(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-22
(45)【発行日】2024-03-04
(54)【発明の名称】短又は超短光パルスを圧縮するシステム及び方法並びに関連する光パルス化レーザーシステム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/383 20060101AFI20240226BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240226BHJP
H05G 2/00 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
G02F1/383
G03F7/20 503
H05G2/00 K
(21)【出願番号】P 2021545334
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 FR2019052393
(87)【国際公開番号】W WO2020074827
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521153146
【氏名又は名称】アンプリテュード システム
(73)【特許権者】
【識別番号】501455677
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】ザウテル ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】ギシャール フロラン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴニュ ロイック
(72)【発明者】
【氏名】アンナ マルク
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516160(JP,A)
【文献】特表2013-533506(JP,A)
【文献】米国特許第05956173(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0250982(US,A1)
【文献】特開2009-180812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300951(US,A1)
【文献】特表2002-502061(JP,A)
【文献】特開2012-141422(JP,A)
【文献】L. LAVENU et al.,“Compact, high-efficiency, ultrafast 2-cycles sources at 1030nm”,2019 Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO),2019年,p.1-3,DOI: 10.1364/CLEO_AT.2019.JM1E.5
【文献】L. LAVENU et al.,“Nonlinear pulse compression based on a gas-filled multipass cell”,Optics Letters,2018年05月04日,Vol. 43, No. 10,p.2252-p.2255,DOI: 10.1364/OL.43.002252
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(2)によって放出される短又は超短光パルスを圧縮するシステム(4)であって、
前記圧縮システム(4)は、
-マルチパスセル(14)を有する第1非線形光パルス圧縮モジュール(10)であって、前記マルチパスセル(14)は、第1非線形光学媒体を有する、モジュールと、
-第2気体非線形光学媒体によって充填された毛細管(24)及び前記毛細管(24)の出力において配置されたコンプレッサ(28)を有する第2非線形光パルス圧縮モジュール(20)と、
を有し、
前記第1非線形
光パルス圧縮モジュール(10)及び前記第2非線形
光パルス圧縮モジュール(20)は、ソース光パルスのソース光ビーム(100)の経路上において直列状態において配置されており、前記第1非線形
光パルス圧縮モジュール(10)は、前記第2非線形
光パルス圧縮モジュール(20)の上流において配置されていることを特徴とするシステム(4)。
【請求項2】
前記
第1非線形
光パルス圧縮モジュール(10)は、前記マルチパスセル(14)の出力において配置された
もう1つのコンプレッサ(16)を有する、請求項1に記載の圧縮システム(4)。
【請求項3】
前記マルチパスセル(14)は、少なくとも2つのミラー(30)を有し、前記ソース光ビーム(100)の伝播のエリアは、前記2つのミラー(30)の間において定義されている、請求項1又は2に記載の光パルス圧縮システム(4)。
【請求項4】
前記2つのミラー(30)は、分散型であり、前記マルチパスセル(14)は、負の分散を導入している、請求項3に記載の光パルス圧縮システム(4)。
【請求項5】
前記マルチパスセル(14)の前記第1非線形光学媒体は、非線形光学プロパティを有する流体媒体を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光パルス圧縮システム(4)。
【請求項6】
