であり、細線が最小二乗法により求められた円を描くために太線を補足する線である。なお、削孔番号c,a,d,bの右横の数字が円の中心座標(x軸座標値、y軸座標値)である。
【0046】
円番号1~4(削孔番号c,a,d,b)の円について、半径および中心座標(x軸座標値、y軸座標値)を図10に示す。
【0047】
また、削孔した孔に対応した円について、隣り合う円における中心座標間の距離を図11に示す。図11から、削孔したそれぞれの孔は、ほぼ水平方向および鉛直方向に約510mm間隔(孔中心間隔)となって形成されているのが分かる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、削孔を施した壁面の3次元点群データを取得し、3次元点群データに基づいて壁面よりも所定寸法(本実施の形態では、10mm)奥まった奥行き点を抽出し、壁面の水平方向および鉛直方向において奥行き点の集合で形成されるグループ点群を複数取得し、それぞれのグループ点群について、当該グループ点群が円を形成するものとしてその中心座標および半径を算出するようにしているので、コンクリート製の構造物の壁面に削孔した複数の孔の位置および半径を正確に検出することが可能になる。
【0049】
よって、撮影した壁面と孔との明度差から孔位置を求める場合のように、明度差が不明確なときには孔位置の特定が困難になったり、壁面をレーザ光で走査して得られた表面形状から孔位置を求める場合のように、孔周縁部のコンクリートが欠損しているときには実際よりも大きな孔径に検出されてしまうこともない。
【0050】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0051】
たとえば、本実施の形態では、最小二乗法を用いて円の中心座標および半径を算出していたが、これに限定されるものではなく、ハフ変換(何度もあるデータ点を取り出してそれに対する関数を求めたときに、その係数を集計して最も候補としてふさわしい係数の組み合わせを採用するアルゴリズム)やRANSAC(RANdom SAmple Consensus:何度もランダムに点をサンプルして最も誤差が少ない関数を探索するアルゴリズム)など、公知の様々な手法を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上の説明では、本発明を、コンクリート製の既設の構造物にせん断補強鉄筋を挿入するために削孔された孔の位置および半径の検出に用いられた場合が示されているが、せん断補強鉄筋を挿入するための孔に限定されるものではなく、様々な目的でコンクリート製の構造物に削孔された孔の位置および半径の検出に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
H 孔
R 断補強鉄筋
R1 鉄筋
R2 六角ナット
S 構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11