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特許7442508二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/08 20060101AFI20240226BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240226BHJP
   C08L 83/14 20060101ALI20240226BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20240226BHJP
   C08K 5/5435 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
C08L83/08
C08L83/07
C08L83/14
C08K5/07
C08K5/5435
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021513781
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019054620
(87)【国際公開番号】W WO2020076620
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】62/742,617
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チュンイン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャンフイ
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0209972(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103992650(CN,A)
【文献】特開平02-103264(JP,A)
【文献】特開平03-128969(JP,A)
【文献】特表2020-525577(JP,A)
【文献】特表2020-529489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、
(A)1分子中に2つ以上のメルカプト官能基を有し、アルケニル基を含まない、第1のオルガノポリシロキサンと、
(B)1分子中に、1つ以上のアルケニル基及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、第2のオルガノポリシロキサンと、
(C)1分子中に2つ以上のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、オルガノポリシロキサンと、
(D)光開始剤と、
(E)縮合触媒と、
(F)エポキシ官能性有機ケイ素化合物と、を含み、
成分(B)は、成分(A)中の前記メルカプト官能基の量が、成分(B)及び(C)中の総アルケニル基1モル当たり、0.1~10モルの範囲となる量であり、
成分(C)は、成分(B)及び(C)の総質量の0~80質量%の量であり、
成分(D)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、0.01~5質量部の量であり、
成分(E)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、0.01~10質量部の量であり、
成分(F)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、0.01~10質量部の量であり、
前記エポキシ官能性有機ケイ素化合物が、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、若しくは8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、又はこれらの組み合わせである、
組成物。
【請求項2】
成分(A)が、以下の一般式:
(HSR)R SiO(3-x)/2
[式中、Rは、炭素数1~8個の二価炭化水素基を表し、Rは、アルキル基、アリール基、水素原子、ヒドロキシル基、又はアルコキシ基を表し、「x」は、0、1又は2である]によって表される2つ以上のシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(A)が、0.5~15.0質量%の範囲の前記メルカプト官能基を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(B)が、(B-1)1分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B-2)1分子中に、1つのケイ素原子結合水素原子及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、有機ケイ素化合物と、のヒドロシリル化反応によって製造されたオルガノポリシロキサンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(D)が、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、若しくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、又はこれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分(E)が、チタン化合物、ジルコニウム化合物、及びスズ化合物からなる群から選択される有機金属触媒である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
紫外線硬化機構及び水分硬化機構の両方から生じ、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物の硬化物
【請求項8】