前記マルチパスセル(14)の前記第1非線形光学媒体は、固体非線形光学要素を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光パルス圧縮システム(4)。
【請求項7】
前記第2非線形
光パルス圧縮モジュール(20)は、第2圧縮光ビーム(120)の分散を調節する光学装置(60)を有し、前記光学装置(60)は、前記第2非線形光
パルス圧縮モジュール(20)の出力において配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の光パルス圧縮システム(4)。
【請求項8】
前記もう1つのコンプレッサ(16)は、少なくとも1つの分散ミラー及び/又は1つの回折格子及び/又は1つのプリズム及び/又は1つのジル・トルノア干渉計を有し、且つ、前記コンプレッサ(28)は、少なくとも1つの分散ミラー及び/又は1つの回折格子及び/又は1つのプリズム及び/又は1つのジル・トルノア干渉計を有する、請求項
2に記載の光パルス圧縮システム(4)。
【請求項9】
前記第1非線形
光パルス圧縮モジュール(10)の出力における前記光パルスの第1時間圧縮率は、1超であり、且つ、20以下であり、且つ、前記第2非線形
光パルス圧縮モジュール(20)の出力における前記光パルスの第2時間圧縮率は、1超であり、且つ、20以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の光パルス圧縮システム(4)。
【請求項10】
光パルスレーザーシステム(1)であって、
-短又は超短光パルスを生成するように設計された光源(2)と、
-請求項1~9のいずれか1項に記載の光パルス圧縮システム(4)と、
を有するシステム(1)。
【請求項11】
光源(2)によって放出される短又は超短光パルスを時間的に圧縮する方法であって、
-第1非線形光パルス圧縮モジュール(10)による非線形光パルス圧縮の第1ステップであって、前記第1
非線形光パルス圧縮モジュール(10)は、マルチパスセル(14)を有し、前記マルチパスセル(14)は、第1非線形光学媒体を有する、ステップと、
-第2非線形光パルス圧縮モジュール(20)による非線形光パルス圧縮の第2ステップであって、前記第2
非線形光パルス圧縮モジュール(20)は、第2気体非線形光学媒体によって充填された毛細管(24)と、前記毛細管(24)の出力において配置されたコンプレッサ(28)と、を有する、ステップと、
を連続的に有し、
前記第1非線形
光パルス圧縮モジュール(10)及び前記第2非線形
光パルス圧縮モジュール(20)は、ソース光パルスのソース光ビーム(100)の経路上において直列状態において配置されており、前記第1非線形
光パルス圧縮モジュール(10)は、前記第2非線形
光パルス圧縮モジュール(20)の上流において配置されていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高パワー及び/又は高エネルギー超短光パルスを生成するレーザーシステムの分野に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、光パルスを時間的に圧縮する光パルス圧縮システム又は光パルスコンプレッサの分野に関する。
【0003】
更に詳しくは、本発明は、短又は超短光パルスを圧縮するシステム及び方法に関する。
【0004】
又、本発明は、光パルス圧縮システムを有するレーザーシステムにも関する。
【背景技術】
【0005】
非線形圧縮システムの使用は、一般には、時間的な分散及び増幅の後に光パルスの持続時間を低減するべく、通常使用される方法である。多くの非線形圧縮システムが既知であり、これらは、基本的に、非線形光学プロパティを有する固体又は気体媒体内における入射光パルスの自己位相変調(SPM:Self-Phase Modulation)スペクトル拡幅に基づいている。
【0006】
既知の圧縮システムは、固体コアファイバを使用するステップを有する。この装置の伝送の効率は、一般には、80%のレベルであるが、光パルスの入射エネルギーは、数マイクロジュール(μJ)に制限されている。
【0007】
別の圧縮システムは、気体によって充填された中空ファイバを使用するステップを有する。中空ファイバは、その構造が低損失を伴う(且つ、理想的には、損失を伴わない)光パルスの導波の保証を可能にする導波路として機能している。これを目的として、中空ファイバのクラッディングは、これらの導波プロパティが提供されるように、マイクロ構造化されている。従って、この装置の伝送効率は非常に高く、通常は、数十マイクロジュールのエネルギーにおいて、90%のレベルである。但し、これらの中空ファイバは、レーザーパラメータの安定性(例えば、ポインティング安定性)又は入射偏光の維持の観点において、制限されている。
【0008】
更に別の圧縮システムは、材料のプレートを使用するステップを有する。これらの材料のプレートは、供給源によって放出される波長に対して透明であるすべてのタイプの材料を有する。これは、例えば、溶融シリカ、イットリウム-アルミニウムガーネット結晶(YAG結晶)、フッ化カルシウム(CaF2)、又はチタンリン酸カリウム(KTP)である。この装置は、強力な伝送の取得を可能にするが、光ビームの空間的且つ空間-時間的な品質を維持するべく、圧縮率を制限しなければならない(通常は、5未満である)。
