(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】導電性ポリマー粒子から形成される固体電解キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20240226BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/028 F
H01G9/15
(21)【出願番号】P 2021506963
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 US2019045890
(87)【国際公開番号】W WO2020033820
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】青木 清文
(72)【発明者】
【氏名】ペトルジレック,ヤン
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-022746(JP,A)
【文献】特開2013-177588(JP,A)
【文献】特開2017-022366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/028
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ素子を含む固体電解キャパシタであって、前記キャパシタ素子は、
焼結多孔質陽極体;
前記陽極体の上に配されている誘電体;
前記誘電体の上に配されて
いる固体電解質、ここで前記固体電解質は導電性ポリマー粒子から形成される少なくとも1つの内側層を含み、前記導電性ポリマー粒子はチオフェンポリマー及びコポリマー対イオンから形成される複合体を含み、前記コポリマー対イオンが、スルホン酸モノマーから誘導される第1の繰り返し単位、及び(メタ)アクリレートモノマーから誘導される第2の繰り返し単位を含み、前記スルホン酸モノマーと前記(メタ)アクリレートモノマーとの重量比が約0.5:1~約30:1であり、前記固体電解質が、前記少なくとも1つの内側層の上に直接配されている少なくとも1つの外側層を含み、前記外側層が、チオフェンポリマー及びポリスチレンスルホン酸対イオンから形成される複合体を含む導電性ポリマー粒子から形成され、そして前記外側層がヒドロキシル官能性非イオン性ポリマーを含まない;ならびに
前記固体電解質の上に配されており、導電性ポリマー粒子を含む外部ポリマー被覆;
を含む上記固体電解キャパシタ。
【請求項2】
前記チオフェンポリマーが、次の一般式(I):
【化1】
(式中、
R
7は、線状又は分岐の、C
1~C
18アルキル基;C
5~C
12シクロアルキル基;C
6~C
14アリール基;又はC
7~C
18アラルキル基であり;
qは、0~8の整数である)
を有する繰り返し単位を含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項3】
qが0である、請求項2に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項4】
前記第1の繰り返し単位が、C
1~C
20アルカンスルホン酸、脂肪族ペルフルオロスルホン酸、芳香族スルホン酸、又はこれらの組み合わせから誘導される、請求項
1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項5】
前記第1の繰り返し単位がスチレンスルホン酸から誘導される、請求項
4に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項6】
前記第2の繰り返し単位が、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スルホアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートシラン化合物、又はこれらの組み合わせから誘導される、請求項
1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項7】
前記スルホン酸モノマーと前記(メタ)アクリレートモノマーとの重量比が
約1:1~約25:1である、請求項
1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項8】
前記コポリマー対イオンと前記チオフェンポリマーとの重量比が約0.5:1~約50:1である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項9】
前記固体電解質の前記導電性ポリマー粒子が、約1~約100ナノメートルの平均寸法を有する、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項10】
前記固体電解質が5~15の内側層を含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項11】
前記外部ポリマー被覆の前記導電性ポリマー粒子が、チオフェンポリマー及びコポリマー対イオンから形成される複合体を含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項12】
前記外部ポリマー被覆の前記導電性ポリマー粒子が、チオフェンポリマー及びポリスチレンスルホン酸対イオンから形成される複合体を含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項13】
前記外部ポリマー被覆が架橋剤を更に含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項14】
前記固体電解質において用いられる
前記導電性ポリマー粒子の平均寸法に対する前記外部ポリマー被覆において用いられる
前記導電性ポリマー粒子の平均寸法の比が約1.5~約30である、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項15】
前記固体電解質の前記導電性ポリマー粒子が約1~約80ナノメートルの平均寸法を有し、前記外部
ポリマー被覆の前記導電性ポリマー粒子が約80~約600ナノメートルの平均寸法を有する、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項16】
前記キャパシタ素子から延在する陽極リードを更に含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項17】
前記陽極リードと電気的に接続されている陽極終端、及び前記固体電解質と電気的に接続されている陰極終端を更に含む、請求項
16に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項18】
その中に前記キャパシタ素子が収容されているハウジングを更に含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項19】
前記ハウジングが、前記キャパシタ素子を封入する樹脂状材料から形成される、請求項
18に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項20】
前記ハウジングが、その中に前記キャパシタ素子が配置される内部キャビティを画定し、前記内部キャビティが気体雰囲気を有する、請求項
18に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項21】
前記陽極体がタンタルを含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項22】
前記キャパシタ素子が、前記固体電解質の上に配される金属粒子層を含む陰極被覆を更に含み、前記金属粒子層が複数の導電性金属粒子を含む、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項23】
前記キャパシタが約85ボルト以上のブレークダウン電圧を示す、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【請求項24】
前記キャパシタが120Hzにおいて約80%以上のキャパシタンス回復率を示す、請求項1に記載の固体電解キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月10日の出願日を有する米国仮特許出願第62/717,130号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
固体電解キャパシタ(例えばタンタルキャパシタ)は、通常は金属リード線の周囲に金
属粉末(例えばタンタル)をプレスし、プレスされた部分を焼結し、焼結した陽極を陽極酸化し、その後、固体電解質を施すことによって製造される。固有導電性(intrinsically
conductive)ポリマーは、それらの有利に低い等価直列抵抗(ESR)及び「非燃焼/非発火」故障モードのために、しばしば固体電解質として使用される。例えば、かかる電解質は、触媒及びドーパントの存在下で、3,4-ジオキシチオフェンモノマー(EDOT)のin situ化学重合によって形成することができる。しかしながら、in situ重合されたポリマーを使用する従来のキャパシタは比較的高い漏れ電流(DCL)を有する傾向があり、高速スイッチオン又は動作電流スパイク中に経験されるような高い電圧において故障する。これらの問題を克服する試みにおいて、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸との複合体(PEDOT:PSS)から形成される分散液も使用されてきた。PEDOT:PSS分散液は向上した漏れ電流値をもたらすことができるが、それにもかかわらず、他の問題が残る。例えば、ポリマースラリーベースのキャパシタに関する1つの問題は、それらがそれらの湿潤キャパシタンスの比較的少ない割合しか達成できないことであり、それはそれらが大気湿度の存在下で比較的大きなキャパシタンス損失及び/又は変動を有することを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、比較的安定した電気特性を示す改良された固体電解キャパシタに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態によれば、キャパシタ素子を含む固体電解キャパシタが開示される。キャパシタ素子は、焼結多孔質陽極体、陽極体の上に配されている誘電体、誘電体の上に配されており、チオフェンポリマー及びコポリマー対イオンから形成される複合体を含む導電性ポリマー粒子を含む固体電解質、及び導電性ポリマー粒子を含む外部ポリマー被覆を含む。
【0005】
下記において、本発明の他の特徴及び態様をより詳細に示す。
当業者に向けた本発明のベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面を参照する本明細書の残りの部分においてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明のアセンブリのキャパシタの一実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のアセンブリのキャパシタの別の実施形態の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のアセンブリのキャパシタの更に別の実施形態の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のアセンブリのキャパシタの更に別の実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び図面における参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同一か又は類似の特徴又は構成要素を表すことを意図している。
当業者であれば、本議論は例示的な実施形態の記載にすぎず、本発明のより広い態様を限定することを意図するものではなく、より広い態様は代表的な構成において具現化されることを理解する。
【0008】
一般的に言えば、本発明は、多孔質陽極体、陽極体の上に配されている誘電体、及び誘電体の上に配されている固体電解質を含むキャパシタ素子を含む固体電解キャパシタに関する。高電圧用途におけるキャパシタの使用を容易にするのを助けるために、固体電解質は、複数の導電性ポリマー粒子、及びこれも導電性ポリマー粒子から形成される外部ポリマー被覆から形成されることが一般に望ましい。このようにすると、キャパシタ素子は、特に高い(例えば約60ボルトより高い)電圧において誘電劣化を引き起こす可能性がある高エネルギーラジカル(例えばFe2+又はFe3+イオン)を概して含まないままにすることができる。特に、固体電解質において使用される導電性ポリマー粒子は、チオフェンポリマー及びコポリマー対イオンによって形成される複合体を含む。理論によって限