ポッティング、コーティング、接着剤、又は封入材として使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物から形成された、ポッティング、コーティング、接着剤、又は封入材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月8日に出願された米国仮特許出願第62/742,617号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電磁スペクトルのうちの紫外線(「UV」)領域における放射線にさらされたときに、及び水分さらされたときに、架橋可能な二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物は様々な形態で存在しており、これらの特性を改変して、硬化化学、粘度、ポリマーの種類、及び純度などの特定の特性を付与することができる。これらは、1部系又は2部系に配合することができ、特定の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、2つ以上の機構によって硬化するように設計することができる。水分硬化機構、熱硬化機構、及び光開始硬化機構は、とりわけ、反応性オルガノポリシロキサンの硬化、すなわち架橋を開始するために使用される機構である。これらの機構は、水分によってシロキサン主鎖上の特定の基が加水分解されるようにする縮合反応、又は電磁放射線若しくは熱などの形態のエネルギーによって開始することができる付加反応のいずれかに基づく。例えば、反応性オルガノポリシロキサンは、パーオキサイドの存在下で熱によって硬化することができ、又は、これらは、水素化ケイ素(SiH)含有化合物及び白金触媒などの金属ヒドロシリル化触媒の存在下で熱によって硬化することができる。
【0004】
典型的には、水分硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、アルコキシシラン、オキシミノシラン、アセトキシシラン、アミノシラン、及びケイ素原子に結合した加水分解性基を有する他のシランなどの様々な架橋剤により、α,ω-シラノール末端オルガノポリシロキサンを末端封鎖することによって製造される。得られた硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、水分不透過性容器内に保存される。
【0005】
対応する基材への適用中、硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、押出成形され、又は他の方法で適用され、硬化のための周囲条件にさらされる。次いで、空気中の水分によってケイ素原子上の加水分解性基(アルコキシ、オキシミノ、アセトキシ、及びアミノなど)が、触媒により、又は触媒なしのいずれかで加水分解され、シラノールを形成する。次いで、得られたシラノールを、残っている未加水分解基と縮合反応において更に反応させて、シロキサン結合を形成し、硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化をもたらすことができる。
【0006】
これらの材料は、硬化したときに非常に信頼性が高く、コーティングとして優れた特性を有するが、水分硬化は遅くなる傾向がある。十分な硬化をもたらし得るには、24時間以上の硬化時間を必要とする場合が多い。このような硬化時間により、コーティングされた構成要素の製造においてスループットが制約され、この制約は、構成要素を製造プロセスの次の工程で使用し得るには、コーティングされた構成要素の十分な硬化を必要とする場合があるためである。
【0007】
これにより、近年、第3の硬化様式、すなわち紫外線硬化が、広く受け入れられている。この硬化は比較的速く、硬化エラストマーは、基材に対して、より良好な接着を示す。コーティングされた材料の部分がUV硬化中に遮られる状況では、副次的な硬化様式、通常は水分硬化が更に組み込まれてもよい。
【0008】
典型的には、UV硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、チオール-エン硬化、又はアクリレート硬化のいずれかによって得ることができる。チオール-エン硬化では、メルカプト(-SH)官能性オルガノポリシロキサンをアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと反応させる。この硬化は速く、表面は硬化の完了時に触れると乾燥している。
【0009】
UV線及び水分硬化機構を用いる、二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、特許文献1に開示されている。この参考文献では、基材に影領域があることで、UV線を向けるのに容易に利用することができず、それらの領域の架橋のための水分硬化が必要とされる、電子用途におけるコンフォーマルコーティングに特に有用な組成物が、開示されている。通常、放射線重合のために存在する光開始剤に加えて、オルガノチタネート又はオルガノスズなどの縮合触媒が存在する。縮合触媒なしでは、水分硬化は、通常、いかなる程度の確かさでも又はいかなる予測可能な時間枠内でも行われない。したがって、実用上の問題として縮合触媒なしでは、これらの組成物の水分硬化態様は、商業的な使用に実用的ではない。
【0010】
しかし、市販の用途では、このような二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物は長期保存安定性を欠くことが、報告されている。
【0011】
先行技術文献
特許文献
特許文献1 米国特許第4,528,081号
【発明の概要】
【0012】
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、光硬化及び水分への曝露による硬化の両方の性質を有し、優れた硬化性及び長期保存安定性を示す、二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することである。
【0013】
課題を解決するための手段
本発明は、二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物(「組成物」)であって、
(A)1分子中に2つ以上のメルカプト官能基を有し、アルケニル基を含まない、第1のオルガノポリシロキサンと、
(B)1分子中に、1つ以上のアルケニル基及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、第2のオルガノポリシロキサンと、