【0009】
更に別の圧縮システムは、気体によって充填された毛細管を使用するステップを有する。高エネルギーパルス(例えば、1mJ超)において、強力な圧縮効率が得られる(通常は、10超である)。但し、気体によって充填された毛細管は、導波路としては機能せず、従って、光パルスの伝播が、損失を伴って発生する。従って、この装置の損失を制限するべく、使用される毛細管の長さと直径の間において、妥協点を見出さなければならない。
【0010】
最後に、別の圧縮システムは、非線形光学プロパティを有する気体又は固体元素を収容したマルチパスセルを使用するステップを有しており、この内部において、光ビームは、複数回の往復移動を実施している。この装置は、通常は90%超である強力な伝送効率を保証することにより、10未満の圧縮率の取得を可能にしている。更には、光ビームの空間的な品質も維持されている。但し、セルに使用されるミラーの光学プロパティが、この装置の性能を制限している。
【0011】
最後に、既知の圧縮システムは、いずれも、高効率(通常は、50%超である)及び高圧縮率(通常は、10~400である)の両方において、例えば、10個未満の光サイクルなどの、いくつかの光サイクルの光パルスなどの、短又は超短光パルスの取得を許容してはいない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当技術分野の現時点の状態における上述の欠点を矯正するべく、本発明は、短又は超短光パルスを圧縮するシステムを提案している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
更に詳しくは、本発明によれば、光源によって放出される短又は超短光パルスを圧縮するシステムが提案されている。本発明によれば、圧縮システムは、
-マルチパスセルを有する第1非線形光パルス圧縮モジュールであって、マルチパスセルは、第1非線形光学媒体を有する、モジュールと、
-第2気体非線形光学媒体によって充填された毛細管と、毛細管の出力において配置されたコンプレッサと、を有する第2非線形光パルス圧縮モジュールと、
を有し、
第1非線形圧縮モジュール及び第2非線形圧縮モジュールは、ソース光パルスのソース光ビームの経路上において直列状態において配置されており、第1非線形圧縮モジュールは、第2非線形圧縮モジュールの上流において配置されている。
【0014】
有利には、マルチパスセルを有する第1圧縮モジュール及び毛細管を有する第2圧縮モジュールの使用は、(いくつかの光サイクル以下の持続時間を有しうる)短又は超短光パルスの強力なエネルギー伝送の取得を可能にしている。圧縮システムの出力において伝送される平均パワーは、これらの光パルス持続時間にわたって非常に大きい。更には、本発明の構成は、コンパクトな圧縮システムにおいて光ビームの大きな安定性を提供している。
【0015】
但し、この第1圧縮モジュールとこの第2圧縮モジュールの組合せは、時間的な又は空間-スペクトル的な劣化の発生を伴うことなしに、50%超のエネルギー効率の取得を許容している。
【0016】
個々に、或いは、技術的に可能な組合せのすべてに応じて、取得される、本発明による短又は超短光パルスを圧縮するシステムのその他の非限定的且つ有利な特徴は、
-第1非線形圧縮モジュールは、マルチパスセルの出力において配置された別のコンプレッサを有しており、
-マルチパスセルは、少なくとも2つのミラーを有し、この場合に、ソース光ビームの伝播のエリアは、2つのミラーの間において定義されており、
-2つのミラーは、分散型であり、且つ、マルチパスセルは、負の分散を導入しており、
-マルチパスセルの第1非線形光学媒体は、非線形光学プロパティを有する流体媒体を有しており、
-マルチパスセルの第1非線形光学媒体は、固体非線形光学要素を有しており、
-第1非線形圧縮モジュールは、ソース光ビームを合焦する第1合焦光学システムを有し、第1合焦光学システムは、前記第1非線形圧縮モジュールの入力において配置されており、第1合焦光学システムは、伝播モードをマルチパスセルの合焦のエリア内のソース光ビームのサイズに結合するように設計されており、
-第2非線形圧縮モジュールは、第2合焦光学システムを有し、第2合焦光学システムは、前記第2非線形圧縮モジュールの入力において配置されており、第2合焦光学システムは、第1非線形圧縮モジュールから出現する第1圧縮光ビームを毛細管の入力に合焦するように設計されており、
-第2非線形圧縮モジュールは、第2圧縮光ビームの分散を調節する光学装置を有し、前記光学装置は、第2非線形光ビーム圧縮モジュールの出力において配置されており、
-もう1つのコンプレッサは、少なくとも1つの分散ミラー及び/又は1つの回折格子及び/又は1つのプリズム及び/又は1つのジル・トルノア(Gires-Tournoi)干渉計を有し、且つ、コンプレッサは、少なくとも1つの分散ミラー及び/又は1つの回折格子及び/又は1つのプリズム及び/又は1つのジル・トルノア干渉計を有しており、且つ、
-第1非線形圧縮モジュールの出力における光パルスの第1時間圧縮率は、1超であり、且つ、20以下であり、好ましくは、5~20であり、且つ、第2非線形圧縮モジュールの出力における光パルスの第2時間圧縮率は、1超であり、且つ、20以下であり、好ましくは、5~20である、
というものである。
【0017】