定されることは意図しないが、かかる粒子は、得られるキャパシタの特定の電気的特性を向上させるのを助けることができると考えられる。本キャパシタは、例えば、例えば漏れ電流が1mAに達するまで3ボルトの増分で印加電圧を増加させることによって求めて、約85ボルト以上、幾つかの実施形態においては約90ボルト以上、幾つかの実施形態においては約95ボルト以上、幾つかの実施形態においては約100ボルト~約300ボルトのような比較的高い「ブレークダウン電圧」(キャパシタが故障する電圧)を示すことができる。本キャパシタはまた、高電圧用途においてこれも一般的である比較的高いサージ電流に耐えることができる可能性がある。ピークサージ電流は、例えば、約100アンペア以上、幾つかの実施形態においては約200アンペア以上、幾つかの実施形態においては約300アンペア~約800アンペアであってよい。本キャパシタはまた、その湿潤キャパシタンスの高いパーセントを示すことができ、これにより、大気湿度の存在下において小さなキャパシタンスの損失及び/又は変動しか有しないことが可能になる。この性能特性は、式:
回復率=(乾燥キャパシタンス/湿潤キャパシタンス)×100
によって求められる「キャパシタンス回復率」によって定量される。
【0009】
本キャパシタは、約80%以上、幾つかの実施形態においては約85%以上、幾つかの実施形態においては約85%~100%のキャパシタンス回復率を示すことができる。乾燥キャパシタンスは、120Hzの振動数で測定して、約1ミリファラッド/平方センチメートル(mF/cm2)以上、幾つかの実施形態においては約2mF/cm2以上、幾つかの実施形態においては約5~約50mF/cm2、幾つかの実施形態においては約8~約20mF/cm2であってよい。
【0010】
本キャパシタはまた、他の改良された電気特性を示すことができる。例えば、約30分~約20時間、幾つかの実施形態においては約1時間~約18時間、幾つかの実施形態においては約4時間~約16時間の間、印加電圧(例えば120ボルト)にかけた後に、本キャパシタは、僅か約100マイクロアンペア(μA)以下、幾つかの実施形態においては約70μA以下、幾つかの実施形態においては約1~約50μAの漏れ電流(DCL)を示すことができる。特に、本キャパシタは、上記記載のような乾燥条件下においてもかかる低いDCL値を示すことができる。
【0011】
本キャパシタの他の電気的特性もまた良好で、種々の条件下で安定状態で維持される。例えば、本キャパシタは、100kHzの動作周波数及び23℃の温度において測定して、約200ミリオーム、幾つかの実施形態においては約150ミリオーム未満、幾つかの実施形態においては約0.1~約125ミリオーム、幾つかの実施形態においては約1~約100ミリオームのような比較的低い等価直列抵抗(ESR)を示し得、本キャパシタはまた、120Hzの周波数及び23℃の温度において測定して、約30ナノファラド/平方センチメートル(nF/cm2)以上、幾つかの実施形態においては約100nF/cm2以上、幾つかの実施形態においては約200~約3,000nF/cm2、幾つかの実施形態においては約400~約2,000nF/cm2の乾燥キャパシタンスを示し得る。特に、かかる電気的特性(例えば、ESR及び/又はキャパシタンス)は、上述のような高温及び/又は乾燥条件においても依然として安定した状態を維持しうる。例えば、本キャパシタは、約80℃以上、幾つかの実施形態においては約100℃~約150℃、幾つかの実施形態においては約105℃~約130℃(例えば、105℃又は125℃)の温度に、約100時間以上、幾つかの実施形態においては約150時間~約3000時間、幾つかの実施形態においては約200時間~約2500時間(例えば240時間)のような相当な時間曝露された後であっても、上記の範囲内のESR及び/又はキャパシタンス値を示し得る。一実施形態においては、例えば、高温(例えば125℃)に240時間曝露した後のキャパシタのESR及び/又はキャパシタンス値の、(例えば23℃における)キャパシタの初期ESR及び/又はキャパシタンス値に対する比は、約2.0以下、幾つかの実施形態においては約1.5以下、幾つかの実施形態においては1.0~約1.3である。
【0012】
また、キャパシタの損失係数を比較的低いレベルに維持することができるとも考えられ
る。損失係数とは、一般にキャパシタ内で発生する損失を指し、通常は理想的なキャパシタ性能に対するパーセントで表される。例えば、キャパシタの損失係数は、120Hzの周波数において求めて、通常は約250%以下、幾つかの実施形態においては約200%以下、幾つかの実施形態においては約1%~約180%である。
【0013】
ここで、キャパシタの種々の実施形態をより詳細に説明する。
I.キャパシタ素子
A.陽極体
キャパシタ素子は、焼結多孔質体上に形成された誘電体を含む陽極を含む。多孔質陽極体は、バルブメタル(すなわち酸化することができる金属)又はバルブメタル系化合物、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、それらの合金、それらの酸化物、それらの窒化物などを含む粉末から形成することができる。粉末は、通常は、タンタル塩(例えば、フルオロタンタル酸カリウム(K2TaF7)、フルオロタンタル酸ナトリウム(Na2TaF7)、五塩化タンタル(TaCl5)等)を還元剤と反応させる還元プロセスから形成される。還元剤は、液体、気体(例えば水素)、又は固体、例えば金属(例えばナトリウム)、金属合金、又は金属塩の形態で提供することができる。例えば一実施形態においては、タンタル塩(例えばTaCl5)を約900℃~約2,000℃、幾つかの実施形態においては約1,000℃~約1,800℃、幾つかの実施形態においては約1,100℃~約1,600℃の温度で加熱して蒸気を形成することができ、それを気体還元剤(例えば水素)の存在下で還元することができる。かかる還元反応の更なる詳細は、MaeshimaらのWO-2014/199480に記載されている。還元後、生成物を冷却、粉砕、及び洗浄して粉末を形成することができる。
【0014】
粉末の比電荷は、通常は、所望の用途に応じて約2,000~約600,000マイクロファラド・ボルト/グラム(μF・V/g)で変動する。例えば、幾つかの実施形態においては、約100,000~約600,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約120,000~約500,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約150,000~約400,000μF・V/gの比電荷を有する高電荷粉末を使用することができる。他の実施形態においては、約2,000~約100,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約5,000~約80,000μF・V/g、幾つかの実施形態においては約10,000~約70,000μF・V/gの比電荷を有する低電荷粉末を使用することができる。当該技術において公知なように、比電荷は、キャパシタンスに使用した陽極酸化電圧をかけ、次にこの積を陽極酸化電極体の重量で割ることによって求めることができる。
【0015】
粉末は、一次粒子を含む自由流動性の微細粉末であってよい。粉末の一次粒子は、一般的に、場合によっては粒子を70秒間の超音波振動にかけた後に、例えばBECKMAN COULTER Corporation製のレーザー粒径分布分析装置(例えばLS-230)を使用して求めて、約5~約500ナノメートル、幾つかの実施形態においては約10~約400ナノメートル、幾つかの実施形態においては約20~約250ナノメートルのメジアン径(D50)を有する。一次粒子は、通常は三次元の粒子形状(例えば球状又は角状)を有する。かかる粒子は、通常は比較的低い「アスペクト比」、すなわち粒子の平均直径又は幅を平均厚さで割った値(D/T)を有する。例えば、粒子のアスペクト比は、約4以下、幾つかの実施形態においては約3以下、幾つかの実施形態においては約1~約2であってよい。一次粒子に加えて、粉末は、一次粒子の凝集(又は凝塊化)によって形成される二次粒子のような他のタイプの粒子を含んでいてもよい。かかる二次粒子は、約1~約500マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~約250マイクロメートルのメジアン径(D50)を有していてよい。
【0016】
粒子の凝集は、粒子を加熱することによるか、及び/又はバインダを使用することによって行うことができる。例えば、凝集は、約0℃~約40℃、幾つかの実施形態においては約5℃~約35℃、幾つかの実施形態においては約15℃~約30℃の温度で行うことができる。また好適なバインダとしては、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);セルロースポリマ
ー、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルヒドロキシエチルセルロース;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.製のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、及びポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフロリド、及びフルオロオレフィンコポリマー;アクリルポリマー、例えばナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、及び低級アルキルアクリレートとメタクリレートのコポリマー;並びに脂肪酸及びワックス、例えばステアリン酸及び他の石鹸脂肪酸、植物性ワックス、マイクロワックス(精製パラフィン)等を挙げることができる。
【0017】
得られる粉末は、任意の従来の粉末プレス装置を使用して圧縮してペレットを形成することができる。例えば、ダイと1つ又は複数のパンチを含むシングルステーション式圧縮プレス機であるプレス成形機を使用することができる。或いは、ダイと単一の下方パンチのみを使用するアンビルタイプの圧縮プレス成形機を使用することができる。シングルステーション式圧縮プレス成形機は、シングルアクション、ダブルアクション、浮動ダイ、可動式プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、圧印加工、又はサイジングのような種々の能力を有するカムプレス、トグル/ナックルプレス、及び偏心/クランクプレスのような幾つかの基本的タイプで入手可能である。粉末は、ワイヤ、シート等の形態であってよい陽極リードの周囲に圧縮することができる。リードは、陽極体から長手方向に伸長させることができ、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン等、並びにそれらの導電性酸化物及び/又は窒化物のような任意の導電性材料から形成することができる。リードの陽極体への接続はまた、他の公知の技術を使用して、例えば、リードを陽極体に溶接するか、或いは形成中(例えば圧縮及び/又は焼結の前)に陽極体内部にそれを埋め込むことによって達成することもできる。
【0018】
バインダは、プレス後にペレットを真空下で一定の温度(例えば約150℃~約500℃)において数分間加熱することによって除去することができる。或いは、バインダは、ペレットを、Bishopらの米国特許6,197,252に記載されているような水溶液と接触させることによって除去することもできる。その後、ペレットを焼結して多孔質の一体部材を形成する。ペレットは、通常は約700℃~約1800℃、幾つかの実施形態においては約800℃~約1700℃、幾つかの実施形態においては約900℃~約1400℃の温度で、約5分~約100分、幾つかの実施形態においては約8分~約15分焼結する。これは1以上の工程で行うことができる。所望の場合には、焼結は、酸素原子の陽極への移動を制限する雰囲気中で行うことができる。例えば、焼結は、真空下、不活性ガス下、水素下などの還元雰囲気中で行うことができる。還元雰囲気は、約10Torr~約2000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約1000Torr、幾つかの実施形態においては約100Torr~約930Torrの圧力であってよい。水素と他の気体(例えばアルゴン又は窒素)の混合物を使用することもできる。
【0019】
B.誘電体:
陽極はまた、誘電体で被覆されている。上記に示したように、誘電体は誘電体層が陽極上及び/又は陽極内に形成されるように、焼結陽極を陽極酸化することによって形成される。例えば、タンタル(Ta)陽極は、タンタルペントキシド(Ta2O5)に陽極化することができる。
【0020】
通常は、陽極酸化は、最初に電解質を陽極に施すことによって、例えば、陽極を電解液中に浸漬することによって行われる。電解液は、一般に、溶液(例えば、水性又は非水性)、分散液、溶融体などのような液体の形態である。水(例えば脱イオン水);エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン);グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル(
