IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許7442530対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法
<>
  • 特許-対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法 図1
  • 特許-対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法 図2
  • 特許-対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法 図3
  • 特許-対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法 図4
  • 特許-対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20240226BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
A61B5/1455
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021534999
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2019084535
(87)【国際公開番号】W WO2020126713
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】18213865.1
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】デ ハーン ジェラルド
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/190423(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/029127(WO,A1)
【文献】特表2009-533121(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0108928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の生命兆候を特定するためのシステムであって、前記システムが、
異なる方向から前記対象者を含むシーンに、出射スペクトルの波長範囲が少なくとも一部重なり、かつ、異なる形態により変調された電磁放射波を出射する2つの放射源と、
前記対象者を含む前記シーンから電磁放射波を検出するための、及び、検出された前記電磁放射波から検出信号を導出するためのセンサーと、
2つの復調された信号を取得するために前記検出信号を復調する復調ユニットであって、前記2つの復調された信号の各々が、前記2つの放射源のうちの1つにより出射された電磁放射波を変調するために使用される変調のうちの1つに対応した復調を使用して異なる形態により復調される、復調ユニットと、
処理ユニットとを備え、
前記処理ユニットが
調された前記検出信号を、前記対象者の皮膚を通して透過された、又は前記対象者の皮膚で反射された電磁放射波を主に表す皮膚信号と、前記対象者の皮膚を通して透過されたものでも、前記対象者の皮膚で反射されたものでもない電磁放射波を主に表す非皮膚信号とに分解し、
前記皮膚信号から前記対象者の生命兆候を特定する、
システム。
【請求項2】
前記皮膚信号の変動が、前記生命兆候を表す、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記処理ユニットが、復調された前記検出信号を前記皮膚信号と前記非皮膚信号とに分解するために、ブラインドソース分離、特に、独立成分分析及び/又は主成分分析を使用し、前記皮膚信号が、質尺度、特に、スペクトルの平坦さ、ゆがみ、正規化されたFFTスペクトルにおける最高ピーク、及び/又は信号対ノイズ比の使用により選択される、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記放射源が、400nmから1000nmの範囲内の同じ出射スペクトルを含む電磁放射波を出射する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記放射源の各々が、サブスペクトルを含む電磁放射波を出射するための1つ又は複数の放射要素を備え、前記放射要素の前記サブスペクトルの組み合わせが、前記放射源の前記出射スペクトルを形成する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記放射源が、振幅変調された電磁放射波を出射し、各前記放射源の振幅変調が、異なる周波数及び/又は位相変調を使用する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記電磁放射波を検出するための前記センサーが、カメラであり、