(C)1分子中に2つ以上のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、オルガノポリシロキサンと、
(D)光開始剤と、
(E)縮合触媒と、
(F)エポキシ官能性化合物と、を含み、成分(B)は、成分(A)中のメルカプト基の量が、成分(B)及び(C)中の総アルケニル基1モル当たり、約0.1~約10モルの範囲となる量であり、成分(C)は、成分(B)及び(C)の総質量の約0~約80質量%の量であり、成分(D)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、約0.01~約5質量部の量であり、成分(E)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、約0.01~約10質量部の量であり、成分(F)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、約0.01~約10質量部の量である、組成物を提供する。
【0014】
様々な実施形態において、成分(A)は、以下の一般式:
(HSR)R SiO(3-x)/2
[式中、Rは、炭素数1~8個の二価炭化水素基を表し、Rは、アルキル基、アリール基、水素原子、ヒドロキシル基、又はアルコキシ基を表し、「x」は、0、1又は2である]によって表される2つ以上のシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサンである。
【0015】
成分(A)は、約0.5~約15.0質量%の範囲のメルカプト(-SH)基を有することができる。
【0016】
様々な実施形態において、成分(B)は、(B-1)1分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B-2)1分子中に、1つのケイ素原子結合水素原子及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、有機ケイ素化合物と、のヒドロシリル化反応によって製造されたオルガノポリシロキサンである。
【0017】
様々な実施形態において、成分(C)は、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、若しくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、又はこれらの組み合わせである。
【0018】
様々な実施形態において、成分(D)は、チタン化合物、ジルコニウム化合物、及びスズ化合物からなる群から選択される有機金属触媒である。
【0019】
様々な実施形態において、成分(E)は、エポキシ官能性有機ケイ素化合物である。エポキシ官能性ケイ素化合物は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、若しくは8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
特定の実施形態において、組成物は、紫外線硬化機構及び水分硬化機構の両方から生じる。
【0021】
特定の実施形態において、組成物は、ポッティング(又はポッタント)、コーティング、接着剤、又は封入材として使用するためのものである。
【0022】
発明の効果
本開示による二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、概して、光硬化及び水分への曝露による硬化の両方の性質を有し、良好ないし優れた硬化性及び長期保存安定性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1のクロスカット試験結果の写真である。
【0024】
図2】実施例2のクロスカット試験結果の写真である。
【0025】
図3】比較例1のクロスカット試験結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0027】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様について記載している、本明細書で依拠とされたいずれかのマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素とは無関係のそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0029】
本発明の様々な実施形態の記載を依拠とする任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていなくても、説明し、想定することが理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0030】
<二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物>
成分(A)は、1分子中に2つ以上のメルカプト(-SH)官能基を有するオルガノポリシロキサンである。メルカプト官能基の例としては、3-メルカプトプロピル基、4-メルカプトブチル基、及び6-メルカプトヘキシル基などのメルカプトアルキル基が挙げられる。更にまた、成分(A)中のケイ素原子に結合したメルカプト官能基以外の基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの、炭素数1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などの、炭素数6~12個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基などの、炭素数7~12個のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などの、炭素数1~12個のハロゲン置換アルキル基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び耐熱性の観点からは、メチル基が存在する。更にまた、成分(B)中のケイ素原子は、少量の、水素原子、ヒドロキシル基、又はアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などに結合してもよい。
【0031】
様々な実施形態において、成分(A)は以下の一般式の2つ以上のシロキサン単位を有するオルガノポリシロキサンである。