例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエチルアセテート、及びメトキシプロピルアセテート);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド、及びN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン)などのような溶媒が、一般に電解液中で使用される。一種類又は複数の溶媒は、電解液の約50重量%~約99.9重量%、幾つかの実施形態においては約75重量%~約99重量%、幾つかの実施形態においては約80重量%~約95重量%を構成することができる。必ずしも必要ではないが、水性溶媒(例えば水)の使用は、しばしば酸化物の形成を促進するために望ましい。実際、水は、電解液中で使用される1種類又は複数の溶媒の約1重量%以上、幾つかの実施形態においては約10重量%以上、幾つかの実施形態においては約50重量%以上、幾つかの実施形態においては約70重量%以上、幾つかの実施形態においては約90重量%~100重量%を構成することができる。
【0021】
電解液は導電性であり、25℃の温度で測定して、約1ミリシーメンス/センチメートル(mS/cm)以上、幾つかの実施形態においては約30mS/cm以上、幾つかの実施形態においては約40mS/cm~約100mS/cmの導電率を有することができる。電解液の導電性を高めるために、溶媒中で解離してイオンを形成することができるイオン性化合物が一般に使用される。この目的のために好適なイオン性化合物としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸などのような酸;カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マロン酸、コハク酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、アジピン酸、マレイン酸、オレイン酸、没食子酸、酒石酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、グリコール酸、シュウ酸、プロピオン酸、フタル酸、イソフタル酸、グルタル酸、グルコン酸、乳酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イタコン酸、トリフルオロ酢酸、バルビツール酸、桂皮酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、アミノ安息香酸などをはじめとする有機酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などのようなスルホン酸;ポリ(アクリル)又はポリ(メタクリル)酸及びそれらのコポリマー(例えば、マレイン-アクリル、スルホン-アクリル、及びスチレン-アクリルコポリマー)のようなポリマー酸、カラギン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸などを挙げることができる。イオン性化合物の濃度は、所望の導電率を達成するように選択される。例えば、酸(例えばリン酸)は、電解液の約0.01重量%~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.05重量%~約0.8重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約0.5重量%を構成することができる。所望であれば、複数のイオン性化合物のブレンドを電解液中において使用することもできる。
【0022】
誘電体を形成するために、通常は、電解液が陽極体と接触している間に電流を電解液に流す。化成電圧の値によって誘電体層の厚さが制御される。例えば、電源は、まず、必要な電圧に到達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電位モードに切り替え、所望の誘電体厚さが陽極の表面全体の上に確実に形成されるようにすることができる。勿論、パルス又はステップ定電位法などの他の公知の方法も使用することができる。陽極酸化を行う電圧は、通常は、約4~約250V、幾つかの実施形態においては約5~約200V、幾つかの実施形態においては約10~約150Vの範囲である。酸化中は、電解液は昇温温度、例えば約30℃以上、幾つかの実施形態においては約40℃~約200℃、幾つかの実施形態においては約50℃~約100℃に維持することができる。陽極酸化は周囲温度以下で実施することもできる。得られる誘電体層は陽極の表面上及びその細孔内に形成することができる。
【0023】
必須ではないが、幾つかの実施形態においては、誘電体層は、陽極の外表面上に配される第1の部分と陽極の内表面上に配される第2の部分を有するという点において、陽極全体にわたって区別された厚さを有することができる。かかる実施形態においては、第1の部分は、その厚さが第2の部分の厚さよりも大きくなるように選択的に形成される。しか
しながら、誘電体層の厚さは特定の領域内で均一である必要はないことを理解すべきである。外表面に隣接する誘電体層の幾つかの部分は、例えば、実際には内表面における層の幾つかの部分より薄い場合があり、その逆の場合もある。それでもなお、誘電体層は、外表面における層の少なくとも一部が内表面における少なくとも一部よりも大きな厚さを有するように形成することができる。これらの厚さにおける実際の差は特定の用途に応じて変化させることができるが、第2の部分の厚さに対する第1の部分の厚さの比は、通常は約1.2~約40、幾つかの実施形態においては約1.5~約25、幾つかの実施形態においては約2~約20である。
【0024】
区別された厚さを有する誘電体層を形成するために、多段階法を使用することができる。このプロセスの各段階において、焼結した陽極を陽極酸化して誘電体層(例えば五酸化タンタル)を形成する。陽極酸化の第1段階中においては、通常は比較的小さい化成電圧、例えば、約1~約90ボルト、幾つかの実施形態においては約2~約50ボルト、幾つかの実施形態においては約5~約20ボルトの範囲の化成電圧を使用して、内部領域に関して所望の誘電体厚さが達成されるのを確実にする。その後、焼結体を次にプロセスの第2段階で陽極酸化して、誘電体の厚さを所望レベルに増加させることができる。これは、一般的には、電解液中において、第1段階中において使用された電圧より高い電圧、例えば約50~約350ボルト、幾つかの実施形態においては約60~約300ボルト、幾つかの実施形態においては約70~約200ボルトの範囲の化成電圧で陽極酸化することにより達成される。第1及び/又は第2段階中においては、電解液は、約15℃~約95℃、幾つかの実施形態においては約20℃~約90℃、幾つかの実施形態においては約25℃~約85℃の範囲内の温度に維持することができる。
【0025】
陽極酸化プロセスの第1及び第2段階中において使用される電解液は同じでも又は異なっていてもよい。しかしながら、通常は、誘電体成長プロセスの少なくとも1つの段階中に使用される電解液は、上記で説明したようにイオン性化合物を含む。1つの特定の実施形態においては、第2段階において使用される電解液は、相当量の酸化物皮膜が陽極の内表面上に形成されないようにするために、第1段階において使用される電解液よりも低いイオン伝導度を有することが望ましい可能性がある。この点に関し、第1段階中に使用される電解液には、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸などのような酸であるイオン性化合物を含ませることができる。かかる電解液は、25℃の温度で求めて、約0.1~約100mS/cm、幾つかの実施形態においては約0.2~約20mS/cm、幾つかの実施形態においては約1~約10mS/cmの導電率を有し得る。同様に、第2段階中に使用される電解液には、弱酸の塩であるイオン性化合物を含ませて、ヒドロニウムイオン濃度が、細孔内での電荷通過の結果として細孔内で増加するようにする。イオン輸送又はイオン拡散は、電荷のバランスを取るために必要に応じて、弱酸のアニオンが細孔中に移動するように起こる。その結果、主要導電種(ヒドロニウムイオン)の濃度は、ヒドロニウムイオン、酸アニオン、及び非解離酸の間の平衡が形成される際に減少して、導電不良種が形成される。導電種の濃度の低下は、電解液中での比較的高い電圧降下をもたらし、これにより内部の更なる陽極酸化が妨害され、一方で連続した高導電率の領域における高い化成電圧に対してはより厚い酸化物層が外側に蓄積する。好適な弱酸塩としては、例えば、ホウ酸、ボロン酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、アジピン酸などのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩(例えばナトリウム、カリウムなど)を挙げることができる。特に好適な塩としては、四ホウ酸ナトリウム及び五ホウ酸アンモニウムが挙げられる。かかる電解液は、通常は、25℃の温度で求めて約0.1~約20mS/cm、幾つかの実施形態においては約0.5~約10mS/cm、幾つかの実施形態においては約1~約5mS/cmの導電率を有する。
【0026】
所望の場合には、所望の誘電体厚さを達成するために、陽極酸化の各段階を1回又は複数回繰り返すことができる。更に、陽極は、第1及び/又は第2段階の後に、電解液を除去するために他の溶媒(例えば水)ですすぐか又は洗浄することもできる。
【0027】
C.固体電解質:
固体電解質が誘電体の上に配されて、一般にキャパシタの陰極として機能する。上記に
示したように、固体電解質は、複数の導電性ポリマー粒子によって形成される少なくとも1つの層を含む。また、この粒子はチオフェンポリマー及びコポリマー対イオンによって形成される複合体を含む。幾つかの実施形態においては、チオフェンポリマーは、次の一般式:
【0028】
【0029】
(式中、
R7は、線状又は分岐の、C1~C18アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-若しくはイソプロピル、n-、イソ-、sec-、又はtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル等);C5~C12シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等);C6~C14アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等);C7~C18アラルキル基(例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリル、メシチル等);であり;
qは、0~8、幾つかの実施形態においては0~2、一実施形態においては0の整数である。一実施形態において、「q」は0であり、ポリマーはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である。)
を有する繰り返し単位を含み得る。かかるポリマーを形成するために好適なモノマーの1つの商業的に好適な例は、3,4-エチレンジオキシチオフェンであり、これはHeraeusからClevios(登録商標)Mの名称で入手できる。
【0030】
特に好適なチオフェンポリマーは、「D」が場合によって置換されているC2~C3アルキレン基であるものである。例えば、ポリマーは、次の一般構造:
【0031】
【0032】
を有する場合によって置換されているポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であってよい。
上記に記載のような導電性ポリマーを形成する方法は当該技術において周知である。例えば、Merkerらの米国特許6,987,663においては、モノマー前駆体から置換ポリチオフェンを形成する種々の技術が記載されている。モノマー前駆体は、例えば次の構造:
【0033】
【0034】
(式中、T、D、R7、及びqは上記に定義した通りである)
を有し得る。特に好適なチオフェンモノマーは、「D」が場合によって置換されているC2~C3アルキレン基であるものである。例えば、一般構造:
【0035】
【0036】
(式中、R7及びqは上記に定義した通りである)
を有する場合によって置換されている3,4-アルキレンジオキシチオフェンを使用することができる。1つの特定の態様においては、「q」は0である。3,4-エチレンジオキシチオフェンの1つの商業的に好適な例は、HeraeusからClevios(登録商標)Mの名称で入手できる。他の好適なモノマーはまた、Blohmらの米国特許5,111,327、及びGroenendaalらの米国特許6,635,729に記載されている。例えば上記のモノマーの二量体又は三量体であるこれらのモノマーの誘導体を使用することもできる。モノマーのより高分子量の誘導体、即ち四量体、五量体等は、本発明において使用するのに好適である。誘導体は、同一か又は異なるモノマー単位で構成することができ、純粋形態、並びに互いとの混合物及び/又はモノマーとの混合物で使用することができる。これらの前駆体の酸化又は還元形態を用いることもできる。
【0037】