有利には、この第1圧縮モジュールとこの第2圧縮モジュールの組合せは、10超の、且つ、400に到達しうる、全体時間圧縮率の取得を可能にしている。
【0018】
又、本発明は、
-短又は超短光パルスを生成するように設計された光源と、
-以上において定義されている光パルス圧縮システムと、
を有する光パルスレーザーシステムをも提案している。
【0019】
又、本発明は、光源によって放出された短又は超短光パルスを時間的に圧縮する方法をも提案している。
【0020】
本発明によれば、方法は、
-第1非線形光パルス圧縮モジュールによる非線形光パルス圧縮の第1ステップであって、前記第1モジュールは、マルチパスセルを有し、マルチパスセルは、第1非線形光学媒体を有する、ステップと、
-第2非線形光パルス圧縮モジュールによる非線形光パルス圧縮の第2ステップであって、前記第2モジュールは、第2気体非線形光学媒体によって充填された毛細管と、毛細管の出力において配置されたコンプレッサと、を有する、ステップと、
を連続的に含み、
第1非線形圧縮モジュール及び第2非線形圧縮モジュールは、ソース光パルスのソース光ビームの経路上において直列状態において配置され、第1非線形圧縮モジュールは、第2非線形圧縮モジュールの上流において配置されている。
【0021】
非限定的な例として付与されている添付の図面との関係における以下の説明は、本発明が有するものと、本発明が実装されうる方式と、の良好な理解を許容することになろう。
【0022】
添付図面は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明によるレーザーシステムの異なる要素の概略表現を提案する。
【
図2】本発明によるレーザーシステムの異なる要素の別の概略表現を提案する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、例示用の一実施形態による光パルスレーザーシステム1の様々な要素の第1概略図を提案している。
図2は、本発明による光パルスレーザーシステムの様々な要素の別の概略図を提案している。以下、これらの2つの図の共通要素について同時に説明する。
【0025】
光パルスレーザーシステム1は、光源2と、光パルス圧縮システム4と、を有する。
【0026】
光源2は、短又は超短光パルスを生成するように設計されている。本明細書において、「短又は超短光パルス」は、その持続時間が数十フェムト秒(fs)~100psである光パルスを意味している。光源2によって放出される光パルスの持続時間は、例えば、200fs~400fsである。光源2は、ここでは、7nmのレベルの中程度~大きなスペクトル幅を伴って、1030ナノメートル(nm)のレベルの中心波長を有する。代替肢として、光源の中心波長は、可視範囲内であってもよく、又は、近赤外範囲内であってもよく、或いは、又、平均赤外範囲内であってもよい。
【0027】
実際に、ここでは、光源2は、高エネルギー光パルスを生成している。本明細書において、「高エネルギー光パルス」は、例えば、10μJ~500mJなどのように、そのエネルギーが10μJ超である光パルスを意味している。高エネルギー光パルスは、例えば、ここでは、100μJ~1mJのエネルギーを有する。実際に、光源2は、例えば、Amplitude Sysmtems社の、タンジェリンレーザー供給源、イッテルビウムドープ型のファイバレーザー、及び増幅器である。このケースにおいて、光源2は、150kHzのレベルの反復周波数を伴って、330fsのレベルの持続時間と、光パルス当たりに225μJのレベルのエネルギーと、を有するパルスを生成している。この結果、対応する平均パワーは、34Wのレベルである。
【0028】
ソース光ビーム100は、光源2の出力において生成されたパルスから形成されている。実際に、光源2の出力におけるソース光ビーム100の品質係数M2は、2未満である。光源2の出力におけるソース光ビーム100の品質係数M2は、例えば、1.4×1.2に等しい。
【0029】
次いで、
図1及び
図2において観察されうるように、ソース光ビーム100は、以下において圧縮システム4とも呼称される、光パルス圧縮システム4に向かって導かれている。
【0030】
圧縮システム4は、以下において第1圧縮モジュール10とも呼称される、第1非線形光パルス圧縮モジュール10と、以下において第2圧縮モジュールとも呼称される、第2非線形光パルス圧縮モジュール20と、を有する。
【0031】
第1非線形圧縮モジュール10は、ソース光ビーム100の第1合焦光学システム12、マルチパスセル14を有する。図示の例において、第1非線形圧縮モジュール10は、第1コンプレッサ16を更に有する。又、第1コンプレッサ16は、本明細書においては、もう1つのコンプレッサとも呼称されている。
【0032】
第1合焦光学システム12は、第1圧縮モジュール10の入力において配置されている。第1合焦光学システム12は、第1非線形圧縮モジュール10内において、マルチパスセル14の上流において位置決めされている。本説明において、「上流」及び「下流」という用語は、光源2内のソース光ビーム100の生成からレーザーシステム1の出力までの光ビームの伝播の方向に従って使用されている。
【0033】