前記2つの放射源が、周期的な生命兆候である脈拍の最高周波数より大きく異なる、異なる変調周波数を使用して異なる形態により変調された電磁放射波を出射し、最高変調周波数が、前記センサーの画像レートから最大予測脈拍数を減算したものの半分未満である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記放射源が、同じ周波数であるが異なる位相により変調された電磁放射波を出射する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記復調ユニットが、前記放射源の数に応じた数の出力信号を出力する1つ又は複数の振幅変調型復調器を備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記復調ユニットが、更に、前記復調された信号の周波数範囲を、特定された前記生命兆候の関連周波数に制限するために、前記復調された信号を正規化し、及び/又は帯域通過フィルタ処理し、前記復調された信号の正規化が、前記復調された信号の各々を前記復調された信号の時間平均により割ること、又は前記復調された信号の対数を取ることを伴う、
請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記復調ユニットが、合成波形生成器を更に備え、
前記放射源が、正弦波形と周波数多重化され、
前記復調ユニットが、前記検出信号の変調周波数を検出することと、固定の振幅と検出された周波数とをもつ正弦波形を生成する前記合成波形生成器を使用して、分析信号を生成することとにより、前記検出信号から変調波形を復元する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
両方の前記放射源の放射要素が同じであり、
すべての前記放射要素が、異なる形態により変調された電磁放射波を出射し、
前記復調ユニットが、前記復調された信号を取得するために、前記センサーにより検出された前記検出信号を復調し、前記復調された信号の各々が、1つの前記放射要素により出射された前記電磁放射波から導出され、
前記処理ユニットが、前記皮膚信号から生命兆候を抽出するために、クロミナンスベースの方法、血液ボリュームパルスシグネチャベースの方法、皮膚に直交した平面の方法、又は適応型血液ボリュームパルス方法のような、多スペクトルパルス分離方法のうちの何れかを使用して、前記放射要素により1つのサブスペクトルを含んで出射された電磁放射波に対応した前記皮膚信号を、前記放射要素により出射された別のサブスペクトルを含む電磁放射波に対応した前記皮膚信号と組み合わせる、
請求項3に従属する請求項5に記載のシステム。
【請求項13】
対象者の生命兆候を抽出する方法であって、前記方法が、
2つの放射源により、異なる方向から、前記対象者を含むシーンに、出射スペクトルの波長範囲が少なくとも一部重なり、かつ、異なる形態により変調された電磁放射波を出射するステップと、
前記対象者を含む前記シーンから電磁放射波を検出し、検出された前記電磁放射波から検出信号を導出するステップと、
2つの復調された信号を取得するために前記検出信号を復調するステップであって、前記2つの復調された信号の各々が、前記2つの放射源のうちの1つにより出射された前記電磁放射波を変調するために使用される変調のうちの1つに対応した復調を使用して、異なる形態により復調される、復調するステップと
調された前記検出信号を、前記対象者の皮膚を通して透過された、又は前記対象者の前記皮膚で反射された電磁放射波を主に表す皮膚信号と、前記対象者の前記皮膚を通して透過されたものでも、前記対象者の前記皮膚で反射されたものでもない電磁放射波を主に表す非皮膚信号とに分解するステップと、
前記皮膚信号から前記対象者の生命兆候を特定するステップと、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の生命兆候の特定は人の現在の状態の指標として機能し、例えば病院だけでなく家においても、又は更には健康、レジャー、及びフィットネス環境において特に関連性のある改善された/適時の医療処置を可能にする。
【0003】
生命兆候を測定する1つの手法がプレチスモグラフィーである。この技術は、心拍数(HR)、呼吸速度(RR)、又は(末梢又は脈動)血液酸素飽和度(SpO2)などの生命兆候を測定するために確立されている。この技術の基礎となるアイデアは臓器又は体の部位のボリューム変化の測定であり、ボリューム変化は人の心拍ごとに変調される。
【0004】
光学的に取得されたプレチスモグラフィーは、フォトプレチスモグラフィ(PPG)と呼ばれ、近年、ますます多くの関心を集めている。このようなPPGを取得するよく知られた手法は、皮膚を照らして、光吸収の変化を測定する脈波型酸素飽和度計を使用することによるものである。透過又は反射モードにおいて実施される光学的測定技術は、典型的には、皮膚及び組織におけるこの特定の電磁放射波の大きい侵入深さに起因した可視放射光又は赤外線放射光を使用する。これらの波長に対する血液の吸収は、周辺組織の吸収より大きい。したがって、心周期中における血液ボリュームの変動は、透過又は反射に相応に影響を与え、例えば脈拍数(心拍数)といった生命兆候を抽出することを可能にする。血液酸素飽和度(SpO2)は、異なる波長をもつ電磁放射波の透過率及び/又は反射率を評価することにより特定され得、結果的に、赤色放射光及び赤外線放射光の組み合わせが典型的に使用される。
【0005】
従来のPPGデバイス、例えば言及されている脈波型酸素飽和度計は、対象者の皮膚、例えば指先に装着される。他のものは、例えば耳たぶ又は額に装着される。この技術は医療処置の分野において確立されているが、その特有の欠点も抱えている。例えば酸素濃度計といったデバイスは対象者に直接装着され、任意のケーブルが動くための自由度を制限し、患者及び医療補助者のワークフローを妨げるので、何人かの患者は本技術を不快で目障りだと感じる。
【0006】