(HSR)R SiO(3-x)/2
【0032】
式中、Rは、二価炭化水素基を表す。二価炭化水素基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、及びオクチレン基などの、炭素数1~8個のアルキレン基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び耐熱性の観点からは、プロピレン基が存在する。
【0033】
式中、Rは、アルキル基、アリール基、水素原子、ヒドロキシル基、又はアルコキシ基を表す。Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの、炭素数1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などの、炭素数6~12個のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの、炭素数1~6個のアルコキシ基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び耐熱性の観点からは、メチル基が存在する。
【0034】
式中、xは、0、1、又は2である。「x」が0のとき、シロキサン単位は、以下の一般式によって表されるT単位である。
HSRSiO3/2
「x」が1のとき、シロキサン単位は、以下の一般式によって表されるD単位である。
(HSR)RSiO2/2
「x」が2のとき、シロキサン単位は、以下の一般式によって表されるMT単位である。
(HSR)R SiO1/2
【0035】
このような成分(A)は、成分の、約0.5~約15.0質量%、任意に約0.5~約10.0質量%、任意に約1.0~約15.0質量%、任意に約1.0~約10.0質量%、任意に約1.0~約5.0質量%、又は任意に約1.0~約4.0質量%の範囲のメルカプト(SH)基を有してもよい。この理由は、含有量が範囲の下限を超える場合、得られた組成物の硬化性が向上し、しかし他方で、含有量が前述の範囲の上限未満の場合、得られた硬化物の耐熱性が向上するからである。
【0036】
成分(B)は、1分子中に、1つ以上のアルケニル基及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、オルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び反応性の観点からは、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基のうちの1つ以上が存在する。特に、紫外線による組成物の優れた硬化性の観点からは、成分(B)は、1分子中に2つ以上のアルケニル基を有することができる。
【0037】
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び硬化性の観点からは、メトキシ基及びエトキシ基のうちの1つ以上が存在する。特に、水分による組成物の優れた硬化性の観点からは、成分(B)は、1分子中に2つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有することができる。
【0038】
更にまた、成分(B)中のケイ素原子に結合したアルケニル基及びアルコキシ基以外の基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの、炭素数1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などの、炭素数6~12個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基などの、炭素数7~12個のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などの、炭素数1~12個のハロゲン置換アルキル基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び耐熱性の観点からは、メチル基が存在する。
【0039】
成分(B)は、(B-1)1分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B-2)1分子中に、1つのケイ素原子結合水素原子及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、有機ケイ素化合物と、のヒドロシリル化反応によって製造することができる。
【0040】
原料(B-1)は、1分子中に2つ以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び反応性の観点からは、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基のうちの1つ以上が存在する。
【0041】
原料(B-1)中のケイ素原子に結合したアルケニル基以外の基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの、炭素数1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などの、炭素数6~12個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基などの、炭素数7~12個のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などの、炭素数1~12個のハロゲン置換アルキル基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び耐熱性の観点からは、メチル基及びフェニル基のうちの1つ以上が存在する。
【0042】
原料(B-2)は、1分子中に、1つのケイ素原子結合水素原子及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、有機ケイ素化合物である。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基などの、炭素数1~6個のアルコキシ基が挙げられる。特定の実施形態において、メトキシ基が存在する。様々な実施形態において、原料(B-2)は、トリアルコキシシリル基又はジアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物である。