第1合焦光学システム12は、ソース光ビーム100をマルチパスセル14の入力に向かって導くように設計されている。具体的には、第1合焦光学システム12は、伝播モードをマルチパスセル14の合焦のエリア内のソース光ビーム100のサイズ(「ウエスト」とも呼称される)に結合するように、設計されている。実際に、第1合焦光学システム12は、例えば、3レンズ構成を有する。
【0034】
マルチパスセル14は、少なくとも2つのミラー30を有する。実際に、2つのミラー30は、凹状である。2つのミラー30によって誘発される分散は、実際には、マルチパスセル14内において配置された(且つ、後述される)第1非線形光学媒体の分散との関係において、同一符号の、或いは、反対符号の、ゼロである。例えば、ミラー30は、約5cmの直径と、約300mmの曲率半径と、を有する。2つのミラー30は、互いに反対側に配置されており、且つ、ミラー30の曲率半径の二倍未満の距離だけ、離隔している。実際に、マルチパスセル14は、例えば、約450mmだけ離隔した2つの凹面ミラーによって形成されている。マルチパスセル14において伝播する光ビーム102の伝播のエリアは、2つのミラー30の間において定義されている。
【0035】
又、マルチパスセル14は、伝播エリア内へのソース光ビーム100の導入のための少なくとも1つの光学要素31をも有する。導入光学要素31は、マルチパスセル14の入力において配置されている。導入光学要素31は、ソース光ビーム100をミラー30に向かって方向付けするように設計されている。又、
図2において観察されうるように、マルチパスセル14は、任意選択により、マルチパスセル14の容積を低減するように設計された偏向ミラー32をも有する。
【0036】
実際に、導入光学要素31は、例えば、サイズ3mm×10mmの矩形の平面ミラーなどの、平面ミラーを有する。
【0037】
対称的な方式により、マルチパスセル14は、2つのミラー30の間の伝播のエリアからの光ビーム102の抽出のための少なくとも1つの抽出光学要素35を有する。抽出光学要素35は、ミラー30の下流において、マルチパスセル14の出力において配置されている。抽出光学要素35は、マルチパスセル14から出現する、且つ、具体的には、伝播エリアから出現する、光ビーム105を抽出するように、且つ、これをマルチパスセル14の出力に向かって導くように、設計されている。
図2において観察されうるように、マルチパスセル14は、任意選択により、別の偏向ミラー34をも更に有する。
【0038】
実際に、抽出光学要素35は、例えば、3mm×10mmの矩形の平面ミラーなどの、平面ミラーを有する。
【0039】
導入光学要素31及び抽出光学要素35は、光ビーム105が、伝播エリア内において、2つのミラー30の間の既定の距離だけ移動することを許容するような方式により、結合されている。例えば、ここで、光ビーム105は、2つのミラー30の間の伝播のエリア内における約27回の往復運動に対応する、約24mという伝播の合計距離だけ移動している。
【0040】
マルチパスセル14は、第1非線形光学媒体を有する。この第1非線形光学媒体には、自己位相変調に必要とされる次数3の非線形感受率の取得が好ましい。この第1非線形媒体との間における光パルスの相互作用は、これらの光パルスのスペクトル拡幅を許容している。
【0041】
実際に、第1非線形光学媒体は、2つのミラー30の間において観察される距離の全体にわたって延在している。一代替肢として、第1非線形光学媒体は、2つのミラー30の間の距離の一部分をカバーしうる。
【0042】
第1非線形光学媒体は、例えば、流体媒体である。流体媒体は、気体媒体又は液体媒体を意味している。この流体媒体は、非線形光学プロパティを有する。
【0043】
例えば、第1非線形光学媒体は、気体媒体である。気体は、例えば、5バールの圧力を有するアルゴンである。一代替肢として、気体媒体は、例えば、キセノン、クリプトン、ネオン、又はヘリウムなどの任意の希ガス、或いは、例えば、空気などの任意の分子気体を有する。この結果、マルチパスセル14は、少なくとも1つの気体転送要素36を有する。気体転送要素36は、マルチパスセル14との間の気体の注入及び/又は抽出を許容している。
【0044】
一代替肢として、マルチパスセルは、転送要素36に起因して伝播する気体フローのシートであってよい。別の代替肢として、マルチパスセル14は、静的気体圧力下にあってもよく、この圧力は、例えば、20バール未満などのように、大気圧未満又は超であってよい。
【0045】
更に別の代替肢において、第1非線形光学媒体は、非線形光学プロパティを有する液体媒体であってよい。実際に、液体媒体は、例えば、水、アセトン、又はメタノールなどの、任意のタイプの液体を有しうる。
【0046】
更に別の代替肢として、第1非線形光学媒体は、2つのミラー30の間の伝播のエリア内において配置された固体の非線形光学要素であってよい。固体非線形光学要素は、例えば、溶融シリカ又はサファイア又はイットリウム-アルミニウムガーネット(YAG結晶)から構成されている。
【0047】
更に別の代替肢として、第1非線形媒体は、2つのミラー30と流体媒体の間の距離を部分的にカバーする固体非線形光学要素の組合せを有することができる。
【0048】
図1及び
図2に示されている例示用の実施形態において、第1コンプレッサ16は、第1圧縮モジュール10の出力において配置されている。第1コンプレッサ16は、第1圧縮モジュール10内において、マルチパスセル14の下流において配置されている。