何人かの患者にとって、接触デバイスは不快なだけでなく不適切でもある。例えば新生児集中治療室における乳幼児などの脆弱な皮膚をもつ患者に対してこれが当てはまる。これらの患者はリモートフォトプレチスモグラフィ(rPPG)と呼ばれる生命兆候の非接触光学的監視の恩恵を大きく受ける。rPPGデバイス及びシステムは目立たず、医療用途及び非医療用途によく適している。電磁放射波は患者を通して透過され、又は患者により反射され、センサーにより検出される。検出された信号は皮膚の反射率又は透過率の小さい変調に基づいて生命兆候を抽出するために更に処理される。
【0007】
従来の接触式PPGと比べたときのrPPGの欠点は、rPPG信号強度がより低いこと、及び、特に例えば乳幼児といった患者が定期的に動くことを考慮した場合に、監視される対象者の適切な皮膚エリアの検出及び追跡が困難を伴うことである。例えば照明技術、信号のフィルタ処理、又は適切な皮膚検出を使用した改善された技術を考慮しない場合、rPPGの信号は、例えば背景の照明、又は患者の非皮膚部分からの反射された/透過された信号といった様々な発生源によりもたらされるノイズを多く含むので、rPPGの信号は多くの場合、有益ではない。したがって、ノイズ及び/又は運動を考慮した場合でも信頼性の高い結果を取得するための、対象者の少なくとも1つの生命兆候を特定するための改善されたシステム及び方法が必要とされる。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0306487(A1)号は、PPGを使用することにより脈拍数、呼吸速度、及び血液成分を測定するための方法及び装置を開示している。変調されるPPGデバイスは、透過モードにおいて使用される場合にノイズの低減を通して信頼性を改善しなければならない。加えて、PPGデバイスが反射モードにおいて使用される場合、光スペクトルの青色/緑色部分における光の選択は、ノイズの低減及びAC成分信号振幅の増加を通して改善された信頼性をもたらさなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
監視される対象者の適切な皮膚エリアの改善された検出及び追跡に基づいて、より増加したPPG信号により対象者の生命兆候を特定するためのシステム及び方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によると、
異なる方向から対象者を含むシーンに少なくとも1つの同じ波長を含む実質的に同じ出射スペクトルを含む異なる形態により変調された電磁放射波を出射する2つの放射源と、
対象者を含むシーンから電磁放射波を検出するための及び、検出された電磁放射波から検出信号を導出するためのセンサーと、
2つの復調された信号を取得するために検出信号を復調するように構成された復調ユニットであって、2つの復調された信号の各々が、2つの放射源のうちの1つにより出射された電磁放射波を変調するために使用される変調のうちの1つに対応した復調を使用して異なる形態により復調される、復調ユニットと、
処理ユニットであって、
- 2つの復調された信号からの情報を組み合わせることにより対象者の生命兆候を特定することと、
- 復調された検出信号を、対象者の皮膚を通して透過された、又は対象者の皮膚で反射された電磁放射波を主に表す皮膚信号と、対象者の皮膚を通して透過されたものでも、対象者の皮膚で反射されたものでもない電磁放射波を主に表す非皮膚信号とに分解することと、
- 皮膚信号から対象者の生命兆候を特定することと、
をするように構成された、処理ユニットと、
を備える、対象者の生命兆候を特定するためのシステムが提示される。
【0011】
本発明の更なる態様において、対応する方法が提示される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態が従属請求項において定義される。請求項に記載された方法は、請求項に記載されているシステム、特に、従属請求項において規定されているもの、及び、本明細書において開示されているものと同様の、及び/又は同一の好ましい実施形態を包含することが理解されなければならない。
【0013】
本発明により解決される1つの主な課題は、監視される対象者の適切な皮膚エリアの検出及び追跡といった、リモートPPG技術の戻りの問題である。従来技術のカメラベースの技術は、PPG信号を抽出するために対象者から皮膚エリアを選択する。典型的には、顔検出又は何らかの形態の皮膚色セグメント分けが使用される。色セグメント分けは、コントラストが多くの場合に限界に近い近赤外(NIR)において問題があるのに対し、顔検出技術は概して、視認性又は顔の特徴を前提としており、この前提は、患者がマスクを装着しており、又は口又は鼻に挿入された管を含むといったヘルスケア環境では多くの場合に問題がある。更に、カメラベースの方法は、この画像が別の人により見られることができないことの保証を伴わずに対象者をイメージングすることを少なくとも部分的に必要とし、このことがプライバシー上の懸念をもたらす。
【0014】
課題を解決するための本発明の本質的な要素は、対象者を含むシーンを非一様に照らすことである。したがって、異なる角度によりシーンを照射する、及び、異なる形態(例えば異なる周波数又は位相)により変調される異なる放射源が使用される。カメラと単一要素センサーとの両方に対して、これは、PPG抽出のために分解され、及び連続的に使用され得る皮膚反射及び非皮膚反射の異なる混合体に(復調後に)アクセスすることを可能にする。特に、単一要素ディテクターに対して、この提案は、ディテクター信号における皮膚反射と非皮膚反射とを(完全にではないかもしれないが少なくとも部分的に)分離する比類のない機会である。カメラに対しては、セグメント分けなどの代替例が存在するが、これらは多くの場合、特にスペクトルのNIR範囲において無視できない。