チオフェンモノマーは、酸化触媒の存在下で化学重合することができる。酸化触媒は、アンモニウム、ナトリウム、金、鉄(III)、銅(II)、クロム(VI)、セリウム(IV)、マンガン(IV)、マンガン(VII)、又はルテニウム(III)カチオンを含む無機又は有機酸の塩のような遷移金属塩であってよい。特に好適な遷移金属塩としては、ハロゲン化物(例えば、FeCl3又はHAuCl4);他の無機酸の塩(例えば、Fe(ClO4)3、Fe2(SO4)3、(NH4)2S2O8、又はNa3Mo12PO40);及び有機酸及び有機基を含む無機酸の塩が挙げられる。有機基を有する無機酸の塩の例としては、例えば、C1~C20アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩(例えば、ラウリル硫酸の鉄(III)塩)が挙げられる。また、有機酸の塩の例としては、例えば、C1~C20アルカンスルホン酸(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はドデカンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族C1~C20カルボン酸(例えば2ーエチルヘキシルカルボン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸)の鉄(III)塩;場合によってC1~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸)の鉄(III)塩;シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸)の鉄(III)塩などが挙げられる。これらの上述の塩の混合物も使用することができる。
【0038】
コポリマー対イオンは、形成した後にチオフェンモノマーと組み合わせることができ、
或いは重合中に導入することができる。通常は、コポリマー対イオンとチオフェンポリマーとの重量比は、約0.5:1~約50:1、幾つかの実施形態においては約1:1~約30:1、幾つかの実施形態においては約2:1~約20:1である。上述の重量比に関するポリマーの重量は、重合中に完全な転化が起こったと仮定した場合の使用したモノマーの重量割合を指す。
【0039】
コポリマー対イオンは、一般にスルホン酸モノマーから誘導される第1の繰り返し単位、及び(メタ)アクリレートモノマーから誘導される第2の繰り返し単位を含む。ここで使用する「(メタ)アクリレート」という用語は、概して、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、(アクリレート)、(メタ)アクリレート官能基を含むシランモノマー党のようなアクリル又はメタクリル化合物を含むか、又はこれらから誘導される任意のモノマーを指す。通常は、第1の繰り返し単位(スルホン酸モノマー)と第2の繰り返し単位((メタ)アクリレートモノマー)との重量比は、約0.5:1~約30:1、幾つかの実施形態においては約1:1~約25:1、幾つかの実施形態においては約3:1~約15:1の範囲である。得られるコポリマー対イオンの重量平均分子量は、通常は約5,000~約500,000グラム/モル、幾つかの実施形態においては約15,000~約400,000グラム/モル、幾つかの実施形態においては約40,000~約200,000グラム/モルの範囲である。
【0040】
好適なスルホン酸モノマーとしては、例えば、C1~C20アルカンスルホン酸(例えばドデカンスルホン酸);脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸);場合によってC1~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えばスチレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸など);を挙げることができる。好適な(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなど);シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート);アリール(メタ)アクリレート(例えば、ジフェニルブチル(メタ)アクリレート);アルキルアミノ(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど);ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、メトキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど);スルホアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ナトリウムスルホヘキシル(メタ)アクリレート);グリシジル(メタ)アクリレート(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートなど);(メタ)アクリレートシラン化合物(例えば、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチル-ジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピル-ジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピル-ジメチルエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピル-トリエトキシシランなど);などを挙げることができる。
【0041】
重合したら、得られる導電性ポリマー複合体は、一般に、約1~約100ナノメートル、幾つかの実施形態においては約2~約80ナノメートル、幾つかの実施形態においては約4~約50ナノメートルの平均径(例えば直径)のような小さい寸法を有する粒子の形態である。粒子の直径は、超遠心分離、レーザー回折などのような公知の技術を使用して求めることができる。粒子の形状も変化し得る。例えば1つの特定の実施形態においては、粒子は球状の形状である。しかしながら、プレート、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則形状などのような他の形状も本発明によって意図されることを理解すべきであ
る。
【0042】
所望の場合には、モノマーの重合は前駆体溶液中で行うことができるので、得られる粒子は分散液の形態である。水、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、ジプロピレングリコールなど);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、イソプロピルグリコールエーテルなど);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及びブタノール);ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなど);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド、及びN-アルキルピロリドン);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン);フェノール系化合物(例えば、トルエン、キシレンなど)などのような溶媒(例えば極性プロトン性又は非極性)を溶液において使用することができる。水は、この反応のために特に好適な溶媒である。使用する場合には、前駆体溶液中の溶媒の総量は、約40重量%~約90重量%、幾つかの実施形態においては約50重量%~約85重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約80重量%であってよい。分散液中の粒子の濃度は、分散液の所望の粘度、及び分散液をキャパシタに施す特定の方法によって変化し得る。しかしながら、通常は、粒子は分散液の約0.1~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.4~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.5~約4重量%を構成する。チオフェンモノマーの重合は、約10℃~約100℃、いくつかの実施形態においては約15℃~約75℃の温度で行うことができる。反応が完了したら、公知の濾過技術を使用して塩不純物を除去することができる。また、分散液を精製するために1以上の洗浄工程を使用することもできる。
【0043】
1つ又は複数のチオフェンポリマー及び1つ又は複数のコポリマー対イオンに加えて、分散液にはまた、ポリマー層の接着性を更に高め、また分散液中の粒子の安定性を増大させるために、1種類以上のバインダーを含ませることができる。バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル、及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、シリコーン樹脂、又はセルロースのように有機性であってよい。バインダーの接着能力を高めるために、架橋剤を使用することもできる。かかる架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート、又は官能性シラン、例えば3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトラエトキシシラン加水分解物、又は架橋性ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレート、又はポリオレフィン、及びその後の架橋を挙げることができる。
【0044】
固体電解質の形成及びそれを陽極部品に施す能力を促進するために、分散剤を使用することもできる。好適な分散剤としては、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、及びブタノール)、脂肪族ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、脂肪族カルボン酸エステル(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えばアセトニトリル)、脂肪族スルホキシド及びスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン)、脂肪族カルボン酸アミド(例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミド)、脂肪族及び芳香脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びアニソール)、水、並びに前述
の任意の溶媒の混合物のような溶媒が挙げられる。特に好適な分散剤は水である。
【0045】
上記のものに加えて、更に他の成分も分散液中で使用することができる。例えば、約10ナノメートル~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約50ナノメートル~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約100ナノメートル~約30マイクロメートルの寸法を有する従来の充填剤を使用することができる。かかる充填剤の例としては、炭酸カルシウム、シリケート、シリカ、硫酸カルシウム又は硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維又はバルブ、木粉、セルロース粉末、カーボンブラック、導電性ポリマーなどが挙げられる。充填剤は粉末形態で分散液中に導入することができるが、繊維のような別の形態で存在してもよい。
【0046】
イオン性又は非イオン性界面活性剤のような界面活性物質も分散液中で使用することができる。更に、有機官能性シラン又はそれらの加水分解物、例えば3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、又はオクチルトリエトキシシランのような接着剤を使用することができる。分散液にはまた、エーテル基含有化合物(例えばテトラヒドロフラン)、ラクトン基含有化合物(例えば、γ-ブチロラクトン又はγ-バレロラクトン)、アミド又はラクタム基含有化合物(例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF))、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、又はピロリドン)、スルホン及びスルホキシド(例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)又はジメチルスルホキシド(DMSO))、糖又は糖誘導体(例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、又はラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、フラン誘導体(例えば、2-フランカルボン酸又は3-フランカルボン酸)、アルコール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ-又はトリエチレングリコール)のような、導電率を増加させる添加剤を含ませることもできる。