【0049】
このような圧縮システム内の超短パルスの生成は、特に、例えば、10個の光サイクル未満などの、いくつかの光サイクルのパルスをサポートするスペクトルのケースにおいては、マルチパスセル14内において蓄積される分散効果の正確な制御を必要としている。
【0050】
第1コンプレッサ16は、マルチパスセル14から出現する光ビーム105の光パルスを時間的に圧縮するように設計されている。第1コンプレッサ内において実装される圧縮は、線形である。例えば(
図2)、第1コンプレッサ16は、例えば、-4900fs
2のレベルの合計群遅延分散を導入する2つの分散ミラー40を有する。一代替肢として、第1コンプレッサ16は、単一の分散ミラーを含みうる。一代替肢として、第1コンプレッサ16は、例えば、ジル・トルノア干渉計(GTI)、或いは、所謂「チャープ型」の分散ミラー、を有する。
【0051】
一代替肢として、第1コンプレッサ16は、1つ又は複数の回折格子及び/又は1つ又は複数のプリズムを含みうる。更に別の変形において、第1コンプレッサ16は、回折格子及びプリズムの組合せを含みうる。
【0052】
更に別の代替肢として、マルチパスセル14のミラーは、ミラー30及び第1非線形光学媒体を有するマルチパスセルが、負の正味分散を有するように、例えば、ジル・トルノア干渉計(GTI)又は所謂「チャープ型」のミラータイプのミラーなどの、分散ミラーである。この結果、このケースにおいては、マルチパスセルは、スペクトル拡幅及び第1時間圧縮を光パルスに対して同時に適用している。この結果、自己圧縮現象が、マルチパスセル14内において発生している。一代替肢として、このケースにおいては、第1非線形圧縮モジュール10が第1コンプレッサ16を有しておらず、圧縮は、マルチパスセル14内においてのみ、発生しうる。
【0053】
又、以上において紹介されているように、圧縮装置4は、第2圧縮モジュール20をも有する。この第2圧縮モジュール20は、光ビームの経路上において第1圧縮モジュール10と直列状態において配置されている。第2圧縮モジュール20は、予め導入された第1圧縮モジュール10の下流において配置されている。
【0054】
第2圧縮モジュール20は、第2合焦光学システム22と、毛細管24と、コリメーティング光学システム26と、第2コンプレッサ28と、光ビームの分散を調節する光学装置60と、を有する。又、第2コンプレッサ28は、本明細書においては、コンプレッサとも呼称されている。
【0055】
第2合焦光学システム22は、第2圧縮モジュール20の入力において配置されている。第2合焦光学システム22は、第2圧縮モジュール20内の毛細管24の上流において位置決めされている。この第2合焦光学システム22は、第1圧縮モジュール10から出現する第1圧縮光ビーム110を毛細管24の入力に合焦するように設計されている。例示用の一実施形態において、この第2合焦光学システム22は、第1圧縮光ビーム110のポインティング安定性を保証しており、且つ、短及び長期間における光パルスの安定性の取得を可能にしている。実際に、第2合焦光学システム22は、例えば、f=400mmのレベルの焦点距離のレンズを有する。
【0056】
次いで、第1圧縮光ビーム110は、毛細管24内において伝播している。毛細管24は、例えば、1メートルのレベルの、既定の長さにわたって延在している。毛細管24は、例えば、400μmのレベルの、50μm~10mmの直径を有する。毛細管24は、第2非線形光学媒体を有する。この第2非線形光学媒体には、自己位相変調に必要とされる次数3の非線形感受率の取得が好ましい。この第2非線形媒体との間における光パルスの相互作用は、これらの光パルスのスペクトル拡幅を許容している。
【0057】
この第2非線形光学媒体は、気体である。この気体媒体は、例えば、アルゴン、キセノン、クリプトン、ネオン、又はヘリウムなどの任意の希ガス、或いは、例えば、空気又は二窒素などの任意の分子気体を有する。例えば、ここで、毛細管24は、500ミリバールの圧力において、キセノンによって充填されている。一代替肢として、これは、マルチパスセル14内において存在しているものと同一の気体であってよい。又、毛細管24は、少なくとも別の気体転送要素27を有する。もう1つの気体転送要素27は、毛細管24との間における気体の注入及び/又は抽出を許容している。
【0058】
一代替肢として、毛細管24は、もう1つの転送要素27に起因して伝播する気体フローのシートであってよい。このケースにおいては、毛細管24は、差気体圧力下にある。この差圧は、もう1つの転送要素27を通じて気体を注入及び/抽出することにより、毛細管内において取得されている。
【0059】
別の代替肢として、毛細管24は、静的気体圧力下にあってもよい。
【0060】
実際に、毛細管24は、例えば、光ビームが個々に毛細管24に進入し、且つ、これから出現する、入力ウィンドウ23及び出力ウィンドウ25を有する。
【0061】
又、
図1及び
図2において観察されうるように、第2圧縮モジュール20は、コリメーティング光学システム26をも有する。コリメーティング光学システム26は、毛細管24から出現する光ビーム115の経路上において毛細管24の下流に配置されている。このコリメーティング光学システム26は、毛細管24から出現する光ビーム115をコリメーティングするように設計されている。実際に、コリメーティング光学システム26は、レンズ又は軸外しパラボラミラー又は球面ミラーである。例えば、コリメーティング光学システム26は、10mmのレベルの直径の、且つ/又は、800mmのレベルの曲率半径の、球面ミラーであってよい。