【0043】
原料(B-2)の例としては、以下の化合物が挙げられる。なお、式中、「Me」及び「Et」はそれぞれ、メチル基及びエチル基を示す。
HSi(OMe)
HSi(OEt)
HSiMe(OMe)
HMeSiOSiMeSi(OMe)
HMeSiOSiMeSi(OEt)
HMeSiOSiMeSiMe(OMe)
HMeSiOSiMeSi(OMe)
HMeSiOSiMeSiMe(OMe)
HMeSiOSiMe12Si(OMe)
【0044】
原料(B-2)の添加量は限定されるものではないが、様々な実施形態において、原料(B-2)中のケイ素原子結合水素原子の量が、原料(B-1)中のアルケニル基1モル当たり、0.1~0.9モル、任意に0.2~0.8モル、又は任意に0.3~0.7モルとなる量である。この理由は、成分(B-2)の添加量が上記範囲内であるとき、特に、1分子中に、1つ以上のアルケニル基及び1つ以上のケイ素原子結合アルコキシ基を有する、オルガノポリシロキサンを得ることができるからである。
【0045】
ヒドロシリル化反応は、ヒドロシリル化触媒の存在下で加熱することによって促進される。ヒドロシリル化触媒の例としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金黒、及び白金担持シリカなどの、白金系触媒が挙げられる。
【0046】
組成物中の成分(B)の含有量は、成分(A)中のメルカプト(-SH)基の量が、成分(B)及び(C)中のアルケニル基1モル当たり、約0.1~約10モル、任意に約0.5~約5モル、又は任意に約0.5~約1.5モルの範囲となるものである。この理由は、成分(B)の量が前述の範囲内である場合、十分な硬化につながり、良好な機械的特性をもたらすからである。
【0047】
成分(C)は、任意的又は任意による成分であり、1分子中に2つ以上のアルケニル基を有し、ケイ素原子結合アルコキシ基を含まない、オルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び反応性の観点からは、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基のうちの1つ以上が存在する。
【0048】
成分(C)中のケイ素原子に結合したアルケニル基以外の基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などの、炭素数1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などの、炭素数6~12個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基などの、炭素数7~12個のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などの、炭素数1~12個のハロゲン置換アルキル基が挙げられる。特定の実施形態において、経済性及び耐熱性の観点からは、メチル基が存在する。
【0049】
特定の実施形態において、成分(C)は、成分(B)及び(C)の総質量の、約0~約80質量%、任意に約10~約80質量%、任意に約20~約80質量%、任意に30~約80質量%、又は任意に約40~約80質量%の量で存在する。この理由は、成分(C)の量が前述の範囲内である場合、十分な硬化につながり、良好な機械的特性をもたらすからである。
【0050】
成分(D)は、組成物の光硬化を促進するための光開始剤である。成分(D)は、架橋反応を促進するのに有効な任意の公知のフリーラジカル型光開始剤から選択されるものでよい。成分(D)の例としては、ジエトキシアセトフェノン(DEAP)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジエトキシキサントン、クロロ-チオキサントン、アゾ-ビスイソブチロニトリル、N-メチルジエタノールアミンベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
成分(D)の含有量は、光硬化のための有効量である。様々な実施形態において、成分(D)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、約0.01~約5質量部、任意に約0.1~約5質量部、又は任意に約0.1~約3質量部の量で存在する。この理由は、成分(D)の量が範囲の下限を超える場合、得られた組成物は、紫外線によって十分に硬化し、しかし他方で、その量が前述の範囲の上限未満の場合、得られた硬化物の機械的特性が向上するからである。
【0052】
成分(E)は、組成物の水分硬化を促進するための縮合触媒である。成分(E)の例としては、テトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)チタンなどのチタン化合物;テトラ(イソプロポキシ)ジルコニウム、テトラ(n-ブトキシ)ジルコニウム、テトラ(t-ブトキシ)ジルコニウム、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトネート)ジルコニウムなどのジルコニウム化合物;ジメチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエートなど、及び第一スズオクトエートなどの、スズ化合物をはじめとする、有機金属触媒が挙げられる。
【0053】
成分(E)の含有量は、水分硬化のための有効量である。様々な実施形態において、成分(E)は、成分(A)~(F)の総質量100質量部当たり、約0.01~約10質量部、任意に約0.05~約10質量部、又は任意に約0.05~約5質量部の量で存在する。この理由は、成分(E)の量が範囲の下限を超える場合、得られた組成物が水分により十分に硬化し、量が前述の範囲の上限未満である場合、得られた組成物の表面硬化率が改善されるからである。
【0054】
成分(F)は、組成物の長期安定性を向上させるためのエポキシ官能性化合物である。成分(F)の例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシランなどのエポキシ官能性有機ケイ素化合物、及び、メチルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ官能性非ケイ素化合物が挙げられる。特定の実施形態において、接着特性の観点からは、エポキシ官能性有機ケイ素化合物のうちの1つ以上が存在する。