【0047】
ポリマー分散液は、スピン被覆、含浸、注入、滴下塗布、注入、噴霧、ドクターブレード塗布、刷毛塗り、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷)、又は浸漬のような種々の公知の技術を使用して部品に施すことができる。分散液の粘度は、使用する適用技術によって変化し得るが、通常は(100s-1のせん断速度で測定して)約0.1~約100,000mPa、幾つかの実施形態においては約1~約10,000mPa、幾つかの実施形態においては約10~約1,500mPa、幾つかの実施形態においては約100~約1000mPaである。適用したら、層を乾燥及び洗浄することができる。
【0048】
i.内側層:
固体電解質は一般に、1以上の「内側」導電性ポリマー層から形成される。この文脈における「内側」という用語は、同じ材料から形成され、直接か又は他の層(例えば接着剤層)を介して誘電体の上に配される1以上の層を指す。例えば、1つ又は複数の内側層は、通常は上記のような導電性ポリマーを含む。1つの特定の実施形態においては、1つ又は複数の内側層は、一般にポリスチレンスルホン酸のような従来のポリマー対イオンを含まない。1つ又は複数の内側層を使用することができる。例えば、固体電解質は、通常は2~30、幾つかの実施形態においては4~20、幾つかの実施形態においては約5~15(例えば10層)の内側層を含む。1つ又は複数の内側層の粒子は、約1~約100ナノメートル、幾つかの実施形態においては約2~約80ナノメートル、幾つかの実施形態においては約4~約50ナノメートルの平均径(例えば直径)を有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザー回折などのような公知の技術を使用して求めることができる。また、粒子の形状も変化し得る。例えば1つの特定の実施形態においては、粒子は球形である。しかしながら、プレート、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則形状などのような他の形状も本発明によって意図されることを理解すべきである。
【0049】
ii.外側層:
固体電解質は「内側層」のみを含む場合があり、本質的に同じ材料から形成される。しかしながら、他の実施形態においては、固体電解質はまた、1つ又は複数の内側層とは異なる材料から形成され、一つ又は複数の内側層の上に配される1以上の随意的な「外側」導電性ポリマー層を含む場合がある。1つ又は複数の外側層を使用することができる。例えば、固体電解質は、2~30、幾つかの実施形態においては4~20、幾つかの実施形態においては約5~15の外側層を含み得る。かかる層は、例えばチオフェンポリマー、及びポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニルスルホン酸等などのようなホモポリマー対イオンを含む導電性ポリマー粒子の分散液から形成することができる。1つ又は複数の外側層の粒子は、1つ又は複数の内側層において使用されるものと同等、或いは幾つかの場合においては1つ又は複数の内側層において使用される粒子の寸法よりも大きな寸法を有し得る。例えば、1つ又は複数の外側層の粒子は、約1~約100ナノメートル、幾つかの実施形態においては約2~約80ナノメートル、幾つかの実施形態においては約4~約50ナノメートルの平均径(例えば直径)を有し得る。
【0050】
所望であれば、ヒドロキシル官能性非イオン性ポリマーを固体電解質の1つ又は複数の外側層において用いることもできる。用語「ヒドロキシ官能性」は一般に、化合物が少なくとも1つの水酸基官能基を含むか、又は溶媒の存在下でかかる官能基を有することができることを意味する。理論によって限定されることは意図しないが、特定の分子量を有するヒドロキシ官能性ポリマーの使用は、高電圧における化学分解の可能性を最小にすることができると考えられる。例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーの分子量は、約100~10,000グラム/モル、幾つかの実施形態においては約200~2,000グラム/モル、幾つかの実施形態においては約300~約1,200グラム/モル、及び幾つかの実施形態においては約400~約800グラム/モルであってよい。
【0051】
一般に、任意の種々のヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーをこの目的のために使用することができる。一実施形態においては、例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーはポリアルキレンエーテルである。ポリアルキレンエーテルとしては、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエピクロロヒドリンなど)、ポリオキセタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトンなどが挙げられ得る。ポリアルキレンエーテルは、通常は末端ヒドロキシ基を有する主に線状の非イオン性ポリマーである。特に好適なものはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン)であり、これらは水上へのエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はテトラヒドロフランの重付加によって生成される。ポリアルキレンエーテルは、ジオール又はポリオールからの重縮合反応によって調製することができる。ジオール成分は特に、5~36個の炭素原子を含む飽和又は不飽和で分岐又は非分岐の脂肪族ジヒドロキシ化合物又は芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス-(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、ビスフェノールA、ダイマージオール、水素化ダイマージオール、又は更には言及したジオールの混合物から選択することができる。更に、例えば、グリセロール、ジ-及びポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はソルビトールなどの多価アルコールもまた、重合反応において使用することができる。
【0052】
上述のものに加えて、他のヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーも本発明において用いることができる。かかるポリマーの幾つかの例としては、例えば、エトキシル化アルキルフェノール;エトキシル化又はプロポキシル化C6~C24脂肪アルコール;一般式:CH3-(CH2)10-16-(O-C2H4)1-25-OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル);一般式:CH3-(CH2)10-16-(O-C3H6)1-25-OHを有するポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;次の一般式:C8H17-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OHを有するポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル(例えばTr
iton(登録商標)X-100);次の一般式:C9H19-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル(例えばノノキシノール-9);C8-C24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエステル、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、PEG-20メチルグルコースジステアレート、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート、PEG-80ヒマシ油、及びPEG-20ヒマシ油、PEG-3ヒマシ油、PEG-600ジオレエート、及びPEG-400ジオレエート)、及びポリオキシエチレングリセロールアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン-23グリセロールラウレート、及びポリオキシエチレン-20グリセロールステアレート);C8~C24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエーテル(例えば、ポリオキシエチレン-10セチルエーテル、ポリオキシエチレン-10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン-20セチルエーテル、ポリオキシエチレン-10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン-20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン-20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン-15トリデシルエーテル、及びポリオキシエチレン-6トリデシルエーテル);ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(例えばPoloxamers);など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
ヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーは、種々の異なる方法で外側層中に導入することができる。例えば幾つかの実施形態においては、非イオン性ポリマーを単に外因性導電性ポリマーの分散液中に導入することができる。かかる実施形態においては、層中における非イオン性ポリマーの濃度は、約1重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約30重量%であってよい。しかしながら、他の実施形態においては非イオン性ポリマーは、1つ又は複数の当初の外側層が形成された後に施すことができる。かかる実施形態においては、非イオン性ポリマーを施すために用いる技術は変化させることができる。例えば、非イオン性ポリマーは、含浸、浸漬、流し込み、ドリッピング、注入、噴霧、展開、塗装、又は印刷、例えばインクジェット、スクリーン印刷、若しくはタンポン印刷のような種々の方法を用いて、液体溶液の形態で施すことができる。水、アルコール、又はこれらの混合物のような当業者に公知の溶媒を溶液中で用いることができる。かかる溶液中における非イオン性ポリマーの濃度は、通常は、溶液の約5重量%~約95重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約15重量%~約50重量%の範囲である。所望の場合には、かかる溶液は導電性ポリマーを概して含んでいなくてよい。例えば、導電性ポリマーは、溶液の約2重量%以下、幾つかの実施形態においては約1重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.5重量%以下を構成することができる。
【0054】
D.外部ポリマー被覆:
上記に示したように、固体電解質の上に配される外部ポリマー被覆も陽極に施す。外部ポリマー被覆は、一般に上記に記載の導電性ポリマー粒子(例えばチオフェンポリマー/コポリマー対イオン複合体から形成される)及び/又は他のタイプの導電性ポリマー粒子(例えばチオフェンポリマー及びポリスチレンスルホン酸のようなホモポリマー対イオンから形成される)から形成される1以上の層を含む。外部被覆は、キャパシタ体のエッジ領域中に更に浸透して、誘電体に対する接着を増加させて、より機械的に堅牢な部品を与えることができ、これにより等価直列抵抗及びリーク電流を減少させることができる。一般に、陽極体の内部に含浸させるのではなく、エッジの被覆度を向上させることを意図しているので、外部被覆において使用される粒子は、通常は固体電解質の随意的な分散液において使用されるものよりも大きな寸法を有する。例えば、固体電解質において使用される粒子の平均寸法に対する、外部ポリマー被覆において使用される粒子の平均寸法の比率は、通常は約1.5~約30、幾つかの実施形態においては約2~約20、幾つかの実施
形態においては約5~約15である。例えば、外部被覆の分散液中で用いられる粒子は、約50~約800ナノメートル、幾つかの実施形態においては約80~約600ナノメートル、幾つかの実施形態においては約100~約500ナノメートルの平均寸法を有していてよい。
【0055】