【0062】
一代替肢として、このコリメーティング光学システム26は、第2圧縮モジュール20から省略することができる。
【0063】
次いで、第2コンプレッサ28が、第2圧縮モジュール20の出力において配置されている。第2コンプレッサ28は、第2圧縮モジュール20内のコリメーティング光学システム26の下流において位置決めされている。
【0064】
第2コンプレッサ28は、毛細管24及びコリメーティング光学システム26から出現する光ビーム115の光パルスを時間的に圧縮するように設計されている。第2コンプレッサ28内において実装される圧縮は、線形である。
図2の例において、第2コンプレッサ28は、例えば、-300fs
2のレベルの合計群遅延分散を導入する少なくとも2つの分散ミラー50を有する。一代替肢として、第2コンプレッサ28は、単一の分散ミラーを有しうる。一代替肢として、第2コンプレッサ28は、ジル・トルノア(GTI)干渉計又は所謂「チャープ型」のミラーを有する。
【0065】
第2コンプレッサ28は、毛細管24から出現する光ビーム115を受け取り、且つ、圧縮された光ビーム120を生成している。
【0066】
図1に示されているように、圧縮された光ビーム120の分散を調節する光学装置60が、第2圧縮モジュール20の出力において配置されている。分散調節光学装置60は、第2コンプレッサ28の下流において位置決めされている。分散調節光学装置60は、第2圧縮モジュール20の出力において、第2圧縮光ビーム120の分散を微細調節するように設計されている。実際に、分散調節光学装置60は、その厚さが可変である材料の2つのプレートを有する。第2圧縮光ビーム120の伝播に沿ったこれらのプレートの挿入は、可変量の群速度分散の導入を可能にしており、この量は、通過する材料の厚さに依存している。例えば、分散調節光学装置60は、少なくとも1つのプリズムを有しうるが、好ましくは、CaF
2プリズムのペアである。このペアの2つのプリズムは、第2圧縮光ビームの角度分散を導入しないように位置決めされている。
【0067】
一代替肢として、分散調節光学装置60は、第2圧縮モジュール20から省略することができる。
【0068】
上述の光ビームレーザーシステム1は、以下の光パルス圧縮方法の実装を可能にしている。この方法は、具体的には、短又は超短光パルスの圧縮について適合されている。
【0069】
本発明の方法によれば、光源2は、複数の短又は超短且つ高エネルギーの光パルスを生成している。上述の例におけるように、光源2は、ここでも、7nmのレベルの中程度~大きなスペクトル幅を伴って、1030nmの中心波長を有する。ここで、光源2は、例えば、150kHzのレベルの、1Hz~100MHzの反復周波数を有する、330fsに等しい持続時間と、光パルス当たりに225μJのレベルのエネルギーと、を有する光パルスを生成している。この結果、対応する平均パワーは、34Wのレベルである。
【0070】
本発明による方法は、エネルギー伝送効率を維持しつつ、レーザーシステム1の出力において、依然として相対的に短い持続時間のパルスを取得することを可能にしている。
【0071】
この主題に関し、方法は、第1非線形圧縮ステップと、第2非線形圧縮ステップと、という、2つの連続的圧縮ステップを有する。
【0072】
第1非線形圧縮ステップは、第1非線形圧縮モジュール内において実行されている。光源2によって生成された光パルスから形成されたソース光ビーム100は、第1合焦光学システム12により、マルチパスセル14に向かって導かれている。
【0073】
次いで、ソース光ビーム100は、導入光学要素31及び偏向光学要素32に起因して、マルチパスセル14の2つのミラー30の間における伝播のエリアに導入されている。
【0074】
上述のように、光ビーム102は、2つのミラー30の間のアルゴン気体を収容する伝播のエリア内において、既定数の往復移動を実施しており、ここでは、27回である。非線形光学効果による望ましいスペクトル拡幅を得るべく、気体の圧力が更に調節されている。次いで、抽出光学要素35及び偏向光学要素34が、マルチパスセル14の出力に向かって導くように、伝播のエリアのマルチパスセル14から出現した光ビーム105を抽出している。マルチパスセル14は、マルチパスセル14から出現する光ビーム105のスペクトル拡幅を許容している。例えば、-10dBにおけるスペクトル幅は、65nmのレベルである。
【0075】