【0015】
2つの放射源は、異なる方向から対象者を含むシーンを照らすように構成されており、及び異なる形態により変調されるだけでなく、少なくとも1つの同じ波長を含む実質的に同じ出射スペクトルを含む。したがって、第1の放射源により出射された出射スペクトルと第2の放射源により出射された出射スペクトルとは少なくとも1つの同じ波長を含み、すなわち、両方のスペクトルが重なる。本コンテキストにおいて、少なくとも1つの同じ波長は、スペクトルが、更には幾つかの同じ波長、又は1つ又は複数の重なった(同じ)波長範囲を含むことを意味する。
【0016】
このコンテキストにおいて、「生命兆候」という用語は、厳密な意味における生命兆候だけでなくSvO2又はSaO2などの他の生理学的パラメータも包含する「生理学的パラメータ」という意味に広く理解されるべきであることに注意が必要である。したがって、処理ユニットは、特にSpO2、SvO2、HBO2、HBCO、METHB、ビリルビンといった、血液成分又は化学種のインジケーター又は濃度を生命兆候として特定するように構成され、脈動成分は心周期又は呼吸サイクルを反映する。
【0017】
反射構成の場合、センサーにより検出される放射波は、例えば衣服及び髪といった対象者の非皮膚部分、及び、例えば対象者の背景といった周辺環境からの反射によりもたらされる。対象者の皮膚を通して透過された、又は対象者の皮膚で反射された電磁放射波を主に表す皮膚信号は、このコンテキストにおいて、電磁放射波のうちで主に寄与するものが対象者の皮膚を通して透過された、又は対象者の皮膚で反射されたものであることを意味する。したがって、非皮膚信号は、非皮膚部分の寄与が大きい。
【0018】
特に、皮膚反射信号の変動(AC部分)は生命兆候を表し、又は、生命兆候を導出するために使用され得る。例えば、それは、SpO2の信頼性の高い抽出を可能にするために皮膚領域に対して複数の波長における(正確な)AC/DC推定結果を必要とするとともに、AC変動自体はパルス信号に対応し、パルス信号から更に脈拍数が導出される。
【0019】
別の実施形態において、処理ユニットは、復調された検出信号を皮膚信号と非皮膚信号とに分解するために、ブラインドソース分離(BSS)、特に、独立成分分析(ICA)、及び/又は、主成分分析(PCA)を使用するように構成され、皮膚信号は、質尺度、特に、スペクトルの平坦さ、ゆがみ、正規化されたFFTスペクトルにおける最高ピーク、及び/又は信号対ノイズ比の使用により選択される。この実施形態は、反射された、又は透過された放射波が2つの異なる形態により変調された電磁放射波の混合物を含むことを利用し、各々が、皮膚及び非皮膚部分で反射された、又は皮膚及び非皮膚部分を通して透過された放射波の異なる混合物を含む。次に、BSSは、パルスを入手するために異なるRGBトレースを無相関の、又は独立した信号源に分離するために、同様の、又は異なる基準又は質尺度を使用する。この目的のためのBSSベースの方法の適用は、例えば、W.Wangら、「Algorithmic principles of remote-PPG」、IEEE Transactions on Biomedical Engineering」、64(7)、1479、2017において更に説明されている。
【0020】
放射源は、400nmから1000nmの範囲内の実質的に同じ光スペクトルをもつ電磁放射波を出射するように構成される。VIS及びNIR範囲は理想的には生命兆候を特定することに適しており、好ましくは、放射源の各々が、異なるサブスペクトルを含む電磁放射波を出射する1つ又は複数の放射要素を備える。これら放射要素のサブスペクトルの組み合わせは、好ましくは400nmから1000nmの範囲内の光スペクトルをもつ放射源の出射スペクトルを形成する。したがって、例えば、450nmにおいて出射する青色LED、550nmにおいて出射する緑色LED、及び650nmにおいて出射する赤色LEDといったLEDの組み合わせが、シーンを照らす複数の波長とともに使用される。この実施形態によると、放射源の放射光は対象者により「白色」光として知覚される。
【0021】
放射源の各々が1つ又は複数の放射要素を備えるこのような種類の実施形態によると、処理ユニットは皮膚信号から生命兆候を抽出するために、クロミナンスベースの方法、CHROM、血液ボリュームパルス、PBV、皮膚に直交した平面、POS、又は適応型血液ボリュームパルス、APBVのうちの任意の1つを使用することにより、放射要素により1つのサブスペクトルを含んで出射された電磁放射波に対応した皮膚信号を、放射要素により出射された別のサブスペクトルを含む電磁放射波に対応した皮膚信号と組み合わせるように構成される。このようなサブスペクトルは、別々の放射要素により出射されるとは限らず、広範囲の(例えば白色太陽光の)放射源から出射された放射波を使用して、異なる光学フィルタを備えるセンサーによりもたらされてもよい。
【0022】