【0055】
成分(F)の含有量は、長期保存安定性のための有効量である。様々な実施形態において、成分(F)は、成分(A)~(F)の合計100質量部当たり、約0.01~約10質量部、任意に約0.05~約10質量部、又は任意に約0.05~約5質量部の量で存在する。この理由は、成分(F)の量が範囲の下限を超える場合、得られた組成物が十分な長期保存安定性を有し、量が前述の範囲の上限未満である場合、得られた硬化物の機械的特性が向上するからである。
【0056】
組成物はまた、硬化機構を阻害しない限りにおいて、1つ以上の他の添加剤を含有してもよい。例えば、充填剤、接着促進剤、樹脂、顔料、水分捕捉剤、蛍光染料、阻害剤などの従来からの添加剤が含まれてもよい。
【0057】
ヒュームドシリカ又は石英などの充填剤が想定される。充填剤は、成分(A)~(F)の総質量の、最大約30質量%、例えば約4~約20質量%の量で存在してもよい。
【0058】
阻害剤は、成分(A)~(F)の総質量の、最大約5重量%、例えば約0.001~約1質量%の量で存在してもよい。阻害剤の具体的な量については、組成物の安定性をもたらすために、又は改善するために、所与の組成物においてバランスをとる必要がある。このような量は、日常的な実験によって決定することができる。
【0059】
接着促進剤は、成分(A)~(F)の総質量の、最大約5質量%、例えば約0.5質量%の量で存在してもよい。
【0060】
組成物は、それぞれの成分を一緒に混合して、実質的に均質又は均一にブレンドされた材料を得ることによって調製することができ、紫外線及び水分に対して非透過性の容器内に保存することができる。概して、単一パッケージの系が利用されるが、所望であれば2部パッケージの系が使用されてもよい。単一パッケージの製造物は、分散されるとすぐにも使用可能な状態のものであり、他方、2部系は概して、分散された部分の混合が使用前に必要とされる。
【0061】
組成物は、上述のように、ポッティング用途、並びに、電子部品及び他の感熱材料をはじめとする様々な基材用のコーティング、封入材、ゲルに使用することができる。
【0062】
有用なUV線源としては、様々な紫外線波長帯において紫外線エネルギーを発するように設計された従来からの水銀蒸気ランプ、LED硬化用ランプなどが挙げられる。例えば、有用な放射線波長範囲としては、200~400nmが挙げられる。
【0063】
UV硬化は、概して、40ミリワット/cm(「mW/cm」)~約300mW/cmの範囲、例えば約70mW/cm~約300mW/cmの範囲でなされる。
【実施例
【0064】
ここで、実施例及び比較例を使用して、本発明の二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物について詳細に説明する。なお、式中、「Me」、「Vi」、及び「Thi」はそれぞれ、メチル基、ビニル基、及び3-メルカプトプロピル基を示す。二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物の特性は、以下のようにして測定した。
【0065】
<粘度>
全ての二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度は、ブルックフィールドコーンプレート型粘度計(モデルHBDVII+P)を使用してコーンスピンドルCP-40により測定した。
【0066】
オルガノポリシロキサンの粘度は、ASTM D1084に従ってブルックフィールドDV1粘度計を使用して23±2℃で測定した。
【0067】
<OMe、SH、及びC=Cのピーク面積>
IR分光法及びラマン分光法を適用して、OMe、SH、及びC=Cのピークを解析し、硬化化学について理解する。IRにおける2841cm-1のピークは、-OMeについての特徴的なバンドであり、ラマンスペクトルにおける2582cm-1のピークは、-SH基の特徴的なバンドであり、これは、2498cm-1に位置するSi-Me変角バンドの倍音に対して正規化され、ラマンスペクトルにおける1597cm-1のピークは、C=Cピークの特徴的なバンドである。
【0068】
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物について、ダイヤモンド結晶を備えた一回反射の減衰全反射付属品を使用して、IR分光法により試験した。表面分析中の侵入深さは、1000cm-1付近で2μmと推定された。IRスペクトルを、Thermo Scientific Nicolet6700FTIR分光計により、64回の走査を用い4cm-1の分解能で収集した。
【0069】
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物について、532nmダイオードレーザー及び10倍対物レンズを備えたラマンマイクロプローブ分光計(Thermofisher DXR)を用いて、ラマン分光法により試験した。ラマンスペクトルを、合計300秒の走査(1秒×300の積算)によって、2cm-1の分解能及び10.0mWのレーザー出力で収集した。
【0070】
<二重硬化性>
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物について、水銀灯によるColight UV-6を使用して、UV強度300mW/cm、線量2J/cmで紫外線照射にさらした。照射後、UV曝露領域を、不粘着になるまで硬化した。影領域を硬化すると、22℃/42%RHで24~48時間の硬化後、不粘着になる。
【0071】
<ショアA硬度>
上述の硬化物の硬度を、ショアAデュロメータ(CV-71200、INST&MFG Co製)によって測定した。
【0072】
<参考例1>