マルチパスセル14の出力において、光ビーム105の光パルスは、第1コンプレッサ16内において時間的に圧縮されている。従って、第1圧縮モジュール10の出力において、光パルスの持続時間は、87%というレベルの、有効に取得されるピークパワーと理想的な圧縮について到達されうるピークパワーの間の比率を特徴付ける(即ち、全体スペクトルにわたるスペクトル位相定数を考慮した)時間ストレール(Strehl)比を伴って、40fsというレベルを有する。この結果、この第1圧縮モジュール10の第1圧縮率は、例えば、8のレベルなどの、例えば、1~20などのように、1超である。一般に、第1圧縮率の最大値は、マルチパスセル14のミラーによって反射される最大スペクトル帯域に依存している。第1圧縮モジュール10の伝送は、合焦光学システム12及び第1コンプレッサ16の分散ミラーを考慮することにより、85%のレベルである。この結果、第1圧縮モジュール10の出力において、光パルスのエネルギーは、190μJのレベルであり、この結果、これは、約28.7Wの平均パワーに対応している。第1圧縮モジュール10の出力における第1圧縮光ビーム110の品質係数M2は、1.2×1.2に等しい。従って、マルチパスセル14は、光パルスの高エネルギー伝送を維持しつつ、(ミラーによって定義される可能な限度内において)パルス持続時間の大幅な低減を可能にしている。
【0076】
次いで、本発明による方法は、非線形圧縮の第2ステップによって継続されている。
【0077】
非線形圧縮の第2ステップは、第2非線形圧縮モジュール20内において実行されている。第1圧縮モジュール10の出力において、第1圧縮光ビーム110は、第2圧縮モジュール20に向かって導かれている。実際に、第2合焦光学システム22は、キセノンガスによって充填された毛細管24に向かって第1圧縮光ビーム110を導いている。
【0078】
毛細管24は、高エネルギー光パルスから到来する光ビームの伝播を許容している。毛細管24の直径は、相対的に大きく、恐らくは、好ましくは、400μmのレベルであり、これは、高エネルギー光パルスの受け取りと、圧縮システム4の伝送の増大と、を許容している。毛細管24は、第1圧縮光ビーム110の導波された伝播と、自己位相変調(SPM)スペクトル拡幅と、を許容している。具体的には、毛細管24内において収容されているキセノンは、430nmのレベルの、-10dBにおけるスペクトル幅を伴って、800nm~1200nmのスペクトル拡幅を許容している。
【0079】
毛細管24を充填している気体中における伝播の後に、毛細管24から出現した光ビーム115は、その後に、第2コンプレッサ28内において時間的に圧縮されるように、コリメーティング光学システム26によって導かれ、且つ、コリメーティングされている。例えば、分散ミラー50を有する第2コンプレッサ28は、負の群速度分散を導入することにより、毛細管115から出現する光ビーム115の時間的な圧縮を可能にしている。分散は、分散調節光学装置60に起因して、第2圧縮モジュール20の出力において更に微細調節することができる。
【0080】
第2圧縮モジュール20の出力において、光パルスの持続時間は、69%のレベルの時間ストレール比を伴って、6fsのレベルである。この光パルスの持続時間は、特に、関係するエネルギーの場合に、特に有利であり、その理由は、これが、いくつかの光サイクルを有するからである。ここで、この持続時間は、1030nmにおいて、2つの光サイクルに対応している。第2圧縮モジュール20の伝送は、第2コンプレッサ28の第2合焦光学システム22及び分散ミラー50を考慮することにより、72%のレベルである。この結果、この第2圧縮モジュール20の第2圧縮率は、例えば、7のレベルなどのように、2~20である。この結果、第2圧縮モジュール20の出力において、光パルスのエネルギーは、150μJのレベルであり、これは、23Wのレベルの平均パワーに対応している。第2圧縮モジュール20の出力における光ビームの品質係数M2は、1.2×1.2に等しい。毛細管24は、非常に大きなスペクトル帯域を有しており、これは、従って、禁止された伝送帯域を課すことにより、伝送スペクトル帯域を制限している、マイクロ構造化されたクラッディングの中空ファイバとは対照的に、光ビームスペクトルの伝送を制限してはいない。毛細管24は、いくつかの光サイクル以下の持続時間の短又は超短パルスの生成及び高圧縮率の取得を可能にしている。更には、毛細管24は、優れた空間品質を有する出力光ビームの提供をも可能にしている。
【0081】
最後に、レーザーシステム1の出力における光パルスの時間圧縮率は、10~400である。光パルス圧縮システム4の合計伝送は、例えば、150kHzなどの、1Hz~100MHzの反復周波数を伴って、6fsのレベルの光パルス持続時間及び光パルス当たりに150μJのレベルのエネルギーを出力において伴って、50%超であり、通常は、61%のレベルである。この結果、対応する平均パワーは、24Wのレベルである。
【0082】
従って、マルチパスセルを有する第1圧縮モジュールと毛細管を有する第2圧縮モジュールの組合せは、入射光ビームのエネルギーとは無関係に、いくつかの光サイクル以下の持続時間の短又は超短パルスを生成するべく(例えば、2つのマルチパスセルの使用によっては、或いは、2つの中空コアファイバによっては、可能ではない)、且つ、良好な空間品質を有する高エネルギーパルスを生成するべく(例えば、材料の2つのプレート又は2つの固体コアファイバの使用の場合には、当て嵌まらない)、(例えば、2つの毛細管を使用しては可能ではない)50%超のエネルギー伝送の取得を可能にしている。
【0083】
本発明において記述されているレーザーシステム1は、通常は、例えば、30fs未満などの、非常に短い持続時間のケースにおいて、少数の光サイクル/光パルスを有するシステムの場合に、有利な用途を見出している。これは、特に、極端紫外線又はX線において放出する供給源を有するレーザーシステムの場合に適用される。