これらの方法の詳細は、W.Wangら、「Algorithmic principles of remote-PPG」、IEEE Transactions on Biomedical Engineering」、64(7)、1479、2017、及び、M.van Gastel、S.Stuijk、及びG.de Haan、「New principle for measuring arterial blood oxygenation,enabling motion-robust remote monitoring」、Scientific Reports、6、38609、2016において説明されており、更に参照により部分的に本明細書に組み込まれる。CHROMは非常に信頼性の高い方法であるが、可視光(400~700nm)に対して特に適用可能であり、ホワイトバランスをとるための標準化された皮膚色を仮定することによるクロミナンス信号の線形結合に基づくのに対し、PBVはすべての波長選択肢に適用可能であり、RGB測定結果における運動ノイズからパルス誘起色変化を明示的に区別するために、異なる波長における血液ボリューム変化のシグネチャ使用を使用する。血液の組成が変化した場合に、PPG信号のこの波長依存性が変動する。特に、それは動脈血の酸素飽和度により強く影響を受ける。この依存性は、適応型PBV方法(APBV)と呼ばれている運動ロバストなリモートSpO2監視システムを実現するために使用され得、M.van Gastel、S.Stuijk、及びG.de Haan、「New principle for measuring arterial blood oxygenation,enabling motion-robust remote monitoring」、Nature Scientific Reports、Nov.2016において詳細に説明されている。皮膚に直交した平面(POS)は、パルス抽出のために使用される時間的に正規化されたRGB空間における皮膚トーンに直交した平面を規定する。
【0023】
一実施形態において、放射源は振幅変調された電磁放射波を出射するように構成される。各放射源の振幅変調は、異なる周波数及び/又は位相変調を使用する。これは、結果として逆多重化/復調され得る、センサーによる検出された信号の異なる周波数/位相多重化をもたらす。
【0024】
電磁放射波を検出するためのセンサーがカメラであり、2つの放射源により出射された異なる形態により変調された放射波が、異なる周波数を使用して振幅変調される特定の実施形態では、異なる変調周波数は、周期的な生命兆候の最高周波数より大きく異なり、及び最高変調周波数は、光センサーの画像レートから最大予測脈拍数を減算したものの半分未満である。したがって、変調周波数の差は、カメラの画像レートを考慮して、生命兆候の時間依存性を信頼性高く分解するように適切に選択される。特定の実施形態において、変調周波数のうちの1つは0Hzであり、すなわち、この場合において、放射源のうちの1つが連続的な放射波を出射するのに対し、他方は時間的に変化する放射波を出射する。この特定の選択肢は、放射源のうちの1つとして周辺光(例えば日光)の使用を可能にする。
【0025】
別の実施形態によると、放射源は、同じ周波数により変調された電磁放射波を出射するように構成されるが、位相オフセットを使用する。これは、他の放射器を変調する変調信号に対して、電磁放射波の強度を特定する変調信号のうちの1つを遅延させるために時間遅延を導入することにより達成される。
【0026】
概して、周波数又は位相多重化をもたらす変調が、検出された信号におけるノイズを低減するために使用され、検出された信号を異なる放射源の寄与部分に分離することを可能にする。これは、復調ユニットにより達成される。
【0027】
好ましくは、復調ユニットは、放射源の数に応じた数の出力信号を出力するように構成された1つ又は複数の振幅変調型(AM)復調器を備える。復調ユニットは、異なる形態により変調されたソース信号に対する異なる復調を特に備える。異なる角度によりシーンを照らす2つより多い異なる形態により変調された放射源を使用することが有益であり、その理由は、これが、例えばシーンにおける運動に起因して発生する、より独立した成分の分離を可能にするからである。したがって、2つより多い放射源を使用してすることは、改善された信号対ノイズ比をもつ信号を取得することを可能にするが、更に、演算負荷を大きくする。
【0028】
別の実施形態による、復調ユニットは、復調された信号の周波数範囲を、特定された生命兆候の関連周波数に制限するために、復調された信号を正規化するように、及び/又は帯域通過フィルタ処理するように更に構成され、復調された信号の正規化は、復調された信号の各々を復調された信号の時間平均により割ること、又は復調された信号の対数を取ることを伴う。場合によっては、抽出における組み合わせ係数の修正後に対数が取られる。
【0029】
BSSが個々のセンサー信号の重み付けをもたらすことにより、各センサー信号が、異なる放射源の出射された電磁放射波の透過又は反射に対応する。この重み付けは、組み合わせ係数(各放射源に対して1つ)を使用する。結果として、信号に対する各放射源からの反射又は透過の寄与度はこれらの組み合わせ係数に依存する。対数及び正規化は、これらの組み合わせ係数を修正する。
【0030】
別の実施形態によると、復調ユニットは合成波形生成器を更に備え、放射源は正弦波形と周波数多重化されており、復調ユニットは、検出された信号の変調周波数を検出すること、及び、固定の振幅と検出された周波数とをもつ正弦波形を生成する合成波形生成器を使用して分析信号を生成することにより、検出された信号から変調波形を復元するように構成される。
【0031】
本発明のこれらの態様及び他の態様が、以下で説明される実施形態から明らかとなり、以下で説明される実施形態を参照しながら説明される。以下の図面について下記のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明によるシステムの第1の実施形態の概略図である。
図2】一実施形態による放射源の概略図である。
図3】一実施形態による処理ユニットの概略図である。
図4】別の実施形態による処理ユニットの概略図である。