また場合によっては、外部ポリマー被覆において架橋剤を用いて、固体電解質に対する接着度を更に増大させることができる。通常は、架橋剤は外部被覆において用いる分散液を施す前に施す。好適な架橋剤は、例えば、Merkerらの米国特許公開2007/0064376に記載されており、例えば、アミン(例えば、ジアミン、トリアミン、オリゴマーアミン、ポリアミン等);多価金属カチオン、例えば、Mg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Ba、Ti、Co、Ni、Cu、Ru、Ce、又はZnの塩又は化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられる。特に好適な例としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン等、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
架橋剤は、通常は、そのpHが25℃において求めて1~10、幾つかの実施形態においては2~7、幾つかの実施形態においては3~6である溶液又は分散液から施される。酸性化合物を用いて所望のpHレベルの達成を助けることができる。架橋剤のための溶媒又は分散剤の例としては、水、又は有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、カルボン酸エステル等が挙げられる。架橋剤は、スピン被覆、含浸、流延、滴下適用、噴霧適用、蒸着、スパッタリング、昇華、ナイフ被覆、塗装又は印刷、例えばインクジェット、スクリーン、又はパッド印刷のような任意の公知のプロセスによってキャパシタ体に施すことができる。施したら、ポリマー分散液を施す前に架橋剤を乾燥することができる。次に、所望の厚さが達成されるまでこのプロセスを繰り返すことができる。例えば、架橋剤及び分散液の層を含む外部ポリマー被覆全体の全厚さは、約1~約50μm、幾つかの実施形態においては約2~約40μm、幾つかの実施形態においては約5~約20μmの範囲であってよい。
【0057】
E.陰極被覆:
所望の場合には、キャパシタ素子はまた、固体電解質(例えば外部ポリマー被覆)の上に配される陰極被覆を使用することもできる。陰極被覆には、ポリマーマトリクス内に分散されている多数の導電性金属粒子を含む金属粒子層を含ませることができる。粒子は、通常は層の約50重量%~約99重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約98重量%、幾つかの実施形態においては約70重量%~約95重量%を構成し、一方でポリマーマトリクスは、通常は層の約1重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約30重量%を構成する。
【0058】
導電性金属粒子は、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム等のような種々の異なる金属、並びにこれらの合金から形成することができる。銀がかかる層において使用するのに特に好適な導電性金属である。金属粒子は、しばしば、約0.01~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.1~約40マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約30マイクロメートルの平均径のような比較的小さい寸法を有する。通常は1つのみの金属粒子層を使用するが、所望の場合には複数の層を使用することができることを理解すべきである。かかる1つ又は複数の層の合計厚さは、約1μm~約500μm、幾つかの実施形態においては約5μm~約200μm、幾つかの実施形態においては約10μm~約100μmの範囲内である。
【0059】
ポリマーマトリクスは、通常は本質的に熱可塑性又は熱硬化性であってよいポリマーを含む。しかしながら、通常は、ポリマーは、銀イオンのエレクトロマイグレーションに対
するバリヤとして作用することができ、また陰極被覆における水吸着の程度を最小にするように比較的少量の極性基を含むように選択される。この点に関し、本発明者らは、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等のようなビニルアセタールポリマーがこの目的のために特に好適であることを見出した。例えば、ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールをアルデヒド(例えばブチルアルデヒド)と反応させることによって形成することができる。この反応は通常は完全ではないので、ポリビニルブチラールは一般的に残留ヒドロキシル含量を有する。しかしながら、この含量を最小にすることによって、ポリマーはより低い程度の強極性基を有することができる(これを有していないと高い程度の湿分吸着が引き起こされ、且つ銀イオンの移動が引き起こされる)。例えば、ポリビニルアセタール中の残留ヒドロキシル含量は、約35モル%以下、幾つかの実施形態においては約30モル%以下、幾つかの実施形態においては約10モル%~約25モル%にすることができる。かかるポリマーの1つの商業的に入手できる例は、Sekisui Chemical Co., Ltd.から「BH-S」(ポリビニルブチラール)の名称で入手できる。
【0060】
陰極被覆を形成するためには、通常は、導電性ペーストをキャパシタに、固体電解質の上に重ねて施す。一般にペースト中で1種類以上の有機溶媒を使用する。一般に、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、及びジプロピレングリコール);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、及びイソプロピルグリコールエーテル);エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン);アルコール(例えば、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、及びブタノール);トリグリセリド;ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、及びメトキシプロピルアセテート);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド及びN-アルキルピロリドン);ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ブチロニトリル、及びベンゾニトリル);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン);等、並びにこれらの混合物のような種々の異なる有機溶媒を使用することができる。1種類又は複数の有機溶媒は、通常は、ペーストの約10重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約65重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約60重量%を構成する。通常は、金属粒子は、ペーストの約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約45重量%、幾つかの実施形態においては約25重量%~約40重量%を構成し、樹脂状マトリクスは、ペーストの約0.1重量%~約20重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約8重量%を構成する。
【0061】
ペーストは比較的低い粘度を有していてよく、これによりそれを容易に取り扱ってキャパシタ素子に施すことが可能になる。粘度は、例えば、Brookfield DV-1粘度計(コーンプレート)などを使用して10rpmの速度及び25℃の温度で運転して測定して、約50~約3,000センチポアズ、幾つかの実施形態においては100~約2,000センチポアズ、幾つかの実施形態においては約200~約1,000センチポアズの範囲であってよい。所望の場合には、ペースト中で増粘剤又は他の粘度調整剤を使用して粘度を増加又は減少させることができる。更に、施すペーストの厚さは比較的薄くてもよく、これでもなお所望の特性を達成することができる。例えば、ペーストの厚さは、約0.01~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約0.5~約30マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約25マイクロメートルであってよい。施したら、金属ペーストを場合によっては乾燥して、有機溶媒のような幾つかの成分を除去することができる。例えば、乾燥は、約20℃~約150℃、幾つかの実施形態においては約50℃~約140℃、幾つかの実施形態においては約80℃~約130℃の温度で行うことができる。
【0062】
F.他の構成要素:
所望の場合には、当該技術において公知の他の層をキャパシタに含ませることもできる。例えば、幾つかの実施形態においては、炭素層(例えばグラファイト)を固体電解質と銀層との間に配置して、これによって銀層と固体電解質との接触を更に制限することを助けることができる。更に、誘電体の上に配され、有機金属化合物を含むプレコート層を使用することもできる。
【0063】
II.終端(termination):
形成されたら、特に表面実装用途において用いる場合には、キャパシタ素子に終端を設けることができる。例えば、キャパシタに、キャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続される陽極終端と、キャパシタ素子の陰極が電気的に接続される陰極終端を含ませることができる。導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの合金)のような任意の導電性材料を用いて終端を形成することができる。特に好適な導電性金属としては、例えば、銅、銅合金(例えば、銅-ジルコニウム、銅-マグネシウム、銅-亜鉛、又は銅-鉄)、ニッケル、及びニッケル合金(例えばニッケル-鉄)が挙げられる。終端の厚さは、一般的にキャパシタの厚さを最小にするように選択される。例えば、終端の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの実施形態においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.07~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。一つの代表的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から入手できる銅-鉄合金の金属プレートである。所望の場合には、終端の表面は、当該技術において公知なように、最終部品を回路基板へ実装することができるのを確実にするために、ニッケル、銀、金、スズ等で電気めっきすることができる。一つの特定の実施形態においては、終端の両方の面をそれぞれニッケル及び銀フラッシュでめっきし、一方で、実装面もスズはんだ層でめっきする。
【0064】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。例えば一実施形態においては、陰極終端と陽極終端を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤を陰極終端の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば、樹脂組成物内に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマス等であってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及びカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許出願公開2006/0038304に記載されている。任意の種々の技術を用いて、導電性接着剤を陰極終端に施すことができる。例えば、それらの実用上及び費用節約上の利益のために印刷技術を用いることができる。陽極リードも、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤等のような当該技術において公知の任意の技術を用いて陽極終端に電気的に接続することができる。陽極リードを陽極終端に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させ、電解キャパシタ素子が陰極終端へ適切に接着することを確実にすることができる。
【0065】
III.ハウジング:
キャパシタ素子は種々の方法でハウジング内に含ませることができる。例えば幾つかの実施形態においては、キャパシタ素子をケース内に収容することができ、次にこれに、硬化させて硬化したハウジングを形成することができる熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)のような樹脂材料を充填することができる。陽極及び陰極終端の少なくとも一部が回路基板上に実装するために露出されるように、樹脂材料でキャパシタ素子を包囲及び封入することができる。このようにして封入した場合には、キャパシタ素子と樹脂材料は一体のキャパシタアセンブリを形成する。
【0066】