2LのAtlasバッチ反応器内で、638.1gの分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(平均M.W.=8,000、ビニル含有量=1.2質量%)を、40.5gのHMeSiOSiMeSi(OMe)と混合した。混合物を350rpmで10分間撹拌し、次いで10ppmのPt触媒を混合物に添加した。反応混合物を窒素下、室温で3時間撹拌した。試料の赤外スペクトルは、2110cm-1でのSiHピークの完全な喪失を示し、これはヒドロシリル化反応の完了を示すものであった。シロキサン上のビニル基の一部は、水分硬化性トリメトキシシリル含有官能基に変換された。このトリメトキシシリル及びビニル官能性ジメチルポリシロキサンは、実質的に、1分子中に、1つ以上のビニル基及び1つ以上のトリメトキシシリル基を有し、ビニル基の含有量は0.6質量%であり、トリメトキシシリル基の含有量は0.8質量%である。
【0073】
<実施例1>
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、16.8質量部のジメチルシロキサン×メチル(3-メルカプトプロピル)シロキサンコポリマーであって、SH基が3.5質量%、粘度が80mPa・sのものと、19.0質量部のオルガノポリシロキサンであって、MeViSiO1/2、MeSiO2/2、及びSiO4/2からなり、ビニル基が1.2質量%、粘度が120mPa・sのものと、26.0質量部の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであって、ビニル基が0.45質量%のものと、参考例1で得た22.7質量部のトリメトキシシリル及びビニル官能性ジメチルポリシロキサンと、12.2質量部のヘキサメチルジシラザン処理ヒュームドシリカと、を100mLの歯科用カップ内でともにブレンドすることによった。混合物を1000rpmで20秒間混合し、次いで2000rpmで30秒間混合した。予混合した、1質量部のメチルトリメトキシシランと、0.05質量部のブチル化ヒドロキシトルエンと、0.5質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、を添加した。混合物を、2000rpmで30秒間混合した。最後に、0.3質量部の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンと、0.15質量部のジ-イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)と、を添加し、組成物を2000rpmで30秒間混合した。次いで、試料を30mLのシリンジに入れ、脱気し、次いでアルミニウムバッグ内に真空密封した。
【0074】
<実施例2>
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、1.0質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加したこと以外、実施例1に記載のようにした。
【0075】
<実施例3>
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、2.0質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加したこと以外、実施例1に記載のようにした。
【0076】
<比較例1>
比較目的のために、二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかったこと以外、実施例1に記載のようにした。
【0077】
実施例1~3及び比較例1のこれらの二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、50℃で21日間の加速エージング試験に供した。組成物の粘度を、エージング前及び後に測定した。結果を表1に示す。エージング前及び後のOMe、SH、及びC=Cピーク面積も、表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
<硬化物の接着>
実施例1~3及び比較例1の二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、クロスカット試験によって評価した。コーティングを作製するには、FR4ボード上で8milのエージング配合物を引き伸ばし、続いて2J/cmのUV曝露、及び室温(「RT」)硬化を5日間行うことによった。クロスカット試験結果を、表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
結果は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがチオール-エンによるUV及び水分二重硬化組成物の貯蔵寿命を劇的に改善したことについて明らかに示している。加えて、表2のクロスカット試験は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがまた、組成物の接着を劇的に改善したことについても示している。
【0082】
<実施例4>
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、16.8質量部の、ジメチルシロキサンとメチル(3-メルカプトプロピル)シロキサンとのランダムコポリマーであって、SH基が3.5質量%、粘度が80mPa・sのものと、19質量部のオルガノポリシロキサンであって、MeViSiO1/2、MeSiO2/2、及びSiO4/2からなり、ビニル基が1.2質量%、粘度が120mPa・sのものと、26.4質量部の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであって、ビニル基が0.45質量%のものと、参考例1で得た26.3質量部のトリメトキシシリル及びビニル官能性ジメチルポリシロキサンと、12.2質量部のヘキサメチルジシラザン処理ヒュームドシリカと、を100mLの歯科用カップ内でともにブレンドすることによった。混合物を1000rpmで20秒間混合し、次いで2000rpmで30秒間混合した。予混合した、0.3質量部の1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトンと、0.85質量部のメチルトリメトキシシランと、0.05質量部のブチル化ヒドロキシトルエンと、0.5質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、を添加した。混合物を、2000rpmで30秒間混合した。最後に、0.12質量部のジ-イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)を歯科用ミキサに添加し、ブレンドを2000rpmで30秒間混合した。次いで、試料を30mLのシリンジに入れ、脱気し、次いでアルミニウムバッグ内に真空密封した。