図5】本発明によるとシステムの第2の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明によるシステム100の第1の実施形態の概略図を示す。システム100は、実質的に同じ出射スペクトルを含む異なる形態により変調された電磁放射波を出射する2つの放射源112、114を備える。変調工程の詳細な説明が図2を参照して後で説明される。
【0034】
放射源112、114は対象者110に対して異なる位置に配置され、異なる角度から対象者110を含むシーン108を照らす。この実施形態によると、放射源112、114により出射された電磁放射波120、122は、対象者110と対象者110の周辺環境とにおいて反射される。したがって、放射源112、114のうちの1つが背景を照らし、他の放射源114、112が対象者110を実質的に照らすことも実行可能な選択肢である。後に、反射された電磁放射波124a、124bはセンサー130により検出される。センサー130は、単一要素ディテクター、例えば、フォトダイオード、センサーアレイ、例えば、8×8光センサーアレイ、ラインセンサーアレイ、又は画像センサー(例えばカメラ)である。
【0035】
好ましくは、反射された電磁放射波124a、124bが対象者の皮膚で反射された放射波の大きい寄与部分を含むように、放射源112、114及びセンサー130のうちの少なくとも1つが配置されている。シーン108における皮膚の位置を特定するために、対象者に対して放射源112、114及びセンサー130を自動的に再調整するために、皮膚色又は熱情報(皮膚は典型的には繊維製品及び他の物体より暖かい)を含む様々な技術が使用される。代替的に、例えば、画像センサーを使用して静的な構成(例えば自動車におけるドライバ又はベッドにおける患者を監視すること)では、皮膚検出が使用され、この情報を使用してシーンの一部が無視される。したがって、画像処理手段のみが皮膚の位置を特定するために適用される。
【0036】
本発明により解決される課題は、反射された電磁放射波124a、124bが典型的には、対象者110の皮膚で反射されていない電磁放射波を表す非皮膚信号の何らかの寄与部分を更に含むことである。したがって、この特定の電磁放射波は、例えば、対象者110の衣服及び毛髪において、又は、対象者の近くに位置する任意の種類の物体において反射される。対象者110が動くので、シーン108は典型的には少なくとも完全に静的というわけではなく、このことが、反射された電磁放射波124a、124bにおいて継続的に変化する皮膚の寄与をもたらす。したがって、カメラベースのPPGの実行可能性を脅かす困難さは、対象者の動きに対するロバスト性、及び、対象者110の実際の皮膚を見つけることである。様々な選択肢が最近研究されており、課題を解決するための本発明の本質的な要素は、図1に示される少なくとも2つの異なる形態により変調された放射源112、114を使用することにより、シーンを非一様に照らすことである。
【0037】
好ましい実施形態によると、可視(VIS)範囲及び近赤外(NIR)範囲がパルス、呼吸、SpO2などの目立たない測定に理想的に適していることがよく知られているので、放射源112、114は400nmから1000nmの範囲内の(センサーにより観測される)実質的に同じ光スペクトルをもつ電磁放射波120、122を出射するように構成されている。
【0038】
図2は、一実施形態による放射源112、114の概略図を示し、放射源112、114の各々が、サブスペクトルを含む電磁放射波を出射する1つ又は複数の放射要素200a,b、202a,b、204a,bを備え、放射要素200a,b、202a,b、204a,bのサブスペクトルの組み合わせが、放射源112、114の出射スペクトルを形成する。この実施形態の場合、放射要素200a,b、202a,b、204a,bは異なる発光ダイオード(LED)であり、例えば[450nm,550nm,650nm]又は[760nm,800nm,880nm]といった、400nmから1000nmの間の波長を選択することが有益であり得る。第1の組み合わせは、青色、緑色、及び赤色LEDによりもたらされる。したがって、放射源112、114により出射された電磁放射波120、122は、1つのLEDのサブスペクトルの混合物である白色光である。更に、PPGスペクトルは550nmで最高の振幅を示すので、550nmに近い波長を選択することが有益である。
【0039】
放射源112、114の1つの例示的な実施形態のみが図2に示されていることに留意されなければならない。更に多くのLEDを備えることが、例えばシーンにおける運動に起因して発生する、より独立した成分の分離を可能にするので、放射源112、114は概して更に多くのLEDを備えてもよい。更に、放射源112、114が幅広い光スペクトル(例えば白色LED)を放射し、センサー130の要素(例えば赤色、緑色、及び青色ピクセル)がこの幅広いスペクトルから異なるサブスペクトルを選択する。
【0040】
異なる放射要素200a,b、202a,b、204a,bの出射された電磁放射波210a,b、220a,b、230a,bは、電磁放射波を変調するために変調ユニット240a,bを通る変調されていない電磁放射波210a,b、220a,b、230a,bである。より有益には、放射要素200a,b、202a,b、204a,bのドライバが放射要素200a,b、202a,b、204a,bの各々を通る変調された電流を操作しながら、放射要素200a,b、202a,b、204a,bが変調された電磁放射波を直接出射する。変調ユニット240a,bは振幅変調ユニットであり、異なる放射要素200a,b、202a,b、204a,bが異なる周波数又は位相により変調され、周波数又は位相多重化電磁放射波をもたらす。位相変調の場合、変調ユニット240a,bは、他方に対して電磁放射波120、122のうちの1つを遅延させる時間遅延ユニットであり、又は、時間多重化又は直交変調を使用する。