勿論、別の実施形態においては、キャパシタ素子を離隔して別個の状態でハウジング内に収容することが望ましい可能性がある。このようにすると、ハウジングの雰囲気を、それが乾燥しているように選択的に制御することができ、これによりキャパシタ素子に接触することができる湿分の度合いが限定される。例えば、この雰囲気の湿分含量(相対湿度
で表す)は、約10%以下、幾つかの実施形態においては約5%以下、幾つかの実施形態においては約3%以下、幾つかの実施形態においては約0.001~約1%であってよい。例えば、雰囲気は、気体状で、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、クリプトン、ラドンなど、並びにこれらの混合物のような少なくとも1種類の不活性ガスを含んでいてよい。通常は、不活性ガスは、ハウジング内の雰囲気の大部分、例えば、雰囲気の約50重量%~100重量%、幾つかの実施形態においては約75重量%~100重量%、幾つかの実施形態においては約90重量%~約99重量%を構成する。所望の場合には、二酸化炭素、酸素、水蒸気等のような比較的少量の非不活性ガスを用いることもできる。しかしながら、かかる場合においては、非不活性ガスは、通常はハウジング内の雰囲気の15重量%以下、幾つかの実施形態においては10重量%以下、幾つかの実施形態においては約5重量%以下、幾つかの実施形態においては約1重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.01重量%~約1重量%を構成する。
【0067】
金属、プラスチック、セラミックなどのような任意の種々の異なる材料を用いてハウジングを形成することができる。例えば一実施形態においては、ハウジングは、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ニッケル、ハフニウム、チタン、銅、銀、鋼(例えばステンレス)、これらの合金(例えば導電性酸化物)、これらの複合材料(例えば導電性酸化物で被覆された金属)などのような金属の1以上の層を含む。他の実施形態においては、ハウジングに、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ガラス等、並びにこれらの組合せのようなセラミック材料の1以上の層を含ませることができる。
【0068】
ハウジングは、円筒形、D字形、長方形、三角形、角柱形等のような任意の所望の形状を有していてよい。例えば
図1を参照すると、ハウジング122とキャパシタ素子120を含むキャパシタ100の一実施形態が示されている。この特定の実施形態においては、ハウジング122は概して長方形である。通常は、ハウジング及びキャパシタ素子は、キャパシタ素子を内部空洞内に容易に収容することができるように同じか又は類似の形状を有する。例えば示される実施形態においては、キャパシタ素子120及びハウジング122の両方とも概して長方形の形状を有している。
【0069】
所望の場合には、本発明のキャパシタは、比較的高い体積効率を示すことができる。かかる高い効率を促進するために、キャパシタ素子は、通常は、ハウジングの内部空洞の容積の相当部分を占める。例えば、キャパシタ素子は、ハウジングの内部空洞の約30体積%以上、幾つかの実施形態においては約50体積%以上、幾つかの実施形態においては約60体積%以上、幾つかの実施形態においては約70体積%以上、幾つかの実施形態においては約80体積%~約98体積%、幾つかの実施形態においては約85体積%~約97体積%を占めることができる。この目的のために、キャパシタ素子の寸法と、ハウジングによって画定される内部空洞の寸法との間の差は通常は比較的小さい。
【0070】
例えば
図1を参照すると、キャパシタ素子120は、ハウジング122によって画定される内部空洞126の長さと比較的同等の長さ(陽極リード6の長さを除く)を有していてよい。例えば、内部空洞の長さに対する陽極の長さの比は、約0.40~1.00、幾つかの実施形態においては約0.50~約0.99、幾つかの実施形態においては約0.60~約0.99、幾つかの実施形態においては約0.70~約0.98の範囲である。キャパシタ素子120は約5~約10ミリメートルの長さを有していてよく、内部空洞126は約6~約15ミリメートルの長さを有していてよい。同様に、内部空洞126の高さに対するキャパシタ素子120の高さ(z方向における)の比は、約0.40~1.00、幾つかの実施形態においては約0.50~約0.99、幾つかの実施形態においては約0.60~約0.99、幾つかの実施形態においては約0.70~約0.98の範囲であってよい。内部空洞126の幅に対するキャパシタ素子120の幅(x方向における)の比も、約0.50~1.00、幾つかの実施形態においては約0.60~約0.99、幾つかの実施形態においては約0.70~約0.99、幾つかの実施形態においては約0.80~約0.98、幾つかの実施形態においては約0.85~約0.95の範囲であってよい。例えば、キャパシタ素子120の幅は約2~約7ミリメートルであってよく、内
部空洞126の幅は約3~約10ミリメートルであってよく、キャパシタ素子120の高さは約0.5~約2ミリメートルであってよく、内部空洞126の幅は約0.7~約6ミリメートルであってよい。
【0071】
決して必須ではないが、キャパシタ素子は、陽極終端と陰極終端がその後に回路中に組み込むためにハウジングの外部に形成されるように、ハウジングに取り付けることができる。終端の特定の構成は意図する用途に応じて定めることができる。例えば一実施形態においては、キャパシタは、表面実装可能であり、且つ更になお機械的に堅牢であるように形成することができる。例えば、陽極リードは、外側の表面実装可能な陽極及び陰極終端(例えば、パッド、シート、プレート、フレーム等)に電気的に接続することができる。かかる終端は、キャパシタと接続するためにハウジングを通って伸長させることができる。終端の厚さ又は高さは、一般的にキャパシタの厚さを最小にするように選択される。例えば、終端の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの実施形態においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.1~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。所望の場合には、終端の表面は、当該技術において公知なように、ニッケル、銀、金、スズ等で電気めっきして、最終部品が回路基板に実装可能になることを確実にすることができる。一つの特定の実施形態において、1つ又は複数の終端にはそれぞれニッケル及び銀フラッシュを堆積させ、実装表面もスズはんだ層をめっきする。他の実施形態においては、1つ又は複数の終端において、ベース金属層(例えば銅合金)上に薄い外側金属層(例えば金)を堆積させて導電性を更に増加させる。
【0072】
幾つかの実施形態においては、ハウジングの内部空洞内において接続部材を用いて、機械的に安定な形態の終端への接続を促進することができる。例えば、再び
図1を参照すると、キャパシタ100に、第1の部分167と第2の部分165から形成されている接続部材162を含ませることができる。接続部材162は、外部終端と同様の導電性材料から形成することができる。第1の部分167と第2の部分165は、一体であってよく、或いは直接又は更なる導電部材(例えば金属)を介してのいずれかで接続されている別々の片であってよい。示されている実施形態においては、第2の部分165は、リード6が伸長する横方向(例えばy方向)に対して概して平行な面内に与えられる。第1の部分167は、リード6が伸長する横方向に対して概して垂直の面内に与えられるという意味で「直立」している。このように、第1の部分167は、リード6の水平方向の動きを制限して、使用中における表面接触及び機械的安定性を増大させることができる。所望の場合には、絶縁材料7(例えば、Teflon(登録商標)ワッシャー)をリード6の周囲で用いることができる。
【0073】
第1の部分167は、陽極リード6に接続される実装領域(図示せず)を有していてよい。かかる領域は、リード6の表面接触及び機械的安定性を更に増大させるために「U字形」を有していてよい。かかる領域のリード6への接続は、溶接、レーザー溶接、導電性接着剤等のような任意の種々の公知の技術を用いて達成することができる。例えば一つの特定の実施形態においては、この領域は陽極リード6にレーザー溶接される。しかしながら、選択される技術に関係なく、第1の部分167によって陽極リード6を実質的に水平の配向で保持して、キャパシタ100の寸法安定性を更に増大させることができる。
【0074】
再び
図1を参照すると、接続部材162及びキャパシタ素子120が、陽極及び陰極終端(それぞれ127及び129)を通してハウジング122に接続されている本発明の一実施形態が示されている。より具体的には、この実施形態のハウジング122は、外壁123及び二つの対向する側壁124を含んでいて、その間にキャパシタ素子120を収容する空洞126が形成されている。外壁123及び側壁124は、上記のような金属、プラスチック、又はセラミック材料の1以上の層から形成することができる。この特定の実施形態において、陽極終端127は、ハウジング122内に配置され、接続部材162に電気的に接続されている第1の領域127aと、ハウジング122の外側に配置され、実装表面201を与える第2の領域127bを含む。更に、陰極終端129は、ハウジング122内に配置され、キャパシタ素子120の固体電解質に電気的に接続されている第1の領域129aと、ハウジング122の外側に配置され、実装表面203を与える第2の
領域129bを含む。かかる領域の部分全体がハウジングの内部又は外側に配置される必要はないことを理解すべきである。
【0075】
示されている実施形態においては、導電トレース127cがハウジングの外壁123内で伸長して、第1の領域127aと第2の領域127bを接続している。同様に、導電トレース129cがハウジングの外壁123内で伸長して、第1の領域127aと第2の領域127bを接続している。導電トレース及び/又は終端の領域は別々であっても一体であってもよい。ハウジングの外壁を通って伸長しているのに加えて、トレースは、外壁の外側のような他の場所に配置することもできる。勿論、本発明は、所望の終端を形成するために導電トレースを用いることに決して限定されない。
【0076】
用いられる特定の構成に関係なく、終端127及び129のキャパシタ素子120への接続は、溶接、レーザー溶接、導電性接着剤等のような任意の公知の技術を用いて行うことができる。例えば一つの特定の実施形態においては、導電性接着剤131を用いて、接続部材162の第2の部分165を陽極終端127に接続する。更に、導電性接着剤133を用いて、キャパシタ素子120の陰極を陰極終端129に接続する。
【0077】
場合によっては、ポリマー拘束部材を、キャパシタ素子の1以上の表面、例えば、後面、前面、上面、下面、1つ又は複数の側面、或いはこれらの任意の組合せと接触させて配置することもできる。ポリマー拘束部材は、ハウジングからキャパシタ素子が剥離する可能性を減少させることができる。これに関し、ポリマー拘束部材は、それが振動力を受けた場合でもキャパシタ素子を比較的固定された位置に保持することを可能にするある程度の強度を有していてよいが、亀裂を生じるほど強靱ではない。例えば、拘束部材は、約25℃の温度で測定して、約1~約150メガパスカル(MPa)、幾つかの実施形態においては約2~約100MPa、幾つかの実施形態においては約10~約80MPa、幾つかの実施形態においては約20~約70MPaの引張強さを有していてよい。拘束部材は導電性でないことが通常は望ましい。例えば再び
図1を参照すると、単一のポリマー拘束部材197がキャパシタ素子120の上面181及び後面177と接触して配置されている一実施形態が示されている。
図1には単一の拘束部材が示されているが、別々の複数の拘束部材を用いて同じ機能を達成することができることを理解すべきである。実際、より一般的には、任意の数のポリマー拘束部材を用いて、キャパシタ素子の任意の所望の面と接触させることができる。複数の拘束部材を用いる場合には、それらは互いと接触していてよく、又は物理的に離隔した状態で保持することができる。例えば一実施形態においては、キャパシタ素子120の上面181及び前面179と接触する第2のポリマー拘束部材(図示せず)を用いることができる。第1のポリマー拘束部材197と第2のポリマー拘束部材(図示せず)は、互いと接触していてもいなくてもよい。更に他の実施形態において、ポリマー拘束部材は、他の面と共に又は他の面の代わりに、キャパシタ素子120の下面183及び/又は1つ又は複数の側面と接触させることもできる。
【0078】
それをどのように施すかには関係なく、ポリマー拘束部材はまた、ハウジングの少なくとも一つの面と接触させて、可能性のある剥離に対してキャパシタ素子を更に機械的に安定化することを促進することが通常は望ましい。例えば、拘束部材は、1以上の側壁、外壁、蓋等の内表面と接触させることができる。例えば