【0083】
<比較例2>
比較目的のために、二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加しなかったこと以外、実施例4に記載のようにした。
【0084】
<比較例3>
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、18.4質量部の、ジメチルシロキサンとメチル(3-メルカプトプロピル)シロキサンとのランダムコポリマーであって、SH基が3.5質量%、粘度が80mPa・sのものと、19.0質量部のオルガノポリシロキサンであって、MeViSiO1/2、MeSiO2/2、及びSiO4/2からなり、ビニル基が1.2質量%、粘度が120mPa・sのものと、26.1質量部の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであって、ビニル基が0.45質量%のものと、参考例1で得た26.1質量部のトリメトキシシリル及びビニル官能性ジメチルポリシロキサンと、12.2質量部のヘキサメチルジシラザン処理ヒュームドシリカと、を100mLの歯科用カップ内でともにブレンドすることによった。混合物を1000rpmで20秒間混合し、次いで2000rpmで30秒間混合した。予混合した、0.3質量部の1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトンと、0.85質量部のメチルトリメトキシシランと、0.05質量部のブチル化ヒドロキシトルエンと、0.5質量部の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと、を添加し、混合物を2000rpmで30秒間混合した。最後に、0.12質量部のジ-イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)を添加し、組成物を2000rpmで30秒間混合した。次いで、試料を30mLのシリンジに入れ、脱気し、次いでアルミニウムバッグ内に真空密封した。比較例2及び3のこれらの二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、室温で30日間のエージング、続いて50℃で14日間の加速エージング試験に供した。組成物の粘度を、エージング前及び後に測定した。結果を表3に示す。エージング前及び後のOMe、SH、及びC=Cピーク面積も、表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
結果は、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの添加により、配合物の保存安定性が低下したことを示している。
【0087】
<実施例5>
二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、16.8質量部の、ジメチルシロキサンとメチル(3-メルカプトプロピル)シロキサンとのランダムコポリマーであって、SH基が3.5質量%、粘度が80mPa・sのものと、19.0質量部のオルガノポリシロキサンであって、MeViSiO1/2、MeSiO2/2、及びSiO4/2からなり、ビニル基が1.2質量%、粘度が120mPa・sのものと、26.0質量部の分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであって、ビニル基が0.45質量%のものと、参考例1で得た22.7質量部のトリメトキシシリル及びビニル官能性ジメチルポリシロキサンと、12.2質量部のヘキサメチルジシラザン処理ヒュームドシリカと、を100mLの歯科用カップ内でともにブレンドすることによった。混合物を1000rpmで20秒間混合し、次いで2000rpmで30秒間混合した。予混合した、2質量部のメチルトリメトキシシランと、0.15質量部のブチル化ヒドロキシトルエンと、0.5質量部の2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランと、を添加した。混合物を、2000rpmで30秒間混合した。最後に、0.3質量部の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンと、0.15質量部のジ-イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)と、を添加し、組成物を2000rpmで30秒間混合した。次いで、試料を30mLのシリンジに入れ、脱気し、次いでアルミニウムバッグ内に真空密封した。
【0088】
<比較例4>
比較目的のために、二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製するには、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなしにしたこと以外、実施例5に記載のようにした。実施例5及び比較例4の二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、55℃で28日間の加速エージング試験に供した。組成物の粘度を、エージング前及び後に測定した。結果を表4に示す。エージング前及び後のOMe、SH、及びC=Cピーク面積も、表4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
結果は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの添加により、配合物の貯蔵寿命が改善されたことを示している。
【0091】
産業上の利用可能性
本開示の二重硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、紫外線にさらすことで、及び空気中の水分と接触することで室温にて硬化し、硬化中に接触した基材への良好ないし優れた接着を示し、かつ良好ないし優れた破断応力及び/又は伸びなどの機械的特性を示す硬化物を形成するので、電気/電子機器のコンフォーマルコーティングとして有利に使用される。
図1
図2
図3