【0041】
別の実施形態によると、放射要素200a,b、202a,b、204a,bの電流を駆動する変調信号が、他方の放射源112、114に対して放射源112、114のうちの1つのために遅延させられる。周波数多重化の場合、変調ユニット240a,bは、例えば、光学チョッパーホイール又は音響光学変調器(AOM)である。より魅力的な、及びより安価な実施形態は、本例では更に、連続放射器及び変調ユニット240を想定する代わりに、放射要素200a,b、202a,b、204a,bを直接変調することである。変調の周波数は、例えば環境光源、他の電気的装置、又はPPG信号自体の電気的ノイズといった、様々な発生源によりもたらされるPPG信号におけるノイズを効果的に低減するために適切に調節される。正弦波形により電磁放射波を変調することが有益であり、2つの放射源112、114の変調周波数は周期的な生命兆候の最高周波数(例えば最高パルス周波数、すなわち4Hz)より大きく異なり、最高変調周波数は、光センサーの画像レートから最大予測脈拍数を減算したものの半分未満である。したがって、放射源112及び114の各々が異なる周波数により、例えば1kHz及び1.2kHzにおいて変調され、変調周波数の差は要求を満たす。更に、変調及び復調工程により信号を効果的にフィルタ処理するために、言及されているノイズ源の典型的な周波数と異なる周波数範囲を選択することが非常に有益である。
【0042】
別の実施形態によると、放射源112、114は、例えば20%といった、0%から99%の最大出力の間の、及び最大光出力(100%)の2つの正弦波形により振幅変調される。
【0043】
「異なる形態により変調された放射源」は、放射源112、114のうちの1つが例えば1kHzで変調されるとともに、他方の放射源112又は114が0kHzで変調される事例をカバーすることにも留意しなければならない。
【0044】
ここまでに既に言及したように、2つの放射源112、114のうちの少なくとも1つにより出射された電磁放射波120、122は、図1の概略図に示されるように対象者において反射される。反射された電磁放射波124a、124bは例えば、青色、緑色、赤色、及び近赤外放射波を検出する複数の要素を含むフォトダイオードである光センサーにより検出される。したがって、放射源112、114が、放射要素200a,b、202a,b、204a,b(図2参照)の青色、緑色、及び赤色サブスペクトルに分解された白色光を出射する場合、異なるRGBセンサーは同じ相対強度をもつ。しかし、それらの出力が良い信号対ノイズ比を実現するほどに十分高いものである限り、これが必須というわけではない。
【0045】
センサー130は、反射された電磁放射波124a、124bを、復調ユニット140に伝達される検出信号132に変換する。好ましくは、復調ユニット140は、放射源の数に応じた数の出力信号を出力するように構成された振幅(AM)復調器である。図1に示される実施形態によると、放射源112、114の数は2である。しかし、請求項に記載されているシステムが更に多くの放射源を備えてもよいことが、図5を参照して後で説明される。
【0046】
図1に示される実施形態の場合、復調ユニット140は、2つの放射源112、114の異なる形態により変調された電磁放射波120、122に対応した2つの復調された信号142、144を「復元」する。特に、それは、生命兆候を表す皮膚信号の変動(AC部分)を抽出することを可能にする。復調ユニット140は、評価された重なった時系列を加算することにより出力信号が再構成される重畳加算手法により動作する。復調された信号142、144は処理ユニット150に伝達される。処理ユニットの一実施形態は図3に示される。
【0047】
この実施形態によると、処理ユニット150は分離ユニット300を更に備え、分離ユニット300において、ブラインドソース分離(BSS)、例えば独立成分分析(ICA)、及び/又は主成分分析(PCA)が2つの復調された信号142、144を皮膚信号320及び非皮膚信号に分離するために使用され、(好ましい選択肢として)関連する皮膚信号320のみが更に処理され、皮膚信号320から最終的な生命兆候160を抽出するように構成された特定ユニット400に送信される。皮膚信号320は、2つの放射源112、114により出射されて、及び実質的に対象者110の皮膚を通して透過された、又は対象者110の皮膚で反射された電磁放射波120、122の線形結合である。(例えばRGBサブスペクトルと2つの放射器とを想定した)代替的な選択肢によると、すべての6つ(2×3)の信号が、パルス信号の分離のためにBSSユニットに供給される。
【0048】
rPPGにおいて適用されるBSSベースの方法の全体的な工程は、Y(t)=A・X(t)と表され得、ここで、Y(t)=(Y1,Y2)は、パルスとノイズとからなる因数分解されたソース信号を表す。したがって、図3に示される特定の実施形態において、第1の復調された信号142は、例えば第1の放射源112により出射された反射された電磁放射波120に対応し、第2の復調された信号144は、第2の放射源114により出射された反射された電磁放射波122に対応し、両方の放射源112、114が実質的に同じ出射スペクトルを含んで出射する。ベクトルX(t)=(X1,X2)は分解された信号を表し、X1は皮膚信号320であり、X2は更なる処理に使用されない非皮膚信号である。Aは、復調された信号142、144を皮膚信号320及び非皮膚信号に分離するための、ICA又はPCAにより推定され得る分解行列を表す。