図1においては、ポリマー拘束部材197は、側壁124の内表面107及び外壁123の内表面109と接触している。ハウジングと接触しているが、ハウジングによって画定される空洞の少なくとも一部は、不活性ガスが空洞を通って流れて固体電解質と酸素との接触を制限することを可能にするように占有されていない状態のままであることが望ましい。例えば、空洞容積の少なくとも約5%、幾つかの実施形態においては空洞容積の約10%~約50%は、通常はキャパシタ素子及びポリマー拘束部材によって占有されていない状態のままである。
【0079】
所望の形態で接続したら、得られるパッケージを上記に記載したように気密封止する。例えば再び
図1を参照すると、ハウジング122には、キャパシタ素子120及びポリマー拘束部材197がハウジング122内に配置された後に側壁124の上面上に配置される蓋125を含ませることもできる。蓋125は、セラミック、金属(例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルト等、並びにこれらの合金)、プラスチックなどから形成することがで
きる。所望の場合には、封止部材187を蓋125と側壁124の間に配置して、良好な封止を与えることを促進することができる。例えば一実施形態においては、封止部材としては、ガラス-金属封止材、Kovar(登録商標)リング(Goodfellow Camridge, Ltd.)などを挙げることができる。側壁124の高さは、一般的に、キャパシタ素子が汚染されないように、蓋125がキャパシタ素子120のいずれの表面とも接触しないような高さである。ポリマー拘束部材197は蓋125と接触していてもしていなくてもよい。所望の位置に配置したら、蓋125を、溶接(例えば、抵抗溶接、レーザー溶接等)、はんだ付け等の公知の技術を用いて、側壁124に気密封止する。気密封止は、一般的に、得られるアセンブリが酸素又は水蒸気のような反応性ガスを実質的に含まないように、上記のような不活性ガスの存在下で行う。
【0080】
記載された実施形態は単に例示であり、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止するための種々の他の構成を本発明において用いることができることを理解すべきである。例えば
図2を参照すると、外壁123及び蓋225を含み、その間にキャパシタ素子120及びポリマー拘束部材197を収容する空洞126が形成されているハウジング222を用いるキャパシタ200の他の実施形態が示されている。蓋225は、少なくとも一つの側壁224と一体の外壁223を含む。例えば示されている実施形態においては、二つの対向する側壁224が断面で示されている。外壁223及び123は、どちらも横方向(y方向)に伸長し、互いと概して平行、及び陽極リード6の横方向に対して概して平行である。側壁224は、外壁123に対して概して垂直である縦方向に、外壁223から伸長している。蓋225の遠位端500は外壁223によって画定されており、近位端501は側壁224のリップ部253によって画定されている。
【0081】
リップ部253は、側壁224から横方向(外壁123の横方向に対して概して平行であってよい)に伸長している。側壁224とリップ部253との間の角度は変動してよいが、通常は約60°~約120°、幾つかの実施形態においては約70°~約110°、幾つかの実施形態においては約80°~約100°(例えば約90°)である。リップ部253は、リップ部253及び外壁123が伸長する横方向に対して概して垂直であってよい周縁端部251も画定している。周縁端部251は、側壁224の外周の先に位置し、外壁123の縁部151と概して同一平面上であってよい。リップ部253は、溶接(例えば抵抗又はレーザー)、はんだ付け、接着剤等の任意の公知の技術を用いて、外壁123に封止することができる。例えば、示されている実施形態においては、部品間に封止部材287(ガラス-金属封止材、Kovar(登録商標)リングなど)を用いて、それらの接合を促進している。いずれにせよ、上記のリップ部を用いることにより、部品間のより安定な接続を可能し、キャパシタの封止及び機械的安定性を改良することができる。
【0082】
更に他の可能なハウジング構造を本発明において用いることができる。例えば、
図3は、端子ピン327bと329bがそれぞれ陽極及び陰極の外部終端として用いられている他は
図2のものに類似したハウジング構造を有するキャパシタアセンブリを示している。より詳しくは、端子ピン327aは、外壁323内に形成されているトレース327cを通って伸長して、公知の技術(例えば溶接)を用いて陽極リード6に接続されている。更なるセクション327aを用いてピン327bを固定することができる。更に、端子ピン329bは、外壁323内に形成されているトレース329cを通って伸長して、上記に記載した導電性接着剤133によって陰極に接続されている。
【0083】
図1~3に示す実施形態は、ここでは単一のキャパシタ素子のみに関して議論している。しかしながら、複数のキャパシタ素子をハウジング内に気密封止することもできることも理解すべきである。複数のキャパシタ素子は、任意の種々の異なる技術を用いてハウジングに取り付けることができる。例えば
図4を参照すると、2個のキャパシタ素子を含むキャパシタ400の一つの特定の実施形態が示されており、これに関してここでより詳細に記載する。より詳しくは、キャパシタ400は、第2のキャパシタ素子420bと電気的に連絡している第1のキャパシタ素子420aを含む。この実施形態においては、キャパシタ素子は、それらの主面が水平構成になるように配列されている。すなわち、その幅(x方向)及び長さ(y方向)によって画定されるキャパシタ素子420aの主面は、キ
ャパシタ素子420bの対応する主面に隣接して配置されている。而して、これらの主面は概して同一平面上にある。或いは、キャパシタ素子は、それらの主面が同一平面上になく、z方向又はx方向のようなある方向において互いに対して垂直になるように配置することができる。勿論、キャパシタ素子は同じ方向に伸長する必要はない。
【0084】
キャパシタ素子420a及び420bは、一緒になって空洞426を画定する外壁423並びに側壁424及び425を含むハウジング422内に配置されている。示されてはいないが、側壁424及び425の上面を覆い、アセンブリ400を上記に記載のように封止する蓋を用いることができる。場合によっては、ポリマー拘束部材を用いてキャパシタ素子の振動を制限するのを促進することもできる。例えば
図4においては、別々のポリマー拘束部材497a及び497bが、それぞれキャパシタ素子420a及び420bに隣接及び接触して配置されている。ポリマー拘束部材497a及び497bは、種々の異なる位置に配置することができる。更に、拘束部材の1つを排除することができ、或いは更なる拘束部材を用いることができる。例えば幾つかの実施形態において、キャパシタ素子の間でポリマー拘束部材を用いて機械的安定性を更に向上させることが望ましい可能性がある。
【0085】
キャパシタ素子に加えて、キャパシタはまた、それぞれのキャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続されている陽極終端と、それぞれのキャパシタ素子の陰極が電気的に接続されている陰極終端も含む。例えば再び
図4を参照すると、共通の陰極終端429に並列に接続されている複数のキャパシタ素子が示されている。この特定の実施形態においては、陰極終端429は、まずキャパシタ素子の底面に対して概して平行な面内に与えられ、導電トレース(図示せず)と電気的に接触させることができる。キャパシタ400は、キャパシタ素子420a及び420bの陽極リード(それぞれ407a及び407b)に接続されている接続部材427及び527も含む。より詳しくは、接続部材427は、直立部分465と、陽極終端(図示せず)に接続されている平面部分463を含む。更に、接続部材527は、直立部分565と、陽極終端(図示せず)に接続されている平面部分563を含む。勿論、広範囲の他のタイプの接続機構を用いることもできることを理解すべきである。
【実施例】
【0086】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より良く理解され得る。
試験手順
キャパシタンス
キャパシタンスは、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を用いて測定した。動作周波数は120Hzであり、温度は23℃±2℃であってよい。「乾燥キャパシタンス」を測定するために、試験部品を125℃の昇温温度において12時間乾燥にかける。キャパシタンスの測定は、25~35分の回復時間の後に行う。「湿潤キャパシタンス」を測定するために、試験部品を、85℃の昇温温度において48時間、85%の相対湿度レベルにかける。キャパシタンスの測定は、25~35分の回復時間の後に行う。
【0087】
ブレークダウン電圧
ブレークダウン電圧は、Keithley 2400 SourceMeterを用いて温度23℃±2℃において測定した。個々のキャパシタを、等式:
電流(A)=みかけキャパシタンス(F)×dU/dt
(式中、dU/dtは、通常は10V/秒に設定された電圧勾配を表す)
によって決定される定電流で充電する。
【0088】
充電中に電圧を測定し、印加電圧が10%以上低下した時点において、最大到達電圧値をブレークダウン電圧として記録する。
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を用いて測定することができる。動作周波数は100kHzであり、温度は23℃±2℃であってよい。
【0089】
損失係数:
損失係数は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を用いて測定することができる。動作周波数は120kHzであってよく、温度は23℃±2℃であってよい。
【0090】
漏れ電流:
漏れ電流は、漏れ試験メーターを用い、23℃±2℃の温度及び定格電圧において、最小で60秒後に測定することができる。
【0091】
実施例1
23,000μFV/gのタンタル粉末を使用して陽極試料を形成した。それぞれの陽極試料にタンタル線を埋め込み、1550℃で焼結し、プレスして5.3g/cm3の密度にした。得られたペレットは1.15×1.10×0.60mmの寸法を有していた。ペレットを、85℃の温度において8.6mSの導電率を有する水/リン酸電解液中で77.0ボルトに陽極酸化して、誘電体層を形成した。次に、陽極を、1.1%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬することによって、導電性ポリマー被覆を形成した。被覆したら、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを10回繰り返した。その後、部品を、2.0%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを3回繰り返した。その後、部品を、2%の固形分含量及び粘度160mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを14回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥した。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥した。このようにして1μF/35Vキャパシタの多数の部品(100)を形成し、シリカ樹脂中に封入した。
【0092】
実施例2
異なる導電性ポリマー被覆を使用した他は実施例1に記載の方法でキャパシタを形成した。陽極を、ここに記載するコポリマー対イオンを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)中に浸漬することによって、導電性ポリマー被覆を形成した。被覆したら、部品を150℃で15分間乾燥した。このプロセスを10回繰り返した。その後、部品を、2.0%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを3回繰り返した。その後、部品を、2%の固形分含量及び粘度160mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で15分間乾燥した。このプロセスを14回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥した。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥した。このようにして1μF/35Vキャパシタの多数の部品(200)を形成し、シリカ樹脂中に封入した。
【0093】
ブレークダウン電圧、乾燥及び湿潤キャパシタンス、並びにキャパシタンス回復率の計算値の平均結果を下表1に示す。
【0094】
【0095】
本発明のこれら及び他の修正及び変更は、当業者によって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施することができる。更に、種々の態様の複数の形態は、全体的又は部分的の両方で交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載はほんの一例にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。