【0049】
図4に示される別の実施形態によると、放射源112、114は、実質的に同じ出射スペクトルを含んで出射するだけでなく更に、図2に示される実施形態に対して説明される放射要素を更に備える。したがって、放射源112、114は、例えば、それぞれ、λ1及びλ2の中心波長をもって出射する2つの放射要素を更に備える。したがって、出射スペクトルは放射要素のサブスペクトルの組み合わせから形成されるので、放射源112、114は同じ出射スペクトルを含んで出射するように構成される。この場合において、第1の復調された信号146は、例えば、第1の放射源112の第1の放射要素200aにより出射された反射された電磁放射波に対応し、第2の復調された信号147は、第1の放射源112の第2の放射要素202aにより出射された反射された電磁放射波に対応し、第3の復調された信号148は、第2の放射源114の第1の放射要素200bにより出射された反射された電磁放射波に対応し、第4の復調された信号149は、第2の放射源114の第2の放射要素202bにより出射された反射された電磁放射波に対応する。第1の放射要素200a,bはλ1の中心波長をもつ電磁放射波を出射するのに対し、第2の放射要素202a,bはλ2の中心波長をもつ電磁放射波を出射すると例示的に仮定される。その点について、本発明は、2つの異なる中心波長λ1及びλ2をもつ電磁放射波に限定されないことに留意されなければならない。2つより多いことも実行可能な選択肢である。
【0050】
分離ユニット300は、4つの復調された信号146~149をλ1の中心波長をもつ電磁放射波に対応した第1の皮膚信号324と、λ2の中心波長をもつ電磁放射波に対応した第2の皮膚信号326と、及び2つの非皮膚信号とに分離するために、ブラインドソース分離(BSS)、例えば、独立成分分析(ICA)、及び/又は主成分分析(PCA)を使用する。図4に示されるように、第1の皮膚信号324と第2の皮膚信号326とが組み合わせユニット500に入り、組み合わせユニット500では、クロミナンスベースの方法(CHROM)、血液ボリュームパルス(PBV)、皮膚に直交した平面(POS)、又は適応型血液ボリュームパルス(ABPV)が異なる波長における皮膚で反射された信号を組み合わせるために使用される。この組み合わされた皮膚信号510は、次に、組み合わされた皮膚信号510から最終的な生命兆候160を抽出するように構成された特定ユニット400に伝達される。
【0051】
図5は、対象者110の少なくとも1つの生命兆候を特定するための本発明によるシステム100の別の実施形態を示す。ここまでに既に言及したように、システム100は、更に多くの放射源112、114、116、118、…を備える。異なる角度によりシーン108を照らすために2つより多い異なる形態により変調された放射源112、114、116、118、…を使用することが有益であり、その理由は、これが、例えばシーン108における運動に起因して発生する、より独立した成分の分離を可能にするからである。4つの放射源112、114、116、118を使用したこの実施形態によると、対象者の反射された電磁放射波124a~dは、図1に示される実施形態に対して既に説明されているものと同じ手法により処理される。処理される必要がある更なる2つの異なる形態により変調された電磁放射波126、128が存在することだけが異なる。したがって、演算負荷はより大きいが、それは、改善された品質をもつ特定された生命兆候160を取得するために興味深い。
【0052】
更に、復調ユニット140は、合成波形生成器141を更に備える。この場合において、復調ユニット140は、検出信号132の変調周波数を検出すること、及び、固定の振幅と検出された周波数とをもつ正弦波形を生成する合成波形生成器141を使用して分析信号を生成することにより検出信号132から変調波形を復元する。これは、代替的な選択肢により達成され、代替的な選択肢によると、変調周波数は検出信号から特定されず、むしろ予め知られていると想定される。更に、復調は、変調波形から形成された分析信号を使用してセンサー130のピクセル値の時系列に乗算をすることと、大きさ信号を演算することとを伴う。
【0053】
図面及び上述の説明において本発明が例示され、詳細に説明されているが、このような例示及び説明は例示又は一例とみなされ、限定とはみなされず、本発明は開示されている実施形態に限定されない。開示されている実施形態に対する他の変形例が、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の考察により、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解及び実現され得る。
【0054】
特許請求の範囲において、「備える(含む、有する、もつ)」という表現は、他の要素もステップも排除せず、単数形の表現は複数を排除しない。1つの要素又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されている幾つかの項目の機能を実現してもよい。単に特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということが、利点を得るためにこれらの手段の組み合わせが使用不可能なことを示すわけではない。
【0055】
特許請求の範囲における参照符号は、いずれも特許請求の範囲を限定するように解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5